(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記格子状の交点となる位置に補強材を挿入し、該補強材の頭部に受圧板を取り付ける受圧板設置工程を含むことを特徴とする請求項1記載の植生基材吹付工の基礎工法。
前記受圧板設置工程において、前記格子状の交点となる位置を削孔してグラウト材を充填した充填孔を形成し、該充填孔に前記補強材を挿入することを特徴とする請求項2記載の植生基材吹付工の基礎工法。
前記連結工程において、前記ワイヤの一端を始点となる前記補強材の頭部に固定した後、前記ワイヤの中途部を複数の前記補強材の頭部に掛けながら引張し、この際、前記補強材の頭部に掛ける度に引張方向を変更し、前記ワイヤの他端を終点となる前記補強材の頭部に固定することを特徴とする請求項4記載の植生基材吹付工の基礎工法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような法枠100が形成された法面12では、植物を生育するための植生基材が、格子状に形成された法枠100の、格子の窓に該当する各領域に吹き付けられる。しかしながら、
図20に示した法枠100は、格子状に配置された鉄筋にモルタル102が吹き付けられて形成されていることから、モルタル102に近接する領域では、照り返しによる乾燥、モルタル102のアルカリ成分による障害、植生基盤の分断による保水性障害等の影響で、植生不良を起こす場合がある。このため、実質的に植物を生育できる範囲は、モルタル102の上やモルタル102に近接する領域を除いた、図中Dで示すような領域に限られてしまい、法面12の全域に連続した植物群落を形成することが困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、法面を全体的に緑化させることで、より強固に法面を保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)法面への植生基材吹付工の基礎工法であって、生分解性の材料で形成され、平行な2つの凹条部とその間の突条部とを有し、前記2つの凹条部を構成する底面が平坦であり、前記2つの凹条部の前記突条部と反対側に、植生基材の吹き付け高さ
と等しい高さの壁部が形成された複数の基盤支持枠を、互いに平行或いは直角となる向きで法面に格子状に配置し、各基盤支持枠をアンカーピンにより固定することで、前記法面に植生基材を支持する法枠を形成する法枠形成工程を含むことを特徴とする植生基材吹付工の基礎工法(請求項1)。
【0008】
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、法面に植生基材を支持する法枠を形成する法枠形成工程を含むものである。法枠形成工程では、複数の基盤支持枠を互いに平行或いは直角となる向きで法面に配置し、各基盤支持枠をアンカーピンにより固定することで、基盤支持枠により構成される格子状の法枠を法面に形成する。この際、複数の基盤支持枠の格子状の配置は、法枠を形成する法面の広さや形状に合わせて、格子の間隔や角度を決定する。例えば、複数の基盤支持枠の格子状の配置としては、水平方向と平行及び直交する格子線を有する矩形格子状や、千鳥格子状等が挙げられる。又、格子状の一部に基盤支持枠が配置されていなくてもよく、1つの法面に複数の異なる格子状を組み合わせて配置してもよい。このように配置することで、法面の広さや形状に合わせて、適切に植生基材を支持する法枠を形成することとなる。
【0009】
更に、本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、法枠を形成する複数の基盤支持枠が、生分解性の材料で形成されているものである。生分解性の材料としては、例えば、生分解性プラスチックが挙げられる。そして、このような基盤支持枠により法枠が形成された法面に対し、植生基材を吹き付けることにより、施工直後の植物の生育状態が十分でない時期には、基盤支持枠で形成した法枠により植生基材を支持する。そして、十分な植物生育が見込まれる、例えば5〜10年後には、微生物により基盤支持枠が分解軟化されるため、基盤支持枠が植物の生育を妨げることなく、法面が全体的に緑化される。従って、法面の全体に連続的に生育した植物の根茎により、法面の表層全体を緊縛支持することとなるため、より強固に法面を保護するものとなる。更に、植生基材を支持する法枠の形成に、養生待ちの時間が必要となるモルタル等を使用しないため、施工期間を短縮するものとなる。
又、本基礎工法で用いる基盤支持枠は、平行な2つの凹条部と、その間に形成された突条部とを有しており、2つの凹条部の各々には、突条部とは反対側の位置に、植生基材の吹き付け高さ
と等しい高さの壁部が形成されている。すなわち、基盤支持枠は、凹条部や突条部の延在方向での断面形状が山型を成している。そして、このような基盤支持枠を用いて形成した法枠に、壁部の高さを目安にして植生基材の吹き付けを行うことで、正確な高さで迅速に植生基盤を吹き付けることとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記格子状の交点となる位置に補強材を挿入し、該補強材の頭部に受圧板を取り付ける受圧板設置工程を含む植生基材吹付工の基礎工法(請求項2)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、法面に補強材を挿入し、挿入した補強材の頭部に受圧板を取り付ける受圧板設置工程を含むものである。補強材を挿入する位置は、法枠形成工程において基盤支持枠を配置する格子状の交点の位置であり、法枠を形成する範囲内における、格子状の交点位置の各々に、補強材を挿入する。補強材には、目的とする法面の補強強度等に応じた、適切な径や長さを有する異形棒鋼等を使用する。この補強材の挿入により、法面の変形が抑制されることとなる。
【0011】
そして、上述したような補強材の頭部に取り付ける受圧板は、格子状の交点位置において、法枠の一部を構成するものとなる。受圧板は、補強材の引き抜き方向の荷重を法面から十分に受ける形状や大きさであると共に、例えば多孔構造等のような、植物の生育を妨げないような構造であることが好ましい。この受圧板の設置により、補強材の緊張力が周辺地盤に伝達されるため、法面の変形が効果的に抑制される。従って、本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、植物の根茎による緊縛支持に加えて、補強材と受圧板とにより法面の変形を抑制するため、より強固に法面を保護するものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項における、前記受圧板設置工程において、前記格子状の交点となる位置を削孔してグラウト材を充填した充填孔を形成し、該充填孔に前記補強材を挿入する植生基材吹付工の基礎工法(請求項3)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、受圧板設置工程において、前記格子状の交点位置に挿入する補強材を、直接法面に挿入せずに、グラウト材の充填孔に挿入するものである。すなわち、法面の前記格子状の交点位置を削孔した後、削孔した孔内にグラウト材を注入し、法面にグラウト材の充填孔を形成する。そして、形成した充填孔に補強材を挿入し、補強材をグラウト定着させるものである。この際、グラウト材にはセメントミルク等を用い、補強材には、グラウト定着させずに直接法面に挿入する場合の補強材と同等、或いは、それ以上の径や長さを有する異形棒鋼等を用いる。そして、補強材を挿入した後、補強材の頭部に受圧板を取り付ける。これにより、グラウト定着させずに直接法面に補強材を挿入する場合と比較して、法面に対する引き抜き抵抗力が増加し、法面の変形を更に抑制することとなるため、より強固に法面を保護するものとなる。
【0013】
(4)上記(2)(3)項において、複数のワイヤの各々により、複数の前記補強材の頭部を連結する連結工程を含む植生基材吹付工の基礎工法(請求項4)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、複数のワイヤの各々により、法面に挿入した複数の補強材の頭部を連結する連結工程を含むものである。ワイヤにより連結する補強材は、グラウト材の充填孔に挿入したものであってもよく、又、直接法面に挿入したものであってもよい。ワイヤで連結することによって、各補強材にかかる引き抜き方向の荷重を、複数の補強材に分散して負担させることとなる。このため、部分的な抜け出しや小崩落等の法面の変形を、複数の補強材を挿入した範囲全体にわたって抑止するものとなり、更に強固に法面を保護するものとなる。
【0014】
(5)上記(4)項における、前記連結工程において、前記ワイヤの一端を始点となる前記補強材の頭部に固定した後、前記ワイヤの中途部を複数の前記補強材の頭部に掛けながら引張し、この際、前記補強材の頭部に掛ける度に引張方向を変更し、前記ワイヤの他端を終点となる前記補強材の頭部に固定する植生基材吹付工の基礎工法(請求項5)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤの各々を複数の補強材の頭部に下記のように連結する。すなわち、ワイヤの一端を始点となる補強材の頭部に固定した後、ワイヤの中途部を複数の補強材の頭部に掛けながら引張する。この際、ワイヤの中途部は、複数の補強材の各頭部において、補強材の頭部に巻き付けや固定をせずに、補強材の頭部に引掛けるようにして引張方向を変更する。そして、複数の補強材の頭部を介して引張した状態のワイヤの他端を、終点となる補強材の頭部に固定する。
【0015】
ワイヤ連結の始点及び終点の補強材の頭部へは、ワイヤクリップ等を用いてワイヤを固定する。又、複数のワイヤの各々は、連結する複数の補強材の頭部の数や、ワイヤの引き回し経路等を考慮して、補強材の各頭部を適切な力で引張するような長さや強度を有するものを使用する。そして、各ワイヤを固定する始点や終点となる補強材の頭部、及び、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する一部の補強材の頭部を除き、複数の補強材の各頭部には、少なくとも2本のワイヤの中途部が互いに異なる方向から掛かるように、複数のワイヤを連結する。本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、上述のようにワイヤ連結をすることで、始点及び終点以外の複数の補強材の頭部へは、ワイヤの固定をせずに、引張方向を変更するようにワイヤを掛けるため、施工時間を短縮するものとなる。しかも、少なくとも2本のワイヤの中途部が掛けられて引張されている補強材の各頭部には、異なる2方向以上に引張力が働くため、ワイヤを固定していないにも関わらず締め付けるような力が加わり、強固に補強材の頭部を連結するものとなる。
【0016】
(6)上記(4)(5)項における、前記連結工程において、前記複数のワイヤの各々を矩形波状に引き回す植生基材吹付工の基礎工法(請求項6)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤの各々を矩形波状に引き回すものである。すなわち、複数のワイヤの各々の中途部を、補強材の各頭部において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、例えば、右回りに90°の引張方向の変更と、左回りに90°の引張方向の変更とを、2回ずつ交互に繰り返して矩形波状に引き回すものである。
【0017】
上述の如き連結順序により、1本のワイヤで連結する補強材の頭部は、格子状の交点位置に挿入されている複数の補強材の頭部のうち、隣り合う平行な2本の格子線上に挿入された補強材の頭部となる。このため、複数のワイヤの各々により、格子線を1本ずつ同方向にずらしながら連結することが望ましい。そして、例えば、複数の補強材が、水平方向と平行及び直交する格子線を有する矩形格子状の交点位置に挿入されている場合には、ワイヤの引き回しが、水平方向と直交する方向に進む矩形波状であってもよく、水平方向と平行な方向に進む矩形波状であってもよい。又、隣り合うワイヤ同士は、矩形波状の位相が同じであってもよく、異なっていてもよい。これら矩形波状の方向や位相等は、ワイヤの連結強度や作業効率等を考慮して決定する。このように、ワイヤの各々を矩形波状に引き回して連結することにより、ワイヤ連結をする範囲の複数の補強材の頭部を効率よく網羅し、強固に連結することとなる。なお、ワイヤ連結をする際に、矩形波状に引き回したワイヤと他の形状に引き回したワイヤとを混在させて、複数の補強材の頭部を連結してもよい。
【0018】
(7)上記(4)から(6)項における、前記連結工程において、前記複数のワイヤの各々を鋸波状に引き回す植生基材吹付工の基礎工法(請求項7)。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤの各々を鋸波状に引き回すものである。すなわち、複数のワイヤの各々の中途部を、補強材の各頭部において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、例えば、右回りに90°の引張方向の変更と、左回りに90°の引張方向の変更とを繰り返して、鋸波状に引き回すものである。
【0019】
上述の如き連結順序により、1本のワイヤで連結する補強材の頭部は、格子状の交点位置に挿入されている複数の補強材の頭部のうち、ジグザグな方向に隣り合う補強材の頭部となる。このため、複数のワイヤでは、補強材の頭部が、隣り合う2本のワイヤにより反対方向に引張されるように、隣り合うワイヤ同士の鋸波状の位相を反転させて連結することが望ましい。そして、例えば、複数の補強材が、千鳥格子状の交点位置に挿入されている場合には、ワイヤの引き回しが、水平方向と直交する方向に進む鋸波状であってもよく、水平方向と平行な方向に進む鋸波状であってもよい。この鋸波状の方向等は、ワイヤの連結強度や作業効率等を考慮して決定する。このように、ワイヤの各々を鋸波状に引き回して連結することにより、ワイヤ連結をする範囲の複数の補強材の頭部を効率よく網羅し、強固に連結することとなる。なお、ワイヤ連結をする際に、鋸波状に引き回したワイヤと他の形状に引き回したワイヤとを混在させて、複数の補強材の頭部を連結してもよい。
【0020】
(8)法面への植生基材吹付工の基礎工法に用いる基盤支持枠であって、生分解性の材料で構成された、平行な2つの凹条部とその間の突条部とを有し、前記2つの凹条部を構成する底面が平坦であり、前記2つの凹条部の前記突条部と反対側に、植生基材の吹き付け高さ
と等しい高さの壁部が形成されている基盤支持枠(請求項8)。
本項に記載の基盤支持枠は、生分解性の材料で構成されるものであり、平行な2つの凹条部と、その間に形成された突条部とを有している。そして、2つの凹条部を構成している底面の各々は平坦であり、2つの凹条部の各々には、突条部とは反対側の位置に、植生基材の吹き付け高さ
と等しい高さの壁部が形成されている。これら2つの壁部は、例えば、凹条部の底面に対して直角に設けられている。すなわち、本基盤支持枠は、凹条部や突条部の延在方向での断面形状が山型を成している。
【0021】
上記のような構成の本基盤支持枠は、前記延在方向を枠線の方向に合わせるようにして法面に複数配置されることで、法面に植生基材を支持する法枠を形成する。そして、壁部が植生基材の吹き付け高さ
と等しい高さであることから、本基盤支持枠を用いて形成した法枠に、壁部の高さを目安にして植生基材の吹き付けを行うことで、正確な高さで迅速に植生基盤を吹き付けることとなる。更に、本項に記載の基盤支持枠は、生分解性の材料で構成されているため、植生基材の吹き付けを行った直後の、植物の生育状態が十分でない時期には、基盤支持枠で形成された法枠により植生基材が支持される。そして、十分な植物生育が見込まれる、例えば5〜10年後には、微生物により生分解性の基盤支持枠が分解軟化されるため、基盤支持枠が植物の生育を妨げることなく、法面が全体的に緑化される。従って、法面の全体に連続的に生育した植物の根茎により、法面の表層全体を緊縛支持することとなるため、強固に法面を保護するものとなる。
【0022】
(9)上記(8)項において、前記突条部の底部に、頂部と平行な溝が形成されている基盤支持枠(請求項9)。
本項に記載の基盤支持枠は、突条部の底部に、突条部の頂部と平行な溝が形成されているものである。このため、例えば、補強のために法面に挿入された補強材の頭部をワイヤで連結した場合等に、補強材の各頭部間で引張されているワイヤに、突条部の底部の溝を被せるようにして本基盤支持枠を設置することにより、ワイヤの引張を妨げないように、ワイヤの引張方向に合わせた法枠を形成するものである。
【0023】
(10)上記(8)(9)項において、補強繊維を混入した生分解性プラスチックで形成されている基盤支持枠(請求項10)。
本項に記載の基盤支持枠は、例えば竹繊維等の補強繊維を混入した生分解性プラスチックで形成されていることで、補強繊維により強度が向上されながらも、環境への負荷を少なくするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明はこのように構成したので、法面を全体的に緑化させることができ、より強固に法面を保護することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する法枠2を模式的に示している。図示のように、法枠2は、互いに平行或いは直角となる向きで法面12に配置された、複数の基盤支持枠20により、水平方向と平行及び直交する格子線Lを有する矩形格子状に形成されている。複数の基盤支持枠20の各々は、格子線Lの交点位置や、交点位置間の略中間位置の格子線L上に配置されているが、
図1の例のように、交点位置間の略中間位置の一部に、基盤支持枠20が配置されていなくてもよい。そして、複数の基盤支持枠20の各々は、
図2に示すように、2本のアンカーピン22により法面12に固定されている。なお、
図2は、後述する説明の便宜上、法枠2に植生基材14を吹き付けた状態を示している。
【0027】
図3には、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法で用いる、基盤支持枠20の正面図及び平面図を示している。
図3から確認できるように、基盤支持枠20は、断面形状が山形であり、底面24aが平坦に形成された2つの凹条部24と、底部に溝30が形成された突条部26とを有している。そして、各凹条部24の突条部26とは反対側に、凹条部24の底面24aと直角に壁部28が設けられている。この壁部28は、基盤支持枠20を用いて形成した法枠に、植生基材14を吹き付ける際の目安となる高さを有している(
図2参照)。又、各凹条部24には、基盤支持枠20を法面12へ固定する際に使用するアンカーピン22(
図2参照)を挿通するための、貫通孔32が設けられている。そして、基盤支持枠20は、生分解性の材料で形成されており、
図3の例では、竹繊維混入の生分解性プラスチックで形成されている。なお、
図3に示した基盤支持枠20の形状は一例であり、必要に応じて他の形状の基盤支持枠20を用いてもよい。
【0028】
次に、
図4及び
図5は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する、
図1に示した法枠2とは別の法枠4を模式的に示している。図示のように、法枠4は、複数の受圧板46と複数の基盤支持枠20とが、水平方向と平行及び直交する格子線Lを有する矩形格子状に法面12に配置されて形成されている。複数の受圧板46の各々は、格子線Lの交点位置に配置されており、複数の基盤支持枠20の各々は、複数の受圧板46の間の格子線L上に配置されている。そして、各受圧板46は、格子線Lの交点位置に挿入された補強材40の頭部42に取り付けられている。一例として、補強材40には、長さが1.2mのD19の異形棒鋼(JIS G 3112準拠)を用いている。又、補強材40の頭部42は、複数のワイヤ60により連結されており、各受圧板46は、ワイヤ60の上から設置されている。そして、複数の基盤支持枠20の各々は、
図5及び
図6に示すように、2本のアンカーピン22により法面12に固定されており、基盤支持枠20の溝30をワイヤ60に被せるようにして設置されている。なお、説明の便宜上、
図4では、本来は基盤支持枠20や受圧板46の下側を通って図示されないはずのワイヤ60の一部を図示しており、又、
図5及び
図6は、法枠4に植生基材14を吹き付けた状態を示している。
【0029】
図7は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する法枠4における、ワイヤ60による連結方法の一例を示している。
図7には、直交する複数の格子線Lの交点位置に挿入した補強材の頭部42を図示しており、補強材の頭部42は、複数のワイヤ60により連結されている。なお、
図7や、後述する
図9、
図18、
図19には、基盤支持枠20や受圧板46を設置していない状態を示しており、又、太線で示したワイヤ60と細線で示したワイヤ60とを図示しているが、これは実際に使用するワイヤ60の太さの違いを示しているものではない。
図7に示す例において、ワイヤ60による連結順序や引き回しについて、符号60Aで示すワイヤを用いて具体的に説明すると、まず、ワイヤ60Aの一端を、ワイヤ連結の始点となる補強材の頭部42Aに固定する。この際、ワイヤ60Aの補強材の頭部42Aへの固定は、例えば、
図8に示すように、ワイヤクリップ62等を用いて行う。
【0030】
次に、一端を補強材の頭部42Aに固定したワイヤ60Aを、図中左方向に引張し、補強材の頭部42Aの左側に位置する補強材の頭部42Bに図中上側から掛け、左回りに90°引張方向を変更して図中下方向へ引張する。続いて、図中下方向へ引張したワイヤ60Aを、補強材の頭部42Bの下側に位置する補強材の頭部42Cに図中左側から掛け、左回りに90°引張方向を変更して図中右方向へ引張する。更に、図中右方向へ引張したワイヤ60Aを、補強材の頭部42Dに掛けて右回りに90°引張方向を変更して図中下方向へ引張した後、補強材の頭部42Eに掛けて右回りに90°引張方向を変更して図中左方向へ引張する。以降、上述した補強材の頭部42B、42Cで行ったような、左回りに90°の引張方向の変更2回と、補強材の頭部42D、42Eで行ったような、右回りに90°の引張方向の変更2回とを繰り返して、ワイヤ60Aを引き回していく。
【0031】
そして、図中の下端に位置する補強材の頭部42Yを介して、図中左方向に引張したワイヤ60Aの他端を、ワイヤ連結の終点となる補強材の頭部42Zに固定する。補強材の頭部42Zへの固定は、補強材の頭部42Aへの固定と同様に、
図8に示すようなワイヤクリップ62等を用いて行う。このように引き回したワイヤ60Aは、図から確認できるように、図中下方向へ進む矩形波状を成すこととなる。
図7の例では、複数のワイヤ60の各々を、始点とする補強材の頭部42を図中左右方向にずらしながら、同じ位相の矩形波状に引き回している。なお、
図7に示している符号Aの領域及び黒矢印については後述する。
【0032】
又、
図9には、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する法枠4における、ワイヤ60による連結方法の別の例を示している。
図9の例におけるワイヤ60の引き回しについて、符号60Aで示すワイヤを用いて説明すると、ワイヤ60Aの一端を、ワイヤ連結の始点となる補強材の頭部42Aに、ワイヤクリップ62(
図8参照)等を用いて固定した後、図中下方向へ引張する。そして、補強材の頭部42B及び42Cの夫々において、左回りに90°引張方向を変更し、補強材の頭部42D及び42Eの夫々において、右回りに90°引張方向を変更する。以降、左回りに90°の引張方向の変更2回と、右回りに90°の引張方向の変更2回とを繰り返して、ワイヤ60Aを引き回していき、ワイヤ60Aの他端を、ワイヤ連結の終点となる補強材の頭部42Zに、ワイヤクリップ62等を用いて固定する。このように引き回したワイヤ60Aは、図から確認できるように、図中右方向へ進む矩形波状を成すこととなる。
図9の例では、複数のワイヤ60の各々を、始点とする補強材の頭部42を図中上下方向にずらしながら、同じ位相の矩形波状に引き回している。
【0033】
次に、
図10及び
図11は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する、
図1及び
図4に示した法枠2及び4とは別の法枠6を模式的に示している。図示のように、法枠6は、複数の受圧板56と複数の基盤支持枠20とが、水平方向と平行及び直交する格子線Lを有する矩形格子状に配置され、法面12に形成されている。複数の受圧板56の各々は、格子線Lの交点位置に配置されており、複数の基盤支持枠20の各々は、複数の受圧板56の間の格子線L上に配置されている。そして、各受圧板56は、格子線Lの交点位置に挿入されている補強材50の頭部52に取り付けられている。更に、補強材50は、
図5に示した法枠4の補強材40とは異なり、法面12に直接挿入されておらず、格子線Lの交点位置を削孔してグラウト材72を充填した充填孔74に挿入され、グラウト定着されているものである。一例として、補強材50には、長さが5m以上のD19〜25の異形棒鋼(JIS G 3112準拠)を用い、受圧板56には、受圧板46(
図4参照)よりも厚いものを用いる。又、複数の基盤支持枠20の各々は、
図2に示した例と同様に、2本のアンカーピン22により法面12に固定されている。なお、説明の便宜上、
図11は、法枠6に植生基材14を吹き付けた状態を示している。
【0034】
続いて、
図12及び
図13は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する、更に別の法枠8を模式的に示している。法枠8は、
図10及び
図11に示した法枠6との比較において、補強材50の頭部52が、複数のワイヤ60により連結されている点が異なっているものである。すなわち、格子線Lの交点位置に形成されたグラウト材72の充填孔74に挿入されている、補強材50の頭部52が、複数のワイヤ60により連結されており、各受圧板56は、ワイヤ60の上から設置されている。そして、複数の基盤支持枠20の各々は、
図6に示した例と同様に、溝30をワイヤ60に被せるようにして設置されている。なお、説明の便宜上、
図12では、本来は基盤支持枠20や受圧板56の下側を通って図示されないはずのワイヤ60の一部を図示しており、又、
図13は、法枠8に植生基材14を吹き付けた状態を示している。
【0035】
又、法枠8における、ワイヤ60による連結方法は、
図7や
図9で示した法枠4における連結方法と同様となる。すなわち、
図7に示すように、ワイヤ60Aの一端を、始点となる補強材の頭部52Aに、ワイヤクリップ62(
図8参照)等を用いて固定した後、ワイヤ60Aを図中左方向へ引張する。以降は、左回りに90°の引張方向の変更2回と、右回りに90°の引張方向の変更2回とを繰り返して、ワイヤ60Aを引き回していき、ワイヤ60Aの他端を、ワイヤ連結の終点となる補強材の頭部52Zに、ワイヤクリップ62等を用いて固定する。そして、複数のワイヤ60の各々を、始点とする補強材の頭部42を図中左右方向にずらしながら、図中下方向に進む同じ位相の矩形波状に引き回し、複数の補強材の頭部52を連結している。又、
図9の例では、ワイヤ60の各々を、図中右方向に進む矩形波状に引き回し、複数の補強材の頭部52を連結している。
【0036】
次に、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法の施工手順について、
図14のフロー図に沿って、
図15〜
図17を参照しながら説明する。なお、
図15〜
図17に示す破線Fは、想定したすべり面の位置を示している。
S10(準備工):本工事を実施する前の準備として準備工を行う。具体的には、例えば、施工対象の法面の調査、必要となる図面や計画書等の作成、施工時に使用する各種材料や機材の準備等を行う。
S20(法面清掃):後に吹き付ける植生基材と法面地山との密着を図るため、法面清掃を行う。具体的には、浮石、浮土砂、ゴミ等を法面から除去する。この際、法面に植物が残存している場合は、後の施工や植生基材による植物生育の妨げにならない限り、刈り払い程度で済ませてもよい。
【0037】
S30(ラス張工):
図15(a)に示すように、法面12の施工範囲にラス(金網)80を設置し、アンカーピン等を用いて法面12に固定する。ラス80には、法面12の広さや形状等を考慮して、必要な強度や網目の大きさ等を有するワイヤラス等を選定して使用する。なお、ラス80は、
図15及び後述する
図16(a)にのみ図示しており、他の各図面では、法面12にラス80が設置されている状態であっても、説明の便宜上、ラス80の図示を省略している。
S40(芯出し):仕様書等に基づいて、法面12に対し施工の際の基準となる基準位置の位置出しを行う。格子状の法枠を形成する場合には、例えば、
図1等に示す複数の格子線Lの位置にロープを張る等をすればよい。
図15(a)の例では、芯出しの結果から得たグラウト材の充填孔の形成位置を、白矢印で示している。
【0038】
S50(補強材使用の判別):法枠を形成する際に補強材を使用する工法であるか否かを判別する。この結果、法枠の形成に補強材を使用しない工法であると判別した場合(NO)は、S60へ移行し、補強材を使用する工法であると判別した場合(YES)は、S70へ移行する。具体的には、
図1に示したような法枠2を形成する場合は、法枠2の形成に補強材を使用しないため、S60へ移行する。一方、
図4及び
図5に示した法枠4、
図10及び
図11に示した法枠6、
図12及び
図13に示した法枠8を形成する場合は、法枠4の形成に補強材40、法枠6及び8の形成に補強材50を使用するため、S70へ移行する。
S60(フレーム設置工):上記S50において、法枠の形成に補強材を使用しない工法であると判別した場合(NO)は、フレーム設置工を実施する。すなわち、
図1及び
図2に示したように、法面12に複数の基盤支持枠20を配置し、各々をアンカーピン22により固定して、法面12に格子状の法枠2を形成する。
【0039】
S70(グラウト定着の判別):上記S50において、法枠の形成に補強材を使用する工法であると判別した場合(YES)は、更に、補強材をグラウト定着させる工法であるか否かを判別する。この結果、グラウト定着させない工法であると判別した場合(NO)は、S80へ移行し、グラウト定着させる工法であると判別した場合(YES)は、S90へ移行する。具体的には、
図4及び
図5に示したような法枠4を形成する場合は、法枠4を形成する際にグラウト材の充填孔を形成せず、補強材40をグラウト定着させないため、S80へ移行する。一方、
図10及び
図11に示した法枠6、
図12及び
図13に示した法枠8を形成する場合は、各々グラウト材72の充填孔74を形成して、補強材50をグラウト定着させるため、S90へ移行する。
S80(補強材打ち込み):上記S70において、補強材をグラウト定着させない工法であると判別した場合(NO)は、補強材を打ち込む。すなわち、
図4及び
図5に示したように、法面12の格子線Lの交点位置に、補強材40を打ち込む。
【0040】
S90(削孔):上記S70において、グラウト定着させる工法であると判別した場合(YES)は、
図15(b)の法面12の下方に図示しているように、法面12に削孔機84等により孔70を削孔する。孔70は、すべり面Fよりも深く削孔する。
図15の例では、
図15(a)の白矢印で示す3箇所を削孔している。
S100(注入工):
図15(b)の法面12の中ほどに図示しているように、削孔した孔70にグラウト材72を注入する注入工を行う。グラウト材72の注入は、注入ホース82等を孔70の内部に挿入して行う。グラウト材72には、例えば、セメントミルクを用いる。
S110(補強材挿入):
図15(b)の法面12の上方に図示しているように、孔70にグラウト材72を充填した充填孔74に、補強材50を挿入する。この際、補強材50の頭部52は、少なくとも後述するワイヤによる連結や受圧板の取り付けに必要な長さ分が、法面12から突出した状態にする。このようにして、法面12に、すべり面Fよりも深い深度に達する、補強材50を挿入した充填孔74を形成する。なお、
図15(b)の例では、上記S90〜S110までの工程を、法面12の上方の施工位置から順次行っている。
【0041】
S120(補強材頭部連結の判別):上記S80において打ち込んだ補強材40の頭部42、或いは、上記S110において充填孔74に挿入した補強材50の頭部52を、ワイヤにより連結する工法であるか否かを判別する。この結果、ワイヤにより連結しない工法であると判別した場合(NO)は、S140へ移行し、ワイヤにより連結する工法であると判別した場合(YES)は、S130へ移行する。具体的には、
図10及び
図11に示したような法枠6を形成する場合は、補強材50の頭部52をワイヤにより連結しないため、S140へ移行する。一方、
図4及び
図5に示した法枠4を形成する場合は、複数の補強材の頭部42をワイヤ60により連結し、
図12及び
図13に示した法枠8を形成する場合は、複数の補強材の頭部52をワイヤ60により連結するため、S130へ移行する。
【0042】
S130(頭部連結):ここまでの工程において、法面12にグラウト材72の充填孔74を形成した場合には、
図16(a)に示すように、充填孔74から突出している補強材の頭部52を、ワイヤ60により連結する。又、グラウト材の充填孔を形成していない場合には、
図4や
図5に示すように、補強材の頭部42をワイヤ60により連結する。いずれの場合においても、例えば、
図7や
図9に示した方法等で連結する。
S140(受圧板設置工):
図5に示すように、補強材の頭部42を挿通するように受圧板46を設置する。或いは、
図16(b)や
図11に示すように、補強材の頭部52を挿通するように受圧板56を設置する。
S150(頭部定着工):ナットによる締め付け等を行うことで、補強材の頭部42又は52を、受圧板46又は56に定着させる。
【0043】
S160(頭部処理工):補強材の頭部42又は52を、受圧板46又は56から突出している余分な長さ分だけ切断し、切断後の補強材の頭部42又は52にキャップを取り付ける。又、キャップ内に防錆用のグリースを充填することとしてもよい。
S170(フレーム設置工):
図17に示すように、受圧板56の間に基盤支持枠20を配置し、アンカーピン22により法面12に固定する。ここまでの工程により、
図4及び
図5に示した法枠4、
図10及び
図11に示した法枠6、
図12及び
図13に示した法枠8等の、いずれかの法枠が法面12に形成される。
S200(植生基材吹付):本工程は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法の後に実施する、植生基材吹付工であるため、参考として記述する。上記S60までの工程で形成した法枠2や、上記S170までの工程で形成した法枠4、6、8の各々に、
図2、
図5、
図6、
図11、
図13に示すように、基盤支持枠20の壁部28の高さを目安にして植生基材14を吹き付ける。
【0044】
すなわち、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、法面12に、
図1及び
図2に示すような法枠2を形成する場合には、上記S10〜S60の工程を実施し、
図4及び
図5に示すような法枠4を形成する場合には、上記S10〜S50、S70、S80、S120〜S170の工程を実施する。又、
図10及び
図11に示すような法枠6を形成する場合には、上記S10〜S50、S70、S90〜S120、S140〜S170の工程を実施し、
図12及び
図13示すような法枠8を形成する場合には、上記S10〜S50、S70、S90〜S170の工程を実施する。なお、具体的な説明は省略するが、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、上記S10〜S50、S70、S80、S120、S140〜S170の工程を実施し、法面12に打ち込んだ補強材40の頭部42を、ワイヤ60で連結しない法枠を形成することとしてもよい。
【0045】
次に、
図18及び
図19には、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により、法面12に千鳥格子状の法枠を形成する場合の、ワイヤ連結方法の例を示している。
図18及び
図19では、千鳥格子状の格子線Lの交点位置に、補強材の頭部42(或いは52)が図示されている。そして、
図18の例では、複数のワイヤ60の各々が、例えば、図中左側端の補強材の頭部42を始点とすると、この始点よりも図中右側にある複数の補強材の頭部42において、右上方向と右下方向との交互に引張方向を変更しながら、図中右側端の終点となる補強材の頭部42まで引張されている。すなわち、複数のワイヤ60の各々は、図中右方向へ進む鋸波状に引き回されている。又、図中上下方向に隣り合うワイヤ60同士は、鋸波状の位相が反転して引き回されているものである。
【0046】
一方、
図19の例では、複数のワイヤ60の各々が、図中上側端の補強材の頭部42を始点として、この始点よりも図中下側にある複数の補強材の頭部42において、右下方向と左下方向との交互に引張方向を変更しながら、図中下側端の終点となる補強材の頭部42まで引張されている。すなわち、複数のワイヤ60の各々は、図中下方向へ進む鋸波状に引き回されている。又、図中左右方向に隣り合うワイヤ60同士は、鋸波状の位相が反転して引き回されているものである。
なお、
図18及び
図19のように、千鳥格子状の法枠を形成する場合において、受圧板46又は56は、補強材の頭部42又は52の各々から引張されているワイヤ60の引張方向に合わせて、補強材の頭部42又は52を中心とする回転方向に適切な角度だけ回転させて設置する。又、複数の基盤支持枠20は、複数の受圧板46又は56の間で引張されているワイヤ60に被せるようにして、格子線Lの方向に合わせて設置する。
【0047】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、
図1に示すような、法面12に植生基材14(
図2参照)を支持する法枠2を形成する法枠形成工程(
図14のS60、S170)を含むものである。法枠形成工程では、複数の基盤支持枠20を互いに平行或いは直角となる向きで法面12に配置し、
図2に示すように、各基盤支持枠20をアンカーピン22により固定することで、基盤支持枠20により構成される格子状の法枠2を法面12に形成する。この際、複数の基盤支持枠20の格子状の配置は、法枠2を形成する法面12の広さや形状に合わせて、格子の間隔や角度を決定する。例えば、複数の基盤支持枠20の格子状の配置としては、
図1の例のような、水平方向と平行及び直交する格子線Lを有する矩形格子状や、千鳥格子状等が挙げられる。又、
図1に示すように、格子線Lの一部に基盤支持枠20が配置されていなくてもよく、1つの法面12に複数の異なる格子状を組み合わせて配置してもよい。このように配置することで、法面12の広さや形状に合わせて、適切に植生基材14を支持する法枠2を形成することができる。
【0048】
更に、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、法枠2を形成する複数の基盤支持枠20が、生分解性の材料で形成されているものである。生分解性の材料としては、例えば、生分解性プラスチックが挙げられる。そして、このような基盤支持枠20により法枠2が形成された法面12に対し、植生基材14を吹き付けることにより、施工直後の植物の生育状態が十分でない時期には、基盤支持枠20で形成した法枠2により植生基材14を支持する。そして、十分な植物生育が見込まれる、例えば5〜10年後には、微生物により基盤支持枠20が分解軟化されるため、基盤支持枠20が植物の生育を妨げることなく、法面12を全体的に緑化することができる。従って、法面12の全体に連続的に生育した植物の根茎により、法面12の表層全体を緊縛支持することとなるため、より強固に法面12を保護することが可能となる。更に、植生基材14を支持する法枠2の形成に、養生待ちの時間が必要となるモルタル等を使用しないため、施工期間を短縮することができる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る基盤支持枠20は、
図3に示すように、平行な2つの凹条部24と、その間に形成された突条部26とを有している。そして、2つの凹条部24を構成している底面24aの各々は平坦であり、2つの凹条部24の各々には、突条部26とは反対側の位置に、植生基材14の吹き付け高さ
と等しい高さの壁部28が形成されている。これら2つの壁部28は、
図3の例では、凹条部24の底面24aに対して直角に設けられている。すなわち、基盤支持枠20は、
図3(a)で確認できるように、凹条部24や突条部26の延在方向での断面形状が山型を成している。このような構成の本基盤支持枠20は、
図1に示すように、前記延在方向を格子線Lの方向に合わせるようにして法面12に複数配置されることで、法面12に植生基材14を支持する法枠2を形成する。そして、壁部28が植生基材14の吹き付け高さ
と等しい高さであることから、本基盤支持枠20を用いて形成した法枠2に、
図2に示すように、壁部28の高さを目安にして植生基材14の吹き付けを行うことで、正確な高さで迅速に植生基盤14を吹き付けることが可能となる。更に、本発明の実施の形態に係る基盤支持枠20を、竹繊維等の補強繊維を混入した生分解性プラスチックで形成することとすれば、補強繊維により強度が向上されながらも、環境への負荷を少なくすることができる。
【0050】
又、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、
図4及び
図5に示すように、法面12に直接補強材40を挿入し、挿入した補強材40の頭部42に受圧板46を取り付ける受圧板設置工程(
図14のS80、S140)を含むものである。補強材40を挿入する位置は、
図4における複数の格子線Lの交点位置である。補強材40には、目的とする法面12の補強強度等に応じた、適切な径や長さを有する異形棒鋼等を使用する。この補強材40の挿入により、法面12の変形を抑制することができる。
そして、上述したような補強材40の頭部42に取り付ける受圧板46は、格子線Lの交点位置において、法枠4の一部を構成するものとなる。受圧板46には、補強材40の引き抜き方向の荷重を法面12から十分に受ける形状や大きさであると共に、例えば多孔構造等のような、植物の生育を妨げないような構造であるものを使用する。この受圧板46の設置により、補強材40の緊張力が周辺地盤に伝達されるため、法面12の変形を効果的に抑制できる。従って、本植生基材吹付工の基礎工法は、植物の根茎による緊縛支持に加えて、補強材40と受圧板46とにより法面12の変形を抑制するため、より強固に法面12を保護することが可能となる。
【0051】
更に、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、
図10及び
図11に示すように、複数の格子線Lの交点位置に、グラウト材72の充填孔74を形成し、この充填孔74に補強材50を挿入してもよいものである。すなわち、
図15(b)に示すように、法面12の格子線Lの交点位置を削孔した後(
図14のS90)、削孔した孔70内にグラウト材72を注入し(
図14のS100)、法面12にグラウト材72の充填孔74を形成する。そして、形成した充填孔74に補強材50を挿入(
図14のS110)し、補強材50をグラウト定着させるものである。この際、グラウト材72にはセメントミルク等を用い、補強材50には、グラウト定着させずに直接法面12に挿入する場合の補強材40(
図5参照)と同等、或いは、それ以上の径や長さを有する異形棒鋼等を用いる。そして、補強材50を挿入した後、補強材50の頭部52に受圧板56を取り付ける。これにより、グラウト定着させずに直接法面12に補強材40を挿入する場合と比較して、法面12に対する引き抜き抵抗力が増加し、法面12の変形を更に抑制することができるため、より強固に法面12を保護することが可能となる。
【0052】
又、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、複数のワイヤ60の各々により、法面12に挿入した複数の補強材の頭部を連結する連結工程(
図14のS130)を含むものである。ワイヤ60により連結する補強材は、
図4及び
図5に示すように、直接法面12に挿入した補強材40であってもよく、又、
図12及び
図13に示すように、グラウト材72の充填孔74に挿入されている補強材50であってもよい。ワイヤ60で連結することによって、各補強材40又は50にかかる引き抜き方向の荷重を、複数の補強材40又は50に分散して負担させることができる。このため、部分的な抜け出しや小崩落等の法面12の変形を、複数の補強材40又は50を挿入した範囲全体にわたって抑止することができ、更に強固に法面12を保護することができる。
【0053】
ここで、本発明の実施の形態に係る基盤支持枠20は、
図3に示すように、突条部26の底部に、突条部26の頂部と平行な溝30が形成されているものである。このため、上述した連結工程において、複数の補強材40又は50をワイヤ60により連結した場合に、
図6に示すように、補強材の各頭部42又は52間で引張されているワイヤ60に、突条部26の底部の溝30を被せるようにして本基盤支持枠20を設置することにより、ワイヤ60の引張を妨げることなく、ワイヤ60の引張方向に合わせた法枠を形成することができる。
【0054】
又、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤ60の各々を複数の補強材の頭部42又は52に下記のように連結する。すなわち、
図7に示した連結方法を例に説明すると、ワイヤ60Aの一端を始点となる補強材の頭部42A(52A)に固定した後、ワイヤ60Aの中途部を複数の補強材の頭部42(52)に掛けながら引張する。この際、ワイヤ60Aの中途部は、複数の補強材の各頭部42において、補強材の頭部42に巻き付けや固定をせずに、補強材の頭部42に引掛けるようにして引張方向を変更する。そして、複数の補強材の頭部42を介して引張した状態のワイヤ60の他端を、終点となる補強材の頭部42Z(52Z)に固定する。
【0055】
ワイヤ連結の始点及び終点の補強材の頭部42A及び42Zへは、
図8に示すように、ワイヤクリップ62等を用いてワイヤ60を固定する。又、複数のワイヤ60の各々は、連結する複数の補強材42の頭部の数や、ワイヤ60の引き回し経路等を考慮して、補強材の各頭部42を適切な力で引張するような長さや強度を有するものを使用する。そして、各ワイヤ60を固定する始点や終点となる補強材の頭部(
図7では上端と下端に位置する補強材の頭部42)、及び、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する一部の補強材の頭部(
図7では左端と右端に位置する補強材の頭部42)を除き、複数の補強材の各頭部42には、2本のワイヤ60の中途部が互いに異なる方向から掛かるように、複数のワイヤ60を連結している。上述のようにワイヤ連結をすることで、始点及び終点以外の複数の補強材の頭部42へは、ワイヤ60の固定をせずに、引張方向を変更するようにワイヤ60を掛けるため、施工時間を短縮することができる。しかも、2本のワイヤ60の中途部が掛けられて引張されている補強材の各頭部42には、異なる2方向に引張力が働くため、ワイヤ60を固定していないにも関わらず締め付けるような力が加わり、強固に補強材の頭部42を連結することが可能となる。
【0056】
更に、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、
図7及び
図9に示すように、複数のワイヤ60の各々を矩形波状に引き回すものである。すなわち、
図7を例に説明すると、一端を始点となる補強材の頭部42A(52A)に固定したワイヤ60Aの中途部を、補強材の頭部42(52)において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、左回りに90°の引張方向の変更と、右回りに90°の引張方向の変更とを、補強材の頭部42B及び42Cと、補強材の頭部42D及び42Eとで行ったように、2回ずつ交互に繰り返して、矩形波状に引き回すものである。
【0057】
上述の如き連結順序により、1本のワイヤ60で連結する補強材の頭部42は、格子線Lの交点位置に挿入されている複数の補強材の頭部42のうち、左右方向に隣り合う平行な2本の格子線L上に挿入された補強材の頭部42となる。このため、
図7の例では、複数のワイヤ60の各々により、格子線Lを1本ずつ左右方向にずらした、左右方向に隣り合う平行な2本の格子線Lの交点位置に挿入されている、複数の補強材の頭部42を連結している。そして、ワイヤ60の引き回しは、
図7に示すような、水平方向と直交する方向に進む矩形波状であってもよく、
図9に示すような、水平方向と平行な方向に進む矩形波状であってもよい。又、隣り合うワイヤ60同士は、
図7及び
図9のように、矩形波状の位相が同じであってもよく、異なっていてもよい。これら矩形波状の方向や位相等は、ワイヤ60の連結強度や作業効率等を考慮して決定する。このように、ワイヤ60の各々を矩形波状に引き回して連結することにより、ワイヤ連結をする範囲の複数の補強材の頭部42を効率よく網羅し、強固に連結することができる。
【0058】
又、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、
図18及び
図19に示すように、複数のワイヤ60の各々を鋸波状に引き回してもよい。すなわち、
図19を例に説明すると、一端を図中上端に位置する補強材の頭部42(52)に固定したワイヤ60の中途部を、補強材の各頭部42において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、右回りに90°の引張方向の変更と、左回りに90°の引張方向の変更とを繰り返して、図中左下方向と右下方向とに交互に引張する鋸波状に引き回すものである。
【0059】
上述の如き連結順序により、1本のワイヤ60で連結する補強材の頭部42は、格子線Lの交点位置に挿入されている複数の補強材の頭部42のうち、ジグザグな方向に隣り合う補強材の頭部42となる。このため、
図19の例では、複数のワイヤ60により、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置している補強材の頭部42を除外した、複数の補強材の頭部42が、左右方向に隣り合う2本のワイヤ60により反対方向に引張されるように、隣り合うワイヤ60同士の鋸波状の位相を反転させて連結している。そして、ワイヤ60の引き回しは、
図19に示すような、水平方向と直交する方向に進む鋸波状であってもよく、
図18に示すような、水平方向と平行な方向に進む鋸波状であってもよい。この鋸波状の方向等は、ワイヤ60の連結強度や作業効率等を考慮して決定する。このように、ワイヤ60の各々を鋸波状に引き回して連結することにより、ワイヤ連結をする範囲の複数の補強材の頭部42を効率よく網羅し、強固に連結することが可能となる。
【0060】
又、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、
図7や
図19に示すように、法面12の上側から下側へ向かってワイヤ60により連結することとすれば、連結工程の作業者は、横方向よりも容易な縦方向の移動を行い作業することとなるため、効率よく施工することができる。更に、
図7に示すように、図中上側から下側に進む矩形波状に連結することにより、例えば、
図7に符号Aで示す領域の崩壊を想定すると、領域Aの左右及び上側に位置する複数の補強材の頭部42に、図中黒矢印で示すような力がかかることにより、領域Aやその周辺が支持される。このように、領域A周辺の補強材の頭部42により効率よく分散して支持するため、周辺を支持する際に2本のワイヤ60が交差している補強材の頭部40、50を基点とした変形が大きくなると予想される、
図9に示した横方向に進む矩形波状に連結した場合よりも、より確実に領域Aの崩落を抑制することができる。
【0061】
そして、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法は、例えば、
図1、
図4、
図10、
図12に示したように、様々な形態の法枠(法枠2、4、6、8)を形成するものである。このため、上述した様々な形態の法枠から、施工対象の法面12の形状や状態、目的とする補強強度、すべり面Fの深度(
図15〜
図17参照)等に応じた、適切な法枠を選定して形成することができる。又、法面12に対し、本基礎工法の後に実施する植生基材吹付工と、他の法面保護工法とを組み合わせて施工することとしてもよい。このようにすることで、より確実に法面12を保護することが可能となる。
ここで、本願発明において、基盤支持枠20の壁部28の高さが、植生基材14の吹き付け高さと等しいということは、壁部28の上端位置を、吹き付けるべき植生基材14の高さの目安として利用することができる範囲で、壁部28の高さと植生基材14の吹き付け高さとが等しいことを示しており、このような機能が担保できる範囲において、両者間に実質的な差がある場合も含まれることは、理解されるであろう。