(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池用負極材料として一般的に炭素材料が用いられる。しかしながら、炭素材料は無定形炭素のようなアモルファス構造から天然黒鉛のような黒鉛構造まで多様な構造を有しており、その微細構造が電池特性に大きな影響を与える。
【0003】
特に、炭素材料表面の構造は、充放電における電解液との反応およびリチウムイオンの挿入脱離に大きく関係している。この表面構造を知るための手法のひとつに、ラマン分光スペクトルにおける、1300〜1400cm
−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm
−1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比であるR値:
R値=ID/IG
が用いられる。R値が低い材料は、材料表面の構造がベーサル面の割合が多いということがいえる。これとは逆に、R値が高い炭素材料は、エッジ部分が多く露出していることが示唆される。
【0004】
このことから、R値>0.4の炭素材料は、エッジ面が多く露出している材料であり、リチウムイオンが挿入脱離をしやすいため、高速充放電性能に優れる反面、表面の反応活性が高く、不可逆容量が大きくなり、結果的に容量の低下を招いていた。このような問題を解決するために、これまで、粒子表面にエッジ面を露出させ、粒子内部は高結晶性を持つ材料が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、広角X線回折法による002面の面間隔d002が0.337nm未満、結晶子サイズLcが90nm以上、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm
−1のピーク強度に対する1360cm
−1のピーク強度比であるR値が0.20以上である電極用炭素材料は、炭素粒子の結晶性は高いが、粒子の表面近傍部は荒れて歪みが多い状態すなわちエッジ部の存在量が高くなっていることを示すと記載され、d002が0.337nm未満、Lcが90nm以上であり、かつR値が0.20以上、かつタップ密度が0.75g/cm
3以上である電極用炭素材料が提案されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、黒鉛粒子表面活性と非常に相関の高い表面電子構造を表す物性値としてアルゴンレーザー光を用いた表面増強ラマン分光スペクトルから求められる黒鉛化度Gs=Hsg/Hsd(ここで、Hsgは1580cm
−1以上かつ1620cm
−1以下の範囲にピークを有するシグナルの高さであり、Hsdは1350cm
−1以上かつ1400cm
−1以下の範囲にピークを有するシグナルの高さである。)を10以下とすることで、黒鉛粒子の表面が非結晶質で充分に覆われたものとなり、炭素系負極材料は初充電時の不可逆容量を大きく低減することができると記載されている。
【0007】
しかし、これらは、負極材料の表面構造を規定する方法では負極材料自体のそれを十分把握していたとは言えず、負極材料の部分的な情報で規定されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウムイオン二次電池に使用される炭素材料には、より黒鉛の理論容量(372mAh/g)に近い容量を持ちつつ、不可逆容量が少なく、急速充放電可能である炭素材料が求められるが、いまだ、これら全ての能力を十分に満足する材料は提供されるに至っていない。
【0010】
そこで、本発明は、充電容量、初期充放電効率およびレート特性に優れた二次電池を製造することができるリチウムイオン二次電池用負極材料、その負極材料を用いるリチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、炭素材料において、波長514.5nmのアルゴンレーザーを用いたラマン分光スペクトル測定における、1300〜1400cm
−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm
−1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比であるR値(ID/IG)を100点以上の異なる点で測定したときの頻度分布が、
(1)0.2≦R値≦0.3: 5〜20%、および
(2)0.3<R値<1.2: 40〜95%
を満足する炭素材料を含有するリチウムイオン二次電池用負極材料を用いると、充電容量、初期充放電効率およびレート特性に優れた二次電池を製造することができることを知得し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に掲げる[1]〜[5]を提供する。
[1]ラマン分光スペクトル測定における、1300〜1400cm
−1の範囲にあるピーク強度(ID)と1580〜1620cm
−1の範囲にあるピーク強度(IG)との強度比であるR値(ID/IG)を100点以上の異なる点で測定したときの頻度分布が、
(1)0.2≦R値≦0.3:5〜20%、および
(2)0.3<R値<1.2:40〜95%
を満足する炭素材料を含有し、
前記炭素材料が、
i)R値<0.2の割合が80質量%以上
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料、
ii)0.2≦R値≦0.3の割合が10〜40質量%
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料、および
iii)0.3<R値<1.2の割合が80質量%以上
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料
から
なる群から選ばれる少なくとも2種以上の混合物である、リチウムイオン二次電池用負極材料。
[2]前記頻度分布が、さらに、
(3)R値<0.2:40%以下
を満足する、上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
[3]上記[1]または[2]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を含有するリチウムイオン二次電池負極。
[4]上記[3]に記載のリチウムイオン二次電池負極を有するリチウムイオン二次電池。
[5]i)R値<0.2の割合が80質量%以上
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料、
ii)0.2≦R値≦0.3の割合が10〜40質量%
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料、および
iii)0.3<R値<1.2の割合が80質量%以上
、R値≧1.2の割合が0質量%である炭素材料
から
なる群から選ばれる少なくとも2種以上を混合する工程を備える、上記[1]または[2]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、充電容量、初期充放電効率およびレート特性に優れた二次電池を製造することができるリチウムイオン二次電池用負極材料、その負極材料を用いるリチウムイオン二次電池負極および/またはリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料(以下「本発明の負極材料」ともいう。)は、ラマン分光スペクトル測定における、1300〜1400cm
−1の範囲にあるピーク強度(ID)と、1580〜1620cm
−1の範囲にあるピーク強度(IG)との比であるR値:
R値=ID/IG
を100点以上の異なる点で測定した場合の頻度分布(以下「R値の頻度分布」という。)が、
(1)0.2≦R値≦0.3: 5〜20%、および
(2)0.3<R値<1.2: 40〜95%
を満足する炭素材料を含有する。
【0016】
上記頻度分布は、
(1)0.2≦R値≦0.3: 5〜20%、および
(2’)0.3<R値<0.8: 40〜95%
を満足することが好ましく、
(1)0.2≦R値≦0.3: 5〜20%、および
(2”)0.3<R値<0.6: 40〜95%
を満足することがより好ましい。
R値が大きいほど、炭素材料のエッジ面が多く露出している材料であり、リチウムイオンが挿入脱離をしやすいため、高速充放電性能に優れる反面、表面の反応活性が高く、不可逆容量が大きくなり、結果的に容量の低下を招くが、R値が小さいほど材料表面の構造がベーサル面の割合が多く、容量の低下を招きにくく、好ましい。
【0017】
上記頻度分布は、さらに、
(1)0.2≦R値≦0.3:5〜20%
(2)0.3<R値<1.2:40〜95%、および
(3)R値<0.2:40%以下
を満足することが好ましく、
(1)0.2≦R値≦0.3:5〜20%
(2’)0.3<R値<0.6:40〜95%、および
(3)R値<0.2:40%以下
を満足することがより好ましく、
(1)0.2≦R値≦0.3:5〜20%
(2”)0.3<R値<0.6:40〜95%、および
(3)R値<0.2:40%以下
を満足することがさらに好ましい。
R値<0.2の炭素材料の割合が増加すると、材料表面の構造がベーサル面の割合が多いので、リチウムイオン二次電池に不可逆容量を小さく抑えることができる。
【0018】
ここで、R値の頻度分布の測定方法は、100点以上の異なる点でR値を測定する方法であれば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、R値の頻度分布は、顕微鏡にて負極材炭素粒子を捉えた視野内において、少なくとも100箇所以上のラマン分光測定を行うことにより測定することができる。
【0019】
炭素材料には大きく分けて、非黒鉛系と黒鉛系とがある。上記非黒鉛系炭素材料としては、例えば、ハードカーボン等が挙げられる。また、上記黒鉛系炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、天然黒鉛を基材としピッチおよび/または樹脂等の有機化合物を物理的および化学的な手法により処理して作製される天然黒鉛複合材料、石炭系ピッチ、石油系ピッチを熱処理して得られるメソフェーズ小球体またはバルクメソフェーズ等の非造粒の炭素質粒子、さらに炭素化を進めた塊状のコークス等を約3000℃の高温で人工的に黒鉛化したもの等が挙げられる。本発明においては、どちらの炭素材料も用いることができる。
【0020】
上記炭素材料は、R値の頻度分布が上記範囲を満たす限り、1種類の炭素材料を単独で使用するものであってもよいし、2種類以上の炭素材料を混合して使用するものであってもよい。
【0021】
上記炭素材料は、2種類以上の炭素材料の混合物である場合は、
i)R値<0.2の割合が80質量%以上である炭素材料、
ii)0.2≦R値≦0.3の割合が10〜40質量%である炭素材料、および
iii)0.3<R値<1.2の割合が80質量%以上である炭素材料
から選ばれる少なくとも2種以上の混合物であることが好ましい。
このようなR値の頻度分布を有する炭素材料を2種類以上混合すると、1種類を単独で使用する場合に比べて、負極材のR値の頻度分布の制御がしやすくなる。
【0022】
また、「iii)0.3<R値<1.2の割合が80質量%以上である炭素材料」に代えて、
iii’)0.3<R値<0.8の割合が80質量%以上である炭素材料、または
iii”)0.3<R値<0.6の割合が80質量%以上である炭素材料
を用いてもよい。
【0023】
本発明の負極材を構成する炭素材料は、単相構造を有する炭素材料であってもよいし、少なくとも2相以上からなる多相構造を有する炭素材料であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
多相構造である場合には、それに対応して、X線広角回折において少なくとも2つのピークを有することが好ましい。すなわち、好ましくは、核の炭素質物(N)に対応するX線広角回折のピークとして、多相核を形成する炭素質物(N)と、この核の表面に形成される表層の炭素質物(S)の少なくとも2相からなる多相構造を有する。さらに、多相構造に対応して、X線広角回折において少なくとも2つのピークを有することが好ましい。
本発明の負極材料は、少なくとも2相以上からなる多相構造を有する炭素材料を含有し、単相構造を有する炭素材料を含有しないことが好ましい。
多相構造を有する炭素材料は、充電容量、初期充放電効率およびレート特性を改善する効果が大きいからである。
【0024】
また、本発明において使用する炭素材料は、レーザー回折式粒度分布計により測定した平均粒径が1〜30μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。さらに、炭素材料の形状は、特に限定されず、例えば、球状、板状、鱗片状、糸状等のいずれあってもよいが、鱗片状又は鱗片状に近い形状のものが好ましい。なお、形状が板状または鱗片状の場合の平均粒径は、その粒子と同一体積の球状粒子の平均粒径に換算した値とし、糸状の場合の平均粒径は、その最長部の平均長さとする。
【0025】
なお、本発明の負極材料は、非炭素質活物質を含有しないことが好ましい。
非炭素質活物質を含有すると、本発明の負極材料を用いるリチウムイオン二次電池のサイクル特性に悪影響を与えるおそれがあるからである。
【0026】
上記非炭素質活物質は、特に限定されないが、例えば、Liを吸蔵しうる金属または半金属の合金または金属間化合物が挙げられる。より具体的には、Si、Sn、Al、Zn、In、P、Cの1種以上の金属または半金属を含む合金または金属間化合物、Li、Si、Sn、V、Mn、In、Ni、Mg、Ca、B、Pの1種以上の金属または半金属の酸化物、Cr、Zr、Fe、Ti、In、Cu、Agの1種以上の金属の硫化物、Co、Liの1種以上の金属の窒化物、よりなる群から選ばれた1種以上が挙げられる。
【0027】
2.リチウムイオン二次電池用負極
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下「本発明の負極電極」ともいう。)は、上記本発明の負極材料を用いて従来公知の方法により作製することができる。本発明の負極電極の作製方法としては、具体的には、例えば、上記本発明の負極材料とバインダとを混合することによって負極合剤を調製し、この負極合剤を、集電体の片面または両面に塗布することで負極合剤層を形成する方法が挙げられる。
【0028】
上記バインダは、特に限定されず、従来公知の負極合剤用バインダを用いることができるが、電解質に対して化学的安定性および電気化学的安定性を有するものを用いることが好ましい。バインダとしては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、上記バインダの負極合剤中の含有量は、特に限定されないが、負極合剤の全量中、1〜20質量%とすることが好ましい。
この含有量であると、負極材料の性能を妨げることなく、安定な電極を形成することができる。
【0029】
本発明の負極電極の作製方法では、上記負極合剤を負極作製用の従来公知の分散媒中に分散させてペースト状にした後、集電体にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥してもよい。上記負極合剤を上記分散媒でペースト状にして負極合剤ペーストとして用いることによって、負極合剤層がより均一かつ強固に集電体に接着されるため、好ましい。具体的には、例えば、上記負極合剤と、スチレンブタジエンゴム等の水分散粘結剤と、カルボキシメチルセルロース等の水溶性粘結剤と、水および/またはアルコール等の分散媒とを混合してスラリーとした後、ニーダー、ミキサー等を用いて混練し、負極合剤ペーストを調製することができる。この負極合剤ペーストを、集電材の片面または両面に塗布し、乾燥すれば、負極合剤層が集電材により均一に接着した負極を得ることができる。
【0030】
3.負極特性
本発明のリチウムイオン二次電池(以下「本発明の二次電池」ともいう。)の負極特性は、本発明の負極電極を用いてリチウムイオン二次電池(以下「評価用電池」ともいう。)を作製し、放電容量、初期充放電効率およびレート特性によって評価することが好ましい。なお、評価試験は25℃の温度下で行うことが好ましい。以下に、具体的な評価方法を例示する。
【0031】
〈放電容量・初期充放電効率〉
放電容量および初期充放電効率は、同一の評価用電池を用いて評価してもよいし、それぞれ別の評価用電池を用いて評価してもよい。
回路電圧が0mVに達するまで、0.9mAの定電流充電を行う。
その後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続ける。この間の通電量から充電容量を求める。
120分間休止する。
次に、0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行う。この間の通電量から放電容量を求める。
上記放電容量を求める充電−放電のサイクルを第1サイクルとする。
初期充放電効率を次式から計算する。
初期充放電効率(%)=(第1サイクルの放電容量/第1サイクルの充電容量)×100
なお、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料から離脱する過程を放電とする。
【0032】
〈レート特性〉
放電容量および初期充放電効率を評価した後、以下の評価を行う。
上記放電容量からそれぞれ0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cとなる電流値を、次式を用いて計算する。
0.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×0.5
1.0C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×1.0
1.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×1.5
2.0C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×2.0
2.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×2.5
第1サイクル後、0.5C充放電、0.5C充放電、0.5C充電1.0C放電、0.5C充電1.5C放電、1.0C充電2.0C放電、0.5C充電2.5C放電の順番で充放電を行う。
各充放電は回路電圧が0mVに達するまで各レートの電流値にて定電流充電を行い、定電圧充電に切り替え、電流値が20μAになるまで充電を続け、10分間休止する。
次に、各レートの電流値にて回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行う。20分間休止し、次の充放電に移る。
各電流値で得られる充放電容量から、次式を用いて各レートでの充電率(%)および放電率(%)を計算する。
充電率(%)=(各レートでの充電容量/第1サイクルでの放電容量)×100
放電率(%)=(各レートでの放電容量/第1サイクルでの放電容量)×100
【実施例】
【0033】
[実施例1]
1.負極材料の製造
(炭素材料A)
循環型メカノフュージョンシステムAMSを用いて天然黒鉛系粒子とコールタールピッチを複合化させ複合炭素材料前駆体を得た。これをるつぼに充填し、1300℃で熱処理することで、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Aを調製した。
R値分布は、顕微レーザラマン分光装置(LabRAM ARAMIS,堀場製作所製)を用い、顕微鏡にて負極材炭素粒子を捉えた視野内において、少なくとも100箇所以上のラマン分光測定を行うことにより測定した。
平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(LMS−300,セイシン企業製)により測定した。
【0034】
(炭素材料B)
同様の方法で、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Bを調製した。
【0035】
(炭素材料C)
コールタールピッチを熱処理することで得られたメソフェーズ小球体をるつぼに充填して3000℃で黒鉛化処理を行った後、ポリアクリル酸を0.5質量%添加し、循環型メカノフュージョンシステムAMSを用いて表面改質を行い、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Cを調製した。
【0036】
(負極材料)
炭素材料Aを5質量%、炭素材料Bを85質量%、および炭素材料Cを10質量%の質量割合で混合し、表2に示すR値分布を有する負極材料を製造した。
【0037】
2.負極の作製
製造した黒鉛系負極材料と、固形分で、1質量%のカルボキシメチルセルロースアンモニウムと、1質量%のカルボキシ変性スチレンブタジエンゴムとを混合し、分散媒として水を用い、ハイブリットミキサーにより混合および攪拌をして、負極合剤ペーストを製造した。このペーストを15μm厚みの銅箔上に塗布し、110℃の温度下にて真空乾燥させ、負極電極を作製した。
【0038】
3.リチウムイオン二次電池の作製
(負極)
作製した負極合剤ペーストを、厚さ15μmの銅箔上に均一な厚さで塗布し、さらに真空中110℃で分散媒の水を蒸発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をハンドプレスによって12kN/cm
2(120MPa)で加圧し、さらに直径16.0mmの円形状に打抜くことで、銅箔に密着した負極合剤層(厚み65μm)を有する負極電極を作製した。
【0039】
(正極)
リチウム金属箔を、ニッケルネットに押付け、直径16.0mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電体と、前記集電体に密着したリチウム金属箔(厚さ0.5mm)からなる正極を作製した。
【0040】
(電解液・セパレータ)
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/Lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
調製した非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚さ20μm)に含浸させ、電解液が含浸されたセパレータを作製した。
【0041】
(リチウムイオン二次電池)
ボタン型のリチウムイオン二次電池(
図1参照)を製造した。以下、
図1を参照しながら説明する。
電解液が含浸されたセパレータ5を、集電体7bに密着した作用電極2と、集電材7aに密着した対極4との間に挟んで積層した。
その後、作用電極2を外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。
これより、外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円筒状の対極(正極)4、電解液が含浸されたセパレータ5、負極合剤からなる円盤状の作用電極(負極)2及び銅箔からなる集電体7bが積層されたボタン型二次電池を製造した。
このボタン型二次電池は、実電池において、負極活物質として使用可能な黒鉛質物粒子を含有する作用電極2と、リチウム金属箔とからなる対極4とから構成される電池である。
【0042】
4.電池特性の評価
製造したリチウムイオン二次電池を評価電池として用いて、以下の方法により電池特性を評価した。これらは25℃の温度下での充放電試験の結果から算出した。なお、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料から離脱する過程を放電とした。
電池特性を評価した結果を表3に示す。
【0043】
(放電容量・初期充放電効率)
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、定電圧充電に切替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に、0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量を求めた。これを第1サイクルとした。
次式から初期充放電効率を計算した。
初期充放電効率(%)=(第1サイクルの放電容量/第1サイクルの充電容量)×100
【0044】
(レート特性)
放電容量および初期充放電効率を評価した後、以下のような評価を行った。
上記放電容量からそれぞれ0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cとなる電流値を、次式を用いて計算した。
0.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×0.5
1.0C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×1.0
1.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×1.5
2.0C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×2.0
2.5C電流値=1サイクルでの放電容量×負極質量×2.5
第1サイクル後、0.5C充放電、0.5C充放電、0.5C充電1.0C放電、0.5C充電1.5C放電、1.0C充電2.0C放電、0.5C充電2.5C放電の順番で充放電を行った。
各充放電は回路電圧が0mVに達するまで各レートの電流値にて定電流充電を行った後、定電圧充電に切り替え、電流値が20μAになるまで充電を続けた後、10分間休止した。
次に、各レートの電流値にて回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。20分間休止した後、次の充放電に移った。各電流値で得られた充放電容量から、次式を用い各レートでの充電率(%)および放電率(%)を計算した。
充電率(%)=(各レートでの充電容量/第1サイクルでの放電容量)×100
放電率(%)=(各レートでの放電容量/第1サイクルでの放電容量)×100
【0045】
(電池特性の評価基準)
充電容量350mAh/g以上、初期充放電効率92%以上、充電率69%以上、放電率2C 95%以上、放電率2.5C 90%以上を優れていると評価する。
【0046】
[実施例2]
1.黒鉛材料の製造
(炭素材料B)
実施例1と同様の方法によって、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Bを調製した。
【0047】
(炭素材料D)
コールタールピッチを熱処理することで得られたメソフェーズ小球体をるつぼに充填して3000℃で黒鉛化処理を行った後、SiO
2を0.5質量%添加し、循環型メカノフュージョンシステムAMSを用いて表面改質を行い、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Dを調製した。
【0048】
(炭素材料E)
実施例1と同様の方法で、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Eを調製した。
【0049】
(負極材料)
実施例1と同様に、炭素材料Bを30質量%、炭素材料Dを57質量%、および炭素材料Eを13質量%の質量割合で混合し、表2に示すR値分布を有する負極材料を製造した。
【0050】
2.負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池特性の評価
製造した黒鉛系負極材料を用いて、実施例1と同様にして、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池特性の評価を行った。
結果を表3に示す。
【0051】
[比較例1]
下記に示すR値分布を有する天然黒鉛(表面改質を行わず,平均粒径10μm)を負極材料として準備した。
(1)R値<0.2: 86%
(1)0.2≦R値≦0.3: 14%
(2)0.3<R値<1.2: 0%
(3)R値≧1.2: 0%
準備した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0052】
[比較例2]
コールタールピッチを熱処理することで得られたメソフェーズ小球体をるつぼに充填して3000℃で黒鉛化処理を行い、下記に示すR値分布を有する負極材料を製造した。
(1)R値<0.2: 91%
(2)0.2≦R値≦0.3: 9%
(3)0.3<R値<1.2: 0%
(4)R値≧1.2: 0%
製造した負極材料を用いて、実施例1と同様にして、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池性能の評価を行った。結果を表3に示す。
【0053】
[比較例3]
(炭素材料F)
コールタールピッチを熱処理することで得られたメソフェーズ小球体をるつぼに充填して3000℃で黒鉛化処理を行った後、SiO
2を0.5質量%添加し、循環型メカノフュージョンシステムAMSを用いて表面改質を行い、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Fを調製した。
【0054】
(炭素材料G)
コールタールピッチを熱処理することで得られたメソフェーズ小球体に循環型メカノフュージョンシステムAMSを用いて表面処理を施した後、るつぼに充填して3000℃で黒鉛化処理を行った後、表1に示すR値分布および平均粒径を有する炭素材料Gを調製した。
【0055】
実施例1と同様に、炭素材料A、炭素材料F、および炭素材料Gを混合し、表2に示すR値分布を有する負極材料を製造した。
【0056】
得られた黒鉛系負極材料を用いて、実施例1と同様に負極の作成、電池特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】