(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878827
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】インフレータ用ディフューザ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/261 20110101AFI20160223BHJP
【FI】
B60R21/261
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-121103(P2012-121103)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-244904(P2013-244904A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】寺田 正樹
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−123354(JP,U)
【文献】
特開2009−062025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグにインフレータのオリフィスから噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザであって、
前記オリフィスが形成された前記インフレータの頭部に嵌合可能な径を有する第一開口部と前記インフレータの頭部よりも大きい径を有する第二開口部とを備えた筒形状を有し、前記第一開口部を前記オリフィスよりも下方の位置まで嵌合したときに、前記第二開口部が前記オリフィスよりも上方の位置に配置されるとともに、前記インフレータの頭部の外周に配置された囲繞部材の上端部との間に一定の隙間を有するように配置され、
前記第一開口部は、前記インフレータの頭部よりも小さい径を有し、前記インフレータの頭部に圧入可能に構成されている、
ことを特徴とするインフレータ用ディフューザ。
【請求項2】
前記筒形状は、円錐台面により形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のインフレータ用ディフューザ。
【請求項3】
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを支持するリテーナと、を有するエアバッグ装置において、
前記エアバッグに前記インフレータのオリフィスから噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザを有し、
該インフレータ用ディフューザは、前記オリフィスが形成された前記インフレータの頭部に嵌合可能な径を有する第一開口部と前記インフレータの頭部よりも大きい径を有する第二開口部とを備えた筒形状を有し、前記第一開口部を前記オリフィスよりも下方の位置まで嵌合したときに、前記第二開口部が前記オリフィスよりも上方の位置に配置されるとともに、前記インフレータの頭部の外周に配置された前記リテーナの囲繞部の上端部との間に一定の隙間を有するように配置され、
前記第一開口部は、前記インフレータの頭部よりも小さい径を有し、前記インフレータの頭部に圧入可能に構成されている、
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
前記筒形状は、円錐台面により形成される、ことを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレータ用ディフューザ及びエアバッグ装置に関し、特に、インフレータを支持するダンパを有するエアバッグ装置に適したインフレータ用ディフューザ及び該インフレータ用ディフューザを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になっている。例えば、自動車等の車両を操舵するステアリングは、回転操作を舵角操作に変換するステアリングシャフトに組み付けられるステアリングホイールと、該ステアリングホイールの略中央に配置されるパッド部と、を有し、該パッド部の内部にエアバッグモジュールが配置されている。
【0003】
かかるエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを支持するリテーナと、を有する。ところで、車両の走行時やアイドリング時等に、ステアリングシャフトを通じて振動がステアリングホイールに伝達され、運転者の快適な運転が妨げられるおそれがある。そこで、インフレータをゴム等の弾性体により支持して制振する方法が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された制振構造は、インフレータを支持するダンパゴムを有し、ダンパゴムは、合成ゴム、エラストマー等の弾性材料によって形成され、インフレータのフランジ部と支持部材との間に配置されている。また、ダンパゴムは、略円筒形状を有し、インフレータの外周に均等な間隔で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−195048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された制振構造では、インフレータと支持部材との間にダンパゴムが配置されていることから、インフレータのフランジ部は、支持部材から離隔した位置に配置されており、ダンパゴムが配置されていない箇所には一定の隙間が形成される。また、インフレータは、ダンパゴムとともに振動させる必要があることから、インフレータを囲う支持部材やリテーナから離隔した状態になっており、インフレータ及びそのフランジ部の外周にも一定の隙間が形成されている。その結果、インフレータのオリフィスから噴出されるガスが、上述した隙間からインフレータの背面側に漏れてしまうという問題があった。
【0007】
特に、インフレータが振動している場合には、インフレータが片側に寄ってしまうことから、上述した隙間が大きくなりやすく、漏れるガスの分量も増えてしまう。かかるエアバッグの膨張に寄与しないガスの存在は、エアバッグ装置の効率を低下させ、インフレータの大型化を招来する原因にもなってしまう。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、インフレータとその支持部材との間に隙間を有する構造であっても、ガスの漏れを低減することができる、インフレータ用ディフューザ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグにインフレータのオリフィスから噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザであって、前記オリフィスが形成された前記インフレータの頭部に嵌合可能な径を有する第一開口部と前記インフレータの頭部よりも大きい径を有する第二開口部とを備えた筒形状を有し、前記第一開口部を前記オリフィスよりも下方の位置まで嵌合したときに、前記第二開口部が前記オリフィスよりも上方の位置に配置されるとともに、前記インフレータの頭部の外周に配置された囲繞部材の上端部との間に一定の隙間を有するように配置され
、前記第一開口部は、前記インフレータの頭部よりも小さい径を有し、前記インフレータの頭部に圧入可能に構成されている、ことを特徴とするインフレータ用ディフューザが提供される。
【0010】
また、前記筒形状は、円錐台面により形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを支持するリテーナと、を有するエアバッグ装置において、前記エアバッグに前記インフレータのオリフィスから噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザを有し、該インフレータ用ディフューザは、前記オリフィスが形成された前記インフレータの頭部に嵌合可能な径を有する第一開口部と前記インフレータの頭部よりも大きい径を有する第二開口部とを備えた筒形状を有し、前記第一開口部を前記オリフィスよりも下方の位置まで嵌合したときに、前記第二開口部が前記オリフィスよりも上方の位置に配置されるとともに、前記インフレータの頭部の外周に配置された前記リテーナの囲繞部の上端部との間に一定の隙間を有するように配置され
、前記第一開口部は、前記インフレータの頭部よりも小さい径を有し、前記インフレータの頭部に圧入可能に構成されている、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0012】
また、前記筒形状は、円錐台面により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係るインフレータ用ディフューザ及びエアバッグ装置によれば、インフレータから噴出されたガスをエアバッグの膨張展開に寄与可能な方向に案内することができることから、インフレータとその支持部材との間に隙間を有する構造であっても、ガスの漏れを低減することができる。その結果、エアバッグ装置の効率を向上させることができ、インフレータの小型化を図ることもできる。
【0014】
特に、本発明に係るインフレータ用ディフューザは、インフレータの外周に配置された囲繞部材との間に一定の隙間を有することから、インフレータのフランジ部を支持するダンパ(弾性体)を有する場合であっても、インフレータを振動可能な状態に保持することができ、ダンパの制振効果を維持することができる。
【0015】
また、本発明に係るインフレータ用ディフューザをインフレータの頭部に圧入可能な形状に構成することにより、インフレータ用ディフューザをインフレータに容易に嵌合させることができる。
【0016】
また、本発明に係るインフレータ用ディフューザを円錐台面からなる筒形状とすることにより、容易に傾斜面を有するリング部材を形成することができ、インフレータに嵌合しやすく、かつ、ガスを案内しやすい形状を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置を示す部品展開図である。
【
図2】
図1に示したダンパの構造を示す部品展開図である。
【
図3】
図1に示したインフレータ用ディフューザの作用を示す断面図であり、(A)は第一実施形態、(B)は比較例、を示している。
【
図4】
図3(A)におけるA部拡大図であり、(A)は第一実施形態、(B)は変形例、を示している。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るインフレータ用ディフューザを示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図5を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の実施形態に係るエアバッグ装置を示す部品展開図である。
図2は、
図1に示したダンパの構造を示す部品展開図である。
図3は、
図1に示したインフレータ用ディフューザの作用を示す断面図であり、(A)は第一実施形態、(B)は比較例、を示している。
図4は、
図3(A)におけるA部拡大図であり、(A)は第一実施形態、(B)は変形例、を示している。
【0019】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置は、
図1に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ1と、エアバッグ1にガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ1及びインフレータ2を支持するリテーナ3と、を有し、エアバッグ1にインフレータ2のオリフィス21から噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザ4を有し、インフレータ用ディフューザ4は、オリフィス21が形成されたインフレータ2の頭部22に嵌合可能な径を有する第一開口部41とインフレータ2の頭部22よりも大きい径を有する第二開口部42とを備えた筒形状を有し、第一開口部41をオリフィス21よりも下方の位置まで嵌合したときに、第二開口部42がオリフィス21よりも上方の位置に配置されるとともに、インフレータ2の頭部22の外周に配置されたリテーナ3の囲繞部31(囲繞部材)の上端部Prとの間に一定の隙間Δgを有するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
図1に示したエアバッグ装置は、例えば、運転席用エアバッグ装置であり、運転席の前面に配置されたステアリングの略中央部に配置されたステアリングボス部(図示せず)に接続されており、エアバッグ1を被覆するモジュールカバー5は、ステアリングのパッド部を構成している。そして、エアバッグ1は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、モジュールカバー5を開裂させて車室内に放出され、運転席に着座した乗員の前方に膨張展開される。
【0021】
前記エアバッグ1は、底部にインフレータ2を挿入可能な開口部(図示せず)を有し、この開口部にインフレータ2の頭部22が挿入され、内側からバッグリング6が配置され、ボルト61及びナット62等の固定具によりリテーナ3に固定され支持されている。
図1に示したエアバッグ1は、エアバッグ1の折り畳まれた状態を模式的に図示したものであり、折り畳まれた形状を保持するラッピングシートに包まれていてもよい。
【0022】
また、バッグリング6は、例えば、リテーナ3に固定されるフランジ部63と、インフレータ2の頭部22を被覆するドーム部64と、インフレータ2から噴出されたガスをエアバッグ1内に放出する複数の開口部65と、を有している。かかるバッグリング6は、エアバッグ1をリテーナ3に固定する機能だけでなく、折り畳まれたエアバッグ1とインフレータ2との間に一定の空間を形成する機能を有している。
【0023】
前記インフレータ2は、エアバッグ1に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。具体的には、インフレータ2は、リテーナ3に固定されるフランジ部23と、エアバッグ1の内部に挿入される頭部22と、頭部22に外周に形成された複数のオリフィス21と、エアバッグ1の外部に配置される底部24と、を有している。かかるインフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ1にガスを供給する。
【0024】
前記リテーナ3は、エアバッグ1及びインフレータ2を支持する部材であり、モジュールカバー5に接続可能に構成されている。具体的には、リテーナ3は、インフレータ2を挿入する開口部3aを有する囲繞部31と、囲繞部31の外周に形成された壁面部32と、底面部に配置された複数のスプリング支柱33及び接点支持ピン34と、を有している。囲繞部31は、例えば、壁面部32に接続された略平面部により構成される。また、壁面部32には、モジュールカバー5に形成された開口部51に係合可能な爪部32aが形成されていてもよい。
【0025】
スプリング支柱33の先端部は鉤状に形成されており、スプリング支柱33は、その外周にスプリング(図示せず)を装着した状態で、ステアリングボス部(図示せず)に係止される。したがって、リテーナ3、すなわち、エアバッグ装置は、スプリングによって上下に往復動可能にステアリングに接続される。また、リテーナ3の底面部及びステアリングボス部の表面部には、それぞれ金属製のホーンプレート(図示せず)が接続されており、ホーンプレートにはホーンスイッチを構成する接点が形成されている。リテーナ3に接続されたホーンプレートは、接点支持ピン34により接点の背面が支持されている。
【0026】
また、インフレータ2は、ダンパ7に弾性体71を介して接続されており、このダンパ7をリテーナ3の底面部に固定することにより、インフレータ2がリテーナ3に間接的に支持される。例えば、ボルト61を、バッグリング6、エアバッグ1、リテーナ3、ダンパ7の順番に挿通し、ボルト61の先端部にナット62を締め付けることによって、これらの部品を一体に固定することができる。
【0027】
ダンパ7は、
図2に示したように、弾性体71を支持する底板72と、底板72が接続されるケーシング73と、を有している。弾性体71は、例えば、ゴム製の略円柱状部品であり、先端部にインフレータ2のフランジ部23に係止可能な凹部71aを有している。底板72は、インフレータ2の底部24が挿通される開口部72aと、弾性体71に挿入される支持ピン72bと、ボルト61が挿通されるボルト挿通孔72cと、を有している。ケーシング73は、インフレータ2の底部24が挿通される開口部73aと、弾性体71が挿通される弾性体挿通孔73bと、ボルト61が挿通されるボルト挿通孔73cと、を有している。ケーシング73の内面には、インフレータ2が大きく振動して接触した場合に、その衝撃を吸収したり衝突音の発生を抑制したりするための緩衝材73dが配置されていてもよい。
【0028】
かかる構成により、インフレータ2は弾性体71を介してダンパ7に接続されている。そして、インフレータ2のフランジ部23とケーシング73との間並びにインフレータ2の底部24とケーシング73及び底板72との間には、インフレータ2が振動してダンパ7に対して相対移動可能となるように、一定の隙間が形成されている。なお、図示したダンパ7の構成は単なる一例であり、かかる構成に限定されるものではない。
【0029】
そして、本実施形態に係るエアバッグ装置は、エアバッグ1にインフレータ2のオリフィス21から噴出されるガスを案内するインフレータ用ディフューザ4を有している。インフレータ用ディフューザ4は、
図1に示したように、例えば、円錐台面により形成される筒形状を有しており、両端部に小径の第一開口部41と大径の第二開口部42とを有している。また、第一開口部41は、インフレータ2の頭部22よりも小さい径を有し、インフレータ2の頭部22に圧入可能に構成されている。なお、インフレータ用ディフューザ4は、帯状の金属板を環状に変形させて溶接することにより形成するようにしてもよいし、絞り出し加工によって形成するようにしてもよい。
【0030】
かかるインフレータ用ディフューザ4は、
図3(A)に示したように、インフレータ2の頭部22に圧入されて固定される。このとき、第一開口部41はインフレータ2のオリフィス21よりも下方の位置まで圧入され、第二開口部42はオリフィス21よりも上方の位置に配置され、インフレータ用ディフューザ4とリテーナ3の囲繞部31との間には一定の隙間が形成される。したがって、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスは、インフレータ用ディフューザ4の傾斜面に接触して上方に方向転換し、エアバッグ1を膨張展開させる方向に案内される。
【0031】
また、インフレータ用ディフューザ4は、インフレータ2の外周に配置された囲繞部31との間に一定の隙間を有することから、インフレータ2を支持するダンパ7を有する場合であっても、インフレータ2を振動可能な状態に保持することができ、ダンパ7の制振効果を維持することができる。
【0032】
具体的には、インフレータ用ディフューザ4は、
図4(A)に示したように、第一開口部41を構成する下端Paと、第二開口部42を構成する上端Pbと、を有し、インフレータ2の頭部22の側面に対して角度θだけ傾斜した円錐台面を有している。ここで、囲繞部31の上端部Prからインフレータ2の頭部22の側面に対して引いた垂線とインフレータ用ディフューザ4との交点をPdとすれば、上端部Prと交点Pdとの間隔はΔgにより規定される。この隙間Δgは、インフレータ2の振動を妨げない大きさに設定され、ダンパ7の制振機能が保持される。
【0033】
また、
図4(B)に示したように、囲繞部31の内縁に壁部31aが形成されている場合には、囲繞部31の壁部31aの上端部Prを基準にして隙間Δgを設定するようにすればよい。この隙間Δgを確保するためには、インフレータ用ディフューザ4の角度θを変更するようにしてもよいし、囲繞部31に形成された開口部3aの大きさを変更するようにしてもよいし、インフレータ2の頭部22の大きさを変更するようにしてもよい。
【0034】
ここで、
図3(B)に示した比較例は、インフレータ用ディフューザ4を有しない従来のエアバッグ装置を示している。この比較例では、インフレータ用ディフューザ4以外の構成については、
図1に示したエアバッグ装置と同じ構成である。したがって、比較例におけるインフレータ2は、ダンパ7によって振動可能に支持されていることから、リテーナ3及びダンパ7との間に一定の隙間を有している。その結果、図の矢印で示したように、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスは、囲繞部31に衝突した後、上下にガス流が分岐し、下方に流れたガスは上述した隙間からエアバッグ装置の外部に漏れてしまうこととなる。一方、上述したように、本実施形態では、インフレータ用ディフューザ4を配置することにより、下方に分岐するガス流の発生を抑制し、ガスの漏れを低減することができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4について、
図5を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、本発明の他の実施形態に係るインフレータ用ディフューザを示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、を示している。なお、
図5(A)〜(C)の各図は、
図4に示したインフレータ用ディフューザ4と同様の拡大図を示している。
【0036】
図5(A)に示した第二実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4は、下端Paから交点Pdまでの間に形成された傾斜面4aと、交点Pdから上端Pbまでの間に形成された円筒面4bと、を有している。すなわち、インフレータ用ディフューザ4は、円錐台面と円筒面とを連結した筒形状を有している。かかる構成によっても、第一実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4と同様に、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスをエアバッグ1の膨張展開に寄与させる方向に案内することができる。
【0037】
図5(B)に示した第三実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4は、下端Paから交点Pdまでの間に形成された第一傾斜面4cと、交点Pdから上端Pbまでの間に形成された第二傾斜面4dと、を有している。第二傾斜面4dは、インフレータ2から遠ざかる方向に第一傾斜面4cよりも大きく傾斜しており、インフレータ用ディフューザ4に衝突したガスをエアバッグ1側に拡散しやすく構成されている。すなわち、インフレータ用ディフューザ4は、中心角の大きさが異なる二つの円錐台面を上下に連結した筒形状を有している。
【0038】
かかる構成によれば、第一実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4と同様に、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスをエアバッグ1の膨張展開に寄与させる方向に効率よく案内することができる。なお、ここでは傾斜面の角度を二段階に変化させた場合について説明したが、傾斜面の角度を三段階以上に変化させるようにしてもよいし、滑らかに傾斜面の角度を変化させるようにしてもよい。
【0039】
図5(C)に示した第四実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4は、略円錐台面を有する第一開口部41の端部を内側に折り曲げたものである。かかる構成によっても、第一実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4と同様に、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスをエアバッグ1の膨張展開に寄与させる方向に案内することができる。
【0040】
なお、上述した第一実施形態〜第四実施形態に係るインフレータ用ディフューザ4は、いずれも
図1に示したように、ダンパ7を有するエアバッグ装置に適したものであるが、ダンパ7を有しない通常のエアバッグ装置にも適用することができ、インフレータ2のオリフィス21から噴出されたガスを、エアバッグ1を膨張展開させやすい方向に案内することができる。
【0041】
本発明は上述した実施形態に限定されず、エアバッグ装置は、助手席用エアバッグ装置の他、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等であってもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 エアバッグ
2 インフレータ
3 リテーナ
3a 開口部
4 インフレータ用ディフューザ
4a 傾斜面
4b 円筒面
4c 第一傾斜面
4d 第二傾斜面
5 モジュールカバー
6 バッグリング
7 ダンパ
21 オリフィス
22 頭部
23 フランジ部
24 底部
31 囲繞部
31a 壁部
32 壁面部
32a 爪部
33 スプリング支柱
34 接点支持ピン
41 第一開口部
42 第二開口部
51 開口部
61 ボルト
62 ナット
63 フランジ部
64 ドーム部
65 開口部
71 弾性体
71a 凹部
72 底板
72a 開口部
72b 支持ピン
72c ボルト挿通孔
73 ケーシング
73a 開口部
73b 弾性体挿通孔
73c ボルト挿通孔
73d 緩衝材