(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化粧パネル及び吸い込みグリルは、室内機の下面の構成要素であり、人目に触れやすい。そのため、当該下面に係る意匠は、人によっては商品を選択する上での重要な要素となる場合がある。しかしながら、特許文献1の室内機では、下方から室内機を見上げた際に、吸い込み口からケーシング内部が見えてしまい、意匠性が損なわれてしまう。
【0004】
これに対し、吸い込み口を別のパネルで塞ぎつつ、このパネルに環状型の吸込開口部を設けることで、ケーシング内部を見えないようにする手法が考えられる。しかし、環状の吸込開口部に囲まれる中央部材の側面が鉛直方向に沿って伸びていると、吸込開口部からケーシング内部に吸い込まれる空気はスムーズには流れにくくなり、中央部材の上面にて空気の渦ができてしまう。
【0005】
本発明の課題は、空気の渦の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る天井埋込型の室内機は、ケーシングと、パネルと、ファンとを備えている。ケーシングには、空気を吸い込むための開口が下面に形成されている。パネルは、開口付近に位置しており、中央部材と、吸込開口部とを有する。中央部材は、鉛直方向から見た場合に、開口の略中央に位置する。吸込開口部は、中央部材を囲む環状の開口である。ファンは、ケーシング内部に位置している。ファンは、吸込開口部を介してファンへと向かう空気流を生成するものであって、かつパネルよりも空気流の下流側に位置している。そして、中央部材には、補助開口が形成されている。
【0007】
この室内機の中央部材には、補助開口が形成されている。そのため、この補助開口によって、空気流からの空気の剥離現象を軽減させるような空気流が別途生成される。これにより、吸込開口部を介してファンへと向かう空気流は、補助開口により別途生成される空気流によって上方に引っ張られる状態となり、吸込開口部を介してファンへと向かう空気流から空気が剥離してしまうのが抑制される。従って、空気の渦の発生を抑えることができ、通風抵抗及び空気の渦による音の発生を抑えることができる。
【0008】
しかも、ここでは、吸込開口部の幅は、補助開口の幅よりも大きい。
【0009】
これにより、吸込開口部から吸い込まれる空気の量は、補助開口から吸い込まれる空気よりも多くなる。更に、補助開口は、吸込開口部よりも中央側に位置しているため、一般的には吸込開口部からよりも補助開口からの方がケーシング内部が見えやすいが、本発明においては補助開口の幅の方が吸込開口部の幅よりも小さいため、補助開口からは、ケーシング内部が見えにくくなる。
【0010】
本発明の第2観点に係る天井埋込型の室内機は、第1観点に係る室内機において、補助開口は、パネルを鉛直方向から見た場合において、十字状に形成されている。
【0011】
これにより、十字形状の補助開口からケーシング内へと空気が取り込まれることとなる。
【0012】
本発明の第3観点に係る天井埋込型の室内機は、第1観点または第2観点に係る室内機において、空気流は、空気が吸込開口部からファンへと向かうにつれて中央部材の中央側に寄るような流れである。
【0013】
これにより、吸込開口部からケーシング内へと吸い込まれる空気は、鉛直方向に対して中央寄りに流れ、確実にファンに向かうことができる。
【0014】
本発明の第4観点に係る天井埋込型の室内機は、第3観点に係る室内機において、中央部材は、その下面である基準面が略水平である。基準面の周縁から上方に延びる側面は、基準面に対し第1所定角度傾斜している。中央部材の基準面から上方に延びることで補助開口を形成している形成面は、基準面に対し第2所定角度傾斜している。そして、第1所定角度は、第2所定角度よりも小さい。
【0015】
中央部材よりも外方となる吸込開口から吸い込まれる空気は、中央部材の補助開口から吸い込まれる空気よりも、ファンの吸い込み口との位置の関係上渦が生じやすい。しかし、この室内機では、中央部材の側面の基準面に対する傾斜角度は、補助開口の形成面の基準面に対する傾斜角度よりも急であるため、中央部材の側面付近において発生する渦は、生じにくくなる。また、環状の吸込開口部からケーシング内部へと吸い込まれる空気は、傾斜面となっている中央部材の側面に沿ってケーシング内部に導かれるようになる。従って、中央部材の側面は、空気流の剥離を抑えるためのガイドとしての役割を担っている。
【0016】
本発明の第
5観点に係る天井埋込型の室内機は、
第1観点から第4観点に係る室内機において、パネルの上面側における吸込開口部の幅は、パネルの下面側における吸込開口部の幅よりも大きい。
【0017】
これにより、吸込開口部を介してパネルの下面側から上面側へと流れてケーシング内部に向かう空気の圧力は、吸込開口部の幅がパネルの上面側と下面側とで同じである場合に比して急激には変化しにくくなるため、空気の渦の発生及び騒音防止を効果的に行うことができる。
【0018】
本発明の第
6観点に係る天井埋込型の室内機は、
第1観点から第5観点に係る室内機において、中央部材の上面は、上方に突出して湾曲している。
【0019】
これにより、環状の吸込開口部からケーシング内部に導入された空気は、中央部材の側面及び上面に沿ってよりスムーズにファン側へと流れるようになる。そのため、空気の渦の発生をより効果的に抑えることができる。
【0020】
本発明の第
7観点に係る天井埋込型の室内機は、
第1観点から第6観点に係る室内機において、パネルは、内部が中空状に形成されている。
【0021】
これにより、パネルの重さを軽減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1観点に係る室内機によると、空気の渦の発生を抑えることができ、通風抵抗及び空気の渦による音の発生を抑えることができる。
しかも、吸込開口部から吸い込まれる空気の量は、補助開口から吸い込まれる空気よりも多くなる。更に、補助開口からは、ケーシング内部がより見えにくくなる。
【0023】
本発明の第2観点に係る室内機によると、十字形状の補助開口からケーシング内へと空気が取り込まれることとなる。
【0024】
本発明の第3観点に係る室内機によると、吸込開口部からケーシング内へと吸い込まれる空気は、鉛直方向に対して中央寄りに流れ、確実にファンに向かうことができる。
【0025】
本発明の第4観点に係る室内機によると、中央部材の側面の基準面に対する傾斜角度は、補助開口の形成面の基準面に対する傾斜角度よりも急であるため、中央部材の側面付近において発生する渦は、生じにくくなる。また、環状の吸込開口部からケーシング内部へと吸い込まれる空気は、傾斜面となっている中央部材の側面に沿ってケーシング内部に導かれるようになる。従って、中央部材の側面は、空気流の剥離を抑えるためのガイドとしての役割を担っている。
【0026】
本発明の第
5観点に係る室内機によると、吸込開口部を介してパネルの下面側から上面側へと流れてケーシング内部に向かう空気の圧力は、吸込開口部の幅がパネルの上面側と下面側とで同じである場合に比して急激には変化しにくくなるため、空気の渦の発生及び騒音防止を効果的に行うことができる。
【0027】
本発明の第
6観点に係る室内機によると、空気の渦の発生をより効果的に抑えることができる。
【0028】
本発明の第
7観点に係る室内機によると、パネルの重さを軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る天井埋込型の室内機について、図面を参照しつつ詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0031】
(1)概要
図1は、本実施形態に係る室内機20を備えた空気調和装置100の外観図である。この空気調和装置100は、屋外に設置されている室外機10と、建物内の空調対象室RAの天井に埋め込まれた室内機20とに分かれて構成されている。室外機10と室内機20とは、液冷媒及びガス冷媒用の冷媒配管L1,L2等を介して接続されている。このような空気調和装置100は、空調対象室RA内の冷房運転及び暖房運転を含む空気調和運転を行うことができる。
【0032】
室外機10の内部には、図示してはいないが、室外熱交換器(図示せず)や圧縮機等が設けられている。室外機10は、冷媒配管L1,L2を通る冷媒を圧縮させたり、室外熱交換器にて当該冷媒と外気との間で熱交換を行わせることで、ガス状態または液状態となった冷媒を室内機20へ送ったりする。
【0033】
室内機20は、空気調和運転時には、室外機10と冷媒のやり取りを行い、空気調和後の空気(以下、空調空気と言う)を室内に供給する。特に、本実施形態に係る室内機20には、ケーシング30の下面における吸い込み口32(開口に相当)付近に、意匠性を損なわないようにするためのパネル40が位置している。パネル40は、ユーザが下方から室内機20を見上げた際に、吸い込み口32を介してケーシング30の内部が見えないようにすることで、意匠性が損なわれるのを防ぐためのものである。従って、このパネル40は、ほぼ吸い込み口32を覆うようにして位置してはいるが(
図1,4参照)、完全に覆ってしまうと吸い込み口32からケーシング30内部へと室内空気を取り込むことができなくなってしまう。そのため、パネル40は、室内空気をケーシング30内部へと取り込むための吸込開口部42を有しており、中央部材41は、補助開口46を有している(
図4参照)。なお、パネル40の詳細については、後述する。
【0034】
ところで、本実施形態の説明においては、「上」「下」「鉛直」「水平」等の方向を示す表現を適宜用いているが、これらは、室内機20が
図1の状態で設置された状態での各方向を表す。
【0035】
(2)室内機の構成
次に、本実施形態に係る室内機20の構成について詳述する。室内機20は、
図1〜4に示すように、主として、ケーシング30と、ファン50と、パネル40と、室内熱交換器60と、フィルタ70とを備える。
【0036】
(2−1)ケーシング
ケーシング30は、空調対象室RA内の天井に形成された開口部(図示せず)に挿入されて設置されており、箱状の形状を有している。具体的には、ケーシング30の側面は、上面視において長辺と短辺とが交互に連続して形成された約8角形の形状となっており(
図1)、下面は、略4角形の形状となっている。
【0037】
そして、ケーシング30の下面には、下面の周縁部に沿うようにして4つの吹き出し口31a,31b,31c,31dが形成されている。これらの吹き出し口31a〜31dによって囲まれたケーシング30の下面の位置には、1つの吸い込み口32が設けられている。つまり、吸い込み口32は、ケーシング30の下面の略中央に設けられている。吹き出し口31a〜31dは、それぞれケーシング30の下面の周縁方向に細長い略4角形の形状を有しており、吸い込み口32は、略4角形の形状を有している。吸い込み口32からは、空調対象室RA内の室内空気がケーシング30の内部に吸い込まれ、吹き出し口31a〜31dからは、空調空気が空調対象室RAへと吹き出される。特に、吹き出し口31a〜31dは、ケーシング30の下面の周縁部に沿うようにして設けられているので、室内機20は、互いに異なる方向に空調空気を吹き出すことができる。
【0038】
なお、各吹き出し口31a〜31dには、水平フラップ33a〜33dが設けられている。水平フラップ33a〜33dは、各吹き出し口31a〜31dから吹き出される空気を所望の方向に案内する。水平フラップ33a〜33dは、フラップモータ(図示せず)によって回転駆動され、空調空気の案内方向を変更したり、各吹き出し口31a〜31dを閉じたりすることができる。
【0039】
また、ケーシング30の側面には、各冷媒配管L1,L2の一部が貫通するための開口(図示せず)が形成されている。これにより、冷媒配管L1,L2は、室内熱交換器60(
図2)と接続されるようになる。
【0040】
(2−2)ファン
ファン50は、
図2に示すように、パネル40の上方かつケーシング30の内部に位置している。ファン50は、室内空気を吸込開口部42を介してケーシング30内部へと向かわせる第1空気流(空気流に相当。
図5の破線矢印A)を生成しつつ、室内熱交換器60にて熱交換された後の空調空気を各吹き出し口31a〜31dを介してケーシング30内から吹き出す遠心送風機である。即ち、ファン50は、パネル40よりも第1空気流の下流側に位置していると言える。更に、ファン50は、中央部材41の補助開口46を介してケーシング30内部へと向かわせる第2空気流(
図5の破線矢印B)も生成する。
【0041】
このファン50は、
図2に示すように、ケーシング30の上面の約中央に設けられたファンモータM50と、該モータM50に連結されて回転駆動される羽根車(図示せず)とを有している。羽根車は、ターボ翼を有する羽根車であり、下方から羽根車の内部に空気を吸い込み、鉛直方向から見た場合における羽根車の外周側に向かって吹き出すことができる。ファンモータM50は、モータドライバ(図示せず)によってその回転数を可変でき、これにより、ファン50は、吹き出し口31a〜31dから吹き出される空調空気の風量を制御することができる。
【0042】
(2−3)パネル
パネル40は、
図4に示すように、鉛直方向から見た場合に、角が丸みを帯びた略4角形の形状を有している。パネル40の大きさは、吸い込み口32よりも若干大きい。パネル40は、
図2に示すように、吸い込み口32を外部からは遮蔽する(具体的には、覆う)ようにして、吸い込み口32付近に固定して位置している。
【0043】
特に、本実施形態に係るパネル40は、その重さを軽減するべく、内部が中空状に形成されており、
図2〜4に示すように、主として、中央部材41と、吸込開口部42と、環状部材43とを有する。
【0044】
(2−3−1)中央部材
中央部材41は、
図4に示すように、パネル40を鉛直方向から見た場合に、ケーシング30における吸い込み口32の略中央に位置している。中央部材41は、パネル40の外形を縮小したような形状であり、つまりはパネル40を鉛直方向から見た場合において角が丸みを帯びた略4角形の形状となっている。中央部材41の大きさは、ケーシング30の吸い込み口32よりも小さく、例えば吸い込み口32の2/3程度であることができる。つまり、中央部材41は、主に、室内機20の下方からはケーシング30の内部が見えないようにするために設けられており、ケーシング30を隠すための部材であると言える。このような中央部材41は、
図2に示すように、その下面である基準面41aが空調対象室RA内に露出することとなり、この基準面41aは略水平となっている。
【0045】
更に、
図2に示すように、中央部材41において、基準面41aの周縁から上方に延びる側面41bは、鉛直方向に対して中央部材41の中央寄りに第1所定角度α1だけ傾斜している。即ち、中央部材41は、上方に凸の形状を有している。そして、中央部材41の上面41cは、上方に突出しつつ吸込開口部42側の角が湾曲している。従って、中央部材41は、角が丸みを帯びつつ上方に凸の形状となっている。
【0046】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、第1所定角度α1が、中央部材41の周縁全体に渡って均一である場合を示している。
【0047】
そして、中央部材41は、
図2〜5に示すように、補助開口46が形成されている。補助開口46は、第1空気流(
図5の破線矢印A)からの空気の剥離現象を軽減させる第2空気流(
図5の破線矢印B)を生成するための開口であって、
図4に示すように、パネル40を鉛直方向から見た場合において、十字形状に形成されている。具体的には、補助開口46は、パネル40を鉛直方向から見た場合において、縦方向及び横方向に対しほぼ同じ幅w1を有している。更に、中央部材41の基準面41aから上方に延びることで補助開口46を形成している形成面46aは、鉛直方向に対して吸込開口部42寄りに第2所定角度α2だけ傾斜している。中央部材41の側面41bにおける第1所定角度α1と補助開口46における形成面46aの第2所定角度α2とでは、第1所定角度α1の方が第2所定角度α2よりも小さい。即ち、第1所定角度α1は、第2所定角度α2に比して角度が急になっている。
【0048】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、第2所定角度α2が、補助開口46の周縁全体に渡って均一である場合を示している。
【0049】
仮に、中央部材41には補助開口46が形成されておらず、かつ中央部材41の側面が基準面41aに対して傾斜しておらず鉛直方向に沿って延びている場合を考える。この場合、中央部材41の側面かつ上面付近において、吸込開口部42からケーシング30の内部に吸い込まれてきた室内空気の渦が発生してしまい、室内空気の気流が乱れてしまう。
【0050】
しかし、上記にて説明した本実施形態に係る中央部材41によると、中央部材41には、
図2〜5に示すように補助開口46が形成されており、更に中央部材41の側面41bが基準面41aに対して中央寄りに傾斜している。そのため、吸込開口部42を介してケーシング30内部に取り込まれた室内空気の流れは、中央部材41の側面41bに沿ってファン50側へと流れる第1空気流となる(
図5の破線矢印A)。より具体的には、第1空気流は、室内空気が吸込開口部42からファン50へと向かうにつれて、中央部材41の中央側に寄るような流れであると言える。一方、補助開口46を介してケーシング30内部に取り込まれた室内空気の流れは、補助開口46の形成面46aに沿ってファン50側へと流れる第2空気流となる(
図5の破線矢印B)。特に、補助開口46の形成面46aは、中央部材41の側面41bに比して基準面41aに対する傾斜角度が大きいため、第2空気流は、第1空気流に比べてあまり曲がらずに、補助開口46からファン50へと向かう流れであると言える。従って、第1空気流は、第2空気流によって上方へと引っ張られることとなり、第1空気流からの空気の剥離現象が抑えられることとなる。従って、第1空気流における室内空気の渦の発生が抑制され、通風抵抗及び渦による音の発生を抑えることができる。更に、中央部材41の上面41cは、吸込開口部42側の角が丸みを帯びつつ上に凸の形状となっているため、第1空気流における室内空気の気流の乱れは、より抑制されることとなる。以上からすると、本実施形態に係る中央部材41の側面41bは、空気流の剥離を抑えるためのガイドとしての役割を担っていると言える。
【0051】
ここで、このような形状の中央部材41がどの程度上方に突出しているかを定義するべく、
図5に示されるように、基準面41aから上面41cの一番高い箇所までの高さh1、第1所定角度α1及び第2所定角度α2の数値範囲について説明する。中央部材41の高さh1は、約10mm以上であることが好ましく、更には約30mm以上であると良い。更に具体的には、中央部材41の高さh1は、約30mm〜約50mmの範囲内であると良い。また、第1所定角度α1及び第2所定角度α2については、第1所定角度α1が第2所定角度α2よりも小さいという条件を満たした上で、第1所定角度α1は約30度〜約80度の数値範囲内から、第2所定角度α2は約60度〜約90度の数値範囲内から、それぞれ選択されることができる。例えば、第1所定角度α1が約30度であって、第2所定角度α2が約85度であることができる。第1所定角度α1及び第2所定角度α2が上記条件を満たした上で、各数値範囲内から選択されることにより、中央部材41の側面41bは、室内空気をスムーズにケーシング30内部に導入するのに十分な傾斜面となり、補助開口46から形成面46aに沿ってファン50側へと取り込まれる第2空気流は、吸込開口部42から取り込まれる室内空気の第1空気流をより効果的に引っ張ることができる。
【0052】
また、中央部材41の上面41cにおける角の曲率半径は、R100であることができる。補助開口46の幅w1としては、例えば25mmが挙げられる。
【0053】
(2−3−2)吸込開口部
吸込開口部42は、
図2〜4に示すように、中央部材41を囲む環状の開口であって、既に述べたように、室内空気が室内機20外部からケーシング30内部へと取り込まれる際の、室内空気の通気口である。吸込開口部42の幅w2は、
図4に示すように、鉛直方向から見た場合における中央部材41の横幅または縦幅に比して十分に小さい。そして、吸込開口部42の幅w2は、補助開口46の幅w1よりも大きく、例えば、補助開口46の幅w1の2倍程度であることができる。具体的には補助開口46の幅w1が約25mmであるとすると、吸込開口部42の幅w2は、約50mmが挙げられる。
【0054】
なお、本実施形態に係る吸込開口部42は、
図4に示すように、中央部材41の形状に合わせて、パネル40を鉛直方向から見た場合において角が丸みを帯びている。
【0055】
更に、吸込開口部42の幅w2は、パネル40の上面側と下面側とで異なっている。具体的には、
図3に示すように、パネル40の上面側における吸込開口部42の幅w4(以下、第1幅w4と言う)は、パネル40の下面側における吸込開口部42の幅w5(以下、第2幅w5と言う)よりも大きい。これは、圧力損失による空気流の渦の発生、およびこれに伴う騒音の発生を防止するためである。
【0056】
ここで、第1幅w4を、第2幅w5よりも大きい幅にする理由について具体的に説明する。第1幅w4は、パネル40の上面側であるため、第2幅w5側に比してケーシング30内部側であると言える。すると、仮に第1幅w4と第2幅w5とを同じ幅にすると、パネル40の下面側から上面側へと吸込開口部42を介して流れてくる空気流の圧力損失が大きくなってしまうこととなる。即ち、第1幅w4と第2幅w5とを同じ幅にすると、空気流がパネル40の上面付近を通過する頃には、ケーシング30内の空間が一挙に大きくなるため、空気流の圧力勾配は急激に大きくなってしまうのである。すると、空気流の渦が発生し易くなり、騒音が発生してしまう。しかし、本実施形態では、パネル40の上面側における吸込開口部42の第1幅w4が下面側の第2幅w5よりも大きいため、第1幅w4及び第2幅w5を同じ幅とする場合に比して、空気流の圧力勾配が急激に大きくなるのを抑えることができる。従って、圧力損失が大きいことにより発生する空気流の渦の発生、及びこれに伴う騒音の発生を、抑えることができるのである。
【0057】
なお、本実施形態では、中央部材41が上方に突出しつつ湾曲する形状を有することにより、吸込開口部42の第1幅w4が下面側の第2幅w5よりも大きくなる形態を実現している。
【0058】
(2−3−3)環状部材
環状部材43は、
図4に示すように、パネル40を鉛直方向から見た場合に、吸込開口部42と同様の形状を有しつつ、吸込開口部42を囲むようにして位置している。環状部材43の幅w3は、常に一定となっており、例えば約30mm〜約50mmの範囲内であることができる。そして、環状部材43は、吸込開口部42の形状に合わせて、パネル40を鉛直方向から見た場合において角が丸みを帯びている。
【0059】
特に、環状部材43は、
図2に示すように、その下面43aから吸込開口部42に接しつつ上方に延びる側面43bが、鉛直方向に対して中央部材41の中央寄りに傾斜している。つまり、吸込開口部42に接する環状部材43の側面43bは、中央部材41の側面41bと同様、鉛直方向に沿って延びているのではなく、中央部材41側へと傾いている。そして、環状部材43の側面43bの、下面43aに対する傾斜角度α3としては、約170度〜140度の範囲内であることが挙げられる。
【0060】
なお、本実施形態では、傾斜角度α3が、環状部材43の吸込開口部42側の周縁全体に渡って均一である場合を示している。
【0061】
このような形状を有する環状部材43により、室内空気は、
図5の破線矢印Aに示すように、吸込開口部42からケーシング30内部に進入し、中央部材41の側面41b及び環状部材43の側面43bに沿ってパネル40の上方へと案内され、パネル40の上方に位置するファン50へと確実に流れるようになる。
【0062】
なお、中央部材41及び環状部材43は、
図4に示すように、吸込開口部42によって互いに離れて位置しているが、これらは、細長く延びた支持部材p1,p2によって支持されている。これにより、中央部材41、吸込開口部42及び環状部材43が、1枚のパネル40を形成している。よって、吸込開口部42の幅w2及び形状は、中央部材41及び環状部材43の位置によって定義されているとも言うことができる。
【0063】
(2−4)室内熱交換器
室内熱交換器60は、
図2に示すように、ケーシング30の内部において、かつファン50の空気の吹き出し部分付近に位置している。室内熱交換器60は、各冷媒配管L1,L2に接続されており、鉛直方向から見た場合におけるファン50の周囲を囲むように曲げられて配置されたフィンチューブ型熱交換器で構成されている。室内熱交換器60は、吸込開口部42及び補助開口46から吸い込まれた空調対象室RA内の室内空気と熱交換を行う。
【0064】
具体的には、室内熱交換器60は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能する。これにより、ケーシング30内部に吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器60を構成する伝熱管(図示せず)内を流れる冷媒に熱を奪われ、冷やされることとなる。逆に、室内熱交換器60は、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能する。これにより、ケーシング30内に吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器60を構成する伝熱管内を流れる冷媒から熱を奪い、温められることとなる。室内熱交換器60によって熱交換が行われた後の空調空気は、開放された吹き出し口31a〜31dを介して空調対象室RA内に戻される。
【0065】
また、室内熱交換器60の下側には、
図2に示すように、ドレンパン61が設置されている。ドレンパン61は、室内熱交換器60によって空気中の水分が凝縮されて生じるドレン水を受けるためのものである。また、ドレンパン61付近には、室内空気をファン50へと案内するためのベルマウス(図示せず)が配置されている。ベルマウスは、鉛直方向から見た場合に円形の形状となっている。
【0066】
(2−5)フィルタ
フィルタ70は、
図2に示すように、ケーシング30の内部において、ファン50とパネル40との間に位置している。具体的には、フィルタ70は、パネル40の形状に合わせて略四角形の形状を有しており、パネル40の上面付近において、支持部材を介して支持され位置している。フィルタ70は、吸込開口部42及び補助開口46を介してファン50に吸い込まれる前の室内空気から塵埃を除去する。従って、フィルタ70を通過した空気は、塵埃を比較的含まない空気となり、ベルマウスを介してファン50内に送られることとなる。
【0067】
上述した他に、室内機20は、人検知センサ91、床温度センサ92及び制御部(図示せず)を備えている。人検知センサ91及び床温度センサ92は、
図1に示すように、ケーシング30の下面に設けられている。制御部は、ケーシング30の内部に設けられている。人検知センサ91は、空調対象室RA内の人の有無を検知し、床温度センサ92は、空調対象室RA内の床の温度を検知する。制御部は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータであって、例えばリモートコントローラから送信される空気調和運転や清掃運転等の各種運転指示を受信すると、ファン50の回転数制御や、各水平フラップ33a〜33dの開閉制御等を行う。
【0068】
(3)特徴
(3−1)
本実施形態の室内機20は、天井埋込タイプであって、ケーシング30と、パネル40と、ファン50とを備える。特に、パネル40は、鉛直方向から見た場合に吸い込み口32の略中央に位置する中央部材41と、中央部材41を囲む環状の開口である吸込開口部42とを有している。中央部材41には、補助開口46が形成されている。
【0069】
この補助開口46によって、第1空気流からの空気の剥離現象を軽減させるような第2空気流が別途生成される(
図5)。これにより、第1空気流は、第2空気流によって上方に引っ張られる状態となり、第1空気流から空気が剥離してしまうのが抑制される。そのため、空気の渦の発生を抑えることができ、通風抵抗及び空気の渦による音の発生を抑えることができる。
【0070】
(3−2)
更に、本実施形態に係る補助開口46は、
図4に示すように、パネル40を鉛直方向から見た場合において、十字形状に形成されている。これにより、十字形状の補助開口46からケーシング30内へと、室内空気が取り込まれることとなる。
【0071】
(3−3)
ところで、第1空気流は、
図5の破線矢印Aにて示されるように、室内空気が吸込開口部42からファン50へと向かうにつれて中央部材41の中央側に寄るような流れである。これにより、吸込開口部42からケーシング30内へと吸い込まれる室内空気は、鉛直方向に対して中央寄りに流れ、確実にファン50に向かうことができる。
【0072】
(3−4)
一般的に、中央部材41よりも外方となる吸込開口部42から吸い込まれる室内空気は、中央部材41の補助開口46から吸い込まれる空気よりも、ファン50の吸い込み口との位置の関係上渦が生じやすい。しかし、本実施形態では、中央部材41の側面41bは、下面である基準面41a対して第1所定角度α1傾斜している。また、補助開口46の形成面46aは、基準面41aに対して第2所定角度α2傾斜している。そして、第1所定角度α1は、第2所定角度α2よりも小さい。即ち、中央部材41の側面41bの基準面41aに対する傾斜角度(即ち、第1所定角度α1)は、補助開口46の形成面46aの基準面41aに対する傾斜角度(即ち、第2所定角度α2)よりも急であるため、中央部材41の側面41b付近において発生する渦は、生じにくくなる。また、環状の吸込開口部42からケーシング30内部へと吸い込まれる空気は、傾斜面となっている中央部材41の側面41bに沿ってケーシング30内部に導かれるようになる。従って、中央部材41の側面41bは、空気流の剥離を抑えるためのガイドとしての役割を担っている。
【0073】
(3−5)
また、本実施形態においては、吸込開口部42の幅w2は、補助開口46の幅w1よりも大きい。これにより、吸込開口部42から吸い込まれる室内空気の量は、補助開口46から吸い込まれる空気よりも多くなる。更に、補助開口46は、吸込開口部42よりも中央側に位置しているため、一般的には吸込開口部42からよりも補助開口46からの方がケーシング30内部が見えやすいが、本実施形態においては補助開口46の幅w1の方が吸込開口部42の幅w2よりも小さいため、補助開口46からは、ケーシング30内部が見えにくくなる。
【0074】
(3−6)
また、本実施形態においては、パネル40の上面側における吸込開口部42の第1幅w4は、パネル40の下面側における吸込開口部42の第2幅w5よりも大きい。これにより、吸込開口部42を介してパネル40の下面側から上面側へと流れてケーシング30内部に向かう空気の圧力は、第1幅w4と第2幅w5とが同じである場合に比して急激には変化しにくくなるため、空気の渦の発生及び騒音防止を効果的に行うことができる。
【0075】
(3−7)
更に、本実施形態に係る中央部材41の上面41cは、上方に突出して湾曲している。これにより、環状の吸込開口部42からケーシング30内部に導入された空気は、中央部材41の側面41b及び上面41cに沿ってよりスムーズにファン50側へと流れるようになる。そのため、空気の渦の発生をより効果的に抑えることができる。
【0076】
(3−8)
更に、本実施形態のパネル40は、内部が中空状に形成されている。これにより、パネル40の重さを軽減することができる。
【0077】
(4)変形例
(4−1)変形例A
上記実施形態では、
図4に示すように、中央部材41が略4角形の形状である場合について説明した。しかし、中央部材41の形状は、これに限定されず、どのような形状であってもよい。
【0078】
(4−2)変形例B
上記実施形態では、補助開口46の形状が、
図4に示すように十字形状である場合について説明した。しかし、補助開口46の形状は、これに限定されず、どのような形状であってもよい。
【0079】
(4−3)変形例C
上記実施形態では、
図2に示すように、中央部材41に補助開口46が設けられているだけではなく、中央部材41の側面41b及び環状部材43の側面43bが、中央部材41の中央寄りに傾斜している場合について説明した。しかし、本発明では、少なくとも中央部材41に補助開口46が設けられていればよく、中央部材41の側面41b及び環状部材43の側面43bが中央寄りに傾斜していなくてもよい。
【0080】
(4−4)変形例D
上記実施形態では、中央部材41が上方に突出しつつ湾曲する形状を有することにより、吸込開口部42の第1幅w4が下面側の第2幅w5よりも大きくなる形態を実現していると説明した。しかし、パネル40の上面側における吸込開口部42の第1幅w4が下面側の第2幅w5よりも大きい条件を満たすのであれば良く、中央部材41は、上方に突出しつつ湾曲するといった形状でなくともよい。例えば、中央部材41の側面41bは、環状部材43の側面43bと同様にフラットな面であって、かつ中央部材41の側面41b及び環状部材43の側面43bの基準面41aに対する各傾斜角度が調整されることよって、室内機20は、第1幅w4が第2幅w5よりも大きくなるような形態を有していても良い。
【0081】
(4−5)変形例E
上記実施形態では、
図2に示すように、補助開口46の形成面46aが吸込開口部42寄りに若干傾斜している場合について説明した。しかし、補助開口46の形成面46aは、傾斜していなくてもよい。
【0082】
(4−6)変形例G
上記実施形態では、フィルタ70が略四角形の形状を有する場合について説明した。しかし、フィルタ70の形状は四角形に限定されず、例えば略円形の形状であってもよい。また、室内機20は、フィルタ70を清掃するための清掃ユニットを更に備えていても良い。
【0083】
(4−7)変形例H
上記実施形態では、第1所定角度α1が第2所定角度α2よりも小さいという条件を満たした上で、第1所定角度α1は約30度〜約80度の数値範囲内から、第2所定角度α2は約60度〜約90度の数値範囲内から、それぞれ選択されると説明した。しかし、第1所定角度α1が第2所定角度α2よりも小さいという条件を満たさずに、第1所定角度α1を約30〜約80度の数値範囲内から選択し、第2所定角度α2を約60〜約90度の範囲内から選択することも可能である。