特許第5878818号(P5878818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5878818-車両用計器板装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878818
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】車両用計器板装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20160223BHJP
   G01D 11/28 20060101ALI20160223BHJP
   G01D 7/00 20060101ALI20160223BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   B60R16/02 645Z
   G01D11/28 Z
   G01D7/00 K
   B60K35/00 Z
   B60R16/02 640Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-101734(P2012-101734)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-226984(P2013-226984A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】近藤 員章
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−164843(JP,A)
【文献】 特開2004−134580(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0182354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 35/00
G01D 7/00
G01D 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示内容を制御可能な光透過型表示器と、前記光透過型表示器を背面側から照明する第1の照明部と、前記第1の照明部とは異なる箇所を照明する第2の照明部とを有する車両用計器板装置であって、
前記第1の照明部及び第2の照明部の照明の明るさに関連するパラメータを調整するパラメータ調整部と、
第1の電源ラインから供給される電源電力を利用し、少なくとも前記第2の照明部を前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って制御する第1の制御部と、
前記第1の電源ラインとは異なる電圧が現れる第2の電源ラインから供給される電源電力を利用し、少なくとも前記光透過型表示器の表示内容を制御する第2の制御部と、
前記第1の制御部から出力される調光制御信号に従って、前記第1の照明部の照明の明るさを調整する第1のスイッチング回路と、
前記第2の制御部から出力される照明オンオフ信号に従って、前記第1の照明部の照明のオンオフを切り替える第2のスイッチング回路と
を備えることを特徴とする車両用計器板装置。
【請求項2】
前記第1の制御部は、前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って、前記第1の照明部の明るさを制御するための第1の調光制御信号と、前記第2の照明部の明るさを制御するための第2の調光制御信号とを生成し、
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の制御部から出力される前記第1の調光制御信号を入力して前記第1の照明部の照明の明るさを調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用計器板装置。
【請求項3】
前記第2のスイッチング回路は、前記第1のスイッチング回路の入力に接続されたスイッチング素子を有し、前記照明オンオフ信号に従って前記スイッチング素子のオンオフ状態を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用計器板装置。
【請求項4】
前記第1の制御部および前記第2の制御部は、互いに非同期で動作する独立した2つのマイクロコンピュータにより構成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用計器板装置。
【請求項5】
前記光透過型表示器は、TFT素子を内蔵した液晶表示器である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用計器板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用計器板装置に関し、特に複数の照明光源を有する車両用計器板装置の制御のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載される一般的な車両用計器板装置は、車両の走行速度を表示する計器や、エンジン回転速度を表示する計器や、車両各部の状態や異常の有無等を表示する各種の情報表示部を備えている。
【0003】
車両用計器板装置に関する従来技術としては、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に開示されているように、この種の車両用計器板装置は、表示器を備え、更に照明用の複数の光源を備えているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用計器板装置の内部の制御回路においては、一般的な電圧である+5Vの電源電圧を利用している場合が多い。
【0006】
一方、文字、図形、画像などの様々な情報を表示可能にするために、液晶表示パネルを車両用計器板装置に搭載する場合も多い。更に、高品質の表示を可能にするためにTFT(Thin Film Transistor)液晶表示パネルを採用する場合もある。TFT液晶表示パネルにおいては、画面を構成する微小表示要素のドットごとにトランジスタが表示を制御している。このため、均一でムラのない表示が可能である。また、表示の応答速度が速く、コントラストも高くなる。
【0007】
しかし、TFT液晶表示パネルの表示内容を制御する場合には、+3.3Vの電源電圧を利用しなければならない場合が多い。従って、TFT表示パネルを採用する場合には、車両用計器板装置の制御回路の中に、+5Vの電源電圧を利用する制御系と、+3.3Vの電源電圧を利用する制御系とが混在することになる。
【0008】
上記のような場合には、+5Vの電源電圧を利用する制御系と、+3.3Vの電源電圧を利用する制御系とをそれぞれ独立した2つマイクロコンピュータで制御することが予想される。
【0009】
一方、車両用計器板装置においては、ユーザ(運転者)の好みに合わせて、あるいは周囲環境の明るさに合わせて、照明の明るさを調整する必要がある。従って、ユーザが操作可能なレオスタット(可変抵抗器)を搭載し、レオスタットの調整状態を車両用計器板装置内の照明の明るさ調整に反映するように制御している場合が多い。
【0010】
ところが、車両用計器板装置が複数の独立したマイクロコンピュータを搭載している場合には、次のような問題が生じる可能性がある。
【0011】
(1) 第1のマイクロコンピュータを用いてTFT液晶表示パネルの表示内容を制御すると共に、そのバックライトの明るさを調整し、第2のマイクロコンピュータが計器板全体の照明の明るさを調整する場合は次のようになる。
【0012】
第1のマイクロコンピュータの動作と第2のマイクロコンピュータの動作とが独立しているので、TFT液晶表示パネルのバックライトの明るさ調整と、計器板全体の明るさ調整とが互いに独立して行われる。
【0013】
従って、ユーザが明るさ調整のために前記レオスタットを調整する時には、バックライトの明るさの変化と、計器板全体の照明の明るさとが互いにずれたタイミングで変化したり、明るさの変化量に違いが生じる可能性がある。
【0014】
特に、前記レオスタットの出力する信号のアナログレベルを各々のマイクロコンピュータがA/D変換して検出する場合には、電源電圧の違いに合わせてそれぞれ電圧の異なる信号を各々のマイクロコンピュータに印加する必要がある。そのため、前記レオスタットの同一の調整量の変化に対して、2つのマイクロコンピュータの制御量に違いが生じる可能性がある。その結果、ユーザに見える照明の明るさにちらつきが生じ、ユーザが違和感を感じることになる。
【0015】
(2) 第1のマイクロコンピュータを用いてTFT液晶表示パネルの表示内容を制御し、第2のマイクロコンピュータを用いて前記TFT液晶表示パネルのバックライトの明るさと、計器板全体の照明の明るさとを調整する場合は次のようになる。
【0016】
前記レオスタットの調整に伴って、バックライトの明るさと計器板全体の明るさとを第2のマイクロコンピュータが同じタイミングで同じ量だけ変更することができる。しかしながら、この場合は第1のマイクロコンピュータがバックライトの明るさを制御できないので、TFT液晶表示パネルの表示内容を変更する時に、同時に、あるいは適切なタイミングでバックライトの明るさを切り替えることができない。
【0017】
そのため、例えばTFT液晶表示パネルの表示内容が準備されていない状態で、先にバックライトだけが点灯状態になり、画面全体に渡って白色で明るく照明された後、表示内容が変更される可能性がある。従って、ユーザから見ると画面にちらつきが見える状態になる。
【0018】
なお、複数の独立したマイクロコンピュータを用いる場合には、それらがお互いに通信を行うことにより同じ制御情報を共有し、制御状態を同期させることも可能である。しかし、通信により制御情報の受け渡しを行う際にある程度の時間遅延が発生するので、複数のマイクロコンピュータの制御状態を完全に同期させることはできない。つまり、複数のマイクロコンピュータの間で制御タイミングにずれが生じるため、上述のような照明のちらつきが生じるのを防ぐことはできない。
【0019】
また、上述のような照明のちらつきを抑制するには、処理速度の速い高性能のマイクロコンピュータを採用したり、専用の処理回路を追加しなければならず、装置のコストが大幅に上昇するのは避けられなかった。
【0020】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶表示パネル等の画面に表示する情報と、複数系統の照明部とを独立した複数の制御部で制御する場合に、大きなコストをかけることなく、照明の不自然さやちらつきが生じるのを抑制することが可能な車両用計器板装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用計器板装置は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 表示内容を制御可能な光透過型表示器と、前記光透過型表示器を背面側から照明する第1の照明部と、前記第1の照明部とは異なる箇所を照明する第2の照明部とを有する車両用計器板装置であって、
前記第1の照明部及び第2の照明部の照明の明るさに関連するパラメータを調整するパラメータ調整部と、
第1の電源ラインから供給される電源電力を利用し、少なくとも前記第2の照明部を前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って制御する第1の制御部と、
前記第1の電源ラインとは異なる電圧が現れる第2の電源ラインから供給される電源電力を利用し、少なくとも前記光透過型表示器の表示内容を制御する第2の制御部と、
前記第1の制御部から出力される調光制御信号に従って、前記第1の照明部の照明の明るさを調整する第1のスイッチング回路と、
前記第2の制御部から出力される照明オンオフ信号に従って、前記第1の照明部の照明のオンオフを切り替える第2のスイッチング回路と
を備えること。
(2) 上記(1)の構成の車両用計器板装置であって、
前記第1の制御部は、前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って、前記第1の照明部の明るさを制御するための第1の調光制御信号と、前記第2の照明部の明るさを制御するための第2の調光制御信号とを生成し、
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の制御部から出力される前記第1の調光制御信号を入力して前記第1の照明部の照明の明るさを調整する
こと。
(3) 上記(2)の構成の車両用計器板装置であって、
前記第2のスイッチング回路は、前記第1のスイッチング回路の入力に接続されたスイッチング素子を有し、前記照明オンオフ信号に従って前記スイッチング素子のオンオフ状態を切り替える
こと。
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つの構成の車両用計器板装置であって、
前記第1の制御部および前記第2の制御部は、互いに非同期で動作する独立した2つのマイクロコンピュータにより構成される
こと。
(5) 上記(1)の構成の車両用計器板装置であって、
前記光透過型表示器は、TFT素子を内蔵した液晶表示器である
こと。
【0022】
上記(1)の構成の車両用計器板装置によれば、前記第1の照明部および前記第2の照明部の照明の明るさを、前記パラメータ調整部のパラメータに従って、第1の制御部が同じタイミングで制御できる。また、前記光透過型表示器の表示状態に直接影響を与える前記第1の照明部の照明のオンオフを、前記第2の制御部が前記光透過型表示器の表示内容の変化に同期して制御できる。従って、ユーザから見える表示の照明状況にちらつきや不自然な明るさの変化が生じるのを抑制できる。
上記(2)の構成の車両用計器板装置によれば、前記第1の調光制御信号および第2の調光制御信号をそれぞれ生成するので、前記第1の照明部の明るさおよび前記第2の照明部の明るさを高精度で制御できる。また、前記第2の制御部から出力される前記照明オンオフ信号が、前記第2の照明部の明るさに影響を与えることもなくなる。
上記(3)の構成の車両用計器板装置によれば、簡単な回路を追加するだけで、前記第1の照明部の照明のオンオフを制御できる。
上記(4)の構成の車両用計器板装置によれば、前記パラメータ調整部のパラメータに応じた照明光量の制御と、前記光透過型表示器の表示内容の制御とを互いに独立した制御系で実行することができる。
上記(5)の構成の車両用計器板装置によれば、画面を構成する微小表示要素のドットごとにトランジスタが表示を制御するので、均一でムラのない表示が可能になる。また、表示の応答速度が速く、コントラストも高くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の車両用計器板装置によれば、液晶表示パネル等の画面に表示する情報と、複数系統の照明部とを独立した複数の制御部で制御する場合に、大きなコストをかけることなく、照明の不自然さやちらつきが生じるのを抑制することが可能である。
【0024】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態における車両用計器板装置の主要な回路を示す電気回路図である。
図2図2は、図1に示した回路の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<装置の構成>
<概要の説明>
本実施形態における車両用計器板装置の主要な回路を図1に示す。
【0027】
本実施形態で想定している車両用計器板装置は、自動車に搭載される一般的な計器板と同様に、車両の状態を表す速度計、回転計のような計器を備え、更に車両の走行距離、変速機のシフト位置、車両各部の異常の有無など様々な情報を表示することができる。
【0028】
図1に示した回路に含まれている盤面照明部10は、車両用計器板装置の盤面全体を照明するための光源である。また、図1に示した回路に含まれている液晶表示パネル20は、数値、文字、図形、画像などを表示する機能を有し、車両の走行距離、変速機のシフト位置、車両各部の異常の有無などの情報を必要に応じて表示するために利用することができる。
【0029】
液晶表示パネル20は、このパネルを透過する光の透過具合の違いによって可視情報を表示する。従って、鮮明な可視情報を表示するためには、パネルの背面側から照明する必要がある。図1に示した回路に含まれている液晶用バックライト30は、液晶表示パネル20をこのパネルの背面側から照明するための光源である。
【0030】
一方、車両用計器板装置が表示する表示の明るさについては、昼夜の違いに応じて切り替えたり、ユーザ(運転者)の好みに応じて変更する必要がある。図1に示した照明調整部60は、ユーザが操作可能な位置に配置されたレオスタット(可変抵抗器)であり、照明用基準信号Vrを出力する。つまり、ユーザが照明調整部60を操作することにより、照明用基準信号Vrを変更し、車両用計器板装置が表示する可視情報の明るさを必要に応じて調整することができる。
【0031】
盤面全体の照明の明るさを調整するために、図1に示した車両用計器板装置は、照明用基準信号Vrに応じて盤面照明部10の発光量を調整する。また、液晶表示パネル20の表示の明るさを調整するために、図1に示した車両用計器板装置は、照明用基準信号Vrに応じて液晶用バックライト30の発光量を調整する。
【0032】
ユーザによる照明調整部60の調整操作に伴って車両用計器板装置が表示する表示の明るさを変更する場合には、盤面照明部10の明るさと、液晶用バックライト30の明るさとを同じタイミングで同じ量だけ変更する必要がある。但し、液晶表示パネル20の画面に何も表示していないような状況で液晶用バックライト30を点灯すると、全体が白色の意味のない画面が表示されてしまう。従って、液晶用バックライト30の点灯/消灯は、液晶表示パネル20の表示制御と同期する必要がある。
【0033】
図1に示した車両用計器板装置の制御系には、+5Vの電源電圧を利用する制御系と、+3.3Vの電源電圧を利用する制御系とが混在している。すなわち、一般的な表示を制御する制御系については、+5Vの電源電圧を利用している。また、液晶表示パネル20がTFT液晶表示パネルであり、この表示内容を制御するために+3.3Vの電圧を利用する必要がある。従って、液晶表示パネル20の表示制御を行うために+3.3Vの電源電圧を利用する制御系も設けてある。
【0034】
すなわち、図1に示すメインCPU40が、+5Vの電源電圧で動作する。また、サブCPU50が+3.3Vの電源電圧で動作する。メインCPU40及びサブCPU50は、互いに独立して動作するマイクロコンピュータである。
【0035】
<細部の構成の説明>
図1に示すように、盤面照明部10は光源として互いに直列に接続された複数の発光ダイオード12を内蔵している。盤面照明部10の正極側の端子11には、イグニッション(IGN)の電圧(例えば+12V)が印加される。盤面照明部10の負極側の端子13は、ドライバ回路70の出力と接続されている。
【0036】
液晶用バックライト30は、光源として互いに直列に接続された複数の発光ダイオード32を内蔵している。液晶用バックライト30の正極側の端子31には、イグニッション(IGN)の電圧が印加される。液晶用バックライト30の負極側の端子33は、ドライバ回路90の出力と接続されている。
【0037】
照明調整部60は、+5Vの電源ライン及びアースラインと接続されている。従って、照明用基準信号Vrの電圧は、0V〜+5Vの範囲内でユーザが変更できる。
【0038】
メインCPU40は、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、所定の制御機能を実現する。メインCPU40はアナログ信号入力ポート41、パルス信号出力ポート42、43、通信用入出力ポート44、電源端子45を備えている。
【0039】
メインCPU40の電源端子45には、+5Vの電源ラインからメインCPU40の動作に必要な直流電力が供給される。
【0040】
メインCPU40のアナログ信号入力ポート41には、前述の照明用基準信号Vrが印加される。メインCPU40はA/D変換器の機能を内蔵しており、照明用基準信号Vrのアナログ電圧をデジタル値に変換して取り込むことができる。
【0041】
メインCPU40のパルス信号出力ポート42及び43のそれぞれは、PWM(パルス幅変調)信号を出力するために利用される。メインCPU40はPWM信号を生成する機能を内蔵しており、本実施形態では前述の照明用基準信号Vrに従って、PWM信号のパルス幅あるいはデューティが変更される。パルス信号出力ポート42は盤面照明用PWM信号SG1を出力し、パルス信号出力ポート43はバックライト用PWM信号SG2を出力する。
【0042】
メインCPU40は通信機能を内蔵している。メインCPU40の通信用入出力ポート44は、サブCPU50と接続されている。
【0043】
サブCPU50は、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、所定の制御機能を実現する。サブCPU50はバスライン51、出力ポート52、通信用入出力ポート53、電源端子54を備えている。
【0044】
サブCPU50の電源端子54には、+3.3Vの電源ラインからサブCPU50の動作に必要な直流電力が供給される。
【0045】
サブCPU50のバスライン51には、液晶表示パネル20の画面に表示すべき表示用データSG4が出力される。サブCPU50に供給される電源電圧が+3.3Vであるため、表示用データSG4の電圧は0V〜3.3Vの範囲内で高レベル(H)/低レベル(L)が切り替わる。従って、サブCPU50は+3.3Vで動作する液晶表示パネル20を表示用データSG4を用いて直接駆動することができる。
【0046】
サブCPU50の出力ポート52には、バックライト用オンオフ信号SG3が出力される。バックライト用オンオフ信号SG3は、液晶用バックライト30の照明のオンオフを切り替えるために利用される。
【0047】
サブCPU50は通信機能を内蔵している。サブCPU50の通信用入出力ポート53は、メインCPU40と接続されている。
【0048】
ドライバ回路70は、トランジスタ71〜73、抵抗器74、入力端子75を有している。ドライバ回路70の入力端子75に、盤面照明用PWM信号SG1が印加される。最終段のトランジスタ73のコレクタは、盤面照明部10の端子13と接続されている。
【0049】
ドライバ回路70の入力端子75が高レベル(H)の時は、トランジスタ71〜73がそれぞれオン状態になるため、盤面照明部10の発光ダイオード12が通電状態になる。また、ドライバ回路70の入力端子75が低レベル(L)の時は、トランジスタ71〜73がそれぞれオフ状態になるため、盤面照明部10の発光ダイオード12が非通電状態になる。入力端子75に盤面照明用PWM信号SG1として、一定の周期でPWM信号が現れる場合には、このPWM信号のデューティに応じて、発光ダイオード12の電流、つまり照明の明るさが決定される。
【0050】
ドライバ回路90は、トランジスタ91〜93、抵抗器94、入力端子95を有している。ドライバ回路90の入力端子95に、信号ライン46からバックライト用PWM信号SG2が印加される。最終段のトランジスタ93のコレクタは、液晶用バックライト30の端子33と接続されている。
【0051】
ドライバ回路90の入力端子95が高レベル(H)の時は、トランジスタ91〜93がそれぞれオン状態になるため、液晶用バックライト30の発光ダイオード32が通電状態になる。また、ドライバ回路90の入力端子95が低レベル(L)の時は、トランジスタ91〜93がそれぞれオフ状態になるため、液晶用バックライト30の発光ダイオード32が非通電状態になる。
【0052】
入力端子95にバックライト用PWM信号SG2として、一定の周期でPWM信号が現れる場合には、このPWM信号のデューティに応じて、発光ダイオード32の電流、つまり照明の明るさが決定される。但し、入力端子95には、信号ライン86を介してオンオフ制御回路80の出力も接続されている。従って、オンオフ制御回路80の状態も液晶用バックライト30の制御に反映される。
【0053】
オンオフ制御回路80は、トランジスタ81、抵抗器82、トランジスタ83、入力端子84、出力端子85を有している。オンオフ制御回路80の入力端子84には、サブCPU50の出力するバックライト用オンオフ信号SG3が印加される。
【0054】
入力端子84に印加されるバックライト用オンオフ信号SG3が高レベル(H)の時には、トランジスタ81がオン状態になってトランジスタ83のベース電位が低下するため、トランジスタ83がオフ状態になる。従って、メインCPU40から出力されるバックライト用PWM信号SG2はそのままドライバ回路90に印加される。
【0055】
一方、オンオフ制御回路80の入力端子84に印加されるバックライト用オンオフ信号SG3が低レベル(L)の時には、トランジスタ81がオフ状態になり、抵抗器82からトランジスタ83のベースに高電位が印加され、トランジスタ83がオン状態になる。従って、メインCPU40からバックライト用PWM信号SG2が出力されている場合であっても、ドライバ回路90の入力端子95がトランジスタ83を介して接地され、バックライトはオフ状態に制御される。
【0056】
<装置の動作の説明>
図1に示した回路における各部の信号の動作タイミングの例を図2に示す。
図2に示した動作例においては、メインCPU40が時刻t1でバックライト用PWM信号SG2の出力を開始し、サブCPU50が時刻t2で表示用データSG4により液晶表示パネル20の表示制御を開始し、サブCPU50が時刻t3でバックライト用オンオフ信号SG3によりバックライトをオフからオンに切り替える場合を想定している。
【0057】
図2において、バックライト用PWM信号SG2は時刻t1で出力が開始されるが、この時にはまだバックライト用オンオフ信号SG3がオフ(L)になっている。バックライト用オンオフ信号SG3がオフの時には、オンオフ制御回路80内のトランジスタ83がオン状態になるので、ドライバ回路90の入力端子95は、トランジスタ83を介して接地される。従って、メインCPU40がバックライト用PWM信号SG2を出力していても、実際に入力端子95に印加される信号は低レベル(L)を維持する。そのため、液晶用バックライト30は消灯状態を維持する。
【0058】
図2において、サブCPU50は時刻t2で表示用データSG4により液晶表示パネル20の表示制御を開始する。そして、液晶表示パネル20の画面上に表示すべき情報の準備が整った後の時刻t3で、サブCPU50はバックライト用オンオフ信号SG3をオフ(L)からオン(H)に切り替える。
【0059】
バックライト用オンオフ信号SG3がオンになると、オンオフ制御回路80内のトランジスタ83がオフになるため、メインCPU40から出力されるバックライト用PWM信号SG2は、そのままドライバ回路90の入力端子95に印加される。従って、液晶用バックライト30の発光ダイオード32が通電状態になり、通電電流はPWM信号のデューティに応じて決定される。つまり、液晶用バックライト30に対して、照明用基準信号Vrに応じた調光制御が実施される。
【0060】
上記のように、照明用基準信号Vrに応じた液晶用バックライト30の調光制御はメインCPU40側で行い、液晶用バックライト30の点灯/消灯の制御はサブCPU50側で行うことができる。
【0061】
従って、メインCPU40は、盤面照明用PWM信号SG1及びバックライト用PWM信号SG2を制御することにより、照明用基準信号Vrの変化に対して、盤面照明部10の光量と液晶用バックライト30の光量とを同じタイミングで同じ量だけ変更することができる。そのため、ユーザが照明調整部60を操作する際に、ユーザから見える照明光のちらつきや照明の違和感をなくすことができる。
【0062】
また、液晶用バックライト30の点灯/消灯の制御はサブCPU50側で行うことができるので、液晶表示パネル20の表示内容の変更に合わせて適切なタイミングで液晶用バックライト30の点灯/消灯を切り替えることができる。例えば、図2に示したように、サブCPU50が液晶表示パネル20に対する表示制御を開始(t2)し、表示内容の準備が整った後(t3)でバックライト用オンオフ信号SG3をオンに切り替えることができる。これにより、液晶表示パネル20の表示開始時に画面上にちらつきが生じるのを避けることができる。
【0063】
また、メインCPU40の動作とサブCPU50動作とが互いに独立しているので、処理上の時間遅延を減らすために高性能のマイクロコンピュータを採用する必要はなく、装置コストの上昇を抑制できる。
【0064】
<変形の可能性>
図1に示した車両用計器板装置においては、ユーザの操作に応じた照明用基準信号Vrを、可変抵抗器である照明調整部60によりアナログ信号として生成している。この照明用基準信号Vrについては、デジタル信号として照明調整部60からメインCPU40に与えるように変更しても良い。
【0065】
<補足説明>
(1) 図1に示した車両用計器板装置は、表示内容を制御可能な光透過型表示器(20)と、前記光透過型表示器を背面側から照明する第1の照明部(30)と、前記第1の照明部とは異なる箇所を照明する第2の照明部(10)とを有し、
前記第1の照明部及び第2の照明部の照明の明るさに関連するパラメータ(Vr)を調整するパラメータ調整部(60)と、
第1の電源ラインから供給される電源電力(+5V)を利用し、少なくとも前記第2の照明部を前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って制御する第1の制御部(40)と、
前記第1の電源ラインとは異なる電圧が現れる第2の電源ラインから供給される電源電力(+3.3V)を利用し、少なくとも前記光透過型表示器の表示内容を制御する第2の制御部(50)と、
前記第1の制御部から出力される第1の調光制御信号(SG2)に従って、前記第1の照明部の照明の明るさを調整する第1のスイッチング回路(90)と、
前記第2の制御部から出力される照明オンオフ信号(SG3)に従って、前記第1の照明部の照明のオンオフを切り替える第2のスイッチング回路(80)と
を備えている。
【0066】
(2) 図1に示した車両用計器板装置において、
前記第1の制御部(40)は、前記パラメータ調整部が決定したパラメータに従って、前記第1の照明部の明るさを制御するための第1の調光制御信号(SG2)と、前記第2の照明部の明るさを制御するための第2の調光制御信号(SG1)とを生成し、
前記第1のスイッチング回路(90)は、前記第1の制御部から出力される前記第1の調光制御信号を入力して前記第1の照明部の照明の明るさを調整する。
【0067】
(3) 図1に示した車両用計器板装置において、
前記第2のスイッチング回路(80)は、前記第1のスイッチング回路(90)の入力(95)に接続されたスイッチング素子(83)を有し、前記照明オンオフ信号(SG3)に従って前記スイッチング素子のオンオフ状態を切り替える。
【0068】
(4) 図1に示した車両用計器板装置において、前記第1の制御部(40)および前記第2の制御部(50)は、互いに非同期で動作する独立した2つのマイクロコンピュータにより構成される。
【0069】
(5) 図1に示した車両用計器板装置において、
前記光透過型表示器(20)は、TFT素子を内蔵した液晶表示器である。
【符号の説明】
【0070】
10 盤面照明部
11,13 端子
12 発光ダイオード
20 液晶表示パネル
30 液晶用バックライト
31,33 端子
32 発光ダイオード
40 メインCPU
41 アナログ信号入力ポート
42,43 パルス信号出力ポート
44 通信用入出力ポート
45 電源端子
46 信号ライン
50 サブCPU
51 バスライン
52 出力ポート
53 通信用入出力ポート
54 電源端子
60 照明調整部
70 ドライバ回路
71,72,73 トランジスタ
74 抵抗器
75 入力端子
80 オンオフ制御回路
81,83 トランジスタ
82 抵抗器
84 入力端子
85 出力端子
86 信号ライン
90 ドライバ回路
91,92,93 トランジスタ
94 抵抗器
95 入力端子
SG1 盤面照明用PWM信号
SG2 バックライト用PWM信号
SG3 バックライト用オンオフ信号
SG4 表示用データ
Vr 照明用基準信号
図1
図2