特許第5880427号(P5880427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880427
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】カードエッジコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20160225BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20160225BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H01R12/72
   H01R13/64
   H01R13/42 E
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-287428(P2012-287428)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130721(P2014-130721A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守安 聖典
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 明洋
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−091047(JP,A)
【文献】 特開平02−244580(JP,A)
【文献】 実開昭63−167684(JP,U)
【文献】 特開平08−185920(JP,A)
【文献】 実開昭56−096583(JP,U)
【文献】 特開平07−245155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/72
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネス側ハウジングに複数の端子金具を並列配置したハーネス側コネクタと、基板側ハウジングに回路基板を取り付けた基板側コネクタとを備え、前記ハーネス側ハウジング内の基板収容空間に前記回路基板が挿入されると、前記端子金具の弾性接触片が前記回路基板に弾性接触するようになっているカードエッジコネクタであって、
並列配置された前記複数の端子金具に沿うように設けられ、前記弾性接触片の弾性押圧作用に起因して前記回路基板側から前記端子金具に付与される反力を受け止める支持壁部と、
前記支持壁部の前端縁に連なるように設けられた前壁部と、
前記前壁部に形成され、前記端子金具の並列方向と略平行にスリット状に開口し、前記基板収容空間に連通する基板挿入口と、
前記前壁部に形成され、前記基板挿入口の開口縁のうち前記支持壁部と略平行な一対の長辺側開口縁同士を連結する連結部と、
前記回路基板に形成され、前記基板収容空間への挿入状態で前記連結部との干渉を回避する切欠部と、
内部に前記複数の端子金具を収容する端子収容室が形成された端子保持部材とを備え、
前記前壁部が、前記端子保持部材の前端部に形成されているとともに、前記端子収容室を構成しており、
前記端子保持部材の前端部外周にはフランジ部が形成されており、
前記連結部と前記切欠部が、前記端子金具の並列方向に当接し、且つ圧入された状態で嵌合可能であり、
前記端子保持部材と前記回路基板の線膨張係数が概ね同じであることを特徴とするカードエッジコネクタ。
【請求項2】
前記連結部と前記切欠部が、前記長辺側開口縁の長さ方向中央位置から外れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカードエッジコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードエッジコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハーネス側ハウジングに複数の端子金具を並列配置したハーネス側コネクタと、基板側ハウジングに回路基板を取り付けた基板側コネクタとを嵌合して構成されるカードエッジコネクタが開示されている。両ハウジングを嵌合すると、複数の端子金具の弾性接触片が、回路基板のエッジ部に並列配置された複数の接点部に弾性接触するようになっている。
【0003】
ハーネス側ハウジングは、一対の支持壁部と、支持壁部の前端縁に連なる前壁部と、前壁部においてスリット状に開口する基板収容空間とを有している。複数の端子金具は、一対の支持壁部に沿って並列配置され、端子金具の弾性接触片が基板収容空間に臨んでいる。基板収容空間に回路基板が挿入されると、弾性接触片が回路基板を弾性的に押圧し、その反力が支持壁部で受け止められることにより、端子金具と回路基板との間で所定の接触圧が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−091047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のハーネス側ハウジングは、端子金具の並列数が多くなって支持壁部の幅寸法が大きくなると、支持壁部の剛性が低下する。この場合、支持壁部は、弾性接触片の弾性押圧作用に起因する回路基板側からの反力を受け止めることができず、湾曲するように変形してしまい、その結果、端子金具と回路基板との間の接触圧が低下することが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具と回路基板との間の接触信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカードエッジコネクタは、
ハーネス側ハウジングに複数の端子金具を並列配置したハーネス側コネクタと、基板側ハウジングに回路基板を取り付けた基板側コネクタとを備え、前記ハーネス側ハウジング内の基板収容空間に前記回路基板が挿入されると、前記端子金具の弾性接触片が前記回路基板に弾性接触するようになっているカードエッジコネクタであって、
並列配置された前記複数の端子金具に沿うように設けられ、前記弾性接触片の弾性押圧作用に起因して前記回路基板側から前記端子金具に付与される反力を受け止める支持壁部と、
前記支持壁部の前端縁に連なるように設けられた前壁部と、
前記前壁部に形成され、前記端子金具の並列方向と略平行にスリット状に開口し、前記基板収容空間に連通する基板挿入口と、
前記前壁部に形成され、前記基板挿入口の開口縁のうち前記支持壁部と略平行な一対の長辺側開口縁同士を連結する連結部と、
前記回路基板に形成され、前記基板収容空間への挿入状態で前記連結部との干渉を回避する切欠部と、
内部に前記複数の端子金具を収容する端子収容室が形成された端子保持部材とを備え、
前記前壁部が、前記端子保持部材の前端部に形成されているとともに、前記端子収容室を構成しており、
前記端子保持部材の前端部外周にはフランジ部が形成されており、
前記連結部と前記切欠部が、前記端子金具の並列方向に当接し、且つ圧入された状態で嵌合可能であり、
前記端子保持部材と前記回路基板の線膨張係数が概ね同じであるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
支持壁部が弾性接触片の弾性押圧作用に起因する反力を受け止められなかった場合は、支持壁部が湾曲変形するのに伴い、基板挿入口の開口縁のうち支持壁部と略平行な一対の長辺側開口縁の間隔が広がるように前壁部が拡開変形する。この点に着眼し、本発明は、一対の長辺側開口縁同士を連結部で連結して、前壁部の拡開変形を規制し、支持壁部の湾曲変形を防止した。これにより、支持壁部は、弾性接触片の弾性押圧作用に起因する反力を確実に受け止めることができるので、端子金具と回路基板との間の接触圧が所定値に保たれ、接触信頼性に優れている。
また、この構成によれば、連結部と切欠部との嵌合によって、回路基板の複数の接点部と複数の端子金具が、端子金具の並列方向に位置決めされるので、接触信頼性に優れている。また、この構成によれば、連結部と切欠部の圧入によって、回路基板と端子金具の相対変位が規制されるので、振動を受けても接触圧が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のカードエッジコネクタの斜視図
図2】カードエッジコネクタの側断面図
図3】カードエッジコネクタの平断面図
図4】ハーネス側コネクタと基板側コネクタを離脱させた状態をあらわす平断面図
図5】ハーネス側コネクタの正面図
図6図5のX−X線断面図
図7図5のY−Y線断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカードエッジコネクタは、
前記連結部と前記切欠部が、前記長辺側開口縁の長さ方向中央位置から外れた位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、回路基板を反転した不正な姿勢で基板挿入口に挿入しようとすると、回路基板が連結部と干渉するので、回路基板の不正な向きでの挿入を防止できる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図7を参照して説明する。本実施例のカードエッジコネクタは、図2,3に示すように、ハーネス側コネクタHと、基板側コネクタPとを備えて構成されている。基板側コネクタPは、ハーネス側コネクタHに対しその前方から嵌合される。以下の説明において、前方と後方の向きに関しては、ハーネス側コネクタHを基準とする。また、前後方向と両コネクタH,Pの嵌合方向は、同義で用いる。
【0013】
<ハーネス側コネクタH>
ハーネス側コネクタHは、ハーネス側ハウジング10と、複数の端子金具50と、端子金具50と同数の電線53とを備えて構成されている。ハーネス側ハウジング10内には、複数の端子金具50が左右方向(幅方向)に所定のピッチで並列配置された状態で収容されている。各端子金具50の後端部には電線53が接続され、これらの電線53は、ハーネス側ハウジング10の後方へ導出されている。
【0014】
<ハーネス側ハウジング10>
ハーネス側ハウジング10は、ハウジング本体11と、一括ゴム栓23と、リヤホルダ25と、端子保持部材30と、シールリング45と、キャップ46と、弾性部材49とを備え、これらの部品11,23,25,30,45,46を組み付けて構成されている。
【0015】
ハウジング本体11は、後述する弾性撓み可能なランス18を形成するために、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)材料からなる。PBT樹脂の線膨張係数は、概ね100ppm/℃である。ハウジング本体11の外形は、全体として、高さ寸法(上下寸法)が幅寸法及び前後寸法に比べて小さく設定された扁平な形状をなす。ハウジング本体11は、本体部12と、本体部12の前端外周縁から前方へ片持ち状に突出した形態のフード部13とを一体に形成して構成されている。図6,7に示すように、本体部12の内部には、その前端面のほぼ全領域を凹ませた単一形態の前部空間14と、後端面のほぼ全領域を凹ませた単一形態の後部空間15が形成されている。前部空間14内には、端子保持部材30が収容される。
【0016】
図2に示すように、本体部12のうち前部空間14と後部空間15との間には、両空間14,15を連通させた形態であって、上下2段に分かれた複数の後部キャビティ16が、幅方向に所定ピッチで並列配置された状態で形成されている。上段の後部キャビティ16と下段の後部キャビティ16は、隔壁17によって区画されている。また、本体部12内には、各後部キャビティ16の前端から斜め前方へ片持ち状に延出して前部空間14内に位置するランス18が形成されている。ランス18は、上下方向(ハーネス側ハウジング10に対する端子金具50の挿入方向と交差する方向)へ弾性撓みし得るようになっている。
【0017】
フード部13の内部空間は、本体部12の前部空間14と連通している。フード部13内には、その前方から基板側コネクタPが収容されるようになっている。フード部13を構成する上壁部19には、ロックアーム20が形成されている。ロックアーム20は上下方向(両コネクタH,Pの嵌合方向と交差する方向)へ弾性撓みし得るようになっている。また、フード部13を構成する上壁部19と下壁部21には、その前端部外面を段差状に凹ませた形態の係止凹部22が形成されている。
【0018】
図2に示すように、後部空間15内には、一括ゴム栓23とリヤホルダ25が収容されている。一括ゴム栓23には、上下2段に分かれた複数のシール孔24が、前後に貫通して形成されている。一括ゴム栓23は、後部空間15の内周面に液密状に密着してシールする。リヤホルダ25は、一括ゴム栓23の後方に近接して配置された状態で、ハウジング本体11に組み付けられる。リヤホルダ25は、一括ゴム栓23の後方への離脱を規制する。リヤホルダ25には、各シール孔24と対応する複数の貫通孔26が形成されている。
【0019】
<端子保持部材30>
端子保持部材30は、回路基板62と同程度の線膨張係数とするため、ガラス入りのPPS樹脂(ポリフェニレンスルファイド)材料からなる。ガラス入りPPS樹脂の線膨張係数は、概ね10〜30ppm/℃(例えば、東レ株式会社のPPS樹脂であるトレリナ(登録商標)は、流れ方向が23ppm/℃、直角方向が31ppm/℃)であり、ハウジング本体11のPBT樹脂の約1/10〜3/10である。端子保持部材30は、全体として、高さ寸法(上下寸法)が幅寸法に比べて小さく設定された扁平な形状をなす。図2,3に示すように、端子保持部材30は、上下一対の支持壁部31と、上下両支持壁部31の左右両端縁同士を連結する左右一対の側壁部32と、両支持壁部31の前端縁同士を連結した形態であって側壁部32の前端に連なる前壁部33とを有する単一部品である。これらの壁部31,32,33は、いずれも、端子保持部材30の外壁面を構成する。
【0020】
端子保持部材30は、前部空間14内に収容されている。図3に示すように、端子保持部材30の左右両側壁部32の外面に形成した弾性係止片34が、前部空間14の左右両内側面に形成した係止段部27に係止され、この係止作用により、端子保持部材30は前部空間14内に保持されている。図2,3に示すように、端子保持部材30の前端部外周にはフランジ部35が形成され、このフランジ部35には、ゴム製のシールリング45の後端部が係止されている。この係止作用により、シールリング45は、その外周をフード部13の後端部内周に密着させ、端子保持部材30よりも前方に配置された状態でハウジング本体11に組み付けられる。
【0021】
図6に示すように、端子保持部材30の内部には、両支持壁部31の内面から、夫々、上下方向中央に向かってリブ状に突出する複数の仕切壁36が形成されている。仕切壁36は、前後方向に細長く、左右方向に並列配置されている。支持壁部31と仕切壁36とで区画された空間は、前部キャビティ37となっている。したがって、端子保持部材30の内部には、上下2段に分かれた複数(後部キャビティ16と同数)の前部キャビティ37が、幅方向に所定ピッチ(後部キャビティ16と同じピッチ)で並列配置されて形成されている。上記支持壁部31の内面と仕切壁36の側面は、前部キャビティ37に、直接臨んでいる。複数の前部キャビティ37と複数の後部キャビティ16は、夫々、1対1で前後に並ぶように対応配置されて端子収容室38を構成する。そして、ハウジング本体11の本体部12と端子保持部材30は、複数の端子金具50を並列配置して収容するための端子収容部39を構成する。
【0022】
図2に示すように、端子保持部材30の内部空間のうち、上段の前部キャビティ37と下段の前部キャビティ37との間の空間は、上下寸法が左右方向に比べて小さく設定された単一の基板収容空間40となっている。基板収容空間40には、上段の前部キャビティ37と下段の前部キャビティ37が、直接、臨んでいる。前壁部33には、左右方向に細長くスリット状に開口する基板挿入口41が前後に貫通して形成されている。基板収容空間40の前端は基板挿入口41に連通している。
【0023】
また、前壁部33には、前部キャビティ37に収容された端子金具50の箱部51の前端部を支えるための上下一対の受け板部42が形成されている。受け板部42は、基板挿入口41の開口縁のうち左右方向(基板挿入口41の長さ方向)に沿った上下一対の長辺側開口縁43から、後方へ片持ち状に突出した形態である。前部キャビティ37内に端子金具50の箱部51が収容された状態では、箱部51の前端部が受け板部42により、基板収容空間40側へ変位することを規制される。これにより、端子金具50は、上下方向へ姿勢が傾かないように保持される。
【0024】
支持壁部31の前端は前壁部33に連なっているため、支持壁部31が端子保持部材30の外面側(上方又は下方)へ膨らむような変形を生じた場合、前壁部33が上下に拡開するように変形し、これに伴って、基板挿入口41の上下両長辺側開口縁43が離間するように相対変位する。本実施例1では、基板挿入口41の上下の拡開変形を防止するための手段として、前壁部33には、図3,5,6に示すように、長辺側開口縁43同士を連結する形態の1つの連結部44が形成されている。
【0025】
連結部44の前端縁は前壁部に連なり、連結部44の上端縁は上側の上壁部31に連なり、連結部44の下端縁は下側の上壁部31に連なり、連結部44の後端縁は隔壁17の前端に連なっている。つまり、連結部44は、上下一対の支持壁部31の前端から後端に至る全領域に亘って連なっている。したがって、この連結部44により、上側の支持壁部31と下側の支持壁部31は、互いに離間するように変形することが規制されている。
【0026】
また、基板挿入口41に連結部44を形成したことにより、図5,6に示すように、基板挿入口41は左右2つの開口領域41L,41Rに区画されている。したがって、単一空間である基板収容空間40に対して、2つ(複数の)の開口領域41L,41Rが対応している。連結部44は、長辺側開口縁43の長さ方向中央位置から左右方向に外れた位置に配置されている。つまり、連結部44は、左右方向において非対称な配置であり、2つの開口領域41L,41Rの形状と大きさは、左右方向において非対称である。
【0027】
図2に示すように、フード部13には、その前端の開口部を前方から塞ぐ合成樹脂製のキャップ46が取り付けられている。フード部13内には、両コネクタH,Pが正規嵌合した状態で基板側ハウジング60の全体が収容されるようになっている。したがって、キャップ46は、全体として平板状をなす。キャップ46の上端縁と下端縁には、夫々、係止アーム47が形成されている。フード部13に取り付けられたキャップ46は、係止アーム47をフード部13の係止凹部22に係止させることにより、フード部13から前方へ離脱しないように保持される。このキャップ46とフード部13は、基板側ハウジング60を収容するためのハウジング収容部48を構成する。
【0028】
ハウジング収容部48は、端子収容部39の前方に隣接するように配置されている。また、ハウジング収容部48の内部空間は、基板挿入口41を介して基板収容空間40に連通している。ハウジング収容部48内には、ゴム材料からなる弾性部材49が収容されている。弾性部材49は、キャップ46の内面(後面)に対し、そのほぼ全領域に亘って密着するように配置される。弾性部材49の後面は、基板側ハウジング60の背面60Rに対し、そのほぼ全領域に亘って密着する。キャップ46をフード部13に組み付けると、弾性部材49は、キャップ46と基板側ハウジング60との間で弾性的に潰れ変形した状態で挟み付けられる。
【0029】
<端子金具50>
端子金具50は、所定形状に打ち抜いた2枚の金属板材を曲げ加工して組み付けることにより、全体として前後方向(端子金具50の並列方向と直交する方向)に細長い形状に成形されたものである。図2に示すように、端子金具50の前端側領域は、周知形態の箱部51となっている。端子金具50の後端側領域は、周知形態の圧着部52となっており、圧着部52には、ワイヤーハーネスを構成する電線53の前端部が圧着により接続されている。箱部51には、弾性接触片54が設けられている。弾性接触片54の一部は、箱部51から外方へ突出している。
【0030】
端子金具50は、リヤホルダ25の貫通孔26と一括ゴム栓23のシール孔24を順に通過させて、端子収容室38内に挿入されている。挿入された端子金具50は、箱部51の後端をランス18に係止されることにより、抜止め状態に保持されている。端子金具50が挿入された状態では、箱部51と弾性接触片54が前部キャビティ37内に配置され、圧着部52が後部キャビティ16内に配置される。つまり、箱部51(端子金具50の前端側部分)は、その前端から後端に至る全長に亘り、端子保持部材30によって保持される。また、圧着部52(端子金具50の後端側部分)は、その全長に亘りハウジング本体11内に配置される。
【0031】
各端子収容室38に端子金具50を挿入した状態では、弾性接触片54の一部が、支持壁部31とは反対側に突出して、基板収容空間40内に臨んでいる。また、各端子金具50は、仕切壁36によって左右から挟まれることにより、左右方向(並列方向)に大きくガタ付かないように、端子保持部材30に対して位置決めされる。
【0032】
<基板側コネクタP>
図2〜4に示すように、基板側コネクタPは、合成樹脂製の基板側ハウジング60と、回路基板62とをモールド成形によって一体化させたものである。基板側ハウジング60は、全体として、高さ寸法(上下寸法)が幅寸法に比べて小さく設定された扁平な形状をなす。図2に示すように、基板側ハウジング60の上面(外面)には、ロック突起61が形成されている。回路基板62の上下両面(表裏両面)には、電子部品等(図示省略)が実装されているともに、回路が印刷により形成されている。回路基板62のうちハーネス側コネクタH側の端縁部は、端子金具50との接続手段としての接続縁部63となっている。
【0033】
回路基板62は、ガラスエポキシ樹脂材料からなる。ガラスエポキシ樹脂材料の線膨張係数は、端子保持部材30の材料であるガラス入りPPS樹脂とほぼ同等の概ね10〜15ppm/℃である。回路基板62のうち接続縁部63を除いた全領域は、基板側ハウジング60内に埋設されている。したがって、回路基板62の接続縁部63は、基板側ハウジング60の正面60Fからハーネス側ハウジング10側へ突出した状態となっている。図3,4に示すように、この接続縁部63の上下両面には、夫々、回路を構成する複数の接点部64が、端子金具50と同じピッチで並列配置されている。また、接続縁部63には、ハーネス側ハウジング10の連結部44と対応する切欠部65が形成されている。
【0034】
<作用及び効果>
ハーネス側コネクタHと基板側コネクタPを嵌合する際には、キャップ46をフード部13から外した状態で、基板側コネクタPをフード部13内に挿入する。挿入過程で、回路基板62の接続縁部63が基板挿入口41を通過して基板収容空間40内に進入する。このとき、切欠部65と連結部44とが圧入状態となって嵌合する。両コネクタH,Pが正規嵌合されると、ロックアーム20とロック突起61の係止により、両コネクタH,Pが嵌合状態にロックされる。また、接続縁部63の上面の接点部64と下面の接点部64に対し、上段の端子金具50と下段の端子金具50の弾性接触片54が、夫々、弾性的に当接し、回路基板62と端子金具50とが導通可能に接続される。また、フード部13の内面と基板側ハウジング60の外面との間がシールリング45によりシールされる。
【0035】
基板側コネクタPをフード部13に挿入した後は、弾性部材49を基板側ハウジング60の背面60Rに密着させるとともに、弾性部材49の前面にキャップ46を当接させ、そのキャップ46をフード部13に組み付ける。すると、弾性部材49が前後方向に潰されるように弾性変形し、この弾性部材49の弾性復元力により、基板側ハウジング60の正面60Fが端子収容部39(端子保持部材30)の前面39Fに弾性的に押圧される。この弾性的な押圧作用により、両ハウジング10,60の前後方向への相対変位が規制される。また、弾性的な押圧に起因して両ハウジング10,60の間に生じる摩擦力により、両ハウジング10,60の嵌合方向と交差する方向(上下方向及び左右方向)への相対変位も規制される。以上により、両コネクタH,Pの嵌合が完了する。
【0036】
本実施例1のカードエッジコネクタは、ハーネス側ハウジング10に、複数の端子金具50を収容する端子収容部39と、端子収容部39の前面39Fに臨むように配されて基板側ハウジング60を収容するハウジング収容部48を設け、ハウジング収容部48内に、端子収容部39と基板側ハウジング60を嵌合方向と平行に接近する方向へ付勢する弾性部材49を設けた構成である。
【0037】
この構成によれば、弾性部材49の付勢力により、基板側ハウジング60と端子収容部39の相対変位が規制されるので、両ハウジング10,60の相対変位に起因する端子金具50と回路基板62との間の振動による位置ズレが防止される。したがって、本実施例のカードエッジコネクタは、端子金具50と回路基板62の接触信頼性に優れている。
【0038】
また、本実施例1のカードエッジコネクタは、ハウジング収容部48が、端子収容部39と一体をなして端子収容部39の前方へ突出するフード部13と、フード部13に対しその前端の開口を塞ぐように組み付けられるキャップ46とを備えて構成されている。この構成によれば、両ハウジング10,60を嵌合すると、基板側ハウジング60はフード部13内に収容されるので、キャップ46を組み付けるまでの間、両ハウジング10,60を相対変位しないように位置決めすることができる。
【0039】
また、両コネクタH,Pが正規嵌合した状態では、基板側ハウジング60の全体がフード部13内に収容されるようになっている。したがって、両コネクタH,Pの嵌合後、弾性部材49とキャップ46を組み付けるまでの間、基板側ハウジング60を異物の干渉から保護することができる。
【0040】
また、本実施例1のカードエッジコネクタは、弾性部材49が、フード部13内の基板側ハウジング60の背面60Rと、キャップ46の内面との間に配置されている。この構成によれば、基板側ハウジング60は、その背面60R側からの弾性部材49による付勢によって端子収容部39側へ押圧され、この押圧作用によって、ハーネス側ハウジング10と基板側ハウジング60の相対変位が規制される。端子収容室39の前面39Fと基板側ハウジング60の正面60Fとの間に弾性部材49を介在させる場合に比べると、回路基板62の基板側ハウジング60からの突出寸法を短くできる。
【0041】
本実施例1のカードエッジコネクタは、弾性部材49が、ハウジング収容部48とは別体の部品であって、ハウジング収容部48の内部に収容されている。もし、ハウジング収容部48を構成する部品と弾性部材49とを一体に形成しようとする場合、型抜きの可否や弾性強度等の制約が生じるため、設計上の自由度が低い。これに対し、本実施例1では、弾性部材49をハウジング収容部48とは別体部品としたので、ハウジング収容部48と弾性部材49を設計するに際して、自由度が高い。
【0042】
本実施例1のカードエッジコネクタは、基板側ハウジング60が、モールド成形によって回路基板62と一体化されているので、基板側ハウジング60と回路基板62との間で相対変位が生じない。そして、基板側ハウジング60とハーネス側ハウジング10との相対変位は、弾性部材49によって規制されているので、端子金具50に対する回路基板62の相対変位が確実に規制される。
【0043】
また、端子金具50と回路基板62を接続した状態では、端子金具50の弾性接触片54が回路基板62に対して弾性的に当接するため、この弾性接触片54の弾性復元力に起因する反力が、回路基板62側から端子金具50側に付与される。この反力は、端子金具50を挟んで回路基板62とは反対側に位置する支持壁部31で受け止められる。ところが、支持壁部31は、並列配置された前記複数の端子金具50に沿うように設けられているため、端子金具50の並列数が多くて支持壁部31の幅寸法が大きくなると、支持壁部31の剛性が低下する。この場合、支持壁部31は、回路基板62側からの反力を受け止めることができず、回路基板62から遠ざかる方向(上方又は下方へ)へ膨らむように湾曲変形してしまう虞がある。このような変形が生じると、端子金具50と回路基板62との間の接触圧が低下することが懸念される。
【0044】
そこで、本実施例1では、支持壁部31の前端縁に連なる前壁部33の基板挿入口41に着眼し、基板挿入口41の開口縁のうち支持壁部31と略平行な一対の長辺側開口縁43同士を、連結部44で連結した。これにより、基板挿入口41が上下に拡開することを規制できるので、前壁部33の上縁部と下縁部が外側へ膨らむように変形することも規制され、ひいては、上下両支持壁部31の湾曲変形が防止される。これにより、支持壁部31は、弾性接触片54の弾性押圧作用に起因する反力を確実に受け止めることができるので、端子金具50と回路基板62との間の接触圧が所定値に保たれる。
【0045】
また、基板挿入口41には、回路基板62の接続縁部63が挿入されるため、回路基板62が連結部44と干渉して両コネクタH,Pの嵌合に支障を来すことが懸念される。しかし、回路基板62の接続縁部63には、基板収容空間40への挿入過程で連結部44との干渉を回避する切欠部65が形成されているので、両コネクタH,Pの嵌合に支障はない。
【0046】
本実施例1のカードエッジコネクタは、前壁部33が、複数の端子金具50を収容する端子収容室38を構成し、連結部44と切欠部65が、端子金具50の並列方向に当接した状態で嵌合されるようになっている。この構成によれば、連結部44と切欠部65との嵌合により、回路基板62の複数の接点部64と複数の端子金具50の弾性接触片54が、端子金具50の並列方向に位置決めされるので、接触信頼性に優れている。しかも、連結部44と切欠部65は圧入状態で嵌合されるので、回路基板62と端子金具50の相対変位が、左右方向だけでなく、前後方向及び上下方向においても規制される。したがって、カードエッジコネクタが振動を受けても、端子金具50と回路基板62の接触圧が安定する。
【0047】
本実施例1のカードエッジコネクタは、連結部44と切欠部65が、長辺側開口縁43の長さ方向中央位置から外れた位置に配置されている。この構成によれば、回路基板62を左右に反転した不正な姿勢で基板挿入口41に挿入しようとすると、回路基板62が連結部44と干渉するので、回路基板62の不正な向きでの挿入を防止できる。
【0048】
本実施例1のカードエッジコネクタは、ハーネス側ハウジング10が、複数の端子金具50を並列方向において位置決めした状態で収容する端子収容部39を備えており、端子収容部39の少なくとも一部(端子保持部材30)が、回路基板62の材料(ガラスエポキシ樹脂)と線膨張係数が概ね同じ材料(PPS樹脂)で構成されている。この構成によれば、カードエッジコネクタが高温になったときに、端子金具50の並列ピッチと、回路基板62の接点部64の並列ピッチとの間にずれが生じ難い。したがって、本実施例1のカードエッジコネクタは接触信頼性に優れている。
【0049】
本実施例1のカードエッジコネクタは、端子収容部39が、端子金具50を抜止めするための弾性撓み可能なランス18が形成されたハウジング本体11と、ハウジング本体11とは別体をなし、線膨張係数が回路基板62と概ね同じ材料からなる端子保持部材30とを備えて構成されている。この構成によれば、熱伸縮時における回路基板62の接点部64と端子金具50との並列ピッチのずれを抑制しながら、弾性撓み可能なランス18によって端子金具50を確実に抜止することが可能である。
【0050】
本実施例1のカードエッジコネクタは、端子金具50が、回路基板62の接点部64に弾性接触する弾性接触片54を備えており、端子保持部材30が、端子金具50のうち少なくとも弾性接触片54と対応する部分を並列方向に位置決めして保持するようになっている。この構成によれば、熱伸縮時における弾性接触片54と接点部64とのピッチずれを、効果的に抑制できる。
【0051】
また、端子収容部39の前端を構成する端子保持部材30と、端子収容部39の後端側を構成する本体部12は、線膨張係数が異なるため、熱伸縮の過程で、端子金具50の前端側と後端側との間で左右方向への変位量に違いが生じ、その結果、端子金具50の姿勢が左右方向に傾くことが懸念される。しかし、本実施例1では、端子金具50の前端側部分が、弾性接触片54を保持する箱部51となっていて、この箱部51が、その全長に亘り、端子保持部材30によって並列方向に位置決めされた状態で保持されている。したがって、熱伸縮の過程では、端子金具50の向きが端子保持部材30によって一定に保たれる。
【0052】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、連結部を、長辺側開口縁の長さ方向中央位置から外れた位置に配置し、連結部によって区画される2つの開口領域を左右非対称としたが、連結部を、長辺側開口縁の長さ方向中央位置に配置し、連結部によって区画される2つの開口領域を左右対称としてもよい。
(2)上記実施例1では、1つの基板挿入口に連結部を1つだけ設けたが、1つの基板挿入口に複数の連結部を設けてもよい。この場合、複数の連結部は、長辺側開口縁の長さ方向において対称な配置と、長辺側開口縁の長さ方向において非対称な配置のいずれの配置としてもよい。
(3)上記実施例1では、端子金具が回路基板の表裏両面に接触するようにしたが、本発明は、端子金具が回路基板における表裏いずれか一方の面だけに接触するカードエッジコネクタにも適用できる。
<参考例>
(1)上記実施例1では、連結部と切欠部が、端子金具の並列方向に当接するようにしたが、連結部と切欠部を非接触する形態も考えられる。
(2)上記実施例1では、連結部と切欠部を圧入するようにしたが、連結部と切欠部を、大きな摩擦抵抗を発生させずに嵌合・離脱するように寸法設定する形態も考えられる。
【符号の説明】
【0053】
H…ハーネス側コネクタ
P…基板側コネクタ
10…ハーネス側ハウジング
31…支持壁部
33…前壁部
38…端子収容室
40…基板収容空間
41…基板挿入口
43…長辺側開口縁
44…連結部
50…端子金具
54…弾性接触片
60…基板側ハウジング
62…回路基板
65…切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7