特許第5880973号(P5880973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880973
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/08 20060101AFI20160225BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H02G3/08 060
   B60R16/02 610A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-821(P2013-821)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-135788(P2014-135788A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】白木 貴士
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−283933(JP,A)
【文献】 特開2010−268601(JP,A)
【文献】 特開2010−178474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体に対して該箱本体と別体形成された外付部材が複数箇所の嵌合部で組み付けられる
電気接続箱において、
前記複数箇所の嵌合部の1つとして、前記箱本体および前記外付部材のそれぞれに、相互に係合されるロック部が形成されている一方、
前記複数箇所の嵌合部の1つとして、前記箱本体および前記外付部材の一方には、該箱本体又は該外付部材の壁面から突出して前記外付部材の前記箱本体への嵌合方向に延びると共に、延出方向と直交する両方向に張り出す係止部が形成された係合案内リブが形成されている一方、前記箱本体および前記外付部材の他方には、該係合案内リブと係合する係合案内溝が形成されており、
前記係合案内リブと前記係合案内溝とが係合された後に、前記ロック部が係合されており、
前記箱本体が長手形状を有すると共に、該箱本体の長手方向の一方に前記係合案内リブ又は前記係合案内溝が設けられている一方、該箱本体の長手方向の他方に前記ロック部が設けられてい
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記箱本体における前記嵌合部が、前記箱本体とは別体形成されて該箱本体に組み付けられる車両固定部材に設けられている
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記係合案内溝が前記係合案内リブの長さ寸法の1/3以上嵌合した後に、前記ロック部が係合される
請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記ロック部が、前記箱本体と前記外付部材の一方に設けられた差込突部と、前記箱本体と前記外付部材の他方に設けられて、前記差込突部が差し込まれて係合される差込凹部とで構成されており、
該差込凹部には、前記差込突部で押圧されて該差込突部の差込方向と直交する方向に弾性変形可能とされた公差吸収手段が設けられていると共に、
前記係合案内リブと前記係合案内溝とが係合された後に、前記差込突部が前記差込凹部に差し込まれる
請求項1〜の何れか1項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に取り付けられる電気接続箱に係り、特に、箱本体と別体の外付部材が、複数箇所の嵌合部で箱本体に組み付けられる電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等において、電気配線を効率良く配索したり、ヒューズやリレー等の電気部品を効率良く配設する等のために、電気接続箱が用いられている。このような電気接続箱には、特開2010−268601号公報(特許文献1)に記載されているように、ブラケット等の箱本体と別体形成された外付部材が、箱本体に組み付けられるものがある。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の如きブラケットのように、外付部材が箱本体の略全長に亘る大型のものである場合には、複数箇所で箱本体に固定する必要がある。そこで、特許文献1に記載の箱本体には、箱本体の対角に位置する2箇所(1箇所は箱本体に取り付けられたブラケット)に嵌合部が形成されており、それら2つの嵌合部でブラケットが固定されるようになっている。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の電気接続箱においては、箱本体の2箇所の嵌合部に対して、ブラケットに設けられた対応する2つの嵌合部を、同時に嵌合する必要がある。それ故、2箇所の嵌合部を同時に位置合わせしなければならず、組付作業が困難になるという問題があった。特に近年では、コネクタホルダ等の外付部材を、箱本体に別体として取り付けられたブラケット等の車両固定部材に更に固定することが検討されており、そのような場合には、箱本体と車両固定部材との公差が積み重なって、複数の嵌合部を同時に位置決めすることがより困難となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−268601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、箱本体と別体形成された外付部材を箱本体に対して複数箇所の嵌合部で取り付ける電気接続箱において、外付部材の箱本体への組み付けをより容易に行なうことの出来る、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、箱本体に対して該箱本体と別体形成された外付部材が複数箇所の嵌合部で組み付けられる電気接続箱において、前記複数箇所の嵌合部の1つとして、前記箱本体および前記外付部材のそれぞれに、相互に係合されるロック部が形成されている一方、前記複数箇所の嵌合部の1つとして、前記箱本体および前記外付部材の一方には、該箱本体又は該外付部材の壁面から突出して前記外付部材の前記箱本体への嵌合方向に延びると共に、延出方向と直交する両方向に張り出す係止部が形成された係合案内リブが形成されている一方、前記箱本体および前記外付部材の他方には、該係合案内リブと係合する係合案内溝が形成されており、前記係合案内リブと前記係合案内溝とが係合された後に、前記ロック部が係合されており、前記箱本体が長手形状を有すると共に、該箱本体の長手方向の一方に前記係合案内リブ又は前記係合案内溝が設けられている一方、該箱本体の長手方向の他方に前記ロック部が設けられていることを、特徴とする。
【0008】
本発明に従う構造とされた電気接続箱においては、箱本体と外付部材のロック部が係合される前に、係合案内リブと係合案内溝が係合される。これにより、係合案内リブと係合案内溝で外付部材を箱本体に対して組み付け方向に案内することが出来ると共に、ロック部が係合される前に、外付部材を箱本体に対して位置決めして、箱本体と外付部材のロック部を相互に位置合わせすることが出来る。その結果、ロック部の係合を容易に行なうことが出来、組立作業をより容易にすることが出来る。さらに、本態様では、箱本体の長手方向の両側に設けられた嵌合部で外付部材が箱本体に取り付けられることから、外付部材を箱本体に安定的に組み付けることが出来る。一方、嵌合部間の離隔距離が大きいことから、箱本体のロック部と外付部材のロック部の位置合わせが困難となるおそれがあるが、ロック部を係合する前に、係合案内リブと係合案内溝を係合することで、ロック部を位置合わせ出来ることから、複数の嵌合部の離隔距離が大きい場合でも、組み立てを容易に行なうことが出来る。
【0009】
特に、係合案内リブには、延出方向と直交する両方向に張り出す係止部が形成されている。これにより、係止部を係合案内溝の内面と係合させることが出来、係合案内リブと係合案内溝との係合状態を維持して、外付部材の箱本体からの脱離を防止することが出来る。また、外付部材を箱本体に対してより安定的に位置決めすることが出来、外付部材と箱本体のロック部を、より精度良く位置合わせすることが出来る。
【0010】
なお、係合案内リブの形状としては、例えばT字状断面や十字状断面、箱本体又は外付部材の壁面からの突出方向に広がる逆三角形断面等、各種の形状が採用可能である。また、外付部材は、箱本体と別体形成されて箱本体に組み付けられるものであれば何等限定されるものではなく、例えばコネクタを保持するコネクタホルダ、リレーが装着されるリレーブロック等の電気接続箱、或いは箱本体を車体に取り付けるためのブラケット等でも良い。更にまた、ロック部の具体的構造についても、各種の形状が採用され得る。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記箱本体における前記嵌合部が、前記箱本体とは別体形成されて該箱本体に組み付けられる車両固定部材に設けられているものである。
【0012】
本態様においては、外付部材が、箱本体に組み付けられた車両固定部材に組み付けられて、車両固定部材を介して箱本体に組み付けられる。このような場合には、箱本体と車両固定部材の公差が積み重なって、外付部材と箱本体のロック部の位置合わせがより困難となるおそれがあるが、本発明によれば、係合案内リブと係合案内溝を係合することによって、ロック部を位置合わせすることが出来、組立作業性を良好に確保することが出来る。
【0016】
本発明の第の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記係合案内溝が前記係合案内リブの長さ寸法の1/3以上嵌合した後に、前記ロック部が係合されるものである。
【0017】
本態様によれば、係合案内リブと係合案内溝が所定量だけ係合されて、箱本体のロック部と外付部材のロック部の位置決めが安定した後にロック部の係合が開始されることから、ロック部の係合をより円滑に行なうことが出来る。
【0018】
本発明の第の態様は、前記第一〜第の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記ロック部が、前記箱本体と前記外付部材の一方に設けられた差込突部と、前記箱本体と前記外付部材の他方に設けられて、前記差込突部が差し込まれて係合される差込凹部とで構成されており、該差込凹部には、前記差込突部で押圧されて該差込突部の差込方向と直交する方向に弾性変形可能とされた公差吸収手段が設けられていると共に、前記係合案内リブと前記係合案内溝とが係合された後に、前記差込突部が前記差込凹部に差し込まれるものである。
【0019】
本態様においては、箱本体と外付部材の一方に設けられた差込突部を、他方に設けられた差込凹部に差し込んで相互に係合することにより、外付部材が箱本体に取り付けられる。そして、差込凹部に差込突部が差し込まれた際に、公差吸収手段が弾性変形されることにより、差込凹部に対する差込突部の位置のばらつきを吸収すると共に、公差吸収手段の弾性復元力により、差込突部を差込凹部内で安定的に支持することが出来る。これにより、箱本体と外付部材の公差を吸収することが出来て、外付部材を箱本体に対してガタつき無く安定的に取り付けることが出来る。特に、前記第二の態様と組み合わせて用いられて、差込凹部又は差込突部が箱本体に取り付けられた車両固定部材に設けられる場合には、箱本体と車両固定部材、および外付部材の公差の積み重なりを、公差吸収手段で有効に吸収することが出来て、外付部材を箱本体に安定的に取り付けることが出来る。その結果、外付部材のガタつきに起因する異音の発生を有効に防止することが出来る。
【0020】
そして、差込突部が差込凹部に差し込まれる前に、係合案内リブと係合案内溝を係合して、外付部材を箱本体に位置決めすることにより、差込突部を差込凹部に位置合わせして差し込むことが出来る。その結果、差込突部と差込凹部で構成されるロック部の係合をより容易に行なうことが出来て、優れた組立作業性を得ることが出来る。
【0021】
なお、公差吸収手段は、例えば差込凹部内にゴム弾性体や金属ばね等の別体の弾性部材を収容して構成しても良いし、差込凹部の壁部を板ばね形状に形成する等して、差込凹部に一体形成する等しても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、箱本体に外付部材を取り付ける複数の嵌合部の1つにロック部を設けると共に、複数の嵌合部の1つに、相互に係合する係合案内リブと係合案内溝を設け、係合案内リブと係合案内溝が係合した後に、ロック部が係合されるようにした。これにより、ロック部を係合する前に、係合案内リブと係合案内溝を係合して、外付部材を箱本体に位置決めすることが出来る。その結果、箱本体と外付部材のロック部を相互に位置合わせして係合することが出来、外付部材の箱本体への取り付けをより容易にして、組立作業性を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱の分解斜視図。
図2図1に示した箱本体とコネクタブロックの正面図。
図3】上側固定部材の要部の拡大斜視図。
図4】下側固定部材の要部の拡大斜視図。
図5】コネクタホルダの側面図。
図6】コネクタホルダの側面の要部拡大図。
図7】コネクタホルダの図6とは異なる要部の拡大斜視図。
図8】(a)はコネクタホルダの箱本体への組付途中状態、(b)はコネクタホルダの箱本体への組付完了状態を示す斜視図。
図9】(a)は差込突部と差込凹部の位置決め状態、(b)は差込突部と差込凹部のロック状態を示す斜視図。
図10図9(b)におけるX−X断面の要部拡大図。
図11】本発明の第二の実施形態としての電気接続箱の組付途中状態の斜視図。
図12図11に示した電気接続箱の、図1とは異なる方向の組付途中状態の斜視図。
図13図11に示した電気接続箱の組付状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、図1および図2に、本発明の第一の実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、箱本体12と、箱本体12に取り付けられる車両固定部材としての上側固定部材14および下側固定部材16、上側固定部材14および下側固定部材16に取り付けられる外付部材としてのコネクタホルダ18を含んで構成されている。なお、図2は、箱本体12に上側固定部材14と下側固定部材16を取り付けた状態を示している。また、以下の説明において、上下方向とは、電気接続箱10の車両への取付状態で鉛直上下方向となる、図2における上下方向を言うものとする。
【0026】
箱本体12は、合成樹脂製のケース20の内部に、図示しないプリント基板やバスバー等が設けられた構造とされている。ケース20は、略長手矩形の箱体形状とされており、電気接続箱10の車両への取付状態で、ケース20の長手方向を鉛直上下方向に向けて配設される。ケース20の前面21は、略全面に亘って平坦面とされている。
【0027】
ケース20の上壁22には、受け側ロック24aが形成されている。受け側ロック24aには、一対のガイド筒部26,26が形成されている。ガイド筒部26,26は、上壁22に沿って箱本体12の厚さ方向に延びる略矩形筒形状とされており、間隔を隔てて互いに平行に形成されている。ガイド筒部26,26は、一方の端部が開放された略有底筒形状とされており、スリット28,28が開放側の端部から延出して形成されている。そして、ガイド筒部26,26の間で、ガイド筒部26,26の延出方向の中間部分には、ガイド筒部26,26を連結する方向に延びるロック壁部30が形成されている。
【0028】
受け側ロック24aは、上壁22において、箱本体12の短辺方向(図2中、左右方向)の一方(図2中、右方)の端部に設けられている。更に、ケース20の側壁32には、受け側ロック24b(図2参照)が形成されている。受け側ロック24bは、受け側ロック24aと同様の構造とされていることから、説明を省略する。受け側ロック24bは、側壁32において、箱本体12の長辺方向(図2中、上下方向)で、上壁22と反対側となる下方の端部に設けられている。
【0029】
上側固定部材14は、箱本体12とは別体形成された合成樹脂からなる一体成形品とされている。上側固定部材14は、全体として略板形状を有しており、ボルト孔が貫設されたボルト固定部34が突出して一体形成されている。
【0030】
上側固定部材14には、差込側ロック36aが形成されている。差込側ロック36aは、後述する下側固定部材16の差込側ロック36bと同様の構造であることから、図1の差込側ロック36bに同一の符号を付して差込側ロック36bを参照することで、差込側ロック36aの詳細な図示は省略する。
【0031】
差込側ロック36aには、T字形状断面をもって、互いに平行に延びるスライドリブ38,38が形成されている。スライドリブ38,38の離隔距離は、受け側ロック24aのスリット28,28の離隔距離と略等しくされている。そして、スライドリブ38,38の間で、スライドリブ38,38の延出方向の中間部分に、ロック爪40が形成されている。なお、ロック爪40の両側には、スライドリブ38,38の延出方向に延びるスリット状の打抜孔42,42が貫設されており、これによってロック爪40の形成部位が撓み変形し易くされて、組み付けに際してロック爪40が受け側ロック24aのロック壁部30を乗り越え易くされている。
【0032】
図3に拡大して示すように、上側固定部材14において、箱本体12への固定状態で前面21側に位置する端縁部44には、係合案内部としての係合案内リブ46が形成されている。係合案内リブ46は、上側固定部材14の外面48から上方に突出すると共に、突出先端部に外面48からの突出方向および係合案内リブ46の延出方向と直交する両方向に張り出す係止部50が形成された、略T字形状断面をもって延出されている。なお、係止部50において、後述する係合案内溝80との係合開始側となる端縁部には、テーパ52が形成されている。
【0033】
また、上側固定部材14の外面48には、補助案内壁54が突設されている。補助案内壁54は、外面48において係合案内リブ46よりも内側で、係合案内リブ46よりもコネクタホルダ18側(図2中、右側)に形成されている。補助案内壁54においてコネクタホルダ18側に位置する端縁部は、係合案内リブ46側に行くに連れて外面48からの突出寸法が次第に大きくなるテーパ形状とされている。
【0034】
一方、図1および図2に示したように、下側固定部材16は、箱本体12とは別体形成された合成樹脂からなる一体成形品とされている。下側固定部材16は、ボルト孔が貫設されたボルト固定部56を有する一対の脚部58a,58bが連結部60で連結された略アーチ形状とされている。連結部60は上方に突出して形成されており、上方への突出部分の内面に、差込側ロック36bが形成されている。
【0035】
更に、箱本体12への組付状態で、箱本体12の前面21側に位置する脚部58aには、差込突部62が形成されている。差込突部62は、脚部58aから突出形成された板状部64が、スリット68で分割されることで形成されている。図4に拡大して示すように、差込突部62は、肉抜孔70が形成された中空の矩形板形状とされている。差込突部62の先端部において、下側固定部材16の外側面には、矩形の係合穴72が貫設されている。なお、スリット68の開口端部は、テーパ74が形成されて拡開されており、後述する差込凹部86の差し込みが容易とされている。
【0036】
一方、図5に示すように、コネクタホルダ18は、箱本体12とは別体形成された合成樹脂からなる一体成形品とされている。コネクタホルダ18は、箱本体12の長手方向寸法の略全長に亘る長さ寸法を有する長尺の部材とされている。コネクタホルダ18の本体部75は、複数(本実施形態においては、3つ)のコネクタ収容部76が、長手方向(図5中、上下方向)に並んで形成されたブロック形状とされている。
【0037】
コネクタホルダ18の上端部には、コネクタホルダ18の長手方向(図2中、上下方向)に直交する方向で、箱本体12側に突出して延びる突出筒部78が形成されており、図6に示すように、該突出筒部78の内部に、嵌合部の1つを構成する係合案内溝80が形成されている。係合案内溝80は、上側固定部材14に形成された係合案内リブ46と対応する略T字形状断面をもって延出されている。なお、係合案内溝80において、T字の上下方向に延びる部分には、箱本体12側に開放された側方開口部82が形成されている。
【0038】
また、コネクタホルダ18には、重ね板部84が形成されている。重ね板部84は、突出筒部78と同方向に突出する板形状とされており、本体部75における箱本体12側の側壁から突出して形成されている。
【0039】
さらに、コネクタホルダ18の下端部には、嵌合部の1つを構成するロック部としての差込凹部86が形成されている。図7に示すように、差込凹部86は、全体として略矩形の筒形状とされている。差込凹部86は、重ね板部84において下方に延出された下方延出部88と、本体部75から下方に延びる板状の連結板部90とによって本体部75と連結されており、本体部75の下方で、本体部75および突出筒部78よりも箱本体12側に位置されている。
【0040】
差込凹部86の筒形状の延出方向は、係合案内溝80の延出方向と等しくされている。差込凹部86の側壁92には、ロック片94が形成されている。ロック片94は、差込筒部86の後端縁96側に延出して、後端縁96側の端部が自由端とされた弾性変形可能な板ばね形状とされている。ロック片94の後端縁96側の端部には、差込凹部86の内側に突出するロック爪98が形成されている。
【0041】
さらに、差込凹部86には、公差吸収手段としての一対の弾性可撓壁100,100が形成されている。弾性可撓壁100,100は、差込凹部86の上壁と下壁の後端縁96側が差込凹部86の内側に切り起こされて差込凹部86に一体形成されている。これにより、弾性可撓壁100,100は、後端縁96側に行くにつれて差込凹部86の内側に入り込んで互いに接近されると共に、後端縁96側の端部が自由端とされた板ばね形状とされている。
【0042】
そして、図2に示したように、箱本体12に対して、上側固定部材14と下側固定部材16が取り付けられる。上側固定部材14は、差込側ロック36aのスライドリブ38,38(図1の差込側ロック36b参照)が、箱本体12の受け側ロック24aのガイド筒部26,26のスリット28,28に差し込まれてスライド変位されると共に、ロック爪40がロック壁部30を乗り越えて係合されることで、箱本体12に取り付けられる。また、下側固定部材16の差込側ロック36bが、箱本体12の受け側ロック24bに同様に係合されることで、下側固定部材16が箱本体12に取り付けられる。このようにして、上側固定部材14と下側固定部材16が、箱本体12の対角に位置して、箱本体12を長手方向(図2中、上下方向)で挟む両側に取り付けられる。
【0043】
上側固定部材14が箱本体12の上壁22に重ね合わされて取り付けられることにより、上側固定部材14の外面48で箱本体12の上側壁面の一部が構成されている。そして、箱本体12の壁面に、係合案内リブ46が設けられることにより、係合案内リブ46で箱本体12の嵌合部の1つが構成されている。また、下側固定部材16が箱本体12に取り付けられることにより、差込突部62が箱本体12に設けられて、差込突部62によって、箱本体12の嵌合部の1つとしてのロック部が構成されている。そして、係合案内リブ46が、箱本体12の長手方向の上方に配設されると共に、差込突部62が、箱本体12の長手方向の下方に配設されている。
【0044】
係合案内リブ46および差込突部62は、コネクタホルダ18の箱本体12への嵌合方向となる、箱本体12の短辺方向(図2中、左右方向)に延出されている。係合案内リブ46と差込突部62は、箱本体12の短辺方向で位置をずらせて配設されており、係合案内リブ46が、差込突部62よりもコネクタホルダ18側(図2中、右側)に位置されている。コネクタホルダ18の箱本体12への嵌合方向で、係合案内リブ46のコネクタホルダ18側の端縁部と、差込突部62のコネクタホルダ18側の端縁部との距離:Lbは、コネクタホルダ18の箱本体12への嵌合方向で、コネクタホルダ18における係合案内溝80の箱本体12側の端縁部と、差込凹部86の箱本体12側の端縁部との距離:Lhよりも大きくされている。係合案内リブ46の端縁部と差込突部62の端縁部との距離:Lbと、係合案内溝80の端縁部と差込凹部86の端縁部との距離:Lhとの差は、好ましくは、係合案内リブ46の長さ寸法:Lの1/3以上に設定される。これにより、係合案内溝80が、係合案内リブ46の長さ寸法:Lの1/3以上嵌合した段階で、差込突部62の差込凹部86への差し込みが開始される。より好ましくは、距離:Lbと距離;Lhとの差が、Lの1/2以上に設定されており、本実施形態においては、Lの1/2以上に設定されている。これにより、係合案内溝80が、係合案内リブ46の長さ寸法:Lの1/2以上嵌合した段階で、差込突部62の差込凹部86への差し込みが開始されるようになっている。
【0045】
そして、図8に示すように、上側固定部材14および下側固定部材16が取り付けられた箱本体12に、コネクタホルダ18が取り付けられる。コネクタホルダ18は、重ね板部84を箱本体12の前面21に重ね合わせつつ、箱本体12の短辺方向(図2中、左右方向)で箱本体12に向けてスライド変位される。そして、差込突部62が差込凹部86に差し込まれる前に、係合案内リブ46が、係合案内溝80に差し込まれる。なお、コネクタホルダ18の嵌合方向で、係合案内リブ46よりも手前側に補助案内壁54(図3等参照)が形成されていることから、突出筒部78が補助案内壁54で案内されると共に、係合案内リブ46の先端にテーパ52が形成されていることにより、係合案内溝80への差し込みを円滑に行なえるようにされている。
【0046】
係合案内リブ46が係合案内溝80に差し込まれて、係合案内リブ46と係合案内溝80が相互に係合されることにより、コネクタホルダ18が、箱本体12に対して位置決めされて、図9(a)に示すように、差込突部62と差込凹部86が、相互に位置決めされる。そして、係合案内リブ46と係合案内溝80によって、コネクタホルダ18が差込突部62の突出方向(図2中、左右方向)で案内されつつ更に箱本体12に接近されることにより、図9(b)に示すように、差込突部62が差込凹部86に差し込まれる。図10に示すように、差込突部62は、弾性可撓壁100,100を押し広げつつ差込凹部86に差し込まれて、係合穴72にロック爪98が係合される。これにより、差込突部62と差込凹部86が相互に係合される。その結果、図8(b)に示すように、コネクタホルダ18が、係合案内リブ4と係合案内溝80との係合により箱本体12の上方に固定されると共に、差込突部62と差込凹部86との係合により箱本体12の下方に固定されて、上側固定部材14および下側固定部材16に跨って取り付けられると共に、上側固定部材14および下側固定部材16を介して箱本体12に取り付けられる。
【0047】
本実施形態に従う構造とされた電気接続箱10においては、差込突部62が差込凹部86に差し込まれることによって、差込凹部86内に設けられた弾性可撓壁100,100が差込突部62で押圧されて、差込突部62の差込方向(図10中、左右方向)と直交する方向(図10中、上下方向)に弾性変形される。これにより、差込突部62の差込凹部86に対する位置のばらつきを、弾性可撓壁100,100で吸収することが出来て、差込突部62を差込凹部86内で安定的に支持することが出来る。その結果、コネクタホルダ18を箱本体12に対してガタつき無く組み付けることが出来て、ガタつきに起因する異音の発生を防止することが出来る。
【0048】
特に本実施形態においては、箱本体12の長手方向の両側に取り付けられた上側固定部材14と下側固定部材16に、コネクタホルダ18が取り付けられる。それ故、箱本体12、上側固定部材14と下側固定部材16、コネクタホルダ18のそれぞれの公差が積み重なって、差込突部62と差込凹部86との位置のばらつきが大きくなるおそれがある。しかし、差込凹部86に弾性可撓壁100,100を設けたことにより、公差の積み重なりを有効に吸収することが出来て、コネクタホルダ18を箱本体12に安定的に取り付けることが出来る。
【0049】
また、弾性可撓壁100,100が、差込突部62を上下で挟む両側に形成されている。例えば、1つの弾性可撓壁100が差込凹部86の下方のみに形成されて、差込突部62が差込凹部86の下方に偏倚していた場合には、弾性可撓壁100の変形量が大きくなって、差込凹部86への挿入力が大きくなるおそれがあるが、本実施形態によれば、弾性可撓壁100,100が差込凹部86の上下両側に形成されていることから、差込突部62が上下何れの方向に偏倚していたとしても、挿入力の増大を抑えることが出来、差し込みを容易にすることが出来る。但し、弾性可撓壁100を差込凹部86の上下何れか一方のみに形成しても良い。更に、弾性可撓壁100,100を、差込凹部86の壁部を用いて一体形成したことから、差込突部62に面接触して差込突部62を安定的に支持出来ると共に、公差吸収手段を安価に得ることが出来る。
【0050】
そして、箱本体12の係合案内リブ46と、コネクタホルダ18の係合案内溝80を係合することで、コネクタホルダ18を、差込突部62の差込凹部86への差込方向に案内することが出来て、組み付けをより容易にすることが出来る。特に、差込突部62が差込凹部86に差し込まれるよりも前に、係合案内リブ46と係合案内溝80が係合される。これにより、差込突部62を差込凹部86に位置合わせした状態で差し込むことが出来、コネクタホルダ18の組み付け作業をより容易にすることが出来る。
【0051】
さらに、図6に示すように、係合案内リブ46には、組み付け方向と直交して両方向に突出する係止部50,50が形成されたT字形状とされている。従って、係合案内溝80が係止部50,50で係止されることにより、コネクタホルダ18が上方(図6中、上方)に外れることを防止することが出来て、コネクタホルダ18を上下方向で位置決めすることが出来る。また、係合案内溝80が、係合案内リブ46において上下方向に延びる部分で係止されることにより、コネクタホルダ18を組み付け方向に対する左右方向(図6中、左右方向)でも位置決めすることが出来る。このように、コネクタホルダ18を組み付け方向に対する上下(図6中、上下)および左右(図6中、左右)の両方向で位置決めすることが出来て、コネクタホルダ18を組み付け方向により安定的に案内することが出来ると共に、差込突部62と差込凹部86をより安定的に位置合わせすることが出来る。
【0052】
また、係合案内リブ46と係合案内溝80が、係合案内リブ46の長さ寸法の1/2以上係合した後に、差込突部62が差込凹部86に差し込まれるようになっている。これにより、係合案内リブ46と係合案内溝80が所定量だけ係合されて、コネクタホルダ18の位置決めが安定した段階で差込突部62が差込凹部86に差し込まれるようになっており、差込突部62の差込凹部86への差し込みをより容易且つ円滑に行なうことが出来る。
【0053】
次に、図11図13に、本発明の第二の実施形態としての電気接続箱110を示す。本実施形態の電気接続箱110は、前記第一の実施形態に示した箱本体12に、前記第一の実施形態とは異なる形状の車両固定部材としての上側固定部材112および下側固定部材114と、外付部材としての回路ユニット116が組み付けられたものである。以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。
【0054】
上側固定部材112および下側固定部材114は、前記第一の実施形態と同様にして、箱本体12の受け側ロック24a,24b(図1参照)にそれぞれ組み付けられており、箱本体12の対角に位置して、箱本体12を長手方向で挟む両側に配設されている。上側固定部材112には、上下方向に延びる2つの係合案内リブ46,46が並列して形成されている。一方、下側固定部材114には、上方に向けて延出する差込突部62が形成されている。これら係合案内リブ46,46および差込突部62は、延出方向が上下方向に設定されている点を除いて、前記第一の実施形態と略同様の形状とされている。
【0055】
回路ユニット116は、ケース118の内部に図示しない電気回路が設けられた電気接続箱とされている。回路ユニット116は、箱本体12の前面21の略全体に重なり合う大型の部材とされている。そして、図12に示すように、回路ユニット116のケース118において、係合案内リブ46,46と重なる位置に、上下方向に延びるスリット状の係合案内溝80,80が一体形成されている。また、図11に示すように、ケース118において、差込突部62と対応する位置に、下方に開口して上下方向に延びる差込凹部86が一体形成されている。なお、図面からは必ずしも明らかではないが、本実施形態の差込凹部86は、前記第一の実施形態の差込凹部86と略同様の構造とされており、差込凹部86の内部には、公差吸収手段としての一対の弾性可撓壁100,100が一体形成されている。従って、本実施形態の弾性可撓壁100,100は、鉛直上下方向(図11中、z方向)に直交する、箱本体12の厚さ方向(図11中、y方向)で対向されている。
【0056】
本実施形態の回路ユニット116は、箱本体12に対して、箱本体12の長手方向となる鉛直上下方向にスライドされて組み付けられる。回路ユニット116は、ケース118が箱本体12の前面21に重ね合わされて、箱本体12の係合案内リブ46,46に、係合案内溝80,80が係合される。なお、係合案内リブ46,46と係合案内溝80,80の係合が開始された時点では、差込突部62は差込凹部86に差し込まれないようになっている。そして、係合案内リブ46,46と係合案内溝80,80が係合されることにより、差込突部62と差込凹部86が位置合わせされると共に、係合案内リブ46,46と係合案内溝80,80との案内作用によって、回路ユニット116が鉛直下方に案内されることにより、差込突部62が差込凹部86に差し込まれる。これにより、差込突部62の係合穴72に、差込凹部86のロック爪98が係合されて、差込突部62と差込凹部86が相互に係合される。このようにして、回路ユニット116が、上側固定部材112および下側固定部材114に取り付けられると共に、上側固定部材112および下側固定部材114を介して、箱本体12に取り付けられる。
【0057】
本実施形態においても、前記第一の実施形態と同様に、差込突部62が差込凹部86に差し込まれることにより、弾性可撓壁100,100が差込突部62で押し広げられて、箱本体12や上側固定部材112、下側固定部材114の公差が吸収されるようになっている。そして、本実施形態から明らかなように、外付部材(本実施形態においては、回路ユニット116)の箱本体12への組み付け方向は限定されず、係合案内リブ46,46と係合案内溝80,80の延出方向、および差込突部62と差込凹部86の延出方向は、外付部材の組み付け方向に応じて適宜に変更され得る。また、外付部材は、回路ユニット116のような電気接続箱等であっても良い。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、公差吸収手段としては、前記実施形態における一対の弾性可撓壁100,100の何れか一方のみを形成したものでも良いし、ゴム弾性体や金属ばね等、別体の弾性部材を用いて構成しても良い。
【0059】
また、係合案内リブと係合案内溝の断面形状は、前記実施形態の如きT字形状に限定されるものではなく、例えば十字形状断面や、箱本体又は外付部材からの突出方向に広がる逆三角形状断面等、各種の断面形状が採用可能である。
【0060】
また、前記実施形態においては、係合案内リブ46および差込突部62が、箱本体12と別体形成された上側固定部材14および下側固定部材16に設けられていたが、係合案内リブ46および差込突部62は、箱本体12のケース20に一体形成されていても良い。
【0061】
更にまた、箱本体に組み付けられる外付部材は、前記実施形態に示したコネクタホルダや回路ユニットに限定されるものではなく、例えばリレーブロック等でも良いし、各種の電気接続箱でも良い。また、外付部材が車両への固定部を備えた車両固定部材であっても良く、例えば前記第一の実施形態に示した車両固定部材としての上側固定部材14および下側固定部材16に、外付部材として車両固定部材を更に組み付ける等しても良い。
【符号の説明】
【0062】
10:電気接続箱、12:箱本体、14:上側固定部材(車両固定部材)、16:下側固定部材(車両固定部材)、18:コネクタホルダ(外付部材)、46:係合案内リブ、50:係止部、54:補助案内壁、62:差込突部(ロック部)、72:係合穴、80:係合案内溝、86:差込凹部(ロック部)、100:弾性可撓壁(公差吸収手段)
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
図13