【実施例】
【0013】
図1に示すように、実施例に係るコンソールボックス10は、車両における乗員室の運転席と助手席との間のフロアに設置され、眼鏡等の身の回りの物品を収納し得る収納部12aが内部画成されたボックス本体12と、収納部12aの上部に配設されたリッド20とを備えている。コンソールボックス10では、リッド20の後部がヒンジ機構14により左右方向の軸周りに回転可能に支持され、略水平に倒伏して収納部12aの上部を塞いだ姿勢(
図1参照)と収納部12aの後縁に起立して収納部12aを開放した姿勢との間で、リッド20を姿勢変位し得るようになっている。なお、
図2および
図3の符号16は、ヒンジ機構14に後部が左右方向の軸周りに回転可能に支持された内トレイであり、内トレイ16は、リッド20を開放した状態で収納部12aに収納した状態から持ち上げて収納部12aから退避させることができる。
【0014】
図2および
図3に示すように、リッド20は、ヒンジ機構14に後部が回転可能に支持された支持体22と、この支持体22の上側に配設されたスライドレール32と、このスライドレール32に支持されて、支持体22の上側に配設された移動体42とを備えている。リッド20は、スライドレール32によって移動体42が支持体22に対して前後方向に往復動可能に支持され、上部がアームレストとして構成された移動体42の前後位置を調節し得るよう構成される。なお、
図2の符号30は、支持体22の後部に取り付けられ、ヒンジ機構14を覆う後部カバーである。ここで、移動体42は、支持体22および後部カバー30の上方に重なる第1位置(
図4(a)および
図6の実線参照)と、この第1位置から前方へ変位した第2位置(
図4(b)および
図6の二点鎖線参照)との間で直線的なスライド移動が許容され、基本的にリッド20の閉成姿勢において移動体42が移動される。また、リッド20は、移動体42が第1位置にある状態で基本的に開閉される。
【0015】
図2および
図5に示すように、支持体22は、左右方向の略中央部に形成されて、前後方向に延びる突状部24と、この突状部24を挟む左右に形成され、該突状部24よりも低く形成された一対の内壁部26,26とを有している。また、支持体22の前端部には、リッド20が開放しないように保持するロック機構18が設けられている。スライドレール32は、突状部24の上面に取り付けられる第1レール34と、ボール36を回転自在に保持するボールリテーナ38を介して第1レール34の上方に摺動自在に配設された第2レール40とから構成され、第2レール40に移動体42が取り付けられる(
図5参照)。スライドレール32は、ボールリテーナ38に第2レール40が固定され、ボールリテーナ38と共に第2レール40が第1レール34に対して前後方向にスライド移動するようになっている。
【0016】
図2および
図3に示すように、移動体42は、スライドレール32に支持される移動体ベース44と、この移動体ベース44の側面を覆い、該移動体42の側面を構成する側面カバー52と、この側面カバー52の上部を塞ぐように配設され、該移動体42の上面を構成する上面カバー54とを有している。移動体ベース44は、支持体22の上方を覆う天面部分44aの左右両側縁から下方に延出する一対の側面部分44b,44bを有し、全体として下方に開口する角樋状に形成されている。また、移動体ベース44には、天面部分44aの左右方向中央部を凹ませて下方に開口する凹溝部46が設けられ、この凹溝部46が移動体42の移動方向である前後方向に延在している。そして、移動体ベース44は、凹溝部46に支持体22の突状部24を収容した状態で、突状部24の上面に配設されたスライドレール32に凹溝部46の天井面が支持され、この際、該移動体ベース44の側面部分44bが内壁部26の外側方に配置される(
図5参照)。なお、上面カバー54は、高級感やクッション性等の所要の機能を発現する人工皮革や樹脂成形品等からなる表皮材55で乗員室側が被覆されている。
【0017】
図4(a)に示すように、スライドレール32は、第1レール34が支持体22の前側に偏った位置に配置され、第1位置において、ボールリテーナ38が第1レール34の後側にずれると共に第2レール40が第1レール34の後縁よりも後方へ延出して後部カバー30の上方に延在している。この際、第2レール40の前側に余分に形成された凹溝部46によって、支持体22の突状部24に対する移動体42の干渉が回避されるので、第1位置において移動体42を後部カバー30の上方に位置するよう、後側に配置することが可能となる。また、スライドレール32は、第2位置において、ボールリテーナ38が第1レール34の前側にずれると共に、第2レール40が第1レール34の前縁よりも前方へ延出して、これにより移動体42が支持体22の前縁よりも前方へ張り出すようになっている(
図4(b)参照)。この際、第2位置において、移動体42の下面にある凹溝部46の前端部(一端部)が支持体22の前縁(一縁)よりも外側に出るが、第1レール34が移動体42の後部に覆われて外方に露出しないようになっている。
【0018】
前記リッド20は、第1位置および第2位置の夫々において移動体42を移動規制する規制手段28,58を有している(
図6参照)。規制手段は、支持体22における内壁部26の内面に、移動体42の移動方向に離間して凹設された複数(実施例は2箇所)の係合凹部28と、移動体ベース44に下方へ延出するよう設けられた係合保持部50に保持され、対応の内壁部26の内面に向けて弾力的に進退する係合部58とから構成される。規制手段は、係合部58と係合凹部28との噛み合いによって、移動体42に対して移動を規制するように負荷をかけ、この負荷を越えて移動方向に力が加わると、係合部58が係合凹部28から抜け出して移動体42の移動が許容されるようになっている。
【0019】
図4に示すように、リッド20は、第1位置から第2位置側にずらした移動体42において支持体22の外側に臨む凹溝部46を塞ぐ保護手段60を備えている。保護手段60は、支持体22において突状部24の前側に配設された巻き取り部62と、この巻き取り部62から引き出されて、凹溝部46の前端部を越えて移動体42の前端部(一端部)に先端が取り付けられた板片64とから構成される。また、保護手段60は、移動体42を第1位置側へ付勢するよう構成される。ここで、保護手段60としては、移動体42の移動に伴い板片64の引き出し長さが変化しても、該移動体42に略一定の付勢力を付与し得る定荷重ばねが用いられている。保護手段60は、可撓性を有する金属簿板からなる板片64が、巻き取り部62で左右方向に延在する軸周りに巻かれており、移動体42が第1位置側に向かうにつれて自身の付勢力により板片64が巻き取り部62に巻き取られて縮むようになっている(
図4(a)参照)。また、保護手段60は、移動体42の第2位置側への移動に伴って巻き取り部62から板片64が引き出されて、巻いた状態にある板片64が移動体42における凹溝部46の下側に直線的に伸びるようになっている(
図4(b)参照)。ここで、リッド20では、スライドレール32と保護手段60とが、移動体42の移動方向に直列に並ぶように配置される。すなわち、板片64を巻き取る巻き取り部62と、この巻き取り部62から引き出された板片64における移動体42への取付部とが、移動体42の移動方向に沿って直線的に延在する凹溝部46に合わせて直線的に並べて配置される。板片64の先端は、左右方向両側に延出する引っ掛け片65を有する略「T」字状に形成され、この引っ掛け片65を、移動体ベース44の前端部上面に上方へ突出形成された引っ掛け爪45に引っ掛けることで移動体42に接続される。なお、板片64の表面には、ゴムまたは合成樹脂がコーティングしてある。
【0020】
前記保護手段60は、規制手段28,58による移動体42の規制力よりも付勢力が小さくなるよう設定されている。すなわち、移動体42には、第1位置側へ向けて保護手段60の付勢力が常に加わっているが、規制手段の係合凹部28と係合部58とが噛み合っている第1位置および第2位置において、保護手段60の付勢力に抗して移動体が停止される。
【0021】
前記移動体42は、第1位置において、支持体22および後部カバー30の上方に位置しており、このとき後側の係合凹部28に係合部58が嵌まり、前方への移動が規制されている。また、保護手段60は、板片64が巻き取り部62に巻き取られて縮んだ状態にある。移動体42を第1位置から前方に移動すると、支持体22の前縁から移動体42が前方に張り出すと共に凹溝部46の前端部が支持体22の前縁よりも前側に出る。この際、保護手段60の板片64が移動体42の移動につれて巻き取り部62から引き出され、これにより支持体22の前縁から凹溝部46の前縁に亘って板片64によって該凹溝部46の下面が覆われる。そして、移動体42が第2位置に至ると、スライドレール32の図示しないストッパにより移動体42の前方への移動が係止されると共に係合部58が前側の係合凹部28に嵌り、これにより移動体42の前後方向への移動が規制される。移動体42の第2位置において、支持体22の前縁から前側に出た凹溝部46の下面は、板片64によって塞がれている。ここで、保護手段60による移動体42の付勢力は、規制手段28,58による移動体42の規制力よりも弱く設定されているので、保護手段60の付勢によって第2位置から第1位置へ向けて移動体42が戻ることを回避でき、移動体42を第2位置で適切に保持できる。
【0022】
前記移動体42は、第2位置から第1位置に戻すと、板片64が巻き取り部62に巻き取られて縮み、この板片64の巻き取りにかかる付勢力によって、移動体42の第1位置側への移動が補助される。そして、移動体42が第1位置に至ると、スライドレール32の図示しないストッパにより移動体42の後方への移動が係止されると共に係合部58が後側の係合凹部28に嵌り、これにより移動体42の前後方向への移動が規制される。
【0023】
前記リッド20は、移動体42の前端部に把持部分が設けられ、移動体42を移動する際に使用者は移動体42の前端部をつかんで操作を行うようになっている。前述したように、移動体42を第2位置側に移動すると、凹溝部46が支持体22の前縁から前方に出るが、板片64によって支持体22から外方に臨む凹溝部46を覆っているので、使用者が移動体42の前端部をつかんでも、板片64に阻まれて凹溝部46に指が入らない。従って、凹溝部46に指が入ることで、移動体42の移動に際して支持体22と移動体42との間に指を挟むような事態を回避することができ、リッド20の使い勝手を向上させることができる。このように、支持体22の外方に臨む移動体42の凹溝部46を板片64で覆うことができるので、凹溝部46を移動体42の前端部近傍まで広くとることができ、長く設定した凹溝部46によって移動体42の移動に伴う支持体22との干渉を適切に回避でき、移動体42の移動範囲を大きく確保することができる。また、保護手段60は、スライドレール32と直列に並べて配置されているので、保護手段60の付勢力がかかる方向と、スライドレール32による移動体の移動方向とが揃い、保護手段60の付勢力が移動体42にバランスよく加わる。
すなわち、保護手段60を設けることによる移動体42のガタツキはなく、移動体42をスムーズに移動させることができる。しかも、保護手段60として定荷重ばねを用いることで、移動体42の移動に伴う板片64の引き出しまたは巻き取りによって付勢力が変化せず、移動体42の操作感を一定に保つことができる。更に、板ばねである板片64は、ある程度硬いので、使用者が触れた程度で凹溝部46に入り込むように撓むことはなく、板片64により凹溝部46に指が入ることを好適に防止できる。
【0024】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することができる。
(1)実施例では、車両内装部材としてリッドを例に挙げたが、アームレストやその他であってもよい。
(2)実施例の保護手段は、支持体の前縁部(一縁部)に設けられた巻き取り部から引き出された板片の先端を、凹溝部の前端部(一端部)を越えて移動体の前端部(一端部)に取り付けるよう構成したが、保護手段は、巻き取り部を移動体の前端部(一端部)に設け、この巻き取り部から引き出した板片の先端を、支持体の前縁部(一縁部)に取り付ける構成であってもよい。
(3)規制手段は、2箇所でなく、1箇所または3箇所以上で移動規制する構成であってもよい。また、規制手段を省略してもよい。