(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
傾動規制部(59)が前後一対の傾動支点部(58)より下方に設けられており、前後一対の傾動支点部(58)と傾動規制部(59)とが、可動フロート体(55)の側に逆三角形状に配置されており、
ガイド(56)に設けた規制穴(60)が、可動フロート体(55)の上方への移動限界を規定する上壁(65)と、可動フロート体(55)の前後方向への傾動限界を規定する前後一対の前壁(66)および後壁(67)とを含み、
切断刃ユニット(16)が中立位置に保持された状態において、前後一対の傾動支点部(58)が、上壁(65)と前壁(66)と後壁(67)で受止め支持されており、
切断刃ユニット(16)が限界位置まで前後傾動した状態において、前後いずれか一方の傾動支点部(58)と傾動規制部(59)とが、前壁(66)および後壁(67)のいずれかで受止められている請求項1に記載の電気かみそり。
可動フロート体(55)が、前側の傾動支点部(58)と後側の傾動支点部(58)として機能する、前後一対の前支点軸(61)および後支点軸(62)と、傾動規制部(59)として機能する下支点軸(63)とで構成されており、
前支点軸(61)および後支点軸(62)と下支点軸(63)の周面同士を結ぶ逆三角形状の領域を想定するとき、逆三角形状の領域のうち、各軸(61・62・63)を除く部分が空間になっている請求項2または3に記載の電気かみそり。
規制穴(60)の前壁(66)および後壁(67)が、略平行に形成される直線部(68)と、直線部(68)の下方に形成されて、前壁(66)および後壁(67)が下窄まり状に形成されるテーパー部(69)とで構成されている請求項3または4に記載の電気かみそり。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気かみそりによる髭剃りの使用形態には、切断刃を髭の生えている方向に沿って移動させる順剃りと、髭の生えている方向に対して逆らうように移動させる逆剃りとがある。順剃りと逆剃りでは、肌の伸び具合が異なるので、効率よく髭剃りを行なえる外刃の肌面への接触状態も異なることになる。
【0006】
特許文献1の電気かみそりは、外刃を1個の支持軸部で前後傾動、および上下動可能に支持しているので、外刃が前傾、および後傾して肌面に沿うときの外刃先端の傾動軌跡は、支持軸部を中心とした部分円弧状になる。このように、外刃先端の傾動軌跡が部分円弧状であると、順剃り時と逆剃り時とで、外刃の傾動姿勢は傾動方向が異なるだけで、外刃の肌面に対する接触状態を好適化できない。そのため、部分円弧状の傾動軌跡が順剃りに適していたとしても、逆剃りを好適に行えるわけではなく、順剃り、および逆剃りの両方の使用形態において、外刃を的確に肌面に沿わせることができず、効率よく髭剃りを行なうことができなかった。また、外刃は、内刃で上方へ押圧されて中立位置に保持されているので、外刃と内刃との間に毛屑や皮脂等が付着した場合に、内刃による押圧方向が変わり、外刃が中立位置に復帰できないおそれがある。さらに、中立位置における外刃の下半部が支持軸部のみで支持されているため、僅かな外力を受けて前後傾動しやすく、例えば、内刃を往復駆動する状態において、外刃が微小な前後振動を起こし、電気かみそりの振動や駆動音が増大する。
【0007】
特許文献2の電気かみそりの場合も、1個のスイング軸で前後傾動可能に支持しているので、特許文献1の電気かみそりと同様に、前傾時と後傾時の外刃の傾動軌跡はスイング軸を中心とした部分円弧状になるので、順剃り、および逆剃りの両方の使用形態において、外刃を的確に肌面に沿わせることができず、効率よく髭剃りを行なうことができない。
【0008】
本発明の目的は、順剃り、および逆剃りにかかわらず、切断刃ユニットの傾動軌跡を好適化し、固定刃を的確に肌面に沿わせて効率よく髭剃りを行なうことができる電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、切断刃ユニットを確りと中立位置に保持し、振動や駆動音の増大を防止して静音化できる電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気かみそりは、本体ケース2で支持されるかみそりヘッド3に、固定刃14と可動刃15を含む切断刃ユニット16と、切断刃ユニット16を支持するユニットホルダ20とが設けてある。切断刃ユニット16とユニットホルダ20との間に、切断刃ユニット16を前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持するフロート構造を設ける。フロート構造は、切断刃ユニット16の側端に設けられて、同ユニット16に同行して前後傾動し上下動する可動フロート体55と、ユニットホルダ20の側に設けられて、可動フロート体55の傾動限界および上動限界を規定するガイド56と、切断刃ユニット16を中立位置に復帰付勢するフロートばね57を含む。可動フロート体55とガイド56のいずれか一方に、前後一対の傾動支点部58と、傾動規制部59とを設ける。可動フロート体55とガイド56の他方に、傾動支点部58および傾動規制部59の前後傾動を許す規制穴60を設ける。切断刃ユニット16が、前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58とのいずれか一方を傾動中心にして前後傾動できるようにする。
【0010】
傾動規制部59を前後一対の傾動支点部58より下方に設け、前後一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを、可動フロート体55の側に逆三角形状に配置する。ガイド56に設けた規制穴60を、可動フロート体55の上方への移動限界を規定する上壁65と、可動フロート体55の前後方向への傾動限界を規定する前後一対の前壁66および後壁67とを含む。切断刃ユニット16が中立位置に保持された状態において、前後一対の傾動支点部58を上壁65と前壁66と後壁67とで受止め支持する。切断刃ユニット16が限界位置まで前後傾動した状態において、前後いずれか一方の傾動支点部58と傾動規制部59とを、前壁66および後壁67のいずれかで受止める。ここでいう逆三角形状とは、傾動規制部59を頂点、前後一対の傾動支点部58を結ぶ直線を底辺とした場合、頂点よりも上方に底辺が位置する三角形のことをいう。
【0011】
ガイド56に設けた規制穴60を、傾動支点部58および傾動規制部59の上下動を許すように構成する。
【0012】
可動フロート体55を、前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58として機能する、前後一対の前支点軸61および後支点軸62と、傾動規制部59として機能する下支点軸63とで構成する。前支点軸61および後支点軸62と下支点軸63の周面同士を結ぶ逆三角形状の領域を想定するとき、逆三角形状の領域のうち、各軸61・62・63を除く部分を空間とする。ここでいう空間とは、例えば、
図6に示すように、一対の傾動支点部58と傾動規制部59とをそれぞれ丸軸状の突起で形成した場合には、逆三角形状の領域のうち丸軸状の突起を除く部分をいう。また、
図18(a)に示すように、一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを1個の突起で形成した場合には、逆三角形状の領域のうち、逆三角形状の領域の辺部と、内凹み状のR面で囲まれる部分をいう。
【0013】
規制穴60の前壁66および後壁67を、略平行に形成される直線部68と、直線部68の下方に形成されて、前壁66および後壁67が下窄まり状に形成されるテーパー部69とで構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気かみそりにおいては、切断刃ユニット16を前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持するフロート構造を、切断刃ユニット16に同行する可動フロート体55と、可動フロート体55の傾動限界および上動限界を規定するガイド56と、切断刃ユニット16を中立位置に復帰付勢するフロートばね57などで構成した。可動フロート体55とガイド56のいずれか一方に、前後一対の傾動支点部58と、傾動規制部59とを設け、他方に、規制穴60を設けた。そして、前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58とのいずれか一方を傾動中心にして、切断刃ユニット16が前後傾動できるようにした。
【0015】
上記のような電気かみそりによれば、切断刃ユニット16が中立位置から前側に傾動する場合と後側に傾動する場合とで、それぞれ異なる傾動支点部58を傾動中心とする傾動軌跡を設定することができる。したがって、順剃りと逆剃りの両方で、切断刃ユニット16の傾動軌跡を、固定刃14が的確に肌面に沿うように好適化することができ、効率よく髭剃りを行なうことができる電気かみそりとすることができる。
【0016】
具体的には、固定刃14の上端位置から前側の傾動支点部58および後側の傾動支点部58までの上下方向の距離を、異なる寸法にすることができる。また、切断刃ユニット16の前後方向の中心から、前後の傾動支点部58までの前後方向の距離も異なる寸法にすることができる。このように、前側に傾動する場合と後側に傾動する場合とで、それぞれ異なる傾動支点部58を傾動中心とする傾動軌跡を、所望の傾動軌跡に設定することができ、固定刃14が的確に肌面に沿うように好適化することができる。
【0017】
ガイド56に、可動フロート体55の上方移動および前後傾動の限界を規定する上壁65と、前後一対の前壁66および後壁67とを含む規制穴60を設け、前後一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを、可動フロート体55の側に逆三角形状に配置した。そして、切断刃ユニット16が中立位置に保持された状態において、前後一対の傾動支点部58を上壁65と前壁66と後壁67とで受止め支持した。これによれば、切断刃ユニット16を確りと中立位置に保持することができる。
【0018】
詳しくは、切断刃ユニット16は、前後一対の傾動支点部58が、上壁65で上動規制されながら前壁66と後壁67とに接触した状態で、中立位置に保持される。このとき、一対の傾動支点部58と各壁65・66・67とは、
図18(b)に示すように、一対の傾動支点部58が鋭角状の角部である場合には、2箇所で接した状態となる。また、
図18(c)に示すように、一対の傾動支点部58が一体に形成されて上壁65と面で接触する場合には、3箇所で接した状態となる。さらに、
図6に示すように、一対の傾動支点部58が別体で形成された場合には、4箇所で接した状態となる。このように、一対の傾動支点部58と各壁65・66・67とは、少なくとも2箇所以上で接した状態で中立位置に保持されるので、切断刃ユニット16を安定的に保持することができる。したがって、切断刃ユニット16がぐらつくことなく、確りと中立位置に保持することができ、切断刃ユニット16の微小な前後振動による振動や駆動音が発生することを防止して、電気かみそりを静音化することができる。
【0019】
加えて、切断刃ユニット16が限界位置まで前後傾動した状態において、前後いずれか一方の傾動支点部58と傾動規制部59とを、前壁66および後壁67のいずれかで受止めるようにした。これによれば、傾動支点部58および傾動規制部59と規制穴60とだけで、可動フロート体55の前後傾動限界を規定することができる。したがって、簡単な構成で切断刃ユニット16の前後傾動の限界を規定することができ、電気かみそりの製造コストを削減することができる。
【0020】
ガイド56に設けた規制穴60を、傾動支点部58および傾動規制部59の上下動を許すように構成すると、規制穴60で切断刃ユニット16を上下動可能に支持しながら、切断刃ユニット16の上方移動を規制をすることができるので、電気かみそりの製造コストを削減することができる。
【0021】
前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58として機能する、前支点軸61および後支点軸62と、傾動規制部59として機能する下支点軸63の周面同士を結ぶ逆三角形状の領域を想定するとき、逆三角形状の領域のうち、各軸61・62・63を除く部分を空間とした。これによれば、切断刃ユニット16が傾動限界まで傾動した状態での上下動時の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0022】
詳しくは、例えば、切断刃ユニット16が前側の傾動限界まで傾動した状態で上下動するとき、切断刃ユニット16は、後支点軸62と下支点軸63とが規制穴60の後壁67に接触した状態で規制穴60に案内されて上下動する。このとき、後支点軸62と下支点軸63との間に空間が形成されていると、後支点軸62および下支点軸63は、それぞれが線で後壁67に接触することになり、両支点軸62・63と後壁67との接触面積を最小にすることができる。したがって、切断刃ユニット16が傾動限界まで傾動した状態で上下動する時の摺動抵抗を小さくすることができるので、切断刃ユニット16がスムーズに上下動し、固定刃14を的確に肌面に沿わせることができる。また、切断刃ユニット16を中立位置に保持するとき、各支点軸61・62と各壁65・66・67とは、4点で線接触状に支持されるので、切断刃ユニット16がぐらつくことなく、確りと中立位置で保持することができる。加えて、各支点軸61・62と各壁65・66・67との接触面積が小さいと、毛屑等のごみが噛み込み難く、中立位置がずれることもない。
【0023】
規制穴60の前壁66および後壁67を、略平行に形成される直線部68と、直線部68の下方に形成されるテーパー部69とで構成すると、電気かみそりが肌面に強く押し当てられて、切断刃ユニット16が下動限界に近づいたとき、下支点軸63をテーパー部69で案内して、切断刃ユニット16の姿勢を強制的に直立状態に変更することができる。例えば、電気かみそりを肌面に強く押し当てた状態では、切断刃ユニット16は下方に移動するが、この状態で切断刃ユニット16が肌面に沿って傾動すると、固定刃14の肌面に対する当たりが強くなりすぎ、肌面がひりつくおそれがある。しかし、電気かみそりが肌面に強く押し当てられたとき、切断刃ユニット16の姿勢を強制的に直立状態に変更するようにすると、固定刃14の肌面への当たりが強くなりすぎるのを防止して、肌面がひりつくのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1から
図7に、本発明に係る電気かみそりの第1実施形態を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図中に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0026】
図2において、電気かみそりは、本体ケース2を含むグリップ構造1と、本体ケース2の内部に収容される電装品と、本体ケース2に支持されるかみそりヘッド3などで構成されている。電装品は、2次電池4と制御回路が実装された回路基板5などで構成されている。本体ケース2の前面には、モーター26起動用のスイッチボタン6と、モーター26の運転状態を切り換えるセレクトボタン7と、LED表示部8などが設けられている。図示していないが、かみそりヘッド3は本体ケース2に浮動支持構造を介して、前後左右傾動、および上下動可能に支持されており、本体ケース2の背面側にはきわ剃りユニットが設けられている。かみそりヘッド3の上面には、2個の回転式メイン刃13と、回転式メイン刃13・13の間に配置したセンター刃(切断刃ユニット)16とが設けられている。回転式メイン刃13は、シート体に網状の切刃を形成した外刃11と、外刃11と協同して髭を切断する回転式の内刃12とからなり、主に短毛を切断する。センター刃16は、スリット刃状の固定刃14と、固定刃14と協同して髭を切断する櫛刃状の可動刃15とからなり、主に長毛やくせ毛を切断する。
【0027】
図3に示すように、かみそりヘッド3は、ヘッドフレーム18を基体として構成されており、ヘッドフレーム18に着脱される化粧フレーム19と、化粧フレーム19の左右壁に装着されるユニットホルダ20とを備えている。化粧フレーム19は、上下面が開口する角枠状のプラスチック成形品からなる。化粧フレーム19は、かみそりヘッド3のヘッドフレーム18に外嵌装着されて、ヘッドフレーム18の左右に組み込んだロック解除ボタン21で装着状態が維持されている。ロック解除ボタン21は、圧縮コイル型のロックばね23でロック付勢されており、ロック解除ボタン21をロックばね23の付勢力に抗して押し込み操作することにより、ロック爪22と化粧フレーム19との係合状態を解除できる。この状態で化粧フレーム19をヘッドフレーム18から取り外すことができる。なお、かみそりヘッド3は、浮動支持構造を廃し、ヘッドフレーム18を本体ケース2の上端に一体に形成して、本体ケース2に固定される構造であってもよい。
【0028】
図2から
図4に示すように、ヘッドフレーム18の上面には、内刃ホルダ25が配置されており、内刃ホルダ25の上端前後に、回転式の内刃12がそれぞれ回転可能に支持されている。ヘッドフレーム18の下面内部にはモーター26が配置されており、メイン刃13とモーター26との間に第1伝動構造27(
図2参照)が設けられ、センター刃16とモーター26との間に第2伝動構造28(
図3参照)が設けてある。第1伝動構造27は、平歯車および傘歯車などで構成されるギヤトレインからなり、その終段ギヤの回転動力を内刃12に伝動することにより、内刃12を水平軸回りに回転駆動できる。第2伝動構造28は、偏心カム29と振動子30とで構成される動力変換機構からなり、振動子30に設けられた駆動ピース31の往復動力を、センター刃16の受動ピース49に伝動することにより、可動刃15を左右に往復駆動できる。
【0029】
図4および
図5に示すように、ユニットホルダ20は、前後壁33・34と左右壁35・36とで角枠状に形成されたプラスチック成形品であり、その左右壁35・36にガイド56が設けられている。
図3に示すように、ユニットホルダ20の下開口面の前後中央には、左右壁35・36を連結する前後一対の補強枠38が一体に設けられており、補強枠38の左右には、後述するフロートばね57を受止めるためのばね受座39が形成されている。ばね受座39は前後一対の補強枠38を連結し補強している。前壁33と前側の補強枠38、および後壁34と後側の補強枠38との間に、回転型メイン刃13の外刃11が、アーチ状に保形された状態で固定されている。
図3に示すように、ガイド56の下方には化粧フレーム19と連結するための係合穴41が開設されている。ユニットホルダ20は、化粧フレーム19に突設された係合爪42と、係合穴41とが係合することにより、装着状態が維持されており、両者41・42の係合状態を解除することで、ユニットホルダ20を化粧フレーム19から取り外すことができる。
【0030】
図3および
図5に示すように、センター刃16は、固定刃14と、可動刃15と、固定刃台46と、可動刃台47と、左右一対のばねピース48と、振動子30の駆動ピース31と係合する受動ピース49などで構成されている。固定刃14は左右一対の固定刃台46に固定されており、可動刃15は可動刃台47に固定されて、固定刃14の内面に沿って左右方向へ摺接駆動される。摺接する可動刃15を固定刃14に密着させるために、固定刃台46の下面に固定した左右一対のばねピース48で、可動刃15を固定刃14に向かって押付け付勢している。センター刃16は、可動刃15および可動刃台47を内部に収容した状態で、固定刃14と、左右一対の固定刃台46と、左右一対のばねピース48とが一体に組みつけられてユニット化されている。受動ピース49は、受動ピース49に形成された横臥U字状の連結凸部51が、可動刃台47に形成された連結凹部52に係合した状態で、回転軸50を介して連結されており、両者47・49の連結角度が変更可能に構成されている。センター刃16は、センター刃16と、ユニットホルダ20との間に設けられるフロート構造で、前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持されている。受動ピース49は、前後の補強壁38の間に配置されており、センター刃16が前後傾動して、可動刃台47と受動ピース49の連結角度が変わっても、受動ピース49は垂直姿勢を維持でき、駆動ピース31の往復動力を可動刃台47に伝達することができる。
【0031】
図3および
図6に示すように、フロート構造は、可動フロート体55と、可動フロート体55の傾動限界および上動限界を規定するガイド56と、センター刃16を中立位置に復帰付勢する左右一対のフロートばね57とを含んで構成されている。可動フロート体55は、左右一対の固定刃台46の外側面にそれぞれ形成されており、前後一対の傾動支点部58と、傾動規制部59とで構成されている。ガイド56は、ユニットホルダ20の左壁35および右壁36にそれぞれ形成されており、傾動支点部58および傾動規制部59の前後傾動および上下動を許す規制穴60で構成されている。フロートばね57は、圧縮コイル型ばねで構成されており、先に説明したばね受座39と、固定刃台46との間に配置されて、センター刃16を上方に向かって付勢している。
【0032】
図1および
図6に示すように、前後一対の傾動支点部58および傾動規制部59は、それぞれ丸軸状の突起で形成されている。具体的には、前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58として機能する、前後一対の前支点軸61および後支点軸62と、両支点軸61・62の下方に設けられて、傾動規制部59として機能する、下支点軸63とで構成されている。前支点軸61および後支点軸62と下支点軸63の周面同士を結ぶ逆三角形状の領域を想定するとき、前記逆三角形状の領域のうち、各軸61・62・63を除く部分が空間になるよう形成されている。なお、各軸61・62・63は、上壁65・前壁66および後壁67と接する部分が、円弧状に形成されていればよく、接しない部分に切欠きを形成する、あるいは、突出部を形成して各軸61・62・63を連結してもよい。
【0033】
規制穴60は、可動フロート体55の上方への移動限界を規定する上壁65と、上壁65の両端から下方に延びて、可動フロート体55の前後方向への傾動限界を規定する前後一対の前壁66および後壁67とを含んで構成されている。前後一対の前壁66および後壁67は、センター刃16が上下動する際のガイドを兼ねている。センター刃16は、各支点軸61・62・63が、規制穴60に挿入された状態で、前後傾動、および上下動可能に支持されている。前壁66および後壁67は、略平行に形成される直線部68と、直線部68の下方に形成されて、前壁66および後壁67が下窄まり状に形成されるテーパー部69とで構成されている。前壁66および後壁67のテーパー部69は下端で接続されている。直線部68の前後寸法は、前支点軸61および後支点軸62の前後幅で規定される寸法と同一、または僅かに大きく設定されている。自由状態のセンター刃16は、フロートばね57の付勢力により、前後の支点軸61・62が上壁65で受止められて、中立位置に保持されている。
【0034】
ここで、フロート構造で前後傾動可能、かつ、上下動可能に支持されたセンター刃16の上下動について説明する。
図6に示すように、中立位置にある状態のセンター刃16に垂直方向の力が加わると、前後の支点軸61・62が前後壁66・67で案内されながら、センター刃16は下方にスライドする。この状態から垂直方向の力が開放されると、センター刃16は、フロートばね57の付勢力により、前後の支点軸61・62が前後壁66・67で案内されながら上方にスライドし、前後の支点軸61・62が上壁65に受止められて中立位置に復帰する。センター刃16が中立位置に保持されているとき、丸軸状に形成した前後の支点軸61・62は、上壁65とそれぞれ線接触する。同様に、前支点軸61と前壁66、および後支点軸62と後壁67もそれぞれ線接触する。したがって、フロートばね57で中立位置に復帰付勢されているセンター刃16は、4点で線接触状に支持された状態で中立位置に保持されるので、センター刃16は、微小な前後振動を起こすことなく、確りと中立位置に保持される。
【0035】
次に、センター刃16の前後傾動について説明する。センター刃16に水平方向前向きの力が加わると、センター刃16は、後支点軸62を中心に前側に傾動する(
図1参照)。さらに、センター刃16が前側に傾動すると、下支点軸63が後壁67に当接して傾動が規制される。この状態から水平方向の力が開放されると、センター刃16は、フロートばね57の付勢力により、後支点軸62を中心に後側に傾動して、中立位置に復帰する。逆に、センター刃16に水平方向後ろ向きの力が加わると、センター刃16は、前支点軸61を中心に後側に傾動する。さらに、センター刃16が後側に傾動すると、下支点軸63が前壁66に当接して傾動が規制される。この状態から水平方向の力が開放されると、センター刃16は、フロートばね57の付勢力により、前支点軸61を中心に前側に傾動して中立位置に復帰する。
【0036】
主に長毛やくせ毛を切断するセンター刃16を、主に短毛を切断するメイン刃13・13間に前後傾動可能に支持すると、例えば、センター刃16が前側に傾動した状態では、後側のメイン刃13とセンター刃16との間に空間を形成することができる。この空間に肌面が落ち込むことにより、肌面とメイン刃13との接触面積を大きくすることができるので、メイン刃13による短毛の切断を効果的に行うことができる。加えて、肌面が落ち込むことにより肌面が伸ばされ、長毛やくせ毛を肌面から起こすことができるので、センター刃16で長毛やくせ毛をより一層捕捉しやすくなり、効果的に長毛剃りやくせ毛剃りを行なうことができる。
【0037】
センター刃16は前後いずれかに傾動した状態のままで上下動することができ、このとき、前支点軸61または後支点軸62が、前壁66または後壁67で案内されながら上下動する。前後いずれかの傾動限界まで傾動した状態で上下動するとき、各軸61・62・63は丸軸状に形成されているので、前支点軸61または後支点軸62と下支点軸63とは、前壁66または後壁67にそれぞれ線接触した状態で上下動する。したがって、上下動時の摺動抵抗を小さくすることができるので、センター刃16が傾動した状態であっても、スムーズに上下動することができる。さらに、センター刃16は、下動限界に近づくと、下支点軸63がテーパー部69で案内されて、センター刃16の姿勢が直立状態になるように、強制的に姿勢変更される。
【0038】
上記のように、センター刃16が前側に傾動する際の傾動中心と傾動限界、および後側に傾動する際の傾動中心と傾動限界を、それぞれ設定することができるので、順剃り、および逆剃り時に最適な傾動中心位置および傾動限界に設定することができ、センター刃16に設けられた固定刃14を、的確に肌面に沿わせて効率よく髭剃りを行なうことができる。
【0039】
図4および
図7に示すように、可動刃15は、金属シートを素材にしてエッチング法で形成されており、複数の切刃71とスリット72とを交互に設けて鋸刃状に形成されている。切刃71とスリット72とは、可動刃15の前後中央の基枠73の前後両縁に対してそれぞれ左右方向に並べて形成してある。
図5に示すように、可動刃15は、基枠73の左右両端から斜め下向きに折り曲がる連結爪74を一体に備えており、連結爪74を可動刃台47に形成された連結穴75に挿入係合することにより、可動刃15が可動刃台47と一体化してある。可動刃15は、断面逆U字状に形成し、複数の切刃71とスリット72とを交互に設けた形態であるスリット刃状の可動刃15であってもよい。
【0040】
図4および
図7に示すように、固定刃14は、金属シートを素材にしてエッチング法で形成されており、刃ブランクにプレス加工を施すことにより、断面逆U字状に形成されている。固定刃14は、上刃壁77と、上刃壁77の前後縁に連続する前側壁78および後側壁79とを一体に備えており、上刃壁77と、前後側壁78・79との隣接部は丸めてある。上刃壁77の前後縁のそれぞれにリブ状の小刃80とスリット状の刃穴81とが交互に形成されている。上刃壁77の前後中央には、左右方向に連続する補強リブ82が形成されている。補強リブ82で前後に区分されて、同リブ82の前後縁に直交する一群の小刃80と刃穴81とは、互い違いになるように形成されている。各小刃80の上面には、溝状の凹部83が凹み形成されている。凹部83は丸められた隣接部を除く小刃80の上面部分から、刃穴81に亘って形成されている。上刃壁77部分の刃穴81の側壁85には、刃穴81に導入した髭を保持する微小波形の髭保持部84が形成されている。
【0041】
上記の実施形態では、センター刃16は、かみそりヘッド3の前後方向中央、かつ、2個のメイン刃13・13の中央に配置したが、その必要はなく、かみそりヘッド3の中央から前後に変位した状態で配置してもよい。また、センター刃16をいずれか一方のメイン刃13に近接した状態で配置してもよい。さらに、3個のメイン刃13が配置されている形態では、隣接するメイン刃13・13のいずれか一方、または両方の間にセンター刃16を配置することができる。要は、センター刃16とは、メイン刃13の個数に関係なく、隣接するメイン刃13・13の間に配置されているものいう。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る電気かみそりは、前側の傾動支点部58と後側の傾動支点部58とのいずれか一方を傾動中心にして、切断刃ユニット16が前後傾動できるようにしたので、切断刃ユニット16が前後傾動するとき、前後で異なる傾動支点部58を傾動中心とする傾動軌跡をそれぞれ設定することができる。したがって、切断刃ユニット16の傾動軌跡を、順剃りと逆剃りの両方で、固定刃14が的確に肌面に沿うように好適化することができ、効率よく髭剃りを行なうことができる電気かみそりとすることができる。
【0043】
切断刃ユニット16が中立位置に保持された状態において、前後一対の傾動支点部58を上壁65と前壁66と後壁67とで受止め支持すると、切断刃ユニット16は、前後一対の傾動支点部58が、上壁65で上動規制されながら前後壁66・67に接触した状態で、中立位置に保持される。このとき、一対の傾動支点部58と、各壁65・66・67とは、少なくとも2箇所以上で接した状態となるので、切断刃ユニット16を安定的に保持することができる。したがって、切断刃ユニット16がぐらつくことなく、確りと中立位置に保持することができ、切断刃ユニット16の微小な前後振動による振動や駆動音が発生することを防止して、電気かみそりを静音化することができる。
【0044】
上記に加えて、切断刃ユニット16が限界位置まで前後傾動した状態において、前後いずれか一方の傾動支点部58と傾動規制部59とを、前壁66および後壁67のいずれかで受止めるようにすると、傾動支点部58および傾動規制部59と、規制穴60とだけで、可動フロート体55の上方移動および前後傾動の限界を規定することができる。したがって、簡単な構成で上方移動および前後傾動の限界を規定することができ、電気かみそりの製造コストを削減することができる。
【0045】
ガイド56に設けた規制穴60を、傾動支点部58および傾動規制部59の上下動を許すように構成することにより、規制穴60で切断刃ユニット16を上下動可能に支持しながら、切断刃ユニット16の上方移動を規制することができるので、電気かみそりの製造コストを削減することができる。
【0046】
前支点軸61および後支点軸62と、下支点軸63との周面同士を結ぶ逆三角形状の領域を想定し、前記領域のうち、各軸61・62・63を除く部分を空間とすると、前後壁66・67に、前後いずれかの支点軸61・62と下支点軸63が接触するとき、線接触とすることができ、摺動抵抗を小さくすることができる。したがって、センター刃16の上下動をスムーズに行なうことができ、固定刃14を的確に肌面に沿わせて効率よく髭剃りを行なうことができる。また、前支点軸61および後支点軸62が上壁65、前壁66および後壁67で受止められて、中立位置に保持された状態において、各支点軸61・62と各壁65・66・67とは4点で接触するので、切断刃ユニット16がぐらつくことなく、確りと中立位置で保持することができる。加えて、各支点軸61・62と各壁65・66・67との接触面積が小さいと、毛屑等のごみが噛み込み難く、中立位置がずれることもない。
【0047】
電気かみそりを肌面に強く押し当てた状態では、切断刃ユニット16は下方にスライドした状態となる。この状態で、切断刃ユニット16が肌面に沿って傾動すると、固定刃14の肌面に対する当たりが強くなりすぎ、肌面がひりつくおそれがある。したがって、電気かみそりが肌面に強く押し当てられたときには、下支点軸63をテーパー部69で案内して切断刃ユニット16の姿勢を強制的に直立状態に変更することにより、固定刃14の肌面への当たりが強くなりすぎるのを防止して、肌面がひりつくのを防ぐことができる。
【0048】
(第2実施形態)
図8および
図9に本発明に係る電気かみそりの第2実施形態を示す。本実施形態は、第1実施形態の回転式メイン刃13に変えて、往復式メイン刃(切断刃ユニット)86を採用した点が異なる。また、センター刃16と同様に、往復式メイン刃86をフロート構造で前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持した点が先の第1実施形態と相違する。往復式メイン刃86は、シート体に網状の切刃を形成した外刃(固定刃)87と、外刃87の内面に沿って左右方向へ摺接駆動されるスリット刃からなる内刃(可動刃)88と、上下が開口して外刃87をアーチ状に保形した状態で支持する外刃支持体89と、内刃88を支持する内刃台90などを含んで構成されている。内刃台90には、駆動ピース31と係合する受動リブ91が形成されており、内刃88を押し上げ付勢するばね92が、駆動ピース31と内刃台90との間に配置されている。外刃支持体89の左右側面には、前支点軸61、後支点軸62および下支点軸63が形成されており、ユニットホルダ20に形成された規制穴60に挿入された状態で、前後傾動、および上下動可能に支持されている。内刃87を押し上げ付勢するばね92は、往復式メイン刃86を中立位置へ復帰付勢するフロートばね57を兼ねている。それ以外の点は、第1実施形態と同様であるため、同様の部材には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
(第3実施形態)
図10から
図13に本発明に係る電気かみそりの第3実施形態を示す。本実施形態では、センター刃16を廃して、かみそりヘッド3に1個の往復式メイン刃(切断刃ユニット)86を設け、フロート構造で前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持した点と、化粧フレーム19とユニットホルダ20とを一体とし、ガイド56を形成した点が、先の第2実施形態と相違する。外刃支持体89の下開口には、中央に開口部94を有する底蓋95が設けられており、底蓋95の開口部94に臨むように、内刃88を押し上げ付勢する左右一対の弾性腕96が底蓋95と一体に形成されている。駆動ピース31は、内刃台90に形成した連結凹部52に連結されて、内刃88に往復動力を伝達する。外刃支持体89の左右側面には、可動フロート体55を構成する前後一対の支点軸61・62と下支点軸63とが形成されている。それ以外の点は、第2実施形態と同様であるため、同様の部材には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
本実施形態の電気かみそりによれば、
図13に示すように、髭剃り時に電気かみそりを下方から上方移動させたとき、かみそりヘッド3に前後傾動、および上下動可能に支持された1個の往復式メイン刃86が、電気かみそりの進行方向とは逆に傾動するので、本体ケース2の姿勢を大きく傾けることなく、外刃87の頂部付近を肌面に当接させることができる。往復式メイン刃86において、外刃87の頂部付近は髭の切断効率が高い部分であるので、この部分を積極的に肌面に沿わせて髭を切断することができる。
【0051】
(第4実施形態)
図14および
図15に本発明に係る電気かみそりの第4実施形態を示す。本実施形態では、センター刃16を廃して、かみそりヘッド3に1個の往復式メイン刃(切断刃ユニット)86を設け、フロート構造で前後傾動可能に、かつ、上下動可能に支持した点が、先の第2実施形態と相違する。また、ユニットホルダ20の前後壁33・34を廃して、左右一対のユニットホルダ20を設けた点と、往復式メイン刃86に内刃88を駆動する内刃駆動装置97を内蔵した点が、先の第2実施形態と相違する。
【0052】
本実施形態では、内刃台90と底蓋95との間に、リニアモーター式の内刃駆動装置97が配置されており、内刃駆動装置97で内刃88が往復駆動される。フロート構造は前後傾動構造と、上下動構造とに分離して設けられている。ユニットホルダ20は板状体に形成して左右に設けられており、左右のユニットホルダ20のそれぞれには規制穴60が設けられている。外刃支持体89の左右側面には、前後一対の傾動支点部58と、傾動規制部59とで構成される可動フロート体55が突設されており、可動フロート体55は角部が丸められた逆三角形状の突起で形成されている。可動フロート体55は、規制穴60に挿入された状態で、往復式メイン刃86が前後傾動可能に支持されている。
【0053】
ユニットホルダ20と可動フロート体55との間に、往復式メイン刃86の前後傾動を中立位置に復帰する板ばね型の傾動復帰ばね98が配置されている。ユニットホルダ20の下面前後には、スライド軸99が下方に突設されており、ユニットホルダ20は、スライド軸99がヘッドフレーム18に設けたスライド穴100で支持されて、上下スライド可能に設けられている。ユニットホルダ20とヘッドフレーム18との間に、ユニットホルダ20を上動限界位置に復帰付勢するスライドばね101が配置されている。第1実施形態から第3実施形態に係るガイド56を構成する規制穴60は、前後傾動と上下動との両方を案内するが、本実施形態のガイド56を構成する規制穴60は、可動フロート体55の前後傾動のみを案内するようになっており、可動フロート体55とガイド56と傾動復帰ばね98とで、往復式メイン刃86の前後傾動構造が構成されている。往復式メイン刃86の上下動構造は、スライド軸99とスライド穴100とスライドばね101とで構成されている。これら前後傾動構造と上下動構造とで、フロート構造が構成される。それ以外の点は、第2実施形態と同様であるため、同様の部材には同様の符号を付して、その説明を省略する
【0054】
(第5実施形態)
図16に本発明に係る電気かみそりの第5実施形態を示す。本実施形態では、第4実施形態の前後傾動構造を構成する板ばね型の傾動復帰ばねに変えて、2個の圧縮コイル型の傾動復帰ばね98を採用した点が、先の第4実施形態と相違する。可動フロート体55の前後にそれぞれ圧縮コイル型の傾動復帰ばね98を配置して、往復式メイン刃86を中立位置に復帰付勢する。それ以外の点は、第4実施形態と同様であるため、同様の部材には同様の符号を付して、その説明を省略する。本実施形態においては、ばね定数の異なる傾動復帰ばね98を前後に配置することにより、往復式メイン刃86が、前側に傾動した状態から復帰する場合と、後側に傾動した状態から復帰する場合の復帰力を異なるものとすることができる。
【0055】
図17に、第1実施形態から第3実施形態に係るフロート構造の別実施形態を示す。
図17(a)では、前支点軸61を頂点とする各支点軸62・61・63で形成される角度と、後支点軸62を頂点とする各支点軸61・62・63で形成される角度とが異なるように、下支点軸63を配置した。これによれば、前側に傾動するときの限界角度と、後側に傾動する時の限界角度とを異なるように設定することができる。
【0056】
図17(b)では、前支点軸61と後支点軸62を形成する高さ位置が異なるように配置し、さらに、上壁65を水平から傾斜するように形成した。加えて、切断刃ユニット16(86)が前後傾動できるように、前壁66の上側を円弧状に形成した。このように、前後の支点軸61・62を形成する高さ位置が異なると、切断刃ユニット16(86)の上端から、前後の支点軸61・62までの距離を異ならせることができる。したがって、切断刃ユニット16(86)の前後の傾動軌跡が肌面に沿うように、さらに好適化できるよう設定することができる。本実施形態では、切断刃ユニット16(86)は中立位置において、すでに傾いた状態で配置されており、その状態から前後傾動することができるようになっている。図示しないが、切断刃ユニット16(86)の前後方向の中心から、前後の支点軸61・62までの水平方向の距離も異ならせることができる。
【0057】
図17(c)では、可動フロート体55を固定刃台46に形成した規制穴60で構成し、ガイド56をユニットホルダ20に形成した前支点軸61および後支点軸62と、上支点軸64とで構成した。この場合には、各支点軸61・62・64は三角形状に配置し、前後壁66・67は、テーパー部69が上側に位置するように形成する。フロートばね57で中立位置に復帰付勢されるセンター刃16は、規制穴60の下壁70が、前後の支点軸61・62に受止められて、中立位置に保持される。
【0058】
図18(a)では、可動フロート体55を構成する一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを1個の突起で形成してあり、それぞれ円弧状に形成した一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを逆三角形状に配置し、一対の傾動支点部58と傾動規制部59の周面同士を、内凹み状のR面で結ぶようにした。これによれば、1個の突起で可動フロート体55を形成した場合でも、可動フロート体55と、各壁65・66・67とが線接触することができる。
【0059】
図18(b)では、可動フロート体55を構成する一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを1個の突起で形成してあり、一対の傾動支点部58と傾動規制部59とをそれぞれ鋭角な角部として逆三角形状に形成し、逆三角形の辺部を内凹み状のR面で結ぶようにした。これによれば、上記と同様に、1個の突起で可動フロート体55を形成した場合でも、可動フロート体55と、各壁65・66・67とが線接触することができる。
【0060】
図18(c)では、
図18(a)の内凹み状のR面を廃して、一対の傾動支点部58と傾動規制部59の周面同士を、直線で結ぶようにした。このように、可動フロート体55を、
図18(a)から
図18(c)のように1個の突起で形成すると、前後の傾動支点部58と傾動規制部59を個々に設ける場合に比べて、構造強度を向上することができ、可動フロート体55が破損することを防止できる。なお、一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを1個の突起で形成した場合でも、固定刃台46に規制穴60を形成し、ユニットホルダ20に一対の傾動支点部58と傾動規制部59とを形成してもよい。
【0061】
図19に、第1実施形態および第2実施形態に係るセンター刃16の固定刃14の別実施形態を示す。
図19(a)では、各小刃80の上面に形成した溝状の凹部83の側壁85に毛起こし部103を形成した。毛起こし部103は、左右それぞれの側壁85を波形に形成し、溝幅が拡縮を繰り返すように形成した。
【0062】
図19(b)では、凹部83の側壁85に形成した毛起こし部103は、左右それぞれの側壁85を波形に形成し、溝幅が変化しないように形成した。このように、波状に形成された毛起こし部103を形成すると、凹部83でガイドされる髭に振動を付与できるので、肌面に沿うように寝ている髭をしっかりと起こすことができ、確実に刃穴81に導入して切断することができる。
【0063】
図19(c)では、各小刃80の上面に形成した凹部83の側壁85の左右幅を、刃穴81から遠ざかるにつれ広幅になるように形成して、毛起こし部103とした。このように、髭のガイド始端部分の凹部83を広幅にすることで髭を捕らえやすくなり、捕らえた髭は、毛起こし部103で髭を起こしながら確実に刃穴81へとガイドすることができる。
【0064】
第1実施形態および第2実施形態に係る固定刃14および可動刃15を備えた電気かみそりは、次の形態で実施できる。すなわち、固定刃14と、可動刃15を含む切断刃ユニット16を備えた電気かみそりであって、固定刃14は、上刃壁77と、上刃壁77に形成されるリブ状の小刃80と、スリット状の刃穴81とを有し、小刃80の延び方向中心軸に沿うように、小刃80の上面に溝状の凹部83が形成されている電気かみそり。
【0065】
上記のように、溝状の凹部83を小刃80の上面に形成すると、髭剃り時に、上刃壁77と肌面との接触面積を減らすことができ、上刃壁77と肌面との摺動抵抗を小さくすることができる。したがって、髭剃り時の電気かみそりの操作を軽快に行うことができ、また、肌面のひりつきを防止することができる。さらに、凹部83で肌面に沿うように寝ている髭を起こすことができるので、髭を肌面から浮かせて効果的に固定刃14の刃穴81に導入して、髭を切断することができる。
【0066】
また、上刃壁77の前後中央には、左右方向に連続する補強リブ82が形成されており、補強リブ82で前後に区分された状態で、同リブ82の前後縁に直交する一群の小刃80と刃穴81とが形成されており、補強リブ82の前後縁に形成された小刃80と刃穴81とは、互い違いになるように形成されている形態を採ることができる。
【0067】
このように、補強リブ82の前後縁に形成された小刃80と刃穴81とを、互い違いになるように形成すると、例えば、電気かみそりを後方向に動かして髭剃りを行なうとき、後側の刃穴81に導入されずに小刃80上を通過した髭を、前側の刃穴81に導入して切断することができるので、一度の操作でより多くの髭を切断することができる。加えて、小刃80上を通過する髭は凹部83でガイドされるので、より確実に前側の刃穴81に導入することができる。
【0068】
小刃80の上面に形成された凹部83が、補強リブ82を間にして対向する刃穴81に臨むように形成されている形態を採ることができる。これによれば、小刃80上を通過して、凹部83でガイドされる髭を、確実に反対側の刃穴81に導入して切断することができる。
【0069】
上刃壁77の前後端部近傍を除く小刃80の上面に、凹部83が形成されている形態を採ることができる。これによれば、上刃壁77の前後端部は肌面に接触しやすく、さらに、肌面に接触する面積が小さいので、この部分に凹部83を形成すると、凹部83によって肌面を傷付けるおそれがある。したがって、上刃壁77の前後端部近傍を除く小刃80の上面に凹部83を形成することにより、肌面を傷付けることなく滑らかな肌当たりとすることができる。また、凹部83の形成による断面積の減少に起因する、上刃壁77の前後端部の強度低下を防止して、固定刃14の構造強度を向上することができる。
【0070】
凹部83が、刃穴81から遠ざかるにつれ左右幅が広くなるように形成することができる。これによれば、髭のガイド始端部分の凹部83を広幅にすることで髭が捕らえやすくなり、捕らえた髭は凹部83の幅を徐々に狭めることにより確実に刃穴81へとガイドすることができる。したがって、凹部83による刃穴81への髭の導入効果を高めることができ、刃穴81に髭を確実に導入することができる。
【0071】
凹部83の左右の側壁85に、凹部83でガイドする髭を起こす波形の毛起こし部103が形成されている形態を採ることができる。これによれば、波状に形成された毛起こし部103により、凹部83でガイドされる髭に振動を付与できるので、肌面に沿うように寝ている髭をしっかりと起こすことができ、確実に刃穴81に導入して切断することができる。