特許 5880384 空気式防舷材

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】5880384

(24)【登録日】2016年2月12日

(45)【発行日】2016年3月9日

(54)【発明の名称】空気式防舷材

(51)【国際特許分類】

   E02B 3/26 20060101AFI20160225BHJP

【ＦＩ】

   E02B3/26 K

   E02B3/26 B

【請求項の数】6

【全頁数】10

(21)【出願番号】特願2012-225814(P2012-225814)

(22)【出願日】2012年10月11日

(65)【公開番号】特開2014-77295(P2014-77295A)

(43)【公開日】2014年5月1日

【審査請求日】2014年12月23日

(73)【特許権者】

【識別番号】000006714

【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001368

【氏名又は名称】清流国際特許業務法人

(74)【代理人】

【識別番号】100129252

【弁理士】

【氏名又は名称】昼間 孝良

(74)【代理人】

【識別番号】100066865

【弁理士】

【氏名又は名称】小川 信一

(74)【代理人】

【識別番号】100066854

【弁理士】

【氏名又は名称】野口 賢照

(74)【代理人】

【識別番号】100117938

【弁理士】

【氏名又は名称】佐藤 謙二

(74)【代理人】

【識別番号】100138287

【弁理士】

【氏名又は名称】平井 功

(74)【代理人】

【識別番号】100155033

【弁理士】

【氏名又は名称】境澤 正夫

(74)【代理人】

【識別番号】100068685

【弁理士】

【氏名又は名称】斎下 和彦

(72)【発明者】

【氏名】和泉 南

(72)【発明者】

【氏名】榊原 繁樹

(72)【発明者】

【氏名】金子 理人

(72)【発明者】

【氏名】山田 周

(72)【発明者】

【氏名】原 義明

【審査官】 須永 聡

(56)【参考文献】

【文献】 特開平１０−００１９２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０４−０３８３１４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−２３５７８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平１１−１５２７２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開昭６０−０７０６２７（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｅ０２Ｂ ３／２６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

取付板と前衝板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材において、前記取付板または前衝板のいずれか一方の前記可撓性中空体の内部に位置する表面に、内部空間を有する剛体のケーシングが突設され、このケーシングにオリフィス部と安全弁とが設けられ、前記オリフィス部は前記可撓性中空体の内部空間のうちの前記ケーシングの外側の空間と前記ケーシングの内部空間とを連通させ、前記安全弁は前記可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して、この安全弁を通じて前記可撓性中空体の内部空間のうちの前記ケーシングの外側の空間とケーシングの内部空間とを連通させて前記ケーシングの内部空間に空気を流入させて前記可撓性中空体の内圧の上昇を抑制し、前記ケーシングの内部空間に流入した空気は前記オリフィス部を通じて前記ケーシングの外側の前記可撓性中空体の内部空間に排出させる構成にしたことを特徴とする空気式防舷材。

【請求項2】

前記ケーシングの突出高さを、前記取付板と前衝板との間隔の４０％以下に設定するとともに、前記ケーシングの内部空間の容積を前記可撓性中空体の内部空間の容積の１０％〜３５％に設定した請求項１に記載の空気式防舷材。

【請求項3】

前記安全弁が複数設けられた請求項１または２に記載の空気式防舷材。

【請求項4】

前記複数設けられた安全弁のうち、少なくとも１つの安全弁が異なる所定圧力で開弁する設定にした請求項３に記載の空気式防舷材。

【請求項5】

前記複数設けられた安全弁のすべてが同じ所定圧力で開弁する設定にした請求項３に記載の空気式防舷材。

【請求項6】

前記安全弁が、開弁する所定圧力を変えることができる圧力可変構造である請求項１〜５のいずれかに記載の空気式防舷材。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、取付板と前衝板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材に関し、さらに詳しくは、可撓性中空体の損傷を抑制するとともに、エネルギー吸収体の耐用期間を長くすることができる空気式防舷材に関するものである。

【背景技術】

【0002】

空気式防舷材の１つのタイプとして、取付板と前衝板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材がある。可撓性中空体は補強層が埋設されたゴムにより形成され、取付板および前衝板に気密的に接続される。取付板は岸壁等に取り付けられて、前衝板には船舶が当接する。船舶が前衝板に当接して可撓性中空体が圧縮されることにより、船舶から受けるエネルギーが吸収される。船舶が強く前衝板に衝突する等、船舶から受けるエネルギーが過大であると、可撓性中空体が過剰に圧縮されて損傷することがある。

【0003】

そこで、可撓性中空体の内部にハニカム構造のエネルギー吸収体を設けた空気式防舷材が提案されている（特許文献１参照）。この提案の空気式防舷材によれば、可撓性中空体が過剰に圧縮される前に前衝板がエネルギー吸収体に当接して船舶から受けるエネルギーを吸収するため、可撓性中空体が過剰圧縮されて損傷する不具合を低減させることができる。しかしながら、エネルギー吸収体は、エネルギーを吸収することによって変形、損傷するので、その損傷具合が大きければエネルギー吸収体として機能しなくなるため、空気式防舷材を交換しなければならない。それ故、可撓性中空体の損傷を抑制しつつ、エネルギー吸収体の耐用期間を長くすることができる空気式防舷材が望まれている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開平１１−１５２７２８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明の目的は、可撓性中空体の損傷を抑制するとともに、エネルギー吸収体の耐用期間を長くすることができる空気式防舷材を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材は、取付板と前衝板との間に可撓性中空体が設けられた空気式防舷材において、前記取付板または前衝板のいずれか一方の前記可撓性中空体の内部に位置する表面に、内部空間を有する剛体のケーシングが突設され、このケーシングにオリフィス部と安全弁とが設けられ、前記オリフィス部は前記可撓性中空体の内部空間のうちの前記ケーシングの外側の空間と前記ケーシングの内部空間とを連通させ、前記安全弁は前記可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して、この安全弁を通じて前記可撓性中空体の内部空間のうちの前記ケーシングの外側の空間とケーシングの内部空間とを連通させて前記ケーシングの内部空間に空気を流入させて前記可撓性中空体の内圧の上昇を抑制し、前記ケーシングの内部空間に流入した空気は前記オリフィス部を通じて前記ケーシングの外側の前記可撓性中空体の内部空間に排出させる構成にしたことを特徴とする。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、取付板または前衝板のいずれか一方の可撓性中空体の内部に位置する表面に、内部空間を有する剛体のケーシングが突設されているので、圧縮される前の初期の可撓性中空体の容積がケーシングの体積分だけ小さくなる。そのため、可撓性中空体の圧縮初期の反力を大きくすることができる。反力が大きくなることに伴って、可撓性中空体が過剰に圧縮され難くなるので損傷を防止するには有利になる。

【0008】

また、ケーシングに設けられた安全弁は可撓性中空体の内圧が所定圧力に達した時に開弁して、この安全弁を通じて可撓性中空体の内部空間のうちのケーシングの外側の空間とケーシングの内部空間とを連通させるので、可撓性中空体の内圧がある程度大きくなると、ケーシングの内部空間に空気が流入して可撓性中空体の内圧の上昇を抑制できる。そして、ケーシングの内部空間に流入した空気は、ケーシングに設けられたオリフィス部を通じてケーシングの外側の可撓性中空体の内部空間に徐々に排出される。これにより、可撓性中空体が圧縮される前の状態に復元するので、エネルギー吸収体として機能するケーシングを損傷させることなく、繰り返し長期間使用することが可能になる。

【0009】

さらに、可撓性中空体が圧縮される前の状態に復元する速度が遅いので、この復元する際に生じる反力が小さくなる。そのため、この復元の際に前衝板に当接している船舶の揺動を低減させることができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の空気式防舷材の実施形態を例示する断面図である。

【図2】図１の可撓性中空体が圧縮初期の状態の空気式防舷材を例示する断面図である。

【図3】図１の安全弁が開弁した状態の空気式防舷材を例示する断面図である。

【図4】図３のケーシングの拡大図である。

【図5】図１の可撓性中空体の圧縮量と反力との関係を例示するグラフ図である。

【図6】空気式防舷材の別の実施形態を例示する断面図である。

【図7】空気式防舷材のさらに別の実施形態を例示する断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明の空気式防舷材を図に示した実施形態に基づいて説明する。

【0012】

図１に例示するように本発明の空気式防舷材１（以下、防舷材１という）は、取付板２と前衝板３と可撓性中空体４とを備えている。取付板２は岸壁１１などに取付けられ、前衝板３には船舶の側舷などが当接する。

【0013】

可撓性中空体４は、取付板２と前衝板３との間に介在して取付板２および前衝板３に気密的に接合されている。可撓性中空体４は、例えば、円筒状であり、補強層６を埋設したゴム５により構成されている。取付板２と前衝板３との間隔Ｈ、即ち、可撓性中空体４の高さ寸法は、防舷材１に要求されるエネルギー吸収性能等に基づいて設定される。

【0014】

取付板２の表面にはケーシング７が突出高さｈで突設されていて、ケーシング７が可撓性中空体４の内部空間４ａに配置された構造になっている。ケーシング７は、鋼や鉄等の剛性材で形成された剛体である。このケーシング７が、可撓性中空体４が過剰に圧縮されて損傷することを防止する。

【0015】

ケーシング７は、前衝板３の表面に突設して可撓性中空体４の内部空間４ａに配置することもできる。ケーシング７を前衝板３に取付けると、岸壁１１に対して片持ち梁状に設置される可撓性中空体４には、ケーシング７の重さが作用する。したがって、ケーシング７の重さによって可撓性中空体４に生じる負荷をなくすには、ケーシング７を取付板２に取付けるとよい。

【0016】

ケーシング７には、オリフィス部１０と安全弁８とが設けられている。オリフィス部１０は可撓性中空体４の内部空間４ａのうちのケーシング７の外側の空間とケーシング７の内部空間７ａとを連通させる。ケーシング７の壁面に形成した小穴（例えば、開口面積が０．５ｍｍ²〜８０ｍｍ²程度、または開口直径１ｍｍ〜１０ｍｍ程度）をオリフィス部１０にすることができる。小穴に限らず小穴と同じ効果を奏するものをオリフィス部１０として用いることができる。オリフィス部１０の数は特に限定されないが、何らかの原因で詰まることも考えられるので、複数設けることが好ましい。

【0017】

安全弁８は可撓性中空体４の内圧Ｐ（内部空間４ａのうちのケーシング７の外側の空間の圧力）が所定圧力Ｐ１に達した時に開弁する。そして、開弁した安全弁８を通じて、内部空間４ａのうちのケーシング７の外側の空間とケーシング７の内部空間７ａとを連通させる。

【0018】

この実施形態の安全弁８は、ケーシング７の壁面に形成された貫通穴９ａと、弁体９ｂと、バネ等の付勢部材９ｃと、シール部材９ｄとで構成されている。弁体９ｂが付勢部材９ｃによって貫通穴９ａが形成された壁面に向かって付勢される。そして、弁体９ｂに取り付けられたシール部材９ｄが貫通穴９ａの外周を囲むように壁面に圧接されることにより、安全弁８は閉弁して貫通穴９ａを塞ぐ構造になっている。安全弁８は、この実施形態に例示する構造に限らず、可撓性中空体４の内圧Ｐが所定圧力Ｐ１に達した時に開弁する構造であればよい。

【0019】

図１に例示する可撓性中空体４が圧縮されていない防舷材１の前衝板３に船舶が当接すると、図２に例示するように前衝板３が押圧されて、可撓性中空体４が圧縮された状態になる。本発明の防舷材１は、ケーシング７が可撓性中空体４の内部空間４ａに設置されているので、圧縮される前の初期の可撓性中空体４の容積は、内部空間４ａからケーシング７の体積を差し引いた値になる。そのため、可撓性中空体４の内部空間４ａにケーシング７を設置しない場合に比して、可撓性中空体４の圧縮初期の反力Ｒを大きくすることができる。この反力Ｒが大きくなることに伴って、可撓性中空体４が過剰に圧縮され難くなるので損傷を防止するには有利になる。

【0020】

図３、図４に例示するように前衝板３がさらに押圧されることにより、可撓性中空体４がさらに圧縮されて、可撓性中空体４の内圧Ｐが所定圧力Ｐ１に達すると、この所定圧力Ｐ１により押圧された弁体９ｂが付勢部材９ｃの付勢力に対抗して貫通穴９ａが形成された壁面から離れる方向に移動する。これにより、シール部材９ｄが壁面から離れて安全弁８が開弁する。安全弁８が開弁する所定圧力Ｐ１は、例えば、防舷材１の保証耐圧力の２０％〜９０％程度に設定する。

【0021】

この開弁した安全弁８を通じて、可撓性中空体４の内部空間４ａのうちのケーシング７の外側の空間とケーシング７の内部空間７ａとが連通する。このように、可撓性中空体４の内圧Ｐがある程度大きくなると、ケーシング７の内部空間７ａに空気Ａが流入して可撓性中空体４の内圧Ｐの上昇が抑制される。

【0022】

そして、ケーシング７の内部空間７ａに流入した空気Ａは、オリフィス部１０を通じてケーシング７の外側の可撓性中空体４の内部空間４ａに徐々に排出される。ケーシング７の内部空間７ａからの空気Ａの排出により、可撓性中空体４は圧縮される前の状態に復元する。このように本発明では、ケーシング７を損傷させることなく、エネルギー吸収体として機能させるので、繰り返し長期間使用することが可能になる。

【0023】

さらに、ケーシング７の内部空間７ａから、小孔のオリフィス部１０を通じて空気Ａを排出させるので、可撓性中空体４が圧縮される前の状態に復元する速度が遅くなる。そのため、この復元する際に生じる反力Ｒが小さくなり、この復元の際に前衝板３に当接している船舶の揺動を低減させることができる。

【0024】

オリフィス部１０の総開口面積を適切に決めて、例えば、複数あるオリフィス部１０の総開口面積をケーシング７の壁面積の１％〜３０％、好ましくは２％〜１５％に設定する。これにより、船舶が低速で接岸した場合には可撓性中空体４がゆっくりと圧縮されるので、内部空間４ａの圧力上昇に対してオリフィス部１０の直径および総開口面積が十分に大きく内部空間４ａとケーシング７の内部空間７ａの圧力は等しくなるためケーシング７の影響はなくなり、当初の防舷材１の持つソフトな反力で船舶の接岸エネルギーを吸収することができる。

【0025】

一方、船舶が台風などの強風により異常接岸した場合には、可撓性中空体４は動的に圧縮されるので、内部空間４ａの圧力上昇に対してオリフィス部１０の直径および総開口面積が十分に小さく、可撓性中空体４の容積は、内部空間４ａからケーシング７の体積を差し引いた値となり反力Ｒを大きくすることができる。それ故、船舶の接岸速度に応じて空気式防舷材の特性を活かしたソフトな反力と異常接岸に対応した大きな反力の両方を得ることができる。

【0026】

図５には、可撓性中空体４が圧縮されて復元するまでの１サイクルにおける圧縮量Ｘと反力Ｒとの関係を模式的に示している。図５では実線が本発明を示し、一点鎖線は可撓性中空体４の内部空間４ａにケーシング７を設置していない従来の防舷材を示している。

【0027】

圧縮量Ｘが０以上Ｘ１未満の圧縮初期の状態では上述したように、従来の防舷材に比して圧縮される可撓性中空体４の容積が小さくなる。それ故、本発明の防舷材１は従来の防舷材に比して大きな反力Ｒを得ることができる。

【0028】

可撓性中空体４がさらに圧縮されて圧縮量ＸがＸ１になり、可撓性中空体４の内圧Ｐが所定圧力Ｐ１に達すると（この時の反力ＲはＲ１）、安全弁８が開弁してケーシング７の内部空間７ａに空気Ａが流入する。圧縮量ＸがＸ２になるまでは、可撓性中空体４は概ね一定の内圧Ｐ１になって内圧上昇が抑制され、反力Ｒは概ね一定の反力Ｒ１になる。

【0029】

可撓性中空体４がさらに圧縮されて圧縮量ＸがＸ２になり、流入する空気Ａによって内部空間７ａの圧力が可撓性中空体４の内圧と同等にまで上昇すると反力Ｒが上昇する。反力Ｒ２になるまで可撓性中空体４が圧縮された後に、圧縮が解除されると可撓性中空体４は圧縮前の状態に復元する。この復元する速度は上述したように遅いので反力Ｒは小さくなる。そのため、従来の防舷材に比して、船舶の揺動を低減させるには有利になる。

【0030】

ケーシング７の突出高さｈは、取付板２と前衝板３との間隔Ｈの４０％以下に設定するとともに、ケーシング７の内部空間７ａの容積を可撓性中空体４の内部空間４ａの容積の１０％〜３５％に設定することが好ましい。突出高さｈが間隔Ｈの４０％超に設定されていると、ケーシング７と押圧された前衝板３とが干渉し易くなるためである。また、ケーシング７の内部空間７ａの容積が可撓性中空体４の内部空間４ａの容積の１０％未満では、可撓性中空体４の圧縮初期の反力Ｒを十分に大きくすることが難しく、３５％超ではケーシング７と押圧された前衝板３とが干渉し易くなるためである。

【0031】

尚、ケーシング７と押圧された前衝板３とが干渉し難くするために、前衝板３と対向するケーシング７の壁面は前衝板３と平行な平面状にするとよい。また、実施形態のように安全弁８をケーシング７の内部空間７ａ側に設けると、安全弁８と押圧された前衝板３との干渉を防止できる。

【0032】

安全弁８は、何らかの原因で故障することも考えられるので、図６に例示するように複数設けることが好ましい。複数の安全弁８のすべてが同じ所定圧力Ｐ１で開弁する設定にすることもできる。或いは、複数の安全弁８のうち、少なくとも１つの安全弁８が異なる所定圧力Ｐ１で開弁する設定にすることもできる。

【0033】

開弁する所定圧力Ｐ１をすべての安全弁８に対して同じ設定にした場合、図５に例示したように可撓性中空体４の内圧Ｐが所定圧力Ｐ１（反力Ｒ１）に達すると、一定反力Ｒ１のままで可撓性中空体４の圧縮量Ｘは、Ｘ１からＸ２まで比較的早く変化し、圧縮速度が速くなる。

【0034】

一方、開弁するタイミングが異なる安全弁８を混在させた場合、図５に例示した反力Ｒが一定になる水平直線部分が複数に分割されることになる。これにより、前者の場合に比して、可撓性中空体４の圧縮速度を遅くすることが可能になる。

【0035】

複数の安全弁８を設けた場合、図７に例示するようにケーシング７を分割して複数にすることもできる。複数に分割したケーシング７の内部空間７ａの容積はすべて同じ設定にすることもでき、異なる設定にすることもできる。

【0036】

防舷材１に要求されるエネルギー吸収性能に応じて、例えば、開弁する所定圧力Ｐ１が低い安全弁８を取付けたケーシング７の内部空間７ａの容積を、開弁する所定圧力Ｐ１が高い安全弁８を取付けたケーシング７の内部空間７ａの容積よりも小さくする。或いは、その反対で、開弁する所定圧力Ｐ１が低い安全弁８を取付けたケーシング７の内部空間７ａの容積を、開弁する所定圧力Ｐ１が高い安全弁８を取付けたケーシング７の内部空間７ａの容積よりも大きくする。このようにして、それぞれのケーシング７の内部空間７ａの圧力を、他のケーシング７の内部空間７ａの圧力とは、独立に制御することもできる。

【0037】

安全弁８は、開弁する所定圧力Ｐ１を変えることができる圧力可変構造にすることもできる。この実施形態では、付勢部材９ｃを付勢力が異なるものに交換することにより、容易に安全弁８が開弁する圧力を変えることができる。このような圧力可変構造にすれば、安全弁８を変えるだけで、エネルギー吸収性能を異ならせた様々な防舷材１を容易に製造することが可能になる。したがって、様々な大きさの船舶に適応する防舷材１を早期に製造コストを抑えて製造するには有利になる。

【符号の説明】

【0038】

１ 空気式防舷材
２ 取付板
３ 前衝板
４ 可撓性中空体
４ａ 内部空間
５ ゴム
６ 補強層
７ ケーシング
７ａ 内部空間
８ 安全弁
９ａ 貫通穴
９ｂ 弁体
９ｃ 付勢部材
９ｄ シール部材
１０ オリフィス部
１１ 岸壁

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】