【実施例】
【0047】
以下、本発明について具体例に基づいて更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0048】
使用した原材料は以下のとおりである。
<酸無水物>
а−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 (分子量 294.22,宇部興産株式会社製)
<ジアミン>
PRIAMINE 1074:ダイマージアミン(アミン当量250〜300g/mol,クローダジャパン株式会社製)
KF−8010:シロキサンジアミン(アミン当量400〜500g/mol,信越化学工業株式会社製)
ジェファーミン D400:ポリオキシプロピレンジアミン,分子量434.78,三井化学ファイン株式会社製)
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン (分子量410.52, 和歌山精化工業株式会社製)
<溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0049】
実施例および比較例における評価方法等は以下のとおりである。
【0050】
[固形分濃度の測定方法]
試料の溶液組成物について、120℃で10分間、次いで250℃で60分間の順に昇温しながら加熱処理した。加熱処理前の試料重量(w1)と加熱処理後の重量(w2)から、次式により固形分濃度を算出した。
【0051】
固形分濃度(%)=[w2/w1]×100
【0052】
[溶液粘度の測定方法]
E型回転粘度計を用いて、25℃における10rpmでの溶液粘度を測定した。
【0053】
[機械物性]
調製したポリイミド溶液をガラス基板上に塗工し、熱風オーブン中、80℃で30分加熱し、続いて200℃で60分加熱して硬化させ、厚さがおよそ60μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムを幅10mm、長さ100mmに切り出して試験片とした。この試験片について、引張試験機(オリエンテック製;テンシロンUCT−5T)を使用して、温度25℃、湿度50%RH、クロスヘッド速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で、引張弾性率、破断強度、及び破断伸び率を測定した。
【0054】
[熱分解温度]
調製したポリイミド溶液をガラス基板上に塗工し、熱風オーブン中で80℃、30分、続いて200℃で60分加熱して硬化させ、厚さがおおよそ60μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムについて、TG−DTAを用いて5%重量減少温度を測定した。測定は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で行った。
【0055】
[剥離強度(接着性試験)]
調製したポリイミド溶液をポリイミドフィルム(ユーピレックス25S)に塗工し、熱風オーブン中で80℃、30分乾燥し、塗工厚さ約20μmのポリイミド溶液の乾燥膜を得た。その後、その乾燥膜上へ圧延銅箔(鏡面)を被せプレス機を用いて温度200℃、プレス圧力30kgf/cm、時間30分で加熱プレスし、ポリイミドフィルム/調製したポリイミド溶液の乾燥膜/銅箔の順に積層された接着フィルムを得た。この接着フィルムの銅箔側を引っ張る方法で180°ピール試験を実施した。
【0056】
<実施例1>
容量500mlのガラス製フラスコに、ジアミンとしてPRIAMINE 1074(アミン当量 274g/mol)27.37gとBAPP 30.79gと、溶媒としてNMPの一部とを加え、50℃で30分攪拌しジアミンを溶解した。その後、酸無水物のа−BPDA 36.78gと残りの溶媒のNMPを仕込み(NMPの合計は284.81g,モノマーのモル比は、а−BPDA:PRIAMINE 1074:BAPP=10:4:6)、窒素雰囲気下、50℃で1時間加熱撹拌した後、180℃に昇温し15時間加熱重合を行った。得られたポリイミド溶液は、ポリマ−固形分濃度25〜26重量%、ηinh 0.63の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。このポリイミド溶液を用いてポリイミドフィルムを作製し、上述の方法により機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0057】
<実施例2>
ジアミンをPRIAMINE 1074 48.17gとBAPP 9.03g、酸無水物をа−BPDA 32.36g、溶媒をNMP 268.69g(モノマーのモル比は、а−BPDA:PRIAMINE 1074:BAPP=10:8:2)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例3>
ジアミンをPRIAMINE 1074 38.32gとBAPP 12.32g、酸無水物をа−BPDA 29.42g、溶媒をNMP 240.16g(モノマーのモル比は、а−BPDA:PRIAMINE 1074:BAPP=10:7:3)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例4>
ジアミンをPRIAMINE 1074 36.13gとBAPP 22.58g、酸無水物をа−BPDA 35.60g、溶媒をNMP 282.92g(モノマーのモル比は、а−BPDA:Priamin 1074:BAPP=10:55.5:4.5)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0060】
<実施例5>
ジアミンをPRIAMINE 1074 14.23gとBAPP 42.69g、酸無水物をа−BPDA 38.25g、溶媒をNMP 285.52g(モノマーのモル比は、а−BPDA:PRIAMINE 1074:BAPP=10:2:8)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0061】
<比較例1>
ジアミンをBAPP 53.37g、酸無水物をа−BPDA 38.25g、溶媒をNMP 274.85gとした(モノマーのモル比は、а−BPDA:BAPP=10:10)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0062】
<比較例2>
ジアミンをシロキサンジアミン(KF−8010) 21.91gとBAPP 38.42g、酸無水物をа−BPDA 35.31g、溶媒をNMP 286.92g(モノマーのモル比は、а−BPDA:KF−8010:BAPP=10:2.2:7.8)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0063】
<比較例3>
ジアミンをシロキサンジアミン(KF−8010) 39.84gとBAPP 29.56g、酸無水物をа−BPDA 35.31g、溶媒をNMP 365.11g(モノマーのモル比は、а−BPDA:KF−8010:BAPP=10:4:6)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0064】
<比較例4>
ジアミンをシロキサンジアミン(KF−8010) 68.72gとBAPP
15.27g、酸無水物をа−BPDA 35.31g、溶媒をNMP 357.91g(モノマーのモル比は、а−BPDA:KF−8010:BAPP=10:6.9:3.1)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0065】
<比較例5>
ジアミンをジェファーミン D400 10.43gとBAPP 39.41g、酸無水物をа−BPDA 35.31g、溶媒をNMP 255.45g(モノマーのモル比を、а−BPDA:ジェファーミン D400:BAPP=10:2:8)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例6>
ジアミンをジェファーミン D400 21.74gとBAPP 30.79g、酸無水物をа−BPDA 36.78g、溶媒をNMP 267.92g(モノマーのモル比は、а−BPDA:ジェファーミン D400:BAPP=10:4:6)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、機械物性、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例7>
ジアミンをジェファーミン D400 28.70gとBAPP 22.58g、酸無水物をа−BPDA 35.60g、溶媒をNMP 260.62g(モノマーのモル比を、а−BPDA:ジェファーミン D400:BAPP=10:5.5:4.5)とした以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製し、熱分解温度および剥離強度について測定した。結果を表1に示す。なお、機械物性については、塗工膜が大変脆く、機械強度が測定可能なフィルムとしてガラス基板より剥離できなかったため、測定することができなかった。
【0068】
上記実施例および比較例における、引張弾性率、破断伸び率、5%重量減少温度および剥離強度の測定結果をそれぞれ
図1〜
図4に示す。
【0069】
図1および
図2は、BAPP以外のジアミン化合物の含有率と、引張弾性率および破断伸び率との関係をそれぞれ示す。本発明におけるジアミン化合物(1)であるPRIAMINE 1074、またはシロキサンジアミンであるKF−8010の含有率が高くなるほど引張弾性率は減少し、かつ、破断伸び率は増加したことから、柔軟性が上がったことが示された。一方、PRIANIME 1074およびシロキサンジアミンのいずれも含まずBAPPのみの場合や、ポリオキシプロピレンジアミンであるジェファーミン D400を含有する場合は引張弾性率が高く、柔軟性が付与されないことが示された。
【0070】
図3は、BAPP以外のジアミン化合物の含有率と、5%重量減少温度との関係を示す。PRIAMINE 1074またはKF−8010の含有率が増加しても5%重量減少温度の変化は小さく、耐熱性が低下しないことが示された。一方ジェファーミン D400の含有率が増加すると、耐熱性が大きく低下してしまうことが示された。
【0071】
図4は、BAPP以外のジアミン化合物の含有率と剥離強度との関係を示す。PRIAMINE 1074またはジェファーミン D400を含有すると剥離強度が大きく、KF−8010を含有する場合に比べて接着性が高いことが示されている。
【0072】
したがって、PRIAMINE 1074を含有するポリイミド溶液組成物を用いて製造されたポリイミドフィルムは、柔軟性と耐熱性を有し、さらに接着性も有していることが示された。
【0073】
【表1】