特許第5880248号(P5880248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880248
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/30 20150101AFI20160223BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20160223BHJP
   H01Q 9/14 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H01Q5/30
   H01Q9/42
   H01Q9/14
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-96220(P2012-96220)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-225735(P2013-225735A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】行本 真介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 嶺
【審査官】 宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/049847(WO,A1)
【文献】 特開2007−281990(JP,A)
【文献】 特開2005−79959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q5/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
該基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられていると共に途中に第1受動素子及び誘電体アンテナのアンテナ素子がこの順に接続されて前記グランドパターンに沿った方向に延在し、
前記第2エレメントが、前記グランドパターンに基端が接続されていると共に途中に第2受動素子が接続されて前記グランドパターンと前記第1エレメントとの間で前記第1エレメントに沿って延在し、
前記第1エレメントが、基端から前記第1受動素子まで前記グランドパターンに沿って延在した第1延在部と、
前記第1受動素子から前記アンテナ素子を途中に配して前記第1延在部の延在方向に延在する第2延在部と、
該第2延在部の先端から前記第2エレメント側に向けて延在する第3延在部と、
該第3延在部の先端から前記第2延在部と前記第2エレメントとの間であって前記第2延在部に沿って延在し先端が前記第1延在部に接続された第4延在部とを有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成された第3エレメントを備え、
前記第1エレメントが、前記第1延在部の途中と前記グランドパターンとを接続する第5延在部を有し、
前記第3エレメントが、前記第1延在部の先端側に一端が接続されていると共に他端が前記第2エレメントの途中に接続され、
前記第1延在部と前記第5延在部と前記グランドパターンと前記第2エレメントと前記第3エレメントとが、環状に接続されて内側に開口部を形成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成された第4エレメントを備え、
該第4エレメントが、前記第1エレメントの基端側に接続され前記グランドパターンとは反対側で前記第1延在部に沿って延在していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部及び前記第4延在部が、前記第3延在部より長いことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記グランドパターンに電気的に接続されたメイングランド部が表面に金属箔でパターン形成されたメイン基板を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器において、アンテナの共振周波数を複共振化するためには、放射電極と誘電体ブロックとを備えたアンテナや、スイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置が提案されている。
例えば、誘電体ブロックによる従来技術としては、特許文献1では、放射電極を樹脂成型体に形成し、さらに誘電体ブロックを接着剤で一体化することで高効率を得る複合アンテナが提案されている。
【0003】
また、スイッチ,制御電圧源を用いた従来技術としては、特許文献2では、第1の放射電極と、第2の放射電極と、第1の放射電極の途中部と第2の放射電極の基端部との間に介設され、第2の放射電極を第1の放射電極と電気的に接続又は切断させるためのスイッチと、を備えるアンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81000号公報
【特許文献2】特開2010−166287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載のような誘電体ブロックによる技術では、放射電極を励振する誘電体ブロックを使用しており、機器毎に誘電体ブロック、放射電極パターン等の設計が必要になり、その設計条件によってアンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。また、放射電極が樹脂成型体の表面に形成されているため、樹脂成型体上に放射電極パターンを設計する必要があり、実装する通信機器やその用途に応じて、アンテナ設計、金型設計が必要になり、大幅なコストの増大を招いてしまう。さらに、誘電体ブロックと樹脂成型体とを接着剤で一体化するので、接着剤のQ値以外にも接着条件(接着剤の厚み、接着面積等)により、アンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。
また、特許文献2に記載のようなスイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置の場合、スイッチで共振周波数を切り替えを行うために、制御電圧源の構成やリアクタンス回路等が必要であり、アンテナ構成が機器毎に複雑化し、設計の自由度が無く、容易なアンテナ調整が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、該基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントとを備え、前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられていると共に途中に第1受動素子及び誘電体アンテナのアンテナ素子がこの順に接続されて前記グランドパターンに沿った方向に延在し、前記第2エレメントが、前記グランドパターンに基端が接続されていると共に途中に第2受動素子が接続されて前記グランドパターンと前記第1エレメントとの間で前記第1エレメントに沿って延在し、前記第1エレメントが、基端から前記第1受動素子まで前記グランドパターンに沿って延在した第1延在部と、前記第1受動素子から前記アンテナ素子を途中に配して前記第1延在部の延在方向に延在する第2延在部と、該第2延在部の先端から前記第2エレメント側に向けて延在する第3延在部と、該第3延在部の先端から前記第2延在部と前記第2エレメントとの間であって前記第2延在部に沿って延在し先端が前記第1延在部に接続された第4延在部とを有していることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置では、第1エレメントが、第1受動素子からアンテナ素子を途中に配して第1延在部の延在方向に延在する第2延在部と、該第2延在部の先端から第2エレメント側に向けて延在する第3延在部と、該第3延在部の先端から第2延在部と第2エレメントとの間であって第2延在部に沿って延在し先端が第1延在部に接続された第4延在部とを有しているので、環状に接続される第1〜第4延在部により、内外に浮遊容量を効果的に発生可能な装荷パターンを第1エレメントの開放端部分に構成することができる。すなわち、この装荷パターンがアンテナエレメントの開放端部分となることで、高インピーダンスとなるアンテナ素子が開放端となる場合に比べ、周囲の人体や周辺部品の影響を抑制してアンテナ性能の劣化を防ぐことができる。
具体的には、第4延在部と第2エレメントとの間の浮遊容量と、第4延在部とグランドパターンとの間の浮遊容量と、装荷パターンの内部(第2延在部と第4延在部との間)の浮遊容量と、アンテナ素子とグランドパターンとの間の浮遊容量とを発生させることができ、少なくとも第1エレメントを主として得られる共振周波数と第2エレメントを主として得られる共振周波数との各共振周波数において高い調整自由度を得ることができると共に、アンテナ性能と人体や周辺部品の影響の低減との両立を図ることができる。
したがって、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子を有する上記装荷パターンによる内外の複合的な浮遊容量を効果的に利用することで、複共振化させることができ、人体や周辺部品の影響を低減することも可能になる。
また、アンテナ素子および受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
また、基板本体の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0009】
第2の発明に係るアンテナ装置は、第1の発明において、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成された第3エレメントを備え、前記第1エレメントが、前記第1延在部の途中と前記グランドパターンとを接続する第5延在部を有し、前記第3エレメントが、前記第1延在部の先端側に一端が接続されていると共に他端が前記第2エレメントの途中に接続され、前記第1延在部と前記第5延在部と前記グランドパターンと前記第2エレメントと前記第3エレメントとが、環状に接続されて内側に開口部を形成していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1延在部と第5延在部とグランドパターンと第2エレメントと第3エレメントとが、環状に接続されて内側に開口部を形成しているので、開口部内に浮遊容量を発生させることができ、別の共振周波数による更なる複共振化が可能になると共に人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。また、開口部内に生じた浮遊容量により、第1エレメントと第2エレメントとによる2つの共振周波数に対しても、人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。
【0010】
第3の発明に係るアンテナ装置は、第1又は第2の発明において、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成された第4エレメントを備え、該第4エレメントが、前記第1エレメントの基端側に接続され前記グランドパターンとは反対側で前記第1延在部に沿って延在していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第4エレメントが、第1エレメントの基端側に接続されグランドパターンとは反対側で第1延在部に沿って延在しているので、第4エレメントと第1エレメントとの間の浮遊容量を効果的に利用することで、さらに異なる共振周波数による複共振化が可能になる。
【0011】
第4の発明に係るアンテナ装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記第2延在部及び前記第4延在部が、前記第3延在部より長いことを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2延在部及び第4延在部が、第3延在部より長いので、装荷パターンの内外に生じる複合的な浮遊容量がより効果的に得られ、人体や周辺部品の影響をより低減することができる。
【0012】
第5の発明に係るアンテナ装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記基板本体が、前記グランドパターンに電気的に接続されたメイングランド部が表面に金属箔でパターン形成されたメイン基板を備えていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、グランドパターンに電気的に接続されたメイングランド部が表面に金属箔でパターン形成されたメイン基板を備えているので、メイン基板のメイングランド部側に高周波回路等を設けることができ、基板本体を小型化することができる。また、メイン基板の上方などに基板本体を設置することも可能になって、機器の筐体内における設置自由度が向上する。さらに、実装する筐体の配置条件にフレキシブルに対応するために、メイン基板とは別に、基板本体にフレキシブル基板等を採用することも可能になる。また、基板本体とメイン基板との間に高誘電率材やゴム材からなるスペーサを挿入することも可能になり、導体パターン(各エレメント)の小型化効果や衝撃吸収効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、環状に接続される第1〜第4延在部により、内外に浮遊容量を効果的に発生可能な装荷パターンを第1エレメントの開放端部分に構成することができ、高いアンテナ性能で複共振化させることができると共に、人体や周辺部品の影響を低減することも可能になる。
また、アンテナ素子および第1及び第2受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能になると共に、小型化および高性能化が可能になる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
図2】本実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
図3】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)および底面図(d)である。
図4】本実施形態において、アンテナ装置を示す簡略的な断面図である。
図5】本実施形態において、自由空間状態と人体装着状態とにおける4共振化した際のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
図6】本実施形態において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、該基板本体2の表面にそれぞれ銅箔等の金属箔でパターン形成されたグランドパターンGND、第1エレメント3、第2エレメント4、第3エレメント5及び第4エレメント6とを備えている。
【0017】
また、このアンテナ装置1は、グランドパターンGNDに接続配線11により電気的に接続されたメイングランド部G2が表面に銅箔等の金属箔でパターン形成されたメイン基板2Bを備えている。
上記基板本体2は、図4に示すように、メイン基板2Bの上方に設置されており、基板本体2とメイン基板2Bとの間には、ABS等の一般的な樹脂で形成された絶縁性スペーサSが挿入されている。なお、メイングランド部G2は、基板本体2の直下にも設けられている。
【0018】
上記第1エレメント3は、グランドパターンGNDに近接した基端側に給電点FPが設けられていると共に途中に2つの第1受動素子P1a,P1b及び誘電体アンテナのアンテナ素子ATがこの順に接続されてグランドパターンGNDに沿った方向に延在している。ここで、グランドパターンGNDに沿った方向とは、本実施形態では、グランドパターンGNDの延在方向であって対向するグランドパターンGNDの端辺に沿った方向である。なお、アンテナ装置がメイン基板に一体に形成されている場合であって、グランドパターンGNDがアンテナ占有領域よりも広い面積で形成されたメイングランド部G2と共有する場合、グランドパターンGNDに沿った方向は、対向するグランドパターンGNDとなるメイングランド部G2の端辺に沿った方向である。
上記第2エレメント4は、グランドパターンGNDの先端側に基端が接続されていると共に途中に2つの第2受動素子P2a,P2bが接続されてグランドパターンGNDと第1エレメント3との間で第1エレメント3に沿って延在している。
【0019】
上記第1エレメント3は、基端から第1受動素子P1aまでグランドパターンGNDに沿って延在した第1延在部E1と、第1受動素子P1aから第1受動素子P1b及びアンテナ素子ATを途中に配して第1延在部E1の延在方向に延在する第2延在部E2と、該第2延在部E2の先端から第2エレメント4側に向けて延在する第3延在部E3と、該第3延在部E3の先端から第2延在部E2と第2エレメント4との間であって第2延在部E2に沿って延在し先端が第1延在部E1に接続された第4延在部E4とを有している。すなわち、環状に接続される第1〜第4延在部E1〜E4により、内外に浮遊容量を効果的に発生可能な装荷パターンが、第1エレメント3の開放端部分に構成されている。
なお、第3延在部E3は、第2延在部E2及び第4延在部E4の延在方向に直交する方向に延在し、第2延在部E2及び第4延在部E4は、第3延在部E3より長く設定されている。
【0020】
また、上記第1エレメント3は、第1延在部E1の途中とグランドパターンGNDとを接続する第5延在部E5を有している。この第5延在部E5は、第1延在部E1の途中からグランドパターンGNDに向けて延在し、第3受動素子P3を介してグランドパターンGNDの途中に接続されている。
また、上記第3エレメント5は、第1延在部E1の先端側に一端が接続されていると共に他端が第2エレメント4の途中に接続されている。すなわち、第3エレメント5は、第2受動素子P2aと第2受動素子P2bとの間に他端が接続されている。なお、第3エレメント5の部分に、受動素子を接続しても構わない。
したがって、第1延在部E1と第5延在部E5とグランドパターンGNDと第2エレメント4と第3エレメント5とが、環状に接続されて内側に開口部Kを形成している。
【0021】
上記第4エレメント6は、第1エレメント3の基端側に第4受動素子P4を介して接続されグランドパターンGNDとは反対側で第1延在部E1に沿って延在している。
上記第1延在部E1の先端側は、基端側よりも幅広に形成された幅広部E1aとされ、この幅広部E1aに第4エレメント6の先端が対向して配されている。なお、この幅広部E1aに、第4延在部E4の先端が接続されていると共に第3エレメント5が接続されている。
【0022】
上記基板本体2及びメイン基板2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板を採用している。
上記給電点FPは、メイン基板2Bのメイングランド部G2に設けられた高周波回路(図示略)に接続される。
【0023】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図3に示すように、セラミックス等の誘電体21の表面にAg等の導体パターン22が形成されたチップアンテナである。このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン22等が互い異なる素子を選択しても構わないと共に、同じ素子を選択しても構わない。
【0024】
上記第1エレメント3、第2エレメント4及び第4エレメント6とは、互いの間の浮遊容量と、グランドパターンGNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、互いに間隔を空けて延在している。
すなわち、図2に示すように、第4延在部E4と第2エレメント4との間の浮遊容量Caと、第4延在部E4とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Cbと、装荷パターンの内部(第2延在部E2と第4延在部E4との間)の浮遊容量Ccと、アンテナ素子ATとグランドパターンGND及びメイングランド部G2との間の浮遊容量Cdと、第4エレメント6と第1エレメント3(幅広部E1a)との間の浮遊容量Ceと、第4エレメント6と第1延在部E1との間の浮遊容量Cfと、開口部K内の浮遊容量Cgと、第4エレメント6とグランドパターンGND及びメイングランド部G2との間の浮遊容量Ch、第1延在部E1とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Ciと、第2エレメント4とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Cjとが発生可能である。
【0025】
上記第1受動素子P1a,P1b、第2受動素子P2a,P2b〜第4受動素子P4は、例えばジャンパー線、インダクタ、コンデンサまたは抵抗が採用される。
【0026】
次に、本実施形態のアンテナ装置における各共振周波数について、図1及び図5を参照して説明する。
【0027】
本実施形態のアンテナ装置1では、図5に示すように、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2、第3の共振周波数f3及び第4の共振周波数f4の4つに複共振化される。
上記第1の共振周波数f1は、4つの共振周波数の中で低い周波数帯のものであり、第1エレメント3(第1延在部E1及び装荷パターンとなる第1〜第4延在部E1〜E4)と浮遊容量とで決定される。また、上記第2の共振周波数f2は、4つの共振周波数の中で中間の周波数帯のものであり、第2エレメント4と第1受動素子P1a,P1bと第1延在部E1と浮遊容量とで決定される。また、上記第3の共振周波数f3は、4つの共振周波数の中で第2の共振周波数f2と異なる中間の周波数帯のものであり、開口部Kと第2受動素子P2a,P2bとグランドパターンGNDと浮遊容量とで決定される。さらに、上記第4の共振周波数f4は、4つの共振周波数の中で高い周波数帯のものであり、第2エレメント4と第2受動素子P2a,P2bと第1延在部E1と浮遊容量とで決定される。
【0028】
また、各共振周波数に対して、第3受動素子P3を用いて、グランドパターンGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、最終的なインピーダンス調整を行う。
以下、これら共振周波数について、より詳しく説明する。
【0029】
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、装荷パターン(第2〜第4延在部E2〜E4、アンテナ素子AT、第1受動素子P1a,P1b)、幅広部E1aを含む第1延在部E1及び浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cf,Cgにより設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cf,Cgの各浮遊容量の設定で行うことができる。
【0030】
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1a,P1bの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
また、最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「アンテナ素子AT」と「各エレメント長の長さ」と「受動素子」とにより、共振周波数、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第1の共振周波数f1は、主に図1中の破線A1の部分で調整される。
【0031】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、第4エレメント6と、第1延在部E1と、浮遊容量Ce,Cf,Chとにより設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Ce,Cf,Chの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第4受動素子P4の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0032】
また、最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「第4エレメント」と「各エレメント長」と「受動素子」と「各浮遊容量」とにより、共振周波数、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第2の共振周波数f2は、主に図1中の一点鎖線A2の部分で調整される。
【0033】
「第3の共振周波数f3について」
上記第3の共振周波数f3の周波数は、第1延在部E1と、浮遊容量Cf,Cg,Ciとにより設定および調整することができる。
また、第3の共振周波数f3のインピーダンス調整は、浮遊容量Cf,Cg,Ciの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2aの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0034】
また、最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「各エレメント長」と「受動素子」と「各浮遊容量」とにより、共振周波数、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第3の共振周波数f3は、主に図1中の二点鎖線A3の部分で調整される。
【0035】
「第4の共振周波数f4について」
上記第4の共振周波数f4の周波数は、第2エレメント4と、第1延在部E1と、浮遊容量Ca,Cb,Cf,Cg,Cjとにより設定および調整することができる。
また、第4の共振周波数f4のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cf,Cg,Cjの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2a,P2bの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0036】
また、最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「第2エレメント4」と「各エレメント長」と「受動素子」と「各浮遊容量」とにより、共振周波数、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第4の共振周波数f4は、主に図1中の点線A4の部分で調整される。
【0037】
次に、装荷パターンの部分について説明する。
上記装荷パターンは、第1延在部E1の先端側に設けられ第1延在部E1〜第4延在部E4によってループ状に構成されて、第1エレメント3の開放端部分に複合容量を装荷する形で設計されている。
第4延在部E4は、第2エレメント4との間に浮遊容量Caを発生可能に配置され、第2エレメント4による第4の共振周波数f4に対しても複合容量を装荷する形とすることが望ましい。
また、アンテナ性能と人体や周辺部品の影響低減とを両立させるためには、上記装荷パターンの部分の面積は大きいほど良い。なお、同じ面積であれば、第2延在部E2及び第4延在部E4の長さは、第3延在部E3の長さより長く設定することが望ましい。
【0038】
次に、開口部Kについて説明する。
開口部Kは、第1延在部E1、第5延在部E5、第3受動素子P3、グランドパターンGND、第2エレメント4、第2受動素子P2a及び第3エレメント5で囲まれて構成されている。この開口部K内に生じる浮遊容量Cgにより、人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。また、この開口部Kは、装荷パターンの部分による第1の共振周波数f1及び第2エレメント4による第4の共振周波数f4に対しても、同様の浮遊容量の効果によって人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。
なお、アンテナ性能の高性能化には、開口部Kの開口面積が広い方が望ましく、第3受動素子P3については、所望の共振周波数に対して高インピーダンスであることが望ましい。
【0039】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、第1エレメント3が、第1受動素子P1aからアンテナ素子ATを途中に配して第1延在部E1の延在方向に延在する第2延在部E2と、該第2延在部E2の先端から第2エレメント4側に向けて延在する第3延在部E3と、該第3延在部E3の先端から第2延在部E2と第2エレメント4との間であって第2延在部E2に沿って延在し先端が第1延在部E1に接続された第4延在部E4とを有しているので、環状に接続される第1〜第4延在部E1〜E4により、内外に浮遊容量を効果的に発生可能な装荷パターンを第1エレメント3の開放端部分に構成することができる。
【0040】
すなわち、この装荷パターンがアンテナエレメント(第1エレメント3)の開放端部分となることで、高インピーダンスとなるアンテナ素子ATが開放端となる場合に比べ、周囲の人体や周辺部品の影響を抑制してアンテナ性能の劣化を防ぐことができる。
このように、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATを有する上記装荷パターンによる内外の複合的な浮遊容量を効果的に利用することで、複共振化させることができ、人体や周辺部品の影響を低減することも可能になる。
【0041】
また、アンテナ素子ATおよび受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0042】
また、基板本体2の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0043】
また、第1延在部E1と第5延在部E5とグランドパターンGNDと第2エレメント4と第3エレメント5とが、環状に接続されて内側に開口部Kを形成しているので、開口部K内に浮遊容量Cgを発生させることができ、別の共振周波数f3による更なる複共振化が可能になると共に人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。また、開口部K内に生じた浮遊容量Cgにより、第1及び第4の共振周波数f1,f4に対しても、人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。
【0044】
さらに、第4エレメント6が、第1エレメント3の基端側に接続されグランドパターンGNDとは反対側で第1延在部E1に沿って延在しているので、第4エレメント6と第1エレメント3との間の浮遊容量を効果的に利用することで、第1及び第4の共振周波数f1,f4とは異なる共振周波数f2による更なる複共振化が可能になる。
また、第2延在部E2及び第4延在部E4が、第3延在部E3より長いので、装荷パターンの内外に生じる複合的な浮遊容量がより効果的に得られ、人体や周辺部品の影響をより低減することができる。
【0045】
また、グランドパターンGNDに電気的に接続されたメイングランド部G2が表面に金属箔でパターン形成されたメイン基板2Bを備えているので、メイン基板2Bのメイングランド部G2側に高周波回路等を設けることができ、基板本体2を小型化することができる。また、メイン基板2Bの上方などに基板本体2を設置することも可能になって、機器の筐体内における設置自由度が向上する。さらに、実装する筐体の配置条件にフレキシブルに対応するために、メイン基板2Bとは別に、基板本体2にフレキシブル基板等を採用することも可能になる。また、基板本体2とメイン基板2Bとの間に高誘電率材やゴム材からなるスペーサを挿入することも可能になり、導体パターン(各エレメント)の小型化効果や衝撃吸収効果を得ることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本実施形態のアンテナ装置を実際に作製した実施例について、VSWR特性(電圧定在波比)を測定した結果と、各共振周波数での放射パターンについて測定した結果とを、図5及び図6を参照して説明する。
【0047】
まず、周囲に人体や周辺部品が無い自由空間状態とした場合と、人体と同じ塩分濃度の生理食塩水を入れたペットボトルに密着させて仮想的に人体装着状態とした場合とについて、VSWR特性(電圧定在波比)を測定した結果を、図5に示す。
なお、図5の測定においては、第1受動素子P1aとして、L=1.5nHのインダクタを用い、第1受動素子P1bとして、L=20nHのインダクタを用いた。また、第2受動素子P2aとして、ジャンパー線を用い、第2受動素子P2bとして、L=10nHのインダクタを用いた。さらに、第3受動素子P3として、C=2pFのコンデンサを用い、第4受動素子P4として、L=5.6nHのインダクタを用いた。
【0048】
この測定結果からわかるように、自由空間状態で得られている第1〜第4の共振周波数f1〜f4が、人体装着状態とした場合でも、共振周波数の変化が小さく、変動が抑制されていることがわかる。
代表的に、900MHz帯域の第1の共振周波数f1と、1800MHz帯域の第2の共振周波数f2との場合について下記に示す。
・第1の共振周波数f1
<自由空間状態>
共振周波数:859.3MHz(VSWR=2.50)
<人体装着状態>
共振周波数:800.5MHz(VSWR=1.02)
・第2の共振周波数f2
<自由空間状態>
共振周波数:1829.9MHz(VSWR=1.08)
<人体装着状態>
共振周波数:1710.5MHz(VSWR=1.07)
【0049】
次に、上記実施例のアンテナ装置について、第1の共振周波数f1及び第2の共振周波数f2での放射パターンについて測定した結果を、図6に示す。
なお、アンテナ素子ATの延在方向(第2延在部E2の延在方向)をY方向とし、第2延在部E2から第4延在部E4へ向かう第3延在部E3の延在方向をX方向とし、基板本体2表面に対する垂直方向をZ方向とした。この際のYZ面及びZX面に対する垂直偏波、水平偏波及び電力利得を測定した。また、この放射パターン測定は、上記自由空間状態で行った。
【0050】
なお、YZ面における第1の共振周波数f1の平均電力利得は、−3.0dBiであり、第2の共振周波数f2の平均電力利得は、−7.6dBiであった。また、ZX面における第1の共振周波数f1の平均電力利得は、−4.5dBiであり、第2の共振周波数f2の平均電力利得は、−2.2dBiであった。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、基板本体とは別にメイン基板を設けた構成としたが、1つのメイン基板に全てのエレメントとグランドパターンとを設けたアンテナ装置としても構わない。
また、上記実施形態では、第1エレメントのみにアンテナ素子を設けているが、第2エレメントや第4エレメントにアンテナ素子を設けて各エレメントの短縮化を行い、装置全体の小型化を図っても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1…アンテナ装置、2…基板本体、2B…メイン基板、3…第1エレメント、4…第2エレメント、5…第3エレメント、6…第4エレメント、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E1a…幅広部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、GND…グランドパターン、G2…メイングランド部、K…開口部、P1a,P1b…第1受動素子、P2a,P2b…第2受動素子、P3…第3受動素子、P4…第4受動素子、FP…給電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6