特許第5879595号(P5879595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5879595
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
   G01R15/20 A
   G01R15/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-515534(P2014-515534)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2013060442
(87)【国際公開番号】WO2013172114
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-114812(P2012-114812)
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-152634(P2012-152634)
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310014322
【氏名又は名称】アルプス・グリーンデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−101252(JP,A)
【文献】 特開2007−108069(JP,A)
【文献】 特開2012−063285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に延びる一対のアーム部を含む折り返し形状の電流路と、
前記一対のアーム部の間を通る対称軸を挟んで配設され、前記一対のアーム部を流れる電流による磁気を検出する一対の磁電変換素子とを備え、
前記一対の磁電変換素子を直列接続し、前記一対の磁電変換素子の接続点から信号を取り出し可能なハーフブリッジ回路が形成され、
前記一対の磁電変換素子の感度軸及び感度影響軸がそれぞれ同一方向を向いていることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記磁電変換素子は、ハードバイアス層を備えた磁気抵抗素子であり、前記磁電変換素子の前記感度影響軸は、前記ハードバイアス層からのバイアス磁界の方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記ハーフブリッジ回路を2つ有しており、前記2つのハーフブリッジ回路を並列に接続してフルブリッジ回路が形成され、
一方のハーフブリッジ回路の一対の磁電変換素子の感度軸と他方のハーフブリッジ回路の一対の磁電変換素子の感度軸とが逆方向を向いていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記磁電変換素子に対して前記感度軸方向から入る外部磁界を遮蔽する磁気シールド部材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路に流れる電流を検出する電流センサに関し、特に、U字形状を有する電流路に電流が流れたときに発生する磁気を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の制御や監視のために、既設の電流路に後から取り付けられる電流センサが良く知られている。この種の電流センサとして、電流路に流れる電流から生じる磁界を感知する磁気抵抗素子やホール素子等の磁電変換素子を用いた磁気センサが用いられることが良く知られている。
【0003】
上述した電流センサの内で、U次形状を有する導体(電流路)と磁気センサとを組み合わせて、測定したい電流路間に組み入れるタイプの電流センサが一般的に知られている。このタイプの電流センサとして、特許文献1に、図18及び図19に示すような電流センサ901が提案されている。図18は、従来例の電流センサ901を説明する図であって、図18Aは、その斜視図であり、図18Bは、その断面図である。図19は、従来例の電流センサ901を説明する図であって、図19Aは、電流検知デバイス部906を示す平面図であり、図19Bは、電流検知デバイス部906のブリッジ回路を示した構成概略図である。
【0004】
図18に示す電流センサ901は、U字形形状を有する一次導体903と、一次導体903と一体化した構造のケース904と、ケース904内に配設されセンサ基板902に配置された電流検知デバイス部906と、を備えて構成されている。そして、一次導体903に被測定電流が印加されると、図18Bに示すように、中心線CLに対称に左回転及び右回転の誘導磁界M1が発生し、電流検知デバイス部906により、この誘導磁界M1を感知して、一次導体(電流路)903に流れる電流を検出するようにしている。
【0005】
また、電流検知デバイス部906は、図19Aに示すように、設置基板914上に4つの磁気抵抗効果素子(磁気抵抗素子)911(911a、911b、911c、911d)と、磁気抵抗効果素子911間を接続する接続電流線912と、4つの入出力用の端子部913(913a、913b、913c、913d)とを備えて構成され、中心線CLによって2つの領域に分けられたそれぞれの領域に、磁気抵抗効果素子911a及び磁気抵抗効果素子911bと、磁気抵抗効果素子911c及び磁気抵抗効果素子911dとが線対称に等しく配置されている。
【0006】
また、4つの磁気抵抗効果素子911は、設置基板914の中心線CLに対して相互に平行方向に配置され、磁気抵抗効果素子911aと磁気抵抗効果素子911dとは、誘導磁界M1の増加に応じて抵抗値がともに増加する磁気抵抗効果特性を有するような向き(図19Aに示すDA及びDD)に配置さているとともに、磁気抵抗効果素子911bと磁気抵抗効果素子911cは、誘導磁界M1の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有するような向き(図19Aに示すDB及びDC)に配置されている。そして、図19Bに示すように、4つの磁気抵抗効果素子911(911a、911b、911c、911d)間を接続電流線912で接続することにより、磁気抵抗効果素子911a及び磁気抵抗効果素子911bの直列接続からなる第1のハーフブリッジ回路916aと、磁気抵抗効果素子911c及び磁気抵抗効果素子911dの直列接続からなる第2のハーフブリッジ回路916bとの並列接続からなるブリッジ回路915を構成している。なお、図示はしていないが、端子部913aは、入力端子、端子部913bはグランド端子、端子部913c及び端子部913dは、信号(出力)端子と接続されている。
【0007】
以上のようにして構成された電流センサ901は、図18Bに示すような誘導磁界M1が発生した際に、第1のハーフブリッジ回路916aと第2のハーフブリッジ回路916bとで、かかる誘導磁界M1が逆向きになるので、磁気抵抗効果素子911aと磁気抵抗効果素子911dの抵抗値が増大し、磁気抵抗効果素子911bと磁気抵抗効果素子911cの抵抗値が減少する。これにより、端子部913cからの出力電圧V1と端子部913dからの出力電圧V2とでは、それぞれ電位の変化(上昇或いは下降)が逆になるため、差動処理することでより大きな出力信号が得られることとなる。また、4つの磁気抵抗効果素子911に同じ方向でかつ同じ大きさの外部磁界が入射した場合は、出力電圧V1及び出力電圧V2は電位の変化が同じになるため、差動処理することで外部磁界の影響をキャンセルすることもできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−298761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した磁気抵抗効果素子911のような磁電変換素子には、感度軸方向(図19Aに示すDA、DB、DC及びDD)以外の方向の磁界を受けて、出力信号が影響される感度影響軸方向を有しているものがある。図20は、比較例を説明する図であって、図19Bに示す電流検知デバイス部のブリッジ回路をもとにして比較した構成概略図である。なお、図中の磁気抵抗素子93(93A、93B、93C、93D)の全ては、感度軸方向(図20に示すDA、DB、DC及びDD)に対して90°右に回転した方向に感度影響軸方向(図20に示すDAs、DBs、DCs及びDDs)がある場合を示している。
【0010】
このような場合、図20に示すように、Y軸方向の外部磁界MYが入射すると、出力電圧V1と出力電圧V2の差動処理を行っても外部磁界MYの影響をキャンセルすることができない。すなわち、導体92に流れる被測定電流により、一定の誘導磁界M1が発生していても、Y軸方向の外部磁界MYによって、さらなる誘導磁界が変化したように感知され、導体92に流れる電流値を違う値として検出してしまうこととなる。このようにして、感度影響軸方向を有した磁気抵抗素子93を用いた場合、従来例のような構成では、外部磁界MYの影響をキャンセルすることができなく、精度の良い電流センサを得ることができないと言った課題があった。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するもので、外部磁界の影響が低減され検出精度の良い電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明の電流センサは、平行に延びる一対のアーム部を含む折り返し形状の電流路と、前記一対のアーム部の間を通る対称軸を挟んで配設され、前記一対のアーム部を流れる電流による磁気を検出する一対の磁電変換素子とを備え、前記一対の磁電変換素子を直列接続し、前記一対の磁電変換素子の接続点から信号を取り出し可能なハーフブリッジ回路が形成され、前記一対の磁電変換素子の感度軸及び感度影響軸がそれぞれ同一方向を向いていることを特徴としている。
【0013】
これによれば、本発明の電流センサは、ハーフブリッジ回路を構成している各磁電変換素子の感度軸が同じ方向を向いており、一対のアーム部を流れる電流による誘導磁界が各磁電変換素子に対して逆向きにかかっている。このため、ハーフブリッジ回路の出力電圧における電位の変動が大きくなり、大きな出力信号が得られることとなる。しかも、ハーフブリッジ回路を構成している各磁電変換素子の感度影響軸が同じ方向を向いているので、ハーフブリッジ回路内の一対の磁電変換素子において外部磁界の感度影響軸方向成分に依存した抵抗値変動の大きさを揃えることができる。
【0014】
また、本発明の電流センサは、前記磁電変換素子がハードバイアス層を備えた磁気抵抗素子であり、前記磁電変換素子の前記感度影響軸が前記ハードバイアス層からのバイアス磁界の方向を向いていることを特徴としている。
【0015】
これによれば、各磁電変換素子の感度影響軸がバイアス磁界の方向を向いているので、ハーフブリッジ回路内の一対の磁電変換素子においてバイアス磁界に依存した抵抗値変動の大きさを揃えることができる。
【0016】
また、本発明の電流センサは、前記ハーフブリッジ回路を2つ有しており、前記2つのハーフブリッジ回路からフルブリッジ回路が形成され、一方のハーフブリッジ回路の一対の磁電変換素子の感度軸と他方のハーフブリッジ回路の一対の磁電変換素子の感度軸とが逆方向を向いていることを特徴としている。
【0017】
これによれば、本発明の電流センサは、一方のハーフブリッジ回路の各磁電変換素子の感度軸と他方のハーフブリッジ回路の各磁電変換素子の感度軸とが逆方向を向いているので、各ハーフブリッジ回路の出力電圧の変化(上昇或いは下降)が逆になる。このため、差動処理することで、より大きな出力信号を得ることができる。しかも、各ハーフブリッジ回路を構成している各磁電変換素子の感度影響軸が同じ方向を向いているので、外部磁界の感度影響軸方向成分による抵抗値の変動を揃えることができる。このため、差動処理によって外部磁界の感度影響軸方向成分による電圧変動が相殺され、外部磁界の影響が低減されて検出精度の良い電流センサを得ることができる。
【0018】
また、本発明の電流センサは、前記磁電変換素子に対して前記感度軸方向から入る外部磁界を遮蔽する磁気シールド部材を備えたことを特徴としている。
【0019】
これによれば、磁気シールド部材によって、最も感度に影響を及ぼす感度軸方向から入る外部磁界をシールドすることができる。さらに、感度軸方向と直交した方向から入る外部磁界は、その距離に依存して強度が変化するとともに、入射位置から遠く離れると外部磁界は方向が揃うようになる。これらにより、第1のハーフブリッジ回路と第2のハーフブリッジ回路を構成するそれぞれの磁電変換素子には、それぞれほぼ平行にかつ同じ大きさで外部磁界が入射するようになる。このことにより、外部磁界の発生源が近くにある等して、複数の磁電変換素子に外部磁界入射する場合であっても、ブリッジ回路或いはハーフブリッジ回路における外部磁界の感度影響軸方向成分による電圧変動が相殺され、より一層検出精度の良い電流センサを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電流センサは、外部磁界の影響が低減されて検出精度の向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する図であって、図1に示すZ1側から見た上面図である。
図3】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する図であって、図2の一部を省略した上面図である。
図4】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、電流路と磁電変換素子とを示した平面図である。
図5】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図4におけるブリッジ回路を模式的に示した図である。
図6】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図4における磁気シールド部材と外部磁界を示した図である。
図7】本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、差動処理の説明図である。
図8】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する分解斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する図であって、図8に示すZ1側から見た上面図である。
図10】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する図であって、図9の基板を省略した上面図である。
図11】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、電流路と磁電変換素子とを示した平面図である。
図12】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図11におけるブリッジ回路を模式的に示した図である。
図13】本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図11における磁気シールド部材と外部磁界を示した図である。
図14】本発明の第1実施形態の電流センサの変形例1を説明する上面図であって、図3と比較した図である。
図15】本発明の第1実施形態の電流センサの変形例2を説明する上面図であって、図3と比較した図である。
図16】本発明の第2実施形態の電流センサの変形例4を説明する上面図であって、図10と比較した図である。
図17】本発明の第1、第2実施形態の電流センサの変形例8を説明する上面図である。
図18】従来例の電流センサを説明する図であって、図18Aは、その斜視図であり、図18Bは、その断面図である。
図19】従来例の電流センサを説明する図であって、図19Aは、電流検知デバイス部を示す平面図であり、図19Bは、電流検知デバイス部のブリッジ回路を示した構成概略図である。
図20】比較例を説明する図であって、図19Bに示す電流検知デバイス部のブリッジ回路をもとにして比較した構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明においては、磁電変換素子として磁気抵抗素子やホール素子を用いることができる。磁気抵抗素子は、磁気抵抗効果を利用した磁電変換素子であり、ホール素子は、ホール効果を利用した磁電変換素子である。また、磁電変換素子として感度影響軸を有する素子が用いられる。ここで、感度影響軸とは、感度軸の他に被測定電流の測定精度に影響を及ぼす軸である。感度影響軸としては、検出感度が高い磁気抵抗素子や磁気収束板を備えたホール素子が有する副感度軸や、ハードバイアス層を備えた磁気抵抗素子が有する感度変化軸が挙げられる。
【0023】
なお、副感度軸とは、被測定電流からの誘導磁界により、感度軸に基づく出力信号に対して相対的に低い出力信号が生じる軸である。また、感度変化軸とは、磁気抵抗素子に対するハードバイアス層からのバイアス磁界の方向の軸である。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の電流センサ101を説明する分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態の電流センサ101を説明する図であって、図1に示すZ1側から見た上面図である。なお、説明を容易にするため、上ケース11Aは省略している。図3は、本発明の第1実施形態の電流センサ101を説明する図であって、図2の磁気シールド部材15の一部と基板19を省略した上面図である。図4は、本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、電流路12と磁電変換素子13とを示した平面図である。図5は、本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図4におけるブリッジ回路を模式的に示した図である。図6は、本発明の第1実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図4における磁気シールド部材15と外部磁界(MX、MY)を示した図である。なお説明を容易にするため、磁気シールド部材15は断面のみで示している。
【0025】
本発明の第1実施形態の電流センサ101は、図1ないし図4に示すように、一方が開放されたU字形状を有する電流路12と、電流路12に電流が流れたときに発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子13と、複数の磁電変換素子13間を接続して構成される回路(図示していない)と、電流路12のU字形状の外側に配設された磁気シールド部材15と、を備えて構成される。他に、複数の磁電変換素子13間を接続する配線パターンを有した基板19と、電流路12を位置決めして支持する支持部材52と、電流路12、磁電変換素子13、磁気シールド部材15、基板19及び支持部材52を収容する筐体11と、が設けられている。
【0026】
電流路12は、銅(Cu)等の導電性の良い材質を用い、図1ないし図3に示すように、一方が開放されたU字形状を有しており、U字形状の先端側には、図4に示す被測定電流路(測定したい電流路)CBと接続し固定するための孔12hが設けられている。この電流路12の被測定電流路CBへの接続及び固定は、図示はしていないが、被測定電流路CB側の穴CBhと電流路12の孔12hとを重ね合わせ、ボルト及びナット等を用いて、容易に達成することができる。なお、電流路12の材質に銅(Cu)を用いたが、これに限定されるものではなく、導電性の良い材質であれば良く、例えばアルミニウム(Al)等でも良い。
【0027】
また、電流路12は、支持部材52の溝に収容されるようになっており、電流路12の左右の外側に形成された傾斜部12kと支持部材52の左右の内側に形成された傾斜壁52kとを当接させるとともに、支持部材52の突設部52tを電流路12のスリット部12sに嵌め込むことにより、電流路12の位置決めが正確に行われる。
【0028】
また、支持部材52は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いている。合成樹脂材料を用いているので、射出成形等で、容易に作製することができる。
【0029】
磁電変換素子13は、電流路12に電流が流れたときに発生する磁気を検出する素子であって、例えば、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気抵抗素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子と言う)を用い、図4に示すように、4つ配設されている。そして、この4つの磁電変換素子13(13A、13B、13C、13D)は、説明を容易にするため詳細な図示はしていないが、GMR素子をシリコン基板上に作製した後、切り出されたGMR素子のチップと信号の取り出しのためのリード端子とを電気的に接続して、熱硬化性の合成樹脂でパッケージングして、図1に示す磁気センサパッケージ14としている。また、磁気センサパッケージ14は、図示していないリード端子により、基板19にはんだ付けされ、電流路12のU字形状のスリット部12sをまたぐようにして配設されている。このように、磁電変換素子13が同一のシリコン基板から取り出されるので、素子特性が揃い易くなっている。
【0030】
また、図4に示すように、複数の磁電変換素子13の内、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bが、電流路12のU字形状の対称軸SJを挟んでそれぞれ配設されているとともに、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dが、電流路12のU字形状の対称軸SJを挟んでそれぞれ配設されている。また、図4に示すように、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bの感度軸方向KDが、同じ方向を向いている(図4では、X2方向)とともに、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bの感度影響軸方向EDが、同じ方向を向いている(図4では、Y1方向)。一方、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dの感度軸方向KDが、同じ方向を向いているとともに、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dの感度影響軸方向EDが、同じ方向を向いている。また、第1、第2電磁変換素子13A、13Bの感度軸方向KDと第3、第4電磁変換素子13C、13Dの感度軸方向KDとが逆方向を向いている。なお、第1実施形態では、感度軸方向KDと感度影響軸方向EDとのなす角が90°の場合について説明したが、90°に限るものではない。
【0031】
また、本発明の第1実施形態の電流センサ101は、感度影響軸方向EDが、複数の磁電変換素子13にかけられたバイアスの方向になっている。
【0032】
以上のように配設された4つの磁電変換素子13(13A、13B、13C、13D)を電気的に接続して、図5に示すような回路を作成している。この回路は、図5に示すように、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bとにより、第1のハーフブリッジ回路HB1を構成するとともに、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dとにより第2のハーフブリッジ回路HB2を構成して、第1のハーフブリッジ回路HB1と第2のハーフブリッジ回路HB2との並列接続からなるブリッジ回路を構成している。なお、図示はしていないが、各端子部は、入力端子、グランド端子及び信号(出力)端子と接続され、図5に示すように、制御電源電圧Vcc、グラウンドGND、出力電圧V11及び出力電圧V12として、回路が構成される。
【0033】
以上のようにして構成された本発明の電流センサ101は、図4及び図5に示すように、被測定電流SCが印加され誘導磁界M1が発生した際に、第1のハーフブリッジ回路HB1内の第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bは、感度軸方向KDが同じ方向を向いているので、第1磁電変換素子13Aの感度軸方向KDと第2磁電変換素子13Bの感度軸方向KDとにかかる誘導磁界M1が逆向きになる。このため、第1磁電変換素子13Aの抵抗値が増大し、第2磁電変換素子13Bの抵抗値が減少する。同様にして、第2のハーフブリッジ回路HB2内の第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dは、感度軸方向KDが同じ方向を向いているので、第3磁電変換素子13Cの感度軸方向KDと第4磁電変換素子13Dの感度軸方向KDとにかかる誘導磁界M1が逆向きになる。この場合、第3、第4磁電変換素子13C、Dの感度軸方向が第1、第2磁電変換素子13A、Bの感度軸方向と逆向きであるため、第4磁電変換素子13Dの抵抗値が増大し、第3磁電変換素子13Cの抵抗値が減少する。これにより、出力電圧V11と出力電圧V12とでは、それぞれ電位の変化(上昇或いは下降)が逆になるため、差動処理することにより、大きな出力信号が得られることとなる。また、4つの磁電変換素子13に同じ方向でかつ同じ大きさの外部磁界が入射した場合は、出力電圧V11及び出力電圧V12は電位の変化が同じになるため、差動処理することで外部磁界の影響をキャンセルすることができる。
【0034】
また、図4に示すように、Y軸方向の外部磁界MYが入射すると、第1磁電変換素子13A及び第2磁電変換素子13Bは、感度影響軸方向EDが同じ方向を向いているので、感度影響軸方向EDと逆向きの外部磁界MYを受けると、それぞれ感度が増大して、それぞれ抵抗値が変化する。この場合、第1磁電変換素子13A及び第2磁電変換素子13Bにかかる誘導磁界M1が逆向きであるため、第1磁電変換素子13Aの抵抗値と第2磁電変換素子13Bの抵抗値とが外部磁界MYの影響によって逆向きに変化する。具体的には、外部磁界MYによって第1磁電変換素子13Aの感度が増大すると、誘導磁界M1に応じた抵抗値の増大方向の変化を示す抵抗増大率が増加する。外部磁界MYによって第2磁電変換素子13Bの感度が増大すると、誘導磁界M1に応じた抵抗値の減少方向の変化を示す抵抗減少率が増加する。
【0035】
一方、第3磁電変換素子13C及び第4磁電変換素子13Dは、感度影響軸方向EDが同じ方向を向いているので、感度影響軸方向EDと同じ向きの外部磁界MYを受けると、それぞれ感度が減少して、それぞれ抵抗値が変化する。この場合、第3磁電変換素子13C及び第4磁電変換素子13Dにかかる誘導磁界M1が逆向きであるため、第3磁電変換素子13Cの抵抗値と第4磁電変換素子13Dの抵抗値とが外部磁界MYの影響によって逆向きに変化する。具体的には、外部磁界MYによって第3磁電変換素子13Cの感度が減少すると、誘導磁界M1に応じた抵抗値の減少方向の変化を示す抵抗減少率が減少する。外部磁界MYによって第4磁電変換素子13Dの感度が減少すると、誘導磁界M1に応じた抵抗値の増加方向の変化を示す抵抗増加率が減少する。
【0036】
これにより、第1のハーフブリッジ回路HB1及び第2のハーフブリッジ回路HB2の外部磁界MYによる抵抗値変動が同じになるので、Y軸方向の外部磁界MYの影響を受けないようになる。すなわち、外部磁界が電流センサ101に及んだとしても、第1のハーフブリッジ回路HB1及び第2のハーフブリッジ回路HB2からの出力信号の差動をとることで、ブリッジ回路における感度影響軸方向成分(ここではY軸方向成分)の電圧変動が相殺される。このことにより、外部磁界の影響が低減され、検出精度の良い電流センサ101を得ることができる。
【0037】
ここで図7を参照して、第1のハーフブリッジ回路HB1及び第2のハーフブリッジ回路HB2の差動処理について詳細に説明する。なお、図7A、Bは比較例に係るブリッジ回路を示し、図7Cは本実施形態に係るブリッジ回路を示している。また、図7Aのブリッジ回路では、感度影響軸を有さない磁電変換素子を用いており、図7Bのブリッジ回路では、感度影響軸を有する磁電変換素子を用いている。また、以下の説明では、説明の便宜上、各ハーフブリッジ回路の出力電圧をV‘、V’とする。
【0038】
図7Aに示すように、比較例に係るブリッジ回路は、第1磁電変換素子51Aと第3磁電変換素子51Cとで第1のハーフブリッジ回路HBaを構成し、第2磁電変換素子51Bと第4磁電変換素子51Dとで第2のハーフブリッジ回路HBbを構成している。このブリッジ回路において、第1−第4磁電変換素子51A−51Dの抵抗R‘−R‘は、次式(1)のように表わされる。ここで、Rは抵抗値、Kは感度、Xは磁界の大きさ、Rはゼロ磁界の抵抗値をそれぞれ示している。また、+ΔRは抵抗増大率を表し、−ΔRは抵抗減少率を表している。
【数1】
【0039】
この場合、第1、第4磁電変換素子51A、51Dの感度軸KDは誘導磁界M1に対して逆向きであるため、第1、第4磁電変換素子51A、51Dの抵抗値R‘、R‘は増加方向に変化する。第2、第3磁電変換素子51B、51Cの感度軸KDは誘導磁界M1に対して同じ向きであるため、第2、第3磁電変換素子51B、51Cの抵抗値R‘、R‘は減少方向に変化する。
【0040】
また、第1のハーフブリッジ回路HBaの出力電圧V‘と第2のハーフブリッジ回路HBbの出力電圧V‘は、次式(2)のように表わされる。
【数2】
【0041】
そして、第1のハーフブリッジ回路HBaの出力V‘と第2のハーフブリッジ回路HBbの出力V‘との差動をとることで、次式(3)に示すように出力信号を得ることができる。
【数3】
このように、感度影響軸を有さない磁電変換素子を用いた場合には、誘導磁界M1の大きさXに比例した出力を得ることができる。
【0042】
しかしながら、図7Bに示す比較例ように、感度影響軸を有する磁電変換素子を用いた場合には、磁電変換素子の感度影響軸方向に印加される外部磁界MYの影響が問題となる。この比較例においても、第1磁電変換素子52Aと第3磁電変換素子52Cとで第1のハーフブリッジ回路HBcを構成し、第2磁電変換素子52Bと第4磁電変換素子52Dとで第2のハーフブリッジ回路HBdを構成している。このブリッジ回路において、第1−第4磁電変換素子52A−52Dの抵抗R‘−R‘は、次式(4)のように表わされる。ここで、Rは抵抗値、Kは感度、βは感度の変化量、Xは磁界の大きさ、Rはゼロ磁界の抵抗をそれぞれ示している。また、+ΔRは抵抗増大率を表し、−ΔRは抵抗減少率を表している。
【数4】
【0043】
この場合、第1、第4磁電変換素子52A、52Dの感度軸KDが誘導磁界M1に対して逆向きであるため、第1、第4磁電変換素子52A、52Dの抵抗値R‘、R‘は増加方向に変化する。第2、第3磁電変換素子52B、52Cの感度軸KDが誘導磁界M1に対して同じ向きであるため、第2、第3磁電変換素子52B、52Cの抵抗値R‘、R‘は減少方向に変化する。また、第1、第2磁電変換素子52A、52Bの感度影響軸EDが外部磁界MYに対して逆向きであるため、第1、第2磁電変換素子52A、52Bの感度がK+βになる。また、第3、第4磁電変換素子52C、52Dの感度影響軸EDが外部磁界MYに対して同じ向きあるため、第3、第4磁電変換素子52C、52Dの感度がK−βになる。よって、第1磁電変換素子52Aの抵抗値R‘に対しては、感度K+βが増加方向に作用し、第2磁電変換素子52Bの抵抗値R‘に対しては、感度K+βが減少方向に作用する。また、第3磁電変換素子52Cの抵抗値R‘に対しては、感度K−βが減少方向に作用し、第4磁電変換素子52Dの抵抗値R‘に対しては、感度K−βが増加方向に作用する。
【0044】
また上記したように、第1のハーフブリッジ回路HBcは、第1、第3磁電変換素子52A、52Cで構成され、第2のハーフブリッジ回路HBdは、第2、第4磁電変換素子52B、52Dで構成されている。このため、第1のハーフブリッジ回路HBcの出力電圧V‘と第2のハーフブリッジ回路HBdの出力電圧V‘は、次式(5)のように表わされる。
【数5】
【0045】
そして、第1のハーフブリッジ回路HBcの出力電圧V‘と第2のハーフブリッジ回路HBdの出力電圧V‘との差動をとることで、次式(6)に示すように出力信号を得ることができる。
【数6】
このように、比較例に示す構成において、感度影響軸を有する磁電変換素子を用いた場合には、β依存性をキャンセルすることができず、外部磁界MYの影響を受けてしまう。
【0046】
一方、図7Cに示す本実施形態の構成では、感度影響軸を有する磁電変換素子を用いた場合でも、磁電変換素子の感度影響軸方向に印加される外部磁界MYの影響を低減できる。本実施形態では、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bとで第1のハーフブリッジ回路HB1を構成し、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dとで第2のハーフブリッジ回路HB2を構成している。このブリッジ回路において、第1−第4磁電変換素子13A−13Dの抵抗R‘−R‘は、次式(7)のように表わされる。ここで、Rは抵抗値、Kは感度、βは感度の変化量、Xは磁界の大きさ、Rはゼロ磁界の抵抗をそれぞれ示している。また、+ΔRは抵抗増大率を表し、−ΔRは抵抗減少率を表している。
【数7】
この場合、各磁電変換素子13A−13Dは、図7Bに示す比較例と同様に抵抗値R‘−R‘が変化する。
【0047】
また上記したように、第1のハーフブリッジ回路HB1は、第1、第2磁電変換素子13A、13Bで構成され、第2のハーフブリッジ回路HB2は、第3、第4磁電変換素子13C、13Dで構成されている。このため、第1のハーフブリッジ回路HB1の出力電圧V‘と第2のハーフブリッジ回路HB2の出力電圧V‘は、次式(8)のように表わされる。
【数8】
この場合、出力電圧V1‘、V2’における外部磁界MYによる抵抗値変動成分が同じ(βXV/2)になっている。
【0048】
そして、第1のハーフブリッジ回路HB1の出力電圧V‘と第2のハーフブリッジ回路HB2の出力電圧V‘との差動をとることで、次式(9)に示すように出力信号を得ることができる。
【数9】
このように、本実施形態に示す構成では、β依存性をキャンセルことができ、外部磁界MYの影響を受けることがない。
【0049】
さらに、第1のハーフブリッジ回路HB1と第2のハーフブリッジ回路HB2とでブリッジ回路を構成しているので、GMR素子のような磁界と電圧の関係においてオフセットを有する磁電変換素子13であっても、ブリッジ回路における感度影響軸方向成分(ここではY軸方向成分)の電圧変動をより正確に相殺することができる。
【0050】
磁気シールド部材15は、磁性粉末を含有した合成樹脂材を用い、図1図2図3及び図6に示すように、筒状に成形され、周囲の内壁が電流路12のU字形状の外側に配設されるように組み込まれている。そして、図6に示す外部磁界MXが紙面の右側の存在した際に、詳細な図示はしていないが、この磁気シールド部材15を通って紙面の左側に抜けるようになっている。このようにして、主として感度軸方向KDから磁電変換素子13に入る外部磁界MXを遮蔽している。これにより、外乱磁界の発生源が電流センサ101の近くに存在する場合でも、最も感度に影響を及ぼす感度軸方向KDの外部磁界MXをシールドすることができる。
【0051】
また、詳細な図示はしていないが、Y軸方向の外部磁界MYの大部分は、この磁気シールド部材15を通って紙面の上側から下側に抜けるようになるが、磁気シールド部材15に開口部15kを有しているので、Y軸方向の外部磁界MYの一部は、シールドされずに磁電変換素子13に入射してくる。しかしながら、磁気シールド部材15の開口部15kからの距離に依存して外部磁界MYの強度が変化するとともに、開口部15kから遠く離れると外部磁界MYはY軸方向に揃うようになる。これにより、第1のハーフブリッジ回路HB1と第2のハーフブリッジ回路HB2を構成するそれぞれの磁電変換素子13(13Aと13B、13Cと13D)には、それぞれほぼ平行にかつ同じ大きさで外部磁界MYが入射するようになる。このことにより、外部磁界の発生源が近くにある等して、複数の磁電変換素子13に入射する外部磁界の方向や強さが大きく異なる場合であっても、ブリッジ回路或いはハーフブリッジ回路における感度影響軸方向成分の電圧変動が相殺され、より一層検出精度の良い電流センサ101を得ることができる。特に、電流検出の高い精度が要求される、バッテリー管理システム用の電流センサにおいては、とても有用である。
【0052】
また、磁気シールド部材15の作製は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂に、扁平状磁性粉末を分散させ、射出成形等によって容易に行われる。また、磁気シールド部材15は、複数の扁平状磁性粉末の長手方向が磁気シールド部材15の面方向に揃えた形で並べるように配向させているので、磁気シールド効果が高められている。
【0053】
基板19は、一般に広く知られている両面のプリント配線板を用いており、ガラス入りのエポキシ樹脂のベース基板に、ベース基板上に設けられた銅(Cu)等の金属箔をパターニングして、配線パターンを形成している。基板19には、図1及び図2に示すように、磁気センサパッケージ14が搭載され、基板19は、磁気センサパッケージ14が電流路12のU字形状のアーム部の両方にかかるように、電流路12上に配設されている。すなわち、基板19は、筺体11を介さずに電流路12に直に取り付けられている。なお、基板19にガラス入りのエポキシ樹脂からなるプリント配線板を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばセラミック配線板、フレキシブル配線板でも良い。
【0054】
筐体11は、図1ないし図3に示すように、箱状に形成された上ケース11Aと断面がU字状に形成された下ケース11Dとから構成され、電流路12と磁気シールド部材15と磁気センサパッケージ14が搭載された基板19と磁気シールド部材15と支持部材52とを、上ケース11Aと下ケース11Dとで挟むようにして収容している。また、磁気シールド部材15の一部と支持部材52の一部が筐体11からはみ出して収容されている。また、筐体11も支持部材52と同様に、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)等の合成樹脂材料を用いて、射出成形等で作製している。
【0055】
以上により、本発明の第1実施形態の電流センサ101は、各ハーフブリッジ回路HB1、HB2を構成している各磁電変換素子13の感度軸が同じ方向を向いており、電流路12を流れる電流による誘導磁界が各磁電変換素子13に対して逆向きにかかっている。このため、各ハーフブリッジ回路HB1、HB2の出力電圧における電位の変動が大きくなり、大きな出力信号が得られることとなる。また、第1のハーフブリッジ回路HB1の各磁電変換素子13の感度軸と第2のハーフブリッジ回路HB2の各磁電変換素子13の感度軸とが逆方向を向いているので、各ハーフブリッジ回路HB1、HB2の出力電圧(V11、V12)の変化(上昇或いは下降)が逆になる。このため、差動処理することで、より大きな出力信号を得ることができる。しかも、各ハーフブリッジ回路HB1、HB2において各磁電変換素子13の感度影響軸が同じ方向を向いているので、外部磁界MYの感度影響軸方向成分による抵抗値の変動を揃えることができる。このため、差動処理によって外部磁界MYの感度影響軸方向成分による電圧変動が相殺され、外部磁界MYの影響が低減されて検出精度の良い電流センサ101を得ることができる。
【0056】
また、電流路12のU字形状の外側に配設された磁気シールド部材15を有しているので、最も感度に影響を及ぼす感度軸方向KDから入る外部磁界MXをシールドすることができる。さらに、磁気シールド部材15の開口部15kから入射したY軸方向の外部磁界MYは、その距離に依存して強度が変化するとともに、開口部15kから遠く離れると外部磁界MYはY軸方向に揃うようになる。これらにより、第1のハーフブリッジ回路HB1と第2のハーフブリッジ回路HB2を構成するそれぞれの磁電変換素子13(13Aと13B、13Cと13D)には、それぞれほぼ平行にかつ同じ大きさで外部磁界MYが入射するようになる。このことにより、外部磁界の発生源が近くにある等して、複数の磁電変換素子13に外部磁界が入射する場合であっても、ブリッジ回路における感度影響軸方向成分の電圧変動が相殺され、より一層検出精度の良い電流センサ101を得ることができる。
【0057】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態の電流センサ102を説明する分解斜視図である。図9は、本発明の第2実施形態の電流センサ102を説明する図であって、図8に示すZ1側から見た上面図である。なお、説明を容易にするため、磁気シールド部材25Aは省略している。図10は、本発明の第2実施形態の電流センサ102を説明する図であって、図9の基板29を省略した上面図である。図11は、本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、電流路22と磁電変換素子23とを示した平面図である。図12は、本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図11におけるブリッジ回路を模式的に示した図である。図13は、本発明の第2実施形態の電流センサを説明する構成図であって、図11における磁気シールド部材25と外部磁界(MX、MY)を示した図である。なお説明を容易にするため、磁気シールド部材25は断面のみで示している。また、第2実施形態の電流センサ102は、第1実施形態に対し、磁電変換素子23と磁気シールド部材25の構成が異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0058】
本発明の第2実施形態の電流センサ102は、図8ないし図11に示すように、一方が開放されたU字形状を有する電流路22と、電流路22に電流が流れたときに発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子23と、複数の磁電変換素子23間を接続して構成される回路(図示していない)と、電流路22のU字形状の外側に配設された磁気シールド部材25(25A、25D)と、を備えて構成される。他に、複数の磁電変換素子23間を接続する配線パターンを有した基板29と、電流路22を位置決めして支持する支持部材62と、が設けられている。
【0059】
電流路22は、銅(Cu)等の導電性の良い材質を用い、図8ないし図10に示すように、一方が開放されたU字形状を有しており、U字形状の先端側には、図11に示す被測定電流路(測定したい電流路)CBと接続し固定するための孔22hが設けられている。この電流路22の被測定電流路CBへの接続及び固定は、図示はしていないが、被測定電流路CB側の穴CBhと電流路22の孔22hとを重ね合わせ、ボルト及びナット等を用いて、容易に達成することができる。なお、電流路22の材質に銅(Cu)を用いたが、これに限定されるものではなく、導電性の良い材質であれば良く、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)等でも良い。
【0060】
また、電流路22は、支持部材62の溝に収容されるようになっており、電流路22の左右の外側に形成された傾斜部22kと支持部材62の左右の内側に形成された傾斜壁62kとを当接させるとともに、支持部材62の突設部62tを電流路22のスリット部22sに嵌め込むことにより、電流路22の位置決めが正確に行われる。
【0061】
また、支持部材62は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂材料を用いている。合成樹脂材料を用いているので、射出成形等で、容易に作製することができる。
【0062】
磁電変換素子23は、電流路22に電流が流れたときに発生する磁気を検出する素子であって、例えば、磁気抵抗素子を用い、図11に示すように、2つ配設されている。そして、この2つの磁電変換素子23(23A、23B)は、説明を容易にするため詳細な図示はしていないが、磁気抵抗素子のチップと信号の取り出しのためのリード端子とを電気的に接続して、熱硬化性の合成樹脂でパッケージングして、図8に示す磁気センサパッケージ24としている。また、磁気センサパッケージ24は、図示していないリード端子により、基板29にはんだ付けされ、電流路22のU字形状のスリット部22sをまたぐようにして配設されている。
【0063】
また、図11に示すように、複数の磁電変換素子23の内、第1磁電変換素子23Aと第2磁電変換素子23Bが、電流路22のU字形状の対称軸SJを挟んでそれぞれ配設されている。また、図11に示すように、第1磁電変換素子23Aと第2磁電変換素子23Bの感度軸方向KDが、同じ方向を向いている(図11では、X2方向)とともに、第1磁電変換素子23Aと第2磁電変換素子23Bの感度影響軸方向EDが、同じ方向を向いている(図11では、Y1方向)。なお、第2実施形態では、感度軸方向KDと感度影響軸方向EDとのなす角が90°の場合について説明したが、90°に限るものではない。
【0064】
以上のように配設された2つの磁電変換素子23(23A、23B)を電気的に接続して、図12に示すような回路を作成している。この回路は、図12に示すように、第1磁電変換素子23Aと第2磁電変換素子23Bとにより、ハーフブリッジ回路HBCを構成している。なお、図示はしていないが、各端子部は、入力端子、グランド端子及び信号(出力)端子と接続され、図12に示すように、制御電源電圧Vcc、グラウンドGND、出力電圧V21として、回路が構成される。
【0065】
これによれば、本発明の電流センサは、ハーフブリッジ回路を構成している各磁電変換素子の感度軸が同じ方向を向いており、一対のアーム部を流れる電流による誘導磁界が各磁電変換素子に対して逆向きにかかっている。このため、ハーフブリッジ回路の出力電圧における電位の変動が大きくなり、大きな出力信号が得られることとなる。しかも、ハーフブリッジ回路を構成している各磁電変換素子の感度影響軸が同じ方向を向いているので、ハーフブリッジ回路内の一対の磁電変換素子において外部磁界の感度影響軸方向成分に依存した抵抗値変動の大きさを揃えることができる。つまり、各磁電変換素子の抵抗値が、同様に外部磁界の影響を受けるため、各磁電変換素子の抵抗値の比率は、外部磁界の影響をほとんど受けない。よって、出力電圧V21は、外部磁界の影響をほとんど受けない。
【0066】
磁気シールド部材25は、磁性粉末を含有した合成樹脂材を用い、図8に示すように、2つのケース状の部材から構成され、図8ないし図10に示すように、上側の磁気シールド部材25Aと下側の磁気シールド部材25Dとで、電流路22の一部と支持部材62の一部と基板29と磁気センサパッケージ24とを、包み込むようにしている。このため、磁気シールド部材25の内壁が電流路22のU字形状の外側に配設されるようになる。そして、図13に示す外部磁界MXが紙面の右側の存在した際に、詳細な図示はしていないが、この磁気シールド部材25を通って紙面の左側に抜けるようになっている。このようにして、主として感度軸方向KDから磁電変換素子23に入る外部磁界MXを遮蔽している。これにより、外乱磁界の発生源が電流センサ101の近くに存在する場合でも、最も感度に影響を及ぼす感度軸方向KDの外部磁界MXをシールドすることができる。
【0067】
また、詳細な図示はしていないが、Y軸方向の外部磁界MYの大部分は、この磁気シールド部材25を通って紙面の上側から下側に抜けるようになるが、磁気シールド部材25の一部に隙間を有するので、Y軸方向の外部磁界MYの一部は、シールドされずに磁電変換素子23に入射してくる。しかしながら、磁気シールド部材25の側壁の隙間からの距離に依存して外部磁界MYの強度が変化するとともに、側壁の隙間から遠く離れると外部磁界MYはY軸方向に揃うようになる。これにより、ハーフブリッジ回路HBCを構成するそれぞれの磁電変換素子23(23Aと23B)には、それぞれほぼ平行にかつ同じ大きさで外部磁界MYが入射するようになる。
【0068】
また、磁気シールド部材25の作製は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂に扁平状磁性粉末を分散させた磁性体シートに、曲げ加工を施して所望の形状に形成することによって容易に行われる。また、磁性体シートは、複数の扁平状磁性粉末の長手方向が磁性体シートの面方向に揃えた形で並べるように配向させているので、磁気シールド効果が高められている。
【0069】
基板29は、一般に広く知られている片面のプリント配線板を用いており、ガラス入りのエポキシ樹脂のベース基板に、ベース基板上に設けられた銅(Cu)等の金属箔をパターニングして、配線パターンを形成している。基板29には、図8及び図9に示すように、磁気センサパッケージ24が搭載され、基板29は、磁気センサパッケージ24が電流路22のU字形状のアーム部の両方にかかるように、電流路22上に配設されている。すなわち、基板29は、磁気シールド部材25を介さずに電流路22に直に取り付けられている。なお、基板29にガラス入りのエポキシ樹脂からなるプリント配線板を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばセラミック配線板、フレキシブル配線板でも良い。
【0070】
以上により、本発明の第2実施形態の電流センサ102は、ハーフブリッジ回路HBCを構成している第1磁電変換素子23Aと第2磁電変換素子23Bの感度軸が同じ方向を向いており、一対のアーム部を流れる電流による誘導磁界が各磁電変換素子23A、23Bに対して逆向きにかかっている。このため、ハーフブリッジ回路HBCの出力電圧における電位の変動が大きくなり、大きな出力信号が得られることとなる。しかも、ハーフブリッジ回路HBCを構成している各磁電変換素子23A、23Bの感度影響軸が同じ方向を向いているので、ハーフブリッジ回路HBC内の各磁電変換素子23A、23Bにおいて外部磁界の感度影響軸方向成分に依存した抵抗値変動の大きさを揃えることができる。
【0071】
また、電流路22のU字形状の外側に配設された磁気シールド部材25を有しているので、最も感度に影響を及ぼす感度軸方向KDから入る外部磁界MXをシールドすることができる。さらに、電流路22の長手方向から入射したY軸方向の外部磁界MYは、その距離に依存して強度が変化するとともに、磁気シールド部材25の外側から遠く離れると外部磁界MYはY軸方向に揃うようになる。これらにより、ハーフブリッジ回路HBCを構成するそれぞれの磁電変換素子23(23Aと23B)には、それぞれほぼ平行にかつ同じ大きさで外部磁界MYが入射するようになる。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0073】
図14は、本発明の第1実施形態の電流センサ101の変形例1の電流センサC101を説明する上面図であって、図3と比較した図である。図15は、本発明の第1実施形態の電流センサ101の変形例2の電流センサC121を説明する上面図であって、図3と比較した図である。図16は、本発明の第2実施形態の電流センサ102の変形例4の電流センサC102を説明する上面図であって、図10と比較した図である。図17は、本発明の各実施形態の電流センサ101、102の変形例8の電流センサ103を説明する上面図である。
【0074】
<変形例1>
上記第1実施形態では、4つの磁電変換素子13を1パッケージにした構成にしたが、図14に示すように、第1磁電変換素子13Aと第2磁電変換素子13Bを1パッケージにして磁気センサパッケージC14Aとし、第3磁電変換素子13Cと第4磁電変換素子13Dを1パッケージにして磁気センサパッケージC14Cとしても良い。
【0075】
<変形例2>
上記第1実施形態では、4つの磁電変換素子13を1パッケージにした構成にしたが、図15に示すように、第1磁電変換素子13Aと第3磁電変換素子13Cを1パッケージにして磁気センサパッケージC14Eとし、第2磁電変換素子13Bと第4磁電変換素子13Dを1パッケージにして磁気センサパッケージC14Fとしても良い。
【0076】
<変形例3>
上記第1実施形態では、磁気シールド部材15に磁性粉末を含有した合成樹脂材を用いた筒状の成形体を適用した構成にしたが、磁性粉末を含有しない合成樹脂材を用いた筒状の成形体に、扁平状磁性粉末をバインダーと溶剤に分散させ、塗布及び硬化することによって磁気シールド層を設ける構成であっても良い。その際には、筒状の成形体の内側の全周或いは外側の全周のいずれかに設けると良い。また、磁気シールド部材15を用いなく、筐体11の内側壁に磁気シールド層を設けるようにして、磁気シールド部材としても良い。
【0077】
<変形例4>
上記第2実施形態では、2つの磁電変換素子23を1パッケージにした構成にしたが、図16に示すように、第1磁電変換素子23Aを1パッケージにして磁気センサパッケージC24Aとし、第2磁電変換素子23Bを1パッケージにして磁気センサパッケージC24Bとしても良い。
【0078】
<変形例5>
上記各実施形態では、電流路(12、22)の断面形状が矩形の板状のタイプ、所謂バスバータイプを用いたが、断面形状が円形若しくは楕円形の電線のタイプの電流路を用いても良い。また、上記各実施形態では、電流路(12、22)がU字状に形成される構成を例示したが、この構成に限定されない。電流路(12、22)は、平行に延びる一対のアーム部を有する折り返し形状に形成されていればよい。なお、一対のアーム部は、完全な平行に限られない。すなわち、電流センサの検出精度が向上する範囲であれば、実質的に平行と見なせる程度を含んでいる。
【0079】
<変形例6>
上記各実施形態では、磁気シールド部材(15、25)を好適に用いたが、磁気シールド部材(15、25)を用いない構成であっても良い。
【0080】
<変形例7>
上記第1実施形態では、第1のハーフブリッジ回路HB1の磁電変換素子13の感度影響軸と第2のハーフブリッジ回路HB2の磁電変換素子13の感度影響軸とが逆向きに向けられたが、同じ向きでもよい。すなわち、感度影響軸は、同一のハーフブリッジ回路内で同じ向きであればよい。
【0081】
<変形例8>
上記各実施形態では、磁電変換素子として磁気抵抗素子を用いたが、図17に示すように、ホール素子を用いてもよい。この電流センサ103は、U字状の電流路32上に基板(不図示)が取り付けられている。基板上には、電流路32のU字形状の対称軸SJを挟んで、一対の磁電変換素子33(33A、33B)が電流路32のアーム部の上方に位置される。なお、一対の磁電変換素子33は、上記各実施形態のようにパッケージングされてもよい。また、第1磁電変換素子33Aと第2磁電変換素子33Bの感度軸方向KDが同じ方向(X2方向)を向いている。また、第1磁電変換素子33Aと第2磁電変換素子33Bの感度影響軸方向EDが同じ方向(Y1方向)を向いている。なお、感度軸方向KDと感度影響軸方向EDとのなす角が90°の場合について説明したが、90°に限るものではない。
【0082】
この電流センサ103は、被測定電流SCが印加され誘導磁界M1が発生した際に、第1磁電変換素子33Aと第2磁電変換素子33Bは、感度軸方向KDが同じ方向を向いているので、第1磁電変換素子33Aの感度軸方向KDと第2磁電変換素子33Bの感度軸方向KDとにかかる誘導磁界M1が逆向きになる。このため、第1磁電変換素子33Aの出力電圧と第2磁電変換素子33Bの出力電圧とでは、それぞれ電位の変化(上昇或いは下降)が逆になるため、差動処理することにより、大きな出力信号が得られることとなる。
【0083】
また、Y軸方向の外部磁界MYが入射すると、第1磁電変換素子33A及び第2磁電変換素子33Bは、感度影響軸方向EDが同じ方向を向いているので、外部磁界MYの影響による出力信号の変動量が揃えられる。このため、差動処理によって外部磁界の感度影響軸方向成分の電圧変動が相殺され、外部磁界の影響が低減されて検出精度の良い電流センサ103を得ることができる。なお、ホール素子を用いた電流センサ103においても、上記各実施形態のように磁気シールド部材を設けることが可能である。
【0084】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0085】
本出願は、2012年5月18日出願の特願2012−114812及び2012年7月6日出願の特願2012−152634に基づく。この内容は、全てここに含めておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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