特許第5880845号(P5880845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880845
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】原子炉格納容器のハッチ構造
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/02 20060101AFI20160225BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   G21C13/02 QGDP
   G21C13/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-65325(P2012-65325)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195342(P2013-195342A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真也
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−128191(JP,A)
【文献】 特開平07−042113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 13/00
G21C 13/02
E01D 15/06
E01D 15/24
E01D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の側面に配置されるトンネル部と、該トンネル部の内側の開口を塞ぐハッチカバーと、該ハッチカバーの開放時に前記原子炉格納容器内のフロアに架設されるテンポラリーブリッジと、を有する原子炉格納容器のハッチ構造において、
前記テンポラリーブリッジに回動可能に連結された第一ヒンジ部と、前記トンネル部に回動可能に連結された第二ヒンジ部と、を有するリンク部材と、
架設された前記テンポラリーブリッジを前記トンネル部側に折り畳んで横倒しにする途中で前記第二ヒンジ部の回動を拘束するロック機構と、
を有することを特徴とする原子炉格納容器のハッチ構造。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記トンネル部に形成された挿通孔と、該挿通孔に挿通されるロックピンと、を有し、前記ロックピンに前記リンク部材を係止させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器のハッチ構造。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記リンク部材の回動角度が45〜90度の範囲内に収まる位置に形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の原子炉格納容器のハッチ構造。
【請求項4】
前記トンネル部の天井部に配置されたチェーンブロックと、該チェーンブロックに掛け回されるとともに一端が前記テンポラリーブリッジの先端部に接続され他端に操作部を有するチェーンと、を備えた揚重手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器のハッチ構造。
【請求項5】
前記揚重手段は、前記テンポラリーブリッジの収容時には前記チェーンの緊張を解いた状態で放置され、前記テンポラリーブリッジの架設時には前記テンポラリーブリッジから取り外し可能に構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の原子炉格納容器のハッチ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器のハッチ構造に関し、特に、テンポラリーブリッジを容易に収容可能な原子炉格納容器のハッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、最も普及している原子炉は、減速材及び冷却材に通常の水を使用した軽水炉であり、軽水炉には、加圧水型(Pressurized Water Rector)と沸騰水型(Boiling Water Rector)の二種類がある。例えば、加圧水型原子炉(PWR)は、核分裂反応によって生じた熱エネルギーにより、一次冷却材である加圧水を300℃以上に熱して蒸気発生器に供給し、該蒸気発生器から発生した二次冷却材である軽水(高温高圧蒸気)によりタービン発電機を回転させて発電する方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された加圧水型原子炉(PWR)の原子炉格納容器内には、炉心を形成する原子炉圧力容器、一次冷却系側(炉心)で発生した熱を二次冷却系側に伝達させる熱交換器を構成する蒸気発生器、炉心に直接注水可能な静的非常用炉心冷却系(安全注入系)を構成する炉心補給水タンク、蓄圧注入系タンク、燃料取替用水等の機器が配置される。なお、原子炉格納容器の外側には原子炉建屋が配置される。
【0004】
ここで、原子炉格納容器は、内部の放射性物質を外部に漏らさないようにするための容器であり、一般に、円筒形状の胴部と該胴部の上部に配置されるドーム状屋根部とにより構成される。また、原子炉格納容器には、人が出入りするためのハッチの他に、原子炉格納容器内に大型の機器等を搬入するための大口径ハッチが設けられることが多い(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
かかる大口径ハッチは、原子炉格納容器の側面に配置される円筒形状のトンネル部と、該トンネル部の内側の開口を塞ぐ鏡板(ハッチカバー)と、機器搬入時に使用されるテンポラリーブリッジと、を有する。テンポラリーブリッジは、トンネル部と原子炉格納容器内に敷設されたフロアとの間に隙間が空いている場合に必要となる。このテンポラリーブリッジは、数トンの重量を有することから、機器搬入時に外部から移動して架設することは無駄が多い。そこで、トンネル部にリンク機構を介して配置し、テンポラリーブリッジを回動させることによって、架設できるように構成される。そして、テンポラリーブリッジの収容時には、床面の段差部や鏡板に立て掛けたり、特許文献2に記載されたように、折り畳んで床面に横倒しにしたりするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−85282号公報
【特許文献2】特開2010−281795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、鏡板(ハッチカバー)を原子炉格納容器の内側から開閉する場合には、原子炉格納容器の外側に傾倒させてテンポラリーブリッジを立て掛ける収容方法では、立て掛けたテンポラリーブリッジを固定する方法がなく、振動等の外力によってテンポラリーブリッジが傾倒し、鏡板(ハッチカバー)を損傷させてしまう等の問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたように、テンポラリーブリッジを折り畳んで床面に横倒しにすれば、外力によって倒れる心配はないものの、数トンもの重量を有するテンポラリーブリッジを180度回動させて収容したり架設したりすることは困難な作業であるところ、特許文献2には詳細な説明がなされていない。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、テンポラリーブリッジの収容時における傾倒を防止することができるとともに、架設及び収容を容易に行うことができる、原子炉格納容器のハッチ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、原子炉格納容器の側面に配置されるトンネル部と、該トンネル部の内側の開口を塞ぐハッチカバーと、該ハッチカバーの開放時に前記原子炉格納容器内のフロアに架設されるテンポラリーブリッジと、を有する原子炉格納容器のハッチ構造において、前記テンポラリーブリッジに回動可能に連結された第一ヒンジ部と、前記トンネル部に回動可能に連結された第二ヒンジ部と、を有するリンク部材と、架設された前記テンポラリーブリッジを前記トンネル部側に折り畳んで横倒しにする途中で前記第二ヒンジ部の回動を拘束するロック機構と、を有することを特徴とする原子炉格納容器のハッチ構造が提供される。
【0011】
前記ロック機構は、前記トンネル部に形成された挿通孔と、該挿通孔に挿通されるロックピンと、を有し、前記ロックピンに前記リンク部材を係止させるように構成されていてもよい。さらに、前記挿通孔は、例えば、前記リンク部材の回動角度が45〜90度の範囲内に収まる位置に形成される。
【0012】
前記トンネル部の天井部に配置されたチェーンブロックと、該チェーンブロックに掛け回されるとともに一端が前記テンポラリーブリッジの先端部に接続され他端に操作部を有するチェーンと、を備えた揚重手段を有していてもよい。
【0013】
前記揚重手段は、前記テンポラリーブリッジの収容時には前記チェーンの緊張を解いた状態で放置され、前記テンポラリーブリッジの架設時には前記テンポラリーブリッジから取り外し可能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明に係る原子炉格納容器のハッチ構造によれば、二つのヒンジ部を有するリンク部材を介してトンネル部とテンポラリーブリッジとを接続した場合であっても、ロック機構を配置することにより、一方のヒンジ部を拘束することができ、テンポラリーブリッジを他方のヒンジ部を基準にして容易に折り畳むことができ、テンポラリーブリッジをトンネル部の床面上に横倒しすることができる。したがって、テンポラリーブリッジの収容時における傾倒を防止することができるとともに、テンポラリーブリッジの収容を容易に行うことができる。
【0015】
また、テンポラリーブリッジの架設及び収容を行う揚重手段を配置して、テンポラリーブリッジの収容時にはチェーンの緊張を解いた状態で放置し、テンポラリーブリッジの架設時にはテンポラリーブリッジから取り外し可能に構成することにより、テンポラリーブリッジが重量物の場合であっても、テンポラリーブリッジの架設及び収容を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る原子炉格納容器のハッチ構造を備えた原子炉を示す全体構成図である。
図2図1に示したハッチ構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は部分平面図、である。
図3】テンポラリーブリッジのロック状態を示す図であり、(a)は第一実施形態、(b)に変形例、を示している。
図4】テンポラリーブリッジの収容手順を示す図であり、(a)は第一工程、(b)は第二工程、(c)は第三工程、(d)は第四工程、(e)は第五工程、を示している。
図5】テンポラリーブリッジの架設手順を示す図であり、(a)は第一工程、(b)は第二工程、(c)は第三工程、(d)は第四工程、(e)は第五工程、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る原子炉格納容器のハッチ構造を備えた原子炉を示す全体構成図である。図2は、図1に示したハッチ構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は部分平面図、である。図3は、テンポラリーブリッジのロック状態を示す図であり、(a)は第一実施形態、(b)に変形例、を示している。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る原子炉格納容器10のハッチ1(ハッチ構造)は、図1図3に示したように、原子炉格納容器10の側面に配置されるトンネル部11と、トンネル部11の内側の開口を塞ぐハッチカバー12と、ハッチカバー12の開放時に原子炉格納容器10内のフロア10fに架設されるテンポラリーブリッジ13と、を有し、テンポラリーブリッジ13に回動可能に連結された第一ヒンジ部21と、トンネル部11に回動可能に連結された第二ヒンジ部22と、を有するリンク部材2と、架設されたテンポラリーブリッジ13をトンネル部11側に折り畳んで横倒しにする途中で第二ヒンジ部22の回動を拘束するロック機構3と、を有する。
【0019】
原子炉9は、例えば、図1に示したように、加圧水型原子炉(PWR)であって、原子炉格納容器10内には、炉心を形成する原子炉圧力容器91、一次冷却系側(炉心)で発生した熱を二次冷却系側に伝達させる熱交換器を構成する蒸気発生器92、炉心に直接注水可能な静的非常用炉心冷却系(安全注入系)を構成する炉心補給水タンク93、蓄圧注入系タンク94、燃料取替用水タンク95等の機器が配置される。また、原子炉格納容器10の外側には、原子炉建屋96が建造されており、原子炉格納容器10と原子炉建屋96との間には原子炉格納容器10を空冷する冷却流路を形成するバッフルプレート97が配置されている。
【0020】
原子炉格納容器10は、一般に、円筒形状の胴部10aと、胴部10aの上部に配置されるドーム状屋根部10bと、により構成される。また、原子炉建屋96は、原子炉格納容器10を遮蔽壁によって囲う構造体である。原子炉建屋96は、側部に複数の吸気口96aを有し、頂部に排気口96bを有する。また、排気口96bの外周には、貯水槽96cが形成されており、貯水槽96c内の水は散水管96dより、原子炉格納容器10のドーム状屋根部10b上に滴下される。散水管96dから滴下された水は、気化熱により原子炉格納容器10から熱を奪い、蒸発して排気口96bから外気に排気される。
【0021】
上述した原子炉9では、高温の原子炉格納容器10との間で熱交換して高温となった空気(冷却風)は、バッフルプレート97の内側の冷却流路に沿って上昇気流となり、排気口96bから外部に順次排気されるとともに、吸気口96aから吸気されバッフルプレート97の外側の冷却流路を下降した空気(冷却風)は、内側の冷却流路に自然に流れ込むこととなる。したがって、バッフルプレート97を備えた原子炉9では、自然対流によって、空気(冷却風)を吸気口96aから吸気して排気口96bから排気することにより、原子炉格納容器10を冷却することができる。
【0022】
上述したように原子炉格納容器10内には種々の機器が配置されることから、建造時やメンテナンス時には種々の機器を内部に搬入する必要があり、原子炉格納容器10の胴部10aの側面部には搬入通路を構成するハッチ1が配置される。図1では、胴部10aの側面部の一箇所にハッチ1を配置した場合を図示したが、かかる構成に限定されるものではなく、周上に複数のハッチ1を配置するようにしてもよいし、高さ方向に複数のハッチ1を配置するようにしてもよい。
【0023】
ハッチ1は、図1及び図2(a)に示したように、原子炉格納容器10の側面に配置されるトンネル部11と、トンネル部11の内側の開口を塞ぐハッチカバー12と、を有している。トンネル部11は、略円筒形状の外形を有する本体部11aと、本体部11aの外周面に形成されたフランジ部11bと、本体部11a内に形成された床構造体11cと、を有している。トンネル部11は、フランジ部11bを原子炉格納容器10に固定することによって、原子炉格納容器10に取り付けられる。なお、図2(a)において、テンポラリーブリッジ13を収容した状態を実線で図示し、テンポラリーブリッジ13を架設した状態を破線で図示している。
【0024】
床構造体11cは、原子炉格納容器10内のフロア10fとテンポラリーブリッジ13とを面一に接続する構造体であり、テンポラリーブリッジ13と面一に接続される床面11dと、テンポラリーブリッジ13との接続部を形成する段差部11eと、を有している。なお、原子炉建屋96の開口部96eに形成された床面96fとテンポラリーブリッジ13とを接続するテンポラリーブリッジ(図示せず)は、一般に、原子炉建屋96側に配置されており、ハッチ1には常設されていない。
【0025】
ハッチカバー12は、トンネル部11の本体部11aと一致する形状の筒部12aと、筒部12aの開口を塞ぐように配置される蓋部12bと、とから構成される鏡板構造を有している。トンネル部11の本体部11aとハッチカバー12との間には、リング状のシール(図示せず)が配置されており、原子炉格納容器10内の空気が外部に漏れないようにしている。かかるハッチカバー12は、昇降機(図示せず)によって吊り上げられて、上下又は左右に移動できるように構成されている。そして、ハッチ1を開放する場合には、ハッチカバー12は、トンネル部11の開口と干渉しない位置に移動される。
【0026】
テンポラリーブリッジ13は、図2(b)及び図3(a)に示したように、トンネル部11の床構造体11cの端面の両端部に、トンネル部11側に延びるように形成された一対のアーム部13aを有する。このアーム部13aは、リンク部材2とピン結合等により回動可能に連結され、第一ヒンジ部21を構成する。なお、図2(b)においてはテンポラリーブリッジ13を架設した状態を図示しており、図3(a)ではテンポラリーブリッジ13を収容途中でロックした状態を図示している。
【0027】
リンク部材2は、図2(b)及び図3(a)に示したように、テンポラリーブリッジ13とトンネル部11の床構造体11cとを連結する部材である。床構造体11cの段差部11eには、リンク部材2とピン結合等により回動可能に連結される支持部11fが立設されている。この支持部11fは、リンク部材2と連結されることにより、第二ヒンジ部22を構成する。リンク部材2は、アーム部13aと支持部11fとに連結される略板状部材であり、上部には床面11dと面一となる表面板が配置されていてもよいし、必要に応じて補強材が配置されていてもよい。かかる構成により、テンポラリーブリッジ13は、二つのヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)を有するリンク部材2を介して、トンネル部11(床構造体11c)に連結され、図2(a)に示したように、テンポラリーブリッジ13を折り畳んで床面11d上に横倒しすることができる。
【0028】
ところで、テンポラリーブリッジ13とトンネル部11(床構造体11c)とを二つのヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)を有するリンク部材2で連結したことにより、テンポラリーブリッジ13の折り畳み時に、テンポラリーブリッジ13の挙動が不安定となり、テンポラリーブリッジ13の表面と床面11dとが角部で接触したり、リンク部材2やヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)に過度の応力が生じたりしてしまう可能性がある。
【0029】
そこで、上述したハッチ1は、架設されたテンポラリーブリッジ13をトンネル部11側に折り畳んで横倒しにする途中で第二ヒンジ部22の回動を拘束するロック機構3を有している。ロック機構3は、トンネル部11に形成された挿通孔31と、挿通孔31に挿通されるロックピン32と、を有し、ロックピン32にリンク部材2を係止させるように構成されている。
【0030】
具体的には、リンク部材2は、図2(b)に示したように、ロックピン32を挿通可能な挿通孔33を有し、図3(a)に示したように、トンネル部11の挿通孔31とリンク部材2の挿通孔33とが一致した状態で、ロックピン32が両方の挿通孔31,33に挿通され、第二ヒンジ部22の回動が拘束される。したがって、リンク部材2は、ロックされた状態で位置決めされ、テンポラリーブリッジ13は第一ヒンジ部21を中心に回動されることとなる。
【0031】
すなわち、テンポラリーブリッジ13の折り畳み時におけるテンポラリーブリッジ13の挙動を安定させることができ、リンク部材2やヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)にかかる負荷をロックピン32で受けることができ、リンク部材2やヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)の故障を低減することができる。
【0032】
ロック機構3は、リンク部材2の回動を途中で停止させて、テンポラリーブリッジ13のみをトンネル部11の床構造体11c上に横倒しさせるものであることから、トンネル部11の挿通孔31は、リンク部材2の回動角度θが45〜90度の範囲内に収まる位置に形成される。回動角度θは、テンポラリーブリッジ13が架設された状態を基準(0度)として計算される。また、トンネル部11の挿通孔31とリンク部材2の挿通孔33とを一致させるために、リンク部材2が所定角度以上に回動できないようにするストッパを配置するようにしてもよい。例えば、リンク部材2を回動させると、その表面と床面11dとが接触することによってストッパを形成するようにしてもよいし、段差部11eやその側面部に別途ストッパを配置するようにしてもよい。
【0033】
また、図3(b)に示したように、ロックピン32は、必ずしもリンク部材2に挿通する必要はなく、ロックピン32の周面でリンク部材2の端面(例えば、下面)を係止するようにしてもよい。かかる構成によれば、第二ヒンジ部22の原子炉格納容器10側への回動を拘束することができ、回動した第二ヒンジ部22の戻り分が生じないように拘束することができ、図3(a)に示した第一実施形態と実質的に同様の効果を有する。
【0034】
なお、上述したアーム部13a、リンク部材2及び支持部11fの位置関係は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、テンポラリーブリッジ13の幅方向の内側から外側に向かって、支持部11f、リンク部材2、アーム部13aの順に連結されていてもよいし、支持部11fを省略して床面11dの下部構造体(梁部材)にリンク部材2を回動可能に直接連結するようにしてもよい。
【0035】
上述した本実施形態に係る原子炉格納容器のハッチ構造(ハッチ1)によれば、二つのヒンジ部(第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22)を有するリンク部材2を介してトンネル部11とテンポラリーブリッジ13とを接続した場合であっても、ロック機構3を配置することにより、一方のヒンジ部(第二ヒンジ部22)を拘束することができ、テンポラリーブリッジ13を他方のヒンジ部(第一ヒンジ部21)を基準にして容易に折り畳むことができ、テンポラリーブリッジ13をトンネル部11の床面11d上に横倒しすることができる。したがって、テンポラリーブリッジ13の収容時における傾倒を防止することができるとともに、テンポラリーブリッジ13の収容を容易に行うことができる。
【0036】
次に、上述したテンポラリーブリッジ13の収容方法及び架設方法について、図4及び図5を参照しつつ説明する。ここで、図4は、テンポラリーブリッジの収容手順を示す図であり、(a)は第一工程、(b)は第二工程、(c)は第三工程、(d)は第四工程、(e)は第五工程、を示している。図5は、テンポラリーブリッジの架設手順を示す図であり、(a)は第一工程、(b)は第二工程、(c)は第三工程、(d)は第四工程、(e)は第五工程、を示している。なお、上述した第一実施形態の構成部品と共通する部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
図5及び図6に示したテンポラリーブリッジ13の収容時及び架設時には、テンポラリーブリッジ13を吊り上げ可能な揚重手段4を使用する。揚重手段4は、例えば、トンネル部11の天井部に配置されたチェーンブロック41と、チェーンブロック41に掛け回されるとともに一端がテンポラリーブリッジ13の先端部に接続され他端に操作部42aを有するチェーン42と、を備えている。
【0038】
なお、揚重手段4は、かかる構成に限定されるものではなく、数トンの重量を有するテンポラリーブリッジ13を吊り上げ又は持ち上げて反転可能な構成であれば、小型クレーンやホイスト等であってもよいし、チェーンブロック41等の揚重手段4をトンネル部11の軸方向に移動可能となるように、レールやトロリを配置するようにしてもよい。
【0039】
まず、テンポラリーブリッジ13の収容手順について説明する。図5(a)に示した第一工程は、テンポラリーブリッジ13を架設した状態を図示している。このとき、ハッチカバー12は取り外されており、トンネル部11と原子炉格納容器10とが連通した状態となっている。なお、テンポラリーブリッジ13は、フロア10fの側面に固定された支持フレーム10cにより水平状態が維持されており、フロア10fと面一の状態を形成している。また、トンネル部11の本体部11aの天井部にはチェーンブロック41が配置されている。このチェーンブロック41は、常時、天井部に接続したままにしておいてもよいし、機器搬入の邪魔になるようであれば、テンポラリーブリッジ13の収容時に接続するようにしてもよい。
【0040】
図5(b)に示した第二工程は、チェーン42をテンポラリーブリッジ13の先端部に接続して片側を吊り上げる工程である。チェーン42は、例えば、テンポラリーブリッジ13の両側面部に形成された開口部にフックを係合させることによって、テンポラリーブリッジ13の先端部に接続される。操作部42aは、環状に形成されたチェーン42の一部を操作してチェーンブロック41の歯車を回転させる機械式のものであってもよいし、巻き上げスイッチ等を有する電動式のものであってもよい。この揚重手段4は、原子炉格納容器10内に進入した作業員によって操作される。
【0041】
図5(c)に示した第三工程は、第二ヒンジ部22をロックする工程である。具体的には、揚重手段4により、テンポラリーブリッジ13を略垂直に吊り上げた状態で、トンネル部11に形成された挿通孔31とリンク部材2に形成された挿通孔33とを一致させ、挿通孔31,33にロックピン32を挿通し、リンク部材2をトンネル部11(床構造体11c)に固定する。このように、ロック機構3を作用させることにより、第二ヒンジ部22の回動を拘束することができ、第一ヒンジ部21を基準にしてテンポラリーブリッジ13を回動させることができる。なお、ロックピン32は、作業員が持ち運ぶようにしてもよいし、トンネル部11(床構造体11c)に鎖等の連結部材により固定して紛失しないようにしてもよい。
【0042】
図5(d)に示した第四工程は、ロックされたリンク部材2に対して、テンポラリーブリッジ13を床構造体11c側に相対的に回動させて、テンポラリーブリッジ13を折り畳む工程である。このとき、第二ヒンジ部22は、ロック機構3により拘束されていることから、リンク部材2は図示した状態を維持し、チェーン42を送り出すことによって、テンポラリーブリッジ13の自重を利用しつつテンポラリーブリッジ13を第一ヒンジ部21で回動させることができる。
【0043】
図5(e)に示した第五工程は、テンポラリーブリッジ13の収容が完了した状態を図示している。第四工程において、揚重手段4を操作することにより、最終的にテンポラリーブリッジ13は、第一ヒンジ部21を中心に表裏反転した状態となり、トンネル部11の床構造体11c上に載置される。さらに、チェーン42を弛めて緊張状態を解くことによって、テンポラリーブリッジ13の重量は床構造体11cに預けられ、安定した状態となる。このように、テンポラリーブリッジ13をトンネル部11の床面11d上に横倒しにすることによって、テンポラリーブリッジ13の収容時における傾倒を防止することができる。
【0044】
その後、トンネル部11には、ハッチカバー12が接続されて密封される。このとき、テンポラリーブリッジ13は、次にハッチカバー12を開放するまで使用することがないことから、揚重手段4(チェーンブロック41及びチェーン42)は、トンネル部11及びテンポラリーブリッジ13に接続した状態のまま放置される。
【0045】
続いて、テンポラリーブリッジ13の架設手順について説明する。図6(a)に示した第一工程は、テンポラリーブリッジ13を収容した状態を図示している。このとき、ハッチカバー12は取り外されており、トンネル部11と原子炉格納容器10とが連通した状態となっている。また、上述したように揚重手段4は、トンネル部11及びテンポラリーブリッジ13に接続した状態のまま放置されていることから、操作部42aを操作することによって、すぐに架設作業に取りかかることができる。
【0046】
図6(b)に示した第二工程は、チェーン42を巻き上げてテンポラリーブリッジ13を吊り上げる工程である。このとき、リンク部材2はロック機構3によりロックされた状態であることから、テンポラリーブリッジ13は第一ヒンジ部21を中心に回動することとなる。
【0047】
図6(c)に示した第三工程は、第二ヒンジ部22のロックを解除する工程である。具体的には、揚重手段4により、テンポラリーブリッジ13を略垂直に吊り上げた状態で、ロックピン32を挿通孔31,33から引き抜く。かかる操作により、リンク部材2のロック状態が解除され、リンク部材2は第二ヒンジ部22を中心に回動可能となる。なお、ロック機構3の解除は、図6(a)に示した第一工程で行うようにしてもよい。
【0048】
図6(d)に示した第四工程は、揚重手段4を操作してテンポラリーブリッジ13を支持フレーム10cに係止させる工程である。このとき、リンク部材2のロック機構3は解除されていることから、チェーン42を送り出すだけで、テンポラリーブリッジ13は自重により第一ヒンジ部21及び第二ヒンジ部22を中心に回動し、リンク部材2及びテンポラリーブリッジ13の表面が原子炉格納容器10内のフロア10fと面一となるように移動させることができる。
【0049】
図6(e)に示した第五工程は、テンポラリーブリッジ13の架設が終了した状態を図示している。このとき、チェーン42が接続されたままであると、機器搬入の際に邪魔になる可能性があることから、チェーン42のフックをテンポラリーブリッジ13から取り外しておくようにしてもよい。テンポラリーブリッジ13から取り外されたチェーン42は、例えば、チェーンブロック41に巻き上げておくようにすればよい。なお、機器搬入の際にチェーンブロック41も邪魔になるようであれば、チェーンブロック41をトンネル部11の天井部から取り外しておくようにしてもよい。
【0050】
上述したテンポラリーブリッジ13の収容手順及び架設手順によれば、揚重手段4は、テンポラリーブリッジ13の収容時にはチェーン42の緊張を解いた状態で放置され、テンポラリーブリッジ13の架設時にはテンポラリーブリッジ13から取り外されるように構成されていることとなる。このように、テンポラリーブリッジ13の架設及び収容を行う揚重手段4を配置して、テンポラリーブリッジ13を操作することにより、テンポラリーブリッジ13が重量物の場合であっても、テンポラリーブリッジ13の架設及び収容を容易に行うことができる。
【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、機器搬入用のハッチ構造以外のハッチ(例えば、作業員用のハッチ)にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 ハッチ
2 リンク部材
3 ロック機構
4 揚重手段
10 原子炉格納容器
10f フロア
11 トンネル部
12 ハッチカバー
13 テンポラリーブリッジ
21 第一ヒンジ部
22 第二ヒンジ部
31,33 挿通孔
32 ロックピン
41 チェーンブロック
42 チェーン
42a 操作部
図1
図2
図3
図4
図5