(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜3を参照しつつ本発明の第1実施形態に係る自動車のバックドア100を説明する。なお、
図1においては、バックドア100の内部構造が把握しやすいようにアウタパネル2の図示を省略している。
図2は、
図1のA部の拡大図であり、
図3(a)、
図3(b)、および
図3(c)は、それぞれ、
図2のB−B断面図、C−C断面図、およびD−D断面図である。
図3においては、アウタパネル2を図示している。
【0013】
本実施形態のバックドア100は、車体(不図示)の後端部上部に固定されるヒンジ6(
図3参照)に取り付けられる上開き式のバックドアであり、インナパネル1、アウタパネル2、補強板3・4などを具備してなる。また、ヒンジ6の個数は一般的な2つとされている。バックドア100はヒンジ6まわりに回動する。なお、
図1におけるバックドア100の姿勢は、当該バックドア100が車体に取り付けられた状態のものである。車体の前後方向・上下方向・幅方向を
図1中に示している。以下の説明において、上部・幅方向といった方向を示す言葉を用いるときは、バックドア100が車体に取り付けられた状態のときの方向をいう。
また、バックドア100において、2つのヒンジ6の取付部の構造はいずれも同じである。
【0014】
(インナパネル)
インナパネル1は、車体の内側に配置されるパネルである。本実施形態では、インナパネル1のうちの略中央部分付近から上枠1b部分へかけて開口Sが設けられている。この開口Sに対向するアウタパネル2側には窓ガラス(不図示)が取り付けられる。なお、開口Sの形状・大きさ(インナパネル1全体に対する割合)などは、本実施形態のものに限られるものではない。
【0015】
インナパネル1の上枠1bには当該バックドア100を2つのヒンジ6に取り付けるための計4つのパネル取付孔1aが設けられている(
図3参照、なお
図3には、1組のパネル取付孔1aのみが示されている)。1つのヒンジ6に対して2つのパネル取付孔1aが設けられている。これら2つのパネル取付孔1aは、上枠1bが延びる方向(インナパネル1の幅方向)に所定の間隔をあけて設けられている。なお、本発明では、1つのヒンジ6に対して少なくとも2つのパネル取付孔1aが設けられていればよい。すなわち、1つのヒンジ6に対して3つ以上のパネル取付孔1aが設けられていてもよい(後述する第1補強板取付孔3a、第2補強板取付孔4aについても同様である)。
【0016】
また、インナパネル1には、その外周枠に沿って、当該インナパネル1の剛性を高めるための山形形状部13(凸形状部)が連続して設けられている。この山形形状部13は、アウタパネル2側に凸な形状とされている。なお、山形形状部13は必須のものではない。
【0017】
(アウタパネル)
アウタパネル2は、インナパネル1の外側に配置されるパネルであり、車体の外表面を形成するパネルである。アウタパネル2の端部は折り返されている(
図3(b)・(c)参照)。この折り返された部分にインナパネル1の端部が挿入されて圧着される。
【0018】
(第1補強板)
インナパネル1とアウタパネル2との間には第1補強板3が配置される。この第1補強板3は、インナパネル1(インナパネル1の内面)に固定されている。第1補強板3は、バックドア100の上部コーナー部(上部角部)とヒンジ6が取り付けられるインナパネル部分を補強するためのものである。
【0019】
第1補強板3の端部には、インナパネル1に設けられたパネル取付孔1aに重ね合わせられる第1補強板取付孔3aが設けられている(
図3参照)。第1補強板取付孔3aの孔数は、パネル取付孔1aの孔数に合わせて2つとされている。
【0020】
第1補強板3は、インナパネル1の上部コーナー部(上部角部)を覆うように、インナパネル1の上枠1bおよび側枠1cに沿って湾曲して延びる形状とされている。
【0021】
第1補強板3には、インナパネル1の上枠1bおよび側枠1cに沿って湾曲して延びる第1凸形状部9が設けられている。この第1凸形状部9は、アウタパネル2側に凸な形状とされ、第1補強板3の一端から他端まで連続して設けられている。なお、第1補強板3の一端から他端までの全ての範囲に第1凸形状部9が設けられている必要は必ずしもない。例えば、2つの第1補強板取付孔3aに沿う部分に、当該2つの第1補強板取付孔3a間の距離に少し余裕を持たせた長さだけ設けられていてもよい。また、2つの第1補強板取付孔3aの並ぶ方向に平行でなくてもよい。
【0022】
第1補強板3には、第1凸形状部9に加えて第2凸形状部10が設けられている。第2凸形状部10は、アウタパネル2側に凸な形状であって、第1凸形状部9の側部(側面)から2つの第1補強板取付孔3aの間部分(すなわち上方)へ延ばされたものである。第1凸形状部9および第2凸形状部10は、例えばプレス加工により板を折り曲げて形成される(他の凸形状部についても同様である)。
【0023】
また、2つの第1補強板取付孔3aを囲うような形態で、当該2つの第1補強板取付孔3aの周囲にはインナパネル1側に凹な段差部3bが設けられている。第2凸形状部10は、上下の段差部3b間に掛け渡されるような形態とされている(
図2参照)。
【0024】
(第2補強板)
第1補強板3とアウタパネル2との間には第2補強板4が配置される。この第2補強板4は、第1補強板3に当接される。第2補強板4は、第1補強板3と同様に、ヒンジ6が取り付けられるインナパネル部分を補強するためのものである。
【0025】
第2補強板4には、第1補強板3に設けられた第1補強板取付孔3aに重ね合わせられる第2補強板取付孔4aが設けられている(
図3参照)。第2補強板取付孔4aの孔数は、パネル取付孔1a・第1補強板取付孔3aの孔数に合わせて2つとされている。
【0026】
第2補強板4は、長円形状とされている。また、第2補強板4の周囲は、アウタパネル2側に折り曲げられている。この折り曲げられた部分を折り曲げ部4bとして
図2などに示されている。
【0027】
第2補強板4において、2つの第2補強板取付孔4aの間部分には、第1補強板3に設けられた第2凸形状部10に対応する第2補強板凸形状部11が設けられている。第2補強板凸形状部11は、アウタパネル2側に凸な形状とされ、第2凸形状部10に重ねられるように第2凸形状部10よりも少し大きなものとされる。この第2補強板凸形状部11は、第2補強板4の周囲にその全周に渡って連続形成された折り曲げ部4bに掛け渡されるような形態とされている(
図2参照)。
【0028】
また、第2補強板4の第2補強板取付孔4a部分にはナット8が溶接固定されている。ヒンジ6に設けられた取付孔(不図示)と、インナパネル1のパネル取付孔1aと、第1補強板3の第1補強板取付孔3aと、第2補強板4の第2補強板取付孔4aと、を重ね合わせ、そこにボルト7を挿入し、ナット8にボルト7を螺合することで、インナパネル1をヒンジ6に固定する。このとき、第1補強板3の第2凸形状部10と、第2補強板4の第2補強板凸形状部11とは重なった状態となる(
図3(a)参照)。なお、第2凸形状部10の頂部と第2補強板凸形状部11の頂部とは、
図3(a)に示されているように、当接している必要は必ずしもない。両者の間に隙間があってもよい。
【0029】
(作用・効果)
本発明の一実施形態であるバックドア100では、インナパネル1の上枠1bに沿って延ばされた第1凸形状部9の側部から第1補強板取付孔3aの間部分に向けて第2凸形状部10が延ばされていることで、バックドア100の開閉によりヒンジ6取付部周辺にかかる力は、当該取付孔3aの間に形成された第2凸形状部10に作用するだけでなく、インナパネル1の上枠1bに沿って延ばされた第1凸形状部9にも伝達される(分散する)。
しかも、第1凸形状部9が延びる方向と、上枠1b部分における第2凸形状部10が延びる方向とが交差するので、第1凸形状部9と第2凸形状部10とは相互の接続部分において剛性が高まり合う(剛性向上に関して相乗効果が生じる)。これらより、バックドア100は、ヒンジ6取付部周辺が従来よりも変形しにくい構造となっている。
【0030】
また、本実施形態では、2つの第1補強板取付孔3aを囲う段差部3b間に第2凸形状部10が掛け渡されるような形態とされているので、第2凸形状部10は、その剛性がより高められている。なお、段差部3bの一部と、第1凸形状部9の側部の一部とは共通する。
【0031】
また、第1補強板3(第1凸形状部9)は、インナパネル1の上枠1bおよび側枠1cに沿って湾曲して延びる形状とされている。これにより、ヒンジ6取付部周辺にかかる力が伝達される第1補強板3(第1凸形状部9)の剛性がより高められている。
【0032】
また、第1補強板3とともに第2補強板4が取り付けられている。しかも、この第2補強板4には、第1補強板3の第2凸形状部10に対応する第2補強板凸形状部11が第2補強板取付孔4aの間部分に設けられている。これらにより、ヒンジ6取付部周辺の剛性がより高められ、ヒンジ6取付部周辺はより変形しにくい。
【0033】
また、この第2補強板凸形状部11は、第2補強板4の周囲にその全周に渡って連続形成された折り曲げ部4bに掛け渡されるような形態とされている。これにより、第2補強板凸形状部11は、その剛性がより高められている。さらには、折り曲げ部4bにより、第2補強板4の平板部の剛性も高まる。
【0034】
また、第2補強板4の第2補強板取付孔4a部分にはナット8があらかじめ溶接固定されている。そのため、インナパネル1をヒンジ6に固定する際に、ナット8の位置合わせが不要であり、ヒンジ6へのインナパネル1の取付調整が行いやすい。
【0035】
(第2実施形態)
図4(a)は、本発明の第2実施形態を説明するための図である。なお、第1実施形態のバックドア100を構成する部品と同じ部品については同一の符号を付している(後述する他の実施形態についても同様)。
【0036】
図4(a)に示したように、本実施形態のバックドア102は、第1実施形態のバックドア100から第2補強板4を省いたものである。この実施形態の場合、ナット8を第1補強板3に直接当てる。
【0037】
(作用・効果)
本実施形態のバックドア102は、第1実施形態のバックドア100よりも部品数が少ないため、当該バックドア102の構造によるとコスト低減効果が得られる。
【0038】
(第3実施形態)
図4(b)は、本発明の第3実施形態を説明するための図である。本実施形態のバックドア103は、第1実施形態のバックドア100において、第1補強板3の第2凸形状部10の頂部と、第2補強板4の第2補強板凸形状部11の頂部とをスポット溶接により溶接接合したものである。スポット溶接の箇所を符号Pを付して
図4(b)に示している。
【0039】
(作用・効果)
第2凸形状部10と第2補強板凸形状部11とが重ねられるだけでなく、さらに溶接接合されることで、ヒンジ6取付部周辺の剛性はより高まる。
【0040】
(第4実施形態)
図4(c)は、本発明の第4実施形態を説明するための図である。本実施形態のバックドア104では、インナパネル1のうちの2つのパネル取付孔1aの間部分にも、第1補強板3に設けられた第2凸形状部10に対応するパネル凸形状部12が設けられている。
図4(c)に示したように、パネル凸形状部12と第2凸形状部10とは重ねられる。このパネル凸形状部12は、アウタパネル2側に凸な形状であって、山形形状部13の側部(側面)から2つのパネル取付孔1aの間部分へ延ばされている。なお、第2凸形状部10の頂部とパネル凸形状部12の頂部とは、
図4(c)に示されているように、当接している必要は必ずしもない。両者の間に隙間があってもよい。
【0041】
(作用・効果)
インナパネル1にも、その取付孔の間部分に凸形状部(パネル凸形状部12)を設け、この凸形状部を第1補強板3の第2凸形状部10に重ねることで、ヒンジ6取付部周辺の剛性はより高まる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0043】
例えば、本発明のバックドアの構造は、横開き式のバックドアにも適用することもできる。この場合、ヒンジ6は、車体(不図示)の後端部側部に固定されることになり、本発明における補強板は、それに合わせて、例えばインナパネル1の側枠1c部分に取り付けられることになる。
【0044】
第1補強板3(第1凸形状部9)は、インナパネル1の上枠1bおよび側枠1cに沿って湾曲して延びる形状のものに限られるものではない。インナパネル1の上枠1b部分のみに、当該上枠1bに沿って横に延びる形状とされていてもよい。