特許第5878893号(P5878893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エクセディの特許一覧

<>
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000002
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000003
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000004
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000005
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000006
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000007
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000008
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000009
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000010
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000011
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000012
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000013
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000014
  • 特許5878893-トルクコンバータのロックアップ装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878893
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】トルクコンバータのロックアップ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/02 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
   F16H45/02 Y
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-145452(P2013-145452)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17671(P2015-17671A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506006(JP,A)
【文献】 特開2005−106112(JP,A)
【文献】 特開2002−213567(JP,A)
【文献】 特開2012−087856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 39/00− 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータ本体との間に配置され、前記フロントカバーからのトルクを前記トルクコンバータ本体のタービンに直接伝達するためのロックアップ装置であって、
前記フロントカバーからのトルクを出力側に伝達するクラッチ部と、
前記クラッチ部と相対回転自在であり、前記タービンに連結された出力回転部材と、
前記クラッチ部と前記出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結するための複数の第1弾性部材と、
前記クラッチ部から前記出力回転部材に至る動力伝達経路を構成する部材のいずれかに連結され、回転変動を減衰するダイナミックダンパ装置と、
を備え、
前記ダイナミックダンパ装置は、
円周方向に延びる複数の第1開口を有し、前記クラッチ部から前記出力回転部材に至る動力伝達経路を構成する前記ダイナミックダンパ装置が連結される部材とともに回転するダンパプレートと、
それぞれが、前記ダンパプレートの軸方向両側に前記ダンパプレートと相対回転自在に配置され、前記第1開口と対向する位置に円周方向に延びる第2開口を有する1対のイナーシャ部材と、
前記第1開口及び前記第2開口に収容され、前記ダンパプレートと前記1対のイナーシャ部材とを弾性的に連結する複数の第2弾性部材と、
を有する、
トルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項2】
それぞれ、前記1対のイナーシャ部材の軸方向外側において前記第2開口を塞ぐように配置された1対の蓋部材をさらに備えた、請求項1に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項3】
前記ダンパプレートは、前記複数の第1開口の円周方向間において円周方向に延びる複数の長孔を有し、
前記長孔を軸方向に通過し、前記1対のイナーシャ部材及び前記1対の蓋部材を連結する連結部材をさらに備えた、
請求項2に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項4】
前記ダンパプレートの前記第1開口と前記長孔とは同一円周上に配置されている、請求項3に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項5】
前記イナーシャ部材は環状に形成されており、
前記ダンパプレートは、前記イナーシャ部材の内周面に当接して前記イナーシャ部材の径方向の位置決めを行うインロー部を有している、
請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項6】
前記ダイナミックダンパ装置は、低回転数域では第1ヒステリシストルクを発生し、中回転数域から高回転数域では前記第1ヒステリシストルクよりも大きな第2ヒステリシストルクを発生するヒステリシストルク発生機構を有する、請求項1から5のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項7】
前記ヒステリシストルク発生機構は、
前記イナーシャ部材とともに回転し、前記イナーシャ部材に対して径方向に移動自在であり、回転方向に延びる摺動面を有するスライダと、
前記ダンパプレートとともに回転し、低回転数域では前記スライダの摺動面に当接することによって前記イナーシャ部材との相対捩じり角度範囲が第1角度範囲に規制され、前記低回転数域より回転数が高い中回転数域では前記スライダの摺動面に当接することによって前記イナーシャ部材との相対捩じり角度範囲が前記第1の角度範囲より狭い第2角度範囲に規制され、前記中回転数域より回転数が高い高回転数域では前記スライダの摺動面に当接することによって前記イナーシャ部材との相対捩じりが禁止される、当接部材と、
を有する請求項6に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項8】
前記スライダの摺動面の回転方向の中央部には、前記当接部材が嵌り込むロック部が形成されている、請求項7に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項9】
前記クラッチ部及び前記出力回転部材と相対回転自在であり、前記複数の第1弾性部材のうちの少なくとも2つを直列的に作用させるための中間部材をさらに備え、
前記ダンパプレートは前記中間部材に連結されている、
請求項1から8のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックアップ装置、特に、エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータ本体との間に配置され、フロントカバーからのトルクをトルクコンバータ本体のタービンに直接伝達するためのトルクコンバータのロックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータにおいては、燃費低減のためにロックアップ装置が設けられている。ロックアップ装置は、タービンとフロントカバーとの間に配置されており、フロントカバーとタービンとを機械的に連結して両者の間でトルクを直接伝達するものである。
【0003】
ロックアップ装置は、一般に、ピストンとダンパ機構とを有している。ピストンは、油圧の作用によってフロントカバーに押し付けられ、フロントカバーからトルクが伝達される。また、ダンパ機構は複数のトーションスプリングを有しており、この複数のトーションスプリングによって、ピストンとタービンに連結された出力側の部材とが弾性的に連結されている。このようなロックアップ装置では、ピストンに伝達されたトルクは、複数のトーションスプリングを介して出力側の部材に伝達され、さらにタービンに伝達される。
【0004】
また、特許文献1には、出力側の部材にイナーシャ部材を装着することにより、エンジンの回転速度変動を抑えるようにしたロックアップ装置が示されている。この特許文献1に示されたロックアップ装置は、タービンに固定された出力部材に相対回転可能にイナーシャ部材が装着されている。また、出力部材とイナーシャ部材との間には弾性部材としてのトーションスプリングが設けられている。
【0005】
この特許文献1のロックアップ装置では、出力部材にトーションスプリングを介してイナーシャ部材が連結されているため、イナーシャ部材及びトーションスプリングがダイナミックダンパとして機能し、これらによって出力側の部材(タービン)の回転速度変動が減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−293671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のロックアップ装置では、ピストンとタービンとの間にダイナミックダンパ装置を構成するトーションスプリングが配置されるとともに、前述のように、このトーションスプリングを介して出力部材に環状のプレート部材が弾性的に連結されている。そして、環状のプレートの外周部にイナーシャリングが固定されている。
【0008】
このような特許文献1の構成では、ダイナミックダンパ装置の軸方向における占有スペースが大きくなり、またイナーシャ部材の形状が複雑となる。
【0009】
本発明の課題は、特に軸方向における占有スペースが小さく、かつ低コスト化を実現できるダイナミックダンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、エンジン側の部材に連結されるフロントカバーとトルクコンバータ本体との間に配置され、フロントカバーからのトルクをトルクコンバータ本体のタービンに直接伝達するための装置である。このロックアップ装置は、クラッチ部と、出力回転部材と、複数の第1弾性部材と、ダイナミックダンパ装置と、を備えている。クラッチ部はフロントカバーからのトルクを出力側に伝達する。出力回転部材は、クラッチ部と相対回転自在であり、タービンに連結されている。複数の第1弾性部材はクラッチ部と出力回転部材とを回転方向に弾性的に連結する。ダイナミックダンパ装置は、クラッチ部から出力回転部材に至る動力伝達経路を構成する部材のいずれかに連結され、回転速度変動を減衰する。また、ダイナミックダンパ装置は、ダンパプレートと、1対のイナーシャ部材と、複数の第2弾性部材と、を有している。ダンパプレートは、円周方向に延びる複数の第1開口を有し、出力回転部材とともに回転する。1対のイナーシャ部材は、それぞれが、ダンパプレートの軸方向両側にダンパプレートと相対回転自在に配置され、第1開口と対向する位置に円周方向に延びる第2開口を有する。複数の第2弾性部材は、第1開口及び第2開口に収容され、ダンパプレートと1対のイナーシャ部材とを弾性的に連結する。
【0011】
この装置では、クラッチ部がオン(動力伝達状態)の場合は、フロントカバーからの動力はクラッチ部を介して複数の第1弾性部材に入力され、この複数の第1弾性部材から出力回転部材を介してタービンに伝達される。このとき、動力伝達経路を構成する部材のいずれかにはダイナミックダンパ装置が連結されており、このダイナミックダンパ装置によって回転速度変動を抑えることができる。
【0012】
ここでは、ダンパプレートの軸方向両側に1対のイナーシャ部材を設け、ダンパプレートと1対のイナーシャ部材の開口に第2弾性部材が収容配置されているので、従来のダイナミックダンパ装置に比較して、ダイナミックダンパ装置の占有スペースを小さくできる。特に、本発明の構成では、1対のイナーシャ部材をプレート部材によって形成することができ、イナーシャ部材を鋳造や鍛造によって形成する場合に比較して、製造コストを抑えることができる。
【0013】
本発明の第2側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1側面の装置において、それぞれ、1対のイナーシャ部材の軸方向外側において第2開口を塞ぐように配置された1対の蓋部材をさらに備えている。
【0014】
ここでは、蓋部材によって、第2弾性部材が1対のイナーシャ部材の第2開口から飛び出すのが禁止されている。しかも、蓋部材は慣性を増加させるための部材としても機能している。
【0015】
本発明の第3側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第2側面の装置において、ダンパプレートは、複数の第1開口の円周方向間において円周方向に延びる複数の長孔を有している。また、この装置は、長孔を軸方向に通過し、1対のイナーシャ部材及び1対の蓋部材を連結する連結部材をさらに備えている。
【0016】
ここでは、1対のイナーシャ部材及び1対の蓋部材を連結する連結部材がダンパプレートの長孔を通過している。このため、連結部材が、イナーシャ部材及び蓋部材とダンパプレートとの相対回転角度範囲を所定の角度範囲に規制するためのストッパとして機能している。
【0017】
本発明の第4側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第3側面の装置において、ダンパプレートの第1開口と長孔とは同一円周上に配置されている。
【0018】
本発明の第5側面に係るトルクコンバータのロックアプ装置は、第1から第4側面のいずれかの装置において、イナーシャ部材は環状に形成されており、ダンパプレートは、イナーシャ部材の内周面に当接してイナーシャ部材の径方向の位置決めを行うインロー部を有している。
【0019】
ここでは、ダンパプレートの一部にインロー部が形成されており、このインロー部によってイナーシャ部材が径方向に位置決めされている。
【0020】
本発明の第6側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1から第5側面のいずれかの装置において、ダイナミックダンパ装置は、低回転数域では第1ヒステリシストルクを発生し、中回転数域から高回転数域では前記第1ヒステリシストルクよりも大きな第2ヒステリシストルクを発生するヒステリシストルク発生機構を有する。
【0021】
ダイナミックダンパ装置がヒステリシストルク発生機構を有している場合は、ヒステリシストルクの大きさによって、出力回転部材の回転速度変動の特性が変化する。
【0022】
具体的には、出力回転部材の回転速度変動は、ダイナミックダンパ装置のヒステリシストルクが小さい場合には低回転数域で小さくなり、逆に大きい場合には中回転数域で小さくなる。
【0023】
そこで、この発明では、回転数の増加に伴ってダイナミックダンパ装置におけるヒステリシストルクを増大させるようにしている。したがって、このダイナミックダンパ装置をロックアップ装置に取り付けることによって、ロックアップ回転数を低い回転数に設定した場合でも、広い回転数域において回転速度変動を抑えることができる。
【0024】
本発明の第7側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第6側面の装置において、ヒステリシストルク発生機構は、スライダと、当接部材と、を有する。スライダは、イナーシャ部材とともに回転し、イナーシャ部材に対して径方向に移動自在であり、回転方向に延びる摺動面を有する。当接部材は、ダンパプレートとともに回転し、低回転数域ではスライダの摺動面に当接することによってイナーシャ部材との相対捩じり角度範囲が第1角度範囲に規制され、低回転数域より回転数が高い中回転数域ではスライダの摺動面に当接することによってイナーシャ部材との相対捩じり角度範囲が第1の角度範囲より狭い第2角度範囲に規制され、中回転数域より回転数が高い高回転数域ではスライダの摺動面に当接することによってイナーシャ部材との相対捩じりが禁止される。
【0025】
本発明の第8側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第7側面の装置において、スライダの摺動面の回転方向の中央部には、当接部材が嵌り込むロック部が形成されている。
【0026】
この場合は、回転数が高回転数域になり、当接部材とイナーシャ部材との相対捩じり角度範囲が狭くなると、最終的には当接部材がスライダのロック部に嵌り込み、両者の相対回転は禁止される。すなわち、ヒステリシストルクは無限大になる。
【0027】
本発明の第9側面に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、第1から第8側面のいずれかの装置において、中間部材をさらに備えている。中間部材は、クラッチ部及び出力回転部材と相対回転自在であり、複数の第1弾性部材のうちの少なくとも2つを直列的に作用させる。そして、ダンパプレートは中間部材に連結されている。
【0028】
ここでは、ダイナミックダンパ装置のダンパプレートが中間部材に連結され、ダイナミックダンパ装置と出力回転部材との間に第1弾性部材が配置されるように構成している。このため、ダイナミックダンパ装置を構成する部材に製造誤差等があってとしても、所望のトルク変動吸収特性を得ることができ、回転速度変動を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のような本発明では、トルクコンバータのロックアップ装置において、特に軸方向における占有スペースを小さくできる。また、イナーシャ部材をプレート部材で形成でき、イナーシャ部材を鋳造品や鍛造品にした場合に比較して、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態によるロックアップ装置を備えたトルクコンバータの断面構成図。
図2図2のロックアップ装置を抽出して示す図。
図3図2の中間部材及びダイナミックダンパ装置を抽出して示す図。
図4】ダイナミックダンパ装置の正面部分図。
図5図4のV-V線断面図。
図6】ダイナミックダンパ装置のダンパプレートの正面部分図。
図7】ダイナミックダンパ装置のイナーシャリングの正面部分図。
図8】エンジン回転数と回転速度変動の特性図。
図9】本発明の他の実施形態によるヒステリシストルク発生機構の正面部分図。
図10】他の実施形態のダンパプレートの正面部分図。
図11】他の実施形態のイナーシャリングの正面部分図。
図12】ヒステリシストルク発生機構のスライダを示す図。
図13】エンジン回転数と回転速度変動の特性図。
図14】ヒステリシストルク発生機構の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるロックアップ装置を有するトルクコンバータ1の断面部分図である。図1の左側にはエンジン(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。なお、図1に示すO−Oがトルクコンバータ及びロックアップ装置の回転軸線である。
【0032】
[トルクコンバータ1の全体構成]
トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションの入力シャフトにトルクを伝達するための装置であり、入力側の部材に固定されるフロントカバー2と、3種の羽根車(インペラ3、タービン4、ステータ5)からなるトルクコンバータ本体6と、ロックアップ装置7と、から構成されている。
【0033】
フロントカバー2は、円板状の部材であり、その外周部にはトランスミッション側に突出する外周筒状部10が形成されている。インペラ3は、フロントカバー2の外周筒状部10に溶接により固定されたインペラシェル12と、その内側に固定された複数のインペラブレード13と、インペラシェル12の内周側に設けられた筒状のインペラハブ14とから構成されている。
【0034】
タービン4は流体室内でインペラ3に対向して配置されている。タービン4は、タービンシェル15と、タービンシェル15に固定された複数のタービンブレード16と、タービンシェル15の内周側に固定されたタービンハブ17と、から構成されている。タービンハブ17は外周側に延びるフランジ17aを有しており、このフランジ17aにタービンシェル15の内周部が複数のリベット18によって固定されている。また、タービンハブ17の内周部には、図示しないトランスミッションの入力シャフトがスプライン係合している。
【0035】
ステータ5は、インペラ3とタービン4の内周部間に配置され、タービン4からインペラ3へと戻る作動油を整流するための機構である。ステータ5は主に、ステータキャリア20と、その外周面に設けられた複数のステータブレード21と、から構成されている。ステータキャリア20は、ワンウエイクラッチ22を介して図示しない固定シャフトに支持されている。なお、ステータキャリア20の軸方向両側には、スラストベアリング24,25が設けられている。
【0036】
[ロックアップ装置7]
図2に、図1のロックアップ装置7を抽出して示している。ロックアップ装置7は、フロントカバー2とタービン4との間の環状の空間に配置されている。ロックアップ装置7は、クラッチ部28と、外周側トーションスプリング(第1弾性部材の一例)29と、フロート部材30と、中間部材31と、内周側トーションスプリング(第1弾性部材の一例)32と、ドリブンプレート(出力回転部材)33と、ダイナミックダンパ装置34と、を有している。
【0037】
<クラッチ部28>
クラッチ部28は、複数のクラッチプレート36と、ピストン37と、油圧室形成部材38と、ドライブプレート39と、を有している。
【0038】
−クラッチプレート36−
複数のクラッチプレート36は、フロントカバー2とピストン37との間に配置され、2枚の第1クラッチプレート36aと、2枚の第2クラッチプレート36bと、を有している。第1クラッチプレート36a及び第2クラッチプレート36bは、ともに環状に形成され、軸方向に交互に並べて配置されている。第1クラッチプレート36aは内周部に複数の歯が形成されている。第2クラッチプレート36bは、両面に摩擦フェーシングが固定されており、外周部に複数の歯が形成されている。
【0039】
−ピストン37−
ピストン37は、環状に形成され、フロントカバー2のトランスミッション側に配置されている。ここで、フロントカバー2の内周部には、クラッチ用ボス40が固定されている。クラッチ用ボス40は、径方向外方に延びるフランジ40aと、軸方向タービン側に延びる円筒部40bと、を有している。ピストン37の内周面は、クラッチ用ボス40のフランジ40aの外周面に、軸方向に移動自在に支持されている。また、ピストン37の径方向中間部には、フロントカバー2側に突出する円筒部37aが形成されている。そして、この円筒部37aが、フロントカバー2の段付き部2aに、軸方向に移動自在に支持されている。円筒部37aの外周側には、円周方向に所定の間隔を開けて複数の開口37bが形成されている。
【0040】
ピストン37の外周部は、複数のクラッチプレート36に軸方向に対向するように配置されており、複数のクラッチプレート36をフロントカバー2側に押圧する押圧部37cとなっている。
【0041】
−油圧室形成部材38−
油圧室形成部材38はピストン37のタービン側に配置されている。油圧室形成部材38の内周部は、クラッチ用ボス40の円筒部40bに固定されている。油圧室形成部材38の径方向中間部には、フロントカバー2側に延びる円筒部を形成する段付き部38aが形成されている。また、段付き部38aの外周部には、ピストン37の開口37bを通過してフロントカバー2側に突出する複数の突出部38bが形成されている。複数の突出部38bは円周方向に所定の間隔で形成されており、この突出部38bに第1クラッチプレート36aの内周部に形成された歯が係合している。したがって、第1クラッチプレート36aと油圧室形成部材38とは、相対回転不能で、かつ軸方向に相対移動が可能である。
【0042】
また、油圧室形成部材38の外周部には、径方向外方に延長して延長部38cが形成されている。延長部38cは、ピストン37及びクラッチプレート36のタービン側を覆っている。
【0043】
−油室−
以上のような構成において、クラッチ用ボス40のフランジ40aの外周面及びフロントカバー2の段付き部2aには、シール部材42,43が設けられている。これにより、ピストン37の内周面とクラッチ用ボス40との間及びピストン37の円筒部37aとフロントカバー2の段付き部2aとの間がシールされ、クラッチオフ用の第1油室44aが形成されている。また、ピストン37のタービン4側に突出した環状の突出部37dにはシール部材45が設けられている。これにより、ピストン37と油圧室形成部材38との間がシールされ、クラッチオン用の第2油室44bが形成されている。
【0044】
クラッチ用ボス40には、第1油室44aに連通する第1油路40cと、第2油室44bに連通する第2油路40dが形成されている。
【0045】
−ドライブプレート39−
ドライブプレート39はクラッチ部28の出力側に設けられている。具体的には、ドライブプレート39は、クラッチプレート36の外周側に設けられている。ドライブプレート39は、フロントカバー2側に延びるクラッチ係合部39aと、複数のスプリング係合部39bと、を有している。
【0046】
クラッチ係合部39aは、円筒状に形成されており、軸方向に延びる溝が円周方向に所定の間隔で形成されている。そして、この溝に、第2クラッチプレート36bの外周部に形成された歯が係合している。したがって、第2クラッチプレート36bとドライブプレート39とは、相対回転不能であり、かつ軸方向に相対移動が可能である。
【0047】
複数のスプリング係合部39bは、クラッチ係合部39aのタービン側から径方向外方に延びており、外周側トーションスプリング29の両端面に係合している。
【0048】
また、クラッチ係合部39aとスプリング係合部39bとの間の部分39cには、タービン側に延びる複数の爪39dが形成されている。
【0049】
<外周側トーションスプリング29及びフロート部材30>
複数の外周側トーションスプリング29は、例えば、1組2個で合計8個のスプリングからなり、各組の2個の外周側トーションスプリング29が直列に作用するように、フロート部材30が設けられている。
【0050】
フロート部材30は、断面C字状で環状の部材であり、ドライブプレート39のクラッチ係合部39aの上方に配置されている。このフロート部材30は、ドライブプレート39と相対回転可能に配置されており、外周部が外周側トーションスプリング29の外周部を支持し、側部が外周側トーションスプリング29のエンジン側の側部を支持している。すなわち、フロート部材30によって外周側トーションスプリング29の外周側及び側方への飛び出しが規制されている。フロート部材30の軸方向トランスミッション側の先端部30aは、内周側でかつエンジン側に折り曲げられており、この先端部の折り曲げ部30aが1組の外周側トーションスプリング29の間に挿入されている。すなわち、折り曲げ部30aの円周方向の両端面が、対応する外周側トーションスプリング29の端面に当接している。
【0051】
以上のように、直列に作用するように配置された1組の外周側トーションスプリング29の円周方向両端がドライブプレート39のクラッチ係合部39bに係合し、1組の外周側トーションスプリング29の中間部にフロート部材30の折り曲げ部30aが挿入されている。また、外周側トーションスプリング29の外周部はフロート部材30の外周部によって支持されている。
【0052】
<中間部材31>
図3は、図1の中間部材31及びダイナミックダンパ装置34を抽出して示したものである。図3に示すように、中間部材31は、第1プレート48と第2プレート49とから構成されており、ドライブプレート39及びドリブンプレート33に対して相対回転自在である。第1及び第2プレート48,49はクラッチ部28とタービンシェル15との間に配置された環状かつ円板状の部材である。第1プレート48と第2プレート49とは軸方向に間隔をあけて配置されている。第1プレート48がエンジン側に配置され、第2プレート49がトランスミッション側に配置されている。第1プレート48と第2プレート49とは、外周部が複数のリベット50によって互いに相対回転不能でかつ軸方向に移動不能に連結されている。第1プレート48及び第2プレート49には、それぞれ軸方向に貫通する窓部48a,49aが形成されている。窓部48a,49aは、円周方向に延びて形成されており、内周部と外周部には、軸方向に切り起こされた切り起こし部が形成されている。
【0053】
また、第1プレート48の外周端には、外周側トーションスプリング29にまで延びる複数の係止部48bが形成されている。複数の係止部48bは第1プレート48の先端を軸方向エンジン側に折り曲げて形成されたものである。この複数の係止部48bは、円周方向に所定の間隔をあけて配置されており、2つの係止部48bの間に、直列に作用する1組の外周側トーションスプリング29が配置されている。
【0054】
以上のような中間部材31によって、外周側トーションスプリング29と内周側トーションスプリング32とを直列的に作用させることが可能となる。
【0055】
なお、第1及び第2プレート48,49の外周部には、軸方向に貫通する孔48c,49cが形成されている。そして、この孔48c,49cにドライブプレート39の爪39dが挿入されている。爪39dには径方向に貫通する孔が形成されており、一端がリベット50に固定された板バネ51の一部が、爪39dの孔に係合している。
【0056】
以上のような構成によって、ドライブプレート39、これに支持された外周側トーションスプリング29、及びフロート部材30の軸方向の移動が規制されている。
【0057】
<内周側トーションスプリング32>
複数の内周側トーションスプリング32のそれぞれは、大コイルスプリングと、大コイルスプリングの内部に挿入され大コイルスプリングのスプリング長と同じ長さの小コイルスプリングと、の組合せからなる。各内周側トーションスプリング32は、中間部材31の両プレート48,49の窓部48a,49a内に配置されている。そして、各内周側トーションスプリング32は窓部48a,49aによって円周方向両端及び半径方向両側が支持されている。さらに、各内周側トーションスプリング31は窓部48,49の切り起こし部によって軸方向への飛び出しが規制されている。
【0058】
<ドリブンプレート33>
ドリブンプレート33は、環状かつ円板状の部材であり、内周部がタービンシェル15とともにリベット18によってタービンハブ17のフランジ17aに固定されている。このドリブンプレート33は、第1プレート48と第2プレート49との間に、両プレート48,49に対して相対回転可能に配置されている。そして、ドリブンプレート33の外周部には、第1及び第2プレート48,49の窓部48a,49aに対応して、窓孔33aが形成されている。窓孔33aは軸方向に貫通する孔であり、この窓孔33aに内周側トーションスプリング32が配置されている。
【0059】
<ダイナミックダンパ装置34>
ダイナミックダンパ装置34は、図3図4、及び図5に示すように、中間部材31の第2プレート49の外周延長部であるダンパプレート52と、1対のイナーシャリング53と、1対の蓋部材54と、複数のコイルスプリング(第2弾性部材)55と、ストップピン56と、を有している。なお、図4はダイナミックダンパ装置34をフロントカバー2側から視た部分図である。また、図5図4のV-V線断面図である。
【0060】
ダンパプレート52は、前述のように、中間部材31を構成する第2プレート49の外周を延長して形成された部分であり、図6に示すように、円周方向に所定の間隔で、複数のスプリング収納部(第1開口)52aを有している。スプリング収納部52aは円周方向に所定長さで形成されている。複数のスプリング収納部52aの円周方向間には、複数の長孔52bが形成されている。長孔52bは、円周方向に所定の長さを有し、スプリング収納部52aと同じ円周上に形成されている。また、スプリング収納部52aと長孔52bとの円周方向間には、複数のインロー部52cが形成されている。インロー部52cは、ダンパプレート52の一部を、フロントカバー2側に切り起こして形成されたものである。
【0061】
1対のイナーシャリング53は、板金部材をプレス加工して形成されたものであり、ダンパプレート52の軸方向両側に配置されている。2つのイナーシャリング53は同様の構成である。イナーシャリング53は、図7に示すように、円周方向に所定の間隔で複数のスプリング収納部(第2開口)53aを有している。このスプリング収納部53aはダンパプレート52のスプリング収納部52aに対応する位置に形成されている。また、イナーシャリング53は、ダンパプレート52の長孔52bの円周方向中央位置に対応する位置に貫通孔53bを有している。
【0062】
1対の蓋部材54は1対のイナーシャリング53の軸方向外側に配置されている。具体的には、一方の蓋部材54はフロントカバー2側に配置されたイナーシャリング53のさらにフロントカバー2側に配置され、他方の蓋部材54はタービン4側に配置されたイナーシャリング53のさらにタービン4側に配置されている。
【0063】
蓋部材54は、図4に示すように、環状に形成され、内外径はイナーシリング53の内外径と同寸法である。そして、蓋部材54には、イナーシャリング53の貫通孔53bに対応する位置に貫通孔54bが形成されている。また、貫通孔54bの軸方向外側の端部には、貫通孔54bより大径の凹部54cが形成されている。
【0064】
複数のコイルスプリング55は、それぞれダンパプレート52のスプリング収納部52a及びイナーシャリング53のスプリング収納部53aに収納されている。そして、コイルスプリング55の両端部はダンパプレート52及びイナーシャリング53のスプリング収納部52a,53aの円周方向端部に当接している。
【0065】
ストップピン56は、図5に示すように、軸方向の中央部に大径胴部56aを有し、その両側に小径胴部56bを有している。
【0066】
大径胴部56aは、イナーシャリング53の貫通孔53bより大径で、かつダンパプレート52の長孔52bの径(径方向寸法)よりも小径である。また、大径胴部56aの厚みは、ダンパプレート52の厚みより若干厚く形成されている。
【0067】
小径胴部56bはイナーシャリング53の貫通孔53b及び蓋部材54の貫通孔54bを挿通している。そして、小径胴部56bの頭部をかしめることによって、ダンパプレート52の軸方向両側にイナーシャリング53及び蓋部材54が固定されている。
【0068】
以上のような構成により、ダンパプレート52とイナーシャリング53及び蓋部材54とは、ストップピン52がダンパプレート52の長孔52bで移動し得る範囲で相対回転が可能である。そして、ストップピン52の大径胴部56aが長孔52bの端部に当接することによって、両者の相対回転が禁止される。
【0069】
また、イナーシャリング53及び蓋部材54がストップピン56によって固定された状態で、イナーシャリング53の内周面がダンパプレート52のインロー部52cの外周面に当接し、これによりイナーシャリング53,蓋部材54及びコイルスプリング55の径方向の位置決めがなされている。
【0070】
[動作]
まず、トルクコンバータ本体の動作について簡単に説明する。フロントカバー2及びインペラ3が回転している状態では、インペラ3からタービン4へ作動油が流れ、作動油を介してインペラ3からタービン4へトルクが伝達される。タービン4に伝達されたトルクはタービンハブ17を介してトランスミッションの入力シャフト(図示せず)に伝達される。
【0071】
トルクコンバータ1の速度比があがり、入力シャフトが一定の回転速度になると、第1油圧室44aの作動油が第1油路40cを介してドレンされ、第2油圧室44bに第2油路40dを介して作動油が供給される。すると、ピストン37がフロントカバー2側に移動させられる。この結果、ピストン37の押圧部37cがクラッチプレート36をフロントカバー2側に押圧し、クラッチ部28はオンになる。
【0072】
以上のようなクラッチオン状態では、トルクは、クラッチプレート36→ドライブプレート39→外周側トーションスプリング29→中間部材31→内周側トーションスプリング32→ドリブンプレート33の経路で伝達され、タービンハブ17に出力される。
【0073】
ロックアップ装置7においては、トルクを伝達すると共にフロントカバー2から入力されるトルク変動を吸収・減衰する。具体的には、ロックアップ装置7において捩り振動が発生すると、外周側トーションスプリング29と内周側トーションスプリング32とがドライブプレート39とドリブンプレート33との間で直列に圧縮される。さらに、外周側トーションスプリング29においても、1組の外周側トーションスプリング29が直列に圧縮される。このため、捩り角度を広くすることができる。しかも、特に円周方向距離を長くとれる外周側トーションスプリング29において直列に作用させているので、より広い捩り角度を確保することができる。このことは、捩り特性をより低剛性化できることを意味し、振動吸収・減衰性能をより向上させることができる。
【0074】
[ダイナミックダンパ装置の動作]
中間部材31に伝達されたトルクは、内周側トーションスプリング32を介してドリブンプレート33に伝達され、さらにタービンハブ17を介してトランスミッション側の部材に伝達される。このとき、中間部材31にはダイナミックダンパ装置34が設けられているので、エンジンの回転速度変動を効果的に抑制することができる。すなわち、ダンパプレート52の回転とイナーシャリング53及び蓋部材54との回転は、コイルスプリング55の作用によって位相にズレが生じる。具体的には、イナーシャリング53及び蓋部材54の回転はダンパプレート52の回転に対して遅れる。この位相のズレによって、回転速度変動を吸収することができる。
【0075】
また、本実施形態では、ダイナミックダンパ装置34を中間部材31に固定し、ダイナミックダンパ装置34とタービンハブ17との間に振動を抑えるための内周側トーションスプリング32を配置している。この内周側トーションスプリング32の作用によって、図8に示すように、より効果的に回転速度変動を抑えることができる。図8において、特性C1は、従来のロックアップ装置における回転速度変動を示している。特性C2はダイナミックダンパ装置をタービンハブに装着し、ダイナミックダンパ装置の出力側に弾性部材(トーションスプリング)がない場合の変動を示している。また、特性C3は本実施形態のように、ダイナミックダンパ装置を中間部材に装着し、ダイナミックダンパ装置の出力側に弾性部材(内周側トーションスプリング32)を設けた場合の変動を示している。
【0076】
図8の特性C2と特性C3とを比較して明らかなように、ダイナミックダンパ装置の出力側に弾性部材を設けた場合は、回転速度変動のピークが低くなり、かつエンジン回転数の常用域においても回転速度変動が抑えることができる。
【0077】
[特徴]
(1)1対のイナーシャリング53をダンパプレート52の両側に配置してダイナミックダンパ装置34を構成しているので、1対のイナーシャリング53をプレート部材で形成することができる。したがって、イナーシャリングを鋳造品や鍛造品で形成する場合に比較して製造コストを抑えることができる。
【0078】
(2)蓋部材54によってコイルスプリング55がイナーシャリング53のスプリング収納部53aから飛び出るのを禁止している。このため、イナーシャリング53にコイルスプリング55の飛び出しを規制するための突起等を設ける必要がない。また、蓋部材54を慣性として利用することができる。
【0079】
(3)ダンパプレート52及びイナーシャリング53の内部にコイルスプリング55を収容しているので、特に、軸方向におけるダイナミックダンパ装置の占有スペースをコンパクトにすることができる。
【0080】
(4)イナーシャリング53を軸方向に分割しているので、ダンパプレート52の差し込み、及びコイルスプリング55の組付が容易になる。
【0081】
(5)中間部材31にダイナミックダンパ装置34を装着し、ダイナミックダンパ装置34の出力側に内周側トーションスプリング32を設けているので、より効果的に回転速度変動を抑えることができる。
【0082】
(6)ダンパプレート52にインロー部52cを設け、イナーシャリング53及び蓋部材54の径方向の位置決めを行なっている。したがって、簡単な構成でダイナミックダンパ装置34の径方向の位置決めを行うことができる。
【0083】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0084】
(a)前記実施形態では、1対のイナーシャリングの形状を同じにしたが、それぞれ別の形状にしてもよい。
【0085】
(b)前記実施形態では、ダンパプレートを中間部材の第2プレートの外周部に形成したが、ダンパプレートを別部材として設けてもよい。
【0086】
(c)前記実施形態におけるダイナミックダンパ装置に、ヒステリシストルク発生機構を設けてもよい。図9にヒステリシストルク発生機構60を示している。ここでは、1対のイナーシャリング61の一方(又は両方)の厚みが、前記実施形態に比較して厚く形成されている。そして、このイナーシャリング61にヒステリシストルク発生機構60が組み込まれている。
【0087】
[ヒステリシストルク発生機構60の構成]
ヒステリシストルク発生機構60は、ダンパプレート62(図10参照)とイナーシャリング61との間で可変のヒステリシストルクを発生する機構である。ヒステリシストルク発生機構60は、図10に示すようなダンパプレート62の爪62dと、スライダ63と、スプリング64と、を有している。
【0088】
図10に示すように、ダンパプレート62は、前記同様に、中間部材を構成する第2プレートの外周を延長して形成された部分であるが、別の部材によって形成してもよい。ダンパプレート62は、爪62dが形成されている点を除いて、基本的な構成は前記実施形態と同様である。すなわち、スプリング収納部62aと、長孔62bと、インロー部62cと、を有しており、これらの各部の機能は前記実施形態と同様である。
【0089】
この実施形態では、以上の構成に加えて、ダンパプレート62は爪62dを有している。具体的には、ダンパプレート62の外周部には、所定の角度範囲で複数の切欠き部62eが形成されており、この切欠き部62eの内周端縁において、円周方向の中央部をイナーシャリング61側に折り曲げることによって、爪62dが形成されている。
【0090】
図11に示すように、イナーシャリング61は、環状の部材であり、ダンパプレート62に対して相対回転自在に配置されている。イナーシャリング61は、円周方向に所定の間隔で、それぞれ複数のスプリング収納部61aと、ストップピンが挿通する貫通孔61bと、スライダ収納部61cと、を有している。
【0091】
複数のコイルスプリング55は、ダンパプレート62のスプリング収納部62aと、イナーシャリング61のスプリング収納部61aに収納されている。このコイルスプリング55によって、ダンパプレート62とイナーシャリング61とが回転方向に弾性的に連結されている。
【0092】
スライダ63は、図9に示すように、円周方向に長く延びる部材であり、イナーシャリング61のスライダ収納部61cに径方向に移動自在に収納されている。図12に、イナーシャリング61のスライダ収納部61cとスライダ63とを抽出して示している。
【0093】
スライダ収納部61cは、円周方向の両端部にスプリング受け部61dを有している。また、スライダ収納部61cの円周方向の両端の壁は、ガイド部61eとして機能している。
【0094】
一方、スライダ63は、円周方向の両端部に、径方向内方に向かって形成されたスプリング収容部63aを有している。そして、各スプリング収容部63aには、スライダ63を内周側に向かって付勢するスプリング64が収容されている。スライダ63の長手方向の両端は、スライダ収納部61cのガイド部61eにスライド自在に当接している。また、スライダ63の外周面63bは、内方に向かって凹むように湾曲している。そして、この外周面63bの円周方向における中央部には、ダンパプレート62の爪62dが嵌り込むロック部63cが形成されている。
【0095】
[回転速度変動の抑制]
ダイナミックダンパ装置による回転速度変動の抑制については、前記実施形態と同様であり、図8で説明した通りである。本実施形態では、ヒステリシストルク発生機構60が設けられていることによって、さらに回転速度変動を効果的に抑えることができる。この点について、以下に説明する。
【0096】
図13に示すように、エンジンの回転速度変動E1に対するタービンの回転速度変動は、ヒステリシストルク発生機構60におけるヒステリシストルクの大小によって、曲線E2,E3に示すような特性になる。なお、特性E2,E3ともに、ダイナミックダンパ装置が設けられている場合の特性である。
【0097】
特性E2はヒステリシストルクが比較的大きい場合であり、特性E3はヒステリシストルクが比較的小さい場合である。特性E2においては、タービンの回転速度変動は、エンジン回転数が1200rpmより低い回転数付近で小さくなり、1500rpm付近で最大になってそれより高い回転数域では徐々に小さくなる。一方で、特性E3では、タービンの回転速度変動は、エンジン回転数が1200rpmを越えたあたりで特性E2より小さい最小値を示し、1600rpm付近で特性E2を越えて最大となる。
【0098】
これらの特性から明らかなように、タービンの回転速度変動は、エンジン回転数が低い回転数域ではヒステリシストルクが小さい方が小さく、中間の回転数域ではヒステリシストルクが大きい方が小さい。また、高回転数域では、ヒステリシストルクの大小によるタービン回転速度変動への影響は少ない。
【0099】
そこでこの実施形態によるヒステリシストルク発生機構60は、回転数域によってヒステリシストルクが変化するように構成されている。具体的には、ヒステリシストルク発生機構60によって発生されるヒステリシストルクは、エンジン回転数が低い領域では小さく、中間及び高い回転数域では徐々に大きくなる。
【0100】
[ヒステリシストルク発生機構60の動作]
図14を用いて、回転数域によってヒステリシストルクが変化する動作について説明する。
【0101】
まず、低回転数域では、スライダ63に作用する遠心力が比較的小さい。このため、図14(a)の<通常時>に示すように、スライダ63はスプリング64の付勢力によって内周側に付勢されている。このような状態において、ダイナミックダンパ装置が作動し、ダンパプレート62とイナーシャリング61とが相対回転すると、ダンパプレート62の爪62dは、スライダ63の外周面63bの外周側を相対的に移動する。
【0102】
このとき、ダンパプレート62の相対回転の角度範囲(捩じり角)は、爪62dがスライダ63の外周面63bに当接することによって規制される。そして、図14(a)に示す低回転数域では、捩じり角は最大のθ1となる。また、この捩じり角±θ1の範囲では、爪62dはスムーズにスライダ63の外方を移動するので、この場合のヒステリシストルクは小さい。
【0103】
回転数が高くなると、スライダ63に作用する遠心力が大きくなる。スライダ63に大きい遠心力が作用すると、図14(b)の<減衰時>に示すように、スライダ63はスプリング64の付勢力に抗して外周側に移動する。このような状態では、爪62dとスライダ63の外周面63bとがより近づくので、爪62dがスムーズに移動できる範囲(捩じり角)は、図14(a)の低回転数域に比較して狭いθ2となる。そして、捩じり角θ2以上の領域では、爪62dがスライダ63の外周面63bに強く当接するので、低回転数域でのヒステリシストルクよりも大きいヒステリシストルクが発生する。
【0104】
そしてさらに回転数が高くなると、スライダ63は、スプリング64の付勢力に抗してさらに外周側に移動し、図14(c)の<ロック時>に示すような状態になる。この状態では、爪62dはスライダ63の外周面63bのロック部63cに嵌り込む。すなわち、爪62d(すなわちダンパプレート62)とイナーシャリング61との相対回転は禁止されて、ロックされた状態になる。このため、図14(c)に示す状態では、ダイナミックダンパ装置におけるヒステリシストルクは無限大となる。
【0105】
以上のような構成では、タービン回転速度変動の特性は、図13に示すように、低回転数域では特性E3となり、中回転数域〜高回転数域では特性E2となる。このため、全エンジン回転数域において、タービン回転速度変動を小さく抑えることができる。
【0106】
(d)前記実施形態では、外周側トーションスプリングと内周側トーションスプリングとを連結する中間部材にダイナミックダンパ装置を固定したが、ダイナミックダンパ装置の配置はこれに限定されない。
【0107】
例えば、2つの外周側トーションスプリングを直列的に作用させるためのフロート部材にダイナミックダンパ装置を固定してもよい。また、同様に、2つの内周側トーションスプリングを直列的に作用させるための部材にダイナミックダンパ装置を固定してもよい。いずれにしても、ダイナミックダンパ装置の出力側にダンパ機構としてのトーションスプリングを配置することによって、副次共振を抑えることができる。
【0108】
(e)中間部材にダイナミックダンパ装置を連結するための構成は、前記実施形態の構成に限定されない。例えば、歯や爪及び切欠き等を中間部材とダイナミックダンパ装置を構成する部材とに形成し、両者を連結するようにしてもよい。
【0109】
(f)前記実施形態では弾性部材をコイルスプリングによって構成したが、他の樹脂等によって形成された弾性部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 トルクコンバータ
2 フロントカバー
4 タービン
6 トルクコンバータ本体
7 ロックアップ装置
28 クラッチ部
29 外周側トーションスプリング
31 中間部材
32 内周側トーションスプリング
33 ドリブンプレート
34 ダイナミックダンパ装置
52,62 ダンパプレート
53,61 イナーシャリング
54 蓋部材
55 コイルスプリング
60 ヒステリシストルク発生機構
62d 爪
63 スライダ
63c ロック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14