(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰返さない。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1の半導体装置の構成を表わす図である。
【0013】
図1を参照して、この半導体装置1は、バッテリ監視に用いられるものであり、セルバランス制御回路2と、マルチプレクサ3と、基準電圧発生回路10と、レギュレータ7と、自己診断回路8と、レベルシフト回路5と、12ビットΔΣADC6と、SPI(Serial Peripheral Interface)回路9A,9Bと、WDT/Reset部11と、制御レジスタ4とを備える。
【0014】
セルバランス制御回路2は、直列接続した多数のバッテリの電圧VIN01〜VIN12,CIN0〜CIN12を受けて、これらのバッテリの放電に生じたアンバランスに対して、バランスが取れた充電を行なうように制御する。
【0015】
マルチプレクサ3は、セルバランス制御回路2からの12個の出力のうち1つを選択して出力する。
【0016】
レベルシフト回路5は、12ビットΔΣADC6に与える電圧のレベルを変換する。
基準電圧発生回路10は、高精度なバンドギャップ基準電圧VBGを12ビットΔΣADC6に供給する。
【0017】
レギュレータ7は、バンドギャップ基準電圧VGBを増幅して出力したり、外部電源VCCを調整し内部回路に供給したりする。
【0018】
12ビットΔΣADC6は、マルチプレクサから出力されるアナログの電圧と、デジタル出力をDA(Digital to Analog)変換して積分した信号との差分(Δ)を求め、これを積分(Σ)した信号を参照電圧と比較して量子化した12ビットの値を制御レジスタ4へ出力する。
【0019】
自己診断回路8は、バッテリの電圧VIN01〜VIN12,CIN0〜CIN12の異常を診断する。
【0020】
SPI回路9A,9Bは、制御レジスタ4内の12ビットΔΣADC6の出力値に基づいて、他のIC(Integrated Circuit)を制御する。
【0021】
WDT/Reset部11は、ウオッチドグタイマ機能と、リセット機能を実行する。
図1の半導体装置1では、基準電圧発生回路10から高精度なバンドギャップ基準電圧VBGが12ビットΔΣADC6に供給されるので、バッテリの監視精度がよくなる。
【0022】
この半導体装置1において、後に説明する基準電圧発生回路を搭載することで、温度変化に対するΔΣADCの電圧検出精度が劣化することなく、高精度を維持することが出来る。そのため、この半導体装置の性能を向上させることができる。
【0023】
(基準電圧発生回路10の概要)
図2は、本発明の実施の形態の基準電圧発生回路10の構成の概要を表わす図である。
【0024】
図2を参照して、基準電圧発生回路10は、BGR回路100と、BGR電流生成回路200と、線形近似補正電流生成回路300と、PTAT(Propotional To Absolute Temperature)電流生成回路400とを含む。BGR回路100は、基準電圧出力生成回路110を含む。基準電圧出力生成回路110は抵抗R3,R4を含む。
【0025】
BGR電流生成回路200の端子Vinにバンドギャップ基準電圧VBGが入力され、端子Ioutから電流IBGR_Hが線形近似補正電流生成回路300に出力する。BGR電流IBGR_Hは後述するように所定の温度(例えば
図5のT1)に達すると所定の電流値(IBGR_H_MAX)にクランプされるように構成される。その電流値(IBGR_H_MAX)の温度依存性はPTAT電流生成回路400に流れ込む電流IPTAT_Hの温度依存性と比較して小さい。
【0026】
一方、線形近似補正電流生成回路300の端子Iin2からPTAT電流生成回路400の端子Ioutに絶対温度に比例する電流IPTAT_Hが出力される。
【0027】
線形近似補正電流生成回路300は、BGR電流生成回路200のクランプされた所定の電流値(IBGR_H_MAX)およびPTAT電流生成回路400からの絶対温度に比例する電流(IPTAT_H)を比較し、電流IPTAT_Hが電流IBGR_H_MAXより大きくなると、補正電流ICORRECT_Hが生成され、端子outからBGR回路100へ出力される。この補正電流は、バンドギャップ基準電圧VBGの温度特性と逆特性を有する。
【0028】
基準電圧出力生成回路110は、この補正電流ICORRECT_Hに基づき生じた補正電圧と、バンドギャップ基準電圧とを加算しバンドギャップ基準電圧VBGとして出力する。
【0029】
(基準電圧発生回路10の詳細)
図3は、実施の形態1の基準電圧発生回路10の構成を表わす図である。
図3を参照して、基準電圧発生回路10は、BGR回路100と、BGR電流生成回路200と、線形近似補正電流生成回路300と、PMOSトランジスタM7と、NMOSトランジスタM5,M6とを含む。ここで、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7と、NMOSトランジスタM5,M6とを合わせてPTAT電流生成回路400とも称する。
【0030】
(BGR回路100)
図3に示すように、BGR回路100は、電流源102と、基準電圧出力生成回路110とを含む。基準電圧出力生成回路110は、NPN型バイポーラトランジスタQ1およびQ2、抵抗R2〜R4とを含む。なお、抵抗R3はトリミングにより抵抗値の微調整が可能な可変抵抗を意味するが、可変抵抗で無くても良い。
【0031】
電流源102は、ほぼ同一の大きさの電流I1’および電流I2’を出力する。電流源102は、PMOSトランジスタM8およびM9と、フィードバックを行なうアンプAMP2と、ボルテージフォロアを構成するアンプAMP3とを含む。
【0032】
PMOSトランジスタM8およびM9は、カレントミラー回路を構成する。PMOSトランジスタM8のソースおよびPMOSトランジスタM9のソースは、電源VCCに接続される。PMOSトランジスタM8のドレインは、NPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。PMOSトランジスタM9のドレインは、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子に接続される。
【0033】
アンプAMP2の正の入力端子は、PMOSトランジスタM9のドレインおよびバイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子に接続される。アンプAMP2の負の入力端子は、PMOSトランジスタM8のドレインおよびNPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。アンプAMP2の出力端子は、PMOSトランジスタM8のゲートおよびPMOSトランジスタM9のゲートに接続される。
【0034】
PMOSトランジスタM8とPMOSトランジスタM9のサイズは等しいときは、アンプAMP2によって、電流源102からNPN型バイポーラトランジスタQ1へ送られる電流I1’と、電流源102からバイポーラトランジスタQ2へ送られる電流I2’の大きさがほぼ等しくなる。
【0035】
AMP3の正の入力端子は、PMOSトランジスタM8のドレインおよびNPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。アンプAMP3の出力端子は、ノードND2に接続されるとともに、アンプAMP3の負の入力端子に接続される。
【0036】
NPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子は、PMOSトランジスタM8のドレインに接続され、電流I1’が流入される。
【0037】
NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース端子はノードND2に接続され、エミッタ端子はノードND1に接続される。
【0038】
バイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子は、PMOSトランジスタM9のドレインに接続され、電流I2’が流入される。なお、電流I1,I2はそれぞれバイポーラトランジスタQ1,Q2のエミッタ電流である。
【0039】
バイポーラトランジスタQ2のベース端子はノードND2に接続され、エミッタ端子は抵抗R2に接続される。
【0040】
抵抗R2の一方の端子は、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ端子に接続され、他方の端子は、ノードND1に接続される。
【0041】
抵抗R3と抵抗R4とは直列に接続され、ノードND1とグランドとの間に設けられる。
【0042】
NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース端子とバイポーラトランジスタQ2のベース端子とが接続されるノードND2は、バンドギャップ基準電圧VBGを出力する。
【0043】
(BGR電流生成回路200)
BGR電流生成回路200は、AMP1と、PMOSトランジスタM1,M2と抵抗R1とを含む。
【0044】
PMOSトランジスタM1,M2のソースは、電源電圧VCCに接続され、ゲートは、AMP1の出力を受ける。
【0045】
PMOSトランジスタM1のドレインは、抵抗R1の一方端に接続されるとともに、AMP1の正の入力端子に接続される。
【0046】
PMOSトランジスタM2のドレインは、PMOSトランジスタM2のドレイン信号は、線形近似補正電流生成回路300に出力される。
【0047】
AMP1の正の入力端子は、PMOSトランジスタM1のドレインおよび抵抗R1の一方端に接続される。AMP1の正の入力端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2のベース端子に接続される。アンプAMP3の出力端子は、PMOSトランジスタM1,M2のゲートに接続される。
【0048】
抵抗R1は、PMOSトランジスタM1のドレインとグランドとの間に接続される。
このBGR電流生成回路200によって生成された電流は、電流IBGR_Hとして線形近似補正電流生成回路300に出力される。PMOSトランジスタM1とM2とはカレントミラー構成になっているので、PMOSトランジスタM2が飽和領域で動作するときにはPMOSトランジスタM1に流れる電流とPMOSトランジスタM2に流れる電流はカレントミラー比に比例しており、電流IBGR_Hの最大出力電流値はPMOSトランジスタM1に流れる電流に比例した電流値(IBGR_H_MAX)となる。
【0049】
(線形近似補正電流生成回路300)
線形近似補正電流生成回路300は、ソース型線形近似補正電流生成回路であって、PMOSトランジスタM3,M4を含む。PMOSトランジスタM3,M4のソースは電源電圧VCCと接続され、ゲートはBGR電流生成回路200のPMOSトランジスタM2のドレインに接続され、BGR電流生成回路200からの出力を受ける。
【0050】
PMOSトランジスタM3のドレインもBGR電流生成回路200からの出力を受ける。線形近似補正電流生成回路300は、後述するように所定の温度(例えば
図5のT1)に達するまではBGR電流生成回路のBGR電流IBGR_Hを電流IPTAT_HとしてPTAP電流生成回路400に出力する。これは、PMOSトランジスタM2が線形領域で動作し、PMOSトランジスタM3、M4をカットオフしているからである。そして、所定の温度(T1)を超えると、PTAP電流生成回路400に流れ込む電流IPTAT_HがBGR電流生成回路の最大出力電流値(IBGR_H_MAX)より大きくなるため、PMOSトランジスタM3からその差分電流(すなわち、電流IPTAT_Hから電流IBGR_H_MAXを差し引いた電流)が補正電流生成回路300中のPMOSトランジスタM3のドレインに流れる。PMOSトランジスタM3とPMOSトランジスタM4はカレントミラー回路を構成しており、PMOSトランジスタM3に流れる電流に比例した電流がPMOSトランジスタM4から補正電流ICORRECT_Hとして基準電圧出力生成回路110に出力される。
【0051】
(PTAT電流生成回路400)
PTAT電流生成回路400は、BGR回路100の一部の回路と重複する。PTAT電流生成回路400は、NMOSトランジスタM5、M6とPMOSトランジスタM7と、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2とを含む。
【0052】
NMOSトランジスタM5,M6はカレントミラーを構成し、NMOSトランジスタM5,M6のソースは、グランド電位が与えられる。また、NMOSトランジスタM5,M6のゲートと、NMOSトランジスタM6のドレインとが接続されるとともに、PMOSトランジスタM7のドレインにも接続される。
【0053】
NMOSトランジスタM5のドレインは、線形近似補正電流生成回路300の出力である電流IPTAT_Hを受ける。
【0054】
PMOSトランジスタM7のゲートは、電流源102のPMOSトランジスタM8,M9のゲートに接続され、PMOSトランジスタM7のソースは電源電圧VCCと接続される。PMOSトランジスタM7のドレインは、NMOSトランジスタM5,M6のゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタM6のドレインにも接続される。
【0055】
(AMP1)
図4は、
図3のAMP1の構成を表わす図である。
【0056】
図4を参照して、アンプAMP1は、入力差動対を構成するNMOSトランジスタMN1,MN2と、テール電流源を構成するNMOSトランジスタMN3と、負荷に対応するPMOSトランジスタMP1,MP2で構成される。NMOSトランジスタMN3のゲートには、一定のバイアス電圧VBNが入力される。PMOSトランジスタMP2とNMOSトランジスタMN2の接続ノードがAMP1の出力端子であり、電圧OUTPが出力される。
【0057】
なお、アンプAMP2、AMP3および後に説明するAMP4、AMP5もAMP1と同様な構成となるため、AMP2〜5については説明を繰返さない。
【0058】
(補正電流)
図5は、実施の形態1による基準電圧発生回路10の動作を説明するための図である。
図5の(A)は、温度に対して、従来のバンドギャップ基準電圧VBGがどのように変化していたかを示す図である。
図5(A)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形H1は、バンドギャップ基準電圧VBGの2次特性を示す。直線L1は、温度T1,T2に対して、波形H1を線形近似した直線を示す。この温度T1,T2は、後に説明するように抵抗R1,R2のサイズやNPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2の面積比、カレントミラーの比を設定することにより定まる。従来のバンドギャップ基準電圧VBGは、温度に応じて、図示はしないが数mVの範囲で変化する。ここで、T1=60℃,T2=120℃程度に設定することが好ましい。
【0059】
本発明の実施の形態1では、高温側の数mVの範囲での変化を更に小さくすることによって、温度依存性を極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを生成することを目的としている。
【0060】
図5の(B)は、バンドギャップ基準電圧VBGが温度によって変化しないようにするために必要な補正電圧を示す図である。
【0061】
図5の(B)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形C1は、温度T1〜T2に対して上述した波形H1を線形近似した直線L1の電圧に基づいて生成された補正電圧を示す。
【0062】
この補正電圧の生成方法を以下に説明する。
図3を再度参照して、BGR電流生成回路200の抵抗R1に流れる電流ICONST(一定)は、式(1)で表される。なお、後述するように抵抗R1の温度依存性の影響は電流を電圧に変換する際に相殺されるため、電流ICONST(一定)と表記している。
【0064】
ここで、V
VBGはバンドギャップ基準電圧VBGを示す。従って、BGR電流生成回路200から出力される電流IBGR_Hの最大値(IBGR_H_MAX)は、式(2)で表される。
【0066】
ここで、bは比例定数であり、PMOSトランジスタM1とM2とのカレントミラー比で決定される値である。
【0067】
一方、PTAT電流生成回路400から出力される電流を計算するために、バイポーラトランジスタQ2のベース・エミッタ間に順方向電圧Vdを印加すると、そのときのコレクタ電流Iとの関係は式(3)で表される。
【0069】
ここで、qは電子の電荷、k
Bはボルツマン定数、Tは絶対温度を示し、Isは逆方向飽和電流と呼ばれ、バイポーラのエミッタの面積に比例する値である。
【0070】
式(3)を用いて、抵抗R2に流れる電流I2を求めると式(4)で表される。なお、ここで、定数Mは、NPN型バイポーラトランジスタQ1に対するバイポーラトランジスタQ2の面積比を示す。なお、この定数Mは8程度が好ましい。
【0072】
電流IPTAT_Hは、NMOSトランジスタM5とM6とのカレントミラー構成およびPMOSトランジスタM7とM9とのカレントミラー構成により、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流I2’と比例関係を有し、電流I2’とバイポーラトランジスタQ2のエミッタ電流I2とは式(5)で表される。
【0074】
ここで、aは比例定数を示し、NMOSトランジスタM5とM6とのカレントミラーによる電流比およびPMOSトランジスタM7とM9とのカレントミラー比で決定される値である。βはバイポーラトランジスタQ2のエミッタ接地増幅率を示す。
【0075】
補正電流ICORRECT_Hが流れ出す条件は、PTAP電流生成回路400に流れ込む電流IPTAT_HがBGR電流生成回路の最大出力電流値(IBGR_H_MAX)より大きくなる条件であり、式(6)で表される条件を満たす必要がある。
【0077】
この式(6)を用いて、電流IBGR_Hが電流IPTAT_Hと等しくなるときの温度TをT1とすると、T1は式(7)で表される。式(7)に示されるように温度T1はカレントミラー比に基づく比例定数a,bや抵抗R1と抵抗R2との比等によって設定することができる。式(7)の示すように抵抗R1と抵抗R2とはそれぞれ分母と分子にあるので、例えば抵抗R1と抵抗R2とを同一半導体チップ上で同じ温度特性を有する材料を用いて製造することにより、抵抗R1と抵抗R2との温度依存性を相殺することができる。
【0079】
補正電流ICCORECT_Hは電流IPTAT_Hと電流IBGR_H_MAXとの差分に比例した電流であり、式(8)で表される。
【0081】
式(8)の電流IPTAT_Hに式(5)、式(4)を代入し、電流IBGR_H_MAXに式(2)、式(1)を代入し、式(7)を用いて定数項を温度T1に置き換えると式(9)で表される。
【0083】
式(9)の示すように、例えば、温度T1を60℃とすると、温度Tが60℃以上では電流ICORRECT_Hの電流値は式(9)から求めることができる。
【0084】
そして、補正電流ICCORECT_Hは、基準電圧出力生成回路110の抵抗R4に流れ込み補正電圧を生成する。その補正電圧は電流ICORRECT_Hに抵抗R4を乗じた値となり、
図5(B)に示される波形C1の勾配Cは式(10)で表される。式(10)の示すように抵抗R4と抵抗R2とはそれぞれ分子と分母にあるので、例えば抵抗R4と抵抗R2とを同一半導体チップ上で同じ温度特性を有する材料を用いて製造することにより、抵抗R4と抵抗R2との温度依存性を相殺することができる。
【0086】
ここで、電位差ΔV=V2−V1と温度差ΔT=T2−T1との関係は、式(11)で表される。
【0088】
図5の(C)は、
図5の(A)のバンドギャップ基準電圧に(B)の補正電圧を加えた図である。温度T1〜T2間について、
図5の(A)に示されるように、温度に対してバンドギャップ基準電圧の変動が2次関数的であるのに対し、
図5の(C)に示されるように、線形近似された補正電圧を加算したことにより、温度T1〜T2間について、バンドギャップ基準電圧の変動が減少し、温度依存性が低下する。このときのバンドギャップ基準電圧の変動は、
図5の(A)の波形H1と直線L1との電位差ΔVα程度に制限される。
【0089】
従って、実施の形態1のような構成を取ることにより、高温側のバンドギャップ基準電圧の変動を抑えることができ、温度依存性の極めて小さい基準電圧を生成することができる。
【0090】
[実施の形態2]
(基準電圧発生回路10Aの概要)
実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、実施の形態2の基準電圧発生回路10Aを説明する。
図6は、本発明の実施の形態2の基準電圧発生回路の構成の概要を表わす図である。
図6を参照して、基準電圧発生回路10Aは、BGR回路100Aと、BGR電流生成回路200Aと、線形近似補正電流生成回路300Aと、PTAT電流生成回路400Aとを含む。
【0091】
基準電圧発生回路10Aは、AMP4と、基準電圧出力生成回路110Aをさらに含む。基準電圧出力生成回路110Aは抵抗R4A〜R6Aを含む。
【0092】
図6の示すように、基準電圧発生回路10Aでは、
図2のBGR回路100内に設けられていた基準電圧出力生成回路110を、BGR回路100A外に設けてもよい。すなわち、
図2で示したような基準電圧の出力電圧をBGR回路100内で生成してもよいし、
図6で示したように、BGR回路100A外の基準電圧出力生成回路110Aを用いて基準電圧を生成しても実施の形態1と同様な温度依存性の極めて小さい基準電圧を生成することができる。
【0093】
BGR電流生成回路200Aの端子Vinは、バンドギャップ基準電圧VBGが入力され、電流IBGR_Hが端子Ioutから流入する。電流IBGR_Hの流れる向きは変わるが、動作原理は既に説明したように所定の温度(T1)に達すると所定の電流値(IBGR_H_MAX)にクランプされるように構成され、その電流値(IBGR_H_MAX)の温度依存性はPTAT電流生成回路400に流れ込む電流IPTAT_Hの温度依存性と比較して小さい。
【0094】
一方、PTAT電流生成回路400Aの端子Ioutから、絶対温度に比例する電流IPTAT_Hを線形近似補正電流生成回路300Aに出力する。
【0095】
線形近似補正電流生成回路300Aは、PTAT電流生成回路400Aに流れる電流IPTAT_HがBGR電流生成回路200Aに流れる電流IBGR_Hより大きくなると、基準電圧出力生成回路110Aから端子outに補正電流ICORRECT_Hが流入される。
【0096】
基準電圧出力生成回路110Aは、複数の抵抗R4A〜R6Aを含み、この複数の抵抗R4A〜R6Aは、基準電圧VREFとグランドとの間に直列に接続される。上述した補正電流ICORRECT_Hは、抵抗R4Aと抵抗R5Aとの接続ノードND3Aから流出する。この補正電流は、バンドギャップ基準電圧VBGの温度特性と逆特性を有する。
【0097】
AMP4は、正の入力端子にBGR回路100Aの出力電圧であるバンドギャップ基準電圧VBGが接続される。一方、負の入力端子は、基準電圧出力生成回路110Aの抵抗R5Aと抵抗R6Aとの接続ノードに接続される。AMP4の出力端子は、基準電圧VREFと出力するとともに、基準電圧出力生成回路110Aの抵抗R4Aの一方端に接続される。
【0098】
このような構成を取ることにより、実施の形態1のように基準電圧出力発生回路をBGR回路の内部に設ける必要なく、温度依存性の極めて小さい基準電圧を出力させることができる。
【0099】
(基準電圧発生回路10Aの詳細)
実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、実施の形態2の基準電圧発生回路10Aを説明する。基準電圧発生回路10では、ソース型の線形近似補正電流生成回路300を用いて、補正電流を生成したのに対し、基準電圧発生回路10Aでは、シンク型の線形近似補正電流生成回路300Aを用いて、補正電流を生成する。
【0100】
図7は、実施の形態2の基準電圧発生回路10Aの構成を表わす図である。
図7を参照して、基準電圧発生回路10Aは、BGR回路100Aと、BGR電流生成回路200Aと線形近似補正電流生成回路300Aと、PMOSトランジスタM7と、AMP4と、基準電圧出力生成回路110Aとを含む。なお、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7を合わせてPTAT電流生成回路400Aとも称する。
【0101】
(BGR回路100A)
図7に示すように、BGR回路100Aは、
図3のBGR回路100の構成から、線形近似補正電流生成回路300との接続点であるノードND3を除き、抵抗R3,R4を抵抗R7に置き換えた構成である。具体的には、BGR回路100Aは、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2,R7とを含む。なお、抵抗R7はトリミングにより抵抗値の微調整が可能な可変抵抗を意味するが、可変抵抗で無くても良い。
【0102】
電流源102は、ほぼ同一の大きさの電流I1’および電流I2’を出力する。電流源102は、PMOSトランジスタM8およびM9と、フィードバックを行なうアンプAMP2と、ボルテージフォロアを構成するアンプAMP3とを含む。
【0103】
PMOSトランジスタM8およびM9は、カレントミラー回路を構成する。PMOSトランジスタM8のソースおよびPMOSトランジスタM9のソースは、電源VCCに接続される。PMOSトランジスタM8のドレインは、NPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。PMOSトランジスタM9のドレインは、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子に接続される。
【0104】
アンプAMP2の正の入力端子は、PMOSトランジスタM9のドレインおよびバイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子に接続される。アンプAMP2の負の入力端子は、PMOSトランジスタM8のドレインおよびNPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。アンプAMP2の出力端子は、PMOSトランジスタM8のゲートおよびPMOSトランジスタM9のゲートに接続される。
【0105】
PMOSトランジスタM8とPMOSトランジスタM9のサイズは等しいときは、アンプAMP2によって、電流源102からNPN型バイポーラトランジスタQ1へ送られる電流I1’と、電流源102からバイポーラトランジスタQ2へ送られる電流I2’の大きさがほぼ等しくなる。
【0106】
AMP3の正の入力端子は、PMOSトランジスタM8のドレインおよびNPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。アンプAMP3の出力端子は、ノードND2に接続されるとともに、アンプAMP1の負の入力端子に接続される。
【0107】
NPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ端子は、PMOSトランジスタM8のドレインに接続され、電流I1’が流入される。
【0108】
NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース端子はノードND2に接続され、エミッタ端子はノードND1に接続される。
【0109】
バイポーラトランジスタQ2のコレクタ端子は、PMOSトランジスタM9のドレインに接続され、電流I2’が流入される。なお、電流I1,I2はそれぞれバイポーラトランジスタQ1,Q2のエミッタ電流である。
【0110】
バイポーラトランジスタQ2のベース端子はノードND2に接続され、エミッタ端子は抵抗R2に接続される。
【0111】
抵抗R2の一方の端子は、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ端子に接続され、他方の端子は、ノードND1に接続される。
【0112】
ノードND1とグランドとの間に抵抗R7は接続される。
NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース端子とバイポーラトランジスタQ2のベース端子とが接続されるノードND2は、バンドギャップ基準電圧VBGを出力する。
【0113】
アンプAMP4の正の入力端子は、ノードND2に接続され、バンドギャップ基準電圧VBGが供給される。アンプAMP4の負の入力端子は、抵抗R5Aと抵抗R6Aとの間のノードND4Aに接続される。AMP4の出力端子から基準電圧VREFが出力される。
【0114】
(基準電圧出力生成回路110A)
基準電圧出力生成回路110Aは、抵抗R4A〜R6Aを含む。抵抗R4A〜R6Aは基準電圧VREFとグランドとの間に直列接続される。
【0115】
抵抗R4Aと抵抗R5Aとが接続されているノードND3Aは、後に説明する線形近似補正電流生成回路300Aと接続される。また、抵抗R5Aと抵抗R6Aとが接続されているノードND4Aは、上述したようにAMP4の負の入力端子に接続される。
【0116】
(BGR電流生成回路200A)
BGR電流生成回路200Aは、
図3のBGR電流生成回路200の構成に加えて、さらにカレントミラーを構成するNMOSトランジスタM3A,M4Aをさらに含む。
【0117】
すなわちBGR電流生成回路200Aは、AMP1と、PMOSトランジスタM1,M2と抵抗R1と、NMOSトランジスタM3A,M4Aとを含む。
【0118】
PMOSトランジスタM1,M2のソースは、電源電圧VCCに接続され、ゲートは、AMP1の出力を受ける。
【0119】
PMOSトランジスタM1のドレインは、抵抗R1の一方端に接続されるとともに、AMP1の正の入力端子に接続される。
【0120】
PMOSトランジスタM2のドレインは、NMOSトランジスタM3A,M4Aのゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタM3Aのドレインにも接続する。
【0121】
AMP1の正の入力端子は、PMOSトランジスタM1のドレインおよび抵抗R1の一方端に接続される。AMP1の負の入力端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2のベース端子に接続され、バンドギャップ基準電圧VBGが供給される。アンプAMP1の出力端子は、PMOSトランジスタM1,M2のゲートに接続される。
【0122】
抵抗R1は、PMOSトランジスタM1のドレインとグランドとの間に接続される。
NMOSトランジスタM3Aは、ゲートとドレインが接続され、NMOSトランジスタM4Aのゲートにも接続している。NMOSトランジスタM3A,M4Aのソースは、グランドに接続される。
【0123】
NMOSトランジスタM4Aのドレインは、線形近似補正電流生成回路300AのNMOSトランジスタM5A,M6Aのゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタM5AおよびPMOSトランジスタM7のドレインに接続される。このNMOSトランジスタM4Aのドレインには、線形近似補正電流生成回路300Aを経由して電流IBGR_Hが流れ込む。
【0124】
(線形近似補正電流生成回路300A)
線形近似補正電流生成回路300Aは、
図3の線形近似補正電流生成回路300と比較してトランジスタの極性が変更されたカレントミラー回路を構成している。具体的には、線形近似補正電流生成回路300Aは、NMOSトランジスタM5A,M6Aを含む。
【0125】
NMOSトランジスタM5A,M6AのゲートおよびNMOSトランジスタM5Aのドレインは、BGR電流生成回路200AのNMOSトランジスタM4Aのドレインと接続されるとともにPMOSトランジスタM7のドレインにも接続される。NMOSトランジスタM5A,M6Aのソースは、グランドに接続される。
【0126】
NMOSトランジスタM6Aのドレインは基準電圧出力生成回路110AのノードND3Aに接続され、NMOSトランジスタM6Aのドレインには補正電流ICORRECT_Hが流れ込む。
【0127】
(PTAT電流生成回路400A)
PTAT電流生成回路400Aは、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7とを含む。
【0128】
PMOSトランジスタM7のゲートは、PMOSトランジスタM8,M9のゲートに接続されるとともに、AMP2の出力端子にも接続される。PMOSトランジスタM7のソースは電源電圧VCCに接続され、ドレインは、線形近似補正電流生成回路300AのNMOSトランジスタM5A,M6AのゲートおよびNMOSトランジスタM5Aのドレインに接続されるとともに、BGR電流生成回路200AのNMOSトランジスタM4Aのドレインにも接続される。PTAT電流生成回路400Aの他の構成は、PTAT電流生成回路400と同様な構成のため、ここでは説明を繰返さない。
【0129】
従って、実施の形態2の基準電圧発生回路10Aの構成をとることにより、シンク型の線形近似補正電流生成回路300Aを用いても、高温側の補正電圧を生成でき、温度依存性の極めて小さい基準電圧VREFを出力することができる。
【0130】
なお、基準電圧発生回路10Aの他の構成は、基準電圧発生回路10と同様なため、ここでは説明は繰返さない。
【0131】
[実施の形態3]
実施の形態1および実施の形態2では高温側について補正電圧を生成する方法について説明した。実施の形態3では、低温側についての補正電圧を生成する方法について以下に説明する。
【0132】
(基準電圧発生回路10Bの概要)
図8は、本発明の実施の形態3の基準電圧発生回路10Bの構成の概要を表わす図である。
図2に示した実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、基準電圧発生回路10Bを説明する。
【0133】
図8を参照して、基準電圧発生回路10Bは、BGR回路100と、BGR電流生成回路200Bと、線形近似補正電流生成回路300Bと、PTAT電流生成回路400とを含む。基準電圧発生回路10Bの他の構成については、実施の形態1の基準電圧発生回路10と同様なため、ここでは、説明を繰返さない。
【0134】
BGR電流生成回路200Bの端子Vinは、バンドギャップ基準電圧VBGが入力され、線形近似補正電流生成回路300Bの端子Iin2から低温側の電流IBGR_Lが端子Ioutに入力される。電流IBGR_Lの温度依存性はPTAT電流生成回路400Bからに流れ出る電流IPTAT_Lの温度依存性と比較して小さい。
【0135】
一方、PTAT電流生成回路400Bの端子Ioutから、絶対温度に比例する低温側の電流IPTAT_Lが線形近似補正電流生成回路300Bの端子Iin1に出力される。
【0136】
線形近似補正電流生成回路300Bは、BGR電流生成回路200BおよびPTAT電流生成回路400Bからの電流を比較して、低温側の補正電流ICORRECT_Lが生成され、端子outからBGR回路100へ出力される。この補正電流は、バンドギャップ基準電圧VBGの温度特性と逆特性を有する。
【0137】
基準電圧出力生成回路110は、この補正電流ICORRECT_Lに基づき生じた補正電圧と、バンドギャップ基準電圧とを加算しバンドギャップ基準電圧VBGとして出力する。
【0138】
この構成を取ることにより、高温側のみならず低温側についても補正電流を用いて、温度依存性の極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを出力させることができる。
【0139】
(基準電圧発生回路10Bの詳細)
実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、実施の形態3の基準電圧発生回路10Bを説明する。
【0140】
図9は、実施の形態3の基準電圧発生回路10Bの構成を表わす図である。実施の形態1と異なる部分のみについて説明し、実施の形態1と同様な部分については、同一の符号を付して説明は繰返さない。
図9を参照して、基準電圧発生回路10Bは、基準電圧発生回路10のBGR電流生成回路200に代えて、BGR電流生成回路200Bを含む。
【0141】
(BGR電流生成回路200B)
BGR電流生成回路200Bは、実施の形態1のBGR電流生成回路200の構成に加え、NMOSトランジスタM5B,M6Bをさらに含む。
【0142】
NMOSトランジスタM5B,M6Bはカレントミラーを構成し、NMOSトランジスタM5B,M6Bのソースはグランドに接続される。また、NMOSトランジスタM5B,M6Bのゲートは、NMOSトランジスタM6Bのドレインに接続されるとともに、PMOSトランジスタM2のドレインにも接続される。
【0143】
NMOSトランジスタM6Bのドレインは、線形近似補正電流生成回路300BのPMOSトランジスタM3Bのドレインに接続されるとともに、PMOSトランジスタM3B,M4BのゲートおよびPTAT電流生成回路400BのPMOSトランジスタM7のドレインにも接続される。
【0144】
(線形近似補正電流生成回路300B)
実施の形態1との相違は、低温側で補正電流を発生するようにしている点である。つまり、所定の温度(例えば後述する
図10のT2)に低下するまではBGR電流生成回路のBGR電流IBGR_LはBGR電流生成回路の最大出力電流値(IBGR_L_MAX)と等しくなっている。これは、PMOSトランジスタM7が線形領域で動作し、PMOSトランジスタM3B,M4Bをカットオフしているからである。
【0145】
そして、所定の温度(T2)より更に温度が下がると、PTAP電流生成回路400Bから流れ出る電流IPTAT_LがBGR電流生成回路の最大出力電流値(IBGR_L_MAX)より小さくなるため、PMOSトランジスタM3Bからその差分電流(すなわち、電流IBGR_L_MAXから電流IPTAT_Lを差し引いた電流)が補正電流生成回路300BのPMOSトランジスタM3Bに流れる。PMOSトランジスタM3BとPMOSトランジスタM4Bとはカレントミラー回路を構成しており、PMOSトランジスタM3Bに流れる電流に比例した電流がPMOSトランジスタM4Bから補正電流ICORRECT_Lとして基準電圧出力生成回路110に出力される。
【0146】
(補正電流)
図10は、実施の形態3による基準電圧発生回路10Bの動作を説明するための図である。
図10の(A)は、温度に対して、従来のバンドギャップ基準電圧VBGがどのように変化していたかを示す図である。
図10の(A)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形H2は、バンドギャップ基準電圧VBGの2次特性を示す。直線L2は、任意の温度T1,T2に対して、波形H2を線形近似した直線を示す。バンドギャップ基準電圧VBGは、温度に応じて、図示はしないが数mVの範囲で変化する。ここで、T1=−40℃、T2=0℃程度に設定することが好ましい。
【0147】
本発明の実施の形態3では、低温側の数mVの範囲での変化をなくすことによって、高精度なバンドギャップ基準電圧VBGを生成することを目的としている。
【0148】
図10の(B)は、バンドギャップ基準電圧VBGが温度依存性を小さくするために必要な補正電圧を示す図である。
【0149】
図10の(B)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形C2は、温度T1〜T2に対して上述した波形H2を線形近似した直線L2の電圧に基づいて生成された補正電圧を示す。
【0150】
図10の(C)は、
図10の(A)のバンドギャップ基準電圧に
図10の(B)の補正電圧を加えた図である。温度T1〜T2間について、
図10の(A)に示されるように、従来、温度に対してバンドギャップ基準電圧の変動が2次関数的であるのに対し、
図10の(C)に示されるように、補正電圧を加算したことにより、温度T1〜T2間について、バンドギャップ基準電圧の変動が減少し、温度依存性が低下する。このときのバンドギャップ基準電圧の変動は、
図10の(A)の波形H2と直線L2との電位差ΔVα程度に制限される。
【0151】
従って、実施の形態3のような構成を取ることにより、低温側のバンドギャップ基準電圧の変動を抑えることができ、温度依存性の極めて小さい基準電圧を生成することができる。
【0152】
なお、補正電圧の生成の方法は、実施の形態1と同様なため、ここでは説明は繰返さない。
【0153】
[実施の形態4]
実施の形態1および実施の形態2では高温側について補正電圧を生成する方法について説明した。実施の形態4では、高温側についての複数の補正電圧をさらに高精度に生成する方法について以下に説明する。
【0154】
(基準電圧発生回路10Cの概要)
図11は、本発明の実施の形態4の基準電圧発生回路10Cの構成の概要を表わす図である。
図2に示した実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、基準電圧発生回路10Cを説明する。ここで温度T1から温度T2までと温度T2から温度T3までの2つの温度領域で補正電圧を生成し、温度依存性の極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを生成するための構成について説明する。
【0155】
図11を参照して、基準電圧発生回路10Cは、BGR回路100Cと、BGR電流生成回路200Cと、線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2と、PTAT電流生成回路400Cとを含む。BGR回路100Cは、基準電圧出力生成回路110Cを含む。基準電圧出力生成回路110Cは抵抗R3〜R5を含む。
【0156】
BGR電流生成回路200Cは、バンドギャップ基準電圧VBGが端子Vinに入力され、高温側の電流IBGR_H1,IBGR_H2を生成する。この電流IBGR_H1,IBGR_H2はそれぞれ、端子Iout1,Iout2から線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2に出力される。電流IBGR_H1は後述するように所定の温度(例えば
図13のT1)に達すると所定の電流値(IBGR_H1_MAX)にクランプされるように構成され、その電流値(IBGR_H1_MAX)の温度依存性はPTAT電流生成回路400Cに流れ込む電流IPTAT_H1の温度依存性と比較して小さい。また、電流IBGR_H2は後述するように所定の温度(例えば
図13のT2)に達すると所定の電流値(IBGR_H2_MAX)にクランプされるように構成され、その電流値(IBGR_H2_MAX)の温度依存性はPTAT電流生成回路400Cに流れ込む電流IPTAT_H2の温度依存性と比較して小さい。
【0157】
一方、線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2の各端子Iin2はそれぞれ絶対温度に比例する電流IPTAT_H1,IPTAT_H2をPTAT電流生成回路400Cに出力する。
【0158】
線形近似補正電流生成回路300C_1は、BGR電流生成回路200CおよびPTAT電流生成回路400Cからの電流を比較して、高温側の補正電流ICORRECT_H1が生成され、端子outからBGR回路100Cへ出力される。
【0159】
線形近似補正電流生成回路300C_2は、BGR電流生成回路200CおよびPTAT電流生成回路400Cからの電流を比較して、高温側の補正電流ICORRECT_H2が生成され、端子outからBGR回路100Cへ出力される。
【0160】
基準電圧出力生成回路110Cは、この補正電流ICORRECT_H1,ICORRECT_H2に基づき生じた補正電圧と、バンドギャップ基準電圧とを加算しバンドギャップ基準電圧VBGとして出力する。
【0161】
基準電圧出力生成回路110Cは、抵抗R3〜R5を含み、この複数の抵抗R3〜R5は、バンドギャップ基準電圧VBGとグランドとの間に直列に接続される。上述した補正電流ICORRECT_H1は、抵抗R3と抵抗R4との接続ノードに接続される。上述した補正電流ICORRECT_H2は、抵抗R4と抵抗R5との接続ノードに接続される。
【0162】
この構成を取ることにより、高温側において、複数の補正電圧を用いて、高精度な温度依存性の極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを出力させることができる。
【0163】
(基準電圧発生回路10Cの詳細)
実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、実施の形態4の基準電圧発生回路10Cを説明する。
【0164】
図12は、実施の形態4の基準電圧発生回路10Cの構成を表わす図である。実施の形態1と異なる部分のみについて説明し、実施の形態1と同様な部分については、同一の符号を付して説明は繰返さない。
【0165】
図12を参照して、基準電圧発生回路10Cは、BGR回路100Cと、BGR電流生成回路200Cと、線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2と、PMOSトランジスタM7と、NMOSトランジスタM10C〜M12Cとを含む。ここで、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7と、NMOSトランジスタM10C〜M12Cとを合わせてPTAT電流生成回路400Cとも称する。
【0166】
(BGR回路100C)
図12に示すように、BGR回路100Cは、電流源102と、基準電圧出力生成回路110Cとを含む。
【0167】
基準電圧出力生成回路110Cは、NPN型バイポーラトランジスタQ1およびQ2と、抵抗R2〜R5を含む。
【0168】
抵抗R3〜R5は直列に接続され、ノードND1とグランドとの間に設けられる。抵抗R3と抵抗R4とが接続されたノードND3は、線形近似補正電流生成回路300C_1のPMOSトランジスタM6Cのドレインに接続される。
【0169】
また、抵抗R4と抵抗R5とが接続されたノードND4は、線形近似補正電流生成回路300C_2のPMOSトランジスタM4Cのドレインに接続される。なお、PMOSトランジスタM6CのドレインがノードND4に接続され、PMOSトランジスタM4CのドレインがノードND3に接続されても良いし、PMOSトランジスタM4CとM6Cのドレインが共にND3もしくはND4に接続されても良い。
【0170】
(BGR電流生成回路200C)
BGR電流生成回路200Cは、BGR電流生成回路200の構成に加えて、PMOSトランジスタM13Cをさらに含む。
【0171】
PMOSトランジスタM1,M2、M13Cのソースは、電源電圧VCCに接続され、ゲートは、AMP1の出力を受ける。
【0172】
PMOSトランジスタM1のドレインは、抵抗R1の一方端に接続されるとともに、AMP1の正の入力端子に接続される。
【0173】
PMOSトランジスタM2のドレインは、線形近似補正電流生成回路300C_2のPMOSトランジスタM3C,M4Cのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM3CのドレインおよびPTAT電流生成回路400CのNMOSトランジスタM10Cのドレインに接続される。
【0174】
PMOSトランジスタM3Cのドレインは、線形近似補正電流生成回路300C_1のPMOSトランジスタM5C,M6Cのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM5CのドレインおよびPTAT電流生成回路400CのNMOSトランジスタM11Cのドレインに接続される。
【0175】
AMP1の正の入力端子は、PMOSトランジスタM1のドレインおよび抵抗R1の一方端に接続される。AMP1の負の入力端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2のベース端子に接続される。アンプAMP3の出力端子は、PMOSトランジスタM1,M2のゲートに接続される。
【0176】
抵抗R1は、PMOSトランジスタM1のドレインとグランドとの間に接続される。
(線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2)
線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2は、実施の形態1の線形近似補正電流生成回路300の構成と同一かつソース型であり、接続関係が異なる。すなわち、線形近似補正電流生成回路300C_2のPMOSトランジスタM3C,M4Cのゲートには、BGR電流生成回路200CのPMOSトランジスタM2のドレインが接続される。また、線形近似補正電流生成回路300C_1のPMOSトランジスタM5C,M6Cのゲートには、BGR電流生成回路200CのPMOSトランジスタM3Cのドレインが接続される。
【0177】
線形近似補正電流生成回路300C_1,300C_2のPMOSトランジスタM4C,M6Cのドレインは、基準電圧出力生成回路110CのノードND3、ND4にそれぞれ接続される。
【0178】
(PTAT電流生成回路400C)
PTAT電流生成回路400は、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7と、NMOSトランジスタM10C〜M12Cとを含む。
【0179】
PMOSトランジスタM7〜M9およびNMOSトランジスタM10C〜M12Cは、それぞれカレントミラー回路を構成する。
【0180】
具体的には、PMOSトランジスタM7〜M9のソースは電源電圧VCCが供給され、ゲートは、AMP2の出力端子に接続される。PMOSトランジスタM7のドレインは、NMOSトランジスタM10C〜M12Cのゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタM12Cのドレインにも接続される。
【0181】
一方、NMOSトランジスタM10C〜M12Cのソースはグランドに接続され、ゲートは、PMOSトランジスタM7のドレインに接続されるとともに、NMOSトランジスタM12Cのドレインにも接続される。
【0182】
NMOSトランジスタM10Cのドレインは、線形近似補正電流生成回路300C_2のPMOSトランジスタM3C,M4Cのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM3Cのドレインにも接続される。さらに、NMOSトランジスタM10Cのドレインは、BGR電流生成回路200CのPMOSトランジスタM2のドレインにも接続される。
【0183】
NMOSトランジスタM11Cのドレインは、線形近似補正電流生成回路300C_1のPMOSトランジスタM5C,M6Cのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM5Cのドレインにも接続される。さらに、NMOSトランジスタM11Cのドレインは、BGR電流生成回路200CのPMOSトランジスタM13Cのドレインにも接続される。
【0184】
NMOSトランジスタM12Cのドレインは、NMOSトランジスタM10C〜12Cのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM7のドレインにも接続される。
【0185】
(補正電流)
図13は、実施の形態4による基準電圧発生回路10Cの動作を説明するための図である。
図13の(A)は、温度に対して、従来のバンドギャップ基準電圧VBGがどのように変化していたかを示す図である。
図13の(A)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形H3は、バンドギャップ基準電圧VBGの2次特性を示す。直線L31,L32は、温度T1〜T2および温度T2〜T3に対して、波形H3を線形近似した直線をそれぞれ示す。なお、バンドギャップ電圧の変動を効率的に抑えるためにT1=60℃,T2=100℃,T3=140℃程度に設定することが好ましい。
【0186】
本発明の実施の形態4は、実施の形態1と比較して、バンドギャップ基準電圧を同様に高温側の数mVの範囲での変化をなくすことによって、高精度なバンドギャップ基準電圧VBGを生成することを目的としている。
【0187】
図13の(B)は、バンドギャップ基準電圧VBGが温度によって変化しないようにするために必要な補正電圧を示す図である。
【0188】
図13の(B)の示すように、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形C31は、温度T1〜T2に対して上述した波形H3を線形近似した直線L31の電圧に基づいて生成された補正電圧を示す。また、波形C32は、温度T2〜T3に対して上述した波形H3を線形近似した直線L32の電圧に基づいて生成された形式的な補正電圧を示す。波形C33は、温度T2〜T3の間の実質的な補正電圧を示す。この波形C33は、波形C32に示された補正電圧に、波形C31が仮にT2〜T3の補正を行った場合の補正電圧を加算した値をとる。
【0189】
図13の(C)は、
図13の(A)のバンドギャップ基準電圧に
図13の(B)の補正電圧を加えた図である。温度T1〜T2間および温度T2〜T3間について、
図13の(A)に示されるように、従来、温度に対してバンドギャップ基準電圧の変動が2次関数的であるのに対し、
図13の(C)に示されるように、補正電圧を加算したことにより、温度T1〜T2間および温度T2〜T3間について、バンドギャップ基準電圧の変動が減少し、温度依存性が極めて小さくなる。
【0190】
従って、実施の形態4のような構成を取ることにより、高温側のバンドギャップ基準電圧の変動を抑えることができ、温度依存性の極めて小さい基準電圧を生成することができる。
【0191】
なお、補正電圧の生成の方法は、実施の形態1と同様なため、ここでは説明は繰返さない。
【0192】
[実施の形態5]
(基準電圧発生回路10Dの概要)
図14は、本発明の実施の形態5の基準電圧発生回路10Dの構成の概要を表わす図である。実施の形態5の基準電圧発生回路10Dは、実施の形態1の基準電圧発生回路10および実施の形態3の基準電圧発生回路10Bの共通部分を共有して組合せた実施の形態であり、実施の形態1および3と比較しつつ、基準電圧発生回路10Dを説明する。
【0193】
実施の形態5の基準電圧発生回路10Dは、バンドギャップ基準電圧VBGの高温側、低温側についてそれぞれ補正電圧を用いて、温度依存性の極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを生成する。ここで低温側として温度T1から温度T2までを補正し、高温側を温度T3から温度T4までを補正し、温度依存性の少ないバンドギャップ基準電圧VBGを生成するための構成について説明する。
【0194】
図14を参照して、基準電圧発生回路10Dは、BGR回路100Dと、BGR電流生成回路200Dと、線形近似補正電流生成回路300D_1,300D_2と、PTAT電流生成回路400Dとを含む。BGR回路100Dは、基準電圧出力生成回路110Dを含む。基準電圧出力生成回路110Dは抵抗R3〜R5を含む。
【0195】
BGR電流生成回路200Dは、バンドギャップ基準電圧VBGが端子Vinに入力され、高温側の電流IBGR_Hと低温側の電流IBGR_Lとを生成する。この電流IBGR_H,IBGR_Lはそれぞれ、端子Iout1,Iout2から線形近似補正電流生成回路300D_1,300D_2に出力される。
【0196】
一方、線形近似補正電流生成回路300D_1の端子Iin2は絶対温度に比例する電流IPTAT_HをPTAT電流生成回路400Dに出力する。線形近似補正電流生成回路300D_2の端子Iin1は絶対温度に比例する低温側の電流IPTAT_LをPTAT電流生成回路400Dから入力される。
【0197】
線形近似補正電流生成回路300D_1は、BGR電流生成回路200DおよびPTAT電流生成回路400Dからの電流を比較して、高温側の補正電流ICORRECT_Hが生成され、端子outからBGR回路100Dへ出力される。
【0198】
線形近似補正電流生成回路300D_2は、BGR電流生成回路200DおよびPTAT電流生成回路400Dからの電流を比較して、低温側の補正電流ICORRECT_Lが生成され、端子outからBGR回路100Dへ出力される。
【0199】
基準電圧出力生成回路110Dは、これらの補正電流ICORRECT_H,ICORRECT_Lに基づき生じた補正電圧と、バンドギャップ基準電圧とを加算しバンドギャップ基準電圧VBGとして出力する。
【0200】
基準電圧出力生成回路110Dは、抵抗R3〜R5を含み、この複数の抵抗R3〜R5は、バンドギャップ基準電圧VBGとグランドとの間に直列に接続される。上述した補正電流ICORRECT_Hは、抵抗R3と抵抗R4との接続ノードに接続される。上述した補正電流ICORRECT_Lは、抵抗R4と抵抗R5との接続ノードに接続される。
【0201】
この構成を取ることにより、高温側、低温側ともに補正電圧を用いて、高精度な温度依存性の極めて小さいバンドギャップ基準電圧VBGを出力させることができる。
【0202】
(基準電圧発生回路10Dの詳細)
実施の形態1の基準電圧発生回路10と比較しつつ、実施の形態5の基準電圧発生回路10Dを説明する。
【0203】
図15は、実施の形態5の基準電圧発生回路10Dの構成を表わす図である。実施の形態1の基準電圧発生回路10と異なる部分のみについて説明し、実施の形態1の基準電圧発生回路10と同様な部分については、同一の符号を付して説明は繰返さない。
【0204】
図15を参照して、基準電圧発生回路10Dは、BGR回路100Dと、BGR電流生成回路200Dと、線形近似補正電流生成回路300D_1,300D_2と、PMOSトランジスタM7、M15Dと、NMOSトランジスタM13D、M14Dとを含む。ここで、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7、M15Dと、NMOSトランジスタM13D、M14Dとを合わせてPTAT電流生成回路400Dとも称する。
【0205】
(BGR回路100D)
図15に示すように、BGR回路100Dは、電流源102と、基準電圧出力生成回路110Dとを含む。
【0206】
基準電圧出力生成回路110Dは、NPN型バイポーラトランジスタQ1およびQ2と、抵抗R2〜R5を含む。
【0207】
抵抗R3〜R5は直列に接続され、ノードND1とグランドとの間に設けられる。抵抗R4と抵抗R5とが接続されたノードND4は、線形近似補正電流生成回路300D_2のPMOSトランジスタM6Dのドレインに接続される。
【0208】
また、抵抗R3と抵抗R4とが接続されたノードND3は、線形近似補正電流生成回路300D_1のPMOSトランジスタM4Dのドレインに接続される。なお、高温側および低温側の補償電流を流し始める温度設定により、PMOSトランジスタM6DのドレインがノードND3に接続され、PMOSトランジスタM4DのドレインがノードND4に接続されても良いし、PMOSトランジスタM4DとM6Dのドレインが共にND3もしくはND4に接続されても良い。
【0209】
(BGR電流生成回路200D)
BGR電流生成回路200Dは、BGR電流生成回路200の構成に加えて、PMOSトランジスタM12、NMOSトランジスタM10,M11をさらに含む。PMOSトランジスタM12は実施の形態1(
図3)のPMOSトランジスタM2に相当し、NMOSトランジスタM10,M11はそれぞれ実施の形態3(
図9)のNMOSトランジスタM5B,M6Bに相当する。
【0210】
PMOSトランジスタM1,M2、M12のソースは、電源電圧VCCに接続され、ゲートは、AMP1の出力を受ける。
【0211】
PMOSトランジスタM1のドレインは、抵抗R1の一方端に接続されるとともに、AMP1の正の入力端子に接続される。
【0212】
PMOSトランジスタM2のドレインは、NMOSトランジスタM10のドレインに接続されるとともに、NMOSトランジスタM10、M11のゲートにも接続される。
【0213】
PMOSトランジスタM12のドレインは、線形近似補正電流生成回路300D_1のPMOSトランジスタM3D,M4Dのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM3DのドレインおよびPTAT電流生成回路400DのNMOSトランジスタM13Dのドレインに接続される。
【0214】
AMP1の正の入力端子は、PMOSトランジスタM1のドレインおよび抵抗R1の一方端に接続される。AMP1の負の入力端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2のベース端子に接続される。アンプAMP1の出力端子は、PMOSトランジスタM1,M2,M12のゲートに接続される。
【0215】
抵抗R1は、PMOSトランジスタM1のドレインとグランドとの間に接続される。
NMOSトランジスタM10、M11のゲートは、PMOSトランジスタM2のドレインに接続されるとともに、NMOSトランジスタM10のドレインにも接続される。NMOSトランジスタM10,M11のソースはグランドに接続される。NMOSトランジスタM11のドレインは、線形近似補正電流生成回路300D_2のPMOSトランジスタM5Dのドレインに接続されるとともにPMOSトランジスタM5D,M6Dのゲートにも接続される。
【0216】
(線形近似補正電流生成回路300D_1,300D_2)
線形近似補正電流生成回路300D_1,300D_2は、それぞれ実施の形態1(
図3)の線形近似補正電流生成回路300と実施の形態3(
図9)の線形近似補正電流生成回路300Bの構成に相当する。
【0217】
具体的には、線形近似補正電流生成回路300D_1のPMOSトランジスタM3D,M4Dのゲートは、BGR電流生成回路200DのPMOSトランジスタM12のドレインが接続されるとともに、PMOSトランジスタM3Dのドレインも接続される。
【0218】
また、線形近似補正電流生成回路300D_2のPMOSトランジスタM5D,M6Dのゲートは、BGR電流生成回路200DのNMOSトランジスタM11のドレインと接続されるとともに、PMOSトランジスタM5Dのドレインにも接続され、また、IPTAT電流生成回路400DのPMOSトランジスタM15Dのドレインにも接続される。また、PMOSトランジスタM3D〜M6Dのソースは電源電圧VCCに接続される。
【0219】
線形近似補正電流生成回路300D_1のPMOSトランジスタM4Dのドレインは、基準電圧出力生成回路110DのノードND3に接続され、高温側のバンドギャップ基準電圧VBGが補正される。
【0220】
一方、線形近似補正電流生成回路300D_2のPMOSトランジスタM6Dのドレインは、基準電圧出力生成回路110DのノードND4に接続され、低温側のバンドギャップ基準電圧VBGが補正される。
【0221】
(PTAT電流生成回路400D)
PTAT電流生成回路400Dは、電流源102と、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2と、抵抗R2と、PMOSトランジスタM7,M15Dと、NMOSトランジスタM13D,M14Dとを含む。PMOSトランジスタM15Dは実施の形態3(
図9)のPMOSトランジスタM7に相当し、NMOSトランジスタM13D,M14Dは実施の形態1(
図3)のNMOSトランジスタM5,M6に相当する。
【0222】
PMOSトランジスタM7〜M9、M15DおよびNMOSトランジスタM13D,M14Dは、それぞれカレントミラー回路を構成する。
【0223】
具体的には、PMOSトランジスタM7〜M9、M15Dのソースは電源電圧VCCが供給され、ゲートは、AMP2の出力端子に接続される。PMOSトランジスタM7のドレインは、NMOSトランジスタM13D,M14Dのゲートに接続されるとともに、NMOSトランジスタM14Dのドレインにも接続される。PMOSトランジスタM15Dのドレインは、PMOSトランジスタM5D,M6Dのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM5DのドレインおよびNMOSトランジスタM11のドレインにも接続される。
【0224】
一方、NMOSトランジスタM13D,M14Dのソースはグランドに接続され、これらのゲートは、PMOSトランジスタM7のドレインに接続されるとともに、NMOSトランジスタM14Dのドレインにも接続される。
【0225】
NMOSトランジスタM13Dのドレインは、線形近似補正電流生成回路300D_1のPMOSトランジスタM3D,M4Dのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM3Dのドレインにも接続される。さらに、NMOSトランジスタM13Dのドレインは、BGR電流生成回路200DのPMOSトランジスタM12のドレインにも接続される。
【0226】
NMOSトランジスタM14Dのドレインは、NMOSトランジスタM13D〜14Dのゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM7のドレインにも接続される。
【0227】
(補正電流)
図16は、実施の形態5の基準電圧発生回路10Dによるバンドギャップ基準電圧VBGの結果を示すための図である。
図16を参照して、縦軸に電圧[V]が示され、横軸に温度が示される。また、波形H4は、バンドギャップ基準電圧VBGの2次特性を示す。波形H41は、温度T1〜T2および温度T3〜T4に対して、補正電圧により補正されたバンドギャップ基準電圧VBGの2次特性を示す。
【0228】
図16の示すように、補正前のバンドギャップ基準電圧VBGを示す波形H4の温度依存性に比較して、補正後のバンドギャップ基準電圧VBGを示す波形H41の温度依存性は高温側、低温側ともに小さくなる。
【0229】
[実施の形態6]
(ベース電流補償回路)
図17は、実施の形態6の基準電圧発生回路10Eの主要な回路を説明するための図である。実施の形態5の基準電圧発生回路10Dと比較しつつ、基準電圧発生回路10Eを説明する。
【0230】
図17を参照して、基準電圧発生回路10Eは、実施の形態5の基準電圧発生回路10Dの構成に加えて、PMOSトランジスタM16,M17と、NMOSトランジスタM15と、バイポーラトランジスタQ3と、AMP5とをさらに含む。なお、PMOSトランジスタM7Eと、バイポーラトランジスタQ3と、AMP5と、NMOSトランジスタM17とを合わせてベース電流補償回路500とも称する。
【0231】
ここで、基準電圧発生回路10EのPMOSトランジスタM16,M17とはカレントミラーを構成し、PMOSトランジスタM16,M17のゲートは、NMOSトランジスタM14のドレインに接続されるとともに、PMOSトランジスタM17のドレインにも接続される。またPMOSトランジスタM16,M17のソースは、電源電圧VCCに接続される。尚、PMOSトランジスタM16は実施の形態5(
図15)のPMOSトランジスタM15Dに相当する。
【0232】
NMOSトランジスタM14のゲートは、NMOSトランジスタM13のゲートに接続されるとともに、ベース電流補償回路500のNMOSトランジスタM15のゲートおよびAMP5の出力端子に接続される。
【0233】
NMOSトランジスタM14のソースはグランドに接続され、ドレインは、PMOSトランジスタM16,M17のゲートおよびPMOSトランジスタM17のドレインに接続される。
【0234】
ベース電流補償回路500において、PMOSトランジスタM7EのゲートはPMOSトランジスタM8,M9のゲートに接続されるとともに、AMP2の出力端子にも接続される。また、PMOSトランジスタM7Eのソースは、電源電圧VCCに接続される。PMOSトランジスタM7Eのドレインは、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ端子に接続されるとともに、AMP5の正の入力端子にも接続される。
【0235】
バイポーラトランジスタQ3のベース端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1,Q2のベース端子に接続されるとともに、AMP1の負の入力端子にも接続される。また、バイポーラトランジスタQ3のベース端子には、バンドギャップ基準電圧VBGが供給される。また、バイポーラトランジスタQ3のエミッタ端子には、NMOSトランジスタM15のドレインが接続される。
【0236】
AMP5の正の入力端子には、PMOSトランジスタM7Eのドレインと接続されるとともにバイポーラトランジスタQ3のコレクタ端子が接続される。AMP5の負の入力端子は、NPN型バイポーラトランジスタQ1〜Q3のベース端子に接続されるとともに、AMP1の負の入力端子に接続される。AMP5の負の入力端子には、バンドギャップ基準電圧VBGが供給される。AMP5の出力端子は、NMOSトランジスタM13,M14,M15のゲートに接続される。尚、NMOSトランジスタM13は実施の形態5(
図15)のNMOSトランジスタM13Dに相当する。
【0237】
NMOSトランジスタM15のゲートは、AMP5の出力端子が接続されるとともに、NMOSトランジスタM13,M14のゲートにも接続される。NMOSトランジスタM15のドレインは、バイポーラトランジスタQ3のエミッタ端子と接続され、NMOSトランジスタM15のソースは、グランドに接続される。
【0238】
抵抗R3〜R5は直列に接続され、ノードND1とグランドとの間に設けられる。抵抗R4と抵抗R5とが接続されたノードND4は、線形近似補正電流生成回路のPMOSトランジスタM6Dのドレインに接続される。
【0239】
また、抵抗R3と抵抗R4とが接続されたノードND3は線形近似補正電流生成回路のPMOSトランジスタM4Dのドレインに接続される。なお、高温側および低温側の補償電流を流し始める温度設定により、PMOSトランジスタM6DのドレインがノードND3に接続され、PMOSトランジスタM4DのドレインがノードND4に接続されても良いし、PMOSトランジスタM4DとM6Dのドレインが共にND3もしくはND4に接続されても良い。
【0240】
ベース電流補償回路500によりバイポーラトランジスタQ2のベース電流の影響がトランジスタのQ3より相殺される説明を行なう。NMOSトランジスタM15に流れる電流はバイポーラトランジスタQ3を介して流れるため、(式)12に示されるようにバイポーラトランジスタQ3の電流増幅率β
Q3の影響を受ける。
【0242】
ここで、aはPMOSトランジスタM7E,M8,M9が構成するカレントミラーのM7EとM9のカレントミラー比を示し、β
Q3は、バイポーラトランジスタQ3の電流増幅率、電流I2’はバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流I2’を示す。
【0243】
式(12)の電流I2’に式(4)および式(5)を代入することにより式(13)が導かれる。式(13)に示すように、バイポーラトランジスタQ2の電流増幅率の影響を示す(β
Q2/(1+β
Q2))にバイポーラトランジスタQ3の電流増幅率の影響を示す(β
Q2/(1+β
Q2))の逆数が乗じられる。バイポーラトランジスタQ2とQ3は同一半導体チップ上で製造されるので、バイポーラトランジスタQ2とQ3の電流増幅率はほぼ等しいとみなせるので、バイポーラトランジスタQ2の電流増幅率の影響は相殺される。
【0245】
ここで、β
Q2は、バイポーラトランジスタQ2の電流増幅率を示す。
式(13)の示すように、このバイポーラトランジスタQ3のベース電流を加えることで、電流増幅率が小さい場合にも、プロセスの影響を受けにくい高精度な温度補正が可能となる。なお、本実施の形態6は、他の実施の形態とも組合せて使用してもよい。
【0246】
最後に、再び
図1等を参照して本実施の形態について総括する。
本実施の形態1〜5は、
図3、
図7、
図9、
図12、
図15に示されるように、バンドギャップ基準電圧を生成するBGR回路100,100A,100C,100Dと、バンドギャップ基準電圧に応じてバンドギャップ電流を生成するBGR電流生成回路200,200A〜200Dと、絶対温度に比例する電流を生成するPTAT電流生成回路400,400A〜400Dと、PTAT電流生成回路から生成される電流とバンドギャップ電流を比較して補正電流を生成する線形近似補正電流生成回路300,300A,300B,300C_1,300C_2,300D_1,300D_2とを備え、バンドギャップリファレンス回路は、補正電流に基づき生じた補正電圧を加算したバンドギャップ基準電圧を出力する。
【0247】
好ましくは、
図5に示すように、線形近似補正電流生成回路300は、PTAT電流生成回路400から生成される電流がバンドギャップ電流より大きいときに補正電流を生成する。
【0248】
好ましくは、
図10に示すように、線形近似補正電流生成回路300Aは、PTAT電流生成回路400Aから生成される電流がバンドギャップ電流より小さいときに補正電流を生成する。
【0249】
本実施の形態1、3〜5は、
図3、
図9、
図12、
図15に示されるように、バンドギャップ基準電圧を生成するBGR回路100,100C,100Dと、バンドギャップ基準電圧に応じてバンドギャップ電流を生成するBGR電流生成回路200,200B〜200Dと、絶対温度に比例する電流を生成するPTAT電流生成回路400,400B〜400Dと、PTAT電流生成回路から生成される電流がバンドギャップ電流より大きいときに補正電流を生成する線形近似補正電流生成回路300,300B,300C_1,300C_2,300D_1,300D_2とを備え、BGR回路は、補正電流に基づき生じた補正電圧を加算することにより、温度依存性のきわめて小さい補正されたバンドギャップ基準電圧VBGを出力する。
【0250】
好ましくは、BGR回路100,100C,100Dは、基準電圧出力生成回路110,110C,110Dを含み、基準電圧出力生成回路110,110C,110Dは、複数の抵抗R2〜R5を有し、複数の抵抗は直列接続され、補正回路の出力は、各抵抗間の複数の接続ノードのうちの1つと接続され、補正電圧を生成する。
【0251】
また、好ましくは、本実施の形態4は、
図12に示されるように、線形近似補正電流生成回路は複数あり、線形近似補正電流生成回路のうちの第1の線形近似補正電流生成回路(300C_1)は、第1の温度から第2の温度までのBGR回路の出力電圧である第1の出力電圧に対して補正を行い、第1の補正電流を出力し、補正回路のうちの第2の線形近似補正電流生成回路(300C_2)は、第2の温度から第3の温度までのBGR回路の出力電圧である第2の出力電圧に対して補正を行い、第2の補正電流を出力し、BGR回路100Cは、第1の温度から第2の温度については、第1の補正電流に基づき生じた第1の補正電圧を第1の出力電圧に加算し、補正された第1のバンドギャップ基準電圧を出力し、BGR回路100Cは、第2の温度から第3の温度については、第2の補正電流に基づき生じた第2の補正電圧に第1の補正電圧を加算した電圧を第2のバンドギャップ基準電圧に加算し、補正された第2の出力電圧を出力する。
【0252】
また、本実施の形態2は、
図7に示されるように、基準電圧発生回路であって、バンドギャップ基準電圧を生成するBGR回路100Aと、バンドギャップ基準電圧に応じてバンドギャップ電流を生成するBGR電流生成回路200Aと、絶対温度に比例する電流を生成するPTAT電流生成回路400Aと、バンドギャップ電流とPTAT電流生成回路から生成される電流とに基づいて、補正電流を生成する線形近似補正電流生成回路300Aと、バンドギャップ基準電圧を生成する基準電圧出力生成回路110Aと、BGR回路の出力と、基準電圧出力生成回路の出力との電圧を比較して温度依存性の極めて小さい補正された基準電圧VREFを出力するAMP4とを備え、AMP4の正の入力端子には、BGR回路の出力が接続され、負の入力端子には、基準電圧出力生成回路の出力が接続される。
【0253】
好ましくは、基準電圧出力生成回路110Aは、複数の抵抗R4〜R6を含み、複数の抵抗R4〜R6は直列接続され、線形近似補正電流生成回路300Aの出力は、各抵抗間の複数の接続ノードのうちの1つと接続される。
【0254】
さらに好ましくは、線形近似補正電流生成回路300、300B、300C_1,300_2、300D_1,300D_2は、
図3、
図9、
図12、
図15に示されるように、複数のPMOSトランジスタにより構成されるカレントミラー回路を含む。
【0255】
さらに好ましくは、線形近似補正電流生成回路300Aは、
図7に示されるように、複数のNMOSトランジスタにより構成されるカレントミラー回路を含む。
【0256】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。