【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(1)使用化合物
本実施例及び比較例において用いた化合物(A)および化合物(B)、反応により得られる本発明の上記式(I−A)で表される化合物を以下に示す。
化合物(A)
実施例に用いた脂肪酸、または脂肪酸メチルエステル
A−1:パルミチン酸メチル:ライオン社製、商品名「パステルM−16」
A−2:オレイン酸メチルを主成分とするC18混合脂肪酸メチル:ライオン社製、商品名「パステルM−182」
A−3:オレイン酸:NAT OLEO社製、商品名「Oleic acid、NOSB176/0169」
A−4:ステアリン酸メチル:ライオン社製、商品名「パステルM−180」
A−5:アラキドン酸メチル:和光純薬社製、試薬
A−6:ベヘン酸メチル:和光純薬社製、試薬
比較例に用いた脂肪酸、または脂肪酸メチルエステル
A´−7:ラウリン酸メチル:ライオン社製、商品名「パステルM−12」
A´−8:リグノセリン酸:和光純薬社製、試薬
化合物(B)
実施例に用いたポリアルキレングリコールアルキルエーテル
B−1:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル:ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名「ダワノールTPnB」
B−2:トリエチレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤社製、商品名「メチルトリグリコール(MTG)」
B−3:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤社製、商品名「メチルポリグリコール(MPG)」
B−4:トリエチレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤製、製品名「ブチルトリグリコール(BTG)」
B−5:ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル:日本乳化剤製、製品名「2エチルヘキシルジグリコール(EHDG)」
比較例に用いたポリアルキレングリコールアルキルエーテル
B´−7:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤株式会社製、商品名「メチルプロピレントリグリコール(MFTG)」
B´−8:ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(製造例18で製造した中間体)
実施化合物の具体例
I−1 ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸ブチルエーテル(M182−3PO−Bu、後述する製造例1で製造したもの)
I−2 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−3EO−Me、後述する製造例2で製造したもの)
I−3 ポリオキシエチレンステアリン酸メチルエーテル(C18:0−4.2EO−Me、後述する製造例3で製造したもの)
I−4 ポリオキシエチレンオレイン酸メチルエーテル(C18:1−4.2EO−Me、後述する製造例4で製造したもの)
I−5 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−4.2EO−Me、後述する製造例5で製造したもの)
I−6 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸ブチルエーテル(M182−3EO−Bu、後述する製造例6で製造したもの)
I−7 ポリオキシエチレンパルミチン酸2エチルヘキシルエーテル(C16:0−2EO−2EH、後述する製造例7で製造したもの)
I−8 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸2エチルヘキシルエーテル(M182−2EO−2EH、後述する製造例8で製造したもの)
I−9 ポリオキシエチレンアラキドン酸2エチルヘキシルエーテル(C20:4−2EO−2EH、後述する製造例9で製造したもの)
I−10 ポリオキシエチレンベヘン酸2エチルヘキシルエーテル(C22:0−2EO−2EH、後述する製造例10で製造したもの)
比較例化合物
I´−1 ポリオキシエチレンラウリン酸メチルエーテル(C12−3EO−Me、後述する製造例11で製造したもの)
I´−2 ポリオキシプロピレンラウリン酸メチルエーテル(C12−3PO−Me、後述する製造例12で製造したもの)
I´−3 ポリオキシプロピレンリグノセリン酸メチルエーテル(C24:0−3PO−Me、後述する製造例13で製造したもの)
I´−4 ポリオキシエチレンオレイン酸(C18:1−2EO−OH、和光純薬株式会社製試薬、ポリオキシエチレンモノオレート、EO=2)
I´−5 ポリオキシエチレンオレイン酸(C18:1−6EO−OH、和光純薬株式会社製試薬、ポリオキシエチレンモノオレート、EO=6)
I´−6 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸2エチルヘキシルエーテル(M182−2EO−2EH、後述する製造例14で製造したもの)
I´−7 ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−3PO−Me、後述する製造例15で製造したもの)
I´−8 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸アルキルエーテル(M182−3EO−secC12〜14、後述する製造例16で製造したもの)
I´−9 オレイン酸2エチルヘキシル(C18:1−2EH、日油株式会社製、ユニスターMB−881)
I´−10 ポリオキシエチレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−7EO−Me、後述する製造例17で製造したもの)
I´−11 ポリオキシプロピレンC18混合脂肪酸メチルエーテル(M182−7PO−Me、後述する製造例18で製造したもの)
【0064】
(2)評価方法
本実施例における切削油基油および研削油基油の動粘度、表面張力、引火点評価などの測定方法、ならびに切削油性能として、油の持ち出し量および冷却性の評価方法を以下に示す。
[動粘度]
動粘度(単位:mm
2/s)は、JIS K2283に準拠して測定した。具体的には、試料をキャノンフェンスケ型動粘度管に採取し、40℃に保持した恒温槽で30分以上保温した。その後、該キャノンフェンスケ型動粘度管において一定高さから試料を流下させた際の時間を計測し、各温度における動粘度(単位:mm
2/s)を求めた。求めた動粘度を下記評価基準に分類し、「AおよびAA」を合格とした。
<評価基準>
AA:12mm
2/s以下
A :12mm
2/s超〜14mm
2/s以下
B :14mm
2/s超
[表面張力]
表面張力は、表面張力測定器(協和科学株式会社製、KYOWA CBVP SURFACE TENSIOMETER A3)を用いて測定した。清浄なガラスプレートを準備し、校正を行った後、試料をシャーレ(直径65mm)に液深8mmまで採取した。その後、試料の液面とガラスプレートが接触した際の表面張力値を読み取り、3回測定した平均値を記録した。
34mN/m未満をA、34mN/m以上をBとし、「A」を合格とした。
[引火点]
引火点は、JIS K2265 クリーブランド開放式に準拠して測定した。
引火点260℃以上をAA、250℃以上260℃未満をA、250℃未満をBとし、「AおよびAA」を合格とした。
[油持ち出し量評価]
JISK2246(さび止め油) 6.19に準拠し、縦80mm、横60mm、厚さ1〜2mmの試験片を試料油中に1分間浸漬し、引き上げ、24時間垂直に吊るした後、試験片の質量を測定し、単位面積当たりの付着量に換算した。
付着量が5mg/cm
2未満を「A」、5mg/cm
2以上を「B」とし、「A」を合格とした。
[冷却性]
JIS A2017材を以下条件にて10分間エンドミル加工し、加工後の被削材の表面温度(℃)を測定し、冷却性を評価した。加工初期の表面温度25±1℃に対し、加工後の金属表面温度が50℃未満を「A」、50℃以上を「B」とし、「A」を合格とした。
使用装置:立形マシニングセンター MC−510VF(松浦機械製作所製)
被加工材 :JIS A2017(アルミ合金)
工具材料:高速度工具鋼(JIS SKH4)
切削速度:V=200m/min
送り速度:f=0.1/rev
切り込み:3mm
初期油温:25±1℃
切削油量:3L/min
[総合評価]
動粘度、引火点、冷却性評価がいずれも「A」である場合を総合評価「A」とし、動粘度が「AA」、引火点が「A」または「AA」、冷却性が「A」である場合を、総合評価「AA」とした。
[平均付加モル数の算出方法]
化合物(B)におけるEO(エチレンオキシド)、PO(プロピレンオキシド)の平均付加モル数は、原料及びアルキレンオキシドの仕込みの質量の収支から計算で求めた。ただし、EO、POの付加反応後に蒸留を行った場合には、以下の
1H−NMR分析により平均付加モル数を求めた。
化合物30mgを4mLの重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR(300MHz、日本電子株式会社製 FT NMR SYSTEM JNM−LA300)にて測定した。重クロロホルムのケミカルシフトの7.30ppm基準として、ケミカルシフト0.87ppm(アルコール由来の末端メチル)、1.13〜1.15ppm(POの側鎖メチル)、3.32〜3.66ppm(POのメチンとメチレン)、3.52〜3.71ppm(EOのメチレン)の各ピークの積分値比率から計算で求めた。
[末端OHの定量方法]
得られた化合物について、JIS K1557「ポリウレタン用ポリエーテル試験方法」に記載の無水フタル化法に準拠し、試料の水酸基価を定量した。本試験は、OH基を有する化合物を過剰の無水フタル酸と反応させ、残った無水フタル酸の量をN/2水酸化ナトリウム溶液で滴定してOH基の量を求める試験法である。
試料30gをフラスコにはかりとり、無水フタル酸のピリジン溶液25mlをホールピペットで正確に加え、反応フラスコにエアーコンデンサーを付け、98±2℃の定温浴中でときどき穏やかに振り動かしながら2時間加熱した。その後、反応混合液の温度が、室温になるまで放置し、エアーコンデンサーをピリジンで洗浄した後でN/2水酸化ナトリウム溶液50mlをホールピペットで正確に加えた。次いで指示薬としてフェノールフタレインのピリジン溶液を5滴加え、さらにN/2水酸化ナトリウム溶液で滴定し、少なくとも15秒間紅色を保つ点を終点とした。なお、同一条件で空試験も実施した。得られた結果から、以下の式にて水酸基価を算出した。
水酸基価=28.05×(B−A)×f/S
A:試料の滴定に要したN/2水酸化ナトリウム溶液の量(ml)
B:空試験の滴定に要したN/2水酸化ナトリウム溶液の量(ml)
f:N/2水酸化ナトリウム溶液のファクター
S:試料の重さ(g)
【0065】
実施化合物の製造方法
(製造例1)I−1の調製
5Lの四つ口フラスコに、オレイン酸メチル(パーム油由来の炭素数18留分を主成分とするC18混合脂肪酸メチルエステル(R
1−COの炭素数:C16/C18:0/C18:1/C18:2=3/10/70/17)、商品名:パステルM−182、ライオン株式会社製)1075gと、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル:ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名「ダワノールTPnB」を944g(オレイン酸メチル1モルに対し、1.05モル相当)と、エステル交換触媒であるテトライソプロポキシチタネート(TPT)2.0gとを仕込み、窒素置換を行った。その後、窒素を1mL/分の流量で流通させながら、液温が160℃になるまで昇温してエステル交換反応を行い、反応により生成したメタノールを蒸留により除去した。メタノールを除去した後、さらに0.6kPaまで徐々に減圧しながら280℃になるまで昇温し、未反応のオレイン酸メチルとトリプロピレングリコールモノブチルエーテルを合計で1%以下として粗製物(F1)を得た。次いで、粗製物(F1)1500gに対し、キョーワード500SHを30g(粗製物(F1)に対して2質量%に相当)添加し、液温を100℃に維持しつつ1時間攪拌し、触媒の吸着処理を行った。その後、ろ過助剤としてハイフロスーパーセルを7.5g(粗製物(F1)に対し0.5質量%に相当)添加し、10分攪拌して均一に分散させた後、80℃で加圧ろ過を行い、水酸基価が0.5mgKOH/gである化合物I−1(M182−3PO−Bu、R
1=C
17H
33、R
3=C
4H
9)を得た。
(製造例2)I−2の調製
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、トリエチレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤社製、商品名「メチルトリグリコール(MTG)」を739g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1273g用いた以外は製造例1と同様にして、水酸基価が0.3mgKOH/gであるI−2(M182−3EO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
(製造例3)I−3の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、ステアリン酸メチル(R
1−COの炭素数:C18:0、商品名:パステルM−180、ライオン株式会社製)を1139g、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤社製、商品名「メチルポリグリコール(MPG)」を868g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.8mgKOH/gであるI−3(C18:0−4.2EO−Me、R
1=C
17H
35、R
3=CH
3)を得た。
(製造例4)I−4の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、オレイン酸(R
1−COの炭素数:C18:1、NAT OLEO株式会社製、Oleic acid、NOSB176/0169)を1091g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを890g、エステル化触媒としてPTSを4.95g仕込んだ。次いで、攪拌しながら180℃まで昇温し、副生物である水を除去した後、210℃まで昇温しながら段階的に0.6kPaまで減圧した。得られた粗製物に対し、キョーワード500SHを30g(粗製物に対して2質量%に相当)添加し、液温を100℃に維持しつつ1時間攪拌し、触媒の吸着処理を行った。その後、さらにろ過助剤としてハイフロスーパーセルを7.5g(粗製物に対し0.5質量%に相当)添加し、10分攪拌して均一に分散させた後、80℃で加圧ろ過を行い、水酸基価が1.3mgKOH/gであるI−4(C18:1−4.2EO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
(製造例5)I−5の調製
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを868g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1132g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.5mgKOH/gであるI−5(M182−4.2EO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
(製造例6)I−6の調製
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、トリエチレングリコールモノブチルエーテル:日本乳化剤製、製品名「ブチルトリグリコール(BTG)」を846g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1160g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.7mgKOH/gであるI−6(M182−3EO−Bu、R
1=C
17H
33、R
3=C
4H
9)を得た。
(製造例7)I−7の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、パルミチン酸メチル(R
1−COの炭素数:C16:0のメチルエステル、商品名:パステルM−16、ライオン株式会社製)を1080g、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル:日本乳化剤製、製品名「2エチルヘキシルジグリコール(EHDG)」を917g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.1mgKOH/gであるI−7(C16:0−2EO−2EH、R
1=C
15H
31、R
3=C
8H
17)を得た。
(製造例8)I−8の調製
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルを873g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1132g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.3mgKOH/gであるI−8(M182−2EO−2EH、R
1=C
17H
33、R
3=C
8H
17)を得た。
(製造例9)I−9の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、アラキドン酸メチルエステル(R
1−COの炭素数:C20:4のメチルエステル、和光純薬株式会社製)を1183g、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルを851g用い、300℃まで昇温した以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.9mgKOH/gであるI−9(C20:4−2EO−2EH、R
1=C
19H
31、R
3=C
8H
17)を得た。
(製造例10)I−10の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、ベヘン酸メチルエステル(R
1−COの炭素数:C22:0のメチルエステル、和光純薬株式会社製)を1215g、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルを786g用い、320℃まで昇温した以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が1.8mgKOH/gであるI−10(C22:0−2EO−2EH、R
1=C
21H
43、R
3=C
8H
17)を得た。
得られた実施化合物の動粘度(40℃)、表面張力、引火点、流動点の評価結果ならびに油持ち出し量および冷却性評価の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
比較化合物の製造方法
(製造例11)I´−1の調製
パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルに換えて、ラウリン酸メチル(R
1−COの炭素数:C12のメチルエステル、商品名:パステルM−12、ライオン株式会社製)を1123g、トリエチレングリコールモノブチルエーテルに換えて、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを903g使用し、230℃まで昇温した以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.1mgKOH/gであるI´−1(C12−3EO−Me、R
1=C
11H
23、R
3=CH
3)を得た。
(製造例12)I´−2の調製
トリエチレングリコールモノブチルエーテルに換えて、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを1032g、ラウリン酸メチルを1021g使用し、230℃まで昇温した以外は製造例1と同様にして、水酸基価が0.3mgKOH/gであるI´−2(C12−3PO−Me、R
1=C
11H
23、R
3=CH
3)を得た。
(製造例13)I´−3の調製
オレイン酸に換えて、リグノセリン酸(R
1の−COの炭素数:C24:0、和光純薬株式会社製)を1228g、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを722g用いた以外は製造例4と同様にして、水酸基価が0.9mgKOH/gであるI´−3(C24:0−3PO−Me、R
1=C
23H
47、R
3=CH
3)を得た。
(製造例14)I´−6の調製
ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルを873g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1132g用い、副生するメタノールを除去した後の原料除去時の減圧度を1.2kPaとした以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が3.6mgKOH/gであるI´−6(M182−2EO−2EH、R
1=C
17H
33、R
3=C
8H
17)を得た。
(製造例15)I´−7の調製
ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルに換えて、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤株式会社製、商品名「メチルプロピレントリグリコール(MFTG)」825g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを1132g用いた以外は、製造例14と同様にして、水酸基価が2.5mgKOH/gであるI´−7(M182−3PO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
(製造例16)I´−8の調製
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、ソフタノール30(R
3の炭素数が12〜14である、C12〜14−3EO、日本触媒株式会社製)を1102g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを934g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が1.0mgKOH/gであるI´−8(M182−3EO−C12〜14、R
1=C
17H
33、R
3=C
12H
25〜C
14H
29)を得た。
(製造例17)I´−10の調製
4Lオートクレーブ内の窒素置換を2度行った後、トリエチレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤製、製品名「メチルトリグリコール(MTG)」)を1478gと、触媒として28質量%ナトリウムメトキシド8.9gを仕込んだ。その後、90℃まで昇温し、EOを991g(MTG1モルに対して2.5モルに相当)を徐々に導入してEO付加反応を行った。EO導入時の圧力は0.48MPaであった。反応進行と共に圧力が低下し、1時間後に0.29MPaで一定となるまでEO付加反応を継続して行った。冷却後、キョーワード600S及びキョーワード700SL(以上、無機合成吸着剤、協和化学工業株式会社製)を各20g(粗製物に対して1質量%)添加し、95℃で30分間攪拌して触媒の吸着処理を行い、80℃で加圧ろ過による固液分離を行うことで一次中間体A´(MeO−5.5EO−H)を得た。さらに、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら常温から180℃まで昇温することで、EOの付加モル数が0〜4の低沸点留分を除去した二次中間体A´(MeO−7EO−H、蒸留品)を得た。
次いで、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、二次中間体A´を1089g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを905g用いた以外は、製造例1と同様にして、水酸基価が0.5mgKOH/gであるI´−10(M182−7EO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
(製造例18)I´−11の調製
4Lオートクレーブ内の窒素置換を2度行った後、メタノール(純正化学株式会社製)388gと、触媒として28質量%ナトリウムメトキシド8.9gを仕込んだ。その後、90℃まで昇温し、POを2112g(メタノール1モルに対して3.0モル相当)を徐々に導入してPO付加反応を行った。PO導入時の圧力は0.48MPaであった。反応進行と共に圧力が低下し、2時間後に0.39MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行い、一次中間体B´(MeO−3PO−H)を得た。一次中間体B´1223gを4Lオートクレーブに仕込み、90℃まで昇温した後、さらにPO861g(一時中間体B´1モルに対して2.5モルに相当)を徐々に導入してPO付加反応を行った。PO導入時の圧力は0.49MPaあった。その後圧力が反応進行と共に低下し、2時間後に0.38MPaで一定となるまでPO付加反応を継続して行った。冷却後、キョーワード600S及びキョーワード700SL(以上、無機合成吸着剤、協和化学工業株式会社製)を各20g(粗製物に対して1質量%)添加し、95℃で30分間攪拌して触媒の吸着処理を行い、80℃で加圧ろ過を行うことで二次中間体B´(MeO−5.5PO−H)を得た。さらに、常圧から5Torr(0.7kPa)まで段階的に減圧しながら、常温から200℃まで昇温することで、POの付加モル数が0〜4の低沸点留分を除去した三次中間体B´(MeO−7PO−H、蒸留品)を得た。
トリプロピレングリコールモノブチルエーテルに換えて、三次中間体B´を1228g、パーム油由来のC18混合脂肪酸メチルエステルを792g用いた以外は製造例1と同様にして、水酸基価が0.3mgKOH/gであるI´−11(M182−7PO−Me、R
1=C
17H
33、R
3=CH
3)を得た。
なお、比較品I´−4、I´−5は試薬、I´−9は市販品を入手して用いた。
I´−4について
末端がOHとなる比較構造のI´−4(C18:1−2EO−OH、R
1=C
17H
33、R
3=H)について、製造例1と同様の方法で水酸基価を測定した結果、152.4mgKOH/gであった。
I´−5について
同様に、末端がOHとなる比較構造のI´−5(C18:1−6EO−OH、R
1=C
17H
33、R
3=H)について、製造例1と同様の方法で水酸基価を測定した結果、103.1mgKOH/gであった。
I´−9について
アルキレンオキシド構造を有さない比較構造であるI´−9(C18:1−2EH、R
1=C
17H
33、R
3=C
8H
17)について、製造例1と同様の方法で水酸基価を測定した結果、0.1mgKOH/gであった。
得られた比較化合物の動粘度(40℃)、表面張力、引火点、流動点の評価結果ならびに油持ち出し量および冷却性評価の結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜10は、40℃動粘度が13.9mm
2/s以下と低く、かつ表面張力も33.9mN/m以下と低いものであった。加えて、実施例1〜10の引火点は250℃以上と高いものであった。特に、実施例1、2、5、6、7、8は動粘度が12mm
2/sと低いため動粘度評価、総合評価ともに「AA」であった。
一方で表2に示すように、R
1−COの炭素数が12と少ない比較例1、2では動粘度は「AA」、表面張力は「A」であったが引火点が200℃前後で「B」であり、R
1−COの炭素数がC24:0と多い比較例3では引火点は「AA」だが40℃動粘度および表面張力が「B」であった。R
3の炭素数が0、すなわち末端がOH基である比較例4、5では、実施例よりも分子量が少ないにも関わらず、40℃動粘度は22.7および36.7mm
2/sと高いため「B」であり、さらに表面張力も34.3、34.4mN/mと高いため「B」であった。加えて、引火点も250℃未満で「B」であり、実施化合物よりいずれの性能も劣っていた。水酸基価が3.6mgKOH/g以上である比較例6は、実施例8と同じ構造であるにも関わらず、引火点が低下し、「B」であった。R
3の炭素数が12以上である比較例8では、表面張力および引火点は「A」であるが、40℃動粘度が「B」であった。AO構造を含まない比較例9では、動粘度および表面張力は「A」であるが、引火点が「B」であった。AOの付加モル数が7と大きい比較例10、11では、引火点は「AA」であるものの、動粘度および表面張力は「B」であった。
また、動粘度が低い実施例1〜10の油持ち出し量は最大でも4.7mg/cm
2であり、動粘度が高い比較例4、5、8、10、11よりも油持ち出し量が6〜34%以上減少した。金属表面の冷却性も、比較例4、5、8、10、11に比べ、いずれの実施例でも向上した。なお、油持ち出し量および冷却性に優れる比較例1、2、3、6、7、9は引火点が低く、引火危険性が十分に回避できないため、実用上では不十分である。
これらの結果から、本発明に係る金属加工用不水溶性切削油基油または研削油基油は、高い引火点を維持したまま、低い動粘度と低い表面張力を満足することができ、金属表面および加工点の冷却性と引火危険性の低減が可能となることが判明した。