特許第5878900号(P5878900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

特許5878900移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法
<>
  • 特許5878900-移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法 図000002
  • 特許5878900-移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法 図000003
  • 特許5878900-移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法 図000004
  • 特許5878900-移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878900
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/06 20090101AFI20160223BHJP
   H04B 17/23 20150101ALI20160223BHJP
   H04B 17/17 20150101ALI20160223BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20160223BHJP
【FI】
   H04W24/06
   H04B17/23
   H04B17/17
   H04B17/29 200
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-179604(P2013-179604)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-50544(P2015-50544A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 和典
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−130002(JP,A)
【文献】 特開平09−305446(JP,A)
【文献】 特開2011−259076(JP,A)
【文献】 特開2006−033007(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04B 17/17
H04B 17/23
H04B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の移動通信端末(1)との間における通信条件を設定する通信条件設定手段(22)と、
前記通信条件に基づいて所定のメッセージを含む送受信信号を送受信する送受信手段(23、25)と、
前記メッセージをその送受信時の時刻情報と関連付けてトレースログとして記憶するトレースログ記憶手段(13)と、
前記通信条件設定手段が設定した設定情報及び前記送受信信号の少なくともいずれか一方に基づいて前記送受信信号に関する予め定められた特性値を取得する特性値取得手段(30)と、
前記特性値をその取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶する特性値ログ記憶手段(14)と、
1つの画面内に、前記トレースログ記憶手段が記憶したトレースログ及び前記特性値ログ記憶手段が記憶した特性値ログに基づいて、前記送受信手段から前記移動通信端末に向かう下り方向及びその逆の上り方向の少なくともいずれか一方における前記特性値の時間的変化を示すグラフ及び前記メッセージを前記時刻情報を基準として並列に並べた状態で、線形時間軸(72)を基準として表示する線形時間軸表示モードと前記メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸(62)で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示し、さらに、前記メッセージの送信方向を示す矢印(64、65、74、75)を前記グラフの表示上に重ねて表示する表示手段(16)と、
を備えた移動通信端末試験装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記メッセージの説明が記載された説明欄(67、77)を、前記メッセージの表示に並ぶ場所にさらに並列表示することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項3】
前記特性値取得手段は、予め定められた複数の特性値を取得するものであり、
前記特性値ログ記憶手段は、前記各特性値をそれらの取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶するものであり、
前記表示手段は、前記線形時間軸表示モード及び前記非線形時間軸表示モードの少なくともいずれか一方の表示モードにおいて、前記複数の特性値のうち少なくとも1つの特性値のグラフ及び前記メッセージを表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記線形時間軸及び前記非線形時間軸の少なくともいずれか一方に沿って前記複数の特性値のうち所望の特性値のグラフを重ねて表示するものであることを特徴とする請求項3に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向における同じ種類の特性値のグラフを表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向における互いに異なる種類の特性値のグラフを表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向のいずれか一方のみの特性値のグラフを表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項8】
前記送受信手段は、少なくとも1つの周波数帯域において前記メッセージを前記移動通信端末に送信するとともに、少なくとも1つの周波数帯域において前記移動通信端末からのメッセージを受信するものであって、
前記表示手段は、前記送受信手段が前記メッセージを送受信する前記各周波数帯域を識別表示するものであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の移動通信端末試験装置。
【請求項9】
請求項1に記載の移動通信端末試験装置により移動通信端末を試験する移動通信端末試験方法であって、
試験対象の移動通信端末との間における通信条件を設定する通信条件設定ステップ(S12)と、
前記通信条件に基づいて所定のメッセージを含む送受信信号を送受信する送受信ステップ(S13、S14)と、
前記メッセージをその送受信時の時刻情報と関連付けてトレースログとして記憶するトレースログ記憶ステップ(S16)と、
前記通信条件設定ステップで設定した設定情報及び前記送受信信号の少なくともいずれか一方に基づいて前記送受信信号に関する予め定められた特性値を取得する特性値取得ステップ(S17)と、
前記特性値をその取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶する特性値ログ記憶ステップ(S18)と、
1つの画面内に、前記トレースログ記憶ステップで記憶したトレースログ及び前記特性値ログ記憶ステップで記憶した特性値ログに基づいて、前記送受信手段から前記移動通信端末に向かう下り方向及びその逆の上り方向の少なくともいずれか一方における前記特性値の時間的変化を示すグラフ及び前記メッセージを前記時刻情報を基準として並列に並べた状態で、線形時間軸を基準として表示する線形時間軸表示モードと前記メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示し、さらに、前記メッセージの送信方向を示す矢印(64、65、74、75)を前記グラフの表示上に重ねて表示する表示ステップ(S20、S21)と、
を含むことを特徴とする移動通信端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末を試験する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の試験装置としては、特許文献1記載の通信試験装置が知られている。特許文献1記載のものは、通信シーケンスを取得するシーケンス情報取得手段と、信号の物理量を検出し検出値として出力する信号物理量測定手段と、検出値のパワーレベルと通信データの有無情報とから通信の有無を判定しパワーログ情報として出力するレベル判定手段と、シーケンスログの表示と、パワーログ情報から通信の有無を識別可能に示したパワーログの表示とを時系列に並べて表示する表示手段と、を備えている。
【0003】
この構成により、シーケンスログ表示とパワーログ表示とを時系列に並べて表示でき、移動通信端末と通信試験装置間の通信の解析を容易にし、試験、評価等をより一層容易にすると特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−33007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、シーケンスログと時刻との関係を示した表示画面と、パワー特性と時刻との関係を示した表示画面とが別画面で表示されるようになっており、シーケンスログ、時刻及びパワー特性の三者間の関係がわかり難く、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができる移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る移動通信端末試験装置は、試験対象の移動通信端末(1)との間における通信条件を設定する通信条件設定手段(22)と、前記通信条件に基づいて所定のメッセージを含む送受信信号を送受信する送受信手段(23、25)と、前記メッセージをその送受信時の時刻情報と関連付けてトレースログとして記憶するトレースログ記憶手段(13)と、前記通信条件設定手段が設定した設定情報及び前記送受信信号の少なくともいずれか一方に基づいて前記送受信信号に関する予め定められた特性値を取得する特性値取得手段(30)と、前記特性値をその取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶する特性値ログ記憶手段(14)と、1つの画面内に、前記トレースログ記憶手段が記憶したトレースログ及び前記特性値ログ記憶手段が記憶した特性値ログに基づいて、前記送受信手段から前記移動通信端末に向かう下り方向及びその逆の上り方向の少なくともいずれか一方における前記特性値の時間的変化を示すグラフ及び前記メッセージを前記時刻情報を基準として並列に並べた状態で、線形時間軸(72)を基準として表示する線形時間軸表示モードと前記メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸(62)で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示し、さらに、前記メッセージの送信方向を示す矢印(64、65、74、75)を前記グラフの表示上に重ねて表示する表示手段(16)と、を備えた構成を有している。
【0008】
この構成により、本発明の請求項1に係る移動通信端末試験装置は、表示手段が、特性値の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを、線形時間軸を基準として表示する線形時間軸表示モードとメッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示するので、特性値の時間的変化を示すグラフ、メッセージ及び時刻の三者間の関係をわかりやすく試験者に表示することができる。
【0009】
したがって、本発明の請求項1に係る移動通信端末試験装置は、移動通信端末に不具合が生じた場合、その原因が特性値及びメッセージのいずれにあるのかを時系列的にわかりやすく示すことができるので、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記メッセージの説明が記載された説明欄(67、77)を、前記メッセージの表示に並ぶ場所にさらに並列表示する構成を有している。
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記特性値取得手段は、予め定められた複数の特性値を取得するものであり、前記特性値ログ記憶手段は、前記各特性値をそれらの取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶するものであり、前記表示手段は、前記線形時間軸表示モード及び前記非線形時間軸表示モードの少なくともいずれか一方の表示モードにおいて、前記複数の特性値のうち少なくとも1つの特性値のグラフ及び前記メッセージを表示するものである構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、線形時間軸表示モード及び非線形時間軸表示モードの少なくともいずれか一方の表示モードにおいて、複数の特性値のうち少なくとも1つの特性値のグラフ及びメッセージを表示することができる。
【0012】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記線形時間軸及び前記非線形時間軸の少なくともいずれか一方に沿って前記複数の特性値のうち所望の特性値のグラフを重ねて表示するものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、複数の特性値のうち所望の特性値のグラフを重ねて表示することができる。
【0014】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向における同じ種類の特性値のグラフを表示するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、下り方向及び上り方向における同じ種類の特性値のグラフを表示することができる。
【0016】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向における互いに異なる種類の特性値のグラフを表示するものである構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、下り方向及び上り方向における互いに異なる種類の特性値のグラフを表示することができる。
【0018】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記表示手段は、前記下り方向及び前記上り方向のいずれか一方のみの特性値のグラフを表示するものである構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、下り方向及び上り方向のいずれか一方のみの特性値のグラフを表示することができる。
【0020】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、前記送受信手段は、少なくとも1つの周波数帯域において前記メッセージを前記移動通信端末に送信するとともに、少なくとも1つの周波数帯域において前記移動通信端末からのメッセージを受信するものであって、前記表示手段は、前記送受信手段が前記メッセージを送受信する前記各周波数帯域を識別表示するものである構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験装置は、送受信手段がメッセージを送受信する各周波数帯域を識別表示するので、試験者にわかりやすく周波数帯域を示すことができる。
【0022】
本発明の請求項に係る移動通信端末試験方法は、請求項1に記載の移動通信端末試験装置により移動通信端末を試験する移動通信端末試験方法であって、試験対象の移動通信端末との間における通信条件を設定する通信条件設定ステップ(S12)と、前記通信条件に基づいて所定のメッセージを含む送受信信号を送受信する送受信ステップ(S13、S14)と、前記メッセージをその送受信時の時刻情報と関連付けてトレースログとして記憶するトレースログ記憶ステップ(S16)と、前記通信条件設定ステップで設定した設定情報及び前記送受信信号の少なくともいずれか一方に基づいて前記送受信信号に関する予め定められた特性値を取得する特性値取得ステップ(S17)と、前記特性値をその取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶する特性値ログ記憶ステップ(S18)と、1つの画面内に、前記トレースログ記憶ステップで記憶したトレースログ及び前記特性値ログ記憶ステップで記憶した特性値ログに基づいて、前記送受信手段から前記移動通信端末に向かう下り方向及びその逆の上り方向の少なくともいずれか一方における前記特性値の時間的変化を示すグラフ及び前記メッセージを前記時刻情報を基準として並列に並べた状態で、線形時間軸を基準として表示する線形時間軸表示モードと前記メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示し、さらに、前記メッセージの送信方向を示す矢印(64、65、74、75)を前記グラフの表示上に重ねて表示する表示ステップ(S20、S21)と、を含む構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項に係る移動通信端末試験方法は、表示手ステップにおいて、特性値の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを、線形時間軸を基準として表示する線形時間軸表示モードとメッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示するので、特性値の時間的変化を示すグラフ、メッセージ及び時刻の三者間の関係をわかりやすく試験者に表示することができる。
【0024】
したがって、本発明の請求項に係る移動通信端末試験方法は、移動通信端末に不具合が生じた場合、その原因が特性値及びメッセージのいずれにあるのかを時系列的にわかりやすく示すことができるので、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができるという効果を有する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態におけるブロック構成図である。
図2】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、DL及びULにおける電力の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを非線形時間軸表示モードで表した図である。
図3】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態において、DL及びULにおける電力の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを線形時間軸表示モードで表した図である。
図4】本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0028】
まず、本発明に係る移動通信端末試験装置の一実施形態における構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態における移動通信端末試験装置10は、所定の通信規格に基づいて試験対象の移動通信端末(以下「UE」)1と通信し、UE1を試験するようになっている。通信規格としては、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)、LTE(Long Term Evolution)、LTE−A(LTE-Advanced)等がある。本実施形態では、移動通信端末試験装置10は、通信規格としてLTE(Long Term Evolution)を使用するものとする。
【0030】
移動通信端末試験装置10は、擬似基地局20、特性値取得部30、時刻生成部11、トレースログ生成部12、トレースログ記憶部13、特性値ログ記憶部14、表示制御部15、表示部16、操作部17を備えている。この移動通信端末試験装置10は、例えば、CPU、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等で構成され、ROMに予め記憶されたプログラムに従って動作するようになっている。
【0031】
擬似基地局20は、試験シナリオ記憶部21、制御部22、送信部23、結合器24、受信部25を備えている。制御部22は、本発明に係る通信条件設定手段を構成する。送信部23及び受信部25は、本発明に係る送受信手段を構成する。
【0032】
試験シナリオ記憶部21は、UE1を試験するために試験者が登録した試験シナリオを記憶している。試験シナリオとは、試験手順や試験のための通信シーケンスが記述されたものをいう。
【0033】
制御部22は、試験シナリオ記憶部21に記憶された試験シナリオに基づいて、UE1との間における通信条件を、擬似基地局20からUE1に向かう方向の通信経路(DL)及びその逆の通信経路(UL)で設定するようになっている。例えば、制御部22は、DL及びULにおけるコンポーネントキャリア数、各コンポーネントキャリアの周波数、リソースブロック(RB)数等を、DLにおける送信電力等、ULにおける受信周波数等を設定するようになっている。
【0034】
また、制御部22は、設定した情報を設定情報として特性値取得部30に出力するようになっている。また、制御部22は、設定情報のうち送信に関する設定情報を送信部23に出力するとともに、試験シナリオ記憶部21に記憶された試験シナリオに基づいて所定のメッセージを送信部23に出力するようになっている。
【0035】
送信部23は、制御部22からのメッセージを、設定情報に基づいた送信条件でRF(無線周波数)を有する送信信号(RF信号)に含めて結合器24経由でUE1に送信するようになっている。
【0036】
結合器24は、送信部23からのRF信号をUE1に送信するとともに、その応答信号をUE1から受信して受信部25に出力するようになっている。
【0037】
受信部25は、UE1から受信したRF信号をベースバンド信号に変換し、復号し、レイヤ処理して、それにより得たデータを制御部22に出力するようになっている。また、受信部25は、ベースバンド信号の受信波形データを特性値取得部30に出力するようになっている。ここで、制御部22に出力されるデータは、UE1から時系列に送信されるメッセージを含む。制御部22は、これらの時系列のメッセージを含むデータをトレースデータとしてトレースログ生成部12に出力するようになっている。
【0038】
特性値取得部30は、制御部22が設定した設定情報、送信部23の送信信号及び受信部25の受信信号の少なくともいずれか1つに基づいて、ULにおける特性を取得するUL取得部40と、DLにおける特性を取得するDL取得部50と、を備えている。この特性値取得部30は、本発明に係る特性値取得手段を構成する。
【0039】
UL取得部40は、受信電力測定部41、受信周波数取得部42、EPRE(Energy Per Resource Element)測定部43、EVM(Error Vector Magnitude)測定部44を備えている。ここで、EPREはリソースエレメントごとの電力を示し、EVMは変調精度を示す。
【0040】
受信電力測定部41は、例えばRBごとに、受信部25からの受信波形データから受信電力を測定するようになっている。その結果、特性値取得部30は、受信電力を取得することとなる。
【0041】
受信周波数取得部42は、制御部22からの設定情報から受信周波数のデータを取得するようになっている。
【0042】
EPRE取得部43は、[数1]に基づいて、ULにおけるリソースエレメントごとの受信電力を示すEPRE(UL)を算出するようになっている。なお、EPRE取得部43は、受信波形全体(トータル)の受信電力のデータを受信電力測定部41から取得し、RB数のデータを制御部22からの設定情報から取得することができる。RB数は制御部22によって設定される設定値に含まれ、1RBは12個のリソースエレメントを含む。
【0043】
[数1]
EPRE(UL)=トータルの受信電力/(RB数×12)
【0044】
EVM測定部44は、例えばRBごとに、受信部25からの受信波形データからEVMを測定するようになっている。その結果、特性値取得部30は、EVMを取得することとなる。
【0045】
DL取得部50は、送信電力測定部51、送信周波数取得部52、EPRE取得部53を備えている。
【0046】
送信電力測定部51は、例えばRBごとに、送信部23の出力信号から送信電力を測定するようになっている。なお、送信電力測定部51は、制御部22からの設定情報から送信電力のデータを取得する構成であってもよい。
【0047】
送信周波数取得部52は、制御部22からの設定情報から送信周波数のデータを取得するようになっている。
【0048】
EPRE取得部53は、[数2]に基づいて、DLにおけるリソースエレメントごとの送信電力を示すEPRE(DL)を算出するようになっている。なお、EPRE取得部53は、送信波形全体(トータル)の送信電力のデータを送信電力測定部51から取得し、RB数のデータを制御部22からの設定情報から取得することができる。
【0049】
[数2]
EPRE(DL)=トータルの送信電力/(RB数×12)
【0050】
時刻生成部11は、時刻情報を生成し、トレースログ生成部12及び特性値取得部30に出力するようになっている。この時刻情報は、絶対時刻で表した情報、又は所定の絶対時刻からの経過時間を示す情報である。
【0051】
トレースログ生成部12は、制御部22から出力されたトレースデータをトレースログとして生成し、生成時の時刻情報と関連付けてトレースログ記憶部13に出力するようになっている。
【0052】
トレースログ記憶部13は、トレースログ生成部12が生成したトレースログをその生成時の時刻情報と関連付けて記憶するようになっている。このトレースログ記憶部13は、本発明に係るトレースログ記憶手段を構成する。
【0053】
特性値ログ記憶部14は、特性値取得部30が取得した各特性値を、その取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶するようになっている。この特性値ログ記憶部14は、本発明に係る特性値ログ記憶手段を構成する。
【0054】
表示制御部15は、トレースログ記憶部13が記憶したトレースログと、特性値ログ記憶部14が記憶した特性値ログとに基づいて、所定の画面を表示部16に表示させるよう制御するようになっている。
【0055】
具体的には、表示制御部15は、DL及びULの少なくともいずれか一方における所定の特性値を示すグラフ及びメッセージを、線形時間軸を基準として表示する線形時間軸表示モードと、メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示部16に表示させるよう制御するようになっている。
【0056】
表示部16は、例えば液晶ディスプレイで構成され、表示制御部15の制御に従って所定の画面を表示するようになっている。この表示部16は、本発明に係る表示手段を構成する。
【0057】
操作部17は、試験者が操作するものであり、例えば、試験シナリオの設定を含む試験条件や、表示制御部15を介して表示部16の画面操作に関する設定等を行うためのキーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。
【0058】
次に、本実施形態における表示部16が表示する試験結果表示画面の表示例について図2及び図3を用いて説明する。図2は、表示部16が、DL及びULにおける電力の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを非線形時間軸表示モードで試験結果表示60として表示した例を示している。図3は、表示部16が、DL及びULにおける電力を示すグラフ及びメッセージを線形時間軸表示モードで試験結果表示70として表示した例を示している。
【0059】
図2に示した非線形時間軸表示モードでの試験結果表示60は、メッセージを基準として表示した試験結果表示であって、所定の特性値のグラフを表示するグラフ表示領域61と、Message(メッセージ)欄66と、Description(説明)欄67と、を含む。この試験結果表示60の表示領域は、試験者が操作部17を介してカーソル68を操作することにより、任意に変更できるようになっている。
【0060】
グラフ表示領域61には、非線形時間軸62、グラフ表示部63、DLのメッセージの送信方向を示す長破線の矢印64、ULのメッセージの送信方向を示す短破線の矢印65が表示されている。なお、記号「UE」及び「SS」は、それぞれ、UE1及び擬似基地局20を表している。また、「UL Power」及び「SS Power」は、それぞれ、ULにおける電力(受信電力)及びDLにおける電力(送信電力)を表している。
【0061】
Message欄66には、UE1と擬似基地局20との間において送受信されたメッセージが送受信順に並べて配置されている。Description欄67には、メッセージの説明が記載されている。一般に、メッセージの送受信時間間隔は一定ではないので、これらのメッセージの送受信時刻は非線形時間軸62で表示されている。図2に示した例では、非線形時間軸62には10msecごとに時刻目盛が付してあるが、メッセージを送受信順に並べて配置したので、時刻目盛の時間間隔は一定ではなく互いに異なるものとなっている。
【0062】
また、図2に示した例では、グラフ表示領域61のSS側(DL側)には、非線形時間軸62を用いて、識別表示された2つの周波数帯域(820MHz、850MHz)の各コンポーネントキャリアでの送信電力のグラフが表示してある。一方、グラフ表示領域61のUE側(UL側)には、非線形時間軸62を用いて、識別表示された2つの周波数帯域(900MHz、930MHz)の各コンポーネントキャリアでの受信電力のグラフが表示してある。このグラフ表示領域61の表示と、非線形時間軸62に付された時刻と、Message欄66の記述内容とから、試験者は、メッセージを基準として、送信電力又は受信電力の変化量とメッセージと時刻との関連を容易に把握できる。
【0063】
図3に示した線形時間軸表示モードでの試験結果表示70は、時刻を基準として表示した試験結果表示であって、所定の特性値のグラフを表示するグラフ表示領域71と、Message(メッセージ)欄76と、Description(説明)欄77と、を含む。この試験結果表示70の表示領域は、試験者が操作部17を介してカーソル78を操作することにより、任意に変更できるようになっている。
【0064】
グラフ表示領域71には、線形時間軸72、グラフ表示部73、DLのメッセージの送信方向を示す長破線の矢印74、ULのメッセージの送信方向を示す短破線の矢印75が表示されている。
【0065】
Message欄76には、UE1と擬似基地局20との間において送受信されたメッセージが送受信順に配置されている。Description欄77には、メッセージの説明が記載されている。一般に、メッセージの送受信時間間隔は一定ではないが、これらのメッセージの送受信時刻を基準にすれば、図3に示したように、線形時間軸72を用いてメッセージを表示することができる。図3に示した例では、線形時間軸72には、10msecごとに時刻目盛が付してあるが、メッセージの送受信時刻を基準にメッセージを配置したので、時刻目盛の時間間隔は互いに同じものとなっている。
【0066】
また、図3に示した例では、グラフ表示領域71のSS側(DL側)には、線形時間軸72を用いて、識別表示された2つの周波数帯域(820MHz、850MHz)の各コンポーネントキャリアでの送信電力が表示してある。一方、グラフ表示領域71のUE側(UL側)には、線形時間軸72を用いて、識別表示された2つの周波数帯域(900MHz、930MHz)の各コンポーネントキャリアでの受信電力が表示してある。このグラフ表示領域71の表示と、線形時間軸72に付された時刻と、Message欄77の記述内容とから、試験者は、時刻を基準として、送信電力又は受信電力の変化量とメッセージと時刻との関連を容易に把握できる。
【0067】
表示部16は、図2に示した試験結果表示60と、図3に示した試験結果表示70とを、試験者の操作部17の操作により切り替えて表示できるようになっている。
【0068】
なお、図2に示した非線形時間軸表示モード及び図3に示した線形時間軸表示モードでは、共にDL及びULにおける電力を特性値の一例として挙げたが、本発明はこれに限定されず、特性値取得部30が取得した各特性値の所望のグラフを表示部16に表示させることができる。
【0069】
例えば、表示部16が、特性値のグラフとしてULにおけるEVMのグラフのみを表示する構成であってもよいし、DLにおけるEPREのグラフのみを表示する構成であってもよい。また、例えば、表示部16が、特性値のグラフとして、ULにおけるEVMのグラフ、DLにおけるEPREのグラフを同時に表示する構成であってもよい。また、例えば、表示部16が、特性値のグラフとして、ULにおける受信電力とEVMとを重ねて表示し、同時に、DLにおけるEPREのグラフを表示する構成であってもよい。
【0070】
次に、本実施形態における移動通信端末試験装置10の動作について図4を用いて説明する。
【0071】
試験シナリオ記憶部21は、試験者の操作部17の操作により設定された試験シナリオを記憶する(ステップS11)。
【0072】
制御部22は、試験シナリオ記憶部21から試験シナリオを読み出し、読み出した試験シナリオに基づいて、UE1との間における通信条件を設定し(ステップS12)、送信に関する設定情報及び試験シナリオに基づいた所定のメッセージを送信部23に出力する。
【0073】
送信部23は、制御部22からのメッセージを設定情報に基づいた送信条件でRF信号に含めて結合器24経由でUE1に送信する(ステップS13)。
【0074】
受信部25は、送信部23が送信したメッセージに応答したメッセージを結合器24経由でUE1から受信する(ステップS14)。
【0075】
受信部25は、UE1から受信したRF信号をベースバンド信号に変換して、受信したメッセージを制御部22に時系列に出力するとともに、ベースバンド信号の受信波形データを特性値取得部30に出力する。制御部22は、時系列のメッセージを含むデータをトレースデータとしてトレースログ生成部12に出力する。
【0076】
トレースログ生成部12は、制御部22から出力されたトレースデータをトレースログとして生成し(ステップS15)、生成時の時刻情報と関連付けてトレースログ記憶部13に出力する。
【0077】
トレースログ記憶部13は、トレースログ生成部12が生成したトレースログをその生成時の時刻情報と関連付けて記憶する(ステップS16)。
【0078】
特性値取得部30は、制御部22が設定した設定情報、送信部23の送信信号及び受信部25の受信信号の少なくともいずれか1つに基づいて、各特性値を取得する(ステップS17)。
【0079】
特性値ログ記憶部14は、特性値取得部30が取得した各特性値を、その取得時の時刻情報と関連付けて特性値ログとして記憶する(ステップS18)。
【0080】
表示制御部15は、試験者が操作部17を操作して、非線形時間軸表示モード及び線形時間軸表示モードのいずれの表示モードを選択したかを判断する(ステップS19)。
【0081】
表示制御部15は、非線形時間軸表示モードが選択されたと判断した場合は、非線形時間軸表示モードで試験結果を表示する(ステップS20)。
【0082】
一方、表示制御部15は、線形時間軸表示モードが選択されたと判断した場合は、線形時間軸表示モードで試験結果を表示する(ステップS21)。
【0083】
以上のように、本実施形態における移動通信端末試験装置10は、表示部16が、特性値の時間的変化を示すグラフ及びメッセージを、線形時間軸72を基準として表示する線形時間軸表示モードと、メッセージを送受信順に並べて配置して非線形時間軸62で表示する非線形時間軸表示モードとの少なくともいずれか一方の表示モードで表示するので、特性値の時間的変化を示すグラフ、メッセージ及び時刻の三者間の関係をわかりやすく試験者に表示することができる。
【0084】
したがって、本実施形態における移動通信端末試験装置10は、移動通信端末に不具合が生じた場合、その原因が特性値及びメッセージのいずれにあるのかを時系列的にわかりやすく示すことができるので、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明に係る移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法は、移動通信端末の不具合の原因を容易に特定することができるという効果を有し、移動通信端末を試験する移動通信端末試験装置及び移動通信端末試験方法として有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 UE(移動通信端末)
10 移動通信端末試験装置
11 時刻生成部
12 トレースログ生成部
13 トレースログ記憶部(トレースログ記憶手段)
14 特性値ログ記憶部(特性値ログ記憶手段)
15 表示制御部
16 表示部(表示手段)
17 操作部
20 擬似基地局
21 試験シナリオ記憶部
22 制御部(通信条件設定手段)
23 送信部(送受信手段)
24 結合器
25 受信部(送受信手段)
30 特性値取得部(特性値取得手段)
41 受信電力測定部
42 受信周波数取得部
43 EPRE取得部
44 EVM測定部
51 送信電力測定部
52 送信周波数取得部
53 EPRE取得部
60 試験結果表示
62 非線形時間軸
70 試験結果表示
72 線形時間軸
図1
図2
図3
図4