(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法の一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法は、放射性セシウムを含む焼却灰と吸着材と水とを混合する混合工程を有するものである。
前記焼却灰の洗浄方法によれば、前記混合工程によって、焼却灰に含まれていた放射性セシウムを水に溶解させつつ、放射性セシウムを吸着材に吸着させることができるため、水に溶解した放射性セシウムの生成を抑制できる。
【0019】
前記洗浄方法は、さらに、前記混合工程にて混合した混合物を固液分離することによって前記混合物よりも固形分が高まった濃縮体と前記混合物よりも固形分が減少した液体とを得る分離工程と、該分離工程で得た液体に含まれる放射性セシウムを吸着材に吸着させることによって前記液体に含まれる放射性セシウムの量を減らした浄化液を得る浄化工程とを有する
。
【0020】
前記洗浄方法は、例えば
図1に示すような洗浄装置1を用いて行うことができる。
図1は、前記洗浄装置1を模式的に表した模式図である。
【0021】
前記洗浄装置1は、前記焼却灰と前記吸着材と前記水とを混合する混合部2と、該混合部2で混合された混合物を固液分離することにより前記混合物よりも固形分が高まった濃縮体と前記混合物よりも固形分が減少した液体とを得る分離部3と、該分離部3で得た液体に含まれる放射性セシウムを吸着材に吸着させることによって前記液体に含まれる放射性セシウムの量を減らした浄化液を得る浄化部4とを備えている。
そして、前記洗浄装置1は、混合部2で混合した混合物を分離部3へ送り、分離部3にて濃縮体と液体とを得て、該液体を浄化部4へ送るように構成されている。また、前記洗浄装置1は、前記液体に含まれる放射性セシウムを浄化部4にて吸着材に吸着させて減らすことによって前記液体よりも放射性セシウムの量が減った浄化液を得るように構成されている。
【0022】
前記混合部2は、前記焼却灰と前記吸着材と前記水との混合物を内部に収容する混合槽2aと、混合槽2a内の混合物を撹拌する撹拌機2bとを備え、混合槽2a内で撹拌機2bによって焼却灰と吸着材と水とを混合するように構成されている。
【0023】
前記分離部3は、例えば、一般的な固液分離機3aを備え、固液分離機3aによって混合部2から送られた混合物を前記濃縮体と前記液体とに分離するように構成されている。
【0024】
前記固液分離機3aとしては、一般的なものが採用され、例えば、フィルタープレスやベルトプレスなどが採用される。
【0025】
前記浄化部4は、例えば、吸着材を内部に含む中空筒状の吸着塔4aを備え、分離部3で得た液体が吸着塔4a内を通ることによって、分離部3で得た液体に含まれる放射性セシウムを吸着塔4a内の吸着材に吸着させ、前記液体よりも放射性セシウム含量が減少した浄化液を得るように構成されている。なお、前記浄化部4における吸着材としては、上述したものと同様のものが採用されることが好ましい。
【0026】
前記混合工程では、前記混合部2において、放射性セシウムを含む焼却灰と、吸着材と、水とを混合する。
具体的には、前記混合工程では、例えば、放射性セシウムを含む焼却灰と、吸着材と、水とを混合槽2a内に供給し、供給されたものを撹拌機2bによって撹拌することにより、焼却灰と吸着材と水とを混合する。そして、焼却灰と吸着材と水との混合物を得る。
【0027】
前記混合工程によれば、焼却灰に含まれ水に溶解しやすい状態にある放射性セシウムが水に溶解するため、放射性セシウムが溶解した分、焼却灰に含まれていた放射性セシウムを減らすことができる。
【0028】
前記混合工程によれば、焼却灰に含まれていた放射性セシウムを水に溶解させつつ、放射性セシウムを吸着材に吸着させることができる。放射性セシウムが吸着材に吸着した分、水に溶解した放射性セシウムの生成を抑制できる。なお、吸着材に吸着した放射性セシウムは、水に溶解しにくい状態となっている。
【0029】
また、前記混合工程によれば、上述したように、放射性セシウムの吸着材への吸着によって、焼却灰に含まれ水に溶解しやすい状態にあった放射性セシウムを水に溶解しにくい状態のものとすることができる。
即ち、前記混合工程によれば、放射性セシウムを焼却灰から水に溶解させることによって焼却灰に含まれていた放射性セシウムの量を減らしつつ、水に溶解した放射性セシウムを吸着材に吸着させることができ、従って、放射性セシウムを水に溶解しにくい状態とすることができる。これにより、水に溶解した放射性セシウムの生成を抑えることができる。
【0030】
前記放射性セシウムを含む焼却灰は、例えば、放射性セシウムを含む被焼却物が焼却されることにより生じる。前記放射性セシウムを含む焼却灰は、通常、粒状である。
【0031】
前記焼却灰としては、焼却後の残渣である焼却主灰(ボトムアッシュ)、又は、焼却排ガスに含まれる焼却飛灰(フライアッシュ)などが挙げられる。
前記焼却灰の洗浄方法においては、焼却主灰よりも焼却飛灰からの方が放射性セシウムがより水に溶解しやすいという点、また、焼却主灰よりも焼却飛灰における方が放射性セシウムの濃度が高いという点で、前記焼却灰として焼却飛灰を採用することが好ましい。
【0032】
前記焼却灰における放射性セシウムの量は、放射線測定器を用いた測定によってベクレル(Bq)で表される。具体的には、前記焼却灰における放射性セシウムの濃度は、例えば、Bq/kgの単位で表される。
【0033】
前記放射線測定器としては、一般的なものを用いることができる。前記放射線測定器としては、具体的には例えば、ガイガーミュラー計数管(GM管)を備えたもの、シンチレータを備えたNaI(TI)シンチレーション検出器、又は、半導体を備えたゲルマニウム半導体検出器などを用いることができる。
【0034】
前記放射線測定器は、放射性セシウムに特有のγ線エネルギーを特定し、そのγ線エネルギー量を量るように構成されている。
【0035】
前記混合工程においては、焼却灰を水と混合することにより、焼却灰に含まれていた無機塩類が溶出する。溶出した無機塩類の量を表すものとしては、例えば、総溶解固形分(TDS:Total Dissolved Solids)が挙げられる。
前記総溶解固形分は、混合工程で混合した混合物を5Aろ紙でろ過し、ろ過後のろ紙を105℃〜150℃で乾燥し、ろ過前の質量と乾燥後の質量とから算出によって求める。
【0036】
前記放射性セシウムとしては、セシウム134(
134Cs)、セシウム137(
137Cs)などが挙げられる。これらの放射性セシウムは、例えば、原子力発電所において核分裂によって発生し得る。
【0037】
前記放射性セシウムは、放射性を有する点以外は、放射性を有さない被放射性セシウムと同様の性質を有している。
前記放射性セシウムは、具体的には、水に溶解しやすい性質を有している。より具体的には、前記焼却灰に含まれる放射性セシウムの全量に対して、50〜95質量%の放射性セシウムが焼却灰から水に溶解し得る。
【0038】
前記焼却灰は、例えば、5,000〜1,000,000 Bq/kgの放射性セシウムを含み得る。
【0039】
前記吸着材は、少なくともセシウムイオンを吸着するものである。前記吸着材は、通常、粒状である。
【0040】
前記吸着材としては、例えば、ゼオライト等の無機吸着材、陽イオンを吸着するイオン交換樹脂、又は、フェロシアン化コバルト、フェロシアン化銅、若しくはフェロシアン化第二鉄などのフェロシアン化金属化合物などが採用される。
【0041】
前記吸着材としては、比較的安価でありながら、セシウムの吸着性能に優れるという点でゼオライトが好ましい。
【0042】
前記混合工程において用いる水としては、例えば、水道水、工業用水、地下水などが採用される。
【0043】
前記混合工程で混合した混合物のpHは、特に限定されないが、通常、pH2〜13である。
【0044】
前記混合工程においては、pHを調整するための酸性物質又はアルカリ性物質などがさらに混合され得る。
前記酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸等が挙げられる。
前記アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの無機アルカリ性物質等が挙げられる。
【0045】
前記混合工程では、焼却灰に対する水の質量比が、通常、1〜20倍である。
【0046】
前記混合工程では、吸着材がゼオライトであれば、焼却灰に対する吸着材の質量比が、0.05倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましい。焼却灰に対する吸着材の質量比が0.05倍以上であることにより、焼却灰に含まれていた放射性セシウムをより確実に吸着材に吸着させることができるという利点がある。
また、前記混合工程では、焼却灰に対する吸着材の質量比が、10.0倍以下であることが好ましく、5.0倍以下であることがより好ましい。焼却灰に対する吸着材の質量比が10.0倍以下であることにより、放射性セシウムを吸着させるために用いる吸着材の量をより少なくできるという利点がある。
【0047】
前記混合工程では、吸着材としてゼオライトを採用したときに、前記分離工程で得る液体における放射性セシウム量が5〜1000Bq/Lとなるように、前記焼却灰と前記吸着材と前記水とを混合することが好ましく、20〜1000Bq/Lとなるように混合することがより好ましい。
上記のごとく前記混合工程を行うことにより、混合工程で用いる吸着材と浄化工程で用いる吸着材との合計量をより少なくできるという利点がある。
【0048】
前記混合工程において、例えば、前記焼却灰に対する前記吸着材の量を増やすことにより、分離工程で得る液体における放射性セシウム量を減らすことができる。
【0049】
前記混合工程では、混合温度が、通常、0〜50℃である。
【0050】
前記分離工程では、混合工程にて混合した混合物を分離部3の固液分離機3aによって固液分離することにより、前記混合物よりも固形分が高まった濃縮体と、前記混合物よりも固形分が減少した液体とを得る。
【0051】
前記濃縮体は、前記混合部2で混合される前より放射性セシウムの含有量が減った焼却灰と、前記混合部2で混合される前より放射性セシウムの含有量が増えた吸着材とを少なくとも含んでいる。
【0052】
前記濃縮体における吸着材には、混合工程前の焼却灰に含まれていた放射性セシウムが吸着している。従って、吸着材に放射性セシウムが吸着している分、前記液体に含まれる放射性セシウムの量は、少ないものとなる。即ち、吸着材に放射性セシウムが吸着している分、水に溶解した放射性セシウムの生成が抑制されている。
【0053】
前記濃縮体は、放射性セシウムを含むものの、該放射性セシウムが吸着材に吸着した状態であることから、放射性セシウムの溶出が抑制されている。
前記濃縮体は、例えば、さらに水分を減少させる乾燥処理が施され、地中に埋め立てられて処分され得る。埋め立てられた濃縮体においては、放射性セシウムが吸着材に吸着しているため、放射性セシウムの溶出が抑制されている。
【0054】
前記濃縮体の放射性セシウムの含有量は、10万Bq/kg以下であることが好ましい。
前記濃縮体の放射性セシウムの含有量が10万Bq/kg以下であり、且つ、JIS K0058−1に定められた方法で調製された溶出液におけるセシウム137の放射能濃度が150Bq/L以下であれば、濃縮体からの放射性セシウムの溶出が十分に抑制されていることから、例えば、濃縮体をそのまま埋め立て処分することができる。
前記濃縮体においては、放射性セシウムが吸着材に吸着しているため、放射性セシウムが溶出しにくい状態となっている。従って、前記濃縮体は、放射性セシウムの溶出が抑制されているという点で、そのまま埋め立て処分され得るものとして好適である。
【0055】
なお、前記濃縮体の放射性セシウムの含有量が10万Bq/kg以下であり、JIS K0058−1に定められた方法で調製された溶出液におけるセシウム137の放射能濃度が150Bq/Lを超えていても、例えば、濃縮体をコンクリートとともに固化させることにより、濃縮体からの放射性セシウムの溶出を抑制でき、濃縮体をコンクリートとともに埋め立て処分することもできる。
【0056】
前記分離工程で得る液体は、固液分離によって前記混合物よりも固形分が減少した、水を含むものである。前記液体は、放射性セシウムを含み得る。
【0057】
前記分離工程で得る液体に含まれる放射性セシウムの量としては、例えば、10〜1000Bq/Lが挙げられる。
【0058】
前記浄化工程では、分離工程で得た液体を浄化部4へ送り、該液体に含まれる放射性セシウムを浄化部4の吸着材に吸着させ、液体よりも放射性セシウムの量が減った浄化液を得る。
【0059】
具体的には、前記浄化工程では、例えば、吸着材を内部に充填した浄化部4としての吸着塔4aを用い、分離工程で得た液体を吸着塔4a内に通すことによって、前記液体に含まれる放射性セシウムを浄化部4の吸着材に吸着させ、前記液体よりも放射性セシウムの量が減った浄化液を得る。
【0060】
前記浄化工程においては、前記液体に含まれる放射性セシウムを吸着材に吸着させることから、前記液体よりも放射性セシウムの量が減った浄化液を得ることができる。また、前記液体に含まれる放射性セシウムを吸着材に吸着させることから、水に溶解した放射性セシウムをさらに減らすことができる。
【0061】
前記浄化工程において用いる吸着材と、前記混合工程において用いる吸着材とは、同じ吸着材であることが好ましい。同じ吸着材とは、吸着材に最も多く含まれる化合物がいずれの吸着材においても同じであることを意味する。
前記浄化工程において用いる吸着材と、前記混合工程において用いる吸着材とは、いずれもゼオライトであることが好ましい。
【0062】
前記洗浄方法においては、前記浄化工程で放射性セシウムを吸着させた吸着材を前記混合工程における吸着材として用いることが好ましい。
【0063】
前記洗浄方法においては、通常、吸着材単位質量あたり、浄化工程における放射性セシウム量よりも、混合工程における放射性セシウム量の方が多いため、混合工程において吸着材が吸着する放射性セシウム量の方が多い。即ち、浄化工程にて用いる吸着材は、混合工程にて用いる吸着材よりも放射性セシウムなどの吸着量が少ない。従って、浄化工程で用いた吸着材は、放射性セシウムを吸着する能力を未だに有し得るため、放射性セシウム濃度が比較的高い混合工程においてさらに用いることができる。このようにして吸着材を浄化工程及び混合工程の両方で用いることにより、前記洗浄方法において用いる吸着材の総量を抑制できる。
【0064】
本実施形態の放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法に限定されるものではない。
また、一般の放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0065】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
下記に示すようにして、放射性セシウムを含む焼却灰の洗浄方法を行った。
即ち、焼却灰に対する吸着材の質量比を変えた混合工程をそれぞれ行った。そして、混合工程後に固液分離によって得た液体における放射性セシウムの量を測定した。
【0067】
(試験例1〜3)
・混合工程
[焼却灰]
26,600Bq/kgの放射性セシウムを含む焼却飛灰(140g)
[吸着材]
ゼオライト(新東北化学工業社製 粒状)
焼却灰に対する質量比が、それぞれ、0.1倍、0.5倍、1.0倍
[水]
水道水(700mL) 焼却灰1kgに対して5Lの量
上記の焼却灰、吸着材、及び水を混合することにより混合工程をそれぞれ行い、混合工程後に固液分離によって得た液体における放射性セシウムの量を放射線測定器(NaI(TI)シンチレーション検出器)によって測定した。その結果を
図2に示す。
なお、
図2における曲線は、計算によって予測したものである。計算における計算条件は、下記の通りである。
[焼却灰]:上記と同じもの
[焼却灰に含まれる総セシウム濃度]:3mg/kg
[焼却灰1kgに対する水の容積量]:5倍
[総溶解固形分(TDS)]:50,000mg/L(焼却灰の25質量%分)
[焼却灰からの総セシウムの溶出率]:90質量%
【0068】
図1に示されるように、放射性セシウムを含む焼却飛灰と、吸着材と、水とを混合することにより、水に溶解した放射性セシウムの生成を抑制することができる。
【0069】
さらに、放射性セシウムを吸着した吸着材からの放射性セシウムの溶出量を確認するための試験を行った。
【0070】
(試験例4〜6)
下記のようにして放射性セシウムを吸着した吸着材からの放射性セシウムの溶出率を求めた。即ち、予め、放射性セシウムを約100Bq/L含む試験水を吸着材に通水して放射性セシウムの吸着量が飽和した吸着材を用意した。なお、飽和した吸着材における放射性セシウムの吸着量は、予め測定しておいた。
[吸着材]
ゼオライト(新東北化学工業社製 粒状)
[水]
試験例4:純水(600mL)に飽和したゼオライトを60g添加
試験例5:純水(600mL)に塩酸を添加してpHを調整後、飽和したゼオライトを60g添加
試験例6:純水(600mL)に水酸化カルシウムを添加してpHを調整後、飽和したゼオライトを60g添加
それぞれの試験例において、ゼオライトを添加した液を25℃で6時間撹拌し、5Cろ紙によるろ過によってゼオライトを除去した後の液の放射性セシウム濃度を測定した。そして、ろ過後の液中の放射性セシウムの総量と、吸着材に吸着していた放射性セシウムの総量とから溶出率を算出した。
【0071】
(試験例7〜9)
吸着材として、ゼオライトに代えて、フェロシアン化第二鉄(粒状)を用いた点以外は、それぞれ試験例4〜6と同様な試験を行った。
【0072】
上記試験例4〜9の試験結果を表1及び表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
<混合工程及び浄化工程において用いる総ゼオライト量>
下記の条件を設定し、固液分離後の液体における放射性セシウム量と、混合工程及び浄化工程において用いる総ゼオライト量との関係について、計算によってグラフ化を行った。
計算における設定条件は、下記の通りである。
[混合工程]
・焼却灰−焼却飛灰
(総Cs:3mg/kg含有、
放射性Cs:10,000、20,000、40,000、80,000Bq/kg)
・吸着材−ゼオライト
ゼオライト量:分離工程後の液体における放射性セシウム濃度が、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、750、1000、1500、1800Bq/Lとなるように、未使用のゼオライト量を設定した。
・水−純水(焼却灰に対して質量で5倍量)
[分離工程]
・混合工程後に固液分離した液体
総溶解固形分(TDS):50,000mg/L(焼却灰の25質量%)
全セシウムの溶出率:90質量%
[浄化工程]
・ゼオライト量:分離工程後の液体に対して浄化工程を行い、浄化工程後の浄化水の放射性セシウム濃度が10Bq/Lとなるように、未使用のゼオライト量を設定した。
【0076】
詳しくは、後述する
図4に示す予測式を用いて、総溶解固形分(TDS)が50,000mg/Lのときにおける非放射性セシウム濃度と、ゼオライトへの非放射性セシウム(以下、単にセシウムという)の吸着量との関係から、
図3のグラフに示す計算結果を導いた。
【0077】
図4のグラフにて示された予測式は、下記のようにして求めた。
詳しくは、まず、総溶解固形分(TDS)が、200mg/L、及び、3,500mg/Lとなるように、総溶解固形分が26,000mg/Lの浸出水(原液)を希釈して調製した水溶液と、原液水溶液とをそれぞれ1L用意した。
次に、総溶解固形分が上記3濃度の水溶液それぞれにおいて、セシウム濃度が10mg/Lとなるように塩化セシウムを添加して水溶液を調製した。そして、それぞれの水溶液に、0.1g/L、0.5g/L、1g/L、5g/L、10g/Lの量となるようにゼオライトを加えてセシウムを吸着させ、セシウムを吸着させた後のゼオライトに含まれるセシウム量をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)によって分析することにより、ゼオライト1gあたりのセシウム吸着量(mg/g)を算出した。
続いて、得られた結果を対数グラフにプロットし、各総溶解固形分濃度の水溶液それぞれに対して、最小二乗法によって、y=ax
b(xが水溶液におけるセシウム濃度であり、yがゼオライト単位質量あたりのセシウム吸着量であり、a及びbがそれぞれ係数である)で表される数式を、3濃度の総溶解固形分の水溶液ごとに算出した。
図4のグラフから把握されるように、TDS濃度が変わっても数式の傾きが一定である。係数b(傾き)が一定であるので、bを一定とし、TDS濃度とaとの関係から数式を作成し、その式を外挿することによって、50,000mg/L濃度におけるaを算出し、50,000mg/L濃度の総溶解固形分の水溶液における予測式を作った(
図4において破線で示す)。
このようにして、
図4のグラフにて示された予測式を作成した。
【0078】
図3から把握されるように、分離工程で得る液体における放射性セシウム量が5〜1000Bq/Lとなるように、混合工程において、焼却灰と吸着材と水とを混合することにより、混合工程及び浄化工程において使用する吸着材の総量をより少なくすることができる。