(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電シートに、複数組の前記並列スリット群が、前記導電シートの四方の外縁部のうちの前記第一の外縁部及び前記第二の外縁部以外の第三の外縁部からその反対側の第四の外縁部へ向かう第二方向において並んで形成されている、請求項1に記載の電磁シールド具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、編組線は筒状であるため、電線は、基本的にはその末端にコネクタが取付けられる前に、編組線に挿通されることを要する。このことは、一般に先通しと称される。このように電線の先通しが必要となると、ワイヤハーネスの製造及び配線の手順の自由度が制限される。
【0007】
仮に、電線の末端にコネクタが取付けられた後に電線に編組線を取り付けること、即ち、編組線の後付けを可能とするには、電線よりも外形の大きなコネクタなども挿通可能な、無駄に大きな編組線の採用が必要となる。そのようなことは、ワイヤハーネスの配設スペース、重量及び製造コストが増大することになり、非現実的である。
【0008】
また、電線が先通しされた筒状の編組線をシールド枠部に被せる作業において、電線の軸心方向における編組線の位置をずらすことが必要となる。そのため、編組線の両端が、比較的近くに配置された2つの筐体のシールド枠部各々に被せられる場合、編組線の位置をずらすためのスペースの余裕が小さく、編組線をシールド枠部に被せる作業が難しくなる。
【0009】
以上のことから、昨今、シールド具の取り付けの作業性及び手順の自由度を高めるため、シールド具の大型化を回避しつつ、電線及び筐体に対するシールド具の後付けを可能にすることが求められている。
【0010】
本発明は、ワイヤハーネスの配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴わずに、電線及び支持体に対するシールド具の後付けを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る電磁シールド具は、筒状に変形可能な柔軟性を有するシート状の導電性部材である導電シートと、前記導電シートの四方の外縁部のうちの第一の外縁部と該第一の外縁部の反対側の第二の外縁部とが合わさる状態で前記導電シートを筒状に保持する筒状保持部材と、を備え
、前記導電シートに、前記第一の外縁部から前記第二の外縁部へ向かう第一方向に交差する方向に沿うとともに前記第一方向において並んで形成された複数のスリットからなる並列スリット群が形成されており、さらに、前記並列スリット群を横断する折り目が形成されている。
【0013】
本発明の第
2の態様に係る電磁シールド具は、第
1の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第
2の態様に係る電磁シールド具の前記導電シートには、複数組の前記並列スリット群が、前記導電シートの四方の外縁部のうちの前記第一の外縁部及び前記第二の外縁部以外の第三の外縁部からその反対側の第四の外縁部へ向かう第二方向において並んで形成されている。
【0015】
本発明の第
3の態様に係る電磁シールド具は、
第1の態様又は第2の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第
3の態様に係る電磁シールド具において、前記筒状保持部材は、前記導電シートにおける前記第一の外縁部と前記第二の外縁部とを連結する部材である。
【0016】
本発明の第
4の態様に係る電磁シールド具は、第1の態様から第
3の態様のいずれか1つに係る電磁シールド具の一態様である。第
4の態様に係る電磁シールド具は、前記導電シートの四方の外縁部のうちの前記第一の外縁部及び前記第二の外縁部以外の第三の外縁部及び第四の外縁部における、前記導電シートが筒状に保持されたときに内側になる面に接合され、前記導電シートの面から突起した凸部を形成する金属部材からなる滑り止め部材をさらに備える。
【0017】
本発明の第
5の態様に係る電磁シールド具は、
第1の態様又は第2の態様に係る電磁シールド具の一態様である。第
5の態様に係る電磁シールド具において、前記筒状保持部材は、金属部材からなり、前記導電シートの四方の外縁部のうちの前記第一の外縁部及び前記第二の外縁部以外の第三の外縁部及び第四の外縁部各々に沿う状態で前記導電シートと接合され、端部が連結されることにより環状に形成される2組のブラケット部材である。そして、2組の前記ブラケット部材は、前記導電シートの前記第三の外縁部及び前記第四の外縁部各々を環状に保持することによって前記導電シートを筒状に保持する。
【0018】
また、本発明は、電線と、その電線の周囲を囲う第1の態様から第
5の態様のいずれか1つに係る電磁シールド具と、を備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る電磁シールド具は、柔軟性を有する導電シートが、その2つの外縁部が合わさる状態で筒状に保持されることによって電線の周囲を囲む。このように、第1の態様に係る電磁シールド具は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線及び支持体に対する後付けが可能である。
【0020】
また、導電シートが、例えば金属布のように、電線の経路に応じて変形可能な柔軟性を有すればなお好適である。この場合、第1の態様に係る電磁シールド具は、曲がった経路に沿う電線の周囲を覆うことも可能であり、敷設の自由度が高い。
【0021】
ところで、柔軟性を有する導電シートは、筒状に保持された状態で曲げられると、曲げ部の内側の部分が中空部側へ凹み、曲げ部が扁平な形状になる。この場合、電線の太さに対して余裕度の高い幅寸法の導電シートの採用が必要となる。なお、導電シートの幅は、電線の周囲を囲む筒状の導電シートの周長に相当する。
【0022】
さらに、第
1の態様によれば、筒状に保持された導電シートは、並列スリット群が形成された部分において、扁平な形状への変形が小さな状態で曲げることができる。即ち、筒状に保持された導電シートは、曲がった経路に沿って敷設される場合、曲げ部の内側の部分において、複数のスリットの間の部分が、外周面側へ隆起するように曲がる。そのため、導電シートの曲げ部において、導電シートの扁平な形状への変形が抑制される。その結果、電磁シールド具が、曲がった経路に沿って敷設される場合であっても、導電シートの大型化を要することなく、電線の電磁シールドが可能となる。
【0023】
また、第
2の態様によれば、並列スリット群が、導電シートの複数の箇所に形成されているため、筒状に保持された導電シートを、扁平な形状への変形が小さな状態で複数の箇所において曲げることが可能となる。
【0025】
また、第
3の態様に係る電磁シールド具において、導電シートは、2つの外縁部が連結されることにより筒状に保持される。この場合、導電シートが形成する筒の端部の開口形状は、導電シートの柔軟性によって自由に変化可能である。そのため、第
3の態様に係る電磁シールド具は、筒状の導電シートの開口部が被せられる支持体の形状への適応性に優れている。
【0026】
また、第
4の態様によれば、筒状の導電シートの開口部が、支持体に対してかしめリングによって固定される場合に、滑り止め部材の作用により、導電シートが支持体から滑って外れる問題が生じにくい。
【0027】
また、第
5の態様に係る電磁シールド具によれば、2組のブラケット部材各々が環状に保持されることにより、外縁部において2組のブラケット部材各々と接合された導電シートは、電線の周囲を囲む筒状に形成される。
【0028】
第
5の態様に係る電磁シールド具において、2組のブラケット部材は、金属製の支持体の外周面に接する状態で環状に保持されることにより支持体に固定される部材である。また、ブラケット部材は、導電シートと筐体との電気的接続を中継し、導電シートは、2組のブラケット部材を介して筐体と電気的に接続され、筐体接地の状態となる。
【0029】
即ち、第
5の態様において、2組のブラケット部材は、導電シートを筒状に保持する役割と、導電シートと支持体との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、第
5の態様に係る電磁シールド具が採用された場合、従来の編組線及びかしめリングの採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
【0030】
また、本発明に係るワイヤハーネスが採用されることにより、第1の態様に係る電磁シールド具について述べた効果と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態に係る電磁シールド具は、車両に搭載されるワイヤハーネスの電線に取り付けられ、電線の周囲を囲む導電性の導電シートによりノイズ電磁波を遮蔽する電装部品である。
【0033】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電磁シールド具1及び本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス100の構成について説明する。
【0034】
図1に示されるように、電磁シールド具1は、複数のスリット30が形成された導電シート3と、外縁部連結部材5と、滑り止め部材4と、により構成されている。
【0035】
また、
図3及び
図4に示されるように、ワイヤハーネス100は、複数の電線9と、複数の電線9の周囲を一括して囲う電磁シールド具1とを備える。
【0036】
<電線>
電線9は、導電材料からなる芯線と、芯線の周囲を覆う絶縁材料からなる絶縁被覆とにより構成された絶縁電線である。通常、電線9の端部の芯線には、不図示の金属端子が接続されている。また、ワイヤハーネス100は、複数の電線9の端部を一定の位置関係で保持するとともに、複数の電線9相互間を電気的に絶縁する樹脂材料からなる不図示の電線群保持部材を備える場合もある。なお、
図1及び
図2において、電線9は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0037】
<導電シート>
電磁シールド具1を構成する導電シート3は、筒状に変形可能な柔軟性を有するシート状の導電性部材である。導電シート3は、例えば、金属布又は金属製の薄い板材などである。
【0038】
なお、金属布は、金属糸の織物である。金属布は、例えば銅を主成分とする金属の糸が縦方向及び横方向に交差して織られた網目構造を有する生地である。また、金属布は、金属糸の生地に樹脂材料からなる柔軟性を有するフィルムが貼り付けられた構造を有する場合もある。金属布は、導電性及び柔軟性を有する。
【0039】
導電シート3は、電磁シールド具1の使用状態において、電線9を取り囲む筒状に保持される。以下の説明において、導電シート3の四方の外縁部それぞれのことを、第一外縁部31、第二外縁部32、第三外縁部33及び第四外縁部34と称する。また、第一外縁部31から第二の外縁部32へ向かう方向のことを第一方向と称し、第三外縁部33から第四外縁部34へ向かう方向のことを第二方向と称する。
【0040】
図1に示されるように、導電シート3は、電磁シールド具1の使用状態において、第一外縁部31及びその反対側の第二外縁部32が合わさる状態で筒状に保持される。第一外縁部31及び第二外縁部32は、導電シート3における電線9の周囲を囲む方向の両端部をなす外縁部であるともいえる。また、導電シート3において、第一方向は、電線9の周囲を取り囲む方向であるともいえる。また、導電シート3が電線9の周囲を取り囲む状態において、第二方向は、電線9の長手方向である。
【0041】
一方、第三外縁部33は、導電シート3の四方の外縁のうち、取り付け対象となる電線9の長手方向における一端をなす外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。第四外縁部34は、導電シート3における第三外縁部33に対し反対側の外縁から内側へ一定の範囲を占める部分である。
【0042】
導電シート3には、第一方向に交差する方向に沿うとともに第一方向において間隔を空けて並んで形成された複数のスリット30からなる並列スリット群300が形成されている。また、本実施形態の導電シート3には、複数組の並列スリット群300が第二方向において間隔を空けて並んで形成されている。
【0043】
本実施形態においては、複数のスリット30は、全て第二方向に沿って直線状に形成されている。従って、並列スリット群300各々において、複数のスリット30は、そのそれぞれが沿う方向(第二方向)に対して直交する方向(第一方向)において並んで形成されている。
【0044】
また、本実施形態においては、複数のスリット30は、第二方向において隣り合う並列スリット群300相互間において第一方向の位置が一致して形成されている。そのため、第二方向において隣り合うスリット30が繋がることを避けるため、複数組の並列スリット群300は、第二方向において間隔を空けて並んで形成されている。
【0045】
導電シート3のスリット30は、例えば、トムソン加工又は打ち抜き加工などによって形成される。スリット30が、凸状の金型(パンチ)と凹状の金型(ダイ)との間に導電シート3を挟み込む加工である打ち抜き加工によって形成される場合、導電シート3におけるスリット30の縁に、打ち抜き方向へ、即ち、凹状の金型側へ突起するバリが生じやすい。このバリは、電線9を傷つけるおそれがある。そのため、スリット30が打ち抜き加工により形成される場合、導電シート3は、スリット30の加工の際に凹状の金型が配置された側の面が外側面となるように、筒状にされることが望ましい。
【0046】
<外縁部連結部材>
外縁部連結部材5は、導電シート3における第一外縁部31と第二外縁部32とを連結する部材である。導電シート3は、第一外縁部31及び第二外縁部32が外縁部連結部材5によって連結されることにより、第一外縁部31と第二外縁部32とが合わさる状態で筒状に保持される。なお、外縁部連結部材5は、筒状保持部材の一例である。
【0047】
図1及び
図3に示される外縁部連結部材5は、導電シート3の第一外縁部31と第二外縁部32とを連結するかしめ金具である。導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32は、複数箇所において、複数の外縁部連結部材5により連結されている。また、
図2に示されるように、導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32には、複数のかしめ金具(外縁部連結部材5)が通される複数の貫通孔36が形成されている。
【0048】
<滑り止め部材>
電磁シールド具1は、2つの滑り止め部材4を備えている。2つの滑り止め部材4は、それぞれ導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34に接合された金属部材である。滑り止め部材4は、導電シート3が筒状に保持されたときに内側になる面に接合されている。滑り止め部材4は、導電シート3と電気的に導通した状態で導電シート3と接合されており、例えば、溶接によって導電シート3と接合されている。
【0049】
また、滑り止め部材4における導電シート3に接合された外側面に対し反対側の内側面には、複数の凸部41が形成されている。即ち、滑り止め部材4は、導電シート3の面から突起した凸部を形成する金属部材である。
【0050】
本実施形態において、滑り止め部材4は、筒状に変形可能な柔軟性を有する薄い金属板である。また、複数の凸部41は、薄い金属板に対するエンボス加工により形成されている。そのため、薄板状の滑り止め部材4の外側面には、複数の凸部41各々に対応する複数の凹みが形成されている。
【0051】
<筐体に対する電磁シールド具の固定の構造>
次に、
図1から
図4を参照しつつ、筐体8に対する電磁シールド具1の固定の構造について説明する。
【0052】
なお、
図3は、筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100の平面図である。
図4は、筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100の断面図である。
図4の断面図は、
図3に示されるIII−III平面での断面図である。また、
図2において、電線9及び筐体8は仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0053】
図2及び
図3に示されるように、ワイヤハーネス100の電線9は、金属製の筐体8の外部から筐体8の開口を経て筐体8内へ亘って配線される。また、筐体8における電線導入用の開口の縁には、その開口を取り囲む金属製のシールド枠部81が形成されている。
【0054】
また、
図3及び
図4に示されるように、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部のうちの一方は、かしめリング6により、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定される。同様に、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部のうちの他方は、かしめリング6により、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定される。
【0055】
より具体的には、導電シート3の外縁部の連結がなされる前に、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34が、滑り止め部材4を内側にして、2つの筐体8各々のシールド枠部81に被せられる。その際、薄板状の滑り止め部材4が、シールド枠部81の外周面に沿って曲げられ、これにより、導電シート3全体が、電線9における2つの筐体8に亘る部分の周囲を囲む筒状になる。
【0056】
なお、
図1及
び図4に示される例では、導電シート3は、円筒状に形成されている。しかしながら、筒状に保持された導電シート3における第三外縁部33及び第四外縁部34の形状は、それらの固定先である筐体8のシールド枠部81の形状により異なる。
【0057】
また、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34が被せられる対象は、筐体8のシールド枠部81の他、電線9が通された金属製の電線保護パイプなどの他の支持体であることも考えられる。
【0058】
次に、導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32が、外縁部連結部材5により連結される。本実施形態においては、かしめ金具を構成する一対の金具の一方が、導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32に形成された貫通孔36に通され、さらに、それら一対の金具が、重なった第一外縁部31及び第二外縁部32を挟み込む状態で、かしめ工具により結合される。これにより、導電シート3は、第一外縁部31と第二外縁部とが合わさる状態で筒状に保持される。
【0059】
さらに、2つの筐体8各々のシールド枠部81に被せられた導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34が、かしめリング6によってシールド枠部81に固定される。かしめリング6は、両端部が合わせられることにより環状に形成される金属部材である。
【0060】
かしめリング6は、両端部に形成された連結部61がネジ71及びナット部材72で連結されることにより、シールド枠部81に被せられた導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34各々を外側から締め付ける状態で、環状に保持される。これにより、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34は、かしめリング6とシールド枠部81との間に挟み込まれる状態で、シールド枠部81に固定される。
【0061】
また、滑り止め部材4は、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34とシールド枠部81との間に挟み込まれる。その状態において、滑り止め部材4の複数の凸部41が、シールド枠部81の外側面に強く押し当たる。即ち、かしめリング6がシールド枠部81を締め付ける力は、複数の凸部41の頭頂部分に集中する。
【0062】
導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34が、2つの筐体8各々のシールド枠部81に固定された状態において、2つの滑り止め部材4と2つの筐体8各々とは電気的に接続される。そのため、2つの滑り止め部材4各々と接合された導電性の導電シート3も、2つの筐体8各々に対して電気的に接続される。
【0063】
導電シート3は、電線9の周囲を囲む状態で、筐体8と電気的に接続されることにより、電線9に向かう、或いは電線9から発生するノイズ電磁波を遮蔽する。
【0064】
<導電シートの曲げ構造>
次に、
図5を参照しつつ、導電シート3の曲げ構造について説明する。
図5は、曲がった経路に沿って敷設された電磁シールド具1の導電シート3の部分の平面図である。
【0065】
導電シート3のように柔軟性を有するシート状の部材は、筒状に保持された状態で曲げられると、曲げ部の内側の部分が中空部側へ凹み、曲げ部が扁平な形状になる。この場合、電線9の太さに対して余裕度の高い幅寸法の導電シートの採用が必要となる。なお、導電シートの幅は、電線9の周囲を囲む筒状の導電シートの周長に相当する。
【0066】
一方、電磁シールド具1においては、筒状に保持された導電シート3は、並列スリット群300が形成された部分において、扁平な形状への変形が小さな状態で曲げることができる。
【0067】
即ち、
図5に示されるように、筒状に保持された導電シート3は、曲がった経路に沿って敷設される場合、曲げ部の内側の部分において、複数のスリット30の間の部分が、外周面側へ隆起するように曲がる。そのため、導電シート3の曲げ部において、導電シート3の扁平な形状への変形が抑制される。
【0068】
<効果>
電磁シールド具1は、柔軟性を有する導電シート3が、第一外縁部31及び第二外縁部32が合わさる状態で筒状に保持されることによって電線9の周囲を囲む。このように、電磁シールド具1は、予め筒状に形成された部材ではないため、電線9及びシールド枠部81(支持体)に対する後付けが可能である。
【0069】
より具体的には、電磁シールド具1は、端部にコネクタなどが取り付けられた後の電線9に対して装着されることが可能であるとともに、筐体8の外から内への配線が行われた後の電線9に対して装着されることも可能である。
【0070】
また、電磁シールド具1においては、電線9の周囲を囲うために過不足のない大きさの導電シート3が採用されれば良い。そのため、電磁シールド具1の採用にあたり、配設スペース、重量及び製造コストの増大を伴うこともない。
【0071】
また、導電シート3が、金属布のように電線9の経路に応じて変形自在な柔軟性を有すれば、電磁シールド具1は、曲がった経路に沿う電線9の周囲を覆うことも可能であり、敷設の自由度が高い。
【0072】
特に、電磁シールド具1の導電シート3は、
図5に示されるように、並列スリット群300が形成された部分において、扁平な形状への変形が小さな状態で曲げることができる。そのため、導電シート3の曲げ部において、導電シート3の扁平な形状への変形が抑制される。その結果、電磁シールド具1が、曲がった経路に沿って敷設される場合であっても、導電シート3の大型化を要することなく、電線9の電磁シールドが可能となる。
【0073】
また、電磁シールド具1においては、複数組の並列スリット群300が、導電シート3の複数の箇所に形成されているため、筒状に保持された導電シート3を、扁平な形状への変形が小さな状態で複数の箇所において曲げることが可能となる。その結果、電磁シールド具1を複数箇所で曲がった経路に沿って敷設することも可能となり、敷設経路の自由度がより高まる。
【0074】
また、電磁シールド具1において、導電シート3は、2つの外縁部が連結されることにより筒状に保持される。この場合、導電シート3が形成する筒の端部の開口形状は、導電シート3及び滑り止め部材4の柔軟性によって自由に変化可能である。そのため、電磁シールド具1は、筒状の導電シート3の開口部が被せられるシールド枠部81などの支持体の形状への適応性に優れている。
【0075】
ところで、金属布の表面は、編組線の表面と同様に、金属の細線により形成される微小な凹凸面であるため、摩擦抵抗が非常に小さい。金属布のように摩擦抵抗の小さな導電シート3が採用された場合、導電性シート3は、筐体のシールド枠部81とかしめ金具などの他の固定部材との間に挟み込まれて固定されると、シールド枠部81から滑って外れやすい。
【0076】
一方、電磁シールド具1において、導電シート3と滑り止め部材4とは予め溶接などにより接合されている。さらに、滑り止め部材4に形成された複数の凸部41の作用により、滑り止め部材4とシールド枠部81との摩擦抵抗が高まる。これにより、電磁シールド具1が筐体8のシールド枠部81から滑って外れるという不具合の発生を抑制できる。
【0077】
なお、
図4には示されていないが、かしめリング6の内側面にも、かしめリング6と導電シート3との摩擦抵抗を高めるための凸部が形成されることが望ましい。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図6及び
図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電磁シールド具1A及びそれを備えるワイヤハーネス100Aについて説明する。電磁シールド具1Aは、
図1から
図5に示された電磁シールド具1と比較して、導電シート3における複数組の並列スリット群300相互間のスリット30の位置関係のみが異なる。
【0079】
なお、
図6は、電磁シールド具1Aの平面図である。また、
図7は、ワイヤハーネス100A及びそれが取り付けられた筐体8の平面図である。また、
図6において、電線9及び筐体8が仮想線(二点鎖線)により描かれている。また、
図6及び
図7において、
図1から
図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Aにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0080】
図6及び
図7に示されるように、電磁シールド具1Aの導電シート3は、電磁シールド具1の導電シート3と同様に、複数組の並列スリット群300が形成されている。但し、電磁シールド具1Aにおいて、導電シート3の複数のスリット30は、第二方向において隣り合う並列スリット群300相互間において第一方向の位置がずれて形成されている。
【0081】
なお、前述したように、第一方向は、導電シート3における第一外縁部31から第二外縁部32へ向かう方向であり、第二方向は、導電シート3における第三外縁部33から第四外縁部34へ向かう方向である。
【0082】
電磁シールド具1Aが採用される場合、電磁シールド具1が採用される場合と同様の作用及び効果が得られる。さらに、電磁シールド具1Aの導電シート3においては、隣り合う並列スリット群300相互間においてスリット30が繋がらないようにしつつ、複数組の並列スリット群300を近接して形成することが可能となる。
【0083】
従って、電磁シールド具1Aが採用されれば、筒状に保持された導電シート3を、近接した複数の箇所において、扁平な形状への変形が小さな状態で曲げることが可能となる。その結果、電磁シールド具1Aは、より複雑に曲がった経路に沿って敷設することが可能であり、敷設経路の自由度がより高まる。
【0084】
<第3実施形態>
次に、
図8から
図12を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電磁シールド具1B及び本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス100Bの構成について説明する。
【0085】
図8は電磁シールド具1Bの斜視図である。
図9は電磁シールド具1Bの正面図である。
図10はワイヤハーネス100Bの平面図である。
図11は筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100Bの平面図である。
図12は筐体8に取り付けられた状態のワイヤハーネス100Bの断面図である。また、
図8及び
図9において、電線9が仮想線(二点鎖線)により描かれている。また、
図12の断面図は、
図11に示されるII−II平面での断面図である。
【0086】
図8から
図12において、
図1から
図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Bにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0087】
図8に示されるように、電磁シールド具1Bは、2つのブラケット部材2と、2つのブラケット部材2各々と接合された導電シート3と、により構成されている。また、
図10に示されるように、ワイヤハーネス100Bは、複数の電線9と、複数の電線9の周囲を一括して覆う電磁シールド具1Bとを備える。
【0088】
電磁シールド具1Bにおいて、2つのブラケット部材2のうちの一方は、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定され、2つのブラケット部材2のうちの他方は、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定される。2つのブラケット部材2各々は、その端部がネジ7で連結されることにより、金属製の筐体8のシールド枠部81に固定される。
【0089】
電磁シールド具1Bは、
図1から
図5に示された電磁シールド具1と比較して、導電シート3を筒状に保持する構造、及び導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34を支持体に固定する構造が異なる。以下、電磁シールド具1Bにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0090】
<ブラケット部材>
電磁シールド具1Bにおいて、ブラケット部材2は、導電性材料からなる曲がった板状の部材である。ブラケット部材2は、例えば、銅の合金、鉄、アルミニウム又はステンレスなどの金属の部材であり、必要に応じて表面にメッキ層が形成されている。ブラケット部材2は、金属製の筐体8のシールド枠部81に固定され、導電シート3と筐体8との電気的接続を中継する部材である。
【0091】
図8及び
図9に示されるように、ブラケット部材2は、2つの長尺部10と、それらの一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10各々の他端に繋がる2つの庇部20とにより構成されている。
【0092】
<ブラケット部材:長尺部>
2つの長尺部10各々は、曲がった板状の部分であり、磁気シールドの対象となる複数の電線9を跨いで架け渡される半環状に形成されている。そして、2つの長尺部10は、電線9の両側から相互に組み合わされることによって電線9の周囲を囲む環状に形成される。
【0093】
図8に示される例では、各長尺部10は、電線9を横断する中間部分が平坦な板状に形成されている。しかしながら、各長尺部10の形状は、固定先である筐体8のシールド枠部81の形状により異なる。
【0094】
また、2つの長尺部10は、導電シート3の外縁部に沿って直列に並ぶ状態で導電シート3と接合されている。導電シート3と長尺部10とは、例えば、溶接により接合されている。2つのブラケット部材2のうちの一方における2つの長尺部10は、導電シート3の第三外縁部33に沿って直列に並ぶ状態で導電シート3に接合されている。また、2つのブラケット部材2のうちの他方における2つの長尺部10は、導電シート3の第四外縁部34に沿って直列に並ぶ状態で導電シート3に接合されている。
【0095】
本実施形態においては、2つの長尺部10は、後述する中継部19を介して折り返した経路に沿って形成されている。そのため、2つの長尺部10と接合された導電シート3は、2つの長尺部10により、中間部35において折り返された状態で保持されている。
【0096】
また、2つのブラケット部材2各々において、2つの長尺部10各々は、それらが相互に対向する側の反対側の外側面において導電シート3と接合されている。一方、2つの長尺部10各々における相互に対向する側の内側面には、複数の凸部11が形成されている。
【0097】
複数の凸部11は、エンボス加工により形成されている。そのため、2つの長尺部10各々の外側面には、複数の凸部11各々に対応する複数の凹み11xが形成されている。本実施形態において、2つのブラケット部材2は、導電シート3における第三外縁部33及び第四外縁部34の面から突起した凸部を形成する金属の滑り止め部材を兼ねている。
【0098】
<ブラケット部材:中継部>
また、中継部19は、折り返された板状の部分であり、2つの長尺部10各々の一端に連なって形成されている。即ち、2つの長尺部10及び中継部19は、一連の部材で構成されている。
【0099】
中継部19は、折り返しの角度が変化する方向において可撓性を有している。
図2に示されるように、中継部19の可撓性により、2つの長尺部10は、中継部19を支点として相対的に回動可能である。これにより、ブラケット部材2は、それら各々の端部が離隔して内側が開放された開状態と、それら各々の端部が接する閉状態とに変形可能である。
【0100】
図9において、開状態のブラケット部材2が実線で描かれており、閉状態のブラケット部材2が仮想線(二点鎖線)で描かれている。2つのブラケット部材2各々が開状態となることにより、2つのブラケット部材2と接合された導電シート3も、第一外縁部31及び第二外縁部32が離隔した開状態となる。また、2つのブラケット部材2各々が閉状態となることにより、2つのブラケット部材2と接合された導電シート3は、第一外縁部31と第二外縁部32とが合わさる状態で筒状に保持される。
【0101】
即ち、2つのブラケット部材2は、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34各々に沿う状態で導電シート3と接合され、端部が連結されることにより環状に形成される。そして、2つのブラケット部材2は、導電シート3の第三外縁部33及び第四外縁部34各々を環状に保持することによって導電シート3を筒状に保持する。なお、2つのブラケット部材2は、筒状保持部材の一例である。
【0102】
導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32は、2つの長尺部10各々の端からわずかにはみ出して形成されている。そのため、2つのブラケット部材2が閉状態となることにより、導電シート3の第一外縁部31及び第二外縁部32は、ほぼ隙間なく接する。これにより、導電シート3は、ほぼ隙間のない筒状になる。
【0103】
<ブラケット部材:庇部>
2つの庇部20各々は、2つの長尺部10各々の他端に連なり、2つの長尺部10各々から側方へ張り出して形成された平坦な板状の部分である。
【0104】
従って、ブラケット部材2は、2つの長尺部10と、それらの一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10各々の他端に連なる2つの庇部20とが形成された一連の金属部材である。即ち、2つの長尺部10は、それらの一端を繋ぎ可撓性を有する中継部19、及び2つの長尺部10各々の他端に連なる2つの庇部20とともに一連の金属部材により構成されている。
【0105】
2つの長尺部10が環状に組み合わされた状態において、2つの庇部20は重なる。また、2つの庇部20各々には、それらが重なった状態において連通する貫通孔であり、ネジ7が装着されるネジ孔21が形成されている。
【0106】
ブラケット部材2は、2つの庇部20が重ねられることによって環状に形成される。また、重ねられた2つの庇部20は、ネジ7が装着されることによって合体した状態に保持される。これにより、2つの長尺部10各々の端部どうしが連結され、2つの長尺部10は環状に保持される。
【0107】
2つの庇部20各々におけるネジ孔21の内縁部には、ネジ7と螺合するネジ山が形成されていることが望ましい。これにより、ネジ7を庇部20に対して直接締め付けることが可能となり、2つの庇部20を合体させるためのナット部材が必要でなくなる。
【0108】
もちろん、2つの長尺部10を環状に保持する固定具が、貫通孔が形成された2つの庇部20、ネジ7及びネジ7が締め付けられるナット部材により構成されてもよい。この場合、ナット部材が、重なる2つの庇部20の一方に予め溶接などにより固着されていることも考えられる。
【0109】
以上に示されるように、2つのブラケット部材2各々は、2つの長尺部10と、2つの長尺部10の一端を繋ぐ中継部19と、2つの長尺部10の端部における連結される部分である庇部20と、を備える。そして、2つのブラケット部材2各々は、導電シート3における四方の外縁部のうちの第三外縁部33及びその反対側の第四外縁部34各々を電線9の周囲を囲む環状に保持する。
【0110】
<筐体に対する電磁シールド具の固定の構造>
次に、主として
図11及び
図12を参照しつつ、筐体8に対する電磁シールド具1の固定の構造について説明する。
【0111】
図11及び
図12に示されるように、2つのブラケット部材2のうちの一方は、電線9の一方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定され、2つのブラケット部材2のうちの他方は、電線9の他方の端部が接続される機器を収容する筐体8のシールド枠部81に固定される。
【0112】
より具体的には、まず、開状態にされた2つのブラケット部材2各々が、2つの筐体8各々のシールド枠部81の外側に被せられるとともに、同じく開状態(非筒状体)の導電シート3が、電線9における2つの筐体8に亘る部分に被せられる。
【0113】
次に、2つのブラケット部材2各々が、シールド枠部81の外側において閉状態にされる。これにより、2つのブラケット部材2各々において、2つの長尺部10はシールド枠部81を挟み込み、導電シート3は電線9の周囲を囲う筒状となる。このとき、2つの長尺部10の複数の凸部11が、シールド枠部81の外側面に強く押し当たる。即ち、2つの長尺部10がシールド枠部81を挟み込む力は、複数の凸部11の頭頂部分に集中する。
【0114】
最後に、2つのネジ7各々が、2つのブラケット部材2各々において重なった2つの庇部20のネジ孔21に挿入され、2つの庇部20が、ネジ7によって重なった状態に保持される。これにより、2つのブラケット部材2各々は、閉状態に保持され、シールド枠部81に固定される。
【0115】
2つのブラケット部材2各々が、2つの筐体8各々のシールド枠部81に固定された状態において、2つのブラケット部材2各々と2つの筐体8各々とは電気的に接続される。そのため、2つのブラケット部材2各々と接合された導電性の導電シート3も、2つの筐体8各々に対して電気的に接続される。
【0116】
導電シート3は、電線9の周囲を囲む状態で、筐体8と電気的に接続されることにより、電線9に向かう、或いは電線9から発生するノイズ電磁波を遮蔽する。
【0117】
<効果>
電磁シールド具1Bが採用されることにより、電磁シールド具1が採用される場合と同様の効果が得られる。但し、電磁シールド具1Bにおいて、2つのブラケット部材2は、筐体8のシールド枠部81などの支持体の形状に合致する形状で予め成形されることが望ましい。
【0118】
また、電磁シールド具1Bにおいて、2つのブラケット部材2は、導電シート3を筒状に保持する役割と、導電シート3と筐体8のシールド枠部81との電気的な接続を維持する役割とを果たす。従って、電磁シールド具1Bが採用された場合、かしめ金具の採用によって複数の部材が取り扱われる場合に比べ、部品の管理及び取り扱いの工数が簡素化される。
【0119】
また、電磁シールド具1Bにおいて、導電シート3と2つのブラケット部材2の長尺部10とは予め接合されている。そのため、2つのブラケット部材2を、導電シート3を介さずに、シールド枠部81に対して直接固定することが可能である。従って、電磁シールド具1Bが筐体8のシールド枠部81から外れるという不具合は生じにくい。
【0120】
また、電磁シールド具1Bにおいては、長尺部10の内側面に形成された複数の凸部11の作用により、長尺部10とシールド枠部81との摩擦抵抗が高まり、ひいてはシールド枠部81に対するブラケット部材2の保持力が強まる。これにより、電磁シールド具1Bが筐体8のシールド枠部81から外れるという不具合の発生をさらに抑制できる。
【0121】
また、電磁シールド具1Bにおいては、2つのブラケット部材2各々における2つの長尺部10は、中継部19とともに一連の部材で構成されている。そのため、電磁シールド具1Bが採用された場合、2つの長尺部10がそれぞれ別部材である場合よりも部品点数が減少する。そのため、筐体8への取り付けの工数を低減することができる。
【0122】
また、電磁シールド具1Bにおいて、導電シート3は、長尺部10の外側面に接合されるため、長尺部10と筐体8のシールド枠部81との間に挟まれることがない。そのため、導電シート3の挟み込み防止のために、長尺部10において、シールド枠部81に接触する部分と、導電シート3と接合される部分とが、分離して形成される必要はない。従って、長尺部10(ブラケット部材2)の小型化が可能となる。
【0123】
<第4実施形態>
次に、
図13を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係る電磁シールド具1Cについて説明する。この電磁シールド具1Cは、
図1から
図5に示された電磁シールド具1と比較して、導電シート3に、並列スリット群300を横断する折り目301が予め形成されている点において異なる。
図13において、
図1から
図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド具1Cにおける電磁シールド具1と異なる点についてのみ説明する。
【0124】
図13に示されるように、導電シート3の折り目301は、並列スリット群300における複数のスリット30各々の間の部分が、筒状にされた導電シート3の外側面において隆起して屈曲することによって形成された稜線をなし、並列スリット群300を横断して形成されている。本実施形態においては、導電シート3の折り目301は、第一方向に沿って並列スリット群300を横断して形成されている。
【0125】
図5に示したように、導電シート3は、曲がった経路に沿って敷設される場合、曲げ部の内側の部分において、複数のスリット30の間の部分が、外周面側へ隆起するように曲がる。電磁シールド具1Cにおいて、導電シート3における折り目301は、複数のスリット30の間の部分が、外周面側へ隆起するように曲がりやすいようにするために形成されている。
【0126】
図13に示される電磁シールド具1Cが採用されることにより、導電シート3を曲がった経路に沿って変形させることがさらに容易となる。
【0127】
<その他>
電磁シールド具1,1A,1B,1Cにおいては、導電シート3における複数のスリット30は、全て第二方向に沿って直線状に形成されている。しかしながら、複数のスリット30が、第二方向に対して傾斜した方向に沿って形成されることも考えられる。
【0128】
また、導電シート3における並列スリット群300は、導電シート3の第二方向における1箇所にのみ形成されることも考えられる。また、電磁シールド具1,1A,1Bにおいては、並列スリット群300は、導電シート3における第一方向のほぼ全体に亘る範囲に形成されている。
【0129】
しかしながら、導電シート3の曲げ方向が1つの方向に限られている場合には、並列スリット群300が、導電シート3における第一方向の一部を占める範囲にのみ形成されることも考えられる。この場合、並列スリット群300は、筒状の導電シート3の曲げ部の内側の部分に形成されていればよい。
【0130】
また、電磁シールド具1,1A,1Cにおいて、滑り止め部材4が、導電シート3における第三外縁部33及び第四外縁部34の表面に溶接などにより接合された複数の粒状の金属部材で構成されていてもよい。そのような粒状の金属部材も、導電シート3における第三外縁部33及び第四外縁部34の面から突起した凸部を形成する。
【0131】
また、電磁シールド具1Bにおいて、2つのブラケット部材2各々が、相互に組み合わされることによって環状に形成される2つの金属部材で構成されることも考えられる。例えば、ブラケット部材2が、2つの半環状の金属部材により構成されることが考えられる。この場合、半環状の金属部材は、1つの長尺部10とその両端に形成された2つの庇部20とにより構成される。
【0132】
また、電磁シールド具1,1A,1B,1Cにおいて、スリット30が形成されていない導電シート3が採用されることも考えられる。この場合も、導電シート3が柔軟性を有するため、電磁シールド具1は、曲がった経路に沿う電線9の周囲を囲むことができる。