【実施例】
【0017】
図1は、建屋を貫通した配管を用いて建屋内部を調査する狭隘部進入調査装置の概要を説明した図である。
【0018】
この図において、まず調査対象となるプラントは建屋壁1により内部Iと外部Oが区分されており、配管2が内外部の間を貫通して設けられている。配管2は、配管入口2aから配管出口2bに至るがこの間には配管狭隘部2cや配管傾斜部2dがある。本発明では配管の一部が狭くなっている場合にも、自力内部進入を行う。
【0019】
このために本発明の検査装置は、自走機構を有する検査手段牽引部5と、点検および調査を実施するセンサを具備する検査手段6と、検査手段6を配管2に挿入する時には後方から押し出し、回収時には引き出す機能を有する動作支援ウインチ7と、検査手段牽引部5および検査手段6および動作支援ウインチ7を制御するコントローラ9から構成される。また動作支援ウインチ7とコントローラ9の間には引出ケーブル8が設けられており、この引出ケーブル8を通じてコントローラ9から、検査手段牽引部5、検査手段6、動作支援ウインチ7に向けて電力が送られ、あるいは制御信号の授受が行われる。
【0020】
本発明の検査装置は、検査手段牽引部5の構造に特徴を有しており、
図2に検査手段牽引部5の拡大構造を示している。柱状の検査手段牽引部5は、進行方向に対して前部51、中間部52、後部53で構成されている。このうち前部51は、柱状構成の中心部分から順に超音波振動子10、その外周にステータ11a、さらにその外側に摩擦線制御管12aを配置した多重構成とされている。
【0021】
摩擦線制御管12aには多数の摩擦線制御孔13aが空けてあり、ここから摩擦線15aがでている。なお、
図2では、摩擦線15aを1本のみ図示しているが、多数の摩擦線制御孔13aから摩擦線15aがでている。摩擦線15aは、ステータ11aに固定されている。
【0022】
中間部52には、超音波振動子取付け部14や摩擦線制御管シフト機構20などの制御機構が搭載されている。摩擦線制御管シフト機構20は、ステータ11aに対して、その外側の摩擦線制御管12aの位置をスライドさせることで相対的な位置を変更する。
【0023】
図3は、摩擦線制御管12aのスライド量16が大きく、この結果摩擦線制御孔13aを通して飛び出している摩擦線15aが進行方向に寝ているような位置になっている状態を示している。
図4は、摩擦線制御管12aのスライド量16が小さく、この結果摩擦線制御孔13aを通して飛び出している摩擦線15aが進行方向に垂直な方向に向かって立っているような位置になっている状態を示している。
【0024】
後部53(超音波振動子取付け部14の検査装置ウインチ7側)も、同様に摩擦線制御管12bに、摩擦線制御孔13bを開け、摩擦線15bを取付けている。但し、
図2の例では摩擦線制御孔13bはスライドさせておらず、従って常に摩擦線制御孔13bを通して飛び出している摩擦線15bが、進行方向に垂直な方向に向かって立っているような位置になっている。なお、この後部53も前部51と同様に摩擦線15の角度を可変に変更するようにすることもできる。
【0025】
このように
図2の検査手段牽引部5は、超音波振動子10と、超音波振動子と接触し推進力を得るステータ11aと、ステータ11aの外面に取付け走行する面に対し摩擦力を発生させる摩擦線15と、摩擦線15の向きを変える摩擦線制御管12とから構成される。また、摩擦線制御管12として、表面に、摩擦線15の数と同一の摩擦線制御孔13を開け、ステータ11aに対し軸方向の相対位置を変えることで、摩擦線制御孔13により摩擦線15の角度を変える。
【0026】
検査手段牽引部5の構成とここで果たす機能についてさらに説明する。
図2において、超音波振動子10は、線状のタイプを用い、ステータ11aと同軸に配置する。超音波振動子10は、中間部52の超音波振動子取付け部14を固定端として軸上に振動し、進行波を発生させる。これにより、ステータ11aとの間に摩擦力が生じる。ステータ11aには、周方向、軸方向に等間隔に摩擦線15aを取付けてある。ステータ11aの振動により、摩擦線15aも振動する。摩擦線15aは配管内面と接触しており、検査装置本体6を牽引する力を生じる。また、摩擦線制御管12aには摩擦線15aを通す摩擦線制御孔13aを空けてある。この構成により、軸方向の振動で検査装置を牽引することが可能になる。
【0027】
図1は、検査手段牽引部5が配管狭隘部2cを通過して広い配管部分に出た状態にあり、検査手段6が配管狭隘部2cを通過中の状態を示している。この状態に至るまでには次の処理手順を経ている。最初の状態では、検査手段牽引部5と検査手段6と検査装置ウインチ7は接続されており、検査装置ウインチ7には、引出しケーブル8を介して検査装置コントローラが接続されている。
【0028】
初めに作業員は、配管入口2aから、検査装置の検査手段牽引部5を先頭にして検査装置ウインチ7までを配管内に手で押し込む。このときの押し込み位置は、先頭の検査手段牽引部5が配管狭隘部2cに至るあたりまでとするのがよい。
図1において検査手段6の先頭には小型カメラが取り付けられており、摩擦線15aを通して検査手段牽引部5先頭の様子を映している。これによりコントローラ9側では、先頭位置の状態を知ることができる。
【0029】
コントローラ9は、先頭の検査手段牽引部5が配管狭隘部2cに至ると、摩擦線制御管シフト機構20に狭隘部通過モードであることの信号を送る。これを受けて摩擦線制御管シフト機構20は、摩擦線制御管12aのスライド量16が大きくなるように操作し、この結果摩擦線制御孔13aを通して飛び出している摩擦線15aが進行方向に寝ているような位置に変更する。なお、摩擦線15を折りたたむ位置にするのは、最初の手動押し込み段階から行っていてもよい。
【0030】
図5はこの時の検査手段牽引部5の形状、および検査手段6、検査装置ウインチ7との位置関係を模式的に示した図である。配管狭隘部2C手前で摩擦線15が折りたたまれている。この場合の検査手段牽引部5先端部分の径は、
図3に示すように摩擦線制御管12の直径L0に折りたたまれた摩擦線15で定まる厚みを加えたLmin程度である。従って、Lminよりも大きな径の配管狭隘部2Cであれば挿入することができる。
【0031】
図3の摩擦線制御管12cを前方16に押し出した状態では、摩擦線15cは軸方向に倒れ、配管表面との摩擦が少なくなる。この状態で摩擦線15cを振動させて配管狭隘部2C内を進行する。但し、この折りたたみ状態では配管表面との摩擦が少なく、推進力が小さいことから、検査装置ウインチ7から押し込み捜査を行うのが有効である。このようにして、検査手段牽引部5を細部挿入形状に変形させ配管狭隘部2Cを通過させる。
図6は、配管狭隘部2C通過中の検査手段牽引部5の形状、および検査手段6、検査装置ウインチ7との位置関係を模式的に示している。
【0032】
検査手段牽引部5が配管狭隘部2Cを通過したことを、コントローラ9はカメラからの画像で確認し、摩擦線制御管シフト機構20に狭隘部通過モードでないことの信号を送る。これを受けて摩擦線制御管シフト機構20は、摩擦線制御管12aのスライド量16が小さくなるように操作し、この結果摩擦線制御孔13aを通して飛び出している摩擦線15aが進行方向に垂直な方向に立っているような位置に変更する。また、コントローラ9は自走信号を送り、超音波振動子10を振動させることで、摩擦線15cと配管内面との摩擦で、全体を進行させる。このような配管狭隘部2Cを通過後は、検査手段牽引部5を推進形状に変化させ配管内部を進行させる。この状態では、配管傾斜部2dを進行することも可能である。
【0033】
図7はこの時の検査手段牽引部5の形状、および検査手段6、検査装置ウインチ7との位置関係を模式的に示した図である。配管狭隘部2C通過後で摩擦線15が拡げられている。この場合の検査手段牽引部5先端部分の径は、
図4に示すように拡げられた摩擦線15の幅で定まるLmaxである。従って、Lmaxよりも小さな径の配管2であれば、自走することが可能である。
【0034】
このように検査手段牽引部5は、配管狭隘部2Cから挿入する際は、摩擦線制御管12をステータ11に対して前方に押し出して摩擦線15を倒し、配管狭隘部2Cを通過可能な外径とし、通過後は、摩擦線制御管12をステータ11に対して後方に引いて摩擦線15を起こし、進行面に対し摩擦を発生させやすい形状とし、超音波振動子を駆動してステータを前方に推進させる。
【0035】
その後、建屋壁内側1bにある配管出口2bまで進行し、検査装置本体7にて建屋内部の状況を調査する。
図8は、配管出口2bから建屋壁1の内部Iに検査手段牽引部5、および検査手段6が進入した状態を示している。
【0036】
このように
図5から
図8は、
図1における装置の変形手順を説明する図である。
図5は、配管狭隘部2C挿入前の機器形状であり、摩擦線15は振動線21に這わせてある状態である。振動線21はジョイント22を介して、カメラ23と接続してあり、カメラは後部のケーブル部をウインチ7で巻取ってある。
図6は、ウインチ7でカメラ23を繰り出し、配管の細部を通過中の状態を示す。細部通過後は、
図7に示すように、摩擦線15を立て、配管壁面と摩擦力発生出来る形状にする。その後、配管内を進行して、カメラを牽引するとともに、
図8のようにカメラ巻取り装置25は、建屋壁1の内部Iにカメラケーブルを送り込むことで、配管内の円滑な挿入を可能にする。
【0037】
なお検査手段としては、ファイバーカメラ若しくは温度若しくは湿度若しくは放射線量若しくは圧力の少なくとも1つ以上を測定する計測器、のいずれか1つをアタッチメントとして搭載するのがよい。
【0038】
図10は、
図2の中央部52のさらなる詳細な構成の一例を示したものであり、摩擦線制御管シフト機構20と、振動伝達機構30の一例を示している。このうち振動伝達機構30は、超音波振動子10に取り付けたモータ112の回転を、シャフト111、ギア115を介してステータ11に伝え、軸に対する周方向振動を発生させる。それにより摩擦線を振り、新効力を発生させる。
【0039】
摩擦線制御管シフト機構20は、別のモータ114を超音波振動子取付け部14に取り付け、シャフト116、ボールねじ113を取り付け、空き点による押し付け力により摩擦線制御間12を軸方向に移動させる。
【0040】
図9は、作業開始後の手順を示したものである。配管内への挿入開始後(ステップ30)、配管狭隘部2C手前へウインチを設置する(ステップ31)。ウインチを駆動するとともに摩擦線を倒し、配管狭隘部2Cに挿入する(ステップ32)。配管狭隘部2C通過後は、摩擦線の角度を変更し(ステップ33)、配管を進行し(ステップ34)、終了となる(ステップ35)。
【0041】
本発明は、オリフィス、異型カップリング、エルボ、曲げ配管等、後部から押し込むだけでは挿入が難しい場合でも、検査手段牽引部5の作用により、検査装置を挿入でき、建屋内部の状況を把握できる装置を提供するものである。