(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、連結基端部を中軸先端部に外嵌させる方法としては、中軸先端部を、連結部材(連結基端部)の基端側から連結基端部内に圧入して、中軸先端部に連結基端部を締まり嵌めで嵌合(外嵌)させる方法がある。
【0005】
ところが、上述のように、連結部材の基端側から先端側に向けて、連結部材の連結基端部内に中軸先端部を圧入してゆくと、中軸先端部のうち径方向外側(連結基端部の内周面と接触する側)の部位(肉)が、連結基端部から軸線方向基端側に力を受けることにより、軸線方向基端側に移動すると共に、中軸先端部の径方向外側に皺状に張り出してくる(本願では、この現象を肉ズレと呼ぶ)ことがあった。中軸先端部の材質が、連結基端部の材質よりも硬度が低いからである。
【0006】
このため、圧入の途中で、肉ズレによって外側に張り出した中軸先端部の肉(中軸先端部の一部)が、連結基端部に対し基端側から当接してしまい、これによって、連結基端部内への中軸先端部の圧入(圧入方向への移動)が妨げられ、所定の圧入完了位置まで中軸を適切に圧入できなくなる虞があった。これにより、グロープラグの軸線方向寸法が、許容範囲内から外れてしまう(長くなり過ぎる)虞があった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、連結基端部内に中軸先端部を適切に圧入することができるグロープラグの製造方法、及び、連結基端部内に中軸先端部が適切に圧入されたグロープラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の主体金具と、上記軸線方向に延びる柱状をなし、上記主体金具の上記軸孔内に挿入された金属製の中軸と、通電によって発熱する発熱抵抗体を有するセラミックヒータと、上記中軸のうち上記軸線方向の先端側に位置する中軸先端部と上記ヒータのうち上記軸線方向の基端側に位置するヒータ基端部とを連結する金属製の連結部材であって、上記軸線方向基端側に位置して上記中軸先端部に外嵌される連結基端部、及び、上記軸線方向先端側に位置して上記ヒータ基端部に接続される連結先端部、を有する連結部材と、を備えるグロープラグの製造方法であって、上記中軸先端部を、上記連結基端部と締まり嵌めで嵌合する中軸嵌合部であって、上記連結基端部よりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部、及び、上記中軸先端部に凹設された中軸凹部であって、上記中軸嵌合部に対し上記軸線方向基端側に隣接する中軸凹部、を有する形態とし、上記中軸先端部を上記連結基端部内に圧入して、上記中軸嵌合部に上記連結基端部を締まり嵌めで外嵌させる圧入外嵌工程において、
上記中軸嵌合部のうち径方向外側の部位であって、上記圧入時に上記連結基端部から上記軸線方向基端側に力を受けることにより、上記軸線方向基端側に移動すると共に上記径方向外側に張り出してくる部位を、上記連結基端部の内周面によって上記中軸凹部内に押し込みつつ、上記中軸凹部を上記連結基端部内に挿入して、圧入完了位置に至るまで上記中軸先端部を上記連結基端部内に圧入するグロープラグの製造方法である。
【0009】
上述の製造方法では、中軸として、例えば、以下のような中軸先端部を有する中軸を用いる。具体的には、中軸先端部が、連結基端部(例えば、筒状の連結基端部)と締まり嵌めで嵌合する中軸嵌合部であって、連結基端部よりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部、及び、中軸先端部の全周にわたって凹設された(径方向内側に凹む形態で設けられた)環状の中軸凹部であって、中軸嵌合部に対し軸線方向基端側に隣接する中軸凹部、を有する。
【0010】
さらに、上述の製造方法は、連結部材の基端側から中軸先端部を連結基端部内に圧入して、中軸嵌合部に連結基端部を締まり嵌めで外嵌させる圧入外嵌工程を備える。この圧入外嵌工程において、中軸凹部を連結基端部内に挿入して、圧入完了位置に至るまで中軸先端部を連結基端部内に圧入する。すなわち、中軸先端部のうち、当該中軸先端部が圧入完了位置に達するまでに中軸凹部が連結基端部内に挿入される位置に、中軸凹部を設けて、この中軸先端部を連結基端部内に圧入する。
【0011】
換言すれば、上述の製造方法では、連結基端部の基端面が、少なくとも中軸凹部に達する圧入完了位置に至るまで(詳細には、連結基端部の基端面が、少なくとも、中軸凹部のうち軸線方向先端側に位置する先端側縁よりも軸線方向基端側に達する圧入完了位置に至るまで)、中軸先端部を連結基端部内に圧入する。すなわち、中軸先端部に対する連結基端部の基端面の圧入完了位置よりも軸線方向先端側に、中軸凹部の一部または全部が存在するように、中軸先端部に中軸凹部を設けて、この中軸先端部を連結基端部内に圧入する。
【0012】
このため、仮に、圧入の途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部の径方向外側の部位(肉)が、軸線方向基端側に移動すると共に、径方向外側に張り出してきたとしても、中軸凹部の先端側縁が連結基端部の基端面を越えて軸線方向先端側に進む(中軸凹部が連結基端部内に挿入される)ことにより、この張り出した肉を、連結基端部の内周面によって、中軸凹部内に押し込む(収容する)ことができる。このため、圧入の途中で、肉ズレの影響で、中軸先端部(中軸嵌合部)の圧入が妨げられるのを抑制することができる。従って、上述の製造方法によれば、連結基端部内に、中軸先端部(中軸嵌合部)を適切に圧入することができる。
【0013】
なお、「圧入完了位置」とは、中軸凹部が連結基端部内に挿入されて、中軸凹部の少なくとも一部が連結基端部内に配置される位置であって、予め定めておいた中軸の圧入完了位置をいう。従って、「圧入完了位置」は、中軸凹部の一部が連結基端部内に配置される位置に設定される場合もあるし、中軸凹部の全体が連結基端部内に配置される位置に設定される場合もある。
【0014】
また、中軸凹部は、中軸先端部のうち、中軸嵌合部に対し軸線方向基端側に隣接する部位である。この中軸凹部は、中軸先端部に、複数形成しても良い。中軸凹部を複数形成した場合、各々の中軸凹部において、その先端側縁が連結基端部の基端面を越えて軸線方向先端側に進む(各々の中軸凹部が連結基端部内に挿入される)ことで、肉ズレによって張り出した肉(詳細には、当該中軸凹部に対し先端側に隣接する中軸嵌合部の一部が肉ズレによって径方向外側に張り出したもの)を、連結基端部の内周面によって、中軸凹部内に押し込む(収容する)ことができる。
【0015】
さらに、上記のグロープラグの製造方法であって、前記中軸は、前記中軸凹部よりも前記軸線方向基端側に、前記連結基端部のうち上記軸線方向基端側の端面である基端面が当接可能な形態の当接部を有し、前記圧入外嵌工程は、上記中軸凹部が上記連結基端部内に挿入されて、上記連結基端部の上記基端面が上記中軸の上記当接部に当接する前記圧入完了位置に至るまで、前記中軸先端部を上記連結基端部内に圧入するグロープラグの製造方法とすると良い。
【0016】
上述の製造方法では、圧入外嵌工程において、連結基端部の基端面が中軸の当接部に当接するまで、中軸先端部を連結基端部内に圧入する。すなわち、圧入外嵌工程において、連結基端部の基端面が中軸の当接部に当接する位置を圧入完了位置として、中軸先端部を連結基端部内に圧入する。従来、このような圧入外嵌工程では、連結基端部の基端面と中軸の当接部との間に、肉ズレをして外側に張り出した中軸先端部の一部が挟まれて、連結基端部の基端面を中軸の当接部に当接させる(すなわち、圧入完了位置に到達させる)ことができないことがあった。
【0017】
これに対し、上述の製造方法では、中軸として、中軸凹部よりも軸線方向基端側に、連結基端部の基端面が当接可能な形態の当接部を有する中軸を用いる。換言すれば、中軸のうち当接部よりも軸線方向先端側の位置(すなわち、連結基端部内に挿入される位置)に、中軸凹部が形成された中軸を用いる。
【0018】
このため、圧入外嵌工程において、中軸の当接部が連結部材の基端面に当接するより前に、中軸凹部が、連結部材の基端面よりも軸線方向先端側に移動する(すなわち、連結基端部内に挿入される)。これにより、仮に、圧入の途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部の外側の部位(肉)が径方向外側に張り出してきたとしても、中軸凹部が連結基端部内に挿入されることにより、この張り出した肉を、連結基端部の内周面によって、中軸凹部内に押し込む(収容する)ことができる。従って、上述の製造方法によれば、連結基端部の内部に中軸先端部を圧入して、確実に、連結部材(連結基端部)の基端面を中軸の当接部に当接させることができる。
【0019】
本発明の他の態様は、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の主体金具と、上記軸線方向に延びる柱状をなし、上記主体金具の上記軸孔内に挿入された金属製の中軸と、通電によって発熱する発熱抵抗体を有するセラミックヒータと、上記中軸のうち上記軸線方向の先端側に位置する中軸先端部と上記ヒータのうち上記軸線方向の基端側に位置するヒータ基端部とを連結する金属製の連結部材であって、上記軸線方向基端側に位置して上記中軸先端部に外嵌される連結基端部、及び、上記軸線方向先端側に位置して上記ヒータ基端部に接続される連結先端部、を有する連結部材と、を備え、上記中軸先端部は、上記連結基端部が締まり嵌めで外嵌してなる中軸嵌合部であって、上記連結基端部よりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部、及び、上記中軸先端部に凹設された中軸凹部であって、上記中軸嵌合部に対し上記軸線方向基端側に隣接する中軸凹部、を有し、
上記連結基端部内に圧入された状態の上記中軸先端部のうち、上記中軸凹部は、上記中軸先端部に対する上記連結基端部の基端面の圧入完了位置よりも上記軸線方向先端側に、当該中軸凹部の一部または全部が存在してなり、当該中軸凹部内に、上記中軸嵌合部のうち径方向外側の部位であって上記軸線方向基端側に張り出した部位を収容しているグロープラグである。
また、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の主体金具と、上記軸線方向に延びる柱状をなし、上記主体金具の上記軸孔内に挿入された金属製の中軸と、通電によって発熱する発熱抵抗体を有するセラミックヒータと、上記中軸のうち上記軸線方向の先端側に位置する中軸先端部と上記ヒータのうち上記軸線方向の基端側に位置するヒータ基端部とを連結する金属製の連結部材であって、上記軸線方向基端側に位置して上記中軸先端部に外嵌される連結基端部、及び、上記軸線方向先端側に位置して上記ヒータ基端部に接続される連結先端部、を有する連結部材と、を備え、上記中軸先端部は、上記連結基端部が締まり嵌めで外嵌してなる中軸嵌合部であって、上記連結基端部よりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部、及び、上記中軸先端部に凹設された中軸凹部であって、上記中軸嵌合部に対し上記軸線方向基端側に隣接する中軸凹部、を有し、上記中軸凹部を上記連結基端部内に挿入して、圧入完了位置に至るまで上記中軸先端部を上記連結基端部内に圧入してなるグロープラグが好ましい。
【0020】
上述のグロープラグは、中軸として、例えば、以下のような中軸先端部を有する中軸を用いる。具体的には、中軸先端部が、連結基端部(例えば、筒状の連結基端部)と締まり嵌めで嵌合する中軸嵌合部であって、連結基端部よりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部、及び、中軸先端部の全周にわたって凹設された(径方向内側に凹む形態で設けられた)環状の中軸凹部であって、中軸嵌合部に対し軸線方向基端側に隣接する中軸凹部、を有する。
【0021】
しかも、中軸凹部を連結基端部内に挿入して、圧入完了位置に至るまで中軸先端部が連結基端部内に圧入されている。すなわち、中軸先端部のうち、当該中軸先端部が圧入完了位置に達するまでに中軸凹部が連結基端部内に挿入される位置に、中軸凹部が設けられており、この中軸先端部が連結基端部内に圧入されている。
【0022】
換言すれば、連結基端部の基端面が、少なくとも中軸凹部に達する圧入完了位置に至るまで、中軸先端部は、連結基端部内に圧入されている。換言すれば、中軸先端部に対する連結基端部の基端面の圧入完了位置よりも軸線方向先端側に、中軸凹部の一部または全部が存在するように、中軸先端部に中軸凹部が設けられており、この中軸先端部が連結基端部内に圧入されている。
【0023】
従って、前述のように、中軸嵌合部を連結基端部の内部に圧入している途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部の外側の部位(肉)が、軸線方向基端側に移動して径方向外側に張り出してきたとしても、中軸凹部の先端側縁が連結部材の基端面を越えて先端側に進む(中軸凹部が連結基端部内に挿入される)ことで、この肉は、連結基端部の内周面によって、中軸凹部内に押し込まれる(収容される)。このため、圧入の途中で、肉ズレの影響で、中軸嵌合部の圧入が妨げられることがない。従って、上述のグロープラグは、連結部材(連結基端部)の内部に、中軸嵌合部が適切に圧入されたグロープラグとなる。
【0024】
さらに、上記のグロープラグであって、前記中軸は、前記中軸凹部よりも前記軸線方向基端側に、前記連結基端部のうち上記軸線方向基端側の端面である基端面が当接可能な形態の当接部を有し、
上記連結基端部の上記基端面は、上記中軸の上記当接部に当接しているグロープラグとすると良い。
また、前記のグロープラグであって、前記中軸は、前記中軸凹部よりも前記軸線方向基端側に、前記連結基端部のうち上記軸線方向基端側の端面である基端面が当接可能な形態の当接部を有し、上記中軸凹部が上記連結基端部内に挿入されて、上記連結基端部の上記基端面が上記中軸の上記当接部に当接する前記圧入完了位置に至るまで、前記中軸先端部を上記連結基端部内に圧入してなるグロープラグとすると良い。
【0025】
上述のグロープラグは、中軸として、中軸凹部よりも軸線方向基端側に、連結基端部の基端面が当接可能な形態の当接部を有する中軸を用いている。換言すれば、中軸のうち当接部よりも軸線方向先端側の部位(すなわち、連結基端部内に挿入される部位)に、中軸凹部が形成された中軸を用いている。
【0026】
このため、前述のように、圧入の途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部の外側の部位(肉)が径方向外側に張り出してきたとしても、連結部材の基端面が中軸の当接部に当接する前(すなわち、圧入完了位置に達する前)に、この張り出し肉は、連結基端部の内周面によって、中軸凹部内に押し込まれる(収容される)。従って、上述のグロープラグは、連結部材の基端面が中軸の当接部に当接したグロープラグとなる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、実施形態にかかるグロープラグ100について説明する。
図1は、グロープラグ100の縦断面図である。グロープラグ100は、
図1に示すように、例えば、直噴式ディーゼルエンジン150の取付孔155に取り付けられ、エンジン150の始動時の点火を補助する熱源として利用される。
【0029】
グロープラグ100は、軸線方向(軸線AXに沿う方向、
図1において上下方向)に延びる軸孔43を有する主体金具40、主体金具40の軸孔43内に挿入された中軸30、セラミックヒータ20、ヒータ保持部材80、及び、中軸先端部34とヒータ基端部23とを連結する連結部材75を備えている。
なお、中軸先端部34は、中軸30のうち軸線方向の先端側(
図1において下側)に位置する部位である。また、ヒータ基端部23は、セラミックヒータ20のうち軸線方向の基端側(
図1において上側)に位置する部位である。
【0030】
このうち、セラミックヒータ20は、丸棒状をなし、基体21と、基体21の内部に埋設された発熱素子24とを有する(
図1参照)。基体21は、絶縁性セラミックからなり、その先端部(ヒータ先端部22)が半球状に曲面加工されている。発熱素子24は、導電性セラミックからなり、略U字状をなしている。
【0031】
発熱素子24は、ヒータ先端部22に配置された発熱抵抗体27と、発熱抵抗体27の端部にそれぞれ接続されたリード部28,29とからなる。発熱抵抗体27は、ヒータ先端部22の曲面に適合する略U字状をなしている。リード部28,29は、発熱抵抗体27の端部から、セラミックヒータ20の基端部23に向けて、軸線AXに沿って略平行に延設されている。
【0032】
発熱抵抗体27は、その断面積がリード部28,29の断面積よりも小さく成形されており、通電時、主に発熱抵抗体27において発熱が行われる。グロープラグ100がエンジン150の取付孔155に取り付けられた際には、この発熱抵抗体27が配置されているヒータ先端部22が、燃焼室160内に露出される(
図1参照)。また、セラミックヒータ20の中央より基端側の外周面には、リード部28,29のそれぞれから径方向外側に突出する形態の電極取出部25,26が、軸線方向に互いにずれた位置で露出している。
【0033】
ヒータ保持部材80は、軸線方向に延びる円筒状の金属部材からなり、自身の筒孔84内にてセラミックヒータ20の胴部分を径方向に保持する。このヒータ保持部材80は、ヒータ先端部22及びヒータ基端部23をそれぞれ、筒孔84の両端から露出させている(
図1参照)。セラミックヒータ20の電極取出部25,26のうち先端側に形成された電極取出部25は、このヒータ保持部材80の筒孔84内周面に接触しており、電極取出部25とヒータ保持部材80とが電気的に接続されている。
【0034】
ヒータ保持部材80は、円筒状の胴部81、これよりも基端側に位置する肉厚の鍔部82、胴部81と鍔部82との間に位置するテーパ状の係止部85、及び、鍔部82の基端に隣接する金具嵌合部83を有する(
図1及び
図3参照)。係止部85は、グロープラグ100がエンジン150の取付孔155に取り付けられた際に、その取付孔155内に設けられている段部156に係止し、取付孔155を通じた燃焼室160内からのガス漏れを防止する(
図1参照)。金具嵌合部83は、後述する主体金具40との接合を行うための円筒状の部位であり、主体金具40の先端部41を外嵌めにて圧入により嵌合させる。
【0035】
連結部材75は、金属製で円筒状をなしている(
図1及び
図3参照)。この連結部材75は、軸線方向の基端側に位置して中軸先端部34に外嵌される円筒状の連結基端部75c、及び、軸線方向の先端側に位置してヒータ基端部23に接続される連結先端部75bを有する。詳細には、連結先端部75bは、ヒータ保持部材80の金具嵌合部83から基端側に露出したヒータ基端部23に外嵌されている。
【0036】
連結部材75の内周面には、セラミックヒータ20の電極取出部26が接触している。これにより、電極取出部26と連結部材75とが電気的に接続されている。また、主体金具40の先端部41が、ヒータ保持部材80の金具嵌合部83に接合している。これにより、主体金具40とヒータ保持部材80とが電気的に接続される。なお、セラミックヒータ20のヒータ基端部23および連結部材75は、主体金具40内に配置されるが、セラミックヒータ20と主体金具40とがそれぞれヒータ保持部材80に位置決めされ、主体金具40と連結部材75とが非接触の状態で維持されるので、両者は電気的に絶縁される。
【0037】
主体金具40は、軸線方向に貫通する軸孔43を有する筒状の金属部材である(
図1参照)。この主体金具40は、円筒状の中胴部44を有している。中胴部44の基端側には、外周面45にねじ山が形成されたねじ部42が設けられている。ねじ部42は、グロープラグ100をエンジン150の取付孔155に取り付ける際に、その取付孔155に設けられている雌ねじ157と螺合して、グロープラグ100の固定を行うものである。
【0038】
また、中胴部44(ねじ部42)よりも基端側には、エンジン150へのグロープラグ100の取り付けの際に使用される工具が係合する工具係合部46が形成されている。工具係合部46は、断面六角形状をなしている。軸孔43は、主体金具40の先端から基端側に向かって円筒状に延び、工具係合部46内で拡径され、主体金具40の基端側の開口に繋がっている。
【0039】
また、主体金具40の先端部41は、ヒータ保持部材80の金具嵌合部83に圧入により外嵌している。主体金具40の先端部41の内周は、金具嵌合部83の外周に密着している。主体金具40の先端部41と金具嵌合部83との嵌合部は、その全周にわたってレーザ溶接されている。これにより、主体金具40とヒータ保持部材80とが一体に接合されている。
【0040】
中軸30は、金属製で、軸線方向に延びる柱状をなし、主体金具40の軸孔43内に挿入されている(
図1参照)。この中軸30は、円柱状の先端部(中軸先端部34)と、中軸先端部34に対し軸線方向基端側に隣接する部位であって中軸先端部34よりも径大の径大部31と、最も基端側に位置する基端部(中軸基端部32)とを有している。このうち、径大部31は、中軸先端部34に外嵌された連結部材75の基端面75dが当接する当接部31d(軸線方向先端側を向く円環状の当接面を有する部位、
図5参照)を有している。
【0041】
本実施形態では、中軸先端部34に、連結部材75の連結基端部75cが外嵌されることで、セラミックヒータ20と中軸30とが連結部材75を介して軸線方向に一体に連結されている。これにより、中軸30とセラミックヒータ20の電極取出部26とが、連結部材75を通じて電気的に接続される。なお、連結部材75の基端面75dは、中軸30の当接部31dに当接している。
【0042】
また、本実施形態では、中軸30は、連結部材75よりも硬度が低い金属からなる。具体的には、中軸30は、SUS430からなり、連結部材75は、SUS410からなる。従って、中軸先端部34は、連結基端部75cよりも硬度が低くなっている。
【0043】
ところで、本実施形態では、中軸先端部34を、連結部材75の連結基端部75c内に圧入して、中軸先端部34(詳細には、後述する中軸嵌合部34b)に連結基端部75cを締まり嵌めで外嵌させている。
【0044】
従来、
図14〜
図15に示すように、連結部材75の連結基端部75c内に中軸先端部434を圧入してゆくと、中軸先端部434のうち径方向外側(連結基端部75cの内周面75fと接触する側)の部位(肉)が、連結基端部75cから軸線方向基端側(
図15において上側)に力を受けることにより、軸線方向基端側に移動すると共に、中軸先端部434の径方向外側に皺状に張り出してくる(本願では、この現象を肉ズレと呼ぶ)ことがあった。中軸先端部434の材質が、連結基端部75cの材質よりも硬度が低いからである。
【0045】
このため、圧入の途中で、肉ズレによって外側に張り出した中軸先端部434の肉(張り出し肉434gという)が、連結基端部75cに対し基端側から当接してしまい、これによって、連結基端部75c内への中軸先端部434の圧入(圧入方向への移動)が妨げられ、所定の圧入完了位置まで中軸430を適切に圧入できなくなることがあった。詳細には、連結基端部75cの基端面75dと中軸430の当接部431dとの間に、張り出し肉434gが挟まれて、連結基端部75cの基端面75dを中軸430の当接部431dに当接させることができないことがあった。これにより、グロープラグ100の軸線方向寸法が、許容範囲内から外れてしまう(長くなり過ぎる)虞があった。
【0046】
これに対し、本実施形態では、
図5に示すように、中軸先端部34は、連結基端部75cが締まり嵌めで外嵌する中軸嵌合部34bであって連結基端部75cよりも硬度が低い材質からなる中軸嵌合部34b、及び、中軸先端部34の全周にわたって凹設された環状の中軸凹部34cであって中軸嵌合部34bに対し軸線方向基端側(
図5において上側)に隣接する中軸凹部34cを有している。
【0047】
このため、
図6に示すように、圧入の途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部34bの径方向外側の部位(肉)が、軸線方向基端側(
図6において上側)に移動すると共に、径方向外側に張り出してきたとしても、
図7に示すように、中軸凹部34cの先端側縁34dが連結基端部75cの基端面75dを越えて軸線方向先端側(
図7において上側)に進む(中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入される)ことにより、この張り出し肉34gを、連結基端部75cの内周面75fによって、中軸凹部34c内に押し込む(収容する)ことができる。
【0048】
このため、圧入の途中で、肉ズレの影響で、中軸先端部34の圧入が妨げられるのを抑制することができる。従って、
図8に示すように、中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入される圧入完了位置(
図8に示す位置、連結部材75の基端面75dが中軸30の当接部31dに当接する位置)に至るまで、中軸先端部34を連結基端部75c内に圧入することができる。
【0049】
従って、本実施形態のグロープラグ100は、連結部材75(連結基端部75c)の内部に、中軸先端部34(中軸嵌合部34b)が適切に圧入されたグロープラグとなる。具体的には、
図8に示すように、本実施形態のグロープラグ100は、連結部材75の基端面75dが中軸30の当接部31dに当接したグロープラグとなる。詳細には、本実施形態のグロープラグ100は、中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入されて、連結基端部75cの基端面75dが中軸30の当接部31dに当接する圧入完了位置に至るまで、中軸先端部34が連結基端部75c内に圧入されたグロープラグとなる。
【0050】
また、中軸30(当接部31d)と連結部材75(連結基端部75c)との当接部は、その全周にわたってレーザ溶接されている(
図1及び
図9参照)。これにより、中軸30と連結部材75とが一体となっている。また、前述したように、セラミックヒータ20と主体金具40とがそれぞれヒータ保持部材80に位置決めされるので、中軸30と主体金具40とは、主体金具40の軸孔43内で非接触の状態で維持され、電気的に絶縁される。
【0051】
中軸30の基端部(中軸基端部32)は、その一部が主体金具40の基端から基端側へ突出している(
図1参照)。この基端部32には、Oリング70と、挿通孔を有する円筒状で絶縁性の支持リング60とが嵌め込まれている。Oリング70は、例えば、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等、絶縁性を有する弾性部材からなり、環状に形成されている。支持リング60は、主体金具40の軸孔43の拡径された部位に押し込まれるように配置され、自身に挿通された中軸30の位置決めと、中軸30と主体金具40との間の絶縁を担っている。
【0052】
また、Oリング70は、支持リング60の先端面に押圧されて、主体金具40の軸孔43の内周面と中軸基端部32の外周面とに密着し、主体金具40の内部を封止している。 また、中軸基端部32のうち支持リング60の基端から基端側に突出する部分には、端子金具50が嵌合している。グロープラグ100がエンジン150に取り付けられた際に、この端子金具50には、図示しないプラグキャップが嵌められ、外部回路から電力が供給される。
【0053】
次に、本実施形態にかかるグロープラグの製造方法について説明する。
まず、
図2に示すように、ヒータ形成工程において、セラミックヒータ20を作製する。具体的には、まず、導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料とした射出成形により、セラミックヒータ20の発熱素子24の原形となる素子成形体351を形成する。
【0054】
一方、絶縁性セラミック粉末を原料に金型プレス成形を行って、基体21の原形となる基体成形体352を形成する。詳細には、素子成形体351が収容される凹部を備えた2分割の成形体として、基体成形体352を形成する。
次いで、基体成形体352,352の凹部内に素子成形体351を収容しつつ、基体成形体352,352を重ね合わせ、プレス圧縮を行う。その後、脱バインダ処理、ホットプレス等の焼成工程を経て、その外周面を、先端が半球状の棒状に研磨して整形することで、セラミックヒータ20を形成する。
【0055】
次に、
図3に示すように、ヒータ圧入工程において、連結部材75内に、セラミックヒータ20を、その先端部(ヒータ先端部22)側から圧入し、ヒータ基端部23を、連結部材75の連結先端部75bに嵌合させる(
図1参照)。これにより、セラミックヒータ20の電極取出部26と連結部材75とを電気的に接続する。引き続いて、ヒータ保持部材80内に、セラミックヒータ20を、その先端部(ヒータ先端部22)側から圧入して嵌合させる。これにより、セラミックヒータ20の電極取出部25とヒータ保持部材80とを電気的に接続する(
図1参照)。なお、ヒータ圧入工程において、セラミックヒータ20とヒータ保持部材80と連結部材75とを組み付けて一体としたものを、ヒータ組立部材350という(
図4参照)。
【0056】
次に、
図4及び
図5に示すように、中軸嵌合部34b及び中軸凹部34cを有する中軸先端部34を備える中軸30を用意し、圧入外嵌工程において、中軸30の中軸先端部34を、ヒータ一体部材350のうち連結部材75の連結基端部75c内に圧入して、中軸先端部34の中軸嵌合部34bに、連結基端部75cを締まり嵌めで外嵌させる。より具体的には、
図8に示すように、中軸先端部34の中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入される圧入完了位置に至るまで、中軸先端部34を連結基端部75c内に圧入する。より詳細には、連結部材75の基端面75dが中軸30の当接部31dに当接する位置(この位置が本実施形態の圧入完了位置)に至るまで、中軸先端部34を連結基端部75c内に圧入する。
【0057】
ところで、本実施形態の中軸先端部34には、
図5に示すように、中軸嵌合部34bに対し軸線方向基端側(
図5において上側)に隣接する位置に、中軸先端部34の全周にわたって凹設された環状の中軸凹部34cを設けている。
【0058】
このため、
図6に示すように、圧入の途中で、肉ズレによって、中軸嵌合部34bの径方向外側の部位(肉)が、軸線方向基端側(
図6において上側)に移動すると共に、径方向外側に張り出してきたとしても、
図7に示すように、中軸凹部34cの先端側縁34dが連結基端部75cの基端面75dを越えて軸線方向先端側(
図7において上側)に進む(中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入される)ことにより、この張り出し肉34gを、連結基端部75cの内周面75fによって、中軸凹部34c内に押し込む(収容する)ことができる。
【0059】
このため、圧入外嵌工程の途中で、肉ズレの影響で、中軸先端部34の圧入が妨げられるのを抑制することができる。従って、
図8に示すように、中軸凹部34cが連結基端部75c内に挿入される圧入完了位置(
図8に示す位置、連結部材75の基端面75dが中軸30の当接部31dに当接する位置)に至るまで、中軸先端部34を連結基端部75c内に圧入することができる。
【0060】
従って、本実施形態の製造方法によれば、連結基端部75c内に、中軸先端部34(中軸嵌合部34b)を適切に圧入することができる。これにより、連結部材75(連結基端部75c)の基端面75dを、中軸30の当接部31dに、確実に当接させることができる。
【0061】
次に、
図9に示すように、中軸接合工程において、中軸30(当接部31d)と連結部材75(連結基端部75c)との当接部を、その全周にわたってレーザ溶接し、中軸30とヒータ一体部材350とを接合して一体化する。具体的には、中軸30(当接部31d)と連結部材75(連結基端部75c)とが当接する部位の外周の全体にわたってレーザービームLBを照射して、中軸30とヒータ一体部材350とを溶接により一体化する。なお、中軸30とヒータ一体部材350とを一体化したものを、中軸一体部材360という。
【0062】
次いで、
図10に示すように、金具嵌合工程において、主体金具40の軸孔43内に、中軸一体部材360の中軸30を、中軸基端部32側から挿入してゆく。そして、主体金具40の先端部41内に、ヒータ保持部材80の金具嵌合部83を圧入し、主体金具40の先端部41と金具嵌合部83とを嵌合させる。
【0063】
その後、
図11に示すように、金具接合工程において、主体金具40の先端部41とヒータ保持部材80との当接部を、その全周にわたってレーザ溶接し、主体金具40と中軸一体部材360とを一体化する。具体的には、主体金具40の先端部41の外周の全体にわたってレーザービームLBを照射して、主体金具40と中軸一体部材360を溶接により一体化する。
【0064】
次に、
図12に示すように、端子組付工程において、中軸基端部32に、Oリング70および支持リング60を外嵌し、主体金具40の軸孔43のうち拡径された部位の内部に収容する。さらに中軸基端部32に端子金具50を嵌め込み、この端子金具50で支持リング60を先端側に向けて押圧する。この状態で、端子金具50の胴部分52の外周を加締めることで、端子金具50を中軸30に固定する。このような工程を経て、グロープラグ100が完成する。
【0065】
(変形形態)
次に、本発明の変形形態について説明する。本変形形態は、実施形態と比較して、中軸先端部の形態が異なり、その他については同様である。
【0066】
具体的には、
図13に示すように、変形形態にかかる中軸230の中軸先端部234は、実施形態の中軸先端部34(
図5参照)と異なり、2つの中軸凹部を有している。詳細には、中軸先端部234は、第1中軸嵌合部234b1と、第1中軸嵌合部234b1に対し軸線方向基端側(
図13おいて上側)に隣接する第1中軸凹部234c1と、第1中軸凹部234c1に対し軸線方向基端側に隣接する第2中軸嵌合部234b2と、第2中軸嵌合部234b2に対し軸線方向基端側に隣接する第2中軸凹部234c2とを有している。
【0067】
第1中軸嵌合部234b1及び第2中軸嵌合部234b2は、いずれも、連結基端部75cが締まり嵌めで外嵌する部位であって連結基端部75cよりも硬度が低い材質からなる。また、第1中軸凹部234c1及び第2中軸凹部234c2は、いずれも、中軸先端部34の全周にわたって、第1中軸嵌合部234b1及び第2中軸嵌合部234b2の外周面よりも径方向内側に凹設された、環状の凹部である。
【0068】
このような形態の中軸先端部234を、連結基端部75c内に圧入してゆくと、まず、第1中軸嵌合部234b1において肉ズレが生じ、これによって第1中軸嵌合部234b1の径方向外側に肉が張り出すことがある。しかしながら、その後、第1中軸凹部234c1の先端側縁234d1が連結基端部75cの基端面75dを越えて軸線方向先端側に進む(第1中軸凹部234c1が連結基端部75c内に挿入される)ことで、この張り出し肉を、連結基端部75cの内周面75fによって、第1中軸凹部234c1内に押し込む(収容する)ことができる。
【0069】
引き続き、中軸先端部234を連結基端部75c内に圧入してゆくと、今度は、第2中軸嵌合部234b2において肉ズレが生じ、これによって第2中軸嵌合部234b2の径方向外側に肉が張り出すことがある。しかしながら、その後、第2中軸凹部234c2の先端側縁234d2が連結基端部75cの基端面75dを越えて軸線方向先端側に進む(第2中軸凹部234c2が連結基端部75c内に挿入される)ことで、この張り出し肉を、連結基端部75cの内周面75fによって、第2中軸凹部234c2内に押し込む(収容する)ことができる。
【0070】
このようにして、本変形形態でも、連結基端部75c内に、中軸先端部234を適切に圧入することができる。これにより、連結部材75(連結基端部75c)の基端面75dを、中軸230の当接部231dに、確実に当接させることができる。
【0071】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0072】
例えば、実施形態では、連結部材75(連結基端部75c)の基端面75dが、中軸30の当接部31dに当接するまで、連結基端部75c内に中軸先端部34を圧入するようにした。すなわち、圧入完了位置を、連結基端部の基端面が中軸の当接部に当接する位置とした。
【0073】
しかしながら、本願発明は、「圧入完了位置」を、中軸凹部が連結基端部内に挿入される位置に設定した全ての場合に適用される。すなわち、「圧入完了位置」を、中軸凹部の少なくとも一部が連結基端部内に配置される位置に設定して、連結基端部内に中軸先端部を圧入する全てのケースに適用される。
【0074】
具体的には、例えば、
図7に示すように、中軸凹部34cの一部が連結基端部75c内に配置される位置を、「圧入完了位置」に設定して、連結部材75(連結基端部75c)の基端面75dが、中軸30の当接部31dに当接する位置よりも手前で、中軸先端部34の圧入を完了するようにしても良い。このような場合でも、
図7に示すように、張り出し肉34gを、中軸凹部34c内に押し込む(収容する)ことができるので、張り出し肉34gにより中軸先端部34の圧入を妨げられることなく、中軸先端部34を連結基端部75c内に適切に圧入することができる。