特許第5879949号(P5879949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5879949
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20160223BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20160223BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20160223BHJP
   B60K 28/06 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   G08G1/16 F
   G08G1/00 D
   G01C21/26 A
   B60K28/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-252324(P2011-252324)
(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公開番号】特開2013-109447(P2013-109447A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230111796
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 忠敬
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】本田 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政義
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−312653(JP,A)
【文献】 特開平07−055484(JP,A)
【文献】 特開2011−204120(JP,A)
【文献】 特開2003−148967(JP,A)
【文献】 特開2007−265377(JP,A)
【文献】 特開2009−198216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G09B 23/00 − 29/14
B60R 21/00 − 21/13
B60K 25/00 − 28/16
A61B 5/06 − 5/11
A61B 5/117 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の身体情報を継続して検出する運転者監視部と、
前記運転者監視部で検出した前記身体情報を基に、前記運転者の体調を継続して診断する体調診断部と、
前記運転者の平常時の前記身体情報を記憶し、前記運転者監視部で検出した前記身体情報及び前記体調診断部で診断した体調診断結果を都度記憶する情報記憶部と、
道路情報を保管する地図情報部と、
GPS信号及び前記地図情報部で保管された前記道路情報を基に、自車両の現在位置及び当該位置から休憩可能場所までの距離を継続して算出する現在位置算出部と、
前記運転者の平常時の前記身体情報を基に、前記運転者に休憩を推奨するしきい値である休憩推奨案内しきい値を設定し、前記現在位置算出部で算出した情報を基に、休憩推奨案内しきい値を変化させる設定部と、
前記体調診断部で診断した前記体調診断結果及び前記設定部で設定した前記休憩推奨案内しきい値を基に、前記体調診断結果が前記休憩推奨案内しきい値以下か否かを判断する判断部と、
前記判断部において前記体調診断結果が前記休憩推奨案内しきい値以下と判断された場合、運転者に休憩を促すよう案内を行う情報提供部とを備え
前記設定部は、高速道路走行中において、前記自車両前方の中で最も近いパーキングエリアまたはサービスエリアと前記自車両との距離が規定値以下の場合、前記休憩推奨案内しきい値を上げる
ことを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体調管理により運転支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転中の運転者の身体情報を検出し、体調不良との診断が出れば、警報等により運転者に休憩を促すという運転支援装置は数多く知られている。
【0003】
例えば、運転者の皮膚電位及び操舵頻度を検出し、体温、脈拍及び運転操作から運転者の体調を判断する装置(特許文献1参照)や、道路状況による運転者の身体情報の変化を考慮した上で、CCDカメラや生体センサからの様々な情報を基に体調を判断する装置(特許文献2参照)、予め設定した休憩場所に接近、運転者の異常を検出または連続運転時間が所定時間以上となった際には休憩を促し、予定休憩場所以外で休憩指示を出す際は、休憩場所をサーチし、その場所で休憩するよう指示し、さらに以降の予定休憩場所を変更する装置(特許文献3参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐96767号公報
【特許文献2】特開2002‐104013号公報
【特許文献3】特開平9‐39604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような装置では、未然に運転者の体調悪化を防ぐことができず、また、連続運転時間が所定時間になった時点で近辺に休憩場所がない場合が想定される。
【0006】
そこで本発明は、上述の問題点を解消し、未然に運転者の体調悪化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る運転支援装置は、
運転者の身体情報を継続して検出する運転者監視部と、
前記運転者監視部で検出した前記身体情報を基に、前記運転者の体調を継続して診断する体調診断部と、
前記運転者の平常時の前記身体情報を記憶し、前記運転者監視部で検出した前記身体情報及び前記体調診断部で診断した体調診断結果を都度記憶する情報記憶部と、
道路情報を保管する地図情報部と、
GPS信号及び前記地図情報部で保管された前記道路情報を基に、自車両の現在位置及び当該位置から休憩可能場所までの距離を継続して算出する現在位置算出部と、
前記運転者の平常時の前記身体情報を基に、前記運転者に休憩を推奨するしきい値である休憩推奨案内しきい値を設定し、前記現在位置算出部で算出した情報を基に、休憩推奨案内しきい値を変化させる設定部と、
前記体調診断部で診断した前記体調診断結果及び前記設定部で設定した前記休憩推奨案内しきい値を基に、前記体調診断結果が前記休憩推奨案内しきい値以下か否かを判断する判断部と、
前記判断部において前記体調診断結果が前記休憩推奨案内しきい値以下と判断された場合、運転者に休憩を促すよう案内を行う情報提供部とを備え
前記設定部は、高速道路走行中において、前記自車両前方の中で最も近いパーキングエリアまたはサービスエリアと前記自車両との距離が規定値以下の場合、前記休憩推奨案内しきい値を上げる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明に係る運転支援装置によれば、身体情報を基に体調を診断した結果が、休憩推奨案内しきい値を下回っていると判断した場合、運転者に休憩を促すよう案内を行うことで、安全に運転できる体調を維持することができる。また、高速道路走行中において、自車両前方の中で最も近いパーキングエリアまたはサービスエリアと自車両との距離が規定値以下の場合、休憩推奨案内しきい値を上げることで、休憩を促す案内が出やすくなり、運転者の体調悪化を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る運転支援装置の構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る運転支援装置の自車両の位置と休憩推奨案内しきい値の変化との関係を示したグラフである。(a)は高速道路走行中について、(b)は一般道路走行中についてのものである。
図3】本発明の実施例1に係る運転支援装置の、高速道路走行中における体調診断結果B、休憩推奨案内しきい値A及びXの関係を時系列で示したグラフである。
図4】本発明の実施例1に係る運転支援装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る運転支援装置を実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1に係る装置について図1を用いて説明する。本装置は、運転者監視部1、体調診断部2、情報記憶部3、地図情報部4、現在位置算出部5、設定部6、判断部7及び情報提供部8を備える。また、体調診断部2、情報記憶部3、地図情報部4、現在位置算出部5、設定部6及び判断部7は、ECU(Electronic Controlled Unit:電子制御装置)9内に設けられている。
【0016】
上述の運転者監視部1は、例えば特開平9‐123790号公報、特許文献1及び特許文献2のように、CCDカメラ、操舵角センサ及び生体センサにより、運転者の目の開閉、運転操作、脈拍及び体温を測定することで、運転者の身体情報を継続して検出する。検出した身体情報は体調診断部2及び情報記憶部3へ出力する。
【0017】
上述の体調診断部2は、運転者監視部1で検出した身体情報を基に、運転者の体調を継続して診断し、その体調診断結果Bを情報記憶部3及び判断部7へ出力する。体調診断結果Bは体調を数値化したものであり、体調が良好である程高い数値に、体調が悪い程低い数値になる。
【0018】
上述の情報記憶部3は、事前に運転者監視部1で検出または運転者自身により入力した、運転者の平常時の身体情報を記憶しておき、当該情報を設定部6へ出力する。また、運転者監視部1で検出した身体情報及び体調診断部2で診断した体調診断結果を都度記憶し、判断部7へ出力する。
【0019】
上述の地図情報部4は、周辺道路情報を保管し、現在位置算出部5へ出力する。
【0020】
上述の現在位置算出部5は、GPS信号及び地図情報部4で保管された道路情報を基に、自車両の現在位置及び当該位置から休憩可能場所までの距離を継続して算出し、設定部6へ出力する。
【0021】
上述の設定部6は、運転者の平常時の身体情報を基に、運転者に休憩を推奨するしきい値である休憩推奨案内しきい値A及びXを設定し、現在位置算出部5で算出した情報を基に、休憩推奨案内しきい値をAまたはXに変化させ、判断部7へ出力する。
【0022】
休憩推奨案内しきい値とは、体調診断部2において診断された運転者の体調診断結果Bが当該しきい値以下になったとき、運転者に対し休憩を推奨するために設定されるものである。休憩推奨案内しきい値Aが体調悪化を未然に防ぐための最も適切な値であり、休憩推奨案内しきい値Xは休憩推奨案内しきい値Aよりもさらに高い値に設定される。このように、状況に応じて休憩推奨案内しきい値AとXを切り替えることで、体調悪化時に近辺に休憩可能場所が無いという状況を回避することが可能となる。
【0023】
高速道路走行中においては、自車両と次回のパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAとの距離がYkm以下の間の休憩推奨案内しきい値はX、それ以外の場合の休憩推奨案内しきい値はAとなる。ちなみに、上述の「次回の」とは「自車両前方の中で最も近い」という意味である。
【0024】
図2(a)は、高速道路走行中における自車両の位置と休憩推奨案内しきい値の変化との関係を表している。上段では、自車両と次回のパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAとの距離がYkm以上であるため、休憩推奨案内しきい値はAとなる。中段では、自車両と次回のパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAとの距離がYkm未満であるため、休憩推奨案内しきい値はXとなる。下段では、自車両と次回のパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAとの距離がYkm以上であるため、休憩推奨案内しきい値はAとなる。
【0025】
さらに、図3は高速道路走行中における体調診断結果B、休憩推奨案内しきい値A及びXの関係が時系列で示されている。これらを見ればわかるように、自車両がパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAに接近すると運転者に対し休憩を推奨しやすくなっている。
【0026】
一般道路走行中においては、自車両と次々回の休憩可能場所との距離がZkm以上の間における休憩推奨案内しきい値はX、それ以外の場合の休憩推奨案内しきい値はAとなる。ちなみに、上述の「次々回の」とは「自車両前方の中で2番目に近い」という意味である。
【0027】
図2(b)は、一般道路走行中における自車両の位置と休憩推奨案内しきい値の変化との関係を表している。グラフ内のP1,P2,P3は休憩可能場所である。上段では、自車両と次々回の休憩可能場所であるP2との距離がZkm以上であるため、休憩推奨案内しきい値はXとなる。これにより、次々回の休憩可能場所P2が自車両から離れた位置にある場合、運転者に対し次回の休憩可能場所P1での休憩を推奨しやすくなる。下段では、P2が次回の休憩可能場所、P3が次々回の休憩可能場所となるため、休憩推奨案内しきい値はP3の位置によって変化することになる。
【0028】
上述の判断部7は、図4のように、体調診断部2で診断した体調診断結果B及び設定部6で設定した休憩推奨案内しきい値A及びXを基に、体調診断結果Bが休憩推奨案内しきい値AまたはX以下か否かを判断し、当該判断結果は情報提供部8へ出力する。
【0029】
上述の情報提供部8は、判断部7において体調診断結果Bが休憩推奨案内しきい値AまたはX以下と判断された場合、運転者に休憩を促すよう案内を行う。
【0030】
上述のECU9は、車両の各制御を行う機能全般が設けられているが、本発明に関する機能としては、体調診断部2、情報記憶部3、地図情報部4、現在位置算出部5、設定部6及び判断部7を設ける。
【0031】
以下、本装置の動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
ステップS1では、ドライバモニタをONとしたか否かを判断する。ONである場合はステップS2へ移行し、OFFである場合には本装置は起動しない。
【0033】
ステップS2では、地図情報部4で保管された地図情報及び現在位置算出部5で得られた現在位置により、高速道路走行中か否かを判断する。高速道路走行中であればステップS3へ、一般道路走行中であればステップS4へ移行する。
【0034】
ステップS3では、地図情報部4で保管された地図情報及び現在位置算出部5で得られた現在位置により、次回のパーキングエリアPAまたはサービスエリアSAまでの距離がYkm以下か否かを判断する。Ykm以下ならステップS5へ移行し、Ykmよりも長ければステップS6へ移行する。
【0035】
ステップS4では、地図情報部4で保管された地図情報及び現在位置算出部5で得られた現在位置により、次々回の休憩可能場所までの距離がZkm以上か否かを判断する。Zkm以上ならステップS5へ、Zkm未満ならステップS6へ移行する。
【0036】
ステップS5では、設定部6において、休憩推奨案内しきい値をAからXへ変更する。
【0037】
ステップS6では、運転者監視部1により運転者の身体情報を検出し、当該身体情報に基づき、体調診断部2により体調を診断する。
【0038】
ステップS7では、情報記憶部3により、運転者の身体情報及び体調診断結果を記憶及び更新する。
【0039】
ステップS8では、判断部7により、体調診断結果が休憩推奨案内しきい値以下か否か判断する。しきい値以下であればステップS9へ、しきい値よりも大きければステップS1へ移行する。
【0040】
ステップS9では、情報提供部8により、警報を発して休憩を推奨する。
【0041】
ステップS10では、現在位置算出部5により、パーキングエリアPA、サービスエリアSAまたは休憩可能場所を通過したか否かを判断する。通過した場合はステップS11へ、通過していない場合はステップS1へ移行する。
【0042】
ステップS11では、設定部6において、休憩推奨案内しきい値をXからAに復帰する。
【0043】
このように本装置では、休憩推奨案内しきい値を設定し、高速道路走行中においては、自車両と次回のパーキングエリアまたはサービスエリアとの距離が規定値以下の場合は休憩推奨案内しきい値を上げ、一般道路走行中においては、自車両と次々回の休憩可能場所との距離が規定値以上の場合は休憩推奨案内しきい値を上げ、運転者の体調診断結果が休憩推奨案内しきい値以下になったとき、運転者に対し休憩を推奨することで、運転者の体調悪化を未然に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は体調管理により運転支援を行う運転支援装置として好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 運転者監視部
2 体調診断部
3 情報記憶部
4 地図情報部
5 現在位置算出部
6 設定部
7 判断部
8 情報提供部
9 ECU
図1
図2
図3
図4