【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施するための一実施例を、
図1〜
図3を用いて説明する。
1は空圧アクチュエータを使用し、キャリパ本体が車輪の軸方向に移動する浮動式の本発明キャリパブレーキ装置で、以下に説明するように構成されている。
【0015】
2は先端側が車輪3の外周両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体であり、台車4に固定された支持枠5に取り付けた2本の支持ピン6に沿って車輪3の軸方向へのスライドが自在なように、その基端側を支持枠5に取り付けている。
【0016】
7は空圧アクチュエータであり、前記キャリパ本体2に、例えばロッド7a
の延長線が前記支持ピン6の延長線と交差するように角度をつけて取り付けている。この空圧アクチュエータ7は内部に設けた戻しばねにより制動の緩解時には元の位置に戻るようになっている。
【0017】
8は前記空圧アクチュエータ7のロッド7aの先端に、一端を回転自在に取り付けた連結リンクであり、他端を作動レバー9の一端に回転自在に連結している。そして、この作動レバー9の他端には、キャリパ本体2の前記分岐した内の一方に回転自在に支持された偏芯軸10が一体的に取り付けられている。つまり、空圧アクチュエータ7のロッド7aの出退動により、連結リンク8を介して作動レバー9の一端側が偏芯軸10を中心として回転するように成されている。
【0018】
11は前記偏芯軸10に形成した偏芯部10aに一体に取り付けたキャリパレバーであり、その先端側の内面に、制輪子頭13を介して一方の制輪子12aを回転自在に取り付けている。この一方の制輪子12aは、キャリパ本体2に取り付けられたアンカーピン14に対してもスライドが自在なように取り付けている。また、前記キャリパ本体2の前記分岐した内の他方の先端側の内面には他方の制輪子12bを取り付けている。
【0019】
15は前記両制輪子12a,12bと車輪3の両側面に取り付けたディスク間の隙間を調整する隙間調整機構である。
【0020】
この隙間調整機構15は、一端側をキャリパ本体2の基端側に、他端側は前記キャリパレバー11を前記偏芯部10aから反制輪子側に延長した端部に、夫々回転自在に取り付けられている。そして、使用による制輪子12a,12bの摩耗によって前記ディスクとの間隔が大きくなったときに、前記取り付け部の間隔を広げて前記間隔を一定に保つようにする。
【0021】
すなわち、この隙間調整機構15は、
図2に示すように、ナット部材15aと、このナット部材15aにねじ嵌合する雄ねじを有する軸部材15bの相対回転によって軸方向に拡縮するもので、この拡縮を例えば、次のような構成によって行っている。
【0022】
15d,15eはワッシャ15cを介して前記ナット部材15aの外周側に直列配置した
一方向クラッチであり、例えば
一方向クラッチ15dは左回転時には空転し、右回転時にはナット部材15aを右回転するようになっている。一方、
一方向クラッチ15eは右回転時には空転し、左回転時にはナット部材15aを左回転するようになっている。
【0023】
上記構成の本発明のキャリパブレーキ装置1にあっては、空圧アクチュエータ7が作動してロッド7aを突出させると、連結リンク8を介して作動レバー9の一端を、その他端を支点として回動させる。つまり、作動レバー9の他端が回動することになる。
【0024】
作動レバー9の他端の回動によりこれと一体の偏芯軸10が回動し、偏芯部10aに取り付けられたキャリパレバー11が偏芯軸10の軸心を中心として回動することにより、キャリパレバー11の先端側に取り付けた一方の制輪子12aを車輪3側に押し付ける。この際、その反力によってキャリパ本体2が車輪3の軸方向にスライドすることで、車輪3の両側から両方の制輪子12a,12bで押し付けることになる。
【0025】
制動の緩解時には、戻しばねにより空圧アクチュエータ7のロッド7aが退入して作動レバー9が元の位置に引き戻され、前記制動時と反対の方向に偏芯軸10を回動させて一方の制輪子12aを車輪3から離反させる。これにより、キャリパ本体2の反力も消失し、他方の制輪子12bも車輪3への押し付け力が消失する。
【0026】
つまり、本発明では、ロッド7aの先端と連結リンク8の一方端部の連結部から偏芯軸10の軸心までの距離をL1、偏芯軸10の軸心と偏芯部10aの軸心間の距離をL2とした場合、空圧アクチュエータ7による発生力のL
1/L
2倍の回転力をキャリパレバー11に伝えることになる。
【0027】
キャリパレバー11は隙間調整機構15の端部を取り付けた支点を中心として前記回転力によりキャリパレバー11を車輪3側に回転させ、一方の制輪子12aをディスクに押し付ける。この押し付け力は、偏心軸10の梃子比L
1/L
2にさらにキャリパレバー11の梃子比(設計レイアウト上1以下)を乗じた値となり、空圧アクチュエータ7を小型化できる。
【0028】
ところで、制輪子12a,12bが摩耗して車輪3の両側面に取り付けられたディスクとの間隔が大きくなったときには、制動時における空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が大きくなる。
【0029】
このような場合、空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が一定のストロークを超えた時に、ロッド7aに取り付けた押し部材16でベルクランク17の一方端部を押すようにしておけば、以下のようにして両制輪子12a,12bと前記ディスク間の隙間が調整される。
【0030】
すなわち、空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が一定のストロークを超えた時に一方端部を押されたベルクランク17は、中央を支点として他方端部が回転してアジャスタ作動レバー18を引き、クラッチハウジング15iを介して
一方向クラッチ15dを左回転させる。この
一方向クラッチ15dは左回転時には空転し、この空転時にナット部材15aを共回りさせる力が作用するが、クラッチ15eがロック方向回転となるので、ナット部材15aは回転しない。なお、
一方向クラッチ15
eの外周に嵌められたカバー15fはケーシング15gにピン15hで固定され、回転することは無い。
【0031】
一方、制動の緩解時には、前記ベルクランク17は、戻しばね19により中央を支点としてアジャスタ作動レバー18を押す方向に他方端部を回転させる。このベルクランク17の回転によりアジャスタ作動レバー18を押して
一方向クラッチ15dを右回転させ、ナット部材15aに回転力を与える。
【0032】
この時、
一方向クラッチ15eは空転するので、ナット部材15aは右回転し、このナット部材15aにねじ嵌合する軸部材15bがナット部材15aから突出するように螺進して隙間調整機構15の取り付け部の間隔を拡げるべくキャリパレバー11を外方に押し、両制輪子12a,12bと前記ディスク間の隙間を一定に保つ。
【0033】
このような隙間調整機構15を設置した場合は、制輪子12a,12bが摩耗しても制動時における空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量を大きくする必要がないので、更なる小型化が図れる。
【0034】
この隙間調整機構15には、制輪子12a,12bの交換等のメンテナンス時に手動で拡縮できる機能を備えることが望ましい。以下に、手動で拡縮する機能の一例を、
図4を用いて説明する。
【0035】
図4は隙間調整機構15の一方端部を拡大して示した図で、20は軸部材15bの軸方向に移動が可能なようにキー21を介して軸部材15bと内周側が連結されたクラッチプレートである。このクラッチプレート20は、外周側がキャリパレバー11の延長した端部と面接触してクラッチとして作用するようになっており、前記延長した端部にねじ嵌合するロックナット22を締め付けたり緩めることでクラッチとして作用させるものである。
【0036】
なお、クラッチとして作用する面は、
図4では軸部材15bの軸方向と傾斜する平面を示しているが、垂直な平面でも、また波状の面でも良い。また、キー21を設ける位置やクラッチとして作用する面は、
図4とは逆に、外周側にキー21を設け、内周側をクラッチとして作用する面としても良い。
【0037】
このような手動で拡縮する機能を設けた場合、手動で拡縮を行わない制動時は、クラッチプレート20は前記ロックナット22によってキャリパレバー11の延長した端部に圧着されているので、軸部材15bの回転が防止される。
【0038】
一方、隙間調整機構15を手動で拡縮する場合は、ロックナット22を緩めてキャリパレバー11の延長した端部へのクラッチプレート20の圧着を開放して軸部材15bを自由に回転できるようにすれば、軸部材15bの回転により手動で拡縮することができる。拡縮後は、ロックナット22を締付けてクラッチプレート20をキャリパレバー11の延長した端部に圧着して軸部材15bの回転を防止する。
【0039】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0040】
例えば、上記の例では、隙間調整機構15を設置したものを示しているが、隙間調整機構15を設けないものでも良い。また、上記の例では、隙間調整機構15を構成する
一方向クラッチ15eの回り止めをピン15hで行っているが、
図5に示すようにキー23で行っても良い。