(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイドブーム下降機能による旋回外側のサイドブーム(44)の下降を行うための前記所定時間を変更可能な下降時間変更手段(140)を設けたことを特徴とする請求項1記載の薬剤散布作業車。
前記制御装置(100)は、前記サイドブーム上昇機能による旋回外側のサイドブーム(44)の上昇開始後、一旦前記操舵角検出手段(7)による操舵角(θ)が第3の所定角度以下になった場合に、旋回途中の直進走行と判定して前記サイドブーム下降機能を有効にするサイドブーム下降有効機能を設けたことを特徴とする請求項1記載の薬剤散布作業車。
前記サイドブーム上昇機能における第1の所定角度と前記サイドブーム下降機能における第2の所定角度は異なる角度であることを特徴とする請求項1記載の薬剤散布作業車。
前記制御装置(100)に、旋回開始前及び旋回終了後の直進走行と判定する前記操舵角検出手段(7)による操舵角(θ)の中立判定角度と、旋回走行と判定する前記サイドブーム上昇機能における第1の所定角度及び前記サイドブーム下降機能における第2の所定角度とを記憶する判定角度記憶手段(102)を設け、
前記サイドブーム下降有効機能における第3の所定角度は、制御装置(100)に記憶されている前記中立判定角度よりも大きく、前記第1の所定角度及び前記第2の所定角度よりも小さい角度であることを特徴とする請求項3記載の薬剤散布作業車。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬剤散布装置を前部に取り付けた薬剤散布作業車の側面図を示し、
図2には
図1の薬剤散布作業車の平面図を示す。なお、本明細書では薬剤散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0021】
薬剤散布作業車の車体(車体フレーム)1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ65が車体1の操縦席17の下方に設けられている。
【0022】
操縦席17の左側下方でフロア54の上方に位置する薬液タンク18の左側部には、オペレータ(作業者)一人が乗り降りできる程度の凹部Sが設けられ、該凹部Sの底面にタンク側ステップ50が設けられている。タンク側ステップ50の外側下方には、本機側ステップ53が設けられている。この本機側ステップ53は、上面53Aが、フロア54と薬液タンク18の底面とほぼ同一高さとなる位置にある。
【0023】
本機側ステップ53の下方には、フロア54から吊り下げ式に設置された梯子部材55が設けられている。梯子部材55は任意の段数、例えば2段のステップを有している。これらの梯子部材55、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50は所定の間隔で配置されている。このような構成によりオペレータは、梯子部材55のステップ、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50を順に登ることにより、安全かつ容易に操縦席17に到達して乗車できる。
【0024】
本機のフロア54に薬液タンク18を搭載する自走型薬剤散布作業車において、薬液タンク18は本機ダッシュパネル56付近まで前方に突出している。一方、薬液タンク18は上面視でオペレータの足元まで完全に覆い囲った略コの字状の構造を有している。このような構造により薬液タンク18の高さを増加させずにタンク容量を増大させると共に後進時の見通しを確保できる。また、薬液タンク18を前方に長くすることにより、薬液タンク18内の水量の変位による機体の重心移動を小さく抑え、薬剤散布作業時の機体バランスを安定させ、走行性能を高めることができ、機体が後傾して沈没するという事態を回避できる。
なお、
図2では薬液タンク18の上面が略コの字形状の略直方体形状のものを図示しているが、これに限定されず、タンク側ステップ50を有する形状であれば任意の形状にすることができる。
薬液タンク18の先端部形状は、フロア54のフロントに上方へ浮き上がるように湾曲させた傾斜部51と密着するように形成されている。従って、薬液タンク18を後方から前方へ移動させて傾斜部51で合致させて止めることができる。このような構造により前輪12の横揺れ等によるタイヤと薬液タンク18の干渉を防止でき、薬液タンク18の本機のフロア54上での接地性を高め、タンク18の安定性を高めることができる。
【0025】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬剤散布高さを調節することができる。
【0026】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びる支持枠21を取り付けている。この支持枠21には散布ブーム19の内のセンターブーム43がその前面に取り付けられており、またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ29の上端が取り付けられ、その下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。したがって、上下シリンダ29の伸縮によりサイドブーム44が昇降される。なお、サイドブーム44は機体の両サイドに収納されるときはサイドブーム受け40で機体に支持される。
【0027】
前記散布ブーム19は、センターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44とから構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a,45b)が一定間隔で配置されている。
サイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介してセンターブーム43に取り付けられているが、サイドブーム44はセンターブーム43に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。開閉シリンダ30は電気的に作動するギヤードモータ31(
図2)によって伸縮される。サイドブーム44の開閉角度は開閉シリンダ30の基部に設けたブーム角度右センサ138aとブーム角度左センサ138b(
図4)によって検出される。
また、サイドブーム44は図示しない装置によって長手方向に伸縮可能である。
【0028】
図3には、
図1の薬剤散布作業車に設ける防除用コントローラパネル120の平面図を示す。
図3(a)には、表示部が小さめのコントローラパネル120を示す。
図3(a)に示すように、ボンネット15の上部に設けたコントローラパネル120には、中央上部のディスプレイ(表示部)122の左側に、上位から散布設定123、圧力124、流量125、流量累計126等の表示部が表示されていて、複数の異なる散布条件を表示する構成である。ディスプレイ122の左端部に点灯されるインジケータ(三角マーク)122aによって、このディスプレイ122に表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ122の右側には表示切換用の表示切換ボタン128が設けられている。
【0029】
また、これらの下方には、散布条件に基づいて自動的に薬剤を散布する自動薬剤散布モードを設定するための自動スイッチ129が設けられ、この自動スイッチ129を押して自動の散布制御を行うとき(自動スイッチ129がオンのとき)は、パイロットランプ130が点灯する。この状態で、もう一度自動スイッチ129を押すと、パイロットランプ130が消灯して、手動で薬剤を散布する手動薬剤散布モードに切り換わる。手動散布では、防除ポンプ65の入り切りはポンプスイッチ8(
図4)の入り切りにより行う。また、手動散布では、停車中でも散布することができる。更に、散布設定スイッチ131、増減ボタンスイッチ132、133、累計リセットスイッチ134等が配置されている。
【0030】
なお、
図3(b)に示すように、表示部が大きめのコントローラパネル120を採用しても良い。
図3(a)は一つずつの表示タイプであるが、
図3(b)はディスプレイ122に一括表示するタイプであり、
図3(a)に示すディスプレイ122とは違って、圃場番号、圃場面積、散布薬剤の種類、設定散布量、散布圧力、累計値が一つの画面に表示されるため、見やすく、分かりやすい。また、散布量スイッチ136を押すと薬剤の散布量を変更でき、圧力スイッチ137を押すと散布圧力を変更できる。
【0031】
そして、オペレータによって自動スイッチ129が押されて自動制御が選択されると(自動スイッチ129を入りにする)、後述する車速センサ6等からの信号により散布(防除ポンプ65)の入り切りを行う。
また、この薬剤散布作業車は、サイドブーム44,44を自動的に水平(水準器による水平)に動作させるための自動水平制御機能を有する制御装置100を備えている。ここで自動水平制御動作とは、開閉シリンダ30,30によりサイドブーム44,44をセンターブーム43の延長線上の水平方向(機体の進行方向に向かって左右方向)に開き、さらに上下シリンダ29,29であるローリングシリンダを用いて、サイドブーム44,44が前記水平状態になるように制御することをいう。すなわち、機体が左右方向に傾斜してもサイドブーム44,44を水平に維持する制御である。サイドブーム44と一体で傾斜するリフトリンク3にサイドブーム44の傾斜を検出するリンク傾斜センサ82(
図4)が設けられている。
【0032】
機体が左右方向に傾斜するとリンク傾斜センサ82が傾斜の検出を開始するが、直ぐにリンク傾斜センサ82の傾斜が無くなる(0度検出)ように前記上下シリンダ29,29を作動させてサイドブーム44を水平に維持する。もちろん、このとき機体は傾斜した状態である。なお、リンク傾斜センサ82にリンク傾斜角速度センサ83としての機能を設け、一個のセンサで両方の値を検出できるものとしても良い。リンク傾斜角速度センサ83を用いることで水平制御の精度が向上する。機体がゆっくり傾斜しているのか、又は加速度的に傾斜しているのかを見て、水平制御に反映させることができる。
【0033】
次に上記構成の薬剤散布作業車の制御部について説明する。
図4には、
図1の薬剤散布作業車の制御ブロック図を示す。
この制御ブロック図に示すように、制御装置(CPU)100には、薬剤散布作業車の車速を検出する車速センサ(車速検出手段)6、ステアリングハンドル14の回転操作に連動する左右の前輪12,12の操舵角θを検出する操舵角センサ(操舵角検出手段)7、薬剤散布の入り・切り用のポンプスイッチ(ポンプスイッチセンサ)8、ブーム昇降用の上下シリンダ29,29のストロークセンサ9、薬液の散布圧力を検出する圧力センサ11、薬液の流量を制御する流量制御弁73の弁開度センサ16、GPSアンテナ(受信機)81からの信号を受信する入力回路などが接続し、操舵装置(ハンドル14や車輪操舵用の油圧シリンダと該シリンダ作動用のソレノイド等からなる)のソレノイド(本実施例の薬剤散布作業車はFWS、4WS、RWSを装備しており、4輪全て油圧シリンダで動く構成である。)、昇降ソレノイド32(シリンダ29用)、水平ソレノイド34(開閉シリンダ30用)、ブザー36、表示部122への出力回路等が接続している。操舵角センサ7では旋回方向も検出され、旋回時に左右どちらのサイドブーム44を上昇させるかの判断に使用される。
【0034】
図5には、
図1の薬剤散布作業車の本機コントローラと防除機コントローラの構成図を示す。
図5に示すように、薬剤散布作業車(本機)のコントローラ100と薬液タンク18と薬剤散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(
図6)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、即ち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数から車速を検出する車速センサ6からも入力がある。
【0035】
本実施例の薬剤散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機Bにおいて、薬液濃度と車速等により薬剤散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。なお、前記GPS受信機81はGPSからの車両速度情報と位置情報を得ることができる。
【0036】
図6には、
図1の薬剤散布作業車の薬剤散布配管系統の構成図を示す。
また、この薬剤散布作業車は、薬液タンク18からの給水路(ホース)61に給水コック62を設け、該給水コック62より下流の給水路(ホース)61に設けたサクションフィルタ64の出口部に防除ポンプ65を設けている。該防除ポンプ65の出口部には吐水ホース66を接続し、該吐水ホース66の先端は薬液路67を介して噴霧コック69の設置部に接続している。前記吐水ホース66と薬液路67の間に上流側から順に安全弁70とエアチャンバー71と流量制御弁73と流量センサ74が設置されている。
【0037】
また、安全弁70の圧力設定部の吐水ホース66と薬液タンク18との間に余水ホース75が接続されている。前記安全弁70を開いておくと、吐水ホース66内の余分な薬液を薬液タンク18に還流させることができる。また、余水ホース75の設置部より上流側の吐水ホース66から分岐して薬液タンク18に接続した攪拌ホース79も設けられている。なお、流量制御弁73は
図4の制御ブロック図に示す流量制御モータ10により開度が制御される。
【0038】
薬液タンク18内の薬液は噴霧コック69を経由して前記センターブーム43,サイドブーム44に供給される。各ブーム43,44への薬液の単位面積(例えば10アール)当たりの供給量(A)は流量制御弁73で調整できる。
自動散布の場合は自動スイッチ129を入りにする。そして、車速センサ6が所定速度を検出すると防除ポンプ65を駆動し、車速に応じて流量制御弁73で流量を調整しながら薬液を散布する。機体が停止すると防除ポンプ65の駆動を停止する。なお、車速センサ6のみならず、以下のようなGPSに基づく第1車速(VG)と第2車速(Vs)の両方の車速に基づく制御でも良い。
【0039】
GPS受信機81からの速度データや位置データを本機コントローラ100で受信し、該速度、位置データを演算して車速算出手段5により速度を算出し、得られた値を速度信号に変換した後、防除機コントローラ101にシリアル通信で車速算出手段5による車速(第1車速(VG))として送信する。また、本機には車軸の回転数を車速パルスで計測する車速センサ6が設けられており、該車速センサ6からも車速(第2車速(Vs))を得ることができる。なお、車速センサ6はミッションケース(図示せず)の側壁ならどこに設けてもよい。こうしてGPS受信機81から得られる車速算出手段5に基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)を本機側のコントローラ100で計算し、CAN通信により防除機コントローラ101に速度データを送り、薬剤散布制御に利用する構成(薬剤散布機能)とする。
通常は、車両の発進直後と停止直前は車速センサ6に基づく第2車速(Vs)を車速とし、安定走行時にはGPSによる第1車速(VG)を車速とする場合が多い。
【0040】
ここで本実施例の薬剤散布の基本手順を説明する。
まず、オペレータが10アール当たりの散布量A(リットル/10アール)を決定し、次いで薬剤散布作業を開始すると、GPSに基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)がそれぞれ車速V(m/s)を検知する。そして、制御装置100,101が前記第1車速(VG)と第2車速(Vs)(以下、単に車速(VG)、車速(Vs)と言う。)の中のどちらかの車速又は両方の車速に基づく10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬液噴霧圧力を計算し、該計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させ、10アール当たりの薬剤散布量Aを設定して作業すれば、車速(VG,Vs)の変動があっても薬液流量が制御され、設定散布量通りに圃場に均一に薬液を散布できる。
【0041】
防除機コントローラ101に車速測定手段がなくても、防除機(薬剤散布装置)Bが連結される本機側の車速測定手段を用いて防除機Bでも車速(Vs)を測定することができるだけでなく、上記
図5に示す構成により、本実施例の防除機Bとは別の粉粒体肥料を散布する可変施肥装置等の薬剤散布装置(図示せず)に設けたコントローラを本機コントローラ100とは別に搭載している場合でも、可変施肥装置等の薬剤散布装置は、そのまま車速を使用することができる。
【0042】
図7には、
図1の薬剤散布作業車の薬剤散布制御のフローチャートを示す。
このとき得られる車速として
図7に示すように、前記GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行い、その平均化された車速を防除機Bの車速とすることができる。
【0043】
GPSで得られた車速算出手段5に基づく車速(VG)と本機の車速センサ6から得られる車速(Vs)の平均化を行う理由は、電波の受信が不安定な場合(厚い雨雲、雪雲、地形の影響(谷、山のふもと)など)及びGPSの電波の精度が変更される場合があるのでGPSで得られる車速が不安定となる恐れがある一方で、車輪のスリップ時などを除いて車速センサ6の信頼性が高いためである。GPSから得られた車速と車速センサ6で得られた車速(車速パルスを読み込んで車速を計算する)を平均化して求めた車速に基づき、圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した計算圧力値と実際の吐水ホース66の圧力Pが一致するように流量制御弁73を制御して、ブーム43,44のノズル45a,45bからの薬剤散布量を変化させることで、車速の変動があっても圃場10アール当たりの薬剤散布量Aを安定して散布することが可能となる。
【0044】
また、車速センサ6から得られた車速(Vs)が一定値(例えば0.3〜0.4m/s)以下のときは、GPSから得られた車速(VG)は防除機Bの薬剤散布量の算出用の制御に使用しないようにする。例えば、走行開始時の車速変化が不安定なときは、車速センサ6から得られた車速(Vs)を圃場10アール当たりの設定薬剤散布量Aに対応した薬剤散布圧力値の計算に利用して、GPSによる車速(VG)は利用しないようにすることで薬剤散布量の変動を抑えることができる。
【0045】
これは所定車速以下の低速での走行時には、GPSによる車速(VG)は車速センサ6による車速(Vs)よりも精度が悪くなるために、薬剤散布量が過剰になりすぎたり、逆に足りない状況が発生する。そこで、GPSによる車速(VG)を用いないで、車速センサ6による車速(Vs)を用いる。
なお、走行開始後に車速センサ6で得られた車速(Vs)が一定値(例えば0.3〜0.4m/s)を超えると、GPSによる車速(VG)に基づいて薬剤散布量を決めて散布を実行する。
【0046】
このように、本実施例の薬剤散布作業車は、GPS受信機81と車速センサ6から、それぞれ得られる速度情報を車速として設定散布量から設定圧力を計算し、車速と連動させてセンターブーム43とサイドブーム44から圃場に散布する薬液量を流量制御モータで駆動する開閉弁73の開度の調整をする構成を備えている。
【0047】
図8には畦畔で旋回走行中(左旋回時)の薬剤散布作業車の平面図を示す。薬剤散布作業車は作業時の直進走行(作業時の直進部(ロ))から旋回した後、一旦直進走行し(旋回時の直進部(イ))、再び旋回した後、再び作業走行に入る。
上記薬剤散布を行う薬剤散布作業車は、旋回開始時に操舵角センサ7により第1の所定角度以上の旋回角度が検出され、すなわち旋回動作に入ったことが検出されると、旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により上昇させる(上昇を開始する)サイドブーム上昇機能を有する制御装置100を備えている。更に、この制御装置100は旋回終了時には、操舵角センサ7により第2の所定角度以上の旋回角度が検出され、すなわち操舵角センサ7により再び旋回動作に入ったことが検出されると、この検出後、所定時間経過してから旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により下降させる(下降を開始する)サイドブーム下降機能を有する。圃場の状況により(圃場面の凹凸等)、あるいは運転操作が下手な場合、再び大きなハンドル操作をしてしまうことがある。したがって、前記所定時間とは直進走行が安定するまでの時間であり、例えば散布と車速(2〜4km/h)の関係で長くても5秒までとする。
【0048】
旋回開始時又は旋回終了時に旋回外側のサイドブーム44を自動的に上昇又は下降させることができるため、サイドブーム44の昇降動作をオペレータに負担をかけることなく行える。また、旋回終了時に所定時間経過してから自動的に旋回外側のサイドブーム44を下降させることで、旋回終了時の薬剤散布開始前に合わせてサイドブーム44を下降させることが可能になる。
【0049】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図9に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。この判断は、流量センサ74で行い、流量が所定量以上の場合(流量が検出される場合)に散布中であると判断する。
【0050】
薬液の散布中である場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ1とする、例えば95度)以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7により判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。操舵角センサ7として通常のポジションセンサを使用した場合は0V〜5Vの検出値となり、2.5Vを直進に設定することで、左右旋回が分かる。上昇フラグをセットすることで、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
【0051】
次に、再び操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度が所定角度(θ2とする、例えば100度)以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、θ2の検出後、所定時間(例えば、散布の関係で最大で5秒程度)経過してから、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。なお、二度目の旋回方向の判定時に、一度目の旋回方向と違う方向が検出された場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出せず、フローをリターンする。
【0052】
前記旋回開始時の判定角度θ1と旋回終了時の判定角度θ2は同じ角度でも良いし、異なる角度でも良い。
旋回開始時と旋回終了時の旋回角度の基準となる前輪12の操舵角θを変えることで、旋回開始時と旋回終了時のサイドブーム44の上昇と下降のタイミングを変えることができる。例えば、前記θ2をθ1よりも大きめに設定することで、サイドブーム44の上昇タイミングに比べて、サイドブーム44の下降タイミングを遅めにするなど、細かい昇降制御が可能となり、作業性が向上する。
【0053】
そして、操舵角センサ7により再び旋回動作に入ったことが検出されてから旋回外側のサイドブーム44を下降させるまでの時間を変更可能な下降時間設定スイッチ(ボタンでも良い)140を設けると良い。下降時間設定スイッチ140は、コントローラパネル120に設けると、オペレータが操作しやすい。
【0054】
旋回終了時における旋回外側のサイドブーム44の下降時間を変更できることで、圃場の状態などの作業状況に応じた、サイドブーム44を下降させる時間設定が可能となる。例えば、圃場の状態が悪く路面の凹凸が多い場合などはステアリングハンドル14を取られてしまう可能性があり、凹凸が激しい場合は直進走行が安定するまで時間がかかるため、下降時間を長くする。
【0055】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図10に示す。
このフローは、
図9に示すフローと、操舵角センサ7により検出される操舵角θがθ2以上である場合に、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定するまでは同じである。そして、先の旋回開始時と同じ方向に操舵された場合は下降時間設定スイッチ140からの入力信号を読み込んで、サイドブーム44を下降させる時間をセットし、その時間が経過したら旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行う。
本構成により、サイドブーム44を下降させるタイミングをより細かく制御できる。
【0056】
また、薬剤散布作業車は、サイドブーム44を機体の中心から左右方向に大きく開いて薬液を散布するため、作業車の周囲の広い面積に薬液を散布することができる。したがって、薬剤散布作業車の作業走行における直進走行経路間の距離が比較的大きくなるので、畦際を旋回する際に、
図8に示すように、左側又は右側に曲がってから一旦直進走行をした後、再び左側又は右側に曲がって方向転換する。すなわち、薬剤散布作業車の場合、普通自動車のように左側又は右側にハンドルを切ったままUターンするわけではなく、旋回時には、旋回開始と旋回終了の間に一旦直進走行の状態(直進部(イ))になる。
【0057】
このとき(旋回途中)の直進走行を判定するための操舵角センサ7により検出される操舵角θとして、第3の所定角度θ3を設定し(この角度θ3を中立戻り角度とも言う)、この第3の所定角度θ3以下になった場合に前記サイドブーム下降機能を有効にするサイドブーム下降有効機能を制御装置100に設けても良い。
旋回中の薬剤散布作業車が一旦直進走行となってからサイドブーム44を下降させることで、薬剤散布作業車の旋回終了時の判定を確実に行うことができる。
【0058】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図11に示す。
このフローは、
図9に示すフローと、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)するまでは同じである。
【0059】
そして、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この時の操舵角θがθ3以下である場合に、再び操舵角センサ7により操舵角θを検出し、その操舵角θがθ2以上である場合に、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定する。
【0060】
すなわち、操舵角センサ7によって操舵角θがθ1以上となって旋回外側のサイドブーム44を上昇させた後、再び操舵角センサ7によって操舵角θがθ2以上であるか否かを検出する前に、θ3以下であることが検出されない場合は、操舵角θがθ2以上となった場合でも、サイドブーム44を下降させない制御である。
【0061】
そのような場合は、散布作業走行ではなく、散布作業が終了したと判定される。
図8に示すように、旋回中に直進部(イ)があるため、直進部(イ)で検出される操舵角がθ3以下であることを確認するためである。
したがって、本構成により、散布作業走行中における旋回終了時の判定を確実に行うことができる。
【0062】
また、制御装置100には、直進走行と判定する操舵角θの中立判定角度θ4と旋回走行と判定する前記サイドブーム上昇機能における第1の所定角度θ1及びサイドブーム下降機能における第2の所定角度θ2とを記憶するメモリ(判定角度記憶手段)102を設けている。そして、第3の所定角度θ3がメモリ102に記憶されている旋回判定角度(θ1及びθ2)よりも小さく、中立判定角度θ4よりも大きい角度であるときに、前記サイドブーム下降機能を有効にしても良い。
【0063】
図12にはこれら旋回判定角度(θ1及びθ2)、中立判定角度θ4、第3の所定角度θ3のイメージを示す。
上述のように、薬剤散布作業車は畦際を旋回する際に、左側又は右側に曲がってから一旦直進走行をした後、再び左側又は右側に曲がって方向転換するが、この旋回途中における直進走行の左右の前輪12,12の操舵角は、左側又は右側に曲がる時の操舵角よりは小さいが、旋回開始前や旋回終了後の通常の直進走行の操舵角と比べると若干大きくなる。
【0064】
したがって、
図12に示すように、第3の所定角度θ3を旋回判定角度(θ1及びθ2)よりも小さく、中立判定角度θ4よりも大きい角度に設定することで、適切な操舵角θで旋回終了時の判定ができ、タイミング良くサイドブーム44を下降させることが可能になる。
【0065】
一方、旋回開始時にも、操舵角センサ7によって操舵角θがθ3以下であることが検出された場合に、旋回外側のサイドブーム44を上昇させる制御としても良い。すなわち、操舵角θがθ3以下である場合に、前記サイドブーム上昇機能を有効にする。
【0066】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図13に示す。
このフローは、
図11に示すフローとは、操舵角センサ7によって操舵角θがθ1以上であるか否かを検出する前に、θ3以下であることが検出されない場合は、操舵角θがθ1以上となった場合でも、サイドブーム44を上昇させない点で異なる。
そして、操舵角センサ7によって操舵角θがθ3以下であることが検出された場合は旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。その後は
図11に示すフローと同様である。
【0067】
散布作業走行中における旋回では、直進状態から旋回して反転する作業となるため、旋回前に操舵角θがθ3以下でない場合は、散布作業走行ではなく、例えば圃場内の別の場所への移動、別の圃場への移動などが考えられる。しかし、旋回開始時にも、操舵角θがθ3以下であるか否かを判断することで、散布作業走行中における旋回開始時の判定を確実に行うことができる。なお、この場合は作業中の直進走行(作業時の直進部(ロ))からの旋回であるため、中立判定角度θ4を基準としても良い。しかし、中立判定角度θ4は固定値としてメモリ102に記憶されているため、中立戻り角度θ3を利用すると良い。
【0068】
そして、この場合も、サイドブーム44の下降時と同様にθ3を旋回判定角度(θ1及びθ2)よりも小さく、中立判定角度θ4よりも大きい角度に設定することで、適切な操舵角θで旋回開始時の判定ができ、タイミング良くサイドブーム44を上昇させることが可能になる。
【0069】
また、
図9などに示すサイドブーム上昇機能を車速センサ6から得られた車速が一定範囲であるときに有効にすると共に、サイドブーム下降機能を車速センサ6から得られた車速が一定値を超えたときに有効にしても良い。
【0070】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図14に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、車速センサ6からの入力信号を読み込んで、車速を計算する。この車速が一定範囲(約1.5km/h〜4.5km/h)以内である場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度がθ1以上である場合は、旋回方向が左側又は右側の何れかであることを操舵角センサ7によって判定し、旋回外側のサイドブーム44の上昇処理を行い、上昇フラグをセット(オン)する。したがって、旋回外側のサイドブーム44が上昇する。
なお、フローでは、散布作業が前提であるため、散布作業中であるか否かを確認するステップなどは図示を省略しており、要点のみを記載している。
【0071】
次に、再び車速センサ6からの入力信号を読み込んで、車速を計算する。この車速が一定値以下(例えば、1〜1.5km/h以下)でない場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出し、この角度がθ2以上である場合は、再び旋回方向が左側又は右側の何れかであることを判定し、先の旋回開始時と同じ方向である場合は、θ2の検出後、所定時間経過してから、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0072】
旋回の開始と終了を操舵角θのみならず、車速によっても判断することで、細かなサイドブーム44の昇降制御が可能となる。そして、薬剤散布作業車の旋回開始から旋回終了までの間に、切り返しなどで薬剤散布作業車を停止させてもサイドブーム44の昇降制御を継続させることができる。
【0073】
例えば、薬剤散布作業車が旋回開始後、旋回外側のサイドブーム44が上昇してから走行を停止した場合など、サイドブーム44の昇降制御状態がクリアされる場合も考えられるが、本構成により、薬剤散布作業車が旋回中に停止した場合でも、サイドブーム44の昇降制御を継続させることができる。
【0074】
そして、上昇フラグをセットした後、すなわち旋回外側のサイドブーム44が上昇後は、車速が一定値以下になっても、上昇フラグをリセットしないことで、散布作業走行中における旋回終了時の判定を確実に行うことができる。旋回の終了判定は、操舵角センサ7によって操舵角θを判定し、旋回、直進、同じ方向に旋回、直進という過程を経ることで判定される。そして、旋回を終了してサイドブーム44を下降させる条件を前記の条件とする。
【0075】
本構成によれば、旋回終了時の判定を確実に行うというよりも、旋回中に前後進を繰り返しても問題がないようにすることができる。
圃場を往復しながら散布作業を行う場合、往路の散布が終了して復路に入るときには、
図8のように直線部(イ)を走行した後に再び同じ側に舵を切って旋回し、旋回が終了すると旋回外側のサイドブーム44を下降させる。本構成では、このときの条件として薬剤散布作業車が所定速度の範囲内(約1.5km/h〜4.5km/h)であることを条件としている。この速度範囲の理由として、作業の状況、圃場の状況、運転者の技量にもよるが、旋回走行時の車速は約2〜4km/hで走行するからである。
【0076】
そして、このとき、ハンドル操作の失敗や圃場面の凹凸などにより前後進の切り替えを繰り返すことがある。その場合は、薬剤散布作業車が一旦停車するということになり、前記条件(約1.5km/h〜4.5km/h)の範囲外となってしまい、その結果、上昇フラグが解除されてしまって旋回が終了してもサイドブーム44が下降しないことになる。このような不具合を防止するために、薬剤散布作業車が停止しても、上昇フラグを維持するものである。
【0077】
更に、旋回開始判定後の上昇フラグのセット(オン)時には、手動でサイドブーム44の下降操作が行われても、旋回が終了するまでは上昇フラグをクリアしない構成としても良い。通常は、サイドブームの自動昇降制御中にオペレータの手動操作が入ると、この自動昇降制御はクリアされてしまい、旋回終了時にサイドブームが下降するといった問題があるが、上昇フラグをクリアしないことで、自動昇降制御のクリアを防止できる。
【0078】
図4に示すように、左右のサイドブーム44,44の手動操作用の昇降スイッチ(例えば、トグルスイッチ)142,142をコントローラパネル120に設けると、オペレータが手動で左右のサイドブーム44,44の昇降操作が可能となる。なお、トグルスイッチとは、指先でバットの形状をしたレバーを直線的に上下または左右に往復運動させて、これを機械的に接点部に伝達し、電路の開閉操作を行なう制御用操作スイッチを言う。
【0079】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図15に示す。
このフローは、上昇フラグのセット後に、手動昇降スイッチ142からの入力信号を読み込み、入力がある場合(スイッチがオンの場合)に、手動昇降スイッチ142の操作に応じた出力をする点で、
図9に示すフローとは異なる。
【0080】
例えば、薬剤散布作業車が旋回を開始してサイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇後、オペレータが手動昇降スイッチ142を上昇又は下降操作すると、その手動操作に応じたサイドブーム44の上昇及び下降が行われる。例えば、旋回時のサイドブーム44の上昇量を最大上昇量以外で行う場合(
図20のようなダイヤル等で設定)には、途中までしか上昇していないので、背の低い障害物があると当たる可能性がある。このようなときは、手動昇降スイッチ142によりサイドブーム44を手動で上昇させる。また、それほど上げなくてもよいと判断した場合は、手動で下降させる。
【0081】
そして、操舵角センサ7によって検出される操舵角θがθ2以上となって、且つ旋回開始時と同じ方向に操舵された場合は、上昇フラグがクリアされる。
すなわち、薬剤散布作業車の旋回時に旋回外側のサイドブーム44が上昇して上昇フラグがオンのときにおいて、手動昇降スイッチ142による手動操作は受け付けるものの、上昇フラグはオンのまま維持するものである。したがって、サイドブーム44が上昇後にサイドブーム44の昇降は状況により手動で行うことができる。
【0082】
そして、この手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があった場合に、この時のサイドブーム44の上昇及び下降の操作時間を考慮して、旋回終了時のサイドブーム下降機能による下降時間を決定する構成としても良い。例えば手動昇降スイッチ142がトグルスイッチの場合、中央がニュートラルで、いずれか一方にスイッチを操作すると上昇、スイッチから指を離すとニュートラルに戻り、他方に操作すると下降、スイッチから指を離すとニュートラルに戻るものがある。なお、スイッチから指を離してもニュートラルに戻らないものもある。
【0083】
薬剤散布作業車が旋回を開始してサイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇後、オペレータが手動昇降スイッチ142を上昇又は下降操作すると、その操作時間を計測し、薬剤散布作業車の旋回開始時の自動上昇(サイドブーム上昇機能による)にかかった時間と比較する。前記操作時間と自動上昇時の時間とを比較することで旋回終了時のサイドブーム44の下降出力時間を決める。なお、自動上昇時間は、サイドブーム44が上昇し始めてから止まるまでの基本時間から手動で操作した時間を差し引いても求められる。
【0084】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図16に示す。
このフローは、
図15に示すフローとは、上昇フラグのセット後に、手動昇降スイッチ142からの入力信号を読み込み、入力がある場合(スイッチがオンの場合)に、その操作を有効とする点で同じであるが、手動昇降スイッチ142の操作時間を考慮して、旋回終了時のサイドブーム下降機能による下降時間を決定する点で異なる。
【0085】
薬剤散布作業車が旋回を開始するとサイドブーム上昇機能によってサイドブーム44が上昇するが、上昇後にオペレータが手動昇降スイッチ142を下降操作した場合に、サイドブーム44は下降する。そして、この操作時間を計測し、旋回開始時の自動上昇にかかった時間と前記操作時間から旋回終了時のサイドブーム44の下降に要する時間を計算する。
【0086】
そして、操舵角センサ7によって検出される操舵角θがθ2以上となって、且つ旋回開始時と同じ方向に操舵された場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
このとき、制御装置100のサイドブーム下降機能によってθ2の検出後所定時間経過してから旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により下降させるが、この下降にかかる時間を前記計算した時間とする。
【0087】
例えば、旋回開始時の旋回外側のサイドブーム44の自動上昇に10秒かかったとする。そして、前記操作時間が4秒である場合は、旋回終了時に10から4を引いた6秒かけて旋回外側のサイドブーム44を下降させる。
サイドブーム44の上昇速度及び下降速度は同じであるため、散布作業時のブーム高さを揃えるためには、サイドブーム44が下降位置(作業時の高さ)から上昇位置まで上昇作動する時間とサイドブーム44が上昇位置から下降位置に戻るまでの時間を同じにする必要がある。
【0088】
旋回を開始すると、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44は上昇するが、この設定されている上昇位置は最大上昇位置(上昇可能な最大限度位置)とは限らず、手動昇降スイッチ142の上昇操作(オペレータの手動操作)によって、更に上昇させることが可能な場合もある。
【0089】
したがって、旋回開始後にサイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇した後も手動昇降スイッチ142を上昇操作することが考えられる。この上昇操作を5秒行った場合は、自動上昇時間が10秒であると、10たす5で15秒間サイドブーム44を上昇させたことになる。したがって、旋回終了時には、自動上昇時間10秒に操作時間5秒を足した15秒かけて旋回外側のサイドブーム44を下降させると、サイドブーム44は上昇前の高さ位置に自動的に戻る。また、サイドブーム44が上昇後に手動昇降スイッチ142により手動操作で5秒下降させると、旋回終了時には5秒間の下降指示を出す。
【0090】
本構成により、薬剤散布作業車の旋回開始後に手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があっても、サイドブーム下降機能は有効であるため、確実に旋回終了後はサイドブーム44を下降させることができる。また、旋回開始時のサイドブーム44の自動上昇にかかった時間と手動による手動昇降スイッチ142の操作時間から旋回終了時のサイドブーム44の下降に要する時間を決めることで、適正な下降時間を設定できる。サイドブーム44が元の場所に戻らないと不適正であり、適正な散布作業ができなくなる。
【0091】
また、制御装置100が旋回の開始を認識してサイドブーム44のブームを自動で上昇させるとき、その上昇中に手動昇降スイッチ142による手動操作が行われると手動操作を優先(上昇、下降)し、上昇フラグはオンの状態を維持する構成でも良い。このような状態で制御装置100が旋回の終了を認識すると、上昇フラグのオンは解除してサイドブーム44の自動下降は行わない。
【0092】
また、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇中に手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があった場合に、その手動操作を有効にしてサイドブーム上昇機能を無効としたり、サイドブーム下降機能によって旋回外側のサイドブーム44が下降中に手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があった場合に、その手動操作を有効にしてサイドブーム下降機能を無効としたりしても良い。
【0093】
旋回開始時のサイドブーム44の上昇中や旋回終了時のサイドブーム44の下降中における手動昇降スイッチ142による手動操作を有効にすることで、サイドブーム44の誤動作を防止できる。すなわち、手動操作が優先されるため、オペレータの意思でサイドブーム44の昇降操作ができ、操作性に優れる。また、一旦手動優先にしたので、自動で下降させると誤動作になってしまうからである。
【0094】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図17に示す。
このフローは、
図15に示すフローとは、上昇フラグのセット後に、手動昇降スイッチ142からの入力信号を読み込み、入力がある場合(スイッチがオンの場合)に、その操作を有効とする点では同じである。
【0095】
図15は、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇後に手動昇降スイッチ142の操作があった場合のフローであるが、
図17は、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇中に手動昇降スイッチ142操作があった場合のフローである点で
図15とは異なる。
したがって、
図17のフローには、サイドブーム44の上昇中に手動操作があるため、ブーム自動上昇処理中止というステップを記載している。
【0096】
サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇中に手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があると、その手動操作が優先されてサイドブーム44が上昇又は下降する。一方、サイドブーム上昇機能は無効となる。なお、手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作がない場合は、サイドブーム上昇機能は有効のままである。
【0097】
また、サイドブーム下降機能によって旋回外側のサイドブーム44が下降中に手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作があると、その手動操作が優先されてサイドブーム44が上昇又は下降する。一方、サイドブーム下降機能は無効となる。なお、手動昇降スイッチ142によるオペレータの手動操作がない場合は、サイドブーム下降機能は有効のままである。
【0098】
本構成により、旋回開始から旋回終了までの誤操作を防止できる。すなわち、手動操作が優先されるため、オペレータの意思でサイドブーム44の昇降操作ができ、操作性に優れる。また、一旦手動優先にしたので、自動が働くと誤動作になってしまうからである。
【0099】
また、サイドブーム44の上昇中には手動昇降スイッチ142による手動操作を優先させるが(ブーム自動上昇処理中止)、サイドブーム44の上昇中にサイドブーム44を上昇又は下降させた時間をカウントしてメモリ102に記憶させておき、旋回終了後に自動で下降させるときに、カウントした手動時間を考慮して自動で下降させる構成としても良い。
【0100】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図18に示す。
このフローは、
図16に示すフローとは、上昇フラグのセット後に、手動昇降スイッチ142からの入力信号を読み込み、入力がある場合(スイッチがオンの場合)に、その操作を有効とし、更に手動昇降スイッチ142の操作時間を考慮して、旋回終了時のサイドブーム下降機能による下降時間を決定する点では同じである。
【0101】
図16は、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇後に
手動昇降スイッチ142操作があった場合のフローであるが、
図18は、サイドブーム上昇機能によって旋回外側のサイドブーム44が上昇中に手動昇降スイッチ142操作があった場合のフローである。
【0102】
例えば、旋回開始時の旋回外側のサイドブーム44の自動上昇を開始してから10秒後(サイドブーム44の上昇中)に手動昇降スイッチ142による下降操作をした場合、手動操作が優先されるため「ブーム自動上昇処理中止」となる。この下降操作時間が4秒である場合は、4秒間かけて旋回外側のサイドブーム44を下降させる。更に操舵角センサ7によって検出される操舵角θがθ2以上となって、且つ旋回開始時と同じ方向に操舵された場合は、旋回外側のサイドブーム44の下降処理を行い、上昇フラグをクリア(オフ)する。
【0103】
このとき、制御装置100のサイドブーム下降機能によってθ2の検出後所定時間経過してから旋回外側のサイドブーム44を自動的に上下シリンダ29により下降させるが、この下降にかかる時間を10秒から4秒差し引いた6秒とする。すなわち、旋回終了時に10から4を引いた6秒かけて旋回外側のサイドブーム44を下降させる。
【0104】
一方、先に説明したように、旋回開始時のサイドブーム44の上昇中に手動昇降スイッチ142による上昇操作をすることも考えられる。この上昇操作時間が5秒である場合は更にサイドブーム44が5秒間上昇する。そして、サイドブーム下降機能によって旋回外側のサイドブーム44を下降させる際には、自動上昇時間10秒に操作時間5秒を足した15秒かけて下降させると、サイドブーム44は上昇前の高さ位置に自動的に戻る。
【0105】
以上述べたように、本構成は、サイドブーム44が上昇中の手動操作の内容であり、サイドブーム44の上昇開始後上昇中に手動操作を開始するまでの時間をS1とし、その後、手動操作した時間を考慮する。手動上昇の操作時間がS2であれば、自動で下降する時間はS1+S2となる。また、手動下降の操作時間がS3であれば、自動で下降する時間はS1−S3となる。
【0106】
本構成により、サイドブーム上昇機能によるサイドブーム44の上昇中に、手動昇降スイッチ142による手動操作があった場合でも、サイドブーム下降機能による旋回終了時の自動下降制御が可能となり、操作性が向上する。
【0107】
また、薬剤散布作業車の旋回開始前に手動昇降スイッチ142による上昇操作が行われたらこの手動操作を有効とし、更に操舵角θがθ1以上となった旋回開始時に手動昇降スイッチ142による上昇操作が行われたら、サイドブーム上昇機能を無効としてもよい。
【0108】
手動昇降スイッチ142の上昇操作によって旋回外側のサイドブーム44が上昇するため、サイドブーム上昇機能によって必要以上に上昇させることを防止できる。そして、このときサイドブーム下降機能も中止されることで、サイドブーム下降機能による旋回終了時にサイドブーム44の下降位置が不適正となるような誤動作を防止できる。
【0109】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図19に示す。
エンジンを始動して薬剤散布作業車の走行を開始すると、制御装置100によって薬液の散布中であるか否かを判断する。薬液の散布中である場合は、操舵角センサ7によって操舵角θを検出するが、旋回開始前(θ1が検出される前)にもかかわらず、手動昇降スイッチ142による上昇操作が行われた場合は、その操作を有効として旋回外側のサイドブーム44の上昇を行う。
【0110】
そして、操舵角θがθ1以上となって薬剤散布作業車が旋回を開始した時に上昇フラグのセットを確認した後、サイドブーム上昇機能を無効とし、手動昇降スイッチ142による上昇操作を有効にしてサイドブーム44を上昇させる。
【0111】
なお、このフローでは、操舵角θがθ1以上となった後の「上昇フラグセットあり?」の質問で「No」を入れているが、その前に手動昇降スイッチ142による上昇操作が行われているため、上昇フラグはセットされている状態である。したがって、この質問でNoに進むことはなく、フローの流れから便宜上、「No」を入れている。
本構成により、サイドブーム44の上昇動作をオペレータの任意で行え、不要な上昇を抑えることができる。
【0112】
なお、サイドブーム44の昇降用の自動スイッチ145を設けて、このスイッチ145を多段のロータリースイッチ又はボリュームスイッチとしても良い。これは手動スイッチ(手動昇降スイッチ142)とは異なり、サイドブーム44の自動昇降制御用のスイッチであり、上述の上昇時間を変更できるものである。
【0113】
図20には、自動昇降スイッチ145の例を示す。
右側に回すほど、サイドブーム44の上昇時間及び下降時間が長くなる。なお、自動昇降スイッチ145の周囲の数字は上昇時間を示す秒数ではなく、右側に最大まで回した時の位置が大体5の位置となり、上昇時間及び下降時間が最大となる。すなわち、サイドブーム44が最大上昇位置まで上昇する。なお、ダイヤルの数値はサイドブーム44の上昇量を5段階に分けたものである。時間で表示してもよいし、サイドブーム44の角度で表示してもよい。
【0114】
この場合のサイドブーム44の昇降制御のフローチャートを
図21に示す。
エンジンを始動してフローがスタートすると、自動昇降スイッチ145からの入力信号を読み込んで、自動昇降スイッチ145から入力がある場合(スイッチがオンの場合)に、旋回開始時のサイドブーム44の上昇時間を設定する。旋回終了時のサイドブーム44の下降時間も自動的に同じ時間となる。
【0115】
例えば、自動昇降スイッチ145を右側に最大まで回すと自動上昇時間が10秒となる場合、4の位置に設定すれば、旋回外側のサイドブーム44の上昇時間及び下降時間は約8秒になる。サイドブーム44の上昇速度及び下降速度が同じのため、上昇位置は10秒の場合よりも低い位置になる。
【0116】
オペレータによっては薬剤散布作業車の走行速度が違うこともあり、速い速度で走行している場合に旋回終了時に10秒かかって下降させていると、旋回が終了して直進走行となっているにもかかわらず、まだサイドブーム44が下降し終わっていない事態が想定される。サイドブーム44が下降し終わってから薬剤が散布されるため、このような場合は、旋回終了後の直進走行区間で薬剤を散布できなくなる箇所が生じてしまう。
しかし、旋回外側のサイドブーム44の上昇時間及び下降時間を小さめに設定することで、サイドブーム44が早めに下降するため、このような問題は生じない。
【0117】
一方、遅めの速度で走行する場合は、旋回外側のサイドブーム44の上昇時間及び下降時間を大きめに設定することで、旋回の終了に合わせてサイドブーム44をゆっくり下降させることができる。
本構成により、旋回外側のサイドブーム44の上昇時間及び下降時間を変更できるため、薬剤散布の操作性や作業性が向上すると共に、オペレータの相違や作業状況に合わせた時間設定が可能となる。