(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮影光路上に位置して被写体光を観察光学系に反射させるファインダ導光位置と、撮影光路から退避して被写体光を撮像用受光媒体側に通過させる退避位置との間で回動可能に支持された可動ミラーを備えたカメラにおいて、
上記可動ミラーに回動力を付与する駆動手段;
上記可動ミラーに設けられ、上記可動ミラーの回動によって第1の移動軌跡に沿って移動するミラー側当接部;
被押圧部を有する緩衝部材;
上記被押圧部が上記第1の移動軌跡上に位置する緩衝待機位置から、上記被押圧部が上記第1の移動軌跡上から外れて位置する押し込み位置まで、上記第1の移動軌跡と交差する第2の移動軌跡に沿って移動可能に上記緩衝部材を支持する案内手段;及び
上記緩衝部材を上記緩衝待機位置に向けて付勢する付勢部材;
を備え、
上記案内手段は、上記可動ミラーが上記ファインダ導光位置と上記退避位置の一方にあるときの上記ミラー側当接部に対して、上記被押圧部が上記第1の移動軌跡に沿う方向で非接触かつ近接する近接離間位置になるように、上記緩衝部材の上記緩衝待機位置を定めること;
上記可動ミラーが上記駆動手段の駆動力によって上記ファインダ導光位置と上記退避位置の上記一方に向けて上記ファインダ導光位置と上記退避位置の他方から回動する途中位置で、上記第1の移動軌跡に沿って移動する上記ミラー側当接部が、上記付勢部材の付勢力によって上記緩衝待機位置に保持される上記緩衝部材の上記被押圧部に当接し、上記ミラー側当接部から上記被押圧部に作用する上記可動ミラーの押圧力によって、上記緩衝部材が上記付勢部材の上記付勢力に抗して上記緩衝待機位置から上記押し込み位置へ移動されること;
上記可動ミラーが上記駆動手段の駆動力による上記回動を継続して上記途中位置よりも上記ファインダ導光位置と上記退避位置の上記一方の方向へ進むと、上記ミラー側当接部が上記被押圧部に対する上記当接及び上記押圧力の付与を解除し、上記緩衝部材が上記付勢部材の上記付勢力によって上記押し込み位置から上記緩衝待機位置に移動すること;及び
上記可動ミラーが上記駆動手段の駆動力による上記回動によって上記ファインダ導光位置と上記退避位置の上記一方まで達すると、上記ファインダ導光位置と上記退避位置の上記他方へ向けての上記駆動手段の駆動力によらない上記可動ミラーの反転回動を、上記付勢部材の上記付勢力によって上記近接離間位置に保持される上記被押圧部に対する上記ミラー側当接部の当接によって制限すること;
を特徴とするカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。
請求項1または2記載のカメラの可動ミラー衝撃吸収機構において、上記ミラー側当接部と上記被押圧部は、上記可動ミラーによって上記緩衝部材が押圧移動されるときに互いの外周面を擦動させる突起であるカメラの可動ミラー衝撃吸収機構。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す一眼レフカメラ(以下、カメラ)10は、カメラボディ11の前面に交換式のレンズ鏡筒12を着脱させるレンズマウント13を有し、その内方にミラーボックス14が設けられている。
【0016】
ミラーボックス14内には可動ミラー(クイックリターンミラー)15が設けられる。可動ミラー15は、ミラーシート16上にメインミラー15aを固定的に支持し、ミラーシート16の背面側にサブミラー17を回動可能に支持した構造になっており、ミラーシート16の両側に突出する一対のミラーシートヒンジ16xがミラーボックス14の両側壁に軸支されている。可動ミラー15の後方にはフォーカルプレーンシャッタ(以下、シャッタ)18が設けられ、シャッタ18の後方にはイメージセンサ(撮像用受光媒体)19が設けられている。なお、本実施形態のカメラ10は、撮像用受光媒体にイメージセンサ19を用いるデジタルカメラであるが、撮像用受光媒体として銀塩フィルムを用いるカメラに対しても本発明は適用が可能である。
【0017】
可動ミラー15は、ミラーシートヒンジ16xを軸として、レンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aからイメージセンサ19に至る撮影光路上に約45度の角度で斜設されるダウン位置(ファインダ導光位置:
図1の実線、
図2、
図4、
図5、
図10)と、撮影光路から上方に退避したアップ位置(退避位置:
図1の二点鎖線、
図3、
図6、
図13)の間で往復回動される。
図4及び
図6に示すように、可動ミラー15を挟んで位置するミラーボックス14の両側壁のうち一方の内面からダウン位置決めダボ20が突出しており、このダウン位置決めダボ20に対してミラーシート16の一側部に設けたストッパ部16a(
図7、
図8)を当接させることで、可動ミラー15のダウン位置が定められる。ダウン位置決めダボ20は、ミラーボックス14に対する取付位置の微調整が可能である。また、ミラーボックス14内には、可動ミラー15をアップ位置に回動させたときミラーシート16の上面が当接可能な上方ストッパ21が設けられている。可動ミラー15の上方には、ペンタプリズムや接眼レンズなどにより構成されるファインダ光学系22が設けられている。
【0018】
レンズマウント13にレンズ鏡筒12を装着した状態でレンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光は、可動ミラー15がダウン位置にあるときには、可動ミラー15のメインミラー15aにより反射されてファインダ光学系22に入り、カメラボディ11後面側のファインダ窓22aを通して被写体像を観察することができる。この状態では、ファインダ光学系22を構成するペンタプリズムの後方に設けた測光ユニット23による測光が可能である。また、可動ミラー15のダウン位置では、サブミラー17はミラーシート16に対して斜め下方に向けて突出し、サブミラー17によって被写体光の一部がミラーボックス14の下方の測距ユニット24に導かれ、被写体距離を検出することができる。一方、可動ミラー15がアップ位置にあるときには、撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光は可動ミラー15で反射されずにシャッタ18側に進み、シャッタ18を開くことでイメージセンサ19の受光面上に光を入射させることができる。可動ミラー15のアップ位置では、サブミラー17はミラーシート16の背面側に格納される。カメラボディ11の後面に設けたLCDモニタ25には、イメージセンサ19により得られる被写体の電子画像や、電子画像以外の各種の情報を表示することができる。
【0019】
図3及び
図5に示すように、ミラーボックス14の一側部(前方から見て左側の側部)には、可動ミラー15の昇降回動を行わせるミラー駆動機構30が設けられている。ミラー駆動機構30は、モータ
(駆動手段)31と、モータ31の駆動力を伝達する減速ギヤ列
(駆動手段)32と、遊星ギヤ機構を介して減速ギヤ列32からの回転駆動力が伝達されるカムギヤ
(駆動手段)33と、カムギヤ33によって回動位置が制御されるミラー駆動レバー
(駆動手段)34を備えている。ミラー駆動レバー34は、ミラーシートヒンジ16xの軸線と略平行な軸34xを中心として往復回動可能にミラーボックス14に支持されており、ミラーシート16の側部に設けたミラーシートボス16bを保持している。このミラー駆動レバー34による保持部分がミラーシートボス16bを下方に押圧することで可動ミラー15をダウン位置に向けて回動させ、ミラーシートボス16bを上方に押圧することで可動ミラー15をアップ位置に向けて回動させる。ミラー駆動レバー34は、可動ミラー15をダウン位置へ押圧する方向へ回動付勢されており、カムギヤ33が特定の回転位置にあるとき、該カムギヤ33に形成したミラー制御カム(周面カム)によって、付勢力に抗してミラー駆動レバー34がミラーアップ方向へ押圧回動される。詳しくは、カムギヤ33は初期位置から一方向にのみ回転される一回転カムギヤであり、カムギヤ33が初期位置にあるときには、該カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34を押圧せず、ミラー駆動レバー34に作用する付勢力によって可動ミラー15がダウン位置に保持されている。カムギヤ33が初期位置から途中まで回転されると、カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34を押圧回動させ、ミラー駆動レバー34が可動ミラー15をアップ位置に回動させる。この途中位置からカムギヤ33が初期位置に戻るまでの間に、カムギヤ33のミラー制御カムがミラー駆動レバー34に対する押圧を解除して、可動ミラー15がダウン位置に復帰される。
【0020】
ミラーボックス14の一側部にはさらに、シャッタ18のチャージ動作を行わせるシャッタチャージレバー35が備えられている。カムギヤ33は、上述のミラー駆動カムに加えて、シャッタチャージレバー35の動作を制御するシャッタチャージカムを有し、初期位置から一回転することでシャッタチャージレバー35を往復回動させてシャッタチャージを行わせる。シャッタチャージ機構は本発明の特徴とは関係がないため、詳細な説明を省略する。
【0021】
ミラーボックス14の他側部(前方から見て右側の側部)には、可動ミラー15がダウン位置とアップ位置に回動するときの衝撃を吸収して可動ミラー15のバウンド(振動)を抑制させるミラー衝撃吸収機構40が備えられている。ミラー衝撃吸収機構40は、ダウン吸収レバー(緩衝部材、第1の緩衝部材)41、調整部材(緩衝部材、第1の緩衝部材)42、アップ吸収レバー(緩衝部材、第2の緩衝部材)43及び吸収ばね(付勢部材、
共用付勢部材)44を備え、これらの各部材は、ミラーボックス14の側部に固定される押さえ板45(
図4)によって脱落しないように保持されている。なお、
図6と
図9は押さえ板45を取り外した状態を示している。
【0022】
ダウン吸収レバー41と調整部材42は、可動ミラー15がダウン位置へ回動するときに衝撃吸収及びバウンド抑制を行う緩衝部材を構成する。ダウン吸収レバー41は、ミラーボックス14の側面に突設した上下2つのガイドピン
(案内手段、第1の案内手段)14aとガイドピン
(案内手段、第1の案内手段)14bをそれぞれ挿通させるガイド孔
(案内手段、第1の案内手段)41aとガイド孔
(案内手段、第1の案内手段)41bを有し、ガイド孔41a、41bでガイドピン14a、14bの案内を受けることによって、ミラーシートヒンジ16xの軸線と直交する平面内で上下方向
(第2の移動軌跡)へ直進移動可能に支持されている。ダウン吸収レバー41の上端部付近には、ばね掛け部41cが形成されている。
【0023】
図18に示すように、ダウン吸収レバー41にはガイド孔41a、41bの間に取付孔41dが形成され、この取付孔41d内に調整部材42が嵌合支持されている。取付孔41dの周囲には環状フランジ41eが形成され、環状フランジ41e上に一対の切欠部41fが形成されている。調整部材42は、取付孔41d内に挿入可能な軸部42a(
図18ないし
図23)と、該軸部42aよりも大径で環状フランジ41eに当接するフランジ部42bと、フランジ部42bと軸方向に位置を異ならせて設けられ、一対の切欠部41fを通過可能な一対の爪部42cを有する。
図18のように調整部材42を平面視した状態で、一対の爪部42cは軸部42aの中心に関して略対称の位置に設けられている。フランジ部
42bは、軸部42aと同心状をなす円形部42b1を基本形状としており、円形部42b1の一部を直線状に切り欠いた一対の平面部42b2と、円形部42b1の内径方向に切り欠かれた一対の凹部42b3を有する。一対の平面部42b2は略平行に形成されており、軸部42aの中心に関して略対称に配置されている。一対の凹部42b3は、一対の爪部42cに対応する周方向位置に形成されていて、フランジ部42側から見たときに各爪部42cの視認を可能にする。軸部42aの外周面上には、取付孔41dの内周面に当接可能な複数のガイド凸部42dが突設されている。調整部材42にはまた、軸部42aの一端部に調整作業用の器具を嵌合させるための凹部42eが形成され、軸部42aの他端部に、ミラーボックス14の内方側に向けて突出する緩衝用ダボ(被押圧部
、第1の被押圧部)D1が設けられる。緩衝用ダボD1は、軸部42aの中心に対して偏心した位置に配されており、軸部42aが取付孔41dに嵌入された状態で調整部材42を回転させると、ダウン吸収レバー41に対して緩衝用ダボD1の位置が変化する。
【0024】
調整部材42は、
図19に示す角度位置でダウン吸収レバー41に着脱可能であり、取り付け時には、一対の爪部42cを一つの切欠部41fに対して通過させ、軸部42aを取付孔41d内に挿入させる。調整部材42の着脱可能な角度位置は、凹部42b3(凹部42b3を通して見える爪部42c)や平面部42b2を指標とすることで確認できる。取付孔41dに対する調整部材42の挿入方向の位置は、フランジ部42bが環状フランジ41eに当接することで決まる。この挿入状態で調整部材42は、複数の凸部42dを取付孔41dの内周面に対して摺接させながら、ダウン吸収レバー41に対する角度位置を変えることができる。調整部材42の角度位置の調整作業は、凹部42eに嵌合する器具を用いて行うことができる。調整部材42の角度位置の調整作業は、フランジ部42bにおける一対の平面部42b2や一対の凹部42b3を把持しながら行うことができる。
【0025】
図19の着脱可能な位置から調整部材42を回転させて、
図20ないし
図23のように一対の爪部42cが環状フランジ41eの裏側に位置されると、調整部材42は取付孔41dからの離脱が規制されてダウン吸収レバー41と一体化される。この一体化された状態では、一対の爪部42cとフランジ部42bが所定の圧力で環状フランジ41eを挟んでおり、ダウン吸収レバー41に対して調整部材42が不用意に回転することはない。よって、調整部材42はダウン吸収レバー41と共に移動するようになる。以上のようにして調整部材42を組み付けた状態のダウン吸収レバー41をミラーボックス14に支持させると、緩衝用ダボD1は、ミラーボックス14に形成した貫通孔14cに挿通されてミラーボックス14の内部に突出される(
図2、
図3)。貫通孔14cは、ダウン吸収レバー41の移動に伴う緩衝用ダボD1の位置変化を妨げない大きさに形成されている。
【0026】
アップ吸収レバー43は、可動ミラー15がアップ位置へ回動するときに衝撃吸収及びバウンド抑制を行う緩衝部材を構成する。アップ吸収レバー43は、ミラーボックス14の側面に突設した上下2つのガイドピン
(案内手段、第2の案内手段)14dとガイドピン
(案内手段、第2の案内手段)14eをそれぞれ挿通させるガイド孔
(案内手段、第2の案内手段)43aとをガイド孔
(案内手段、第2の案内手段)43bを有し、ガイド孔43a、43bでガイドピン14d、14eの案内を受けることによって、ミラーシートヒンジ16xの軸線と直交する平面内でダウン吸収レバー41の移動方向と直交する方向(カメラ10を水平に構えた状態における水平方向
、第2の移動軌跡)へ直進移動可能に支持されている。アップ吸収レバー43の一側部には、ばね当接部43cが形成されている。アップ吸収レバー43にはミラーボックス14の内方側に向けて突出する緩衝用ダボ(被押圧部
、第2の被押圧部)D2が設けられている。緩衝用ダボD2は、ミラーボックス14に形成した貫通孔14fに挿通されてミラーボックス14の内部に突出している(
図2、
図3)。貫通孔14fは、アップ吸収レバー43の移動に伴う緩衝用ダボD2の位置変化を妨げない大きさに形成されている。
【0027】
ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43は、共通の吸収ばね44による付勢力を受ける。吸収ばね44はトーションばねであり、ミラーボックス14の側面に形成した円柱状のばね支持突起14gを囲むコイル部44aと、コイル部44aから延出されてダウン吸収レバー41のばね掛け部41cに係合する第1腕部44bと、コイル部44aから延出されてアップ吸収レバー43のばね当接部43cに当接する第2腕部44cを有する。第2腕部44cは途中に「く」の字状に曲折された山型形状部を有し、この山型形状部がばね当接部43cに当接している。
図9ないし
図16に示す組み付け状態で吸収ばね44には所定の大きさの撓み復元力が作用しており、第1腕部44bでばね掛け部41cを押圧することで、ダウン吸収レバー41を
図9ないし
図13、
図15ないし
図17の上方に移動付勢している。この付勢方向へのダウン吸収レバー41の移動は、ガイド孔41a、41bの下端部をガイドピン14a、14bに当接させることで規制される。この付勢方向への移動端がダウン吸収レバー41の緩衝待機位置
(第1の緩衝待機位置)である。吸収ばね44はまた、撓み復元力によって第2腕部44cでばね当接部43cを押圧することで、アップ吸収レバー43を
図9ないし
図16の左方に移動付勢している。この付勢方向へのアップ吸収レバー43の移動は、ガイド孔43a、43bの一端部をガイドピン14d、14eに当接させることで規制される。この付勢方向への移動端がアップ吸収レバー43の緩衝待機位置
(第2の緩衝待機位置)である。
【0028】
ミラーシート16の先端部近傍の側部には緩衝当接部(ミラー側当接部)16cが設けられている。緩衝当接部16cは、ミラーボックス14のうち貫通孔14c、14fが形成されている側壁に接近する方向に突設されている。ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43がそれぞれの緩衝待機位置に保持される状態では、貫通孔14c、14fからミラーボックス14内に突出する緩衝用ダボD1、D2は、可動ミラー15がダウン位置とアップ位置の間を回動するときの緩衝当接部16cの移動軌跡
(第1の移動軌跡)上に位置しており、緩衝当接部16cに当接可能となっている。より詳しくは、緩衝用ダボD1は、可動ミラー15がダウン位置にあるときに、緩衝当接部16cに対してわずかに離間した近接位置
(近接離間位置、第1の近接離間位置)に保持され、緩衝用ダボD2は、可動ミラー15がアップ位置にあるときに、緩衝当接部16cに対して僅かに離間した近接位置
(近接離間位置、第2の近接離間位置)に保持される。緩衝用ダボD1、D2と緩衝当接部16cはそれぞれ略同径の正円状断面を有する円柱状突起であり、可動ミラー15がダウン位置とアップ位置の間で回動すると、互いの外周面を擦動させるようにして緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1、D2の設置位置を通過し、このときダウン吸収レバー41やアップ吸収レバー43が緩衝待機位置から吸収ばね44の付勢力に抗する方向へ押圧される。
緩衝当接部16cの押圧力を受けることにより、ダウン吸収レバー41は、緩衝用ダボD1が緩衝当接部16cの移動軌跡上から外れて位置する押し込み位置(第1の押し込み位置、図16参照)へ移動する。緩衝当接部16cの押圧力を受けることにより、アップ吸収レバー43は、緩衝用ダボD2が緩衝当接部16cの移動軌跡上から外れて位置する押し込み位置(第2の押し込み位置、図12参照)へ移動する。
【0029】
可動ミラー15のダウン位置はミラーボックス14に対するダウン位置決めダボ20の位置調整によって調整が可能であり、可動ミラー15の調整により緩衝当接部16cの位置が変化する。ダウン吸収レバー41と調整部材42の間には、緩衝当接部16cの位置変化に対応して緩衝用ダボD1の位置
(緩衝当接部16cに対する近接離間位置での間隔)を調整することが可能な位置調整機構が備えられている。
【0030】
図19ないし
図23に、可動ミラー15がダウン位置にある状態でのミラーシート16の緩衝当接部16cの位置を概念的に示している。前述のように、緩衝用ダボD1を有する調整部材42は、
図19の角度位置でダウン吸収レバー41に対して着脱可能である。なお、
図19から調整部材42を180度回転させた位置でも、調整部材42に設けた一対の爪部42cをダウン吸収レバー41の一対の切欠部41fに対して通過させることが可能であるが、緩衝用ダボD1が緩衝当接部16cの移動軌跡に接近しすぎるため、可動ミラー15がダウン位置近辺に位置する場合は、調整部材42の組み付け角度位置としては適さない。そして、ダウン位置決めダボ20を動かして可動ミラー15のダウン位置の調整作業を行う場合、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cから離間させる
図20の角度位置に調整部材42を回転させる。調整部材42のこの角度位置では、可動ミラー15のダウン位置を若干量変化させても緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1に当接せず、ストッパ部16aとダウン位置決めダボ20による可動ミラー15の位置決めが妨げられない。
【0031】
可動ミラー15のダウン位置が定まった状態で調整部材42を回転させて、緩衝当接部16cに対する緩衝用ダボD1の位置を調整する。
図21は、可動ミラー15がダウン位置にあるときの緩衝当接部16cに対して緩衝用ダボD1の位置を最適化させた状態の調整部材42の位置を示している。緩衝用ダボD1は、緩衝当接部16cに対してわずかに左方に離間しており、かつ緩衝当接部16cよりもわずかに下方にずらして位置されている。この位置が最適である理由については後述する。
図21の位置から
図22のように時計方向に調整部材42を回転させると、緩衝用ダボD1が緩衝当接部16cに接近する方向に変位し、
図23のように反時計方向に調整部材42を回転させると、緩衝用ダボD1が緩衝当接部16cから離間する方向に変位する。緩衝当接部16cの位置が
図19ないし
図23の図示位置から変化する場合は、
図22や
図23のように調整部材42の角度調整を行って、緩衝用ダボD1の位置を最適化させる。
【0032】
図10以下を参照してミラー衝撃吸収機構40の動作を説明する。なお、以下の動作説明では、ダウン位置決めダボ20による可動ミラー15のダウン位置の調整と、調整部材42による緩衝用ダボD1の位置調整はいずれも完了しているものとする。また、ダウン吸収レバー41と調整部材42の結合体については、ダウン吸収レバー41のみを代表して説明する。
【0033】
図10は可動ミラー15がダウン位置にある状態を示している。このとき、ミラー駆動機構30を構成するミラー駆動レバー34によってミラーシートボス16bが下方に押圧され、ミラーシート16のストッパ部16aがダウン位置決めダボ20に当接することで可動ミラー15がダウン位置に保持されている(
図1)。ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43はそれぞれ、吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置に保持されている。ダウン吸収レバー41に設けた緩衝用ダボD1は、ミラーシート16の緩衝当接部16cからわずかに離間して保持されており、ダウン位置決めダボ20によるミラーシート16の位置決めを妨げない。
【0034】
図10、
図15、
図16、
図17、
図19及び
図20に、可動ミラー15の回動方向に沿うミラーシート16の緩衝当接部16cの外径側縁部(緩衝当接部16cの外周面のうち、ミラーシートヒンジ16xから最も近い側の領域)の移動軌跡
(第1の移動軌跡)をF1で示している。なお、
図10、
図17、
図19及び
図20は可動ミラー15が一方の回動端であるダウン位置に達した状態での緩衝当接部16cの位置を示しており、緩衝当接部16cがこの図示位置よりもダウン位置方向(図中の斜め右下方向)へ進むことはないため、図中の移動軌跡F1は緩衝当接部16cが実際には辿ることのない領域を含んでいる。
【0035】
図10や
図17に示すように、ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置に保持されている状態では、緩衝用ダボD1の一部が移動軌跡F1の内側(ミラーシートヒンジ16xに近い側)に進出して位置している。そのため、ミラー駆動機構30のミラー駆動レバー34により可動ミラー15がダウン位置からアップ位置へ向けて回動されると、その初期段階で緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1に接触する。すると、緩衝当接部16cから緩衝用ダボD1に対して、互いの外周面を擦動させながらダウン吸収レバー41を押し下げさせる方向の分力が作用し、ダウン吸収レバー41が吸収ばね44の付勢力に抗して
図10の緩衝待機位置から
図16の押し込み位置に向けてわずかに下方
へ移動される。このときにダウン吸収レバー41から可動ミラー15に対して作用する負荷は、ミラー駆動機構30による可動ミラー15のアップ位置への駆動を妨げることのない大きさに設定されている。また、それぞれが円柱状をなす緩衝当接部16cと緩衝用ダボD1を擦動させる関係であるため、引っ掛かりが生じるおそれもない。緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1を乗り越える位置(
図15参照)よりも可動ミラー15がアップ位置方向へ回動すると、緩衝当接部16cによる緩衝用ダボD1の押圧状態が解除され、ダウン吸収レバー41は吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置へ戻る。
【0036】
なお、
図10の状態から可動ミラー15がアップ位置へ向けて回動するときに、緩衝当接部16cから緩衝用ダボD1に対して、ダウン吸収レバー41を上方へ押し上げさせる方向の分力が作用すると、緩衝待機位置よりも上方への移動が規制されたダウン吸収レバー41がストッパのように機能して可動ミラー15の回動が妨げられるおそれがあるので、緩衝当接部16cに対する緩衝用ダボD1の位置は、ミラーアップ回動の妨げにならないように設定する。具体的には、緩衝当接部16cと緩衝用ダボD1は互いに略同径の円柱形状であるから、緩衝用ダボD1を
図10の上下方向に二分割したうちの上側半分領域に対して緩衝当接部16cを当接させることで、ダウン吸収レバー41に対して押し下げ方向の力を与えることができる。前述した緩衝用ダボD1の位置調整は、この点に留意して行われる。
【0037】
可動ミラー15がアップ位置に近付くと、
図11のようにミラーシート16の緩衝当接部16cがアップ吸収レバー43の緩衝用ダボD2に対して当接する。より詳しくは、可動ミラー15の回動方向に沿うミラーシート16の緩衝当接部16cの内径側縁部(緩衝当接部16cの外周面のうち、ミラーシートヒンジ16xに最も近い側の領域)の移動軌跡
(第1の移動軌跡)を
図11ないし
図14にF2で示している。緩衝用ダボD2の一部がこの移動軌跡F2の外側(ミラーシートヒンジ16xから遠い側)に進出して位置しているため、アップ位置に向けて回動している可動ミラー15の緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2に接触する。なお、
図13及び
図14は可動ミラー15が回動端であるアップ位置に達した状態での緩衝当接部16cの位置を示しており、緩衝当接部16cがこの図示位置よりもアップ位置方向(図中の上方)へ進むことはないため、図中の移動軌跡F2は緩衝当接部16cが実際には辿ることのない領域を含んでいる。
【0038】
図11の時点では可動ミラー15はアップ位置に達しておらず、可動ミラー15がさらにアップ位置へ向けて回動すると、
図12のように、ミラーシート16の緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2の外周面上を擦動しながら、吸収ばね44の付勢力に抗してアップ吸収レバー43を緩衝待機位置から右方
の押し込み位置に押し込む。アップ吸収レバー43が緩衝待機位置から右方へ押圧されている間、可動ミラー15の回動に対して吸収ばね44の負荷が作用し、可動ミラー15は、アップ吸収レバー43及び吸収ばね44によって衝撃吸収されながら回動する。緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2を乗り越える位置まで可動ミラー15がアップ位置方向へ回動すると、緩衝当接部16cによる緩衝用ダボD2の押圧状態が解除され、アップ吸収レバー43は吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置へ戻る。
【0039】
なお、ミラーシート16の緩衝当接部16cの中心軸の移動軌跡上にアップ吸収レバー43の緩衝用ダボD2の中心軸が位置する位置関係(
図11よりも緩衝用ダボD2を左方に移動させた位置関係)であると、緩衝当接部16cと緩衝用ダボD2を当接させたときにアップ吸収レバー43が移動せずにストッパのように機能してしまい、可動ミラー15の回動が妨げられるおそれがある。そのため、緩衝当接部16cと緩衝用ダボD2は、互いに当接したときにアップ吸収レバー43を確実に移動させる分力を生じさせるように、可動ミラー15の回動半径方向にオフセットさせた位置関係で配置される。本実施形態では、アップ吸収レバー43をミラーシートヒンジ16xから離れる方向(
図9ないし
図16の左方)に移動付勢して緩衝待機位置に保持した上で、緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2を押圧したときには、アップ吸収レバー43をミラーシートヒンジ16xに接近させる方向(
図10ないし
図16の右方)に移動させる分力を与えるように、緩衝用ダボD2を緩衝当接部16cよりもミラーシートヒンジ16xに近い側にオフセットさせて配置している。
【0040】
これとは逆に、緩衝用ダボD2を緩衝当接部16cよりもミラーシートヒンジ16xから遠い側にオフセットさせて配置し、緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2を押圧したとき、アップ吸収レバー43をミラーシートヒンジ16xから遠ざかる方向(
図9ないし
図16の左方)に移動させる分力を与えるように構成することも可能である。但しこの場合は、アップ吸収レバー43の付勢方向が逆になり、ダウン吸収レバー41と共通の吸収ばね44で付勢することができなくなるため、アップ吸収レバー43に対する付勢手段を別途設けるなどの対応が必要になる。
【0041】
可動ミラー15が
図13及び
図14のアップ位置まで回動されると、ミラーシート16の上面が上方ストッパ21に当接して、それ以上の上方への回動が規制される(
図1)。このミラーアップ状態では、緩衝当接部16cは緩衝用ダボD2から離間しており、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43のいずれも吸収ばね44の付勢力で緩衝待機位置に保持されている。ここで、アップ位置に達した可動ミラー15がダウン位置方向へ反転するような挙動(バウンド
、反転回動)が生じた場合、
図14に二点鎖線で示すように、緩衝待機位置に戻っているアップ吸収レバー43の緩衝用ダボD2に対して緩衝当接部16cが当接する。バウンドした可動ミラー15がさらにダウン位置方向へ回動するためには、アップ吸収レバー43を吸収ばね44の付勢力に抗して押圧移動させる必要があるが、ミラー駆動機構30の駆動力によるものと異なり、アップ位置へ達した際の慣性で生じる可動ミラー15のバウンドでは、付勢されたアップ吸収レバー43を移動させるほどの力が加わらないため、実質的にアップ吸収レバー43がミラーバウンドを抑えるストッパとして機能し、可動ミラー15のバウンド量は
図14に示す狭い範囲に制限される。
【0042】
以上のように、可動ミラー15がダウン位置からアップ位置に回動するとき、アップ吸収レバー43の緩衝用ダボD2にミラーシート16の緩衝当接部16cが当接し、アップ吸収レバー43を緩衝待機位置から
押し込み位置へ押圧移動させながら、可動ミラー15に対して吸収ばね44の負荷が作用して衝撃が吸収される。そして、可動ミラー15がアップ位置まで達してからのミラーバウンドが、緩衝待機位置に戻ったアップ吸収レバー43によって抑制される。従って、単独の緩衝部材であるアップ吸収レバー43によって、可動ミラー15をアップ位置に迅速かつ確実に安定させることができる。
【0043】
以上のミラーアップ動作とは逆に、ミラー駆動機構30のミラー駆動レバー34により可動ミラー15が
図13のアップ位置からダウン位置方向に回動されると、その初期段階でアップ吸収レバー43の緩衝用ダボD2に対して緩衝当接部16cが当接する(
図14の二点鎖線の状態)。前述したアップ位置到達後のミラーバウンド発生時と異なり、可動ミラー15にはミラー駆動機構30によるダウン位置方向への駆動力が作用しているため、可動ミラー15は
図14の二点鎖線の位置で止まることなくダウン位置方向への回動を継続する。すると、緩衝当接部16cから緩衝用ダボD2に対して、互いの外周面を擦動させながらアップ吸収レバー43を
図14中の右方に押圧させる分力が作用し、アップ吸収レバー43が吸収ばね44の付勢力に抗して
図13及び
図14の緩衝待機位置から
図12の押し込み位置へ向けて右方に移動される。緩衝当接部16cが緩衝用ダボD2を乗り越える位置(
図12参照)よりも可動ミラー15がダウン位置方向へ回動すると、緩衝当接部16cによる緩衝用ダボD2の押圧状態が解除され、アップ吸収レバー43は吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置へ戻る。
【0044】
可動ミラー15がダウン位置に近付くと、
図15のようにミラーシート16の緩衝当接部16cがダウン吸収レバー41の緩衝用ダボD1に対して当接する。前述のように、ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置にあるときに緩衝用ダボD1の一部は、可動ミラー15のダウン位置付近での緩衝当接部16cの外径側縁部の移動軌跡F1の内側(ミラーシートヒンジ16xに近い側)に進出して位置しているため、ダウン位置に向けて回動している可動ミラー15の緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1に接触する。
図15の時点では可動ミラー15はダウン位置に達しておらず、可動ミラー15がさらにダウン位置へ向けて回動すると、
図16のように、ミラーシート16の緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1の外周面上を擦動しながら、吸収ばね44の付勢力に抗してダウン吸収レバー41を緩衝待機位置から下方
の押し込み位置に押し込む。ダウン吸収レバー41が緩衝待機位置から下方へ押圧されている間、可動ミラー15の回動に対して吸収ばね44の負荷が作用し、可動ミラー15は、ダウン吸収レバー41及び吸収ばね44によって衝撃吸収されながら回動する。緩衝当接部16cが緩衝用ダボD1を乗り越える位置まで可動ミラー15がダウン位置方向へ回動すると、緩衝当接部16cによる緩衝用ダボD1の押圧状態が解除され、ダウン吸収レバー41は吸収ばね44の付勢力によって緩衝待機位置へ戻る。
【0045】
ミラーアップ時のアップ吸収レバー43と可動ミラー15の関係と同様に、ミラーシート16の緩衝当接部16cの中心軸の移動軌跡上にダウン吸収レバー41の緩衝用ダボD1の中心軸が位置する位置関係(
図15よりも緩衝用ダボD1を左斜め下方に移動させた位置関係)であると、緩衝当接部16cと緩衝用ダボD1を当接させたときにダウン吸収レバー41が移動せずにストッパのように機能してしまい、可動ミラー15の回動が妨げられるおそれがある。そのため、緩衝当接部16cと緩衝用ダボD1は、互いに当接したときにダウン吸収レバー41を確実に移動させる分力を生じさせるように、可動ミラー15の回動半径方向にオフセットさせた位置関係で配置される。本実施形態では、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cよりもミラーシートヒンジ16xから遠い側にオフセットさせて配置し、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cで押圧したときに緩衝当接部16cの移動軌跡F1に対して斜めに交差する方向(下方)へダウン吸収レバー41を移動させている。
【0046】
ダウン吸収レバー41の移動方向はこれに限らず、例えばアップ吸収レバー43のように可動ミラー15の回動半径方向へ可動にさせることも可能であり、その場合は、ミラーシートヒンジ16xに接近する方向に移動付勢する態様と、ミラーシートヒンジ16xから離れる方向に移動付勢する態様のいずれにすることも可能である。前者の態様では、本実施形態のダウン吸収レバー41のように、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cよりもミラーシートヒンジ16xから遠い側にオフセットさせて配置し、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cで押圧するときには、ダウン吸収レバー41がミラーシートヒンジ16xから離れる方向に移動される。後者の態様では、本実施形態のアップ吸収レバー43のように、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cよりもミラーシートヒンジ16xに近い側にオフセットさせて配置し、緩衝用ダボD1を緩衝当接部16cで押圧するときには、ダウン吸収レバー41がミラーシートヒンジ16xに接近する方向に移動される。但し、吸収ばね44のような共通のトーションばねでダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43の両方を付勢するには、本実施形態のようにダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43を互いに直交する方向に移動する関係で配することが好ましい。
【0047】
可動ミラー15が
図10及び
図17のダウン位置まで回動されると、ストッパ部16aがダウン位置決めダボ20に当接して、それ以上の下方への回動が規制される(
図1)。このミラーダウン状態では、緩衝当接部16cは緩衝用ダボD1から離間しており、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43のいずれも吸収ばね44の付勢力で緩衝待機位置に保持されている。ここで、ダウン位置に達した可動ミラー15がアップ位置方向へ反転するような挙動(バウンド
、反転回動)が生じた場合、
図17に二点鎖線で示すように、緩衝待機位置に戻っているダウン吸収レバー41の緩衝用ダボD1に対して緩衝当接部16cが当接する。バウンドした可動ミラー15がさらにアップ位置方向へ回動するためには、ダウン吸収レバー41を吸収ばね44の付勢力に抗して押圧移動させる必要があるが、ミラー駆動機構30の駆動力によるものと異なり、ダウン位置へ達した際の慣性で生じる可動ミラー15のバウンドでは、付勢されたダウン吸収レバー41を移動させるほどの力が加わらないため、実質的にダウン吸収レバー41がミラーバウンドを抑えるストッパとして機能し、可動ミラー15のバウンド量は
図17に示す狭い範囲に制限される。
【0048】
以上のように、可動ミラー15がアップ位置からダウン位置に回動するとき、ダウン吸収レバー41の緩衝用ダボD1にミラーシート16の緩衝当接部16cが当接し、ダウン吸収レバー41を緩衝待機位置から
押し込み位置へ押圧移動させながら、可動ミラー15に対して吸収ばね44の負荷が作用して衝撃が吸収される。そして、可動ミラー15がダウン位置まで達してからのミラーバウンドが、緩衝待機位置に戻ったダウン吸収レバー41によって抑制される。従って、単独の緩衝部材であるダウン吸収レバー41によって、可動ミラー15をダウン位置に迅速かつ確実に安定させることができる。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態のカメラ10のミラー衝撃吸収機構40では、ミラーアップ時に可動ミラー15の移動エネルギーを吸収して押圧移動されるアップ吸収レバー43が、可動ミラー15がアップ位置に到達したときに、可動ミラー15の位置精度を損なわない範囲で緩衝当接部16cに緩衝用ダボD2を接近させる緩衝待機位置に復帰し、可動ミラー15のバウンド量を制限する。同様に、ミラーダウン時に可動ミラー15の移動エネルギーを吸収して押圧移動されるダウン吸収レバー41が、可動ミラー15がダウン位置に到達したときに、可動ミラー15の位置精度を損なわない範囲で緩衝当接部16cに緩衝用ダボD1を接近させる緩衝待機位置に復帰し、可動ミラー15のバウンド量を制限する。つまり、可動ミラー15がアップ位置やダウン位置といった回動端に達したときに可動ミラー15の移動規制に関与しない位置へ逃がされてしまうタイプの緩衝部材と異なり、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43はいずれも、ミラー回動時のダンパーとしての機能に加えて、回動端到達後のバウンド抑制用のストッパとしての機能を兼ね備えている。よって、部品点数の少ない簡単な構成でありながら、可動ミラー15をダウン位置やアップ位置で素早く確実に停止させ、連写性能の向上に寄与することができる。
【0050】
本実施形態ではさらに、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43の両方を共通の吸収ばね44で移動付勢する構造としているため、付勢部材の部品点数も最小限に抑えられている。
【0051】
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態のミラー衝撃吸収機構40では、ダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43が本発明の特徴を備える緩衝部材として構成されているが、ミラーアップ時に機能する緩衝部材とミラーダウン時に機能する緩衝部材のいずれか一方にのみ本発明を適用することも可能である。
【0052】
また、図示実施形態ではダウン吸収レバー41側に調整部材42を介した緩衝用ダボD1の位置調整機構を備えているが、アップ吸収レバー43側に同様に緩衝用ダボD2の位置調整機構を備えることも可能である。
【0053】
また、部品点数削減の観点からは、図示実施形態のようにダウン吸収レバー41とアップ吸収レバー43の両方を共通の吸収ばね44で付勢することが好ましいが、これらを別々の付勢部材によって付勢することも可能である。例えば、ダウン吸収レバー41とミラーボックス14の間や、アップ吸収レバー43とミラーボックス14の間に引張ばねを張設した構成にすることもできる。
【0054】
また、図示実施形態では、ダウン吸収レバー41側の緩衝用ダボD1、アップ吸収レバー43側の緩衝用ダボD2、可動ミラー15側の緩衝当接部16cをいずれも正円状断面の突起として形成している。この形状は、製造の容易さや、当接させた際の引っ掛かりの生じにくさ、製品ごとの微妙な部品誤差への対応性といった点で優れているが、本発明における可動ミラー側と緩衝部材側の当接箇所の形状はこれに限定されない。例えば、図示実施形態における緩衝当接部16cに対する緩衝用ダボD1や緩衝用ダボD2の擦動時の接触領域は外周面の一部に限られているので、それ以外の領域は非円形の断面形状であってもよい。さらに、緩衝当接部16c、緩衝用ダボD1、緩衝用ダボD2のそれぞれの当接面を、所要の衝撃吸収性能とバウンド抑制効果が得られるように最適化された非円形のカム面として設定することも可能である。