(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁性熱伝導体(12)の前記円周面には溝(12a)が形成され、前記ワイヤー状形状記憶合金(11)は前記溝(12a)の中に配置されることを特徴とする請求項1記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
前記絶縁性熱伝導体は、略平行に対向しかつ略棒状またはパイプ形状を有する2本の構成部材(32A,32B)で構成され、前記2本の構成部材(32A,32B)の周囲に接するように前記ワイヤー状形状記憶合金(31)が螺旋形に巻回され、前記ワイヤー状形状記憶合金(31)は、通電で収縮する時、前記2本の構成部材(32A,32B)の間隔を小さくするように変位させることを特徴とする請求項1記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
前記2本の構成部材(32A,32B)からなる前記絶縁性熱伝導体の各々は、少なくとも前記ワイヤー状形状記憶合金(31)と接触する外表面はその断面が略半円を含む曲線となるよう構成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
移動自在の前記板状絶縁性熱伝導体(82A)の上に摩擦接触状態で移動体(86)を配置し、移動自在な前記板状絶縁性熱伝導体(82A)に繰り返して前記変位を生じさせることにより前記移動体(86)を一方向に移動させるようにしたことを特徴とする請求項11記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
前記駆動回路部(41)は、入力電圧を高電圧へ変換する昇圧回路(42)と、その電圧で充電されるコンデンサ(45)と、前記コンデンサ(45)から前記ワイヤー状形状記憶合金とスイッチング素子(47)が直列に接続され、瞬間的に前記ワイヤー状形状記憶合金へ電流を流すことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
前記絶縁性熱伝導体は、少なくとも前記ワイヤー状形状記憶合金と接触する表面部分が酸化アルミニウム(アルミナ)または窒化アルミニウムで構成されたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の衝撃駆動型アクチュエータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
形状記憶合金を利用したアクチュエータは、形状記憶合金における低温時(常温時)に変形した形状と高温時(通電発熱時)に形状回復した形状との変化を記憶する挙動を利用して駆動動作を行う。形状記憶合金の挙動の応答性は、高温時から低温時への熱状態の変化に依存する。従来の形状記憶合金を利用したアクチュエータは、高温時から低温時への熱状態の変化について十分に考慮されておらず、そのため動作応答性が低く、実用性が低いという欠点を有していた。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、形状記憶合金の熱特性を考慮して高い放熱作用を生じる熱伝導構造を実現することにより、ワイヤー状形態を有する形状記憶合金の伸縮変形を利用しかつその変形動作特性の迅速性および即応性を良好にし、実用性を高めた衝撃駆動型アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、ワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体と、ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電しワイヤー状形状記憶合金を収縮させる駆動回路部とを備えることで特徴づけられる。
【0011】
上記の衝撃駆動型アクチュエータでは、所定の配線状態で配置されるワイヤー状の形状記憶合金に対して、当該ワイヤー状形状記憶合金に接触させることにより当該形状記憶合金で生じた熱を迅速に放散させて逃がす絶縁性熱伝導体を設けるようにしたため、瞬間的な通電による発熱で生じた熱を迅速に逃がすことができ、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に達成することができる。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は少なくとも一部に略円周形状を有し、絶縁性熱伝導体の円周面に接触するようにワイヤー状形状記憶合金を配置し、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、絶縁性熱伝導体の位置を変位させることを特徴とする。
ワイヤー状形状記憶合金で発生する通電時の熱を、絶縁性熱伝導体の円周面のほぼ半円部の全域を利用して放散するようにしたため、熱の逃げ道を大きくとることができ、ワイヤー状形状記憶合金の迅速な低温下を可能にする。また半円形の形状で利用され、かつワイヤー状形状記憶合金の全体が絶縁性熱伝導体の円周面の半円部に当たるように構成することにより、ワイヤー状形状記憶合金の収縮動作によって縁性熱伝導体の半径方向の動きに変換することができ、絶縁性熱伝導体の径方向の衝撃を可能にする駆動部として用いることができる。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体の円周面は溝が形成され、ワイヤー状形状記憶合金は溝の中に配置されることを特徴とする。
溝は、例えば断面形状がV字型であり、ワイヤー状形状記憶合金はV字溝の2つの壁面の各々に接触するように配置されるため、熱の放散機能を高めることができる。
【0014】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は、略平行に対向しかつ複数の凹凸突起部を有する2つの構成部材で構成され、2つの構成部材の間に、ワイヤー状形状記憶合金が凹凸突起部に接するように配置され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、2つの構成部材の間隔を変化させることを特徴とする。
この構成によれば、ワイヤー状形状記憶合金の収縮動作を板材の面に直交する方向の板材の動き(変位)に変換することができ、2つの構成部材の間隔を変化させることができる。
【0015】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は、略平行に対向しかつ略棒状またはパイプ形状を有する2本の構成部材で構成され、2本の構成部材の周囲に接するようにワイヤー状形状記憶合金が螺旋形に巻回され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、2本の構成部材の間隔を小さくするように変位させることを特徴とする。
2本の構成部材の絶縁性熱伝導体に関して、間をあけて配置し、当該間をあけるように1本の構成部材が弾性支持されており、かつ一方を固定しかつ弾性支持された他方を移動自在とし、この状態でワイヤー状形状記憶合金を収縮させて、他方の構成部材を、固定された一方の構成部材に接近するように変位させる。
【0016】
上記の構成において、好ましくは、ワイヤー状形状記憶合金は輪状または8の字状に巻回されることを特徴とする。
8の字状に巻回する構成では、ワイヤー状形状記憶合金と棒状絶縁性熱伝導体の表面との接触面積を大きくすることができ、これにより通電で生じた熱の放散能力を高めることができる。
【0017】
上記の構成において、好ましくは、2本の構成部材からなる絶縁性熱伝導体の各々は、少なくともワイヤー状形状記憶合金と接触する外表面はその断面が略半円を含む曲線となるよう構成されていることを特徴とする。
【0018】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は、回転自在に設けられた回転体として形成され、ワイヤー状形状記憶合金は、絶縁性熱伝導体の円周面に接触しかつ巻回して設けられると共に、両端を固定され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、絶縁性熱伝導体を締め付けその回転動作を制動することを特徴とする。
上記の構成では、ワイヤー状形状記憶合金の収縮による作用を、回転体の回転動作にブレーキ(制動)をかけるための手段として利用することが可能となる。
【0019】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は回転自在に設けられた回転体として形成され、かつその円周面に螺旋状の溝が形成され、ワイヤー状形状記憶合金は、絶縁性熱伝導体の円周面の溝内に接触しかつ巻回して設けられると共に、一端は固定されかつ他端は引張されるように弾性機構部で支持され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、絶縁性熱伝導体を回転させることを特徴とする。
上記の構成では、ワイヤー状形状記憶合金を短時間の収縮を繰り返し、かつ回転体絶縁性熱伝導体の円周面に形成された螺旋状の溝との係合関係を利用して、当該回転体絶縁性熱伝導体を任意の一方向に回転させるための衝撃駆動型アクチュエータとして用いることができる。
【0020】
上記の構成において、好ましくは、ワイヤー状形状記憶合金とは別に、第2のワイヤー状形状記憶合金が設けられ、第2のワイヤー状形状記憶合金は、絶縁性熱伝導体の円周面の溝内に接触しかつワイヤー状形状記憶合金の巻き方向とは反対の方向に巻回して設けられると共に、一端は固定されかつ他端は引張されるように第2の弾性機構部で支持され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、絶縁性熱伝導体を一方向に回転させ、かつ第2のワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、絶縁性熱伝導体を反対方向に回転させることを特徴とする。
上記の構成では、2本のワイヤー状形状記憶合金を利用することにより、時計回り方向と反時計回り方向の2方向の回転を可能にする。
【0021】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体の円周面に形成された溝は螺旋状のネジ溝であり、このネジ溝の構造によってワイヤー状形状記憶合金は自らと接触することがないことを特徴とする。
【0022】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は板状の形態を有し、2枚の板状絶縁性熱伝導体を対面して配置し、一方の板状絶縁性熱伝導体は固定され、かつ他方の板状絶縁性熱伝導体は移動自在に配置されると共に弾性機構部で一方向に引かれるように設けられ、2枚の板状絶縁性熱伝導体の間にワイヤー状形状記憶合金を配置してワイヤー状形状記憶合金で2枚の板状絶縁性熱伝導体を連結し、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、移動自在の板状絶縁性熱伝導体を弾性機構部に抗して所定距離だけ変位させることを特徴とする。
【0023】
上記の構成において、好ましくは、移動自在の板状絶縁性熱伝導体の上に摩擦接触状態で移動体を配置し、移動自在な板状絶縁性熱伝導体に繰り返して変位を生じさせることにより移動体を一方向に移動させるようにしたことを特徴とする。
【0024】
上記の構成において、好ましくは、入力電圧を高電圧へ変換する昇圧回路と、その電圧から充電されるコンデンサと、コンデンサからワイヤー状形状記憶合金とスイッチング素子が直列に接続され、瞬間的にワイヤー状形状記憶合金へ電流を流すことを特徴とする。
【0025】
上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は、少なくともワイヤー状形状記憶合金と接触する表面部分が酸化アルミニウム(アルミナ)または窒化アルミニウムで構成されたことを特徴とする。
さらに上記の構成において、好ましくは、絶縁性熱伝導体は、それぞれ略平行に対向しかつ複数の突起部材を備える2つの構成部材で構成され、これらの2つの構成部材の各々で、複数の突起部材は分離されており、かつ複数の突起部材は導電部材で構成され、2つの構成部材の間に、ワイヤー状形状記憶合金が突起部材の導電部材で構成された部分に接するように配置され、ワイヤー状形状記憶合金は、通電で収縮する時、2つの構成部材の間隔を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータによれば、所定の配線状態で配置されるワイヤー状形状記憶合金に対して各種形状の絶縁性熱伝導体を可能な限り有効に接触させるように設け、この絶縁性熱伝導体によってワイヤー状形状記憶合金でパルス的通電時に生じた熱を迅速に放散させて逃がすようにしたため、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に行うことができ、比較的に短い時間で繰り返すことが可能な瞬間的動作を実現することができ、実用性の高い衝撃駆動型アクチュエータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金が低温であるときの状態(A)と、通電加熱(高温)であるときの状態(B)を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金と円盤状絶縁性熱伝導体との接触状態を示す部分断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金と円盤状絶縁性熱伝導体との接触を通して放熱する状態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を分解して示す斜視図である。
【
図6】第2の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金が低温であるときの状態(A)と、通電加熱(高温)であるときの状態(B)とを示す端面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図8】第3の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金が低温であるときの状態(A)と、通電加熱(高温)であるときの状態(B)とを示す縦断面図である。
【
図9】第3の実施形態の第1の変形例に係る衝撃駆動型アクチュエータで、
図8の(A)と同様な図である。
【
図10】第3の実施形態の第2の変形例に係る衝撃駆動型アクチュエータで、ワイヤー状形状記憶合金の巻き方を示す要部の部分斜視図である。
【
図11】第3の実施形態の第2の変形例に係る衝撃駆動型アクチュエータでワイヤー状形状記憶合金が低温であるときの状態(A)と、通電加熱(高温)であるときの状態(B)とを示す縦断面図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図13】本発明の第5の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図14】第5の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータに供給される駆動電流を示す波形図である。
【
図15】本発明の第6の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図16】第6の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの動作特性で、反時計回りの方向の回転動作の駆動状態(A)と時計回りの方向の回転動作の駆動状態(B)とを説明するための図である。
【
図17】第6の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータにおいて、ワイヤー状形状記憶合金と回転体絶縁性熱伝導体の外周面のネジ部との係合関係を示す部分断面図である。
【
図18】本発明の第7の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図19】第7の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータで2枚の板状絶縁性熱伝導体とワイヤー状形状記憶合金との関係を示す分解斜視図である。
【
図20】本発明の第8の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータの要部の外観を示す斜視図である。
【
図21】第8の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータで直進的な駆動動作を説明する図である。
【
図22】本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータで使用される駆動回路の電気回路図である。
【
図23】駆動回路の各部の動作特性を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を図面に基づいて説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
図1〜
図4を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第1の実施形態を説明する。各図において、10は衝撃駆動型アクチュエータであり、11はワイヤー状形状記憶合金であり、12は円盤形状の絶縁性熱伝導体(以下「円盤状絶縁性熱伝導体12」と記す)である。ワイヤー状形状記憶合金11は、衝撃駆動型アクチュエータ10を構成する上で必要とされる所定の長さを有している。実際上、ワイヤー状形状記憶合金11のワイヤー径およびワイヤー長は任意であり、作製しようとする衝撃駆動型アクチュエータ10の全体のサイズに応じて適宜に決められる。また円盤状絶縁性熱伝導体12は代表的に酸化アルミニウム(アルミナ)で形成され、好ましくは、高い電気的絶縁性と熱伝導性を有している。なお円盤状絶縁性熱伝導体12は、なくともワイヤー状形状記憶合金11と接触する表面部分のみが酸化アルミニウムであっても良い。この場合には、例えば、円盤状絶縁性熱伝導体12の全体をアルミニウムで作り、所要の表面部分のみを酸化アルミニウムに変化させる。酸化アルミニウムの表面は電気メッキと類似の工程である陽極酸化処理によって形成されるが、元のアルミニウムに比べて格段に硬くなり、表面硬度が増して、摩擦耐性も向上するという好ましい特性を持つ。また円盤状絶縁性熱伝導体12の材料としては窒化アルミニムやダイヤモンドを用いることもできる。窒化アルミニムやダイヤモンドの熱伝導度は酸化アルミニウムより優れており、コストを度外視すればより適した材料である。
さらに上記の「絶縁性熱伝導体」については、一般的に導電性の材質で作り、絶縁性を持たせるため、導電性材質を複数に分断化して全体的に見て絶縁性を確保する処理または加工を行うようにすることもできる。
【0030】
円盤状絶縁性熱伝導体12は、例えば基台13の上に設けられ、かつ
図1等に示されるようにワイヤー状形状記憶合金11の収縮作用により矢印AL1の方向(一面内の任意な直線方向)に移動可能な取付け構造で取り付けられている。円盤状絶縁性熱伝導体12は、弾性機構部14によって矢印AL1の反対の方向に押圧するように支持されている。弾性機構部14は、基台13に固定される端部14aと、円盤状絶縁性熱伝導体12の円周面の一箇所に接触して移動可能であって当該箇所を押圧する端部14bと、2つの端部14a,14bの間に配置されかつ所要の収縮状態で設けられたコイルスプリング部材14cとによって構成されている。コイルスプリング部材14cの伸長作用に基づき移動端部14bは円盤状絶縁性熱伝導体12の円周面を押圧する。
【0031】
所定の長さのワイヤー状形状記憶合金11は、円盤状絶縁性熱伝導体12の円周面のほぼ半分領域(半円形湾曲面)に接触するように配置されている。ワイヤー状形状記憶合金11の両端11a,11bは基台13にネジ15等の電気端子で固定されている。ワイヤー状形状記憶合金11は、
図3に示すように、円盤状絶縁性熱伝導体12の円周面の円周方向に例えばV字形状の断面で形成された溝12a内に配置され、かつワイヤー状形状記憶合金11のほぼ全部が溝12a内に存在して溝面に接触するようにしている。ワイヤー状形状記憶合金11の通常の伸長状態において円盤状絶縁性熱伝導体12が弾性機構部14によって矢印AL1の反対方向に押圧されているので、ワイヤー状形状記憶合金11のほぼ全領域が溝12aの溝面にしっかりと接触した状態にある。
【0032】
図2の(A),(B)に示すように、ワイヤー状形状記憶合金11の両端11a,11bには、スイッチ16を介して電源17が接続される。スイッチ16と電源17でワイヤー状形状記憶合金11を収縮させる電気駆動回路部が形成される。スイッチ16は、一般的には半導体スイッチであり、パルス信号でオン・オフ制御される。
図2の(B)に示すように、スイッチ16が所要の短時間オンすると、ワイヤー状形状記憶合金11には瞬時に通電され、この通電によって瞬時に発熱し、その結果、ワイヤー状形状記憶合金11は瞬時に収縮するように駆動される。そのため、
図1および
図2(A)に示すように、円盤状絶縁性熱伝導体12は、弾性機構部14の押圧に抗してそのコイルスプリング部材14cを縮めるように、瞬時に矢印AL1の方向にその位置を距離dだけ変位する。ワイヤー状形状記憶合金11への上記通電が間欠的に行われると、その通電による発熱によってワイヤー状形状記憶合金11は間欠的に収縮する。ワイヤー状形状記憶合金11は、元の長さに対してほぼ4%程度収縮する。ワイヤー状形状記憶合金11への通電がなくなると、
図4に示すように円盤状絶縁性熱伝導体12による熱伝導作用18によってワイヤー状形状記憶合金11で生じた熱が急速に放熱される。その結果、ワイヤー状形状記憶合金11は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金11において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。
【0033】
上記構成を有する第1の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ10によれば、ワイヤー状形状記憶合金11に間欠的に通電が行われるたびに発熱して収縮し、弾性機構部14に抗して円盤状絶縁性熱伝導体12の位置を距離dだけ変位させる。通電終了後には、発生した熱は円盤状絶縁性熱伝導体12の熱伝導作用で放熱するので、ワイヤー状形状記憶合金11は迅速に伸長して弾性機構部14の押圧作用で円盤状絶縁性熱伝導体12は元の位置に戻る。このようにして衝撃駆動型アクチュエータ10は衝撃駆動動作を行う。
【0034】
円盤状絶縁性熱伝導体12においてワイヤー状形状記憶合金11と接する面の平面形状が、円盤状になっているのには次の理由がある。ワイヤー状記憶合金11に電流が流れて収縮し、その結果円盤状熱伝導体が移動するが、その移動した後の状態においても、ワイヤー状記憶合金11が円盤状絶縁性熱伝導体と大部分においてしっかりと接する形状がおおかたにおいて曲線を持った円形となる。
図2において(A)はワイヤー状記憶合金11が縮む前の状態、(B)は縮んだ後の状態を表わしている。そのどちらにおいても、ワイヤー状記憶合金11と円盤状絶縁性熱伝導体12とが接している部分がほとんど変わらない。これが例えば、仮に円盤状絶縁性熱伝導体12が直線で形成される四角形だとすると、円盤状絶縁性熱伝導体12の移動に伴ってワイヤー状形状記憶合金11が、全面的に離れて、放熱特性が著しく悪化するために、この用途には適さないことになってくる。
以上では、絶縁性熱伝導体12が好ましくは円盤の形状であると説明したが、図示しないが、一部のみに略円周形状を有する絶縁性熱伝導体であっても良い。要は、ワイヤー状形状記憶合金11が接する部分の形状が略円周形状であれば、アクチュエータとしての本質的な動作は全く同じとなる。
【0035】
[第2の実施形態]
図5と
図6を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第2の実施形態を説明する。各図において、20は衝撃駆動型アクチュエータであり、21はワイヤー状形状記憶合金であり、22は例えば丸棒形状(円柱形状または円管形状、その他の断面形状を有する部材)の絶縁性熱伝導体(以下では代表的に「丸棒状絶縁性熱伝導体22」と記す)であり、23A,23Bは板材である。2枚の板材23A,23Bについて、
図5中下側の板材23Aは固定側板材であり、図中上側の板材23Bは移動側板材である。2枚の板材23A,23Bは、平行にかつ対向するように配置されている。板材23Aの位置は変化しないが、板材23Bは矢印AL2の方向(上下方向、厚み方向、または板材23A,23Bに直角な方向)に移動可能に設けられている。
【0036】
2枚の板材23A,23Bの間には、平行な配置関係で複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22が配置される。複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22は、固定側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aと移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bとに分けられる。
【0037】
固定側の板材23Aの上には固定側の複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aが平行にかつ所定の距離をあけて分離して配置され、かつ固定されている。移動側の板材23Bには移動側の複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bが平行に所定の距離をあけて分離して配置され、かつ固定されている。固定側および移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22A,22Bは、
図6に示すように、交互に配置されることになる。固定側および移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22A,22Bの各々の本数はほぼ等しい。固定側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aと移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bとの間には、丸棒状絶縁性熱伝導体の長手方向に交差(好ましくは直交)するように、少なくとも1本のワイヤー状形状記憶合金21が配置される。換言すれば、固定側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aと移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bとにより形成された、2つの板材23A,23Bの間の複数の凹凸突起部に接するように、ワイヤー状形状記憶合金21が配置されている。ワイヤー状形状記憶合金21の両端は固定側の板材23Aに固定されている。ワイヤー状形状記憶合金21に対して、固定側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aは固定側の板材23Aの側に配置され、移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bは移動側の板材23Bの側に配置される。板材23Aと複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aとによって固定側の第1の構成部材101が形成され、板材23Bと複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bとによって移動側の第2の構成部材102が形成される。
図5に示された図示例では、第1の構成部材101および第2の構成部材102は、それぞれ個別の要素である、板材23Aまたは23B、複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22Aまたは22Bによって構成されるが、これらの要素をアルミニウムなどの金属材料の切削による一体成型で作り、その表面をアルマイト処理したものでも良い。さらに一体成型で作った上記の第1および第2の構成部材を、上記の丸棒状絶縁性熱伝導体22A,22Bに相当する突起状の部材として分離するように加工し、その後において第1および第2の構成部材として構成することもできる。この構成の場合、絶縁性のための表面処理であるアルマイト処理を省略することもできる。このような分離加工を行うことにより隣接する突起状部材の間の絶縁性を確保、構成部材101および構成部材102を全体として絶縁性熱伝導体とすることができる。
【0038】
ワイヤー状形状記憶合金21には、スイッチ16と電源17とによって間欠的に通電が行われる。
【0039】
ワイヤー状形状記憶合金21に通電がなされない状態では、
図6の(A)に示すように、2枚の板材23A,23Bの間隔はh1の状態にある。2枚の板材23A,23Bの間には両者を引張するコイルスプリング部材(図示せず)が設けられ、間隔h1を保つ。ワイヤー状形状記憶合金21に通電が行われた場合には、
図6の(B)に示すように、ワイヤー状形状記憶合金21が収縮し、引張状態にあるコイルスプリング部材に抗して丸棒状絶縁性熱伝導体22Bを上方に変位させ、2枚の板材23A,23Bの間隔を大きくして間隔h2となる。
【0040】
上記構成を有する第2の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ20によれば、ワイヤー状形状記憶合金21に間欠的に通電が行われるたびに発熱して収縮し、移動側の丸棒状絶縁性熱伝導体22Bと板材23Aの位置を変位させ、2枚の板材23A,23Bの間隔を大きくする。通電終了後には、発生した熱は複数本の丸棒状絶縁性熱伝導体22(22A,22B)の熱伝導作用で放熱するので、ワイヤー状形状記憶合金21は迅速に伸長して弾性機構部の押圧作用で丸棒状絶縁性熱伝導体22Bと板材23Aは元の位置に戻る。このようにして衝撃駆動型アクチュエータ20は上下方向の衝撃駆動動作を行う。
以上は、ワイヤー状形状記憶合金21に通電すると、第1の構成部材101と第2の構成部材102の間隔が大きくなることを説明したが、
図6において次のように変更を行うことで、ワイヤー状形状記憶合金21への通電によって、上記の間隔を小さく縮ませることができる。
すなわち、図示しないが、
図6のワイヤー状形状記憶合金21のワイヤーの張り方が左から凸凹となって丸棒状絶縁性熱伝導体22Aおよび22Bに接しているのを、同じく左から凹凸と丸棒状絶縁性熱伝導体22Aおよび22Bに接するように変更する。ただし、この場合には、ワイヤー状形状記憶合金21が通るような通り穴を板材23Aおよび23Bに設けておく必要がある。この場合には、上記とは反対に、2枚の板材23A,23Bの間には両者の間を拡張するコイルスプリング部材(図示せず)が設けられ、ワイヤー状形状記憶合金に通電される前には、より広い間隔が保たれる。
また以上の説明では、ワイヤー状形状記憶合金21が2本用いられるように説明したが、ワイヤー状形状記憶合金21の本数は1本でも2本以上でも良い。さらに丸棒状絶縁性熱伝導体22(22A,22B)は、その長さの最低はワイヤー状形状記憶合金21が接すれば良いので、衝撃駆動型アクチュエータ20の全体の幅を小さくすることもできる。
また上記の説明では、符号22で示した部材を丸棒形状の絶縁性熱伝導体として説明した。しかし、部材22には、その表面では電気が流れる特性を有するが、隣接するもの同士が電気的に絶縁されている熱伝導体(突起状部材で形成される構成部材。「絶縁性熱伝導体」に相当する。)であってもよい。この場合、絶縁性熱伝導体の断面形状は、丸、円管等の形状には限定されず、突起部を形成する任意の形状であってもよい。さらにこのときには、その表面材質には銅やアルミニウム等の金属(導電部材)を用いることができる。この場合には、ワイヤー状形状記憶合金21は、部材22に接している部分(表面金属部分)は電気的に短絡され、通電に起因する発熱は生じない。ワイヤー状形状記憶合金21において、通電によって発熱する部分は、隣接する2つの絶縁性熱伝導体の各々に接触する箇所の間の区間の部分である。部材22についてこのような構造を採用することにより、等価的な電気抵抗を下げることができ、熱伝導効率を向上させることができ、さらに本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータを低電圧で駆動することができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図7〜
図11を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第3の実施形態を説明する。
図7において、30は衝撃駆動型アクチュエータであり、31はワイヤー状形状記憶合金であり、32A,32Bは棒形状(円柱、角柱、その他にパイプ形状等)の絶縁性熱伝導体(以下「棒状絶縁性熱伝導体32A,32B」と記す)である。本実施形態の衝撃駆動型アクチュエータ30では、2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bを有し、一方の棒状絶縁性熱伝導体32Aはその両端部を基台33に固定されており、他方の棒状絶縁性熱伝導体32Bは移動自在に配置されている。移動自在な棒状絶縁性熱伝導体32Bは、その両端部は支持板34に固定されている。さらに両端の2枚の当該支持板34の各々は、引張状態にあるコイルスプリング部材35を介して基台33上の固定端部36に結合されている。2本の棒状絶縁性熱伝導体34A,34Bは所定の隙間をあけて平行に配置され、かつ2本の棒状絶縁性熱伝導体34A,34Bの外側の周囲に接するようにワイヤー状形状記憶合金31が複数の巻き数で螺旋形に輪状に巻回されている。ワイヤー状形状記憶合金31の両端は、基台33に設けられた電気端子37に接続されている。さらに、ワイヤー状形状記憶合金31の両端の間には上記のスイッチ16と電源17が接続されている。
上記の2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bは、それぞれ、本実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ30を構成するための基本的な構成部材となる。
【0042】
固定された棒状絶縁性熱伝導体32Aに対して、移動自在な棒状絶縁性熱伝導体32Bは、コイルスプリング部材35で引張された状態にあるが、ワイヤー状形状記憶合金31が螺旋状に巻回されているので、ワイヤー状形状記憶合金31に通電がなされない状態では
図8の(A)に示すように所定の間隔を開けて配置されている。スイッチ16がオンされてワイヤー状形状記憶合金31に通電が行われた場合には、ワイヤー状形状記憶合金31が収縮し、棒状絶縁性熱伝導体32Bが引き寄せられて、矢印AL3の方向に変位し、
図8の(B)に示すように、2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bの間隔が距離dだけ小さくなる。
【0043】
図7および
図8で示した実施形態の構成では、棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bは断面が円形の円柱形状を有している。巻回されたワイヤー状形状記憶合金31は、各棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bの円形状に湾曲した外表面に接触するように配線されている。また2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bは、
図9に示すように、対抗する面部分を平面にし、断面をほぼ半円形状にすることで、全体を小さくしたままでワイヤー状形状記憶合金31との接触面積を大きくすることもできる。
【0044】
また2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bに対するワイヤー状形状記憶合金31の巻き方については、
図10および
図11に示すように、8の字状にすることもできる。この場合にはさらにワイヤー状形状記憶合金31と棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bとの接触面積を大きくすることができ、さらにワイヤー状形状記憶合金31の長さも大きくすることができ、発生する変位も大きくすることができる。
図示しないが、2本の棒状絶縁性熱伝導体32A,32Bは、電流を流す度にワイヤー状記憶合金31が収縮して、2本の棒32A,32Bの間隔を狭めるので、単純に間隔可変のアクチュエータとしても機能できる。
【0045】
[第4の実施形態]
図12を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第4の実施形態を説明する。
図12において、50は衝撃駆動型アクチュエータであり、この衝撃駆動型アクチュエータ50は高速応答の回転ブレーキ装置として機能するもので、一つの応用例として人が操作するボリュームや回転スイッチなどの回転時に、衝撃駆動の回転ブレーキ作用によりクリック感を生じさせるものがある。51はワイヤー状形状記憶合金であり、52は中心軸部にシャフト53を有する回転体状の絶縁性熱伝導体(以下「回転体絶縁性熱伝導体52」と記す)である。シャフト53の上端部はさらに延長されて回転駆動部と連結されているが、
図12の図示例ではシャフト53の上端の延長部分は省略されている。本実施形態の衝撃駆動型アクチュエータ50では、回転体絶縁性熱伝導体52の外周面の周りにワイヤー状形状記憶合金51をほぼ1周分巻いている。ワイヤー状形状記憶合金51の両端は基台54上に固定端子54A,54Bに固定されている。またワイヤー状形状記憶合金51の両端の間にはスイッチ16と電源17が直列接続の関係で接続されている。
【0046】
上記の回転体絶縁性熱伝導体52は、外部からの動力に基づきシャフト53によって矢印AL4に示すごとく回転駆動される構造となっている。従って、ワイヤー状形状記憶合金51が通電されない通常状態であるときには、ワイヤー状形状記憶合金51は回転体絶縁性熱伝導体52の外周面に触れているが強く接触していない。従って回転体絶縁性熱伝導体52は、ブレーキ作用(制動作用)を受けず、拘束されることなく自由に回転する状態にある。ワイヤー状形状記憶合金52に通電を行うと、ワイヤー状形状記憶合金52が瞬時に収縮し、回転体絶縁性熱伝導体52の外周面に強く接触し、回転体絶縁性熱伝導体52を締め付ける。その結果、回転状態にある回転体絶縁性熱伝導体52に強いブレーキ力が加わる。通電が終了すると、ワイヤー状形状記憶合金51で生じた熱は、回転体絶縁性熱伝導体52を通して放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金51の長さが元の長さに戻り、締め付けがなくなり、ブレーキ作用が解除される。
【0047】
上記構成を有する第4の実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ50によれば、シャフト53を通して外部から与えられる回転駆動力で回転する回転体絶縁性熱伝導体52を、その外周面に巻いたワイヤー状形状記憶合金51の通電による収縮で締め付け、ブレーキ作用を生じさせることができる。ワイヤー状形状記憶合金51に基づく回転体絶縁性熱伝導体52に対する間欠的な瞬時のブレーキ作用は、シャフト53に対して衝撃を与え、シャフト53を回転する操作者に対してクリック感を生じさせることができる。
【0048】
[第5の実施形態]
図13と
図14を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第5の実施形態を説明する。
図13において、60は衝撃駆動型アクチュエータであり、この衝撃駆動型アクチュエータ60によって例えば矢印AL5に示すような方向に回転するモータが実現される。衝撃駆動型アクチュエータ60は、ワイヤー状形状記憶合金61と、例えば中空の円筒形状の回転体をなす絶縁性熱伝導体62(以下「回転体絶縁性熱伝導体62」と記す)とから構成される。回転体絶縁性熱伝導体62は、基台63の上に回転支持機構62Aによって回転自在になるように設けられている。回転体絶縁性熱伝導体62はその軸方向に所定の長さを有し、かつ外周面の表面には螺旋状のネジ部62Bが形成されている。ワイヤー状形状記憶合金61は、回転体絶縁性熱伝導体62の外周面のネジ溝に沿って溝内に接触して例えば1周分巻回して配置されている。ワイヤー状形状記憶合金61の一端部は基台63の固定端子64Aに固定され、他端部は引長されたコイルスプリング部材65を介して固定端子64Bに固定される。またワイヤー状形状記憶合金61の両端部の間には電気的にパルス駆動装置66が接続されており、ワイヤー状形状記憶合金61に周期的にパルス電流が通電される。
図14に、パルス駆動装置66が出力する周期的なパルス駆動電流の例を示す。
【0049】
上記の衝撃駆動型アクチュエータ60では、パルス駆動装置66からパルス電流を与えられると、伸長状態にあるワイヤー状形状記憶合金61は、パルス電流の通電で発熱を生じかつその後放熱され、これにより周期的に収縮を繰り返す。ワイヤー状形状記憶合金61が収縮すると、回転体絶縁性熱伝導体62の外周面を締め付け、コイルスプリング部材65が引き伸ばされ、そのため回転体絶縁性熱伝導体62が矢印AL5の方向に所定角度だけ回転する。非通電時には、回転体絶縁性熱伝導体62を通じてワイヤー状形状記憶合金61の熱が放熱され、その長さが伸長する。このとき、回転体絶縁性熱伝導体62とワイヤー状形状記憶合金61の摩擦が少なくなり、コイルスプリング部材65が、ワイヤー状形状記憶合金61を元の位置へ引き戻す。回転体絶縁性熱伝導体62の所定角度の回転動作は、パルス電流が与えられるたびに行われ、その結果、回転体絶縁性熱伝導体62は矢印AL5の方向に回転することになる。なおワイヤー状形状記憶合金61が伸長状態にあるときには、緩い状態で回転体絶縁性熱伝導体62の外表面に接触している。
【0050】
上記の衝撃駆動型アクチュエータ60において、回転支持機構62Aに、回転体絶縁性熱伝導体62の回転に伴って回転体絶縁性熱伝導体62がその軸方向に移動する。このような機構を有する衝撃駆動型アクチュエータ60によれば、例えば、回転体絶縁性熱伝導体62の中空内部にカメラレンズを取り付けることにより、カメラレンズの焦点調整機構部として構成することができる。
このカメラレンズの焦点調整機構としての応用では、螺旋状のネジ部62Bによって、転体絶縁性熱伝導体62の回転によって、他に何の保持機構などがなくても転体絶縁性熱伝導体62が進退することできる直動機能を合わせ持つ。この構成では、カメラレンズ方向の光軸の長さを簡単に短くすることができる。
【0051】
[第6の実施形態]
図15と
図16を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第6の実施形態を説明する。この第6の実施形態は、上記の第5の実施形態の変形例である。すなわち、第5実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ60の構成では一方向に回転するモータであったが、本実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ60−1の構成では、反対方向にも回転できるモータを実現することができる。すなわち、
図15に示すように、回転体絶縁性熱伝導体61の回転動作に関して、矢印AL5に示す回転方向(時計回りの方向)とは反対である矢印AL6に示す回転方向(反時計回りの方向)の回転を行わせるように構成される。
【0052】
構成の上では、
図13で説明した構成に加えて、もう1つのワイヤー状形状記憶合金71が回転体絶縁性熱伝導体62の外周面のネジ溝に巻回される。ワイヤー状形状記憶合金71の巻き方向は、前述のワイヤー状形状記憶合金61とは反対の巻き方向になっている。またワイヤー状形状記憶合金71が巻かれるネジ溝は、ワイヤー状形状記憶合金61が巻かれたネジ溝とは別であり、両者は共通にならないように設定されている。換言すれば、2本のワイヤー状形状記憶合金61,71は互いに接触しないようなネジ溝に配置される。
【0053】
ワイヤー状形状記憶合金71の一端部は基台63の固定端子72Aに固定され、他端部は引長されたコイルスプリング部材73を介して固定端子72Bに固定される。またワイヤー状形状記憶合金71の両端部の間には電気的に他のパルス駆動装置(図示せず)が接続されており、ワイヤー状形状記憶合金71に周期的にパルス電流が通電される。当該他のパルス駆動装置は、前述したパルス駆動装置66と同様な装置である。当該他のパルス駆動装置がパルス信号を出力することにより、ワイヤー状形状記憶合金71を周期的に収縮され、矢印AL6の方向に回転体絶縁性熱伝導体62を回転させる。
【0054】
図16には、回転体絶縁性熱伝導体62の回転動作に関して、矢印AL6の方向(反時計回りの方向)の回転動作(A)と、矢印AL5の方向(時計回りの方向)の回転動作(B)とを示す。2つの回転動作(A),(B)の各々では、スイッチ16と電源17からなるパルス駆動装置66,74によってパルス電流が供給される。スイッチ16がオンするときにパルス電流が通電される。これによってワイヤー状形状記憶合金61,71の各々では、その状態が伸長状態(1)、収縮状態(2)、再び伸長状態(3)と推移して、その結果、回転駆動が行われる。ワイヤー状形状記憶合金61,71が伸長状態にあるとき、ワイヤー状形状記憶合金61,71は、回転体絶縁性熱伝導体62の外周面に緩く接触している。伸長状態にあるワイヤー状形状記憶合金61,71が通電され収縮状態になるとき、ワイヤー状形状記憶合金61,71は回転体絶縁性熱伝導体62の外周面を締め付け、コイルスプリング部材65,73が伸び、それぞれの設定された方向に所定角度の回転を生じる。パルス電流の供給を繰り返すことにより、伸長状態(1)、収縮状態(2)、伸長状態(3)が繰り返され、回転が行われる。ワイヤー状形状記憶合金61による収縮動作、ワイヤー状形状記憶合金71による収縮動作は、いずれか一方が選択的に行われる。
【0055】
図17に、回転モータとしての機能を有する衝撃駆動型アクチュエータ60,60−1における回転体絶縁性熱伝導体62とワイヤー状形状記憶合金61(または71)の係合関係を示す。ワイヤー状形状記憶合金61(または71)は、回転体絶縁性熱伝導体62の外周面に形成された螺旋状のネジ部62Bのネジ溝62B−1内に配置されている。回転体絶縁性熱伝導体62は絶縁性の材質で形成されており、かつ例えば
図17に示すようにワイヤー状形状記憶合金61(または71)は異なるネジ溝62B−1内にあって両者の間にはネジ山62B−2が存在するので、ワイヤー状形状記憶合金61(または71)の各々は分離されて短絡状態が生じることはない。ワイヤー状形状記憶合金61(または71)はネジ溝62B−1内でしっかりと回転体絶縁性熱伝導体62に接触するので、効率の良い放熱を行うことができる。
右回り(AL5)の作用を行うワイヤー状形状記憶合金61と左回り(AL6)の作用を行うワイヤー状形状記憶合金71は、回転体絶縁性熱伝導体62の螺旋ネジ部62Bが多数のネジ山が切られているので、ワイヤー同士がぶつからないように、数山離れたところに巻くようにする。
【0056】
[第7の実施形態]
図18と
図19を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第7の実施形態を説明する。
図18において、80は衝撃駆動型アクチュエータであり、この衝撃駆動型アクチュエータ80は例えば矢印AL7に示すような方向に可動部が移動するリニア移動型(直進型)のアクチュエータである。衝撃駆動型アクチュエータ80は、ワイヤー状形状記憶合金81と、平行に配置されかつ重ねられた矩形板状の2枚の絶縁性熱伝導体82A,82B(以下「板状絶縁性熱伝導体82A,82B」と記す)とから構成される。下側の板状絶縁性熱伝導体82Aは、固定されており、固定子として用いられる。上側の板状絶縁性熱伝導体82Bは、その一端82B−1が、引張されたコイルスプリング部材84を介して固定端部83に結合され、その他端82B−2が自由端となっている。板状絶縁性熱伝導体82Bは、固定された板状絶縁性熱伝導体82Aにほぼ重なった状態で板状絶縁性熱伝導体82Aの長手方向(矢印AL7の方向)に移動することができるように配置されている。ワイヤー状形状記憶合金81は、
図19に示すように、重ね合わされた2枚の板状絶縁性熱伝導体82A,82Bの間のスペースに配置され、かつ板状絶縁性熱伝導体82Aの一端部82A−1と板状絶縁性熱伝導体82Bの一端部82B−1とに結合されている。通電が行われない通常の状態では、ワイヤー状形状記憶合金81は伸長状態にある。従って、板状絶縁性熱伝導体82Aの一端部82A−1と板状絶縁性熱伝導体82Bの一端部82B−1とに連結されたワイヤー状形状記憶合金81は、端部82B−1をコイルスプリング部材84で引張されているので、伸長状態にある。ワイヤー状形状記憶合金11に間欠的に通電が行われると、ワイヤー状形状記憶合金11が収縮し、コイルスプリング部材84に抗して上側の板状絶縁性熱伝導体82Bが矢印AL7の方向に瞬時に移動する。ワイヤー状形状記憶合金11の両端部の間には、電気的に駆動回路が接続されている。85は通電用の電気配線である。上側の板状絶縁性熱伝導体82Bは移動子として機能する。
【0057】
上記の衝撃駆動型アクチュエータ80は、下記に説明されるように、移動子である板状絶縁性熱伝導体82Bの上に移動体を載置することにより、当該移動体を移動させるリニア移動型アクチュエータとして利用される。
【0058】
[第8の実施形態]
図20と
図21を参照して、本発明に係る衝撃駆動型アクチュエータの第8の実施形態を説明する。この実施形態は、
図18で説明した移動子のリニア移動を可能にする衝撃駆動型アクチュエータに基づいて構成されており、移動子である板状絶縁性熱伝導体82Bの上に移動体86を載置することにより、当該移動体86を直進的に移動させるように構成される。その他の部分の構成については、
図18で説明した構成と同じであり、
図20に示した構成において、
図18で示した要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0059】
移動子である板状絶縁性熱伝導体82Bの上に載置された直方体状の移動体86は、板状絶縁性熱伝導体82Bの長手方向に沿ってのみ直進的に移動可能になるように移動方向を拘束して置かれている。板状絶縁性熱伝導体82Bの上面と移動体86の下面との間には摩擦部87が生じるようになっている。
【0060】
次に、
図21を参照して本実施形態に係る衝撃駆動型アクチュエータ80に基づく移動体86の直進型の移動について説明する。
図21の(A)の状態は、駆動回路をなすスイッチ16と電源17で、スイッチ16はオフの状態にある。従って、上側の板状絶縁性熱伝導体82Bはコイルスプリング部材84で引張され、ワイヤー状形状記憶合金81は伸長した状態にある。
図21の(B)の状態では、スイッチ16が急激にオンされ、ワイヤー状形状記憶合金81にパルス的に通電がなされ、ワイヤー状形状記憶合金11が瞬間的に収縮する。その結果、コイルスプリング部材84に抗して板状絶縁性熱伝導体82Bが矢印AL7の方向にPだけ瞬間的に変位する。板状絶縁性熱伝導体82Bに変位が生じても、板状絶縁性熱伝導体82B上の移動体86は、慣性のため摩擦部87ですべり状態が生じ、移動体86は変位せず、移動体86のそのままの位置に留まる。
その後、
図21の(C)の状態では、スイッチ16がオフになり、通電がなくなると、ワイヤー状形状記憶合金81は放熱され、ゆっくりと元の長さ(伸長状態)に戻り、板状絶縁性熱伝導体82Bの位置も摩擦のためにコイルスプリング部材84で引かれて元の位置に戻る。その結果、移動体86の位置も板状絶縁性熱伝導体82Bの移動と共に変化する。そのとき、移動体86は、結果的に距離dだけ図中左方向に移動することになる。
ワイヤー状形状記憶合金に周期的に通電を行って上記の状態の変化を繰り返すと、移動体86を図中左方向に直進的に移動させることができる、
【0061】
本実施形態に係るリニア移動用の衝撃駆動型アクチュエータ80によれば、圧電素子によるリニア型アクチュエータに比較して、1回あたりの移動量を大きくすることができ、駆動周波数を大幅に下げることができ、低コストで簡単な駆動回路構成でリニア移動型のアクチュエータを実現することができる。
【0062】
次に、前述したワイヤー状形状記憶合金11,21,31,51,61,71,81(以下「ワイヤー状形状記憶合金11等」と記す。)を収縮・伸長するための駆動回路を
図22と
図23を参照して説明する。ワイヤー状形状記憶合金11等は、駆動回路41から与えられるパルス的な通電に基づいて間欠的に収縮する。駆動回路41は、DC/DCコンバータ42と電池43と充電抵抗44と放電用コンデンサ45から構成される。駆動回路41は、電池43で印加される直流電圧をDC/DCコンバータ42で変換して、例えば昇圧された所定の直流電圧を生成する。当該駆動回路41は上記の電源17の具体的回路構成である。46は駆動回路41の出力端であり、当該出力端46に負荷としてワイヤー状形状記憶合金11等の一端が接続される。ワイヤー状形状記憶合金11等の他端には、アースとの間にスイッチングトランジスタ47が接続される。スイッチトランジスタ47は前述のスイッチ16に相当する。スイッチングトランジスタ47はベースに接続された制御端子47aにパルス信号が供給される。スイッチングトランジスタ47に制御信号が供給されると、スイッチングトランジスタ47は瞬時にオンになって電流Imが流れ、これによってワイヤー状形状記憶合金11等に瞬時に通電が行われる。スイッチングトランジスタ47のベースにパルス信号が供給されることにより、そのたびにワイヤー状形状記憶合金11等には間欠的に電流が給電される。
【0063】
図23では、駆動回路41における放電用コンデンサ45の電圧変化特性(A)、負荷電流Imの変化特性(B)、およびワイヤー状形状記憶合金11の長さの変化特性(C)が示されている。ワイヤー状形状記憶合金11等の長さの変化特性(C)において、範囲48が加熱時の範囲となり、範囲49が冷却時の範囲となる。ワイヤー状形状記憶合金11での冷却時間を長く保つためにワイヤー状形状記憶合金11等での通電時間を短くし、オフ時間を長くとるようにしている。また可能な限り通電時間を短くするために、駆動回路41は高電圧(例えば20V)、大電流(例えばピーク電流2A)の出力でワイヤー状形状記憶合金11を駆動する。なお、衝撃駆動型アクチュエータの設計上において求められる条件に応じて、駆動回路41は電池43の電流供給能力がある場合には、電池の入力電圧からパルス的な通電によりワイヤー状形状記憶合金11等を直接に駆動するように構成することができる。この場合には、DC/DCコンバータ42、充電抵抗44、放電用コンデンサ45が不要になり、駆動回路41の簡素化を図ることができる。
【0064】
ワイヤー状形状記憶合金11等を応答速度を向上させて間欠的に収縮または伸張させるには、好ましくは、できるだけ冷却時間を大きくする必要がある。そのためには限られた時間の中で、通電時間を短くするために、パルスデューティ(通電時間/周期)を短くし、その波高値を大きくする必要がある。そのために電池43の電圧以上の電圧が必要となり、電圧を昇圧させるDC/DCコンバータ41を用いる。そして、放電用コンデンサ45に高電圧で充電させてスイッチングトランジスタ47をONにすることで、放電用コンデンサ45に貯まった電荷を一度に電流の形で放出させる。この時間が放電時間Trで、ワイヤー状形状記憶合金11等の抵抗値が低いために、瞬時で電流Imが流れる。
【0065】
ワイヤー状形状記憶合金11等に瞬時に電流Imが流れて、ワイヤー状形状記憶合金自体が加熱されてワイヤー状形状記憶合金11等が収縮して、絶縁性熱伝導体に強く接することになる。電流は瞬時であるために、ワイヤー状形状記憶合金11等が絶縁性熱伝導体に当たったときには、流れる電流はほぼゼロになっている。このため、仮に絶縁性熱伝導体の絶縁性が劣化したとしても、ショート状態になって大電流が流れ続けることがなく、安全な回路となる。
【0066】
以上は、ワイヤー状形状記憶合金を説明したが、その断面は丸でなくてよく、四角形の断面形状をしたものであっても良い。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。