(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2以上の湿潤剤が、水溶性湿潤剤、皮膚浸透性湿潤剤、長期にわたる皮膚表面湿潤剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの湿潤剤を含む、請求項1に記載の非水性コーティング組成物。
前記フィルム形成ポリマーが、多糖類、セルロース及びセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドン誘導体並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の非水性コーティング組成物。
前記2以上の湿潤剤の一つが、前記非水性コーティング組成物に対して少なくとも0.1重量%のソルビトールを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水性コーティング組成物。
前記非水性コーティング組成物の20℃における粘度が20℃におけるグリセリンの粘度よりも大きい、請求項1〜11のいずれか1項に記載の非水性コーティング組成物。
エラストマー物品の調製方法であって、前記エラストマー物品の皮膚接触表面を、請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水性コーティング組成物と接触させることを有してなる方法。
前記非水性コーティング組成物を加熱する工程は、前記非水性コーティング組成物を90℃の温度にまで加熱することを含む、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「治療的」という用語は、水分、弾力、快適さ、非刺激性、皮膚保護特性の保持などの、皮膚に関連する特性を改善する効果のことを指すものとする。
【0019】
当該用語は本願明細書において、「乾燥状態」又は「非水性状態」(水分又は水の顕著な欠如を示す)との関連において用いられる。
【0020】
本発明では、本発明のコーティング組成物の特性に関連する「熱的に安定な」及び「熱安定性」という用語を用いるときは、コーティング組成物が、約90℃の高温に耐えうることを示すものとする。本発明に係る非水性コーティング組成物は、製造プロセスの一部としての、エラストマー物品の皮膚接触表面上への直接塗布に適している。処理温度としては、組成物が調製される際の温度、及び組成物がグローブに塗布される際の温度が挙げられる。コーティング組成物の処理温度は、約20℃〜約100℃で調整できる。加熱により、組成物の粘性が減少し、グローブの皮膚接触面への塗布が容易になる。
【0021】
本発明のコーティング組成物は、エラストマー物品への使用に特に適しており、例えば、それらの予想された用途の一部として、着用者の皮膚表面への緊密な接触、及び長期にわたる残存などが挙げられる。好適な皮膚接触エラストマー物品としては、グローブ(例えば産業用、医療用及び外科用グローブ)、コンドーム、指サックなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって当然処理されるラストマー物品は、当業者が容易に利用できる従来技術及び器材を使用して製造できる。例えば、エラストマーグローブは、従来の前浸漬硬化技術及び器材(例えば、Yeh、米国特許第6391409号、本願明細書に全開示内容を援用する)を使用して製造できる。
【0022】
上記コーティング組成物を塗布できるエラストマー又はエラストマー基質としては、コーティング組成物成分と化学的な適合性を有し、意図された用途(例えば外科的環境)にとり適当な、あらゆる天然若しくは合成エラストマーポリマーが挙げられる。好適なエラストマーとしては、合成及び天然ゴムラテックスが挙げられるが、これらに限定されない。使用できる天然ゴムとしては、パラゴムノキゴムラテックス及びグワユールゴムラテックスから調製されるゴムが挙げられる。使用できる合成ゴムポリマーとしては、ニトリルゴム、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレンブロックコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。また、使用できる合成ゴムとしては、アクリルジエンブロックコポリマー、アクリルゴム、ブチルゴム、EPDMゴム、ポリブタジエン、クロロスルホン化ポリエチレンゴム及びフルオロゴムなどが挙げられる。
【0023】
本発明の1つの重要な特徴は、当該非水性コーティング組成物が、製造プロセスの一部として、物品の表面上へ直接塗布できるということである。当該コーティング組成物は固体の状態で、物品の表面上においてパッケージされ、保存され、存在する。すなわち、皮膚表面と緊密に接触したとき、当該コーティング組成物は、装着の間、液体「ローション剤」に変化する。この段階において、当該コーティング組成物は、着用者に最初の治療的効果及び湿潤化効果を輸送・提供し、それらは、物品を取り出した後においてもしばらくの間皮膚表面上に残存する。
【0024】
グリセリンは、本発明の非水性コーティング組成物において二重の機能を発揮する。それは担体及び湿潤剤としても機能しうる。用語「担体」とは、有機系の、安定な、不揮発性の材料のことを指し、それはグローブに非水性コーティング組成物の成分を輸送するためのビヒクルとしての機能を果たす。それは室温及び処理温度の両方において液体である。それは100℃以上の沸点を有し、25℃において約0.001mmHg〜約760mmHgの蒸気圧を有する。この非水性組成物中の「担体」は、本発明のユニークな特性であると考えられる。
【0025】
他の有機系担体の例としては以下のものが挙げられる:
多価アルコール(例えばジグリセロール及びポリグリセリン−3などのポリグリセリン)、グリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールなど)、アルコキシル化アルコール(例えばグリセレス(glycereth)−7及びグリセレス−26)、脂肪酸エステル(例えばエチレングリコールエステル(例えばステアリン酸グリコール)、グリコールパルミテート及びグリコールオレエート)、プロピレングリコールエステル(例えばプロピレングリコールミリステート及びプロピレングリコールラウレート)、脂肪酸モノ−及びジグリセリド(例えばグリセリルラウレート、グリセリルオレエート、ジグリセリンカプリレート及びジグリセリンオレエート)、エトキシル化トリグリセリド(例えばポリエチレングリコールカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ポリエチレングリコールカプリル酸/カプリン酸グリセリド)、ポリエチレングリコールグリセリル脂肪酸エステルなどのエトキシル化グリセロールエステル、ポリオキシエチレンジグリセロールエーテル(例えばPOE(6)ジグリセロールエーテル及びPOE(40)ジグリセロールエーテル)、ポリオキシプロピレンジグリセロールエーテル(例えばPOP(4)ジグリセロールエーテル及びPOP(24)ジグリセロールエーテル)、並びにポリプロピレングリコールエーテル(例えばPPG−14ブチルエーテル及びPPG−3ミリスチルエーテル)。上記の担体は、上記の材料の任意の組合せからなってもよい。
【0026】
コーティング組成物に使用できる湿潤剤としては、多価アルコール系緩和剤及び/又は湿潤剤が挙げられる。少なくとも1つの湿潤剤を存在させるが、2つ以上の湿潤剤の組合せを使用してもよい。使用できる好適な多価アルコール系湿潤剤としては、グリセリン及びソルビトールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、グリセリン及びソルビトールの組合せが用いられる。使用できるグリセリン又は1,2,3−プロパントリオールの例は、Glycon
TMG 300である(Aldrich Chemical社製、ミルウォーキー、ウィスコンシン)。使用できるソルビトール又はD−グルシトールの1つの例は、Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から入手できるものである。
【0027】
湿潤剤成分は、組成物全体の約95.00重量%までの量で存在させてもよい。好ましくは、上記湿潤剤は約10.00%〜約95.00重量%の量で存在させる。グリセリンが湿潤剤であるときは、全非水性組成物に対して個々約50.00%〜約90.00重量%の量で存在させてもよく、好ましくは約60.00%〜約89.00重量%の量で存在させてもよい。ソルビトールが湿潤剤であるときは、個々約0.1%〜約6.00%の量で存在させてもよく、好ましくは約0.50%〜約4.00重量%の量で存在させてもよい。
【0028】
更なる湿潤剤を、上記の多価アルコールと組み合わせて用いてもよい。当該更なる湿潤剤は、同様に多価アルコールであってもよい。好ましくは、本発明の組成物は、パントテノール又は2,4−ジヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)−3,3−ジメチルブタンアミド(別名プロビタミンB)を含有する。当該物質はin vivoで局在的な水分保持性を増加させ、それにより皮膚の弾力性及び柔軟性を向上させ、皮膚の炎症及び症状を減少させ、上皮分化を刺激する。本発明に用いられる適切なパントテノールは、Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)及び第一製薬社(日本)から入手可能であり、またRitapan
TMDL(RITA社、ウッドストック、イリノイ)を購入してもよい。
【0029】
プロビタミンB(パントテノール)は、上記組成物への使用にとり好適である。パントテン酸(酸の形のパントテノール)は、ビタミンB群のメンバーであって、また脂肪酸合成酵素群の基本的な成分としての、アシルキャリヤータンパク質(ACP)の構造に含まれる構成成分でもある。しかしながら、パントテン酸の安定性はpH変化に影響されやすい。プロビタミン形パントテノールはより安定及び容易に吸収され、in vivoで酸の形態に変化するため、好ましい。パントテノールなどの更なる湿潤剤は、全非水性組成物の約0.10%〜約5.00重量%の量、好ましくは約1.50%〜約3.00重量%の量で存在してもよい。
【0030】
非水性コーティング組成物は更に、皮膚角質除去成分としてヒドロキシ酸を含有してもよい。ヒドロキシ酸は、皮膚細胞及びセラミドを生合成するケラチノサイトの増殖を促進し、表皮の厚を調整し、剥離を改良することにより、滑らかな皮膚及び若々しい外観を生じさせる。使用できる適切なヒドロキシ酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びポリヒドロキシ酸、並びにそれらの分子内ラクトン、エステル及び塩が挙げられる。モノカルボン酸の例としては、α及びβ型のそれが挙げられる。特にグルコノラクトン又はD−グルコノ−1,5−ラクトンは、比較的皮膚刺激が少なく、治療効果を発揮しうるため、好適である。使用できるグルコノラクトンの1例としては、Daniels Archer社(ミッドランド/DL、英国)又はJungbunzlauer社(ニュートンセンター、マサチューセッツ)から入手可能なグルコノ−δ−ラクトンが挙げられる。グルコノラクトンのような1つ以上のヒドロキシ酸は、全非水性組成物に対して、約0.10%〜約5.00重量%の量、好ましくは約0.10重量%〜約2.00重量%の量で存在してもよい。
【0031】
使用できる装着剤(donning agent)としては第四級アンモニウムハライド塩が挙げられ、その使用により更に抗菌特性が得られる。好適な第四アンモニウムハライド塩は、塩化セチルピリジニウム又は塩化1−ヘキサデシルピリジニウムである。使用できるセチルピリジニウムの1例は、Zeeland Chemicals社(ゼーランド、ミシガン)から入手可能なCPCである。
【0032】
使用できるその他の装着剤としては、シリコーンベースの化合物(ポリアルキルシロキサンなど)が挙げられる。使用できるポリアルキルシロキサンの1例は、ポリジメチルシロキサン分散液である。また、他のシリコーン関連の装着剤として、皮膚保護剤として機能する物質(例えばジメチコーン)を使用してもよい。
【0033】
塩化セチルピリジニウムなどの装着剤は、全非水性組成物に対して、約0.00%〜約8.00重量%の量、好ましくは約0.10%〜約6.00重量%の量で存在させてもよい。またその他の装着剤を、組成物全体に対して、約0.10%〜約8.00%の量、好ましくは約0.10%〜約0.25重量%の量で存在させてもよい。上記コーティング組成物はpH調整剤を含有してもよく、それは無機酸、有機酸又はそれらの組み合わせであってもよい。当然ながら、添加されるpH調整剤の量は変化させてもよいが、好適な化合物及びその量は、pH値が約4〜約7に調整されるように選択される。好ましくは非刺激性のpH調整剤(例えばクエン酸又は2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパン−トリカルボン酸)であり、それらはAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から市販されている。クエン酸などの1つ以上のpH調整剤を、全非水性組成物の重量に対して約0%〜約2,00%の量で適宜調節して存在させることができる。
【0034】
上記コーティング組成物に使用できる粘着防止剤としては、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、シリコーンゴム及びシリコーンエラストマなどのシリコーン、ポリジエチルジメチル塩化アンモニウムなどのカチオン性ポリマー、脂肪酸の塩及びエステル(例えばステアリン酸カリウム及びトリメチロールプロパントリイソステアレートなど)、エルカミドなどのヒドロキシアルキルアミドのカルボン酸エステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフルオロ化合物、及びアンモニウムアルキルホスフェート(例えばR.T.ヴァンダービルト社(ノーウォーク、コネティカット)から入手可能なDarvan L
TM、)などのリン酸塩などが挙げられる。1つ以上の粘着防止剤は、全非水性組成物に対して約0.25%〜約8.00重量%の量で存在させてもよい。
【0035】
本発明の非水性コーティング組成物は、コーティング組成物を「活性化する」ために必要となる局在水分(水)の取り込み及び吸収を促進するため、好ましくは水和プロモータを含有する。好適な水和プロモータとしては、酸性pH調整剤が存在するときには、更にそれに対する緩衝機能を果たす物質(例えばクエン酸ナトリウム)が挙げられる。その1つの例は、1,2,3−プロパントリカルボン酸三ナトリウム塩(例えばAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン)から市販のクエン酸ナトリウム二水和物)である。クエン酸ナトリウムなどの1つ以上の水和プロモータは、全非水性組成物に対して約0%〜約8.00%の量、好ましくは約0.5%〜約4.00重量%の量で存在させてもよい。
【0036】
「アンチエイジング」化合物などの、他の治療剤及び化粧料を使用してもよい。使用できる化粧料としては、レチノール、及び/又は、グルコノラクトン(例えばαヒドロキシラクトン)などの角質除去剤として機能する物質が挙げられる。芳香剤及び着色剤を非水性コーティング組成物に使用し、ユーザの使い勝手を向上させてもよい。
【0037】
更なる実施態様として、コーティング組成物に可塑剤を含有させ、均一な分散性を向上させてもよい。好適な可塑剤としてはクエン酸トリエチルなどのエステルが挙げられる(組成物中で、バッファとしてその更なる化学的機能を果たすため)。適切なクエン酸トリエチル又は1,2,3−プロパントリカルボン酸、2−ヒドロキシ−、トリエチルエステルの1例としては、Cognis社(シンシナティ、オハイオ)から入手可能なHydagen
TM CATが挙げられる。Hydagen
TM CATなどの1つ以上の可塑剤は、組成物全体に対して0%〜約1.00%の量、好ましくは0%〜約0.50重量%の量で存在させてもよい。
【0038】
本発明の非水性コーティング組成物は、エラストマー物品の表面への塗布前に加熱される必要がある。それにより、液体の状態で表面に塗布されることができる。非水性コーティング組成物は、グローブへの塗布の前に、約20℃〜約100℃の温度で加熱されることができる。それにより、様々なコーティング技術を使用して塗布できるようになる。好適なコーティング技術としては、浸漬及び噴霧コーティングが挙げられる。上記のコーティング組成物はその後、製造プロセスの一部において、高い粘性状態若しくは固体状態となるまで冷却される。本発明において使用できる塗布工程及び最終工程としては、タンブリングプロセス及び噴霧プロセスが挙げられる。噴霧による方法は、外科手術用又は外科用グローブの調製において好適である。タンブリングによる方法は、実験用グローブの調製において好適である。実施例において、これらの方法の各々がより詳細に説明されている。
【0039】
噴霧方法は、噴霧装置を使用して、グローブ上へ加熱されたコーティング組成物を塗布するためのプロセスである。このプロセスでは、グローブを、噴霧装置を有するタンブラ中に配置する。更に液体の状態の上記コーティング組成物を、複数の非連続的なステップにより噴霧する。一方、タンブリング方法は、グローブをタンブラに入れ、更にタンブラを上記コーティング組成物の液体で満たすことによって、グローブの表面上へ液体状のコーティング組成物を塗布する方法である。グローブはその後タンブリング又は洗浄される。使用できるタンブリングプロセスは、例えば、Chenその他の、2003年9月17日に出願の米国特許出願第10/666650号(現在、係属中)に記載されている方法と同様の方法であってもよい。更なるプロセスは、2003年9月30日に出願の特許出願第10/676,793号、2003年11月22日に出願の特許出願第10/719,573号、及び2005年2月9日に出願の特許出願第11/056628号に開示されている。
【0040】
本発明のコーティング組成物の重要な態様は、コーティング組成物中の複数の成分による、全体的な皮膚湿潤化効果であり、本発明のコーティング組成物成分の幾つかは、二重の機能を発揮しうる。上記コーティング組成物の湿潤化機能は、以下の湿潤化効果のうちの少なくとも2つに基づくものである。第1に、組成物中の幾つかの成分が、湿潤剤として機能する効果(例えばグリセリン及びソルビトール)。第2に、幾つかの成分が、皮膚浸透性の湿潤剤として機能する効果(例えばパントテノール)。第3に、幾つかの成分が、長期にわたり効果的な皮膚表面湿潤剤として機能しうる効果(例えばキトサンなどのフィルム形成ポリマー)。更に、上記の組合せを用いて、様々なタイプのエラストマー物品に関連する特徴に適合させることもできる。例えば、実験用グローブは比較的短い時間着用されるため、長期にわたる皮膚表面湿潤剤の使用は任意であってもよい。
【0041】
上記成分の様々なバリエーションや、他の成分の追加も、本発明の範囲に包含されうるが、但し、皮膚に対する当該組成物の治療的効果が著しく損なわれないことが必要である。コーティング組成物の成分を組み合わせる場合には、それらは着用者の皮膚に対する治療的効果、湿潤化効果、非刺激性、湿潤化効果に関与するものでなければならない。
【0042】
エラストマー物品が長時間装着型の物品(例えば外科医のグローブ)に用いられるとき、上記コーティング組成物は好ましくは、水溶性フィルム形成ポリマーを更に含んでなる。使用できる適切な水溶性フィルム形成ポリマーとしては、天然若しくは合成のフィルム形成ポリマーが挙げられる。カチオン性の担体に可溶なフィルム形成ポリマーが好適である。本発明に使用できる好適なフィルム形成ポリマーとしては、セルロース及びセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリビニルピロリドン誘導体、並びに多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、多糖類が担体可溶性フィルム形成ポリマーとして用いられ、最も好ましくは、当該フィルム形成ポリマーはキトサンである。
【0043】
キトサンは天然に存在するキチンから調製でき、例えば甲殻類及び昆虫の外殻などの材料から調製できる。キトサンは、脱アセチル化キチン、ポリ−D−グルコサミン、ポリグルサム(poliglusam)、β−1,4−ポリD−グルコサミン及びβ−(1,4)−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースと称することもある。本発明ではキトサン及びその誘導体が使用できる。使用できるキトサン源の1つとしては、脱アセチル化キチン及びその誘導体が挙げられ、本発明の担体中への可溶性/分散性を有する。キトサンなどの1つ以上のフィルム形成ポリマーは、それを存在させる場合には、組成物全体に対して0.00%〜約1.00重量%の量で存在させてもよい。
【0044】
水は、顕著な量で存在すべきでない。好ましくは、水の含有量は本発明のコーティング組成物の全重量に対して約1.0重量%以下である。当業者であれば、担体及び組成物中の成分が絶対的に水を含有しない訳にはゆかないことを認識するであろう。全体的に、組成比率及び成分の量は適宜調整できるが、但しかかる調整は本発明により得られる組成物の所望の特性を損なう態様で行われるべきではない。
【0045】
他の実施形態では、粒子関連の技術を上記コーティング組成物に用いて、本発明による全体的な効果及び特性を更に強化することもできる。特に、微孔性粒子を組成物中に含有させ、多くの更なる特性(例えば成分の持続的放出又は遅延放出特性)を付与することができる。好ましくは、使用する微孔性粒子は、本発明のコーティングに添加されるスキンケア成分を含浸させることのできる物質である。本発明のコーティング組成物の成分として使用できる微孔性粒子に関する技術は、米国特許第33429号、米国特許第4873091号、米国特許第4690825号、米国特許第5028435号、米国特許第5035890号、米国特許第5968543号、米国特許第5955109号、米国特許第5073365号、米国特許第5135740号、米国特許第5145675号、米国特許第5145685号、米国特許第5156843号、米国特許第5316774号、米国特許第5458890号、米国特許第5840293号、米国特許第5871722号及び米国特許第5851538号に記載されている(全開示内容を本願明細書に援用する)。使用可能な特定のマイクロスポンジ粒子の1例として、Microsponge 5700(Cardinal Health社製、サマセット、ニュージャージー)が挙げられ、それは、粒子中に吸収されたジメチコーンを、拡散によって、制御可能な態様で放出できるものである。
【0046】
本発明のコーティング組成物は、本発明の組成物との化学的適合性を有し、組成物の所望の治療特性に悪影響を与えない限り、更に有益な成分を含有してもよい。コーティング組成物に含有させてもよい更なる成分としては、限定されないが、抗菌剤、抗炎症剤、局所的なクレンジング剤、制汗剤、有機溶媒などが挙げられる。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、エラストマー物品の製造分野の当業者が利用できる通常の装備及び技術を使用して、エラストマー物品の表面に容易に塗布でき、かかる技術としてはオンライン及びオフラインの技術(例えば浸漬、噴霧、タンブリング)などが挙げられる。コーティングされた外科用グローブの調製の際の好適な塗布方法は、オフラインでの噴霧方法である。コーティングされた試験用グローブの調製の場合、好適なオンラインでの方法はディップコーティングであり、好適なオフラインでの方法はタンブリングコーティング方法である。
【0048】
例えば外科用のグローブを使用する場合、ユーザはディスペンサ又はパッケージからグローブを取り出す。グローブを装着する前に、ユーザは通常、外科用洗浄スクラブで手を洗浄し、更に水でリンスする。手を無菌のタオルで拭いて乾燥させた後、ユーザは、手をグローブに入れてグローブを装着し、グローブを、ユーザの手の形状に合致させる。この時点で、ユーザの皮膚からの水分及び熱がコーティング組成物と相互作用し、それにより、組成物が水和し、溶解し、液体の「ローション」タイプに変化する。コーティング組成物の水和及び溶解の後、快適さ及び皮膚の湿潤化のような治療効果が発揮される。更に、グローブの除去後においてもコーティング組成物はユーザの皮膚上に残留し、それにより皮膚に対する治療効果が持続される。
【0049】
更に、以下の実施例において本発明を例示する。特に明記しない限り、%表示は非水性組成物の合計量に対する重量%を示すものとする。
【実施例】
【0050】
実施例1:外科用グローブ用の水性コーティング組成物の調製
【0051】
事前の水性コーティングを、従来公知の成分量算出方法を使用して、必要となる各成分の量を最初に決定することにより、調製した。
【0052】
成分の量を決定した後、水を全量ビーカーに添加し、一定に撹拌しながら各成分を添加した。安定な、均一な溶液が形成されるまで、組成物を室温で少なくとも約1時間撹拌した。pH及び組成物の粘性は、ASTM E70−97(ガラス電極を用いた、水溶液のpHに関する標準的試験方法)及びASTM D5225−98(ディファレンシャルな粘度計を用いた、ポリマー溶液の粘度測定に関する標準的試験方法)に従って測定した。これらの方法を使用した結果、pHは4.8〜6.0であり、粘性は、室温で60回転/分でスピンドルno.4を使用し、15〜45cpsであった。得られる組成物を更にガラス容器に添加し、蓋で封止した。
【0053】
得られる液体コーティング組成物は、以下の組成を有する:
【0054】
組成1:
【表1】
【0055】
実施例2A:上記水性組成物による、グローブのコーティング(噴霧法)
【0056】
以下の通り、外科用グローブの皮膚接触表面に対して、上記水性コーティング組成物をコーティングした:
【0057】
コーティングを施さないグローブを、従来のグローブ調製用の技術及び装置を使用して調製した。グローブの形状を有する型を準備し、凝固組成物と共にコーティングし、更に乾燥させた。凝固組成物でコーティングされた型を更にポリイソプレンラテックスに浸漬して型をコーティングし、ラテックスを水で浸出し、粉末層でコートし、コーティングされた型上で硬化させた。硬化後、ポリイソプレングローブをリンスし、乾燥させ、型から剥離させた。
【0058】
コーティングの前にグローブを裏返しにし、リンスし、約300ppm〜約1000ppmの塩素濃度を有する塩素溶液で、塩素注入機を使用して塩素で処理した。塩素処理の後、コーティング前にグローブをリンスした。
【0059】
グローブをコーティングする際、塩素処理されたグローブを塩素注入機から取り除き、裏返しにし、皮膚接触表面を露出させ、スプレーノズルを有するタンブラ中に配置した。次にグローブにスプレーした。次にグローブを充分な時間乾燥させた。
【0060】
タンブラの設計は、グローブの調製において、グローブ表面の均一なコーティングを確実に行うための重要な点である。例えば、約43インチの直径及び約25インチの全長を有するドラムでは、ドラム長に対して、約11.5インチの穿孔領域と、残りの約13.5インチの非穿孔領域を設けることができる。ドラムの当該非穿孔領域は、非穿孔領域中に残っている幾つかのグローブが潤滑化のために配置され、吸入気流が当該領域において減少されるように決定される。回転速度は変化させることができる。例えば、約25回転/分〜約35回転/分の回転速度、好ましくは約31回転/分〜約32回転/分の回転速度を採用することができる。
【0061】
最初の乾燥は32℃の温度で実行し、約15分間にわたり、約50℃まで温度を上昇させることができる。第1の噴霧は、15分間のタンブリング後に実施できる。第1の噴霧の後、グローブを更に60秒タンブリングさせ、約170秒間、第2の噴霧を行い、更に60秒間再度タンブリングさせた。3回目の噴霧を約170秒間実施し、更に約2分間、約60℃の温度でタンブリングし、冷却させた。所望の量のコーティングがタンブリンググローブに塗布されるまで、噴霧ステップを繰り返し、更に25分間の加熱及び2分間の冷却サイクルに供した。
【0062】
タンブリング段階の終わりに、タンブラからグローブを取り除き、更に回転ステージに供した。回転プロセスの間、グローブを手作業で裏返しにし、次に約15分間、約55℃の温度で最終的な乾燥工程に供した。グローブを更に約3分間冷却させた。グローブを更に約20分間、約34℃の温度で乾燥させた。乾燥状態の上記水性コーティング組成物を有するグローブをその後包装し、滅菌することができる。
【0063】
実施例2B:上記水性組成物による、グローブのコーティング(タンブリング法)
【0064】
以下の通り、実験用グローブの皮膚接触表面に対して、上記水性コーティング組成物をコーティングした:
【0065】
コーティング前に、塩素を用いてグローブを処理した。最初に、グローブを裏返しにし、皮膚接触表面を露出させ、塩素注入機に入れた。グローブをリンスし、約400ppm〜約700ppmの塩素濃度を有する塩素溶液で処理した。塩素処理の後、コーティング前にグローブをリンスした。
【0066】
コーティングの際、塩素処理されたグローブを塩素注入機から取り除き、水性コーティング及び熱乾燥工程のため、タンブラに入れた。グローブを約5分間回転させ、過剰な水をグローブから取り除いた。次にタンブラ中に、実施例3の組成2、又は実施例4の組成3に記載の水性ローション溶液を満たした。次にグローブを約10分間、上記組成物中でタンブリングさせた。次に組成物をタンブラから排出した。
【0067】
グローブを、約50℃の温度で約30分間の加熱サイクルにおいてタンブラ中で乾燥させ、更に約5分間の冷却サイクルにおいて冷却した。グローブを更にタンブラから取り除き、手作業で裏返しにした。グローブを更に約60℃の温度で約60分間、乾燥機で再び乾燥させ、更に約10分間かけて室温に冷却させた。
【0068】
乾燥工程を削除したことを除き、外科用グローブに関する実施例2A、及び実験用グローブに関する実施例2Bと同様の方法を使用し、本発明に係るコーティング物品の調製を行った。非水性コーティングの塗布後、冷却を開始した。当業者であれば、特定の状況に応じて、上記のプロセスパラメータの調整及び変更を適宜行うことができる。
【0069】
実施例3:天然ゴム製実験用グローブ用の、上記水性ローション組成物
【0070】
組成2:
【表2】
【0071】
実施例4:本発明の非水性コーティング
【0072】
本発明に係る組成3:
【表3】
【0073】
上記の発明に係る組成物を、温度に対する粘性に関して、純粋なグリセリン及び脱イオン水と比較して試験した。この試験は、ASTM D2196−05に従って実施した。グリセリンベースの組成3が、20〜90℃の温度範囲にわたり、一貫して高い粘性を有した点は興味深い。より詳細には、20℃で、本発明のグリセリンベースの組成物は約2200cPの粘性を有し、その一方で、純粋なグリセリンは約1750cPの粘性を有した。これはすなわち、本発明の組成物が室温で粘稠性であり、ほぼ固体状の組成物であることを示すものである。本発明の一態様は、非水性ローション組成物が、エラストマー物品の皮膚接触表面に塗布できるという発見に基づくものである。本発明の組成物は、新規な非脱水プロセスによって塗布され、それにより当該ローション組成物が、エラストマー物品を着用する間及び着用後に皮膚へ移る。本発明の非脱水プロセス、及び本発明の組成物を使用することにより、グローブの特性(例えばバリア強度、装着しやすさ、柔らかさ及びエージング耐久性)を損なうことなく、強化された性能を有するエラストマー物品の提供が可能となる。
【0074】
本発明のコーティング組成物を、以下の通り調製した。50〜65℃で連続的に撹拌しながら、以下の成分をグリセリンに添加した:パントテノール、グルコノラクトン、クエン酸、クエン酸三ナトリウム二水和物、ソルビトール及びDarvan L。各成分の添加の間に、10分間の間隔を設けた。上記組成物を60℃で、更に約90℃に温度を上昇させ、約1時間撹拌した。安定かつ均一な透明溶液を形成させた。pHは5.6〜5.7であり、粘性を16s(ASTM D4212)で測定した。
【0075】
実施例5:本発明のプロセス
【0076】
この実験は、塗布プロセスの間、材料の損失が生じるか否かを試験するために実施した。実施例1から4を参照。この実施例は、外科用及び実験用のグローブの両方への処理に関するものである。
【0077】
無処理のポリイソプレン製の外科用グローブを、当業者に公知のグローブ形成方法及びそれに用いる装置を使用して調製した。コーティング前に、グローブを約300ppm〜約400ppmの塩素濃度の塩素で事前処理した。塩素処理の後、コーティングの前にグローブをプレリンスし、潤滑剤で処理した。
【0078】
グローブを処理するため、グローブを裏返しにし、皮膚接触表面を露出させた。次にグローブを、スプレーノズルを有するタンブラに入れた。グローブを約5分間、タンブラ中で〜約70℃で加熱した。次にグローブに本発明の組成3の組成物を、約20秒間スプレーした。噴霧終了時において、コーティングを、60℃で約30分間冷却して、グローブ上において凝固させた。グローブを更に約3分、室温にて冷却し、次に裏返しにした。外科用グローブにおけるコーティング重量は、1グローブあたり約50mg〜約180mgであった。次にグローブを包装し、滅菌した。これらの処理済みの外科用ポリイソプレングローブを、以下「サンプル1」と称する。
【0079】
ニトリル製の実験用グローブのコーティング前に、約600ppm〜約700ppmの濃度の塩素でリンスした。塩素処理の後、コーティングの前にグローブをリンスした。外科用グローブに関して上記したのと同様の方法で、ニトリル製の試験グローブを処理した。ニトリル製の実験用グローブもまた、上記の本発明に係る組成3の組成物を使用してコーティングした。60℃で35分の凝結時間を設けた点のみが異なる。すなわち、非脱水プロセスを、様々なグローブの基材に塗布できる。試験用グローブへ施したコーティングの重量は、1つのグローブあたり約5mg〜約80mgである。
【0080】
実施例6:本発明の非水性コーティング
【0081】
【表4】
本発明の組成4:
【0082】
サンプル2を、本発明の組成4及び本発明の実施例5の方法(潤滑剤による前処理なし)を使用して調製した。
【0083】
実施例7:コーティング重量の決定
【0084】
グローブのコーティング重量を、抽出プロセスを用いて決定した。最初に、処理済みの10個のグローブと、未処理の10個のグローブを、30分間、デシケータに置いた。各グローブのペアを秤量し、皮膚と接触する面が洗浄されるように裏返しにした。グローブを洗浄し、大型のコンテナ中で約2.5分間、水とともに厳しくタンブリングした。水を除去し、グローブを洗浄し、更に3回タンブリングした。グローブを次に60℃で30分間乾燥させた。グローブを次に60℃で裏返しにし、更に30分間乾燥させた。グローブを次に30分間、デシケータに置き、再度秤量した。
【0085】
試験用グローブのグローブ洗浄方法は、外科用グローブとは以下の3つの点で異なる。第1に、デシケータに置かれる前に、試験グローブを約30分間、約75℃で事前に乾燥させた点である。第2に、試験グローブのカフスを、グローブの洗浄前に、ゴムバンドで結んだ点である。第3に、グローブを30分間80℃で乾燥させた点である。
【0086】
例えばグローブ温度、組成物温度、スプレーの回数、スプレーノズルからのグローブの距離、組成物の総固体含量などの様々な要因が、グローブに塗布されるコーティング組成物の適当量(ロードするレベル)に影響を及ぼす。コーティング(グローブ当たりのローション剤)の量は、スプレーする全ローション剤の量、及びロードするサイズ(グローブの個数)から算出できる。噴霧装置の設定もまた、コーティングプロセスに影響を及ぼし、当該設定としては例えばシリンダ圧、液体圧、空気圧及びエアキャップのタイプなどが挙げられる。適当若しくは最適な製造パラメータの調整は、グローブ製造の分野の当業者であれば適宜選択することができる。
【0087】
実施例8:本発明のグローブの評価:
グローブの性能:
セクションA:処理グローブ 対 未処理グローブ
【0088】
グローブの性能は、パネリストを用いて試験した。9人のパネリストで、本発明の組成物で処理されたグローブと、全く処理されないグローブとを装着・使用させた。グローブの性能評価の前に、未処理及び処理されたグローブ(サンプル1)を、34〜40kGyで7日間、40℃で滅菌した。パネリストに、湿った手で、ローション剤で処理しないグローブ、及びローション剤で処理したグローブ(サンプル1)を装着させ、それらのグローブを15分間使用させた。評価において、パネリストは、装着しやすさ、輸送、動かしやすさ、乾燥、及びシルク様の感触、の特性に関して、1から4のスケールでグローブを評価した。1は低いパフォーマンスを示し、4は優れたパフォーマンスを示す。湿潤装着性は、グローブの装着しやすさの基準である。輸送とは、グローブを着用した後に手に移るコーティングの量である。皮膚の乾燥とは、手にグローブを装着し、取り外した後における乾燥速度である。グローブのシルク様の感触とは、グローブを着用した後の潤滑性の存在、及び粘着性のなさと定義される。外科用グローブを用いたこの試験結果を、以下の表に示す:
【0089】
【表5】
【0090】
上記の評価は、本発明の非水性組成物(サンプル1)で処理したグローブが、未処理のグローブより顕著に良好な湿潤装着性能を提供することを示すものである。更に、皮膚へのローション剤の輸送が促進されることも示される。更に、皮膚の遅い乾燥速度も、これによる影響を確認するものである。全体として、グローブのシルク様の感触は、ローション剤の手への輸送の増加による負の影響を受けなかった。
【0091】
セクションB:非水性組成物 対 水性組成物
外科的グローブ(サンプル2)を、組成物3(非水性コーティング組成物)を使用して、実施例5のとおり調製し、サンプル3(水性コーティング組成物(親(parent)特許の実施例5の組成物4)で治療したグローブ)と比較した。グローブの性能評価の前に、両方のグローブのペアを、34〜40kGyで7日間、40℃で滅菌した。これらのグローブを、上記のセクションAに記載の方法に従って評価した。この試験結果を以下の表に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
上記の評価は、本発明の非水溶コーティング組成物で治療されるグローブ(サンプル2、組成物4)は、水性コーティング組成物(サンプル3、組成物1を参照)で処理したグローブと同様のグローブ性能を提供することを示すものである。使用時における、着用者の皮膚への治療効果を有する非水性コーティング組成物の輸送により、好適な湿潤装着性、輸送、皮膚の乾燥速度及びシルク様の感触などの局所的な有効性が提供される。それらは上記組成物の成分(主に担体のグリセリンからなる)により奏されるものである。
【0094】
物理的特性:
グローブの物理的性能に対する、コーティングの物理的性質を評価した。ASTM D3577−01aを外科用グローブに適用し、ASTM D6319−00を実験用グローブに適用した。これらは、70℃で24時間にわたるエージングの前後の値である。処理されたグローブを、未処理のグローブと比較した。抗張力、300%及び500%の曲げ強度、並びに伸長強度も測定した。これらに関する結果を、以下の表に示す。
【0095】
【表7】
*エージングは、処理された及び未処理の外科用グローブに対して、70℃/24時間の条件で実施した。なお、ASTM法の70℃/7日とは異なる。
【0096】
処理された外科用及び実験用のグローブの、グローブの抗張力及び伸長度は、未処理のグローブと同様であるのみならず、外科用及び実験用グローブのASTM基準も満たしていた。本発明の非水性コーティングは、処理されたグローブの物理的性質に対していかなる負の影響も及ぼさなかった。
【0097】
本発明に係るコーティングは、その他の様々な材料(例えば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ塩化ビニル、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム、熱可塑性エラストマーなど)によって作製された、限定されないが医療用グローブなどの様々な基材に塗布できる。更に、これらの材料を適宜組合せることも可能である。
【0098】
産業的利用可能性:
本発明は、エラストマー物品の皮膚接触表面に塗布される、着用者の皮膚に有益な皮膚治療効果を提供するコーティング組成物の提供に関する。本発明により得られる効果は特に、長時間にわたり着用されるエラストマー物品(例えば外科的グローブ)において有用であり、詳細には、長時間にわたる着用により生じうる皮膚への悪影響が回避されうる。本発明によって作製されるエラストマー物品は、医療分野以外にも、様々な用途(例えば食品の調製又は化粧料の使用などの用途)においても使用できる。したがって、本発明によって作製されるグローブは、エラストマーグローブを長時間着用することにより典型的に生じる、着用者の皮膚への悪影響を減少させるのみならず、着用者の皮膚の状態の改善にも貢献する。
【0099】
本発明の様々な及び具体的な実施態様及び方法に関して、本願明細書において上記した。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の技術思想及び範囲から逸脱することなく、かかる実施態様及び方法の合理的なバリエーション及び調製をなしうることは、当業者にとり自明である。