【実施例1】
【0042】
第1 トラップ作動状態管理システム100のハードウェア構成
トラップ作動状態管理システム100について、
図1を用いて説明する。トラップ作動状態管理システム100は、工場やプラント等に形成されるプロセスシステムに分散配備される多数のスチームトラップTの作動状態を、無線通信を用いて管理するシステムである。トラップ作動状態管理システム100は、トラップ作動状態提供装置110、及び、トラップ作動状態管理装置120を有している。
【0043】
トラップ作動状態提供装置110は、プロセスシステムを構成する各スチームトラップTに設置される。トラップ作動状態提供装置110は、スチームトラップTの作動状態を取得し、取得した作動状態を作動状態情報として提供する。
【0044】
トラップ作動状態管理装置120は、トラップ作動状態提供装置110から作動状態情報を取得し、各スチームトラップTの作動状態を管理し、作動状態を判断する。また、トラップ作動状態管理装置120は、次に作動状態情報を提供する時刻をトラップ作動状態提供装置110に提供する。さらに、トラップ作動状態管理装置120は、トラップ作動状態提供装置110との間で時刻を同期するための時刻同期情報を、トラップ作動状態提供装置110に提供する。
【0045】
第2 トラップ作動状態提供装置110の構成
(1)トラップ作動状態提供装置110外観構成
トラップ作動状態提供装置110の外観構成について、
図2を用いて説明する。トラップ作動状態提供装置110は、センサ部P101、電装部品配置部P103、及び、中間軸部P105を有している。
【0046】
センサ部P101は、スチームトラップTの作動状態を、各種センサを用いて、電気信号として検出する。センサ部P101は、内部に、スチームトラップTの作動状態、例えば、振動や温度、を検出する振動センサ、温度センサ等、各種のセンサを有している。なお、センサ部P101の詳細な構造については記載を省略する。
【0047】
電装部品配置部P103は、センサ部P101で検出した作動状態に関する電気信号を増幅し、作動状態情報として、他の通信機器に提供するための無線通信回路110h(図示せず:
図4参照)をはじめとする各種回路を有している。なお、電装部品配置部P103に配置されるトラップ作動状態提供装置110のハードウェア構成については後述する。
【0048】
中間軸部P105は、円筒状のフレキシブルパイプ116、及び、フレキシブルパイプ116の内部に配置されるケーブル(図示せず)を有している。なお、フレキシブルパイプ116の内部に配置されるケーブルは、電装部品配置部P103が有する電装部品とセンサ部P101が有するセンサとを電気的に接続する。また、中間軸部P105のフレキシブルパイプ116は、センサ部P101、電装部品配置部P103、それぞれと、下部袋ナットN101、上部袋ナットN103を用いて、接続される。
【0049】
なお、
図3に示すように、トラップ作動状態提供装置110は、所定の固定装置HFを用いて、スチームトラップTに固定される。トラップ作動状態提供装置110をスチームトラップTに固定する際には、センサ部P101の先端Fが、スチームトラップTの一部、例えば入口部TINに接するように固定する。これにより、スチームトラップTは、先端Fを介して、各種センサから、スチームトラップTの作動状態を取得する。
【0050】
(2)トラップ作動状態提供装置110のハードウェア構成
次に、
図2に示すトラップ作動状態提供装置110の電装部品配置部P103の内部に配置される電装部品のハードウェア構成について
図4を用いて説明する。
【0051】
図4に示すように、トラップ作動状態提供装置110は、CPU110a、メモリ110b、無線通信回路110h、センサ通信回路110i、及び、計時回路110jを有している。
【0052】
CPU110aは、メモリ110bに記録されているオペレーティング・システム(OS)、トラップ作動状態情報提供プログラム等のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ110bは、CPU110aに対して作業領域を提供する。また、メモリ110bは、オペレーティング・システム(OS)、トラップ作動状態情報提供プログラム等のアプリケーションのプログラム、及び、作動状態情報、作動時刻提供時刻情報、待機時間情報、送信タイムラグ情報等の各種データを記録保持する。なお、各種データについては後述する。
【0053】
無線通信回路110hは、無線通信によって、トラップ作動状態管理装置120等の外部の通信機器とデータを送受信する。センサ通信回路110iは、トラップ作動状態提供装置110に配置されている温度センサ、振動センサ等の各種センサと接続され、各種センサからスチームトラップTの作動状態情報を取得する。計時回路110jは、所定のクロックを発生し、トラップ作動状態提供装置110の基準となる時刻を生成する。
【0054】
第3 トラップ作動状態管理装置120のハードウェア構成
トラップ作動状態管理装置120のハードウェア構成について
図5を用いて説明する。
図5に示すように、トラップ作動状態管理装置120は、CPU120a、メモリ120b、ハードディスクドライブ120c(以下、HDD120cとする)、キーボード120d、マウス120e、ディスプレイ120f、光学式ドライブ120g、無線通信回路120h、及び、計時回路120jを有している。
【0055】
CPU120aは、HDD120cに記録されているオペレーティング・システム(OS)、トラップ作動状態情報管理プログラム等のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ120bは、CPU120aに対して作業領域を提供する。HDD120cは、オペレーティング・システム(OS)、トラップ作動状態情報管理プログラム等のアプリケーションのプログラム、及び、作動状態情報データベース(以降、作動状態情報DBとする)、作動状態要求スケジュール情報等の各種データを記録保持する。なお、各種データについては後述する。
【0056】
キーボード120d、マウス120eは、外部からの命令を受け付ける。ディスプレイ120fは、ユーザーインターフェイス等の画像を表示する。光学式ドライブ120gは、トラップ作動状態情報管理サーバプログラムが記録されている光学式メディア120p(図示せず)からトラップ作動状態情報管理プログラムを読み取り、また、他の光学式メディアからその他のアプリケーションのプログラムを読み取る等、光学式メディアから、データを読み取る。無線通信回路120hは、無線通信によって、トラップ作動状態提供装置110等の外部の通信機器とデータを送受信する。計時回路120jは、所定のクロックを発生し、トラップ作動状態管理装置120の基準となる時刻を生成する。
【0057】
第4 データ
トラップ作動状態管理システム100で用いる主なデータについて、更に
図6〜
図10を用いて説明する。
【0058】
1.作動状態情報
作動状態情報は、所定時刻におけるスチームトラップTの作動状態、例えば、温度や振動を示す情報である。作動状態情報は、トラップ作動状態提供装置110が、各種センサを介して取得し、メモリ110bに記憶保持する。
【0059】
作動状態情報のデータ構造を
図6に示す。作動状態情報は、作動状態種別記述領域、作動状態値記述領域、及び、作動状態値取得時刻記述領域を有している。作動状態種別記述領域には、作動状態の種別が記述される。作動状態値記述領域には、作動状態を取得する際に使用するセンサのセンサ値が記述される。作動状態値取得時刻記述領域には、作動状態値を取得した時に計時回路110jが示す時刻が記述される。
【0060】
2.作動状態提供時刻情報
作動状態提供時刻情報は、トラップ作動状態提供装置110が作動状態をトラップ作動状態管理装置120に提供を開始する時刻を示す情報である。トラップ作動状態提供装置110は、作動状態提供時刻情報を、トラップ作動状態管理装置120が提供する提供時刻同期情報(後述)を介して取得し、メモリ110bに記憶保持する。
【0061】
作動状態提供時刻情報のデータ構造を
図7に示す。作動状態提供時刻情報は、提供時刻種別記述領域、及び、作動状態提供時刻記述領域を有している。提供時刻種別記述領域には、作動状態情報を提供する時刻の種別が記述される。ここでは、この次に作動状態情報を提供する場合には「次回」が、次回の次に作動状態情報を提供する場合には「次々回」が、それぞれ記述される。作動状態提供時刻領域には、トラップ作動状態提供装置110が作動状態情報を提供する時刻が、提供時刻種別に対応付けて記述される。
【0062】
3.作動状態情報DB
作動状態情報DBは、ネットワークに属するスチームトラップTの作動状態を蓄積した情報である。トラップ作動状態管理装置120は、各トラップ作動状態提供装置110を介してスチームトラップTの作動状態を取得し、作動状態情報DBとして、HDD120cに記憶保持する。
【0063】
作動状態情報DBのデータ構造を
図8に示す。作動状態情報DBは、プロセスシステム構成機器ID記述領域、作動状態種別記述領域、作動状態値記述領域、作動状態値取得時刻記述領域、及び、受信時刻記述領域を有している。プロセスシステム構成機器ID記述領域には、作動状態情報を取得したプロセスシステム構成機器を一意に特定するプロセスシステム構成機器IDが記述される。作動状態種別記述領域、作動状態値記述領域、作動状態値取得時刻記述領域には、それぞれ、取得した作動状態情報(
図6参照)の作動状態種別記述領域、作動状態値記述領域、作動状態値取得時刻記述領域の値が記述される。受信時刻記述領域には、作動状態情報を受信した時に計時回路120jが示す時刻が記述される。
【0064】
4.提供時刻同期情報
提供時刻同期情報は、トラップ作動状態提供装置110が有する計時回路110jの時刻と、トラップ作動状態管理装置120が有する計時回路120jの時刻と、を同期させ、トラップ作動状態提供装置110での作動状態情報の送信、及び、トラップ作動状態管理装置120での作動状態情報の受信を確実に行うための情報である。トラップ作動状態管理装置120は、自己の計時回路120jに基づき、次回のトラップ作動状態情報の送信時刻を算出し、同期の基準となる同期基準時刻とともに、トラップ作動状態提供装置110に送信する。
【0065】
提供時刻同期情報のデータ構造を
図9に示す。提供時刻同期情報は、プロセスシステム構成機器ID記述領域、同期基準時刻記述領域、次回提供時刻記述領域、及び、次々回提供時刻記述領域を有している。プロセスシステム構成機器ID記述領域には、提供時刻同期情報を送信するプロセスシステム構成機器を一意に特定するプロセスシステム構成機器IDが記述される。同期基準時刻記述領域には、トラップ作動状態提供装置110へ提供時刻同期情報を送信する時のトラップ作動状態管理装置120の計時回路120jの時刻が記述される。これにより、提供時刻同期情報を受信したトラップ作動状態提供装置110が自らの計時回路110jの時刻を、同期基準時刻に合わせることによって、トラップ作動状態提供装置110の計時回路110jの時刻とトラップ作動状態管理装置120の計時回路120jの時刻とを同期させることができる。次回提供時間記述領域、次々回提供時刻記述領域には、トラップ作動状態提供装置110がこの次に、また、その次に、それぞれ作動状態情報を送信する時間が記述される。
【0066】
5.作動状態要求スケジュール情報
作動状態要求スケジュール情報は、トラップ作動状態管理装置120が、各トラップ作動状態提供装置110から作動状態情報の送信を要求する際の時刻が記述されている情報である。
【0067】
作動状態受信スケジュール情報のデータ構造を
図10に示す。作動状態受信スケジュール情報は、プロセスシステム構成機器ID記述領域、及び、次回受信時間記述領域を有している。プロセスシステム構成機器ID記述領域には、各トラップ作動状態提供装置110を一意に特定する情報が記述される。次回受信時間記述領域には、各トラップ作動状態提供装置110から次に作動状態情報を送信する時間が記述される。ここで、トラップ作動状態管理装置120は、対応するトラップ作動状態提供装置110からの一連の作動状態情報の受信処理(
図11参照)が終了すると、作動状態受信間隔情報に基づき、次回受信時間を算出し、次回受信時間記述領域に記述する。なお、トラップ作動状態管理装置120が、作動状態情報を受信する際の、トラップ作動状態提供装置110毎の受信間隔は、予め作動状態受信間隔情報として、メモリ120bに記憶されている。
【0068】
第4 トラップ作動状態管理システム100の動作
1.トラップ作動状態管理システム100の動作の概要
一般的に、プロセスシステムにおいては、多数のスチームトラップTが配置される。トラップ作動状態管理装置120は、プロセスシステムのスチームトラップTに配置されたトラップ作動状態提供装置110のそれぞれと、順次、通信を行い、各スチームトラップTに関する作動状態を取得する。
【0069】
トラップ作動状態提供装置110は、メモリ110bに記憶保持する作動状態提供時刻情報(
図7参照)に基づき、無線通信回路110hを作動させ、待機状態とする。トラップ作動状態提供装置110は、トラップ作動状態管理装置120から送信される作動状態要求情報を取得すると、メモリ110bに記憶保持している作動状態情報(
図6参照)を、トラップ作動状態管理装置120へ送信する。
【0070】
トラップ作動状態管理装置120は、作動状態要求スケジュール情報(
図10参照)に従って、各トラップ作動状態提供装置110に作動状態情報の送信を開始するように要求すべく、順次、作動状態要求情報を対象のトラップ作動状態提供装置110へ送信する。トラップ作動状態管理装置120は、作動状態要求情報を送信したトラップ作動状態提供装置110から作動状態情報を受信できるように待機する。トラップ作動状態管理装置120は、対象のトラップ作動状態提供装置110から作動状態情報を受信すると、受信した作動状態情報と対象のトラップ作動状態提供装置110とを関連付けて、HDD120cの作動状態情報DB(
図8参照)に記憶保持する。
【0071】
また、トラップ作動状態情報提供装置110は、作動状態情報を常に確実に送受信できるように、計時回路110jの時刻を、トラップ作動状態情報管理装置120の計時回路120jに同期させる。
【0072】
2.トラップ作動状態管理システム100の具体的な動作
トラップ作動状態管理システム100の動作について、
図11に示すトラップ作動状態管理装置120の動作を示すフローチャート、及び、
図12に示すトラップ作動状態提供装置110の動作を示すフローチャートを用いて説明する。
【0073】
図11に示すように、トラップ作動状態管理装置120のCPU120aは、計時回路120jの時刻が、作動状態要求スケジュール情報(
図10参照)の次回受信時刻記述領域に存在するか否か判断する(S1101)。CPU120aは、計時回路120jの時刻が、作動状態受信スケジュール情報の次回受信時刻記述領域に存在すると判断すると、作動状態受信スケジュール情報において対応するプロセスシステム構成機器ID記述領域の値を取得し(S1103)、取得したプロセスシステム構成機器IDに対応するスチームトラップTに、作動状態要求情報を送信する(S1105)。なお、作動状態要求情報は、送信対象であるプロセスシステム構成機器を一意に特定するプロセスシステム構成機器IDを含んでいる。
【0074】
図12に示すように、トラップ作動状態提供装置110のCPU110aは、計時回路110jで計測している時刻が、メモリ110bに記憶保持する作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域の値が「次回」に対応する提供時刻記述領域の時刻から待機時間情報の時間前の時刻になったと判断すると(S1201)、無線通信回路110hを待機状態とする(S1203)。なお、CPU110aは、待機時間情報をメモリ110bから取得する。CPU110aは、無線通信回路110hを介して、作動状態要求情報を取得すると(S1205)、メモリ110bに記憶しているトラップ作動状態情報を、無線通信回路110hを介して、トラップ作動状態管理装置120へ送信する(S1207)。なお、CPU110aは、プロセスシステム構成機器IDに基づき、受信した作動状態要求情報が自己宛であるか否かを判断する。
【0075】
図11に戻って、トラップ作動状態管理装置120のCPU120aは、作動状態要求情報を送信したトラップ作動状態提供装置110から作動状態情報を受信したと判断すると(S1107)、受信した作動状態情報を、送信元のトラップ作動状態提供装置110と関連付けて、受信時刻とともに作動状態情報DB(
図8参照)に記述する(S1109)。
【0076】
CPU120aは、計時回路120jの時刻に基づき、提供時刻同期情報(
図9参照)を生成し、送信する(S1111)。CPU120aは、
図9に示すように、計時回路120jの時刻、及び、対象とするトラップ作動状態提供装置110に対応する作動状態受信スケジュール情報(
図10参照)の次回要求時刻記述領域の時刻、つまり、今回、作動状態要求情報を送信した時刻から、次回に作動状態要求情報を送信する時刻、次々回に作動状態要求情報を送信する時刻を算出し、それらを対象とするトラップ作動状態提供装置110と関連付けて、提供時刻同期情報を生成する。なお、次回に作動状態要求情報を送信する時刻、次々回に作動状態要求情報を送信する時刻は、メモリ120bに記憶保持している作動状態要求間隔時間を用いて算出する。ここで、作動状態要求間隔時間は、トラップ作動状態情報提供装置110毎に設定されている。
【0077】
図12に移って、トラップ作動状態提供装置110のCPU110aは、自己宛の提供時刻同期情報を取得すると(S1209)、取得した提供時刻同期情報から同期基準時刻記述領域の時刻を取得し、取得した同期基準時刻記述領域の時刻に基づき計時回路110jの時刻を設定する(S1211)。なお、CPU110aは、同期基準時刻記述領域の時刻を、計時回路110jの時刻として設定する際に、トラップ作動状態管理装置120からトラップ作動状態提供装置110までに必要とされるタイムラグを同期基準時刻に加算した時刻を、計時回路110jに設定する時刻とする。さらに、CPU110aは、取得した提供時刻同期情報に基づき、作動状態提供時刻情報を再設定する(S1213)。この際、CPU110aは、メモリ110bに記憶している作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次回」に対応する提供時刻記述領域に、取得した提供時刻同期情報の次回提供時間記述領域の時刻を、また、作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域に、次々回提供時刻記述領域の時刻を、それぞれ記述する。
【0078】
一方、トラップ作動状態提供装置110のCPU110aは、作動状態要求情報を受信することなく所定の待機時間が経過したと判断すると(S1215)、無線通信回路110hを待機状態とする(S1217)。CPU110a、無線通信回路110hを介して、その時点で受信できる提供時刻同期情報を取得する(S1219)。なお、この時点で取得する提供時刻同期情報は、自己宛ではない。スチームトラップT等のプロセスシステム構成機器を有するプロセスシステムでは、多数のプロセスシステム構成機器が用いられている。また、一のプロセスシステム構成機器の周辺には、他のプロセスシステム構成機器が配置されている。よって、いずれかのトラップ作動状態提供装置110とトラップ作動状態管理装置120との間では、提供時刻同期情報の送受信が行われているため、CPU110aは、容易に、自己宛でない提供時刻同期情報を受信することができる。
【0079】
CPU110aは、取得した提供時刻同期情報から同期基準時刻記述領域の時刻を取得し、取得した同期基準時刻記述領域の時刻に基づき計時回路110jの時刻を設定する(S1221)。なお、CPU110aは、同期基準時刻記述領域の時刻を、計時回路110jの時刻として設定する際に、メモリ110bに記憶保持する送信タイムラグ情報が示す時間を同期基準時刻に加算した時刻を計時回路110jに設定する時刻とする。なお、送信タイムラグ情報は、トラップ作動状態管理装置120からトラップ作動状態提供装置110までに必要とされる時間を示す。
【0080】
なお、CPU110aは、ステップS1213において作動状態提供時刻情報を再設定する際に、メモリ110bに記憶している作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次回」に対応する提供時刻記述領域に、提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域の時刻を記述し、提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域の値を削除し、空欄とする。
【0081】
このように、トラップ作動状態提供装置110は、作動状態要求情報を受信しなかった場合に、計時回路110jの時刻を、その時点のトラップ作動状態管理装置120の計時回路120jの時刻と同期させる。これにより、トラップ作動状態情報提供装置110とトラップ作動状態情報管理装置120との間での作動状態情報の送受信を確実に行えるようにできる。
【実施例2】
【0082】
前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報管理装置120は、作動状態情報要求情報と提供同期時刻情報とを、別々に、トラップ作動状態提供装置110に提供していた。一方、本実施例においては、トラップ作動状態情報管理装置120は、作動状態情報要求情報と提供同期時刻情報とを、同時に、トラップ作動状態提供装置110に提供する。なお、以下においては、実施例1と同様の構成については同様の符号を付し、詳細な記述を省略する。
【0083】
第1 トラップ作動状態管理システム200のハードウェア構成
トラップ作動状態管理システム200について、
図13を用いて説明する。トラップ作動状態管理システム200は、トラップ作動状態提供装置210、及び、トラップ作動状態管理装置220を有している。なお、トラップ作動状態提供装置210、及び、トラップ作動状態管理装置220のハードウェア構成については、実施例1と同様である。
【0084】
第4 トラップ作動状態管理システム200の動作
1.トラップ作動状態管理システム200の動作の概要
トラップ作動状態管理装置220は、プロセスシステムのスチームトラップTに配置されたトラップ作動状態提供装置210のそれぞれと、順次、通信を行い、各スチームトラップTに関する作動状態を取得する。
【0085】
トラップ作動状態提供装置210は、メモリ110bに記憶保持する作動状態提供時刻情報(
図7参照)に基づき、無線通信回路110hを作動させ、待機状態とする。トラップ作動状態提供装置210は、トラップ作動状態管理装置220から送信される作動状態要求・提供時刻同期情報を取得すると、メモリ110bに記憶保持している作動状態情報(
図6参照)を、トラップ作動状態管理装置220へ送信する。ここで、作動状態要求・提供時刻同期情報とは、各トラップ作動状態提供装置210に作動状態情報の送信を開始するように要求する作動状態要求情報、及び、トラップ作動状態提供装置210、トラップ作動状態管理装置220のそれぞれが有する計時回路の時刻を同期させるための提供同期時刻情報が一体となった情報である。
【0086】
トラップ作動状態管理装置220は、作動状態要求スケジュール情報(
図10参照)に従って、各トラップ作動状態提供装置210に作動状態要求・提供時刻同期情報を、順次、対象のトラップ作動状態提供装置210へ送信する。トラップ作動状態管理装置220は、作動状態要求・提供時刻同期情報を送信したトラップ作動状態提供装置210から作動状態情報を受信できるように待機する。トラップ作動状態管理装置220は、対象のトラップ作動状態提供装置210から作動状態情報を受信すると、受信した作動状態情報と対象のトラップ作動状態提供装置210とを関連付けて、HDD120cの作動状態情報DB(
図8参照)に記憶保持する。
【0087】
なお、トラップ作動状態情報提供装置210は、作動状態情報を常に確実に送受信できるように、計時回路110jの時刻をトラップ作動状態情報管理装置220の計時回路110jに同期させる。
【0088】
2.トラップ作動状態管理システム200の具体的な動作
トラップ作動状態管理システム200の動作について、
図14に示すトラップ作動状態管理装置220の動作を示すフローチャート、及び、
図15に示すトラップ作動状態提供装置210の動作を示すフローチャートを用いて説明する。
【0089】
図14に示すように、トラップ作動状態管理装置220のCPU120aは、計時回路120jの時刻が、作動状態要求スケジュール情報(
図10参照)の次回受信時刻記述領域に存在するか否か判断する(S1101)。CPU120aは、計時回路120jの時刻が、作動状態受信スケジュール情報の次回受信時刻記述領域に存在すると判断すると、作動状態受信スケジュール情報において対応するプロセスシステム構成機器ID記述領域の値を取得し(S1103)、取得したプロセスシステム構成機器IDに対応するスチームトラップTに、作動状態要求・提供同期時刻情報を送信する(S2105)。なお、作動状態要求・提供時刻同期情報は、実質的に実施例1における提供時刻同期情報と同様のデータ構造を有し(
図9参照)、また、実施例1と同様に、計時回路120jの時刻に基づき生成される(
図11・S1111参照)。
【0090】
図15に示すように、トラップ作動状態提供装置210のCPU110aは、計時回路110jで計測している時刻が、メモリ110bに記憶保持する作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域の値が「次回」に対応する提供時刻記述領域の時刻から待機時間情報の時間前になったと判断すると(S1201)、無線通信回路110hを待機状態とする(S1203)。なお、CPU110aは、待機時間情報をメモリ110bから取得する。
【0091】
CPU110aは、無線通信回路110hを介して、作動状態要求・提供同期時刻情報を取得すると(S2205)、メモリ110bに記憶しているトラップ作動状態情報を、無線通信回路110hを介して、トラップ作動状態管理装置120へ送信する(S1207)。なお、CPU110aは、プロセスシステム構成機器IDに基づき、受信した作動状態要求・提供時刻同期情報が自己宛であるか否かを判断する。
【0092】
また、トラップ作動状態提供装置210のCPU110aは、作動状態要求・提供時刻同期情報から同期基準時刻記述領域の時刻を取得し、取得した同期基準時刻記述領域の時刻に基づき計時回路110jの時刻を設定する(S1211)。なお、CPU110aは、同期基準時刻記述領域の時刻を、計時回路110jの時刻として設定する際に、トラップ作動状態管理装置120からトラップ作動状態提供装置110までに必要とされるタイムラグを同期基準時刻に加算した時刻を計時回路110jに設定する時刻とする。さらに、CPU110aは、取得した提供時刻同期情報に基づき、作動状態提供時刻情報を再設定する(S1213)。この際、CPU110aは、メモリ110bに記憶している作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次回」に対応する提供時刻記述領域に、取得した提供時刻同期情報の次回提供時間記述領域の時刻を、また、作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域に、次々回提供時刻記述領域の時刻を、それぞれ記述する。
【0093】
図14に戻って、トラップ作動状態管理装置120のCPU120aは、作動状態要求・提供時刻同期情報を送信したトラップ作動状態提供装置210から作動状態情報を受信したと判断すると(S1107)、受信した作動状態情報を、送信元のトラップ作動状態提供装置210と関連付けて、受信時刻とともに作動状態情報DB(
図8参照)に記述する(S1109)。
【0094】
一方、
図15に示すように、トラップ作動状態提供装置210のCPU110aは、作動状態要求・提供同期時刻情報を受信することなく所定の待機時間が経過したと判断すると(S1215)、無線通信回路110hを待機状態とする(S1217)。CPU110a、無線通信回路110hを介して、その時点で受信できる作動状態要求・提供時刻同期情報を取得する(S2219)。なお、この時点で取得する作動状態要求・提供時刻同期情報は、自己宛でないものとなる。スチームトラップT等のプロセスシステム構成機器を有するプロセスシステムでは、多数のプロセスシステム構成機器が用いられている。また、一のプロセスシステム構成機器の周辺には、他のプロセスシステム構成機器が配置されている。よって、いずれかのトラップ作動状態提供装置210とトラップ作動状態管理装置220との間では、作動状態要求・提供時刻同期情報の送受信が行われているため、CPU110aは、容易に、自己宛でない作動状態要求・提供時刻同期情報を受信することができる。
【0095】
CPU110aは、取得した作動状態要求・提供時刻同期情報から同期基準時刻記述領域の時刻を取得し、取得した同期基準時刻記述領域の時刻に基づき計時回路110jの時刻を設定する(S1221)。なお、CPU110aは、同期基準時刻記述領域の時刻を、計時回路110jの時刻として設定する際に、メモリ110bに記憶保持する送信タイムラグ情報が示す時間を同期基準時刻に加算した時刻を計時回路110jに設定する時刻とする。なお、送信タイムラグ情報は、トラップ作動状態管理装置220からトラップ作動状態提供装置210までに必要とされる時間を示す。
【0096】
なお、CPU110aは、ステップS1213において作動状態提供時刻情報を再設定する際に、メモリ110bに記憶している作動状態提供時刻情報(
図7参照)の提供時刻種別記述領域が「次回」に対応する提供時刻記述領域に、提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域の時刻を記述し、提供時刻種別記述領域が「次々回」に対応する提供時刻記述領域の値を削除し、空欄とする。
【0097】
このように、トラップ作動状態提供装置210は、作動状態要求・提供時刻同期情報を受信しなかった場合に、計時回路110jの時刻を、その時点のトラップ作動状態管理装置220の計時回路120jの時刻と同期させる。これにより、トラップ作動状態情報提供装置210とトラップ作動状態情報管理装置220との間での作動状態情報の送受信を確実に行えるようにできる。
【0098】
[他の実施例]
(1)プロセスシステム構成機器:前述の実施例1、実施例2においては、プロセスシステム構成機器としてスチームトラップTを示したが、プロセスシステム構成機器であれば、例示のものに限定されない。例えば、
図1に示す減圧弁G、バルブVであってもよい。さらに、ポンプ、セパレータ、フィルタ等の各種流体制御機器であってもよい。これにより、トラップ作動状態提供装置110、210を用いて、スチームトラップT以外の機器の作動状態を監視することもできる。
【0099】
(2)送信タイムラグ情報:前述の実施例1においては、各トラップ作動状態情報提供装置110が送信タイムラグに要する時間を送信タイムラグ情報として記憶保持していたが、トラップ作動状態情報管理装置120が、各トラップ作動状態情報提供装置110についての送信タイムラグ情報を有するようにしてもよい。実施例2におけるトラップ作動状態情報提供装置210、トラップ作動状態情報管理装置220についても同様である。
【0100】
(3)計時回路110jへの同期時刻の設定:前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報提供装置110において計時回路110jに同期時刻を設定する際に、トラップ作動状態情報提供装置110が有する送信タイムラグを利用するとしたが、トラップ作動状態情報管理装置120が、提供時刻同期情報に送信タイムラグに要する時間を含めて、トラップ作動状態情報提供装置110に提供するようにしてもよい。
【0101】
また、トラップ作動状態情報提供装置110が計時回路110jに同期時刻を設定する際に、送信タイムラグを含めずに設定するようにしてもよい。一方、トラップ作動状態情報提供装置110が計時回路110jに同期時刻を設定する際に、提供時刻同期情報が有する他のトラップ作動状態情報提供装置110の送信タイムラグを加算して、同期時刻を設定するようにしてもよい。トラップ作動状態情報管理装置120から各トラップ作動状態情報提供装置110までの送信タイムラグに大きな差がない場合には、他のトラップ作動状態情報提供装置110に関する送信タイムラグを加算して同期時刻を設定したとしても、トラップ作動状態情報管理装置120とトラップ作動状態情報提供装置110との間での各計時回路の差は大きくなく、ほぼ同期がとれている状態と考えることができる。以上は、実施例2におけるトラップ作動状態情報提供装置210、トラップ作動状態情報管理装置220についても同様である。
【0102】
(4)次回提供時刻、次々回提供時刻:前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報管理装置120が、トラップ作動状態情報提供装置110に、次回提供時刻、及び、次々回提供時刻を送信するとしたが、トラップ作動状態情報提供装置110が、都度、作動状態情報を提供する時刻を算出するようにしてもよい。この場合、トラップ作動状態情報提供装置110が、作動状態情報を提供する間隔である作動状態提供間隔時間を記憶保持するようしてもよい。また、トラップ作動状態情報提供装置110が、所定期間の全ての作動状態提供時刻を記憶保持するようにしてもよい。実施例2におけるトラップ作動状態情報提供装置210、トラップ作動状態情報管理装置220についても同様である。
【0103】
(5)各プログラムのフローチャート:前述の実施例1においては、トラップ作動状態提供装置110は
図12に示すフローチャートに従って各処理を実行し、トラップ作動状態管理装置120は
図11に示すフローチャートに従って各処理を実行するとしたが、各処理の機能・目的を達成できるものであれば、例示のものに限定されない。また、各データの構造についても同様である。実施例2におけるトラップ作動状態情報提供装置210、トラップ作動状態情報管理装置220のそれぞれにおける処理を示す
図14、
図15のフローチャートについても同様である。
【0104】
(6)各データの構造:前述の実施例1においては、トラップ作動状態提供装置110は
図6、
図7に示すデータを用いて各処理を実行し、トラップ作動状態管理装置120は
図8、
図9、
図10に示すデータを用いて各処理を実行するとしたが、各処理の機能・目的を達成できるものであれば、例示のものに限定されない。実施例2におけるトラップ作動状態情報提供装置210、トラップ作動状態情報管理装置220についても同様である。
【0105】
(7)提供時刻同期情報の受信判断:前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報提供装置110は、「自己宛」であるか否かを判断基準として、提供時刻同期情報の受信の際の処理を判断していたが、トラップ作動状態情報管理装置120と時間を同期できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、複数のトラップ作動状態情報提供装置110により1つのグループを形成し、「自らが属するグループと同一のグループ宛」であるか否かを判断基準として、提供時刻同期情報の受信の際の処理を判断するようにしてもよい。これにより、同一グループに属するトラップ作動状態情報提供装置110間でも、時間的同期をとることができる。
【0106】
(8)各装置のハードウェア:前述の実施例1においては、トラップ作動状態情報提供装置110、トラップ作動状態管理装置120、それぞれは、CPU110a、120aを用いて、各装置の機能を実現するとしたが、各装置の機能を実現できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、各装置の機能を実現できるロジック回路を設計して、使用するようにしてもよい。