特許第5878822号(P5878822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5878822パターン転写装置およびパターン転写方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878822
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】パターン転写装置およびパターン転写方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/14 20060101AFI20160223BHJP
   B41F 1/16 20060101ALI20160223BHJP
   B41F 1/32 20060101ALI20160223BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   B41F17/14 E
   B41F1/16
   B41F1/32
   H05K3/12 630Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-108571(P2012-108571)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-233757(P2013-233757A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 美佳
(72)【発明者】
【氏名】増市 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】川越 理史
(72)【発明者】
【氏名】上野 博之
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−042759(JP,A)
【文献】 特開2009−055009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 1/00 − 1/66
B41F 15/00 − 15/46
B41F 17/00 − 17/38
B41M 1/00 − 1/42
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持体に形成されたパターン層に対してパターン転写面が密着された基板を前記担持体から離間する離間方向に移動させて前記パターン層を前記パターン転写面に転写するパターン転写装置において、
前記パターン転写面と反対側の前記基板の被吸着面に対向して所定の配列方向に配列され、前記被吸着面を吸着する複数の吸着手段と、
前記基板が前記複数の吸着手段で吸着保持された状態で、前記複数の吸着手段を前記離間方向に移動させて前記基板を前記担持体から剥離させる駆動手段と、
を備え、
前記複数の吸着手段は互いに独立して前記離間方向に移動自在であり、前記配列方向の一方端に位置する吸着手段から前記配列方向の他方端に位置する吸着手段までの配列順にしたがって設けられ、
前記駆動手段は、前記吸着手段毎に設けられる前記離間方向に移動自在な複数の当接部材と、前記複数の当接部材を支持する支持部材と、前記支持部材を前記離間方向に駆動する駆動部とを有しており、
前記駆動部が前記支持部材を前記離間方向に移動させることで、前記各当接部材が前記配列順に応じた前記離間方向の位置で当該当接部材に対応する吸着手段に当接して当該吸着手段と一体的に前記離間方向に移動させられて、前記配列順にしたがって前記離間方向への前記各吸着手段の移動を開始させることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
前記複数の当接部材は前記離間方向において互いに異なる支持位置で前記支持部材に支持される請求項に記載のパターン転写装置。
【請求項3】
前記各支持位置は前記離間方向に調整可能である請求項に記載のパターン転写装置。
【請求項4】
前記各吸着手段は、前記基板を吸着する吸着部と、前記吸着部から前記離間方向に延設される軸部と、前記軸部の前記離間方向側の端部に設けられる被当接部とを有しており、
前記複数の当接部材は前記各吸着手段の前記軸部が挿通される筒状の部材であり、
前記支持部材の前記離間方向への移動の開始後、前記配列順にしたがって前記各吸着手段の前記被当接部に対して当該吸着手段の前記軸部が挿通された前記筒状の当接部材の前記離間方向側の端部が当接する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパターン転写装置。
【請求項5】
前記各筒状の当接部材の外周面に雄ねじが形成されるとともに、前記支持部材に雌ねじが複数形成されており、前記各筒状の当接部材の前記雄ねじと前記支持部材の前記各雌ねじを螺合させることで前記各筒状の当接部材を前記支持部材に取り付けてある請求項に記載のパターン転写装置。
【請求項6】
担持体に形成されたパターン層に対してパターン転写面が密着された基板を前記担持体から離間する離間方向に移動させて前記パターン層を前記パターン転写面に転写するパターン転写方法において、
前記パターン転写面と反対側の前記基板の被吸着面に対向して所定の配列方向に配列されて前記配列方向の一方端に位置する吸着手段から前記配列方向の他方端に位置する吸着手段までの配列順にしたがって設けられた互いに独立して前記離間方向に移動自在な複数の吸着手段によって前記基板が吸着保持された状態で、前記吸着手段毎に設けられる前記離間方向に移動自在な複数の当接部材を支持する支持部材を駆動部により前記離間方向に移動させることで、前記各当接部材が前記配列順に応じた前記離間方向の位置で当該当接部材に対応する吸着手段に当接して当該吸着手段と一体的に前記離間方向に移動させられて、前記配列順にしたがって前記離間方向への前記各吸着手段の移動を開始させることを特徴とするパターン転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、担持体に形成されたパターン層と基板とを対向させた状態で担持体と基板とを当接させた後に、基板を担持体から剥離させてパターン層を基板に転写するパターン転写技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなパターン転写技術として、例えば特許文献1に記載された技術が従来より知られている。特許文献1には、ブランケット(担持体)に形成されたパターン層と基板とを加圧当接させた後に、ブランケットから基板を剥離することによりブランケット上のパターン層を基板に転写する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−158799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような技術において、担持体からの基板の剥離態様によってパターン転写の質が左右されることがあるが、特許文献1には基板をどのように保持しつつ担持体から剥離させるかについては具体的に記載されていない。ここで、担持体から基板を剥離する態様として、例えば基板の表面(パターンが転写されるパターン転写面と反対の面)を吸着機構によって吸着保持しながら吸着機構を担持体から離間させることが考えられる。基板を安定的に保持するためには基板の表面を広範囲にわたって吸着する必要があるが、この状態のまま基板を担持体から一様に離間させようとすると、一般的に基板の周縁部から中央部に向けて剥離が進行する。このとき、基板の周縁部を剥離する際には一方向から剥離させようとする力が作用する一方、基板の中央部においては複数方向から剥離させようとする力が作用する。このように基板の周縁部と中央部とにおいて剥離態様に差異が生じることで、パターン転写が基板全域で均一に行われずパターン転写不良が生じるおそれがあった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、担持体に形成されたパターン層と基板とを対向させた状態で担持体と基板とを当接させた後に、基板を担持体から剥離させてパターン層を基板に転写するパターン転写技術において、基板へのパターン転写を良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるパターン転写装置は、上記目的を達成するために、担持体に形成されたパターン層に対してパターン転写面が密着された基板を担持体から離間する離間方向に移動させてパターン層をパターン転写面に転写するパターン転写装置において、パターン転写面と反対側の基板の被吸着面に対向して所定の配列方向に配列され、被吸着面を吸着する複数の吸着手段と、基板が複数の吸着手段で吸着保持された状態で、複数の吸着手段を離間方向に移動させて基板を担持体から剥離させる駆動手段と、を備え、複数の吸着手段は互いに独立して離間方向に移動自在であり、配列方向の一方端に位置する吸着手段から配列方向の他方端に位置する吸着手段までの配列順にしたがって設けられ、駆動手段は、吸着手段毎に設けられる離間方向に移動自在な複数の当接部材と、複数の当接部材を支持する支持部材と、支持部材を離間方向に駆動する駆動部とを有しており、駆動部が支持部材を離間方向に移動させることで、各当接部材が配列順に応じた離間方向の位置で当該当接部材に対応する吸着手段に当接して当該吸着手段と一体的に離間方向に移動させられて、配列順にしたがって離間方向への各吸着手段の移動を開始させることを特徴とする。
【0007】
この発明にかかるパターン転写方法は、上記目的を達成するために、担持体に形成されたパターン層に対してパターン転写面が密着された基板を担持体から離間する離間方向に移動させてパターン層をパターン転写面に転写するパターン転写方法において、パターン転写面と反対側の基板の被吸着面に対向して所定の配列方向に配列されて配列方向の一方端に位置する吸着手段から配列方向の他方端に位置する吸着手段までの配列順にしたがって設けられた互いに独立して離間方向に移動自在な複数の吸着手段によって基板が吸着保持された状態で、吸着手段毎に設けられる離間方向に移動自在な複数の当接部材を支持する支持部材を駆動部により離間方向に移動させることで、各当接部材が配列順に応じた離間方向の位置で当該当接部材に対応する吸着手段に当接して当該吸着手段と一体的に離間方向に移動させられて、配列順にしたがって離間方向への各吸着手段の移動を開始させることを特徴としている。
【0008】
本発明(パターン転写装置およびパターン転写方法)によれば、基板の被吸着面に対向して所定の配列方向に配列された複数の吸着手段により基板が吸着保持された状態で、複数の吸着手段が担持体から離間する離間方向に移動させられることで、基板が担持体から剥離される。このとき、本発明によれば、配列方向の一方端に位置する吸着手段から配列方向の他方端に位置する吸着手段まで配列順にしたがって各吸着手段の離間方向への移動が開始される。このように各吸着手段が配列順に離間方向に移動し始めることに伴って、各吸着手段によって吸着されている基板の被吸着領域が離間方向に移動し始める。その結果、配列方向の一方端から他方端に向かって一方向に基板が担持体から剥離される。基板が一方向に剥離されることで基板の全域にわたって同様の態様で剥離が進行するので、基板の全域においてパターン転写が均一的に行なわれ、パターン転写を良好に行うことができる。
【0009】
ここで、本発明にかかるパターン転写装置において、複数の吸着手段は互いに独立して離間方向に移動自在であり、駆動手段は、吸着手段毎に設けられる離間方向に移動自在な複数の当接部材と、複数の当接部材を支持する支持部材と、支持部材を離間方向に駆動する駆動部とを有しており、駆動部が支持部材を離間方向に移動させることで、各当接部材が配列順に応じた離間方向の位置で当該当接部材に対応する吸着手段に当接して当該吸着手段と一体的に離間方向に移動させられると好適である。このような構成によれば、駆動部により支持部材を離間方向に移動させるだけで、吸着手段毎に設けられた各当接部材が配列順にしたがって当該当接部材に対応する吸着手段と当接して当該吸着手段と一体的に離間方向に移動させられ、基板を一方向に剥離することができる。すなわち、各吸着手段を配列順にしたがって離間方向に移動させるのに、各吸着手段を個別に制御する必要がなく、装置の簡易化を図ることが可能となる。
【0010】
例えば、複数の当接部材が離間方向において互いに異なる支持位置で支持部材に支持されるよう構成することで、支持部材が離間方向に移動させられる際に、各当接部材を配列順にしたがって当該当接部材に対応する吸着手段と当接させることができる。このとき、各支持位置が離間方向に調整可能であると、各当接部材が対応する吸着手段と当接するタイミング、すなわち各吸着手段を離間方向に移動させ始めるタイミングを変更することができ、剥離の進行態様の調整を行うことが可能となる。
【0011】
また、各吸着手段は、基板を吸着する吸着部と、吸着部から離間方向に延設される軸部と、軸部の離間方向側の端部に設けられる被当接部とを有しており、複数の当接部材は各吸着手段の軸部が挿通される筒状の部材であり、支持部材の離間方向への移動の開始後、配列順にしたがって各吸着手段の被当接部に対して当該吸着手段の軸部が挿通された筒状の当接部材の離間方向側の端部が当接するよう構成することができる。このような構成によれば、吸着手段の軸部が筒状の当接部材に挿通されているので、当接部材の内壁面がガイド部の役割を果たして吸着手段を安定的に離間方向に移動させることが可能となる。
【0012】
さらに、各筒状の当接部材の外周面に雄ねじが形成されるとともに、支持部材に雌ねじが複数形成されており、各筒状の当接部材の雄ねじと支持部材の各雌ねじを螺合させることで各筒状の当接部材を支持部材に取り付けてあると好適である。このような構成によれば、筒状の当接部材の支持部材に対するねじ込み量を変化させるだけで容易に当接部材の位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるパターン転写装置を装備する印刷装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す印刷装置の断面を模式的に示す図である。
図3図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4図1の印刷装置の全体動作を示すフローチャートである。
図5】吸着機構の平面配置を模式的に示す図である。
図6】吸着機構の側面図である。
図7】基板の剥離動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかるパターン転写装置を装備する印刷装置の一実施形態を示す概略斜視図であり、装置内部の構成を明示するために、装置カバーを外した状態で図示している。また、図2図1に示す印刷装置の断面を模式的に示す図である。さらに、図3図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この印刷装置100は、装置の左側面側より装置内部に搬入される版PPの下面に対して、装置の正面側より装置内部に搬入されるブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、版PPの下面に形成されたパターンによりブランケット上の塗布層をパターニングしてパターン層を形成する(パターニング処理)。また、印刷装置100は、装置の右側面側より装置内部に搬入される基板SBの下面に対して、パターニング処理されたブランケットの上面を密着させた後で剥離することで、そのブランケットに形成されたパターン層を基板SBの下面に転写する(転写処理)。なお、図1および後で説明する各図では、装置各部の配置関係を明確にするために、版PPおよび基板SBの搬送方向を「X方向」とし、図1の右手側から左手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「−X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向のうち、装置の正面側を「+Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「−Y方向」と称する。さらに、鉛直方向における上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「−Z方向」と称する。
【0015】
この印刷装置100では、石定盤1上に装置各部(搬送部2、上ステージ部3、アライメント部4、下ステージ部5、押さえ部7、プリアライメント部8、除電部9)が設けられており、制御部6が装置各部を制御する。
【0016】
搬送部2は版PPおよび基板SBをX方向に搬送する装置であり、次のように構成されている。この搬送部2では、石定盤1の上面の右後隅部および左隅部より2本のブラケット(図示省略)が立設されるとともに、両ブラケットの上端部を互いに連結するようにボールねじ機構21が左右方向、つまりX方向に延設されている。このボールねじ機構21においては、ボールねじ(図示省略)がX方向に延びており、その一方端には、シャトル水平駆動用のモータM21の回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじの中央部に対してボールねじブラケット(図示省略)が螺合されるとともに、それらのボールねじブラケットの(+Y)側面に対してX方向に延設されたシャトル保持プレート22が取り付けられている。
【0017】
このシャトル保持プレート22の(+X)側端部に版用シャトル23Lが鉛直方向Zに昇降可能に設けられる一方、(−X)側端部に基板用シャトル23Rが鉛直方向Zに昇降可能に設けられている。これらのシャトル23L、23Rは、ハンドの回転機構を除き、同一構成を有しているため、ここでは、版用シャトル23Lの構成を説明し、基板用シャトル23Rについては同一符号または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0018】
シャトル23Lは、X方向に版PPの幅サイズ(X方向サイズ)と同程度、あるいは若干長く延びる昇降プレート231と、昇降プレート231の(+X)側端部および(−X)側端部からそれぞれ前側、つまり(+Y)側に延設された2つの版用ハンド232、232とを有している。昇降プレート231はボールねじ機構(図示省略)を介してシャトル保持プレート22の(+X)側端部に昇降可能に取り付けられている。すなわち、シャトル保持プレート22の(+X)側端部に対し、ボールねじ機構が鉛直方向Zに延設されている。このボールねじ機構の下端には、版用シャトル昇降モータM22L(図3)に回転軸(図示省略)が連結されている。また、ボールねじ機構に対してボールねじブラケット(図示省略)が螺合されるとともに、そのボールねじブラケットの(+Y)側面に対して昇降プレート231が取り付けられている。このため、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて版用シャトル昇降モータM22Lが作動することで、昇降プレート231が鉛直方向Zに昇降駆動される。
【0019】
各ハンド232、232の前後サイズ(Y方向サイズ)は版PPの長さサイズ(Y方向サイズ)よりも長く、各ハンド232、232の先端側(+Y側)で版PPを保持可能となっている。
【0020】
また、こうして版用ハンド232、232で版PPが保持されたことを検知するために、昇降プレート231の中央部から(+Y)側にセンサブラケットを介して版検知用のセンサ(図示省略)が取り付けられている。このため、両ハンド232上に版PPが載置されると、センサが版PPの後端部、つまり(−Y)側端部を検知し、検知信号を制御部6に出力する。
【0021】
さらに、各版用ハンド232、232はベアリングを介して昇降プレート231に取り付けられ、前後方向(Y方向)に延びる回転軸を回転中心として回転自在となっている。また、昇降プレート231のX方向両端には、回転アクチュエータRA2、RA2(図3)が取り付けられている。これらの回転アクチュエータRA2、RA2は加圧エアーを駆動源として動作するものであり、加圧エアーの供給経路に介挿されたバルブの開閉により180゜単位で回転可能となっている。このため、制御部6のバルブ制御部64による上記バルブの開閉を制御することで、版用ハンド232、232の一方主面が上方に向いてパターニング前の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「未使用姿勢」という)と、他方主面が上方を向いてパターニング後の版PPを扱うのに適したハンド姿勢(以下「使用済姿勢」という)との間で、ハンド姿勢を切替え可能となっている。このようにハンド姿勢の切替え機構を有している点が、版用シャトル23Lが基板用シャトル23Rと唯一相違する点である。
【0022】
次に、シャトル保持プレート22に対する版用シャトル23Lおよび基板用シャトル23Rの取り付け位置について説明する。この実施形態では、図2に示すように、版用シャトル23Lおよび基板用シャトル23Rは、版PPや基板SBの幅サイズ(なお実施形態では、版PPと基板SBの幅サイズは同一である)よりも長い間隔だけX方向に離間してシャトル保持プレート22に取り付けられている。そして、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させると、両シャトル23L、23Rは上記離間距離を保ったままX方向に移動する。例えば図2では、符号XP23が上ステージ部3の直下位置を示しており、シャトル23L、23Rは、位置XP23からそれぞれ(+X)方向および(−X)方向に等距離(この距離を「ステップ移動単位」という)だけ離れた位置XP22、XP24に位置している。なお、本実施形態では、図2に示す状態を「中間位置状態」と称する。
【0023】
また、この中間位置状態からシャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向に回転させてシャトル保持プレート22をステップ移動単位だけ(+X)方向に移動させると、基板用シャトル23Rが(+X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、版用シャトル23Lも一体的に(+X)方向に移動し、印刷装置100の(+X)方向側に配置される版洗浄装置(図示省略)に近接した位置XP21に位置決めされる。
【0024】
逆に、シャトル水平駆動モータM21の回転軸を所定方向と逆の方向に回転させてシャトル保持プレート22をステップ移動単位だけ(−X)方向に移動させると、版用シャトル23Lが中間位置状態から(−X)方向に移動して上ステージ部3の直下位置XP23まで移動して位置決めされる。このとき、基板用シャトル23Rも一体的に(−X)方向に移動し、印刷装置100の(−X)方向側に配置される基板洗浄装置(図示省略)に近接した位置XP25に位置決めされる。このように、本明細書では、X方向におけるシャトル位置として5つの位置XP21〜XP25が規定されている。つまり、版受渡し位置XP21は、版用シャトル23Lが位置決めされる3つの位置XP21〜XP23のうち最も版洗浄装置に近接位置であり、版洗浄装置との間で版PPの搬入出が行われるX方向位置を意味している。基板受渡し位置XP25は、基板用シャトル23Rが位置決めされる3つの位置XP23〜XP25のうち最も基板洗浄装置に近接位置であり、基板洗浄装置との間で基板SBの搬入出が行われるX方向位置を意味している。また、位置XP23は上ステージ部3の吸着プレート34が鉛直方向Zに移動して版PPや基板SBを吸着保持するX方向位置を意味しており、版用シャトル23LがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「版吸着位置XP23」と称する一方、基板用シャトル23RがX方向位置XP23に位置している際には、当該位置XP23を「基板吸着位置XP23」と称する。また、このようにシャトル23L、23Rにより版PPや基板SBを搬送する鉛直方向Zでの位置、つまり高さ位置を「搬送位置」と称する。
【0025】
また、本実施形態では、パターニング時での版PPとブランケットとのギャップ量、ならびに転写時での基板SBとブランケットとのギャップ量を正確に制御するため、版PPおよび基板SBの厚みを計測する必要がある。そこで、版厚み計測センサSN22および基板厚み計測センサSN23が設けられている。なお、本実施形態では、両センサSN22、23として、投光部と受光部とを有する反射タイプの光学センサを用いているが、これ以外のセンサを用いてもよい。
【0026】
位置XP23では、上ステージ部3が配置されている。この上ステージ部3では、鉛直方向Zに延設されたボールねじ機構31が固定されており、そのボールねじ機構31の上端部には、第1ステージ昇降モータM31の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、ボールねじ機構31に対してボールねじブラケット(図示省略)が螺合している。このボールねじブラケットには、支持フレーム32が固定されており、ボールねじブラケットと一体的に鉛直方向Zに昇降可能となっている。さらに、当該支持フレーム32のフレーム面で、別のボールねじ機構(図示省略)が支持されている。このボールねじ機構には、上記ボールねじ機構31のボールねじよりも狭ピッチのボールねじが設けられ、その上端部には、第2ステージ昇降モータM32(図3)の回転軸(図示省略)が連結されるとともに、中央部にはボールねじブラケットが螺合している。
【0027】
このボールねじブラケットには、ステージホルダ33が取り付けられている。また、ステージホルダ33の下面には、例えばアルミニウム合金などの金属製の吸着プレート34が取り付けられている。したがって、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてステージ昇降モータM31、M32が作動することで、吸着プレート34が鉛直方向Zに昇降移動させられる。また、本実施形態では、異なるピッチを有するボールねじ機構を組み合わせ、第1ステージ昇降モータM31を作動させることで比較的広いピッチで吸着プレート34を昇降させる、つまり吸着プレート34を高速移動させることができるとともに、第2ステージ昇降モータM32を作動させることで比較的狭いピッチで吸着プレート34を昇降させる、つまり吸着プレート34を精密に位置決めすることができる。
【0028】
この吸着プレート34の下面、つまり版PPや基板SBを吸着保持する吸着面に吸着機構が設けられ、負圧供給経路を介して負圧供給源に接続されている。そして、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じて吸着機構と繋がる吸着バルブV31、V32(図3)を開閉制御することで吸着機構による版PPや基板SBの吸着が可能となる。なお、本実施形態では、上記した吸着機構および後述するようにブランケットを吸着保持する吸着機構は、負圧供給源として工場の用力を用いているが、装置100が真空ポンプなどの負圧供給部を装備し、当該負圧供給部から吸着機構に負圧を供給するように構成してもよい。
【0029】
このように構成された上ステージ部3では、搬送部2の版用シャトル23Lによって版が図1の左手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下の版吸着位置XP23に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレート34が下降して版PPを吸着保持する。逆に、版用シャトル23Lが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で版PPを吸着した吸着プレート34が吸着を解除すると、版PPが搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、版の受渡しが行われる。
【0030】
また、基板SBについても版PPと同様にして上ステージ部3に保持される。すなわち、搬送部2の基板用シャトル23Rによって基板SBが図1の右手側から搬送空間を介して上ステージ部3の直下位置に搬送された後、上ステージ部3の吸着プレート34が下降して基板SBを吸着保持する。逆に、基板用シャトル23Rが上ステージ部3の直下位置に位置した状態で基板SBを吸着した上ステージ部3の吸着プレート34が吸着を解除すると、基板SBが搬送部2に移載される。こうして、搬送部2と上ステージ部3との間で、基板SBの受渡しが行われる。
【0031】
上ステージ部3の鉛直方向の下方(以下「鉛直下方」あるいは「(−Z)方向」という)では、石定盤1の上面にアライメント部4が配置されている。このアライメント部4では、支持プレート41が、図1に示すように、石定盤1の凹部を跨ぐように水平姿勢で配置され、石定盤1の上面に固定されている。また、この支持プレート41の上面にアライメントステージ42が固定されている。そして、アライメント部4のアライメントステージ42上に下ステージ部5が載置されて下ステージ部5の上面が上ステージ部3の吸着プレート34と対向している。この下ステージ部5の上面はブランケットBLを吸着保持可能となっており、制御部6がアライメントステージ42を制御することで下ステージ部5上のブランケットBLを高精度に位置決め可能となっている。
【0032】
アライメントステージ42は、支持プレート41上に固定されるステージベース421と、ステージベース421の鉛直上方に配置されて下ステージ部5を支持するステージトップ422とを有している。これらステージベース421およびステージトップ422はいずれも中央部に開口を有する額縁形状を有している。また、これらステージベース421およびステージトップ422の間には、鉛直方向Zに延びる回転軸を回転中心とする回転方向、X方向およびY方向の3自由度を有する、例えばクロスローラベアリング等の支持機構423がステージトップ422の各角部近傍に配置されている。また、各支持機構423に対してボールねじ機構(図示省略)が設けられるとともに、各ボールねじ機構にステージ駆動モータM41(図3)が取り付けられている。そして、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて各ステージ駆動モータM41を作動させることで、アライメントステージ42の中央部に比較的大きな空間を設けながら、ステージトップ422を水平面内で移動させるとともに、鉛直軸を回転中心として回転させて下ステージ部5の吸着プレート51を位置決め可能となっている。なお、本実施形態において中空空間を有するアライメントステージ42を用いた理由のひとつは、下ステージ部5の上面に保持されるブランケットBLおよび上ステージ部3の下面に保持される基板SBに形成されるアライメントマークを撮像部43により撮像するためである。
【0033】
下ステージ部5は、吸着プレート51と、柱部材52と、ステージベース53と、リフトピン部54とを有している。ステージベース53には、左右方向Xに延びる長孔形状の開口が前後方向Yに3つ並んで設けられている。そして、これらの長孔開口と、アライメントステージ42の中央開口とが上方からの平面視でオーバーラップするように、ステージベース53がアライメントステージ42上に固定されている。また、上記長孔開口には、撮像部43の一部が遊挿されている。また、ステージベース53の上面角部から柱部材52が(+Z)に立設され、各頂部が吸着プレート51を支持している。
【0034】
この吸着プレート51は例えばアルミニウム合金などの金属プレートで構成されている。この吸着プレート51の上面には吸着機構(図示省略)が設けられるとともに、吸着機構に対して正圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が加圧用マニホールドに接続されている。さらに、各正圧供給配管の中間部に加圧バルブV51(図3)が介挿されている。この加圧用マニホールドに対しては、工場の用力から供給される加圧エアーをレギュレータで調圧することで得られる一定圧力のエアーが常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の加圧バルブV51が選択的に開くと、その選択された加圧バルブV51に繋がる吸着機構に対して調圧された加圧エアーが供給される。
【0035】
また、吸着機構の一部に対しては、加圧エアーの選択供給のみならず、選択的な負圧供給も可能となっている。すなわち、特定の吸着機構の各々に対して負圧供給配管(図示省略)の一方端が接続されるとともに、他方端が負圧用マニホールドに接続されている。さらに、各負圧供給配管の中間部に吸着バルブV52(図3)が介挿されている。この負圧用マニホールドには、負圧供給源がレギュレータを介して接続されており、所定値の負圧が常時供給されている。このため、制御部6のバルブ制御部64からの動作指令に応じて所望の吸着バルブV52が選択的に開くと、その選択された吸着バルブV52に繋がる吸着機構に対して調圧された負圧が供給される。
【0036】
このように本実施形態では、バルブV51、V52の開閉制御によって吸着プレート51上にブランケットBLを部分的あるいは全面的に吸着させたり、吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませて上ステージ部3に保持された版PPや基板SBに押し付けることが可能となっている。
【0037】
リフトピン部54では、リフトプレート541が吸着プレート51とステージベース53との間で昇降自在に設けられている。このリフトプレート541には、複数箇所に切欠部が形成されて撮像部43との干渉が防止されている。また、リフトプレート541の上面から鉛直上方に複数のリフトピン542が立設されている。一方、リフトプレート541の下面には、ピン昇降シリンダCL51(図3)が接続されている。そして、制御部6のバルブ制御部64がピン昇降シリンダCL51に接続されるバルブの開閉を切り替えることで、ピン昇降シリンダCL51を作動させてリフトプレート541を昇降させる。その結果、吸着プレート51の上面、つまり吸着面に対し、全リフトピン542が進退移動させられる。例えば、リフトピン542が吸着プレート51の上面から(+Z)方向に突出することで、図示しないブランケット搬送ロボットによりブランケットBLがリフトピン542の頂部に載置可能となる。そして、ブランケットBLの載置に続いて、リフトピン542が吸着プレート51の上面よりも(−Z)方向に後退することで、ブランケットBLが吸着プレート51の上面に移載される。その後、後述するように適当なタイミングで、吸着プレート51の近傍に配置されたブランケット厚み計測センサSN51(図3)によって当該ブランケットBLの厚みが計測される。
【0038】
上記したように、本実施形態では、上ステージ部3と下ステージ部5とが鉛直方向Zにおいて互いに対向配置されている。そして、それらの間に、下ステージ部5上に載置されるブランケットBLを上方より押さえる押さえ部7と、版PP、基板SBおよびブランケットBLのプリアライメントを行うプリアライメント部8とがそれぞれ配置されている。
【0039】
押さえ部7は、吸着プレート51の鉛直上方側に設けられる押さえ部材71を切替機構(図示省略)によって鉛直方向Zに昇降することで2つの状態に切替可能となっている。すなわち、切替機構が押さえ部材71を降下させると、吸着プレート51上のブランケットBLが押さえ部7により押さえた状態(ブランケット押さえ状態)となる。一方、切替機構が押さえ部材71を上昇させると、押さえ部7がブランケットBLから離間してブランケットBLの押さえを解除した状態(ブランケット押さえ解除状態)となる。
【0040】
プリアライメント部8では、プリアライメント上部81およびプリアライメント下部82が鉛直方向Zに2段で積層配置されている。これらのうちプリアライメント上部81は、プリアライメント下部82よりも鉛直上方側に配置され、ブランケットBLとの密着に先立って、位置XP23で版用シャトル23Lにより保持される版PPおよび基板用シャトル23Rにより保持される基板SBをアライメントする。一方、プリアライメント下部82は、版PPや基板SBとの密着に先立って、下ステージ部5の吸着プレート51に載置されるブランケットBLをアライメントする。なお、プリアライメント上部81と、プリアライメント下部82とは基本的に同一構成を有している。そこで、以下においては、プリアライメント上部81の構成について説明し、プリアライメント下部82については同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0041】
プリアライメント上部81では、額縁状のフレーム構造体811に対して4つの上ガイド812が移動自在に設けられている。すなわち、フレーム構造体811は、互いに左右方向Xに離間し前後方向Yに延設される2本の水平フレームと、互いに前後方向Yに離間し左右方向Xに延設される2本の水平フレームとを組み合わせたものである。そして、図2に示すように、前後方向Yに延設された2本の水平プレートのうちの左側水平プレートに対し、その中央部で上ガイド812が図示を省略するボールねじ機構により左右方向Xに移動自在に設けられている。そして、このボールねじ機構に連結される駆動モータM81(図3)が制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じて作動することで上ガイド812が左右方向Xに移動する。また、右側水平プレートに対しても、上記と同様に、上ガイド812が駆動モータM81により左右方向Xに移動するように構成されている。さらに、前後方向Yに延設された2本の水平プレートの各々に対しても、上記と同様に、上ガイド812が駆動モータM81により左右方向Xに移動するように構成されている。このように、4つの上ガイド812が位置XP23の鉛直下方位置で版PPや基板SBを取り囲んでおり、各上ガイド812が独立して版PPなどに対して近接および離間可能となっている。したがって、各上ガイド812の移動量を制御することによって版PPおよび基板SBをシャトルのハンド上で水平移動あるいは回転させてアライメントすることが可能となっている。
【0042】
また、本実施形態では、後で説明するように、ブランケットBL上のパターン層を基板SBに転写した後、ブランケットBLを基板SBから剥離するが、その剥離段階で静電気が発生する。また、版PPによりブランケットBL上の塗布層をパターニングした後、ブランケットBLを版PPから剥離した際にも、静電気が発生する。そこで、本実施形態では、静電気を除電するために、除電部9が設けられている。この除電部9は、(+X)側より上ステージ部3と下ステージ部5で挟まれた空間に向けてイオンを照射するイオナイザ91を有している。
【0043】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)61、メモリ62、モータ制御部63、バルブ制御部64、画像処理部65および表示/操作部66を有しており、CPU61はメモリ62に予め記憶されたプログラムにしたがって装置各部を制御して、図4に示すように、パターニング処理および転写処理を実行する。
【0044】
図4は、図1の印刷装置の全体動作を示すフローチャートである。この印刷装置100の初期状態では、版用シャトル23Lおよび基板用シャトル23Rはそれぞれ中間位置XP22、XP24に位置決めされている。そして、版洗浄装置の版搬送ロボット(図示省略)による版PPの搬送動作と同期して版PPの投入工程(ステップS1)、ならびに基板洗浄装置の基板搬送ロボット(図示省略)の基板SBの搬送動作と同期して基板SBの投入工程(ステップS2)を実行する。なお、版用シャトル23Lおよび基板用シャトル23Rが一体的に左右方向Xに移動するという搬送構造を採用しているため、版PPの搬入を行った(ステップS1)後、基板SBの搬入を行う(ステップS2)が、両者の順序を入れ替えてもよい。
【0045】
このように、本実施形態では、パターニング処理を実行する前に、版PPのみならず、基板SBをも準備しておき、後で詳述するように、パターニング処理および転写処理を連続して実行する。これによって、ブランケットBL上でパターニングされた塗布層が基板SBに転写されるまでの時間間隔を短縮することができ、安定した処理が実行される。
【0046】
次のステップS3では、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させる。これによって、版用シャトル23Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート231を下方向(−Z)に移動させる。これによって、版用シャトル23Lに支持されたまま版PPが搬送位置よりも低いプリアライメント位置に移動して位置決めされる。
【0047】
次に、上ガイド駆動モータM81が作動して上ガイド812が移動し、各上ガイド812が版用シャトル23Lに支持される版PPの端面と当接して版PPを予め設定した水平位置に位置決めする。その後、各上ガイド駆動モータM81が逆方向に作動し、各上ガイド812が版PPから離間する。こうして、版PPのプリアライメント処理が完了すると、ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート34を下方向(−Z)に下降させて版PPの上面と当接させる。それに続いて、バルブV31、V32が開き、これによって上ステージ用の吸着機構により版PPが吸着プレート34に吸着される。
【0048】
こうして版PPの吸着が完了すると、ステージ昇降モータM31が逆方向に回転して、吸着プレート34が版PPを吸着保持したまま鉛直上方に上昇して版吸着位置XP23の鉛直上方位置に版PPを移動させる。そして、版用シャトル昇降モータM22Lが回転軸を回転させ、昇降プレート231を鉛直上方に移動させ、版用シャトル23Lをプリアライメント位置から搬送位置、つまり版吸着位置XP23に移動して位置決めする。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート22を(+X)方向に移動させ、空になった版用シャトル23Lを中間位置XP22に位置決めする。
【0049】
次のステップS4では、ステージ駆動モータM41が作動してアライメントステージ42を初期位置に移動させる。これによって、毎回スタートが同じ位置となる。それに続いて、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート541を上昇させ、リフトピン542を吸着プレート51の上面から鉛直上方に突出させる。こうして、ブランケットBLの投入準備が完了すると、図示を省略するブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスしてブランケットBLをリフトピン542の頂部に載置した後、装置100から退避する。次に、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート541を下降させる。これによって、リフトピン542がブランケットBLを支持したまま下降してブランケットBLを吸着プレート51に載置する。すると、下ガイド駆動モータM82が作動し、下ガイド822が移動し、各下ガイド822が吸着プレート51に支持されるブランケットBLの端面と当接してブランケットBLを予め設定した水平位置に位置決めする。
【0050】
こうしてブランケットBLのプリアライメント処理が完了すると、吸着バルブV52が開き、これによって下ステージ用の吸着機構に対して調圧された負圧が供給されてブランケットBLが吸着プレート51に吸着される。さらに、各下ガイド駆動モータM82が回転軸を逆方向に回転させ、各下ガイド822をブランケットBLから離間させる。これによって、パターニング処理の準備が完了する。
【0051】
次のステップS5では、センサ水平駆動シリンダCL52(図3)が動作してブランケット厚み計測センサSN51をブランケットBLの右端部の直上位置に位置決めする。そして、ブランケット厚み計測センサSN51がブランケットBLの厚みに関連する情報を制御部6に出力し、これによってブランケットBLの厚みが計測される。その後で、上記センサ水平駆動シリンダCL52が逆方向に動作してブランケット厚み計測センサSN51を吸着プレート51から退避させる。
【0052】
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート34を下方向(−Z)に下降させて版PPをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート34を昇降させて鉛直方向Zにおける版PPとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する。なお、このギャップ量は版PPおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。
【0053】
そして、押さえ部7の押さえ部材71を下降させてブランケットBLの周縁部を全周にわたって押さえ部材71で押さえ付ける。それに続いて、バルブV51、V52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された版PPに押し付けられる。その結果、ブランケットBLの中央部が版PPに密着して版PPの下面に予め形成されたパターンがブランケットBLの上面に予め塗布された塗布層と当接して当該塗布層をパターニングしてパターン層を形成する。
【0054】
次のステップS6では、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させて吸着プレート34が上昇して版PPをブランケットBLから剥離させる。また、剥離処理を行うために版PPを上昇させるのと並行して適時、バルブV51、V52の開閉状態を切替え、ブランケットBLに負圧を与えて吸着プレート51側に引き寄せる。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、吸着プレート34を上昇させて版PPをイオナイザ91とほぼ同一高さの除電位置に位置決めする。また、押さえ部7の押さえ部材71を上昇させてブランケットBLの押さえ付けを解除する。それに続いて、イオナイザ91が作動して上記版剥離処理時に発生する静電気を除電する。この除去処理が完了すると、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、版PPを吸着保持したまま吸着プレート34が初期位置(版吸着位置XP23よりも高い位置)まで上昇する。
【0055】
次のステップS7では、回転アクチュエータRA2、RA2が動作し、版用ハンド232、232を180゜回転させて原点位置から反転位置に位置決めする。これによって、ハンド姿勢が未使用姿勢から使用済姿勢に切り替わり、使用済みの版PPの受取準備が完了する。そして、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させる。これによって、版用シャトル23Lが版吸着位置XP23に移動して位置決めされる。
【0056】
一方、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、版PPを吸着保持したまま吸着プレート34が版用シャトル23Lのハンド232、232に向けて下降してハンド232、232上に版PPを位置させた後、バルブV31、V32が閉じ、これによって吸着プレート34の吸着機構による版PPの吸着が解除されて搬送位置での版PPの受け渡しが完了する。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート34を初期位置まで上昇させる。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(+X)方向に移動させる。これによって、版用シャトル23Lが使用済み版PPを保持したまま中間位置XP22に移動して位置決めされる。
【0057】
次のステップS8では、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(+X)方向に移動させる。これによって、処理前の基板SBを保持する基板用シャトル23Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。そして、版PPのプリアライメント処理および吸着プレート34による版PPの吸着処理と同様にして、基板SBのプリアライメント処理および基板SBの吸着処理が実行される。その後、基板SBの吸着が検出されると、ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート34を鉛直上方に上昇させて基板吸着位置XP23より高い位置に基板SBを移動させる。そして、基板用シャトル昇降モータM22Rが回転軸を回転させ、基板用シャトル23Rをプリアライメント位置から搬送位置に移動させて位置決めする。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させ、空になった基板用シャトル23Rを中間位置XP24に位置決めする。
【0058】
次のステップS9では、ブランケット厚みが計測され、さらに精密アライメントが実行された後で、転写処理が実行される。すなわち、パターニング処理での厚み計測と同様にして、ブランケットBLの厚みが計測される。なお、このようにパターニング直前のみならず、転写直前においてもブランケットBLの厚みを計測する主たる理由は、ブランケットBLの一部が膨潤することでブランケットBLの厚みが経時変化するためであり、転写直前でのブランケット厚みを計測することで高精度な転写処理を行うことが可能となる。
【0059】
次に、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を所定方向に回転させ、吸着プレート34を下方向(−Z)に下降させて基板SBをブランケットBLの近傍に移動させる。さらに、第2ステージ昇降モータM32が回転軸を回転させ、狭いピッチで吸着プレート34を昇降させて鉛直方向Zにおける基板SBとブランケットBLの間隔、つまりギャップ量を正確に調整する。このギャップ量については、基板SBおよびブランケットBLの厚み計測結果に基づいて制御部6により決定される。そして、パターニング(ステップS5)と同様に、押さえ部材71によるブランケットBLの周縁部の押さえ付けを行う。
【0060】
こうして、基板SBとブランケットBLとはいずれもプリアライメントされ、しかも転写処理に適した間隔だけ離間して位置決めされるが、ブランケットBLに形成されたパターン層を基板SBに正確に転写するためには、両者を精密に位置合せする必要がある。そこで、本実施形態では、撮像部43が、ブランケットBLにパターニングされたアライメントマークならびに基板SBに形成されるアライメントマークを撮像し、それらの画像を制御部6の画像処理部65に出力する。そして、それらの画像に基づいて制御部6は基板SBに対してブランケットBLを位置合せするための制御量を求め、さらにアライメント部4のステージ駆動モータM41の動作指令を作成する。そして、ステージ駆動モータM41が上記制御指令に応じて作動して吸着プレート51を水平方向に移動させるとともに鉛直方向Zに延びる仮想回転軸回りに回転させてブランケットBLを基板SBに精密に位置合せする(アライメント処理)。
【0061】
そして、バルブV51、V52が動作して吸着プレート51とブランケットBLとの間にエアーを部分的に供給してブランケットBLを部分的に膨らませる。この浮上部分が上ステージ部3に保持された基板SBに押し付けられる。その結果、ブランケットBLが基板SBに密着する。これによって、ブランケットBL側のパターン層が基板SBの下面のパターンと精密に位置合せされながら、基板SBに転写される。
【0062】
次のステップS10では、版剥離(ステップS6)と同様に、ブランケットBLからの基板SBの剥離、除電位置への基板SBの位置決め、押さえ部材71によるブランケットBLの押付解除、除電を実行する。その後、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート34が初期位置(搬送位置よりも高い位置)まで上昇する。
【0063】
次のステップS11では、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(+X)方向に移動させる。これによって、基板用シャトル23Rが基板吸着位置XP23に移動して位置決めされる。また、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を回転させ、基板SBを吸着保持したまま吸着プレート34を基板用シャトル23Rのハンド232、232に向けて下降させる。その後、バルブV31、V32が閉じ、これによって吸着機構による基板SBの吸着が解除される。そして、第1ステージ昇降モータM31が回転軸を逆回転させ、吸着プレート34を初期位置まで上昇させる。その後、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させて当該基板SBを保持したまま基板用シャトル23Rを中間位置XP24に移動させて位置決めする。
【0064】
次のステップS12では、バルブV51、V52が動作して吸着プレート51によるブランケットBLの吸着を解除する。そして、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート541を上昇させ、使用済みのブランケットBLを吸着プレート51から鉛直上方に持ち上げる。そして、ブランケット搬送ロボットが、装置100にアクセスして使用済みのブランケットBLをリフトピン542の頂部から受け取り、装置100から退避する。これに続いて、ピン昇降シリンダCL51が動作してリフトプレート541を下降させ、リフトピン542を吸着プレート51よりも下方向(−Z)に下降させる。
【0065】
次のステップS13では、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22が(+X)方向に移動する。これによって、版用シャトル23Lが版受渡し位置XP21に移動して位置決めされる。それに続いて、版洗浄装置の版搬送ロボットが使用済みの版PPを印刷装置100から取り出す。こうして版PPの搬出が完了すると、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させ、版用シャトル23Lを中間位置XP22に位置決めする。
【0066】
次のステップS14では、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させ、シャトル保持プレート22を(−X)方向に移動させる。これによって、基板用シャトル23Rが基板受渡し位置XP25に移動して位置決めされる。それに続いて、基板洗浄装置の基板搬送ロボットが転写処理を受けた基板SBを印刷装置100から取り出す。こうして基板SBの搬出が完了すると、シャトル水平駆動モータM21が回転軸を回転させてシャトル保持プレート22を(+X)方向に移動させ、基板用シャトル23Rを中間位置XP23に位置決めする。これにより、印刷装置100は初期状態に戻る。
【0067】
以上説明した本実施形態にかかる印刷装置100において、版PPおよび基板SBを吸着保持するために上ステージ部3に設けられた吸着機構について図5および図6に基づいて説明する。図5は吸着機構の平面配置を模式的に示す図であり、図6は吸着機構の側面図である。なお、図5は吸着機構を上側から見た図であり、図6は吸着機構を右側から見た図である。
【0068】
本実施形態では、吸着機構を構成する吸着手段として、吸着面に吸着溝341が形成された吸着プレート34、および吸着プレート34に配設された複数の吸着具35が設けられている。吸着溝341はX方向に延設された4本の溝とY方向に延設された4本の溝とで格子状に構成されており、互いに交差する溝同士が交差箇所において連通している。吸着具35は矩形の吸着プレート34の各辺に沿って周縁部に5つずつ設けられており、このうち角部に配置されたものが各辺で共有される配置形態となっている。さらに、吸着具35は吸着プレート34の中央部にも5つ設けられている。この中央部に設けられた吸着具35は、格子状の吸着溝341によって区画される各矩形領域の中心部にそれぞれ配置されており、さいころの5の目と同様の配置形態が採られている。なお、各吸着具35は、吸着プレート34の周縁部に形成された複数の切欠部342(図6)、および吸着プレート34の中央部に形成された複数の貫通孔(図示省略)にそれぞれ配置されている。
【0069】
上記のように配置された各吸着具35は、Y方向(以下、「配列方向」と称する)に沿って直線状に並んでいる。すなわち、配列方向に吸着具35が並んだ列がX方向において互いに異なる位置に5列形成されており、各列を構成する吸着具35の数は左側から順に5つ、4つ、3つ、4つおよび5つとなっている。なお、以下の説明において、+Y方向の端を「一方端」と称し、−Y方向の端を「他方端」と称する。
【0070】
図6に示すように、吸着溝341はバルブV31を介して、また各吸着具35はバルブV32を介して印刷装置100を設置する工場に予め装備される負圧供給源と接続されている。そして、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じてバルブV31が開成すると、吸着溝341に負圧が供給されて版PPまたは基板SBを吸着保持する。また、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じてバルブV32が開成すると、各吸着具35に負圧が供給されて版PPまたは基板SBを吸着保持する。なお、ここでは吸着溝341を構成する各溝に負圧を供給しているが、各溝は連通しているので1箇所に負圧を供給するだけでもよい。
【0071】
各吸着具35は、版PPおよび基板SBを吸着する吸着部351、吸着部351から上方に延設される軸部352、および軸部352の上端部に設けられる被当接部353を有する。吸着部351として、例えば弾性を有する吸着パッド等を使用することができる。また、軸部352および被当接部353はいずれも円筒状の部材であるがその外径が互いに異なっており、被当接部353の外径が軸部352の外径よりも大きくなっている。
【0072】
各吸着具35は、円筒状の筒状部材36に対して上下方向に相対移動可能な状態で取り付けられている。具体的には、筒状部材36の内径が吸着具35の軸部352の外径よりも大きくなっており、軸部352が筒状部材36に挿通された状態で設けられている。また、被当接部353の外径は筒状部材36の内径よりも大きく、吸着具35に自重のみが作用している状態においては、被当接部353の下端が筒状部材36の上端と当接することで、吸着具35が筒状部材36から抜け落ちないように構成されている。また、この状態において、各吸着具35の吸着部351の下端は吸着プレート34の吸着面から下方に突出しており、その突出量(以下、「初期突出量」と称する)は、配列方向の一方端に位置する吸着具35から他方端に位置する吸着具35まで配列順にしたがって他方端側に進むほど大きくなっている。以下、図6に示す吸着具35の状態を「初期状態」と称する。なお、配列方向において同じ位置に配置されている吸着具35については、初期突出量は全て同じとしている。
【0073】
各筒状部材36の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されるとともに、吸着プレート34とほぼ平行に配設される板状の支持部材37に雌ねじ(図示省略)が複数形成されている。そして、各筒状部材36の雄ねじと支持部材37の各雌ねじを螺合させることで、各筒状部材36が支持部材37によって支持されている。さらに、支持部材37はスペーサー38を介して吸着プレート34に例えばボルトによって固定されている。したがって、吸着プレート34が鉛直方向Zに昇降移動させられることで、吸着プレート34と一体的に各筒状部材36が昇降移動可能となっている。
【0074】
ここで、本実施形態では、各吸着具35および各筒状部材36はそれぞれ全て同じ寸法のものを使用している。このため、支持部材37に対する各筒状部材36の鉛直方向における取付位置を互いに異ならせることで、上記初期状態を実現している。具体的には、配列方向の配列順にしたがって他方端側に進むほど筒状部材36が下側に位置するよう、各筒状部材36が支持部材37に取り付けられている。
【0075】
図7は基板の剥離動作を説明する図である。図7(a)は基板SBとブランケットBLとが当接している状態を示し、図7(b)は基板SBをブランケットBLから剥離している状態を示し、図7(c)は基板SBをブランケットBLから剥離し終えた状態を示す。
【0076】
まず、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じてバルブV31、V32が開成すると、吸着溝341および各吸着具35によって基板SBの被吸着面(上面)が吸着保持される。そして、基板SBを吸着保持した状態で、図7(a)に示すように、基板SBのパターン転写面(下面)とブランケットBLの上面に形成されたパターン層(図示省略)とを加圧当接させる。このとき、各吸着具35の吸着部351の下端は吸着プレート34の吸着面と一致する。すなわち、各吸着具35がその軸部352が挿通されている各筒状部材36に対して初期突出量分だけ上方に相対移動して、各吸着具35の軸部352の一部が筒状部材36の上方に突出した状態となっている。ここで、基板SBとブランケットBLとの加圧当接時に吸着具35のみならず吸着溝341に負圧を供給して基板SBを吸着保持しているのは、吸着保持力を高めて基板SBの位置ずれを抑制し、転写精度を向上させるためである。
【0077】
次に、制御部6のバルブ制御部64からの開閉指令に応じてバルブV32の開成状態を維持したままバルブV31のみを閉じて、各吸着具35のみによって基板SBを吸着保持する。続いて、制御部6のモータ制御部63からの動作指令に応じてステージ昇降モータM31、M32が作動することで吸着プレート34が上昇させられる。このとき、各筒状部材36は吸着プレート34とともに上方に移動して、各筒状部材36の上端が当該筒状部材36に挿通されている吸着具35の被当接部353の下端と当接する。吸着具35と筒状部材36との当接後は、筒状部材36によって吸着具35が持ち上げられることで、吸着具35と筒状部材36とが一体となって上方に移動させられる。このとき、配列方向において同じ位置に配置されている複数の吸着具35については初期突出量を全て同じとしているので、吸着プレート34が上昇させられると配列方向において同位置にある各吸着具35は同じタイミングで筒状部材36と当接する。
【0078】
図7(a)に示すように、加圧当接時において各吸着具35の軸部352が筒状部材36の上方に突出する量が互いに異なっているため、吸着プレート34が上昇させられる際に各筒状部材36の上端が当該筒状部材36に挿通されている吸着具35の被当接部353の下端と当接するタイミングが互いに異なる。すなわち、本実施形態においては、配列方向の配列順にしたがって一方端の筒状部材36から順に吸着具35の被当接部353に当接する。そして、筒状部材36が当接した吸着具35は筒状部材36と一体的に上方に移動させられ、当該吸着具35によって吸着されている基板SBの被吸着領域が持ち上げられ、ブランケットBLから剥離する。
【0079】
図7(b)は、配列方向の真ん中に位置している吸着具35の被当接部353の下端と筒状部材36の上端が当接した時点の状態を示している。この状態に至るまでに、まず一方端に位置する吸着具35が筒状部材36と当接した状態で持ち上げられ、続いて配列方向において隣の吸着具35が筒状部材36と当接した状態で持ち上げられている。その結果、配列方向に沿って一方端側から他方端側へと一方向に基板SBのブランケットBLに対する剥離が進行する。さらに吸着プレート34が上昇させられると、配列方向の真ん中に位置している吸着具35が持ち上げられ、続いて図中右隣の吸着具35が筒状部材36と当接した状態で持ち上げられ、最後に他方端に位置する吸着具35が筒状部材36と当接した状態で持ち上げられる。その結果、図7(c)に示すように、基板SBの全域においてブランケットBLからの剥離が完了する。
【0080】
以上のように、本実施形態によれば、配列方向の一方端から他方端に向かって一方向に基板SBがブランケットBLから剥離される。基板SBが一方向に剥離されることで基板SBの全域にわたって同様の態様で剥離が進行するので、基板SBの全域においてパターン転写が均一的に行なわれ、パターン転写を良好に行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、支持部材37を吸着プレート34とともにブランケットBLから離間させる離間方向に移動させるだけで、各筒状部材36が配列順にしたがって各吸着具35と当接して当該吸着具35と一体的に離間方向に移動させられ、基板SBを一方向に剥離することができる。すなわち、各吸着具35の動作を個別に制御するための制御部を別に設ける必要がなく、装置の簡易化を図ることが可能となる。さらに、本実施形態では、吸着具35の軸部352が筒状部材36に挿通されているので、筒状部材36の内壁面がガイド部の役割を果たして吸着具35を安定的に昇降移動させることができる。また、このような筒状部材36が吸着具35の被当接部353と当接する役割も兼ねることで、部品点数の増加を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、各筒状部材36を支持部材37に対して螺着している。したがって、支持部材37に対する各筒状部材36のねじ込み量を変えるだけで、各筒状部材36と各吸着具35とが当接するタイミングを簡単に調整することができ、ひいては、ブランケットBLからの基板SBの剥離態様(剥離速度等)を調整することが可能となる。
【0083】
以上の本実施形態において、吸着具35が本発明の「吸着手段」に相当し、筒状部材36が本発明の「当接部材」に相当し、ステージ昇降モータM31、M32が本発明の「駆動部」として機能し、吸着プレート34、筒状部材36、支持部材37、スペーサー38およびステージ昇降モータM31、M32が一体となって本発明の「駆動手段」として機能する。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、各吸着具35の被当接部353とこれに対応する筒状部材36とが当接するタイミングを配列方向において互いに異ならせることで、配列順にしたがって各吸着具35を順番にブランケットBLから離間させるものとした。しかしながら、各吸着具35をそれぞれ昇降させる昇降駆動手段を別に設け、この昇降駆動手段を適宜制御することにより配列順にしたがって各吸着具35を順番にブランケットBLから離間させてもよい。また、各吸着具35の被当接部353に当接する当接部材は筒状である必要はなく、支持部材37が上方に移動させられる際に、各被当接部353と当接して当該被当接部353と一体移動できればどのような形態でも構わない。
【0085】
また、上記実施形態では、各吸着具35および各筒状部材36はそれぞれ全て同じ寸法のものを使用し、支持部材37に対する各筒状部材36の鉛直方向における取付位置を配列順にしたがって互いに異ならせるものとした。しかしながら、例えば各筒状部材36の鉛直方向の寸法を配列順にしたがって互いに異ならせることで、配列順にしたがって各吸着具35を順番にブランケットBLから離間させることも可能である。また、各吸着具35の被当接部353の鉛直方向の寸法を配列順にしたがって互いに異ならせたり、あるいは各吸着具35の被当接部353の鉛直方向における形成位置を配列順にしたがって互いに異ならせたりすることで、配列順にしたがって各吸着具35を順番にブランケットBLから離間させることも可能である。
【0086】
また、上記実施形態では、本発明における「配列方向」をY方向とした場合について説明したが、配列方向を別の方向とすることも可能である。例えば、配列方向をX方向とすることもできるし、また、配列方向をX方向およびY方向に対して斜めにすることもできる。配列方向を例えば矩形の基板SBの対角線方向とした場合、基板SBの一の角部から対角線方向において当該角部と対向する他の角部に向けて一方向に剥離することが可能である。
【0087】
また、上記実施形態では、基板SBとブランケットBLとの加圧当接時に吸着具35の他に吸着溝341に負圧を供給して基板SBを吸着保持するものとしたが、必ずしも吸着溝341で基板SBを吸着保持する必要はない。また、そもそも吸着プレート34に吸着溝341を設けないことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明は、担持体に形成されたパターン層と基板とを対向させた状態で担持体と基板とを当接させた後に、基板を担持体から剥離させてパターン層を基板に転写するパターン転写技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
34…吸着プレート(駆動手段)
35…吸着具(吸着手段)
36…筒状部材(当接部材、駆動手段)
37…支持部材(駆動手段)
351…吸着部
352…軸部
353…被当接部
BL…ブランケット(担持体)
SB…基板
M31、M32…ステージ昇降モータ(駆動部、駆動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7