(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の紙質判別装置は、紙の吸光度を検出して紙幣等の真偽を判別するための装置であって、衛生用紙における蛍光物質含有の有無を容易に判別するための装置ではない。
【0007】
このように、従来、蛍光物質含有の有無、とりわけ蛍光物質を有する衛生用紙の使用におけるパルプ繊維(以下、「紙粉」という)の脱落挙動に関して容易に判別できる技術は無かった。このため、例えば、衛生的な衛生用紙を需要者(購買者等)に提案する場合、需要者側から、蛍光物質が含まれていないことを確認したいとの要望を受けても、その場で調べることができなかった。このような場合、要望を一旦持ち帰り、分析装置を用いて蛍光物質が含まれていないことを調べ、その後、改めて分析結果を需要者に報告する必要があった。すなわち、需要者の要望に対して、迅速に対応することができなかった。
【0008】
したがって、蛍光物質含有の有無の判別が求められるとき、その場で容易に調べることができる判別技術が望まれる。その場で容易に判別できれば、需要者が正しい情報に基づいて衛生的な衛生用紙を選択・使用できるようになるため、品質誤認の防止や虚偽表示の防止にも貢献できる。さらに、製品の適正価格を判断する情報を提供することにもなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蛍光物質含有の有無を任意の場所で高い再現性をもって、迅速且つ容易に判別することができる紙質判別キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
本発明は、衛生用紙に蛍光物質が含まれているか否かを判別する紙質判別キットであって、紫外線を発する紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段からの紫外線が照射される被照射体と、を有してなり、前記被照射体は、その表面が前記衛生用紙で拭かれることにより前記衛生用紙から前記表面に紙粉を脱落させるものであり、前記紫外線照射手段は、前記表面に紫外線を照射して、前記紙粉に吸着している蛍光物質あるいは薬液により紙粉から溶出させた蛍光物質を励起させて発光させるものであることを特徴とする。薬液には、例えば水酸化ナトリウム水溶液を始めとする、各種塩基性の水溶液などがある。また、薬液はpHが11以上が好ましい。
【0011】
この構成により、衛生用紙に蛍光物質が含まれている場合、被照射体の表面に蛍光物質の発光(蛍光反応)を視認することができる。一方、衛生用紙に蛍光物質が含まれていない場合、被照射体の表面に蛍光反応は現れない。このように、本発明によれば、被照射体の表面を衛生用紙で拭いて紫外線を当てるだけの簡便な作業で、衛生用紙に蛍光物質が含まれているか否かを判別することができる。したがって、衛生用紙における蛍光物質含有の有無を任意の場所で、迅速且つ容易に判別することができる。
【0012】
また、衛生用紙における蛍光物質の存在を被照射体において可視化できるので、説得力のある判別結果を示すことができる。
【0013】
また、衛生用紙で拭いた後の被照射体において蛍光反応を視認できるので、蛍光物質を含む衛生用紙を使用すると、本来の拭き取り対象(例えば、人の皮膚、物品・食品の表面)にも蛍光物質が移る可能性があることを容易に理解することができる。
【0014】
上記発明は、前記表面に滴下され、前記衛生用紙により拭き取られる液体を有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、衛生用紙が液体によって脆くなるため、紙粉あるいは蛍光物質が衛生用紙から脱落し易くなる。よって、判別の精度を高めることができる。また、衛生用紙に蛍光物質が含まれている場合、薬液により、蛍光物質を紙粉から溶出・分離させることができ、蛍光物質のみに紫外線を暗所下で直接照射して蛍光反応を確認することもできる。したがって、蛍光物質が付着した紙粉の脱落に加え、蛍光物質を溶出させることによっても、判別を行うことができる。
【0016】
上記発明は、前記表面には、凹凸部が形成されることを特徴とする。
【0017】
この構成により、衛生用紙が凹凸部に擦り付けられるため、紙粉あるいは蛍光物質が衛生用紙から良好に脱落する。よって、判別の精度を一層高めることができる。また、凹凸部によって、例えば、被照射体の表面を、ハンドタオル・トイレットペーパーなどの使用時における手のひらの皺や手の甲の皺など、人体の皮膚の複数の皺に見立てることができる。あるいは、被照射体の表面を、キッチンペーパーなどで拭き取られる各種食品の表面や、紙製ワイパーなどで家庭・オフィス・実験室等に置かれる家具類を含む各種物品の表面に見立てることができる。このように、凹凸部により、実際の使用条件に近い状態を創出し、その条件を実際の使用状況と見立てた上での検査を実施することができる。
【0018】
上記発明は、透明性を備える材料で構成され、判別後の前記表面を覆う保護カバーを有することを特徴とする。
【0019】
この構成により、判別後の被照射体の表面を保護カバーで保護することができる。したがって、表面を保護した状態で被照射体の実物を保管したり、関係者に回覧したりすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の紙質判別キットによれば、衛生用紙における蛍光物質含有の有無を任意の場所で高い再現性をもって、迅速且つ容易に判別することができる。また、検査対象物(衛生用紙)の判別結果を最小限の分量で導くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、図面は、符号の向きに見るものとする。また、実施形態において、「前」、「後」は、各々、判別する者(検査者)から被照射体を見たときの「手前側」、「奥側」を示す。
【0023】
図1は、実施形態の紙質判別キットの構成要素の斜視図である。
図1に示すように、実施形態の紙質判別キット10は、衛生用紙(ここでは、3種類の衛生用紙11A〜11C)に蛍光物質が含まれているか否かを判別するものであって、紫外線を発する紫外線照射手段30と、紫外線照射手段30からの紫外線が照射される被照射体40と、被照射体40を支持する支持台50と、被照射体40に滴下される液体12とを主要素とする。
【0024】
紙質判別キット10は、これらの主要素を収納して持ち運ぶための収納バッグ13を有してもよい。収納バッグ13の形態および種類は、紙質判別キット10の各構成要素を収納できる構成であれば、任意である。また、紙質判別キット10には、必要に応じて、棒状器具14、実験用手袋15、ピンセット16、試験液17、撮像手段19などを構成要素として含めてもよい。
【0025】
衛生用紙11A〜11Cは、紙質判別キット10に供する試料であり、他の物品との接触や汚れの付着を避けるため、各々、保管袋18に密封状態で保管されることが望ましい。衛生用紙11A〜11Cは、例えば、キッチンタオル、ハンドタオル、トイレットロール、紙ワイパーであり、人の皮膚や、各種食品、家庭・オフィス・実験室等に置かれる家具類を含む各種物品から、水、油、汚れなどを手拭きなどで吸収するためのものである。また、衛生用紙11A〜11Cの使用対象には、食品・医療品などの製造に供される製造機械、品質管理用機器、品質管理用器具などが含まれる。
【0026】
この例では、衛生用紙11Aは、牛乳パックの再生紙からなる試料であり、蛍光物質を含んでいない。また、衛生用紙11Bは、バージンパルプを原料とする試料であり、衛生用紙11Aと同様に蛍光物質を含んでいない。そして、衛生用紙11Cは、古紙の再生紙からなる試料であり、古紙由来の蛍光物質を含んでいる。
【0027】
紫外線照射手段30には、長波長の紫外線を発するブラックライトを用いることができる。ここで、紫外線波長は、例えば、300nm〜450nmの範囲から設定することが望ましく、特に300nm〜375nm程度がより好適である。紫外線照射手段30の軸方向の一端には、紫外線を放射する照射部31が設けられる。紫外線照射手段30は、この照射部31から被照射体40の表面41に紫外線を照射して、紙粉と共に表面41に脱落した蛍光物質を励起させ、発光させるものである。紫外線照射手段30の光源には、各種の光源を用いることができるが、特に被照射体40に効率よく紫外線を照射でき、明るい環境でも明確な蛍光反応が得られるハンディタイプのLED(発光ダイオード)を用いることが好適である。
【0028】
被照射体40は、その表面41が衛生用紙11A〜11Cで拭かれることにより衛生用紙11A〜11Cから表面41に紙粉を脱落させるものである。この例では、被照射体40を板状に形成し、且つ、被照射体40の外形はいずれの形状でもよいが、長方形状に形成することが好ましい。これにより、被照射体40の上面には、長方形状の表面41が形成される。被照射体40の個数は、ここでは、試料(衛生用紙11A〜11C)の種類数に合わせ、少なくとも2枚以上に設定される。なお、被照射体40の表面41の詳細な構成については、後述する。
【0029】
液体12は、通常、容器21に保存されており、検査の際には、被照射体40の表面41に滴下され、衛生用紙11A〜11Cにより拭き取られるものである。液体12は、手軽に検査に用いることができる水(水量は数ml〜200ml程度、特に10ml前後が好適)が好ましいが、衛生用紙11A〜11Cを脆くする薬液、あるいは、蛍光物質の発光を高める薬液であれば、種類は任意である。容器21は、いわゆる滴下容器など各種の容器から選択可能である。液体12は、容器21から表面41に直接滴下してもよいし、ピペットやスポイトなどを用いて容器21から取り出して表面41に滴下あるいは塗布してもよい。
【0030】
支持台50は、被照射体40を支持する台であり、実験台や各種の机などに安定的に設置される台本体51と、台本体51の後部に回動可能に設けられる蓋体52とを有する。台本体51は、任意の形状から選択可能である。この例では、台本体51の外形を長方形状に形成して、台本体51の上面に、被照射体40の外形に合わせた長方形状の凹部53を形成した。凹部53は、被照射体40を着脱可能に保持する機能を有する。また、台本体51の後下部には、凹部53を前傾させるための脚部55が設けられる。脚部55の底面には、滑り防止材(例えば、ゴム材料からなる板材)を貼り付けるなどして、設置面において台本体51が滑ることを防ぐことが望ましい。なお、凹部53のさらに詳しい構成については、後述する。
【0031】
蓋体52は、矢印(1)で示す方向に回動可能であり、凹部53の開放側を上から開閉する。蓋体52の裏面には、判別後の表面41を覆う保護カバー56が着脱可能に設けられる。保護カバー56は、透明性を備える材料で構成され、接着面57を前面に有する。この接着面57には、通常、剥離シート(例えば、シリコーン製の剥離紙)58が剥離可能に装着されている。
【0032】
試験液17は、例えば、手洗い評価用に広く利用されている、いわゆる蛍光ローションであり、蛍光剤、安定剤、保湿剤等を含む。試験液17を保存するための容器22は、液体12の容器21と同様に、各種の容器から選択可能である。この試験液17は、被照射体40において蛍光反応を単に発生させたいとき(例えば、紙質判別キット10を用いた紙質判別のデモンストレーションを行うときなど)に用いる。
【0033】
次に、被照射体40の表面41の構成を
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、被照射体40の表面41は平面状に広がる面であるが、表面41には、多数の突起42および多数の凹み43からなる凹凸部45が形成される。凹凸部45は、樹脂成形品のシボ加工に代表される各種の凹凸加工によって得ることができる。凹凸部45の大きさ、深さ、個数、配列は、要求される機能に応じて任意に設定可能であるが、凹凸部45は、例えば、人の皮膚を見立てたものに構成することができる。また、被照射体40のうち少なくとも表面41は、蛍光反応が観察し易い黒色系または濃色系の材料で構成することが望ましい。
【0034】
被照射体40を構成する材料は、任意の材料から選択可能であるが、軽くて加工性の良い合成樹脂材料が好ましい。また、被照射体40の材料には、各種番丁のサンドペーパーを用いてもよい。さらに、被照射体40の材料には、麻などの各種の布、あるいは、布を板紙などの各種板材に貼り付けたものなどを用いてもよい。このように布を被照射体40の材料として用いる場合、衛生用紙11A〜11Cの紙粉や蛍光物質の脱落を良好にするため、格子状に織られた布、目の粗い布を選択することが望ましい。
【0035】
次に、支持台50の凹部53の構成を
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、凹部53の深さdは、被照射体40の厚みに応じて設定されるが、例えば、1〜20mmの範囲から選択され、3mm程度が望ましい。また、被照射体40の脱着作業を容易にするため、凹部53の内周壁53aまたは被照射体40の外周に、人の指が挿入可能な挿入部を設けてもよい。また、被照射体40が柔らかい素材で構成される場合、より安定的に被照射体40を凹部53に保持させるため、台本体51は、被照射体40よりも硬い基材で構成されることが望ましい。
【0036】
なお、本実施形態では、被照射体40を凹部53に保持させるようにしたが、この他、支持台50を無くして、被照射体40を机などの設置面に直接置いても差し支えない。この場合、被照射体40の底面に滑り防止材(例えば、ゴム材料からなる板材)を貼り付けて、設置面において被照射体40が滑ることを防ぐことが望ましい。
【0037】
次に、紙質判別キット10の使用方法を
図4〜
図9に基づいて説明する。
まず、検査者は、実験用手袋15(
図1参照)を身に付けた後、
図4(a)に示すように、台本体51の上に被照射体40を移動する(矢印(2))。そして、
図4(b)に示すように、被照射体40を凹部53に係合させて装着する。次に、
図5に示すように、被照射体40の表面41に、容器21(
図1参照)内の水などの液体12を適量(数ml〜200ml程度、特に10ml前後が好適)滴下し、表面41を濡らす。
【0038】
続いて、
図6(a)に示すように、調べたい衛生用紙(ここでは、衛生用紙11A)を、例えば棒状器具14(
図1参照)あるいはピンセット16(
図1参照)を用いて、保管袋18から取り出す(矢印(3))。取り出した衛生用紙11Aを適当な形に丸めたり折り畳んだりして、
図6(b)に示すように、衛生用紙11Aを用いて表面41上の液体12を拭き取る。このとき、凹凸部45(
図2参照)に衛生用紙11Aが擦り付けられて、衛生用紙11Aの一部の紙粉が表面41に脱落する。なお、より多くの紙粉や蛍光物質を衛生用紙から脱落させるため、比較検査対象物の検査方法との同一性を失わない程度に、上記に示す動作をそれぞれ複数回繰り返してもよい。
【0039】
液体12を表面41から完全に拭き取った後、
図7(a)に示すように、照射部31を下に向けて、紫外線照射手段30から紫外線32を表面41に照射する。衛生的な再生紙からなる衛生用紙11Aでは、若干の紙粉61が観察されるが、紙粉61自体が蛍光物質を含んでいないため、蛍光反応は現れない。この結果から、衛生用紙11Aは、蛍光物質を含まない製品であると判別される。
【0040】
以上の要領で、衛生用紙11B,11C(
図1参照)についても、未使用の別の被照射体40を使用して紙質の判別を行い、比較する。なお、被照射体40に対する紫外線照射手段30の位置・向きは任意であるが、
図7(c)に示すように、蛍光反応をより観察し易くするため、照射部31を表面41に近づけると共に、検査者の視界を妨げないように紫外線照射手段30を傾けるようにしてもよい。
【0041】
バージンパルプからなる衛生用紙11B(
図1参照)では、
図7(b)に示すように、紙粉61が多いものの、衛生用紙11A(
図1参照)の場合と同様、紙粉61自体が蛍光物質を含んでいないため、蛍光反応は現れない。
【0042】
これに対して、古紙の再生紙からなる衛生用紙11C(
図1参照)では、
図8に示すように、脱落した紙粉61に付着した蛍光物質62、あるいは、薬液により紙粉61から分離した蛍光物質62が、紫外線32により励起され蛍光反応が現れる。この結果から、衛生用紙11C(
図1参照)は、蛍光物質62を含む製品であると判別される。
【0043】
なお、紙質判別キット10のデモンストレーションを行うときなど、被照射体40の表面41に蛍光反応を単に発生させたいときは、液体12(
図1参照)の代わりに試験液17(
図1参照)を検査に供することで、蛍光物質を含まない衛生用紙を用いても蛍光反応を得ることができる。
【0044】
紙質の判別後、被照射体40をそのままの状態で保管したい場合は、剥離シート58(
図1参照)を剥がした後、
図9(a)に示すように、蓋体52を凹部53側に回動させて倒し(矢印(4))、保護カバー56の接着面57を被照射体40の表面41に被せて接着すると共に保護カバー56を蓋体52から分離する。これにより、
図9(b)に示すように、判別後の被照射体40の表面41が保護カバー56で覆われる。
【0045】
以上、説明した紙質判別キット10の効果について述べる。
衛生用紙11Cのように蛍光物質62が含まれている場合、被照射体40の表面41において蛍光反応を視認できる一方、衛生用紙11A,11Bのように蛍光物質が含まれていない場合、被照射体40の表面41に蛍光反応が現れない。したがって、衛生用紙11A〜11Cで表面41を拭いて紫外線32を当てるだけの簡便な作業で、衛生用紙11A〜11Cに蛍光物質62が含まれているか否かを判別することができる。紙質判別キット10によれば、衛生用紙11A〜11Cにおける蛍光物質含有の有無を任意の場所で高い再現性をもって、迅速且つ容易に判別することができる。また、検査対象物(衛生用紙11A〜11C)の判別結果を最小限の分量で導くことができる。
【0046】
また、蛍光物質62の存在を被照射体40の表面41において可視化できるので、説得力のある判別結果を示すことができる。なお、撮像手段19(例えば、動画、静止画、音声を記録可能なデジタルカメラなど)を用いて、検査の過程や判別の結果を記録して、記録した映像、画像、音声を需要者に提供してもよい。
【0047】
また、衛生用紙11A〜11Cで拭いた後の表面41において判別を行うので、衛生用紙11Cのように蛍光物質62が含まれている場合、衛生用紙11Cの本来の拭き取り対象(例えば、人の皮膚、物品・食品の表面)にも蛍光物質62が脱落する(移る)可能性があることを容易に理解することができる。
【0048】
また、水などの液体12を用いることにより、衛生用紙11A〜11Cが脆くなるため、衛生用紙11A〜11Cから紙粉61あるいは蛍光物質62が脱落し易くなる。よって、判別の精度を高めることができる。また、衛生用紙11Cのように蛍光物質62が含まれている場合、薬液(例えば、アルカリ性の液体)からなる液体12を用いて、蛍光物質62を紙粉61から溶出・分離させることができ、蛍光物質62のみに紫外線32を暗所下で直接照射して蛍光反応を確認することもできる。したがって、蛍光物質62が付着した紙粉61の脱落に加え、蛍光物質62を溶出させることによっても、判別を行うことができる。
【0049】
また、凹凸部45に衛生用紙11A〜11Cが擦り付けられるため、衛生用紙11A〜11Cから紙粉61あるいは蛍光物質62が良好に脱落する。これにより、判別の精度を一層高めることができる。また、凹凸部45によって、例えば、被照射体40の表面41を、ハンドタオル・トイレットペーパーなどの使用時における手のひらの皺や手の甲の皺など、人体の皮膚の複数の皺に見立てることができる。あるいは、被照射体40の表面41を、キッチンペーパーなどで拭き取られる各種食品の表面や、紙製ワイパーなどで家庭・オフィス・実験室等に置かれる家具類を含む各種物品の表面に見立てることができる。このように、凹凸部45により、実際の使用条件に近い状態を創出し、その条件を実際の使用状況と見立てた上での検査を実施することができる。
【0050】
また、判別後の被照射体40の表面41を保護カバー56で保護できるので、凹部53から取り外した被照射体40の実物を保管したり、関係者に回覧したりすることができる。例えば、
図10に示すように、需要者は、品質管理の記録として、品質管理帳63に被照射体40をロット毎に保管することができる。また、
図11に示すように、被照射体40の側部に穴65を設けることで、需要者は、いわゆる2穴ファイルなどに被照射体40を綴じたり、バインダーに綴じたりして、関係者に回覧することができる。
【0051】
さらに、実施形態では、被照射体40を凹部53に係合させて保持させるようにした。これにより、被照射体40が柔らかく変形し易い場合であっても、被照射体40の形態が安定化する。このため、被照射体40の表面41を衛生用紙11A〜11Cで拭き取る作業が行い易くなる。
【0052】
加えて、被照射体40の表面41が脚部55によって検査者側に前傾するので、被照射体40の表面41が観察し易くなる。
【0053】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0054】
例えば、前述した実施形態においては、液体を用いることで判別の精度を高めるようにしたが、液体が無くても十分な蛍光反応が得られる場合、液体は使用しなくてもよい。また、凹凸部についても同様であり、凹凸部が無くても蛍光反応が十分に得られる場合、被照射体の表面を平坦に形成しても差し支えない。