(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  一般式IIIで表されるジオール構成単位が1,4−シクロへキサンジメタノール、1,4−シクロへキサンジオール、又は4,4’−ビシクロへキサンジオールに由来する、請求項1又は4に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  本発明はモバイル機器用途などに使用される反射型及び半透過型液晶表示装置において好適に使用される位相差フィルムを提供することを目的とする。そのため、高い耐熱性を有し、広い波長域において一様の偏光変換、及び波長が短い光ほど位相差が小さい、逆波長分散性の偏光変換を行うことができ、更に、位相差発現性が高い位相差フィルム、及び前記フィルムに使用される樹脂を提供することを課題とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  本発明者らが鋭意検討した結果、脂環式部分を含む構成単位とフルオレン部分を含む構成単位とを有するウレタン樹脂を用いた位相差フィルムを使用することにより上述の課題を解決できることを見出した。
【0009】
  すなわち、本発明は以下を包含する。
【0010】
  (1)一般式I:
【化1】
[式中、Xはシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレン、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレンアルキレン、又はビシクロアルキレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である]
で表されるジイソシアネート構成単位と、
  一般式II:
【化2】
[式中、
  R
1は互いに独立してアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリーレンアルキレンであり;
  lは0又は1であり;
  R
2は互いに独立してハロゲン、C
1−6アルキル、又はC
1−6アルコキシであり;
  mは0〜4の整数であり;
  R
3は互いに独立してハロゲン、C
1−6アルキル、又はC
1−6アルコキシであり;
  nは0〜4の整数である]
で表されるフルオレン構成単位と、
を有する位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (2)Xがシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレン、シクロへキシレンC
1−3アルキレンシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン、又はビシクロへキシレン(これらは、C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、
  R
1が互いに独立してC
1−3アルキレンであり、
  lが1であり、
  m及びnが0である、
(1)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (3)一般式Iで表されるジイソシアネート構成単位がジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する、(1)又は(2)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (4)一般式IIで表されるフルオレン構成単位が9,9−ビス[4−(ヒドロキシC
1−3アルコキシ)フェニル]フルオレンに由来する、(1)〜(3)のいずれかに記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (5)一般式III:
【化3】
[式中、Yはシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレン、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレンアルキレン、又はビシクロアルキレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である]
で表されるジオール構成単位を更に有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (6)Yがシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレン、シクロへキシレンC
1−3アルキレンシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン、又はビシクロへキシレンである、(5)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (7)一般式IIIで表されるジオール構成単位が1,4−シクロへキサンジメタノール、1,4−シクロへキサンジオール、又は4,4’−ビシクロへキサンジオールに由来する、(5)又は(6)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (8)Xがシクロへキシレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分の前記シクロヘキシレンに対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位であるか;
  XがC
1−3アルキレンシクロへキシレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分の前記シクロへキシレン部分に対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分が結合する前記C
1−3アルキレン部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位であるか;又は
  XがC
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分が結合する一方のC
1−3アルキレン部分の前記シクロへキシレン部分に対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分が結合する他方のC
1−3アルキレン部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位である、(1)〜(7)のいずれかに記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (9)一般式Iで表されるジイソシアネート構成単位がイソホロンジイソシアネート、又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに由来する、(8)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (10)一般式IV:
【化4】
[式中、X’はC
1−10アルキレン、又はアルキレンオキシアルキレン(全体で2〜10個の炭素を有する)である]
で表されるジイソシアネート構成単位を更に有する、(8)又は(9)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (11)一般式IVで表されるジイソシアネート構成単位がヘキサメチレンジイソシアネートに由来する、(10)に記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (12)ガラス転移温度が100〜200℃である、(1)〜(11)のいずれかに記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂。
  (13)(1)〜(12)のいずれかに記載の位相差フィルム用ウレタン樹脂を含む位相差フィルム。
  (14)以下の式:
    Re=(n
x−n
y)×D
    波長分散=Re(449)/Re(548.7)
[式中、
  n
xは位相差フィルム面内における屈折率が最大となる遅相軸の方向の屈折率であり;
  n
yは前記遅相軸と直交する方向の屈折率であり;
  Dは位相差フィルムの厚さ(nm)であり;
  Reは面内位相差であって、Re(449)は波長449nmの光の面内位相差であり、Re(548.7)は波長548.7nmの光の面内位相差である]
により得られる波長分散が1.02未満である、(13)に記載の位相差フィルム。
  本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2010−175730号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
 
【発明の効果】
【0011】
  本発明によれば、モバイル機器用途などに好適に使用される反射型及び半透過型液晶表示装置の位相差フィルムを提供することができる。より具体的には、高い耐熱性を有し、広い波長域において一様の偏光変換を行うことができ、更に、位相差発現性が高い位相差フィルム、及び前記フィルムに使用される樹脂を提供することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0013】
  以下、本発明を詳細に説明する。
  本発明において「アルキレン」とは、アルカンの炭素原子から2つの水素原子が失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
nH
2n−(nは正の整数である)で表される。アルキレンは直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。また、同一の炭素原子から2つの水素原子が失われて生じるいわゆるアルキリデンも本発明におけるアルキレンに包含されるものとする。
 
【0014】
  本発明におけるアルキレンとしては、C
1−6アルキレンが好ましく、C
1−3アルキレンが特に好ましい。例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレンなどを挙げることができる。
 
【0015】
  本発明において「シクロアルキレン」とは、シクロアルカンの炭素原子から2つの水素原子が失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
mH
2m−2−(mは3以上の正の整数であり、環を形成する)で表される。同一の炭素原子から2つの水素原子が失われて生じるいわゆるシクロアルキリデンも本発明におけるシクロアルキレンに包含されるものとする。
 
【0016】
  本発明におけるシクロアルキレンとしては、C
3−10シクロアルキレンが好ましく、C
5−8アルキレンが特に好ましい。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロへプチレン、シクロオクチレンなどを挙げることができる。
 
【0017】
  本発明における「アルキレンシクロアルキレン」とは、アルキルシクロアルカンのアルキル部分の炭素原子とシクロアルカン部分の炭素原子から水素原子がそれぞれ1つずつ失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
nH
2n−C
mH
2m−2−(nは正の整数であり;mは3以上の正の整数であり、環を形成する)で表される。アルキル部分は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
 
【0018】
  本発明におけるアルキレンシクロアルキレンとしては、C
1−6アルキレンC
3−10シクロアルキレンが好ましく、C
1−3アルキレンC
5−8シクロアルキレンが特に好ましい。例えば、メチレンシクロペンチレン、メチレンシクロへキシレン、メチレンシクロへプチレン、エチレンシクロペンチレン、エチレンシクロへキシレン、エチレンシクロへプチレン、プロピレンシクロペンチレン、プロピレンシクロへキシレン、プロピレンシクロへプチレンなどを挙げることができる。
 
【0019】
  本発明における「シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン」とは、ジシクロアルキルアルカンの2つのシクロアルキル部分の炭素原子から水素原子がそれぞれ1つずつ失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
mH
2m−2−C
nH
2n−C
mH
2m−2−(nは正の整数であり;mは3以上の正の整数であり、環を形成する)で表される。アルカン部分は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
 
【0020】
  本発明におけるシクロアルキレンアルキレンシクロアルキレンとしては、C
3−10シクロアルキレンC
1−6アルキレンC
3−10シクロアルキレンが好ましく、C
5−8シクロアルキレンC
1−3アルキレンC
5−8シクロアルキレンが特に好ましい。例えば、シクロペンチレンメチレンシクロペンチレン、シクロへキシレンメチレンシクロへキシレン、シクロへプチレンメチレンシクロへプチレン、シクロペンチレンエチレンシクロペンチレン、シクロへキシレンエチレンシクロへキシレン、シクロへプチレンエチレンシクロへプチレン、シクロペンチレンプロピレンシクロペンチレン、シクロへキシレンプロピレンシクロへキシレン、シクロへプチレンプロピレンシクロへプチレンなどを挙げることができる。
 
【0021】
  本発明における「アルキレンシクロアルキレンアルキレン」とは、ジアルキルシクロアルカンの2つのアルキル部分の炭素原子から水素原子がそれぞれ1つずつ失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
nH
2n−C
mH
2m−2−C
nH
2n−(nは正の整数であり;mは3以上の正の整数であり、環を形成する)で表される。アルキル部分は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
 
【0022】
  本発明におけるアルキレンシクロアルキレンアルキレンとしては、C
1−6アルキレンC
3−10シクロアルキレンC
1−6アルキレンが好ましく、C
1−3アルキレンC
5−8シクロアルキレンC
1−3アルキレンが特に好ましい。例えば、メチレンシクロペンチレンメチレン、メチレンシクロへキシレンメチレン、メチレンシクロへプチレンメチレン、エチレンシクロペンチレンエチレン、エチレンシクロへキシレンエチレン、エチレンシクロへプチレンエチレン、プロピレンシクロペンチレンプロピレン、プロピレンシクロへキシレンプロピレン、プロピレンシクロへプチレンプロピレンなどを挙げることができる。
 
【0023】
  本発明における「ビシクロアルキレン」とは、ビシクロアルカンの2つのシクロアルカン部分の炭素原子から水素原子がそれぞれ1つずつ失われて生ずる2価の基を意味し、一般に、−C
mH
2m−2−C
mH
2m−2−(mは3以上の正の整数であり、環を形成する)で表される。
 
【0024】
  本発明におけるビシクロアルキレンとしては、C
3−10シクロアルキレンC
3−10シクロアルキレンが好ましく、C
5−8シクロアルキレンC
5−8シクロアルキレンが特に好ましい。例えば、シクロペンチレンシクロペンチレン、シクロへキシレンシクロへキシレン、シクロへプチレンシクロへプチレンなどを挙げることができる。
 
【0025】
  本発明における「アリーレン」とは、芳香族炭化水素の炭素原子から2つの水素原子が失われて生ずる2価の基を意味する。アリーレンは単環であっても、縮合環であってもよい。
 
【0026】
  本発明におけるアリーレンとしては、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレンなどを挙げることができる。
 
【0027】
  本発明における「アリーレンアルキレン」とは、アルキルアレーンのアルキル部分の炭素原子とアレーン部分の炭素原子から水素原子がそれぞれ1つずつ失われて生ずる2価の基を意味する。アルキル部分は直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、アレーン部分は単環であっても、縮合環であってもよい。
 
【0028】
  本発明におけるアリーレンアルキレンとしては、アリーレンC
1−6アルキレンが好ましく、アリーレンC
1−3アルキレンが特に好ましい。例えば、フェニレンメチレン、フェニレンエチレン、ナフチレンメチレン、ナフチレンエチレン、ビフェニリレンメチレン、ビフェニリレンエチレンなどを挙げることができる。
 
【0029】
1.位相差フィルム用ウレタン樹脂
  本発明の位相差フィルム用ウレタン樹脂は一般式I:
【化5】
[式中、Xはシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレン、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレンアルキレン、又はビシクロアルキレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である]
で表されるジイソシアネート構成単位と、
  一般式II:
【化6】
[式中、
  R
1は互いに独立してアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリーレンアルキレンであり;
  lは0又は1であり;
  R
2は互いに独立してハロゲン、C
1−6アルキル、又はC
1−6アルコキシであり;
  mは0〜4の整数であり;
  R
3は互いに独立してハロゲン、C
1−6アルキル、又はC
1−6アルコキシであり;
  nは0〜4の整数である]
で表されるフルオレン構成単位
から構成される。
 
【0030】
  本発明の位相差フィルム用ウレタン樹脂は、一般式Iで表されるジイソシアネート構成単位及び一般式IIで表されるフルオレン構成単位に加えて、一般式III:
 
【0031】
【化7】
[式中、Yはシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレン、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン、アルキレンシクロアルキレンアルキレン、又はビシクロアルキレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である]
で表されるジオール構成単位を更に有することができる。
 
【0032】
  一般式IIIで表されるジオール構成単位を有する場合、フルオレン構成単位とジオール構成単位の合計に占めるフルオレン単位の割合は、当該ウレタン樹脂から製造される位相差フィルムについて、以下の式:
    Re=(n
x−n
y)×D
    波長分散=Re(449)/Re(548.7)
[式中、
  n
xは位相差フィルム面内における屈折率が最大となる遅相軸の方向の屈折率であり;
  n
yは前記遅相軸と直交する方向の屈折率であり;
  Dは位相差フィルムの厚さ(nm)であり;
  Reは面内位相差であって、Re(449)は波長449nmの光の面内位相差であり、Re(548.7)は波長548.7nmの光の面内位相差である]
により得られる波長分散が1.02未満となる割合であれば特に限定されないが、特に好ましくは30mol%以上である。また、ウレタン樹脂は本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意構成単位を有していてもよい。
 
【0033】
  本発明のウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)に特に制限はないが、200,000〜5,000であることが好ましく、100,000〜10,000であることが特に好ましく、50,000〜20,000であることが最も好ましい。重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定することができる。
 
【0034】
  本発明のウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は100〜200℃であることが好ましく、120〜180℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。ガラス転移温度が100℃未満の場合、ウレタン樹脂から製造される位相差フィルムを高温下で保管するなどした場合に位相差値が変化する等の不具合が発生する。またガラス転移温度が200℃を越えると、延伸などの加工が困難になり位相差フィルムの製造が難しくなる。
 
【0035】
2.ジイソシアネート構成単位
  本発明の一実施形態において、一般式Iで表されるジイソシアネート構成単位におけるXはシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレン、シクロへキシレンンC
1−3アルキレンシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン、又はビシクロへキシレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である。
 
【0036】
  本発明の好ましい実施形態において、Xはシクロへキシレン、メチレンシクロへキシレン、シクロへキシレンメチレンシクロへキシレン、メチレンシクロへキシレンメチレン、又はビシクロへキシレン(これらは、C
1−3アルキルで置換されていてもよい)である。
 
【0037】
  本発明の特に好ましい実施形態において、Xはシクロへキシレンメチレンシクロへキシレン、シクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレン、又はC
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン(これらは、C
1−3アルキルで置換されていてもよい)である。特に、逆波長分散性の位相差フィルム用ウレタン樹脂とするためには、Xがシクロへキシレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分の前記シクロヘキシレンに対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位であるか;XがC
1−3アルキレンシクロへキシレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分の前記シクロへキシレン部分に対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分が結合する前記C
1−3アルキレン部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位であるか;又はXがC
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン(C
1−3アルキルで置換されていてもよい)であり、且つジイソシアネート構成単位における一方のイソシアネート部分が結合する一方のC
1−3アルキレン部分の前記シクロへキシレン部分に対する結合位置を1位とした場合に、他方のイソシアネート部分が結合する他方のC
1−3アルキレン部分の結合位置が2位、3位、5位、又は6位であることが好ましい。特に、2つのイソシアネート部分が1,3位の関係でシクロヘキシレンに対して直接的又は間接的に結合していることが好ましい。
  更に、本発明のウレタン樹脂が一般式IV:
【化8】
[式中、X’はC
1−10アルキレン、又はアルキレンオキシアルキレン(全体で2〜10個の炭素を有する)である]
で表される別のジイソシアネート構成単位を共重合形態で含有することが好ましい。これにより、延伸などの成形加工がより行いやすいTgまで下げることができる。
  本発明の一実施形態において、一般式IVで表されるジイソシアネート構成単位におけるX’はC
4−8アルキレン、又はアルキレンオキシアルキレン(全体で4〜8個の炭素を有する)であり、好ましくはC
4−8アルキレンであり、特に好ましくはヘキシレンである。
 
【0038】
  一般式Iで表されるジイソシアネート構成単位を有するウレタン樹脂を製造するためのジイソシアネート化合物としては、例えば、ジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくはジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートが挙げられ、逆波長分散性のウレタン樹脂とするためには、イソホロンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は1種のみを使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、延伸などの成形加工を行いやすくするための一般式IVで表されるジイソシアネート構成単位を形成するための化合物の好ましい例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
 
【0039】
3.フルオレン構成単位
  本発明の一実施形態において、一般式IIで表されるフルオレン構成単位におけるR
1は互いに独立してC
1−3アルキレンであり、lは1である。
 
【0040】
  本発明の好ましい実施形態において、R
1は共にエチレンであり、lは1である。
 
【0041】
  本発明の一実施形態において、フルオレン構成単位におけるR
2及びR
3は互いに独立してC
1−3アルキルであり、m及びnは互いに独立して0〜2の整数である。
 
【0042】
  本発明の好ましい実施形態において、m及びnは共に0である。
 
【0043】
  上記フルオレン構成単位を有するウレタン樹脂を製造するためのフルオレン化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(ヒドロキシC
1−3アルコキシ)フェニル]フルオレンが挙げられ、好ましくは9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。これらのフルオレン化合物は1種のみを使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
 
【0044】
4.ジオール構成単位
  本発明の一実施形態において、一般式IIIで表されるジオール構成単位におけるYはシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレン、シクロへキシレンC
1−3アルキレンシクロへキシレン、C
1−3アルキレンシクロへキシレンC
1−3アルキレン、又はビシクロへキシレン(これらは、ハロゲン、C
1−6アルキル及びC
1−6アルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい)である。
 
【0045】
  本発明の好ましい実施形態において、Yはシクロへキシレン、メチレンシクロへキシレン、シクロへキシレンメチレンシクロへキシレン、メチレンシクロへキシレンメチレン、又はビシクロへキシレン(これらは、C
1−3アルキルで置換されていてもよい)である。
 
【0046】
  本発明の特に好ましい実施形態において、Yはメチレンシクロへキシレンメチレンである。
 
【0047】
  上記ジオール構成単位を有するウレタン樹脂を製造するためのジオール化合物としては、例えば、1,4−シクロへキサンジメタノール、1,4−シクロへキサンジオール、又は4,4’−ビシクロへキサンジオールが挙げられ、好ましくは1,4−シクロへキサンジメタノールが挙げられる。これらのジオール化合物は1種のみを使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
 
【0048】
5.位相差フィルム
  本発明の位相差フィルムは上記ウレタン樹脂から製造することができる。位相差フィルムは本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含有していてもよい。
 
【0049】
  位相差フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の様々な方法を使用することができる。例えば、ウレタン樹脂を溶媒に溶解して支持体上に塗布した後、乾燥及び延伸を行う方法やウレタン樹脂を押出機に供給し、Tダイよりフィルム状に押出し、さらに延伸を行う方法などを挙げることができる。
 
【0050】
  本発明の位相差フィルムの面内位相差(Re)は厚さ100μm換算で100〜2000nmであることが好ましく、300〜1500nmであることが特に好ましい。面内位相差が100nm未満の場合、位相差フィルムを厚くしなければならず、モバイル機器の小型、軽量化に逆行する。一方、面内位相差が2000nmを越えるとフィルムの厚さが薄くなりすぎ、加工が難しくなる。
 
【0051】
  面内位相差は以下の式:
    Re=(n
x−n
y)×D
[式中、
  n
xは位相差フィルム面内における屈折率が最大となる遅相軸の方向の屈折率であり;
  n
yは前記遅相軸と直交する方向の屈折率であり;
  Dは位相差フィルムの厚さ(nm)である]
から求めることができる。
 
【0052】
  本発明の位相差フィルムの厚み方向位相差は、面内位相差と同様に、厚さ100μm換算で100〜2000nmであることが好ましく、300〜1500nmであることが特に好ましい。
 
【0053】
  厚み方向位相差は以下の式:
    厚み方向位相差(Re’)=(n
x−n
z)×D
[式中、
  n
xは位相差フィルム面内における屈折率が最大となる遅相軸の方向の屈折率であり;
  n
zは位相差フィルムの厚み方向の屈折率であり;
  Dは位相差フィルムの厚さ(nm)である]
から求めることができる。
 
【0054】
  本発明の位相差フィルムの波長分散は、広い波長域において一様の偏光変換を行うためには、好ましくは1.02未満であり、より好ましくは0.9以上1.02未満であり、更に好ましくは0.95以上1.01以下である。
 
【0055】
  波長分散は以下の式:
  波長分散=Re(449)/Re(548.7)
[式中、
  Re(449)は波長449nmの光の面内位相差であり;
  Re(548.7)は波長548.7nmの光の面内位相差である]
から求めることができる。
  また、逆波長分散性のフィルムとするためには、位相差フィルムの波長分散は0.7以上0.95以下であることが好ましく、0.81に近いことが特に好ましい。
 
【0056】
  本発明の位相差フィルムは位相差発現性が高いため、フィルムの膜厚を薄くすることができる。例えば、膜厚が5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることが特に好ましい。
 
【実施例】
【0057】
  以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれにより限定されるものではない。
【0058】
評価分析方法
  本実施例で用いた評価分析方法は以下の通りである。
(1)樹脂の耐熱性
  示差走査熱量分析(DSC)にて、20℃/分で昇温したときに測定されるガラス転移温度(Tg)で評価した。
(2)重量平均分子量(Mw)
  ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
(3)溶媒キャストフィルムの光学特性
  樹脂を溶媒に溶解し、フッ素樹脂コート板に塗布した。乾燥後に剥がしたフィルムをガラス転移温度+10〜25℃で2倍に一軸延伸した後、次の光学特性を評価した。
【0059】
  (i)位相差
  楕円偏光測定装置(KOBLA WPRXY2020、王子計測器(株)製)で波長589.3nmの光に対する面内及び厚み方向の位相差を測定した。位相差はフィルム厚さ100μmでの値に換算した。
【0060】
  (ii)波長分散
  楕円偏光測定装置(KOBLA WPRXY2020、王子計測器(株)製)で波長449nmの光と548.7nmの光に対する面内位相差[R(449)及びR(548.7)]を測定し、波長分散[R(449)/R(548.7)]を求めた。
【0061】
実施例1
  反応容器に9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(23.9重量部)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(18.4重量部)を投入し、ジメチルホルムアミド(60重量部)を加えて溶解させた。次いで、この溶液を撹拌しながらジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(47.7重量部)をゆっくりと添加した。添加終了後、130℃で11時間反応を行い、次いで、220℃に加熱し、減圧下で溶媒を除去した。
  得られた樹脂の耐熱性、分子量、及び光学特性を評価し、結果を表1に示す。
【0062】
実施例2及び3
  9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを表1のように変更した以外は実施例1と同様に樹脂を作成した。
  得られた樹脂の耐熱性、分子量、及び光学特性を評価し、結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
  反応容器に1,4−シクロへキサンジメタノール(31.9重量部)を投入し、ジメチルホルムアミド(60重量部)を加えて溶解させた。次いで、この溶液を撹拌しながらジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(58.1重量部)をゆっくりと添加した。添加終了後、130℃で4時間反応を行い、次いで、220℃に加熱し、減圧下で溶媒を除去した。
  得られた樹脂の耐熱性、分子量、及び光学特性を評価し、結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
  シクロオレフィン系樹脂からなるフィルム(日本ゼオン社製ゼオノア(登録商標)フィルム)を実施例1と同様に一軸延伸し、光学特性を評価した。
【0065】
比較例3
  ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック製、品番H4000)を押出機に供給し、Tダイより280℃で押し出して作製したフィルムを実施例1と同様に一軸延伸し、光学特性を評価した。
【0066】
【表1】
【0067】
  フルオレン骨格を有しないウレタン樹脂(比較例1)やポリカーボネートフィルム(比較例3)では、フィルムの波長分散がそれぞれ1.02及び1.07と大きいため、広い波長域において一様の偏光変換を行うことは困難である。
【0068】
  また、シクロオレフィン系樹脂からなるフィルム(比較例2)では、フィルムの波長分散が1.00と小さいが、2倍延伸時の位相差が小さいため、薄い位相差フィルムとすることが困難である。
【0069】
  一方、本発明のウレタン樹脂(実施例1〜3)は、ガラス転移温度が100℃以上である高い耐熱性を有し、フィルムの波長分散が1.02未満であり、更に、2倍延伸時の位相差が大きい。そのため、広い波長域において一様の偏光変換が可能な薄い位相差フィルムとすることができる。
実施例4
  反応容器に9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(50.7重量部)、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(7.1重量部)を投入し、ジメチルホルムアミド(60重量部)を加えて溶解させた。次いで、この溶液を撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(18.3重量部)とヘキサメチレンジイソシアネート(13.9重量部)をゆっくりと添加した。添加終了後、130℃で16時間反応を行い、次いで、160℃に加熱し、減圧下で溶媒を除去した。
実施例5〜8
  9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソホロンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートを表2のように変更した以外は実施例4と同様に樹脂を作成した。
  得られた樹脂の耐熱性、分子量、及び光学特性を評価し、結果を表2に示す。また、波長449nmから749.4nmの光に対する位相差Rと波長589.3nmの光に対する位相差R0を測定し、波長分散特性(R/R0)を求めた。結果を
図1に示す。
【表2】
  実施例4〜8のウレタン樹脂はフィルムの波長分散が0.9を下回り、逆波長分散性を示した。更に、全ての波長λで位相差がλ/4となる広帯域λ/4板の波長分散[Re(449)/Re(548.7)]は0.81であり、実施例5〜8は広帯域λ/4板の波長分散と同等かそれを下回る波長分散特性を示した。
(4)高倍率延伸フィルムの位相差
  樹脂を溶媒に溶解し、フッ素樹脂コート板に塗布した。乾燥後に剥がしたフィルムをガラス転移温度+10〜25℃で3倍に一軸延伸した後、上記評価分析方法の(3)(i)と同様に位相差を評価した。
  その結果、実施例4及び5のウレタン樹脂の高倍率延伸フィルムは、それぞれ、310nm、232nmと高い位相差を示した。すなわち、広帯域λ/4板(波長589.3nmでの位相差は147.3nm)とするための厚さはそれぞれ、48μm、63μmとなり、これはモバイル機器に搭載するのに十分な薄さであった。
  本明細書で引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願をそのまま参考として本明細書に取り入れるものとする。