特許第5878844号(P5878844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000002
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000003
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000004
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000005
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000006
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000007
  • 特許5878844-板状搬送物の連続処理システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878844
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】板状搬送物の連続処理システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/18 20060101AFI20160223BHJP
   B65H 23/10 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   B65H23/18
   B65H23/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-176740(P2012-176740)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34455(P2014-34455A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 昭彦
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−132051(JP,A)
【文献】 特開2011−225347(JP,A)
【文献】 特開平02−075562(JP,A)
【文献】 特開平09−331690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00 − 23/34
B65H 26/00 − 27/00
H02P 5/46 − 5/52
H02P 7/67 − 7/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の処理ラインを備え、前記処理ライン間に跨って連結された長尺な板状搬送物に対して、処理ライン毎に所定の処理を実行する板状搬送物の連続処理システムにおいて、
前記処理ライン毎に設けられるとともに、入力された運転指示に対応する制御指令を出力する制御指令コンソールと、
前記処理ライン毎に設けられるとともに、それぞれが複数の制御ブロックと、制御ブロックの制御定数を保持する制御定数テーブルとを少なくとも有する制御装置と、を備え、
各処理ラインの制御指令コンソールと各処理ラインの制御装置とは処理ライン間で連系動作するように構成され、
自制御装置の制御定数テーブルは、自処理ラインの制御定数と、当該制御定数に対応する他処理ラインの制御定数とを保持しており、
自制御装置は、いずれかの処理ラインに設けられた制御指令コンソールから新たな制御指令が出力されるとこの制御指令を取り込み、この制御指令に対応する制御定数を自制御装置が備える制御定数テーブルから選択して、各制御ブロックで使用する制御定数を切り替えた後、この制御定数、及び前記制御指令に基づいて自処理ラインを制御する、
ことを特徴とする板状搬送物の連続処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の板状搬送物の連続処理システムにおいて、
当該板状搬送物の連続処理システムは鋼板処理システムであり、前記各処理ライン間を搬送される前記板状搬送物としての圧延鋼板に対して、前記各処理ラインにて所定の処理が施されることを特徴とする板状搬送物の連続処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の板状搬送物の連続処理システムにおいて、
当該板状搬送物の連続処理システムは抄紙システムであり、前記各処理ライン間を搬送される前記板状搬送物としての紙に対して前記各処理ラインにて所定の処理が施されることを特徴とする板状搬送物の連続処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各処理ライン間を搬送される板状搬送物としての圧延鋼板や紙に対して各処理ラインにて所定の処理を施す板状搬送物の連続処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、亜鉛メッキ鋼板製造ライン設備などを制御する鋼板処理システムの制御系は、図7に示すように、制御装置100と、制御指令コンソール110と、材料設定コンソール120とが制御対象130となる亜鉛メッキ鋼板製造ラインの各ライン(入側ライン、中央ライン、出側ライン)毎に設けられ、各ライン別に制御する。
【0003】
各制御指令コンソール110は各々、キーボード、モニタなどを備えており、入側ライン、中央ライン、出側ラインの運転状況を表示するとともに、運転員の指示内容に応じた制御指令を生成し、各制御装置100に供給する。
【0004】
各制御装置100は各々、制御指令コンソール110から出力される制御指令と制御特性“Gp(s)”の制御対象(例えば、亜鉛メッキ鋼板製造ライン)130から出力されるフィードバック信号との偏差を演算する減算器101と、減算器101から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“1/TIs”で積分演算を行う制御ブロック102と、減算器101から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“TDs”で微分演算を行う制御ブロック103と、減算器101から出力される偏差信号と各制御ブロック102,103の出力信号とを加算する加算器104と、加算器104の出力信号を取り込み、制御定数“Kp”で比例演算を行う制御ブロック105とを備えている。
【0005】
そして、制御指令コンソール110から出力される制御指令と、亜鉛メッキ鋼板製造ライン設備の入側ライン、中央ライン、出側ラインから出力される各フィードバック信号との偏差信号を求めるとともに、この偏差信号に対し、各制御ブロック102,103,105に設定されている各制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じた演算、例えばPID演算などを行って、入側ライン用の制御信号(駆動電圧)、中央ライン用の制御信号(駆動電圧)、出側ライン用の制御信号(駆動電圧)を生成し、亜鉛メッキ鋼板製造ライン設備の入側ライン、中央ライン、出側ラインを各々、駆動させ、亜鉛メッキ鋼板を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−177245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような鋼板処理システム鋼板処理システムの制御装置100では、下記に示す複数の条件を満たすような制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を求め、各制御ブロック102,103,105に設定している。
【0008】
(1)代表的な処理材料、代表的な製品仕様に対し、最適なライン速度となるように、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を設定する。
【0009】
(2)ライン速度を切り替えたときのラインの張力変動が最小となり、ライン速度切り替え後に、高い安定性を持つように、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を設定する。
【0010】
(3)ライン速度を加減速させたときにも、高い制御性を維持できるように、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を設定する。
【0011】
しかしながら、これらの各条件を全て満たすように、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を最適化させるのは、極めて難しく、ラインの安定性を優先すると、処理材料、製品仕様を切り替えたとき、ラインの張力が大きく変動してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑み、例えば、入側ライン、中央ライン、出側ラインの1つが選択されて、速度指令などが変更された場合にも、入側ライン、中央ライン、出側ラインの各ライン速度や板状搬送物の各部の張力などを各々、最適化でき、常に高い品質の製品を製造することができる板状搬送物の連続処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明は、連結された複数の処理ラインを備え、前記処理ライン間に跨って連結された長尺な板状搬送物に対して、処理ライン毎に所定の処理を実行する板状搬送物の連続処理システムにおいて、前記処理ライン毎に設けられるとともに、入力された運転指示に対応する制御指令を出力する制御指令コンソールと、前記処理ライン毎に設けられるとともに、それぞれが複数の制御ブロックと、制御ブロックの制御定数を保持する制御定数テーブルとを少なくとも有する制御装置と、を備え、各処理ラインの制御指令コンソールと各処理ラインの制御装置とは処理ライン間で連系動作するように構成され、自制御装置の制御定数テーブルは、自処理ラインの制御定数と、当該制御定数に対応する他処理ラインの制御定数とを保持しており、自制御装置は、いずれかの処理ラインに設けられた制御指令コンソールから新たな制御指令が出力されるとこの制御指令を取り込み、この制御指令に対応する制御定数を自制御装置が備える制御定数テーブルから選択して、各制御ブロックで使用する制御定数を切り替えた後、この制御定数、及び前記制御指令に基づいて自処理ラインを制御する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に板状搬送物の連続処理システムでは、例えば、鋼板処理システムにおける入側ライン、中央ライン、出側ラインの1つが選択されて、速度指令などが変更された場合にも、入側ライン、中央ライン、出側ラインの各ライン速度や板状搬送物の各部の張力などを各々、最適化でき、常に高い品質の製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による板状搬送物の連続処理システムが適用された鋼板処理システムの実施形態1を示す構成図である。
図2図1に示す各制御装置の詳細な回路構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す各制御装置で使用される定速時の制御定数テーブル、加速時の制御定数テーブル、減速時の制御定数テーブル例を示す模式図である。
図4】本発明による板状搬送物の連続処理システムが適用された鋼板処理システムの実施形態2を示す構成図である。
図5図4に示す各制御指令コンソール、各材料設定コンソール、各制御装置の詳細な回路構成例を示すブロック図である。
図6図4に示す各制御装置で使用される定速時の制御定数テーブル、加速時の制御定数テーブル、減速時の制御定数テーブル例を示す模式図である。
図7】従来の鋼板処理システムにおける制御装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《実施形態1》
図1は本発明による板状搬送物の連続処理システムが適用された鋼板処理システムの実施形態1を示す構成図である。
【0018】
始めに、鋼板処理システムの制御対象となる鋼板製造ラインについて説明する。図1に示すように、鋼板製造ライン1は、入側ライン2と、中央ライン3と、出側ライン4とから構成され、入側ライン2と中央ライン3との間にはループカー5が、中央ライン3と出側ライン4との間にはループカー6が夫々設けられている。そして、入側ライン2から搬送された鋼板7は中央ライン3で亜鉛メッキをされた後、亜鉛メッキ鋼板8として出側ライン4に搬送されるようになっている。
【0019】
入側ライン2は、セットされた鋼板コイル9,10のいずれか一方を選択し、これが無くなれば、他方を選択するという手法で、鋼板7を連続的に引き出しながら、搬送する複数の搬送ローラ11、各鋼板7の切り替え時に各鋼板7の繋ぎ目を溶接して、1枚の連続した鋼板12にする溶接設備13などによって構成される。
【0020】
ループカー5は、複数の搬送ローラ14などによって構成され、入側ライン2から送出される鋼板12の張力や搬送速度などを調整する。
【0021】
中央ライン3は、ループカー5から送出される鋼板12を洗浄する洗浄設備15、洗浄設備15で洗浄された鋼板12を焼き鈍し処理する焼き鈍し炉16、焼き鈍し炉16で焼き鈍し処理された鋼板12を溶融亜鉛槽に漬け、表面に亜鉛をコーティングさせるどぶ漬け設備17、どぶ漬け設備17で亜鉛がコーティングされた鋼板12を加熱して亜鉛と地金とを合金化して亜鉛メッキ鋼板8にする合金化炉18、合金化炉18で合金化処理された亜鉛メッキ鋼板8の表面を均す調質圧延設備19などによって構成される。
【0022】
ループカー6は、複数の搬送ローラ20などによって構成され、中央ライン3から送出される亜鉛メッキ鋼板8の張力や搬送速度などを調整する。
【0023】
出側ライン4は、複数の搬送ローラ21、複数の巻取電動機22などによって構成され、各巻取電動機22を交互に動作させて、ループカー6から送出される亜鉛メッキ鋼板8を巻き取って、亜鉛メッキ鋼板ロール23を製造する。
【0024】
鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4には、それぞれ制御装置30と、制御指令コンソール41と、材料設定コンソール42とが設けられている。
【0025】
各制御指令コンソール41は、キーボード、モニタなどを備え、運転員の指示内容に応じた速度指令などの制御指令を出力する。各材料設定コンソール42は、キーボード、モニタなどを備え、運転員の操作内容に応じた材料データなどを出力する。
【0026】
各制御装置30は、制御指令コンソール41から出力される制御指令、材料設定コンソール42から出力される材料データなどに対応した最適な運転パターン(制御定数セット)を選択するとともに、この運転パターンに応じた駆動電圧などを出力して、鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4を各々、制御する。
【0027】
また、各制御装置30は各々、図2に示す如く、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令を保持し、一定期間(例えば、対応するラインに設けられた各センサの検出結果を取り込み、制御定数の変更処理を完了させるのに必要な1スキャン分の期間)だけ、遅らせて出力する入力ブロック31と、入力ブロック31から出力される制御指令と制御特性“Gp(s)”の制御対象(鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のうち、制御対象となるライン)32から出力されるフィードバック信号との偏差を演算する減算器33と、減算器33から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“1/TIs”で積分演算を行う制御ブロック34と、減算器33から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“TDs”で微分演算を行う制御ブロック35と、減算器33から出力される偏差信号と各制御ブロック34,35の出力信号とを加算する加算器36と、加算器36の出力信号を取り込み、制御定数“Kp”で比例演算を行う制御ブロック37とを備えている。
【0028】
さらに、各制御装置30は各々、図2図3に示す如く、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4別に、ラインの定速度、材料種類、材料厚などの材料データ、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などが記載された定速運転用の制御定数テーブル50と、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4別に、ライン減速度、材料種類、材料厚などの材料データ、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などがセットされた減速運転用の制御定数テーブル51と、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4別に、ライン加速度、材料種類、材料厚などの材料データ、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などが記載された加速運転用の制御定数テーブル52とを持ち、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令、対応する材料設定コンソール42から出力される材料データの内容を解析して、定速運転用の制御定数テーブル50、減速運転用の制御定数テーブル51、加速運転用の制御定数テーブル52の中から、対応するラインに最適な制御定数テーブルを選択するとともに、選択した制御定数テーブルの内容を各制御ブロック34,35,37に供給して、これら各制御ブロック34,35,37の制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を切り替える運転パターン判定/制御定数設定ブロック38を備えている。
【0029】
そして、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令、または対応する材料設定コンソール42から出力される材料データなどが切り替えられる毎に、定速運転用の制御定数テーブル50、減速運転用の制御定数テーブル51、加速運転用の制御定数テーブル52の中から、対応するラインに最適な制御定数テーブルを選択するとともに、選択した制御定数テーブルの中から、最適な制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を選択して、各制御ブロック34,35,37に供給し、これら各制御ブロック34,35,37の制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を切り替える。
【0030】
また、この動作と並行し、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令を1スキャン分だけ遅延させながら、制御特性“Gp(s)”の制御対象(鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のうち、制御対象となるライン)31から出力されるフィードバック信号との偏差を求めた後、この偏差に対し、各制御ブロック34,35,37に設定されている制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じた演算、例えばPID演算などを行って、入側ライン用の制御信号(駆動電圧)、中央ライン用の制御信号(駆動電圧)、出側ライン用の制御信号(駆動電圧)を生成するとともに、これらの各駆動電圧を鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4に供給し、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4の運転内容を制御する。
【0031】
次に、図1の構成図、図2の回路ブロック図、図3の模式図を参照しながら、鋼板処理システムの動作を説明する。
【0032】
まず、各制御指令コンソール41、各材料設定コンソール42から出力される速度指示、材料データが変化していない状態では、各制御装置30の運転パターン判定/制御定数設定ブロック38によって、各制御ブロック34,35,37にセットされている、前回までの制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”が引き続き保持される。
【0033】
また、制御指令コンソール41から出力され、1スキャン分だけ遅延された制御指令と、制御特性“Gp(s)”の制御対象(鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のうち、制御対象となるライン)31から出力されるフィードバック信号との偏差に対し、各制御ブロック34,35,37に設定されている制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じたPID演算などが行われて、入側ライン用の制御信号(駆動電圧)、中央ライン用の制御信号(駆動電圧)、出側ライン用の制御信号(駆動電圧)が生成され、各駆動電圧が鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4に供給されて、亜鉛メッキ鋼板8の製造が維持される。
【0034】
この状態で、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のいずれかで、運転内容を変更する必要性、例えば入側ラインで鋼板コイル9,10のいずれかを交換するときなどのように入側ライン2を一時的に減速させる必要性があるとき、運転員によって、入側ライン2の制御指令コンソール41が操作されて、入側ライン減速指示が入力される。
【0035】
これにより、入側ライン2の制御指令コンソール41から入側ライン2のライン速度を減速させるのに必要なライン減速度(制御指令)が出力され、入側ライン2の制御装置30に設けられている運転パターン判定/制御定数設定ブロック38によって、入側ライン2に対応する減速運転用の制御定数テーブル51の中から、ライン減速度の値に対応する制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”が選択されて、各制御ブロック34,35,37に供給され、これら各制御ブロック34,35,37の制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”が切り替えられる。
【0036】
また、この動作と並行し、入側ライン2の制御装置30に設けられている入力ブロック31によって、入側ライン2の制御指令コンソール41から出力される制御指令が1スキャン分だけ遅延された後、減算器33によって、鋼板製造ライン1の入側ライン2から出力されるフィードバック信号との偏差が求められる。次いで、この偏差に対し、各制御ブロック34,35,37に設定された、新たな制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じた演算、例えばPID演算などが行われて、入側ライン用の各制御信号(各駆動電圧)が生成され、各駆動電圧が鋼板製造ライン1の入側ライン2に供給される。
【0037】
この結果、中央ライン3側のライン速度、鋼板張力に対する影響が最小となるように、入側ライン2のライン速度が順次、減速されるとともに、ループカー5によって、入側ライン2のライン速度、鋼板張力と、中央ライン3のライン速度、鋼板張力とが調整されて、入側ライン2→中央ライン3→出側ライン4まで、鋼板12、亜鉛メッキ鋼板8の張力変動が最小に維持された状態で、入側ライン2のライン速度が順次、下げられ、入側ライン2で鋼板コイル9,10の交換などが行われる。
【0038】
この後、入側ライン2での鋼板コイル交換が完了し、入側ライン2を元のライン速度に戻すとき、運転員によって、制御指令コンソール41などが操作されて、入側ライン加速指示が入力される。
【0039】
これにより、入側ライン2の制御指令コンソール41から入側ライン2のライン速度を加速させるのに必要なライン加速度(制御指令)が出力され、入側ライン2の制御装置30に設けられている運転パターン判定/制御定数設定ブロック38によって、入側ライン2に対応する加速運転用の制御定数テーブル52の中から、ライン加速度の値に対応する制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”が選択されて、入側ライン2の制御装置30に設けられている各制御ブロック34,35,37に供給され、これら各制御ブロック34,35,37の制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”が切り替えられる。
【0040】
また、この動作と並行し、入側ライン2の制御装置30に設けられている入力ブロック31によって、入側ラインの制御指令コンソールから出力される制御指令が1スキャン分だけ遅延された後、減算器33によって、鋼板製造ライン1の入側ライン2から出力されるフィードバック信号との偏差が求められるとともに、この偏差に対し、各制御ブロック34,35,37に設定された、新たな制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じた演算、例えばPID演算などが行われて、入側ライン用の各制御信号(各駆動電圧)が生成され、各駆動電圧が鋼板製造ライン1の入側ライン2に供給される。
【0041】
この結果、中央ライン3側のライン速度、鋼板張力に対する影響が最小となるように、入側ライン2のライン速度が順次、加速させられるとともに、ループカー5によって、入側ライン2のライン速度、鋼板張力と、中央ライン3のライン速度、鋼板張力とが調整されて、入側ライン2→中央ライン3→出側ライン4まで、鋼板12、亜鉛メッキ鋼板8の張力変動が最小に維持された状態で、入側ライン2のライン速度が順次、上げられ、元のライン速度に戻される。
【0042】
このように、実施形態1によれば、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4の1つが選択されて、速度指令などが変更された場合にも、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4の各ライン速度、鋼板各部の張力などを各々、最適化でき、常に高い品質の鋼板を製造することができる。
【0043】
《実施形態2》
図4は本発明による板状搬送物の連続処理システムが適用された鋼板処理システムの実施形態2を示す構成図である。なお、この図において、図1の各部と対応する部分には、同じ符号が付してある。
【0044】
実施形態2が実施形態1と異なる点は、各制御指令コンソール41の出力、各材料設定コンソール42の出力を各制御装置60に供給して、各制御装置60を連係動作させ、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のいずれか、例えば入側ライン2のライン速度を変更したとき、これに対応するように中央ライン3のライン速度、出側ライン4のライン速度を調整できるようにしたことである。
【0045】
各制御装置60は各々、図5に示す如く、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令を保持し、一定期間(例えば、対応するラインに設けられた各センサの検出結果を取り込み、制御定数の変更処理を完了させるのに必要な1スキャン分の期間)だけ、遅らせて出力する入力ブロック61と、入力ブロック61から出力される制御指令と制御特性“Gp(s)”の制御対象(鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のうち、制御対象となるライン)62から出力されるフィードバック信号との偏差を演算する減算器63と、減算器63から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“1/TIs”で積分演算を行う制御ブロック64と、減算器63から出力される偏差信号を取り込み、制御定数“TDs”で微分演算を行う制御ブロック65と、減算器63から出力される偏差信号と各制御ブロック64,65の出力信号とを加算する加算器66と、加算器66の出力信号を取り込み、制御定数“Kp”で比例演算を行う制御ブロック67とを備えている。
【0046】
さらに、各制御装置60は各々、運転パターン判定/制御定数設定ブロック68を備えている。運転パターン判定/制御定数設定ブロック68は、図6に示す如く、自ラインの定速度、材料種類、材料厚などの材料データ、他ラインの速度/材料毎に、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などが記載された定速運転用の制御定数テーブル70(図6(A))、自ラインの減速度、材料種類、材料厚などの材料データ、他ラインの速度/材料毎に、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などが記載された減速運転用の制御定数テーブル71(同(B))、自ラインの加速度、材料種類、材料厚などの材料データ、他ラインの速度/材料毎に、制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”などが記載された加速運転用の制御定数テーブル72(同(C))を備えている。
【0047】
そして、各制御指令コンソール41から出力される制御指令、各材料設定コンソール42から出力される材料データの内容を解析して、自ライン用に用意されている定速運転用の制御定数テーブル70、自ライン用に用意されている減速運転用の制御定数テーブル71、自ライン用に用意されている加速運転用の制御定数テーブル72の中から、最適な制御定数テーブルを選択するとともに、選択した制御定数テーブルの中から、最適な制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を選択して、各制御ブロック64,65,67に供給し、これら各制御ブロック64,65,67の制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”を切り替える。
【0048】
また、この動作と並行し、対応する制御指令コンソール41から出力される制御指令を1スキャン分だけ遅延させながら、制御特性“Gp(s)”の制御対象(鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4のうち、制御対象となるライン)54から出力されるフィードバック信号との偏差を求めた後、この偏差に対し、各制御ブロック64,65,67に設定されている制御定数“1/TIs”、“TDs”、“Kp”に応じた演算、例えばPID演算などを行って、入側ライン用の制御信号(駆動電圧)、中央ライン用の制御信号(駆動電圧)、出側ライン用の制御信号(駆動電圧)を生成するとともに、これらの各駆動電圧を鋼板製造ライン1の入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4に供給し、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4の運転内容を制御する。
【0049】
これにより、入側ライン2と中央ライン3との間に介挿されたループカー5によって入側ライン2のライン速度、張力と、中央ライン3のライン速度、張力とが互いに大きく影響し合っている場合でも、また中央ライン3と出側ライン4との間に介挿されたループカー6によって中央ライン3のライン速度、張力と、出側ライン4のライン速度、張力とが互いに大きく影響し合っている場合でも、これらの各影響力を考慮した最適なライン速度、最適な張力で、入側ライン2のライン速度切り替え、中央ライン3のライン速度切り替え、出側ライン4のライン速度切り替えなどを行わせることができる。
【0050】
このように、この実施形態2によれば、入側ライン2のライン速度、中央ライン3のライン速度、出側ライン4のライン速度などが変更されても、入側ライン2のライン速度、鋼板各部の張力、中央ライン3のライン速度、鋼板各部の張力、出側ライン4のライン速度、鋼板各部の張力などを各々、最適化でき、常に高い品質の亜鉛メッキ鋼板8を製造させることができる。
【0051】
特に、この実施形態2では、ループカー5,6などの連結装置を使用し、入側ライン2、中央ライン3、出側ライン4の各ライン速度、鋼板各部の張力などの相互影響力を軽減させているので、入側ライン2のライン速度、中央ライン3のライン速度、出側ライン4のライン速度の1つが変更されたとき、他のラインに対し、影響が波及しないようにして、高い品質の亜鉛メッキ鋼板8を製造することができる。
【0052】
なお、本発明は、亜鉛メッキ鋼板などを連続して製造する鋼板処理システムに限らず、薄鋼板などを連続して製造する鋼板処理システムや、各処理ライン間を搬送される板状搬送物としての紙に対して各処理ラインにて所定の処理を施す抄紙システムなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…鋼板製造ライン
2…入側ライン
3…中央ライン
4…出側ライン
5,6…ループカー
7…鋼板
8…亜鉛メッキ鋼板
9,10…鋼板コイル
11…搬送ローラ
12…鋼板
13…溶接設備
14…搬送ローラ
15…洗浄設備
16…炉
17…設備
18…合金化炉
19…調質圧延設備
20…搬送ローラ
21…搬送ローラ
22…巻取電動機
23…亜鉛メッキ鋼板ロール
30…制御装置
31…入力ブロック
33…減算器
34,35,37…制御ブロック
36…加算器
38…運転パターン判定/制御定数設定ブロック
41…制御指令コンソール
42…材料設定コンソール
50,51,52…制御定数テーブル
60…制御装置
61…入力ブロック
63…減算器
64,65,67…制御ブロック
66…加算器
68…運転パターン判定/制御定数設定ブロック
70,71,72…制御定数テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7