(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5879142
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】気液分離器
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
F25B43/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-24843(P2012-24843)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-160481(P2013-160481A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−228850(JP,A)
【文献】
特開2008−032269(JP,A)
【文献】
米国特許第6311514(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した筒状の胴体と、
前記胴体の前記開口端を封止し、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設され、平面状の内面を有するヘッダと、
前記胴体の底部側に開口するカップ状に形成され、前記ヘッダの内面に対向する面が該ヘッダの内面に対して平行となるように配置され、前記ヘッダの前記冷媒流入孔から流入する冷媒を気液分離する気液分離部材とを備え、
前記ヘッダの前記冷媒流入孔から流入する冷媒を気液分離し、分離されたガス冷媒を前記胴体の底部に貯留されたオイルと共に前記冷媒流出孔に導く気液分離器において、
前記気液分離部材は、前記ヘッダに対向する面にリブを有し、
前記ヘッダは、前記気液分離部材に対向する面に前記リブと対応する溝部又は凸部を有し、
前記溝部又は凸部と前記リブとが互いに嵌合されることを特徴とする気液分離器。
【請求項2】
前記リブの一部が前記冷媒流入孔に対向するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に関し、特に、冷凍サイクルを循環する冷媒等を気液分離して貯留する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記気液分離器の一例として、
図3に示すように、有底筒状の胴体22と、この胴体22の上部開口端を封止するヘッダ23と、胴体22の内部に配置される筒状の冷媒吐出管25と、冷媒吐出管25を囲繞する冷媒吸込管24と、冷媒吸込管24の下端部に形成されたオイル戻し穴24aを囲繞するように胴体22の底面22a上に配置されるストレーナ26と、下方に開口するカップ状の気液分離部材27とを備える気液分離器21が用いられている。
【0003】
上記気液分離器21において、蒸発器等からヘッダ23の冷媒流入孔23aを介して胴体22の内部に流入する冷媒は、気液分離部材27によって気液分離され、分離された液冷媒、及び冷媒中に含まれているコンプレッサオイル(圧縮機用の潤滑油、以下「オイル」という)は、そのまま直進下降して胴体22の内部に貯留される。その後、液冷媒Lとオイルとの分離が進み、オイルは液冷媒Lの下方に溜まる。
【0004】
一方、ガス冷媒は、胴体22の内部の液冷媒Lに合流する前に上方へ移動し、冷媒吸込管24の上部開口から冷媒吸込管24の内部に進入し、冷媒吸込管24の内周面と冷媒吐出管25の外周面との間を下降した後、一旦冷媒吸込管24の下端部に達し、オイル戻し穴24aから液冷媒Lの下方に溜まったオイルを吸引しながら上方へ折り返して冷媒吐出管25の内部を上昇し、ヘッダ23の冷媒流出孔23bからオイルを含んだガス冷媒が排出され、圧縮機へ戻される。また、冷媒に含まれている異物は、上記液冷媒と同様のルートにて胴体22の底部に達し、ストレーナ26によって捉えられ、圧縮機への異物の侵入を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の気液分離器21においては、冷媒流入孔23aから流入する冷媒を気液分離する際に、流入する冷媒が気液分離部材27に当たるため、冷媒の圧力によって気液分離部材27が変形するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の気液分離器における問題点に鑑みてなされたものであって、気液分離器に流入する冷媒の圧力による気液分離部材の変形を防止することが可能な気液分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、一端が開口した筒状の胴体と、前記胴体の前記開口端を封止し、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設され
、平面状の内面を有するヘッダと、
前記胴体の底部側に開口するカップ状に形成され、前記ヘッダの内面に対向する
面が該ヘッダの内面に対して平行となるように配置され、前記ヘッダの前記冷媒流入孔から流入する冷媒を気液分離する気液分離部材とを備え、前記ヘッダの前記冷媒流入孔から流入する冷媒を気液分離し、分離されたガス冷媒を、前記胴体の底部に貯留されたオイルと共に前記冷媒流出孔に導く気液分離器において、前記気液分離部材は、前記ヘッダに対向する面にリブを有し、前記ヘッダは、前記気液分離部材に対向する面に前記リブと対応する溝部又は凸部を有し、前記溝部又は凸部と前記リブとが互いに嵌合されることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、気液分離部材の上面にリブを設け、気液分離部材の強度を向上させたため、冷媒流入孔から流入する冷媒の圧力による気液分離部材の変形を防止することが可能になる。また、ヘッダに溝部又は凸部を設け、溝部又は凸部とリブを嵌合させるため、外部からの力などによって気液分離部材が回転するのを防止することも可能になる。これによって、気液分離部材の外面と胴体の内面との間の隙間の大きさが変動するのを防ぐことができるので、気液分離性能の低下を防ぐことができる。
【0009】
上記気液分離器において、前記リブの一部が前記冷媒流入孔と対向するように構成することができる。これにより、冷媒流入孔から流入する冷媒が気液分離部材に設けられたリブに対して直接的に衝突するため、冷媒の圧力による気液分離部材の変形をより確実に防止することができると共に、気液分離器に流入した冷媒を効果的に分散させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、気液分離器に流入する冷媒の圧力による気液分離部材の変形を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る気液分離器の一実施の形態を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA−A線における気液分離部材を上面方向から見た図、(c)は(a)のA−A線による断面を底面方向から見た断面図である。
【
図2】本発明に係る気液分離器の一実施の形態による動作について説明するための図であり、(a)は正面断面図、(b)は(a)のB−B線における気液分離部材を上面方向から見た図、(c)は(a)のB−B線による断面を底面方向から見た断面図である。
【
図3】従来の気液分離器の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る気液分離器の一実施の形態を示し、この気液分離器1は、有底筒状の胴体2と、この胴体2の開口端を封止するヘッダ3と、胴体2の内部に配置される筒状の冷媒吐出管5と、冷媒吐出管5を囲繞する冷媒吸込管4と、冷媒吸込管4の下端部に形成されたオイル戻し穴4aを囲繞するように胴体2の底面2a上に配置されるストレーナ6と、下方に開口するカップ状の気液分離部材7とを備える。
【0014】
胴体2は、アルミニウム合金等の金属からなり、有底円筒状で上部が開口する瓶状に形成される。上述のように、胴体2の上部開口はヘッダ3によって封止され、胴体2の内部には、冷媒吸込管4、冷媒吐出管5、ストレーナ6及び気液分離部材7が収容される。
【0015】
ヘッダ3は、アルミニウム合金等の金属からなり、円板状の基部3aと、基部3aから上方へ突出する上部(突出部)3bと、基部3aから下方に突出する円筒状の下部3cとで構成され、これらを冷媒流入孔3d及び冷媒流出孔3eが上下方向に貫通する。上部3bの上面3gには、冷媒流入孔3d及び冷媒流出孔3eと嵌合する配管を接続するためのフランジを固定するための雌ねじ部3fが螺設される。
【0016】
また、下部3cの下面には、溝部3h(
図1(c)参照)が設けられる。溝部3hは、例えば、下部3cを貫通する冷媒流出孔3eの中心から放射状に設けられ、後述する気液分離部材7に設けられたリブ7bが嵌合する。
【0017】
冷媒吐出管5は、アルミニウム合金等の金属からなり、冷媒吸込管4の内部に軸線方向に延設されたリブ(不図示)によって冷媒吸込管4内に圧入固定される。また、冷媒吐出管5の上端部が冷媒流出孔3eの下部にかしめ等によって固定される。
【0018】
冷媒吸込管4は、冷媒吐出管5を囲繞するように形成され、冷媒吸込管4の上端部が開口すると共に、下端部にオイル戻し穴4aが形成される。この冷媒吸込管4の下端部は、ストレーナ6に囲繞されながら下方に突出し、その先端部にオイル戻し穴4aが絞り加工又は切削加工やプレス加工等の機械加工により形成される。
【0019】
ストレーナ6は、冷媒吸込管4の下端部の下方に位置し、オイル戻し穴4aを囲繞した状態で胴体2の底面2a上に固定される。
【0020】
気液分離部材7は、樹脂又は金属等により形成され、
図1(b)に示すように、冷媒吐出管5が貫通する貫通孔7aとリブ7bとが形成される。リブ7bは、この気液分離部材7を補強するためのものであり、気液分離部材7の上面において、例えば、上方に突出するとともに貫通孔7aの中心から放射状に延設するように形成される。また、リブ7bは、その一部が上方のヘッダ3の冷媒流入孔3dの中心線上に位置するように設けられる。
【0021】
リブ7bは、気液分離部材7を取り付ける際に、ヘッダ3の下部3cに設けられた溝部3hと嵌合される。これにより、外部からの力などによって気液分離部材7が回転するのを防止することができる。
【0022】
次に、上記構成を有する気液分離器1の動作について、
図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、気液分離器1を冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に配置し、蒸発器からの冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、液冷媒を気液分離器1内に貯留し、ガス冷媒を圧縮機へ戻す場合(所謂アキュムレータ)を例にとって説明する。
【0023】
蒸発器からの冷媒は、
図1のヘッダ3の冷媒流入孔3dから胴体2の内部に流入した後、気液分離部材7に衝突して気液分離される。この際、気液分離部材7に設けられたリブ7bの一部が冷媒流入孔3dの中心線上に存在するため、冷媒流入孔3dから流入した冷媒がリブ7bに対して直接的に衝突することになり、冷媒の圧力による気液分離部材7の変形を防止することができると共に、気液分離器1に流入した冷媒を効果的に分散させることができる。
【0024】
気液分離部材7によって分離された液冷媒、及び冷媒中に含まれているオイルは、そのまま直進下降して胴体2の内部に貯留される。その後、液冷媒Lとオイルとの分離が進み、オイルは液冷媒Lの下方に溜まる。
【0025】
一方、ガス冷媒は、胴体2の内部の液冷媒Lに合流する前に上方へ移動し、冷媒吸込管4の上部開口から冷媒吸込管4の内部に進入し、冷媒吸込管4の内周面と冷媒吐出管5の外周面との間を下降した後、一旦冷媒吸込管4の下端部に達し、オイル戻し穴4aから液冷媒Lの下方に溜まったオイルを吸引しながら上方へ折り返して冷媒吐出管5の内部を上昇し、ヘッダ3の冷媒流出孔3eからオイルを含んだガス冷媒が排出され、圧縮機へ戻される。また、冷媒に含まれている異物は、上記液冷媒と同様のルートにて胴体2の底部に達し、ストレーナ6によって捉えられる。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、気液分離部材7の上面にリブ7bを設け、気液分離部材7の強度を向上させたため、冷媒流入孔3dから流入する冷媒の圧力による気液分離部材7の変形を防止することができる。また、ヘッダ3の下部3cに対して溝部3hを設け、溝部3h及びリブ7bを嵌合させるため、外部からの力などによって気液分離部材7が回転するのを防止することができる。これによって、気液分離部材7の外面と胴体2の内面との間の隙間の大きさが変動するのを防ぐことができるので、気液分離性能の低下を防ぐことができる。
【0027】
さらに、本実施の形態によれば、リブ7bの一部がヘッダ3の冷媒流入孔3dの中心線上に位置するようにリブ7bを設けたため、冷媒が流入した際に、冷媒がリブ7bに対して直接的に衝突することになり、冷媒の圧力による気液分離部材7の変形をより確実に防止することができると共に、気液分離器に流入した冷媒を効果的に分散させることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0029】
例えば、上述の実施形態では、気液分離部材7に外側へ凸状のリブ7bを設け、ヘッダ3に当該リブ7bと嵌合する溝部3hを設けているが、これに代えて、気液分離部材7に内側へ凸状のリブを設け、ヘッダ3に当該リブと嵌合する凸部を設けるようにしてもよい。
【0030】
また、上述の実施形態では、リブ7bがヘッダ3の冷媒流入孔3dの中心線上に位置しているが、そのような構成でなくても、リブ7bがヘッダ3の冷媒流入孔3dと対向する構成であれば、リブ7bがヘッダ3の冷媒流入孔3dの中心線上に位置する場合と同様の効果を得ることができる。
【0031】
さらに、上述の実施形態では、溝部3h及びリブ7bを冷媒流出孔3eの中心から放射状に設けるようにしたが、これに限られず、溝部3h及びリブ7bを嵌合させた際に、気液分離部材7の回転を防止できる構成であればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 気液分離器
2 胴体
2a 底面
3 ヘッダ
3a 基部
3b 上部
3c 下部
3d 冷媒流入孔
3e 冷媒流出孔
3f 雌ねじ部
3g 上面
3h 溝部
4 冷媒吸込管
4a オイル戻し穴
5 冷媒吐出管
6 ストレーナ
7 気液分離部材
7a 貫通孔
7b リブ