特許第5880003号(P5880003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880003
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】鉄道車両用キャリパブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B61H 5/00 20060101AFI20160223BHJP
   F16D 55/2255 20060101ALI20160223BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20160223BHJP
   F16D 65/56 20060101ALI20160223BHJP
   B61H 15/00 20060101ALI20160223BHJP
   F16D 121/08 20120101ALN20160223BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20160223BHJP
【FI】
   B61H5/00
   F16D55/2255 103F
   F16D65/18
   F16D65/56 A
   B61H15/00
   F16D121:08
   F16D125:64
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-273622(P2011-273622)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-123990(P2013-123990A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年2月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 章人
(72)【発明者】
【氏名】上村 兼一郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 廣順
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−505038(JP,A)
【文献】 特開昭60−047757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
B61H 5/00
B61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の軸方向へのスライドが自在なように、基端側を台車に取り付けられ、先端側が車輪の外周側両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体と、
このキャリパ本体に取り付けられた空圧アクチュエータと、
この空圧アクチュエータのロッドの出退動により、キャリパ本体の前記分岐した内の一方に回転が自在に支持された偏芯軸を中心として、前記ロッドの先端に取り付けられた連結リンクを介して一端側が回転する作動レバーと、
前記偏芯軸に形成した偏芯部に一体的な回動可能に取り付けられたキャリパレバーと、
このキャリパレバーの先端側の内面に回転自在に、かつキャリパ本体に取り付けられたアンカーピンに対してスライド自在に取り付けられた一方の制輪子、及びキャリパ本体の前記分岐した内の他方の先端側の内面に取り付けられた他方の制輪子と、
を備え、
前記キャリパレバーを前記偏芯部から反制輪子側に延長し、この延長した端部と前記キャリパ本体間に、前記両制輪子と車輪側面に取り付けたディスク間の隙間を調整する隙間調整機構を設け、
前記隙間調整機構は、一方向の回転のみを許容する一方向クラッチを直列に、互いに逆方向の回転のみを許容するように2個配置することで、前記ロッドの突出量が所定以上となった時にロッドが一方の一方向クラッチを空転させるだけで他方の一方向クラッチによりねじ軸の位置を維持し、ロッドの退入時には他方の一方向クラッチが空転して一方の一方向クラッチによりねじ軸を回転させて前記キャリパレバーの延長した端部と前記キャリパ本体間を拡げて前記両制輪子と前記ディスク間の隙間を小さくするものであり、
かつ、前記隙間調整機構に、外周側がキャリパレバーの延長した端部と面接触するクラッチプレートを、前記延長した端部にねじ嵌合するロックナットの手動による締め付け、緩めによりクラッチとして作用させる拡縮機構を付加したことを特徴とする鉄道車両用キャリパブレーキ装置。
【請求項2】
車輪の軸方向へのスライドが自在なように、基端側を台車に取り付けられ、先端側が車輪の外周側両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体と、
このキャリパ本体に取り付けられた空圧アクチュエータと、
この空圧アクチュエータのロッドの出退動により、キャリパ本体の前記分岐した内の一方に回転が自在に支持された偏芯軸を中心として、前記ロッドの先端に取り付けられた連結リンクを介して一端側が回転する作動レバーと、
前記偏芯軸に形成した偏芯部に一体的な回動可能に取り付けられたキャリパレバーと、
このキャリパレバーの先端側の内面に回転自在に、かつキャリパ本体に取り付けられたアンカーピンに対してスライド自在に取り付けられた一方の制輪子、及びキャリパ本体の前記分岐した内の他方の先端側の内面に取り付けられた他方の制輪子と、
を備え、
前記キャリパレバーを前記偏芯部から反制輪子側に延長し、この延長した端部と前記キャリパ本体間に、前記両制輪子と車輪側面に取り付けたディスク間の隙間を調整する隙間調整機構を設け、
前記隙間調整機構に、外周側がキャリパレバーの延長した端部と面接触するクラッチプレートを、前記延長した端部にねじ嵌合するロックナットの手動による締め付け、緩めによりクラッチとして作用させる拡縮機構を付加したことを特徴とする鉄道車両用キャリパブレーキ装置。
【請求項3】
前記隙間調整機構は、前記アクチュエータのロッドの突出量が所定以上となった時に前記両制輪子と前記ディスク間の隙間を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用キャリパブレーキ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータのロッドの突出量が所定以上となった時に前記両制輪子と前記ディスク間の隙間を小さくする構成は、一方向の回転のみを許容する一方向クラッチを直列に2個配置することで、前記ロッドの突出量が所定以上となった時にロッドの退入時にねじ軸を回転させて前記キャリパレバーの延長した端部と前記キャリパ本体間を拡げるものであることを特徴とする請求項に記載の鉄道車両用キャリパブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪の両側面で、車輪と一体として回転するディスクを、車輪の両側面の外側から挟んで制動力を付与するキャリパブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力媒体として作動油を使用する油圧式キャリパブレーキ装置を、圧力媒体が空気の鉄道車両に適用するには、空油変換機が必須であった。そこで、油圧源の縮小・廃止のために空圧式キャリパブレーキ装置を使用する傾向がみられる。
【0003】
しかしながら、油圧に比べて小さい空気圧を使用する空圧式キャリパブレーキ装置を鉄道車両に適用するためには、アクチュエータが大型にならざるを得ず、装置全体が大型化して限られたスペースに設置することが難しい。
【0004】
そこで、梃子の原理を利用して小型の空圧アクチュエータを使用できるようにしたものが特許文献1で提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された空圧式キャリパブレーキ装置は、キャリパ本体の摺動部と同軸心にアクチュエータを配置し、そのロッド端で梃子の一端を回転自在に支持しているので、キャリパ本体の摺動方向の寸法が大きくなる。
【0006】
また、特許文献1で提案された空圧式キャリパブレーキ装置は、制輪子が摩耗するにつれて、制動時におけるアクチュエータのロッドの突出長さが長くなるので、長いストロークが必要となって前記問題が助長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008‐281138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、特許文献1で提案された空圧式キャリパブレーキ装置は、従来の空圧式キャリパブレーキ装置に比べて小型化できるとはいうものの、まだキャリパ本体の摺動方向の寸法が大きいという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置は、
空圧式キャリパブレーキ装置の更なる小型化を図るために、
車輪の軸方向へのスライドが自在なように、基端側を台車に取り付けられ、先端側が車輪の外周側両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体と、
このキャリパ本体に取り付けられた空圧アクチュエータと、
この空圧アクチュエータのロッドの出退動により、キャリパ本体の前記分岐した内の一方に回転が自在に支持された偏芯軸を中心として、前記ロッドの先端に取り付けられた連結リンクを介して一端側が回転する作動レバーと、
前記偏芯軸に形成した偏芯部に一体的な回動可能に取り付けられたキャリパレバーと、
このキャリパレバーの先端側の内面に回転自在に、かつキャリパ本体に取り付けられたアンカーピンに対してスライド自在に取り付けられた一方の制輪子、及びキャリパ本体の前記分岐した内の他方の先端側の内面に取り付けられた他方の制輪子と、
を備え、
前記キャリパレバーを前記偏芯部から反制輪子側に延長し、この延長した端部と前記キャリパ本体間に、前記両制輪子と車輪側面に取り付けたディスク間の隙間を調整する隙間調整機構を設け、
前記隙間調整機構は、一方向の回転のみを許容する一方向クラッチを直列に、互いに逆方向の回転のみを許容するように2個配置することで、前記ロッドの突出量が所定以上となった時にロッドが一方の一方向クラッチを空転させるだけで他方の一方向クラッチによりねじ軸の位置を維持し、ロッドの退入時には他方の一方向クラッチが空転して一方の一方向クラッチによりねじ軸を回転させて前記キャリパレバーの延長した端部と前記キャリパ本体間を拡げて前記両制輪子と前記ディスク間の隙間を小さくするものであり、
かつ、前記隙間調整機構に、外周側がキャリパレバーの延長した端部と面接触するクラッチプレートを、前記延長した端部にねじ嵌合するロックナットの手動による締め付け、緩めによりクラッチとして作用させる拡縮機構を付加したことを最も主要な特徴としている。
【0010】
本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置は、車輪の両側面に車輪と一体に取り付けられたディスクに両制輪子を押し付けるキャリパレバーの回転を、偏芯軸を介して行うので、キャリパレバーを回転させる空圧アクチュエータを小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリパレバーを回転させる空圧アクチュエータを小型化することができるので、台車側を改造することなく油圧式キャリパ装置との置き換えが可能となって、油圧源の廃止を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置の説明図で、(a)は車輪の側面から見た図、(b)は車輪の上方から見た一部断面して示した図である。
図2】本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置に設置する隙間調整機構の構造の一例を説明する図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のA−A断面図である。
図3図2(b)の要部を図2(b)のB方向から見た図である。
図4】本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置に設置する隙間調整機構を手動で設定する場合の機構の側面から見た説明図である。
図5】本発明の鉄道車両用キャリパブレーキ装置に設置する隙間調整機構の方向クラッチの回り止めの他の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、空圧式キャリパブレーキ装置の更なる小型化を図るという目的を、車輪の両側面に両制輪子を押し付けるキャリパレバーの回転を、偏芯軸を介して行うことで実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施するための一実施例を、図1図3を用いて説明する。
1は空圧アクチュエータを使用し、キャリパ本体が車輪の軸方向に移動する浮動式の本発明キャリパブレーキ装置で、以下に説明するように構成されている。
【0015】
2は先端側が車輪3の外周両側面の外側に位置するように二つに分岐形成されたキャリパ本体であり、台車4に固定された支持枠5に取り付けた2本の支持ピン6に沿って車輪3の軸方向へのスライドが自在なように、その基端側を支持枠5に取り付けている。
【0016】
7は空圧アクチュエータであり、前記キャリパ本体2に、例えばロッド7aの延長線が前記支持ピン6の延長線と交差するように角度をつけて取り付けている。この空圧アクチュエータ7は内部に設けた戻しばねにより制動の緩解時には元の位置に戻るようになっている。
【0017】
8は前記空圧アクチュエータ7のロッド7aの先端に、一端を回転自在に取り付けた連結リンクであり、他端を作動レバー9の一端に回転自在に連結している。そして、この作動レバー9の他端には、キャリパ本体2の前記分岐した内の一方に回転自在に支持された偏芯軸10が一体的に取り付けられている。つまり、空圧アクチュエータ7のロッド7aの出退動により、連結リンク8を介して作動レバー9の一端側が偏芯軸10を中心として回転するように成されている。
【0018】
11は前記偏芯軸10に形成した偏芯部10aに一体に取り付けたキャリパレバーであり、その先端側の内面に、制輪子頭13を介して一方の制輪子12aを回転自在に取り付けている。この一方の制輪子12aは、キャリパ本体2に取り付けられたアンカーピン14に対してもスライドが自在なように取り付けている。また、前記キャリパ本体2の前記分岐した内の他方の先端側の内面には他方の制輪子12bを取り付けている。
【0019】
15は前記両制輪子12a,12bと車輪3の両側面に取り付けたディスク間の隙間を調整する隙間調整機構である。
【0020】
この隙間調整機構15は、一端側をキャリパ本体2の基端側に、他端側は前記キャリパレバー11を前記偏芯部10aから反制輪子側に延長した端部に、夫々回転自在に取り付けられている。そして、使用による制輪子12a,12bの摩耗によって前記ディスクとの間隔が大きくなったときに、前記取り付け部の間隔を広げて前記間隔を一定に保つようにする。
【0021】
すなわち、この隙間調整機構15は、図2に示すように、ナット部材15aと、このナット部材15aにねじ嵌合する雄ねじを有する軸部材15bの相対回転によって軸方向に拡縮するもので、この拡縮を例えば、次のような構成によって行っている。
【0022】
15d,15eはワッシャ15cを介して前記ナット部材15aの外周側に直列配置した方向クラッチであり、例えば方向クラッチ15dは左回転時には空転し、右回転時にはナット部材15aを右回転するようになっている。一方、方向クラッチ15eは右回転時には空転し、左回転時にはナット部材15aを左回転するようになっている。
【0023】
上記構成の本発明のキャリパブレーキ装置1にあっては、空圧アクチュエータ7が作動してロッド7aを突出させると、連結リンク8を介して作動レバー9の一端を、その他端を支点として回動させる。つまり、作動レバー9の他端が回動することになる。
【0024】
作動レバー9の他端の回動によりこれと一体の偏芯軸10が回動し、偏芯部10aに取り付けられたキャリパレバー11が偏芯軸10の軸心を中心として回動することにより、キャリパレバー11の先端側に取り付けた一方の制輪子12aを車輪3側に押し付ける。この際、その反力によってキャリパ本体2が車輪3の軸方向にスライドすることで、車輪3の両側から両方の制輪子12a,12bで押し付けることになる。
【0025】
制動の緩解時には、戻しばねにより空圧アクチュエータ7のロッド7aが退入して作動レバー9が元の位置に引き戻され、前記制動時と反対の方向に偏芯軸10を回動させて一方の制輪子12aを車輪3から離反させる。これにより、キャリパ本体2の反力も消失し、他方の制輪子12bも車輪3への押し付け力が消失する。
【0026】
つまり、本発明では、ロッド7aの先端と連結リンク8の一方端部の連結部から偏芯軸10の軸心までの距離をL1、偏芯軸10の軸心と偏芯部10aの軸心間の距離をL2とした場合、空圧アクチュエータ7による発生力のL1/L2倍の回転力をキャリパレバー11に伝えることになる。
【0027】
キャリパレバー11は隙間調整機構15の端部を取り付けた支点を中心として前記回転力によりキャリパレバー11を車輪3側に回転させ、一方の制輪子12aをディスクに押し付ける。この押し付け力は、偏心軸10の梃子比L1/L2にさらにキャリパレバー11の梃子比(設計レイアウト上1以下)を乗じた値となり、空圧アクチュエータ7を小型化できる。
【0028】
ところで、制輪子12a,12bが摩耗して車輪3の両側面に取り付けられたディスクとの間隔が大きくなったときには、制動時における空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が大きくなる。
【0029】
このような場合、空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が一定のストロークを超えた時に、ロッド7aに取り付けた押し部材16でベルクランク17の一方端部を押すようにしておけば、以下のようにして両制輪子12a,12bと前記ディスク間の隙間が調整される。
【0030】
すなわち、空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量が一定のストロークを超えた時に一方端部を押されたベルクランク17は、中央を支点として他方端部が回転してアジャスタ作動レバー18を引き、クラッチハウジング15iを介して方向クラッチ15dを左回転させる。この方向クラッチ15dは左回転時には空転し、この空転時にナット部材15aを共回りさせる力が作用するが、クラッチ15eがロック方向回転となるので、ナット部材15aは回転しない。なお、方向クラッチ15eの外周に嵌められたカバー15fはケーシング15gにピン15hで固定され、回転することは無い。
【0031】
一方、制動の緩解時には、前記ベルクランク17は、戻しばね19により中央を支点としてアジャスタ作動レバー18を押す方向に他方端部を回転させる。このベルクランク17の回転によりアジャスタ作動レバー18を押して方向クラッチ15dを右回転させ、ナット部材15aに回転力を与える。
【0032】
この時、方向クラッチ15eは空転するので、ナット部材15aは右回転し、このナット部材15aにねじ嵌合する軸部材15bがナット部材15aから突出するように螺進して隙間調整機構15の取り付け部の間隔を拡げるべくキャリパレバー11を外方に押し、両制輪子12a,12bと前記ディスク間の隙間を一定に保つ。
【0033】
このような隙間調整機構15を設置した場合は、制輪子12a,12bが摩耗しても制動時における空圧アクチュエータ7のロッド7aの突出量を大きくする必要がないので、更なる小型化が図れる。
【0034】
この隙間調整機構15には、制輪子12a,12bの交換等のメンテナンス時に手動で拡縮できる機能を備えることが望ましい。以下に、手動で拡縮する機能の一例を、図4を用いて説明する。
【0035】
図4は隙間調整機構15の一方端部を拡大して示した図で、20は軸部材15bの軸方向に移動が可能なようにキー21を介して軸部材15bと内周側が連結されたクラッチプレートである。このクラッチプレート20は、外周側がキャリパレバー11の延長した端部と面接触してクラッチとして作用するようになっており、前記延長した端部にねじ嵌合するロックナット22を締め付けたり緩めることでクラッチとして作用させるものである。
【0036】
なお、クラッチとして作用する面は、図4では軸部材15bの軸方向と傾斜する平面を示しているが、垂直な平面でも、また波状の面でも良い。また、キー21を設ける位置やクラッチとして作用する面は、図4とは逆に、外周側にキー21を設け、内周側をクラッチとして作用する面としても良い。
【0037】
このような手動で拡縮する機能を設けた場合、手動で拡縮を行わない制動時は、クラッチプレート20は前記ロックナット22によってキャリパレバー11の延長した端部に圧着されているので、軸部材15bの回転が防止される。
【0038】
一方、隙間調整機構15を手動で拡縮する場合は、ロックナット22を緩めてキャリパレバー11の延長した端部へのクラッチプレート20の圧着を開放して軸部材15bを自由に回転できるようにすれば、軸部材15bの回転により手動で拡縮することができる。拡縮後は、ロックナット22を締付けてクラッチプレート20をキャリパレバー11の延長した端部に圧着して軸部材15bの回転を防止する。
【0039】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0040】
例えば、上記の例では、隙間調整機構15を設置したものを示しているが、隙間調整機構15を設けないものでも良い。また、上記の例では、隙間調整機構15を構成する方向クラッチ15eの回り止めをピン15hで行っているが、図5に示すようにキー23で行っても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 キャリパブレーキ装置
2 キャリパ本体
3 車輪
4 台車
7 空圧アクチュエータ
7a ロッド
8 連結リンク
9 作動レバー
10 偏芯軸
10a 偏芯部
11 キャリパレバー
12a 一方の制輪子
12b 他方の制輪子
14 アンカーピン
15 隙間調整機構
15d,15e 方向クラッチ
図1
図2
図3
図4
図5