(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合溝における前記ケースに前記組合体を収納する際の前記突片の挿入口となる側の溝幅が、前記挿入口に向かうに従い漸次広くなっている請求項1〜5のいずれか一項に記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0030】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示す実施形態1のリアクトル1は、コイル2と、磁性コア3と、一対の枠状ボビン41,42と、を組み合わせた組合体10をケース6に収納し、ケース6の開口部を蓋9で閉じた構成を備える(
図1には、蓋9が取り外された状態が示されている)。このリアクトル1の最も特徴とするところは、
図5に示すように、ケース6に収納された状態の組合体10を上面視したとき、一方の枠状ボビン41の幅方向両端部近傍、および他方の枠状ボビン42の幅方向両端部近傍の合計四箇所のうちの二箇所が、ケース6内における組合体10の位置を決める位置決め箇所10Fとなっており、残りの二箇所が逃がし箇所10Eとなっていることである。以下、本発明のリアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。なお、以降の説明では、コイル2(コイル素子2A,2B)の軸に平行な方向をコイル軸方向、リアクトル1を上面視したときにコイル軸方向に直交する方向をコイル幅方向とする。
【0031】
[組合体]
組合体10のうち、コイル2および磁性コア3の形態は、特に限定されない。例えば、
図2の概略図、
図3の分解斜視図に示すように、本実施形態におけるコイル2は、巻線を巻回してなる一対のコイル素子2A,2Bをコイル素子連結部2rで繋いだ形態であり、磁性コア3は、コイル素子2A,2Bの内部に挿通される内側コア部31,31(
図3を参照)と、コイル素子2A,2Bから露出する外側コア部32,32と、を有する環状の形態である。この組合体10は、さらに内側コア部31,31の外周面と、コイル素子2A,2Bの内周面との間に介在される内側ボビン51,52(
図3を参照)と、コイル素子2A,2Bの軸方向の一端面と外側コア部32との間に介在される枠状ボビン41と、コイル素子2A,2Bの軸方向の他端面と外側コア部32との間に介在される枠状ボビン42と、を備える。以下、本発明の特徴に関連する枠状ボビン41,42を主に説明する。枠状ボビン41,42以外の構成については、後述するリアクトル1の製造方法において説明する。
【0032】
(枠状ボビン)
本実施形態では、コイル軸方向のうち、コイル素子2A,2Bを構成する巻線の端部2a,2bの端部が配置される側に設けられる枠状ボビン41と、コイル連結部2rが配置される側に設けられる枠状ボビン42と、は同一形状となっている。両枠状ボビン41,42を全く同じものとすることで、枠状ボビン41,42の生産性を向上させることができ、ひいてはリアクトルの生産性を向上させることができる。
【0033】
枠状ボビン41には、コイル幅方向(コイル素子2A,2Bの並列方向に同じ)に離隔して設けられる二つの突片(ボビン側係合部)α1,α2が設けられている。より具体的には、組合体10を上面視したとき、枠状ボビン41の一方の側端部と他方の側端部とに突片α1,α2が設けられている。この突片α1,α2は、後述するケース6の係合溝(ケース側係合部)β1,β2に係合し(
図4(C)参照)、位置決め箇所10Fを構成する(
図5参照)。
【0034】
一方、枠状ボビン42には、コイル幅方向に離隔して設けられる二つの突片(ボビン側遊嵌部)γ1,γ2が設けられている。より具体的には、組合体10を上面視したとき、枠状ボビン42の一方の側端部と他方の側端部とに突片γ1,γ2が設けられている。この突片γ1,γ2は、後述するケース6の逃がし溝(ケース側遊嵌部)δ1,δ2の内部に配置され(
図4(D)参照)、逃がし箇所10Eを構成する(
図1参照)。つまり、枠状ボビン42の突片γ1,γ2は、枠状ボビン41の突片α1,α2と同一の形状を備えるが、異なる機能を持っている。
【0035】
次に、突片α1,α2(突片γ1,γ2)の形状と形成位置を説明する。なお、突片α1,α2と突片γ1,γ2の形状と形成位置は同じであるため、代表して突片α1,α2を説明する。
【0036】
本実施形態における突片α1,α2は、枠状ボビン41の厚み方向の断面形状が矩形となっている突起である。この断面形状は特に限定されず、例えば、円形を含む楕円形でも良いし、三角形や台形などを含む矩形以外の多角形でも良いし、フック形などの異形でも良い。特に、形成の容易さを考慮すれば、断面形状は矩形、三角形、あるいは台形が好ましい。
【0037】
本実施形態における突片α1,α2の突出方向は、コイル幅方向、即ち枠状ボビン41の側方となっている。この突出方向も特に限定されず、例えば、突出方向はコイル軸方向であっても良いし、コイル軸方向とコイル幅方向の両方に交差する方向であっても良い。特に、本実施形態のように突片α1,α2の突出方向をコイル幅方向とすることが好ましい。コイル幅方向への突出には、突片α1,α2の形成が容易であるといった利点や、枠状ボビン41の側方に位置するケース6(
図1参照)との係合が容易であるといった利点があるからである。
【0038】
本実施形態における突片α1,α2の形成位置は、枠状ボビン41の高さ方向(紙面上下方向であって、
図1のリアクトル1の高さ方向に同じ)の上端側となっている。この突片α1,α2の形成位置は、後述する係合溝β1,β2(
図4(C)参照)に対応して決定されており、係合溝β1,β2の形状を変更するのであれば、それに合わせて突片α1,α2の形成位置も変更することができる。例えば、係合溝β1,β2がリアクトルの高さ方向の下方側にしかないなら、突片α1,α2の形成位置を、枠状ボビン41の高さ方向の下端側としても良い。なお、突片は、枠状ボビン41の高さ方向(組合体10の高さ方向に同じ)に延びる突条でも良い。その他、枠状ボビン41の側縁部自身を突片として利用しても構わない。
【0039】
突片α1,α2のサイズは、所定の強度を確保することができれば特に限定されない。但し、突片α1,α2の幅と高さが枠状ボビン41からはみ出さないことが好ましい。ここで、突片α1,α2の幅とは、組合体10を上面視したときに突片α1,α2の突出方向と直交する方向(本実施形態では枠状ボビン41の厚み方向)における突片α1,α2の長さである。また、突片α1,α2の高さとは、組合体10の高さ方向における突片α1,α2の長さのことである。
【0040】
[ケース]
ケース6は、その内部に組合体10を収納することができる箱状の部材である(
図1参照)。本実施形態のケース6は、組合体10を載置する底板部60と、底板部60とは別個に作製され、底板部60に後から取り付けられる側壁部61と、で構成される。なお、ケースは、後述する実施形態5に示すように底板部と側壁部とが一体に形成されたケースであっても良い。
【0041】
図4(B)に示すように、ケース6の側壁部61には、二つの係合溝β1,β2と、二つの逃がし溝(逃がし部の一形態)δ1,δ2と、が形成されている。係合溝β1,β2、および逃がし溝δ1,δ2はそれぞれ、
図3に示す枠状ボビン41の突片α1,α2、および枠状ボビン42の突片γ1,γ2に対応する位置に形成されている。以下、
図4を参照して係合溝β1,β2と逃がし溝δ1,δ2の形状を説明すると共に、適宜
図5の模式図を参照して係合溝β1,β2と突片α1,α2との係合状態、および逃がし溝δ1,δ2と突片γ1,γ2との係合状態を説明する。なお、
図5では、枠状ボビン41,42やケース6、係合状態を実際の寸法よりも誇張して示している(この点は、後述する
図7〜9においても同様)。
【0042】
(係合溝)
係合溝β1(係合溝β2も同様)は、
図4(C)に示すように、側壁部61の下端から上方に向かって延びている。係合溝β1は、側壁部61の上方側(即ち、リアクトル1の上方側)に位置する細幅部βnと、側壁部61の下方側(即ち、リアクトル1の下方側)に位置する広幅部βwと、からなっている。係合溝β1は、側壁部61を部分的に厚くし、その厚肉部の中央部分を削ることで形成することができる。削る深さは、厚肉部の突出厚さよりも大きくなっている。
【0043】
細幅部βnは、ケース6内に組合体10を配置したときに、枠状ボビン41の突片α1,α2が係合する部分である。係合溝β1,β2の延伸方向と直交する方向に側壁部61を切断したときの細幅部βnの輪郭線は、突片α1,α2の断面輪郭線にほぼ相似している。
【0044】
細幅部βnの溝幅は、突片α1,α2の幅と同等、若しくは突片α1,α2の幅よりも1mm以下程度大きい(
図5を合わせて参照)。このような溝幅の細幅部βnとすることで、位置決め箇所10Fにおいて、ケース6内での組合体10のコイル軸方向の位置を決めることができる(
図5を合わせて参照)。なお、細幅部βnの溝幅と突片α1,α2の幅との差が小さくなるほど、細幅部βnに突片α1,α2を配置し難くなるので、その差は0.5mm程度とすることが好ましい。
【0045】
上記細幅部βnの溝深さは、ケース6内に組合体10を配置したときに、細幅部βn内に配置された突片α1,α2の先端部が細幅部βnの溝底部に接触した状態となるように設定する、若しくは突片α1,α2の先端部が細幅部βnの溝底部から1mm以下程度離隔した状態となるように設定する(
図5を合わせて参照)。このような溝深さの細幅部βnとすることで、位置決め箇所10Fにおいて、ケース6内での組合体10のコイル幅方向の位置を決めることができる(
図5を合わせて参照)。なお、細幅部βnの溝底部と突片α1,α2の先端部との離隔長さが小さくなると、細幅部βnに突片α1,α2を配置し難くなるので、離隔長さは0.5mm程度とすることが好ましい。
【0046】
一方、広幅部βwは、その溝幅が側壁部61の下方側に向かうに従い広くなっている部分であって、ケース6に組合体10を収納する際の突片α1,α2(
図2,3などを参照)の挿入口となる部分である。係合溝β1,β2に広幅部βwを設けることで、ケース6内に組合体10を配置し易くなる。詳しくは、後述するリアクトル1の製造方法において説明する。
【0047】
なお、係合溝β1,β2の全体的な溝深さは、一定である必要はない。例えば、広幅部βwから細幅部βnに向かって徐々に溝深さが浅くなるようにしても良い。
【0048】
(逃がし溝)
逃がし溝δ1(逃がし溝δ2も同様)も係合溝β1,β2と同様、側壁部61の下端から上方に向かって延びている(
図4(D)を参照)。逃がし溝δ1は、側壁部61を削ることで形成することができる。
【0049】
上記逃がし溝δ1,δ2は、コイル軸方向に突片γ1,γ2を逃がすことができる溝幅を有している。より具体的には、逃がし溝δ1,δ2の溝幅は、突片γ1,γ2の幅よりも2mm以上大きくなっている。逃がし溝δ1,δ2の溝幅の上限は特に無い。
【0050】
上記逃がし溝δ1,δ2の溝深さは、特に限定されない。例えば、ケース6内に組合体10を配置したときに、逃がし溝δ1,δ2内に配置された突片γ1,γ2の先端部が逃がし溝δ1,δ2の溝底部に接触した状態、若しくは突片γ1,γ2の先端部が逃がし溝δ1,δ2の溝底部から1mm以下程度離隔した状態となるように逃がし溝δ1,δ2の溝深さを設定することが挙げられる。このような溝深さの逃がし溝δ1,δ2とすることで、逃がし箇所10Eにおいて、ケース6内での枠状ボビン42のコイル幅方向の位置を決めることができる(
図5を合わせて参照)。ここで、逃がし溝δ1,δ2の溝底部と突片γ1,γ2の先端部との離隔長さが小さくなると、逃がし溝δ1,δ2に突片γ1,γ2を配置し難くなるので、離隔長さは0.5mm程度とすることが好ましい。その他、逃がし溝δ1,δ2の溝底部から突片γ1,γ2が1mm以上離隔した状態となるように逃がし溝δ1,δ2の溝深さを設定しても良い。そうすることで、逃がし箇所10Eにおいて、突片γ1,γ2をコイル幅方向に逃がすことができる。
【0051】
なお、本実施形態の逃がし溝δ1,δ2の溝幅は、延伸方向に一様であるが、延伸方向の途中で変化しても構わない。その場合でも、溝幅方向の逃がし溝δ1,δ2と突片γ1,γ2との溝幅方向のクリアランスは最低限、2mm以上とすることが好ましい。また、逃がし溝δ1,δ2の全体的な溝深さは、一定である必要はない。例えば、入口側から徐々に溝深さが浅くなるようにしても良い。
【0052】
[蓋]
蓋9は、
図1に示すように、ケース6の開口部を封止する板状の部材である。ケース6に蓋9を取り付けることで、ケース6内の組合体10を外部環境から保護することができる。なお、本発明のリアクトルにおいて、蓋9は必須の構成ではなく、あくまでオプショナルな構成である。
【0053】
[その他]
ケース6内には封止樹脂を充填しても良い。封止樹脂を用いることで、ケース6内に組合体10を固定することができるし、組合体10を保護することができる。また、熱伝導性に優れる封止樹脂を用いることで、リアクトル1の動作時に組合体10で発生した熱をケース6側に効率的に逃がすことができる。この封止樹脂もオプショナルな構成であり、上述した蓋9と併用しても良いし、単独で用いても良い。つまり、蓋有りで封止樹脂有りの構成、あるいは蓋無しで封止樹脂有りの構成のいずれでも良い。
【0054】
≪効果≫
以上説明した構成を備えるリアクトル1は、生産性に優れる。それは、
図5に示すように、ケース内における組合体10の位置を決めるための位置決め箇所10Fが二箇所であるために、ケース6内に組合体10を配置し易いからである。このケース6内へ組合体10を配置し易いという効果は、リアクトル1の作製過程における効果である。従って、以下に、本発明のリアクトルの製造方法を説明し、その説明の過程で本発明のリアクトルの効果を説明する。合わせて、未説明のリアクトルの各構成についても詳細に説明する。
【0055】
≪リアクトルの製造方法≫
以上説明したリアクトル1は、例えば、次に示す工程に従って作製することができる。
・組合体10を作製する工程
・組合体10をケース6に収納する工程
・ケース6に蓋9を取り付ける工程
以下、各工程を順次説明すると共に、本実施形態のリアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0056】
≪組合体10を作製する工程≫
組合体10を作製するにあたり、
図3に示すように、コイル2と、磁性コア3と、内側ボビン51,52と、および枠状ボビン41,42と、を用意した。まず、用意した部材について説明する。
【0057】
[用意した部材]
(コイル)
コイル2は、一対のコイル素子2A,2Bと、両コイル素子2A,2Bを連結するコイル素子連結部2rと、を備える。各コイル素子2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行するように横並びに並列されている。また、コイル素子連結部2rは、コイル2の他端側(
図3において紙面右側)において両コイル素子2A,2Bを繋ぐU字状に屈曲された部分である。このコイル2は、接合部の無い一本の巻線を螺旋状に巻回して形成しても良いし、各コイル素子2A,2Bを別々の巻線により作製し、各コイル素子2A,2Bの巻線の端部同士を溶接や圧着などにより接合することで形成しても良い。
【0058】
コイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線を好適に利用できる。本実施形態では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用し、各コイル素子2A,2Bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルである。また、各コイル素子2A,2Bの端面形状を長方形の角部を丸めた形状としているが、端面形状は、円形状など適宜変更することができる。
【0059】
コイル2の両端部2a,2bは、ターン形成部分から引き延ばされて、端子部材8a,8bに接続される(
図1を参照)。この端子部材8a,8bを介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
【0060】
(磁性コア)
磁性コア3は、各コイル素子2A,2Bの内部に配置される一対の内側コア部31,31と、コイル2から露出されている一対の外側コア部32,32とを環状に組み合わせて形成される。
【0061】
((内側コア部))
内側コア部31は、略直方体状の磁性材料からなるコア片31mと、コア片31mよりも低透磁率のギャップ材31gと、を交互に連結した積層柱状体である。本例ではギャップ材31gの数がコア片31mの数よりも一つ多くなっており、内側コア部31の一端面(紙面左側端面)と他端面(紙面右側端面)とにギャップ材31g,31gが配置されている。コア片31mとギャップ材31gとは、例えば熱硬化型の接着剤などで接合することが好ましい。接着剤が部材同士の衝突を抑制するクッション材として機能することが期待でき、リアクトル1の使用時の騒音を抑制できるからである。
【0062】
((外側コア部))
外側コア部32,32は、例えばその上面が略ドーム状の柱状コア片である。紙面左側に配置される一方の外側コア部32は、内側コア部31,31の一端側(紙面左側)の面に対向し、紙面右側に配される他方の外側コア部32は、上記内側コア部31,31の他端側(紙面右側)に対向している。その結果、内側コア部31,31と外側コア部32,32とで環状の磁性コア3が形成される。
【0063】
((コア片の材質))
上記内側コア部31と外側コア部32を構成する各コア片には、鉄などの鉄属金属やその合金などに代表される軟磁性粉末を用いた圧粉成形体や、軟磁性粉末を含む樹脂からなる成形硬化体、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体などが利用できる。
【0064】
内側コア部31,31を構成するコア片31mと、外側コア部32,32とは、磁気特性を異ならせても良い。例えば、コア片31mと外側コア部32とで使用する材質を異ならせることで両者の磁気特性を異ならせても良いし、コア片31mを成形硬化体、外側コア部32を圧粉成形体とすることで両者の磁気特性を異ならせても良い。一般に、成形硬化体に含まれる磁性粉末の量は、圧粉成形体と比較して少ない傾向にあるため、『成形硬化体の比透磁率<圧粉成形体の比透磁率』となる傾向にある。そのため、内側コア部31のコア片31mを成形硬化体、外側コア部32を圧粉成形体とすれば、大電流で使用した場合でも磁気飽和し難い磁性コア3(リアクトル1)とすることができる。なお、成形硬化体からなる一つのコア片31mと、そのコア片31mの両端面に貼り合わされる二枚のギャップ材31g,31gと、で内側コア部31を形成しても良い。
【0065】
(内側ボビン)
内側ボビン51と内側ボビン52はそれぞれ、内側コア部31の上面と下面に取り付けられ、内側コア部31の外周面とコイル素子2A,2Bの内周面との間に介在され、内側コア部31とコイル素子2A,2Bとの絶縁を確保する部材である。本実施形態の内側ボビン51(52)は、内側コア部31の上面(下面)に対応する平面部と、内側コア部31の角部に対応する湾曲部と、からなり、平坦部には貫通孔が形成されている。なお、内側ボビンの形状は、上述した形状に限定されるわけではなく、例えば、内側コア部31を内部に収納することができる筒形状であっても良い。
【0066】
内側ボビン51,52は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料で構成することができる。この絶縁性材料に、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、および炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスフィラーを含有させ、内側ボビン51,52の絶縁性および放熱性を向上させても良い。
【0067】
(枠状ボビン)
枠状ボビン41(42)は、既に説明した突片α1,α2(突片γ1,γ2)の他に、一対の貫通孔4h,4hと、仕切り部4dと、庇部4eと、を備える。貫通孔4hは、組合体10を作製する際、内側コア部31の端部が挿通される部分である。また、仕切り部4dは、コイル素子2A,2Bの間に挿入され、両コイル素子2A,2Bの離隔状態を保持する部分である。また、庇部4eは、コイル素子連結部2rと外側コア部32との間に挿入され、両者2r,32の間の絶縁を確保する部分である。
【0068】
枠状ボビン41、42は、内側ボビン51,52に用いることができる絶縁性材料で構成することができる。もちろん、枠状ボビン41,42にもセラミックスフィラーを含有させ、枠状ボビン41,42の絶縁性および放熱性を向上させても良い。
【0069】
[組立手順]
本実施形態では、巻線を巻回してなるコイル2を用意し、このコイル2に複数のコア片からなる磁性コア3を組み付けることで組合体10を完成させた。具体的には、内側コア部31の外周に内側ボビン51,52を取り付け、その組物をコイル素子2A,2Bの内部に挿入する。次いで、内側コア部31の端面に枠状ボビン41,42を介在させた状態で、内側コア部31,31を外側コア部32,32で挟み込む。その際、内側コア部31の端部が枠状ボビン41,42の貫通孔4hに貫通され、内側コア部31の端面が外側コア部32に接合される。ここで、内側コア部31と外側コア部32とは、例えば熱硬化型の接着剤などで接合することが好ましい。接着剤が部材同士の衝突を抑制するクッション材として機能することが期待でき、リアクトル1の使用時の騒音を抑制できるからである。
【0070】
≪組合体10をケース6に収納する工程≫
組合体10をケース6に収納するにあたり、本実施形態では、
図6に示すように、ケース6と、絶縁シート7Aと、接着シート7Bとを用意した。まず、用意した部材について説明し、次いでケース6への組合体10の収納手順を説明する。
【0071】
[用意した部材]
(ケース)
本実施形態で用意したケース6は、平板状の底板部60と、この底板部60とは別個に作製した側壁部61と、を組み合わせることで形成されている。両者60,61は、その材質を異ならせることもできるし、同じとすることもできる。
【0072】
((底板部))
底板部60は、組合体10を支持しつつ、組合体10からリアクトル1の取付対象(例えば、冷却ベース)への放熱経路として機能する板状の部材である。具体的には、底板部60の一面側(紙面上方側)が組合体10を搭載する搭載面であり、底板部60の他面側(紙面下方側)がリアクトル1を冷却する冷却ベース(図示せず)への取付面である。
【0073】
底板部60の四隅にはそれぞれ、リアクトル1を冷却ベースに取り付けるための第一取付孔H1が設けられている。また、当該四隅のうち、対角位置にある二つの隅には、第二取付孔H2が設けられている。
【0074】
上記構成を備える底板部60は、コイル2に近接して配置されるため、非磁性材料から構成することが好ましい。また、底板部60は、組合体10の放熱経路に利用されるため、熱伝導性に優れる金属材料から構成する。つまり、底板部60は、アルミニウムやその合金、あるいはマグネシウムやその合金などの非磁性金属から構成する。上記列挙した非磁性金属は軽量であるため、軽量化が望まれている車載部品の構成材料に適する。この底板部60の厚さは、強度、磁束の遮蔽性を考慮して、2〜5mm程度とすることが好ましい。
【0075】
((側壁部))
側壁部61は、上方と下方に開口部を有する筒状の部材であって、
図4を参照して既に説明したように、その内壁面に係合溝β1および逃がし溝δ1を有する(係合溝β2および逃がし溝δ2は
図6では見えない位置にある)。これら係合溝β1,β2および逃がし溝δ1,δ2の他に、側壁部61は、その外壁面の上方開口部寄りの位置に係合爪6Cと、係合爪6Cの両サイドに配置されるガイド突起6Gと、を有する。係合爪6Cは、ケース6の上方から下方に向かうに従い、ケース6外周面からの突出量が漸次大きくなる断面三角形状の突起であって、後述する蓋9に備わる環状の留め具9C(
図1)が引っ掛られる部分である。この係合爪6Cは、いわゆるスナップフィット構造の一部を構成する部材である。一方、ガイド突起6G,6Gは、ケース6の高さ方向に延び、後述する環状の留め具9Cを係合爪6Cに係合させるときに、留め具9Cを両側から挟み込む一対の突条であって、留め具9Cを係合爪6Cに案内する役割を持つ。なお、スナップフィット構造は、側壁部61の内壁面に形成することもできる。
【0076】
上記側壁部61の下方縁部にはフランジ部61Fが設けられている。フランジ部61Fの輪郭形状は、上述した底板部60の輪郭形状にほぼ一致し、そのフランジ部61Fには、底板部の第一取付孔H1と第二取付孔H2に対応する位置に第三取付孔H3と第四取付孔H4が形成されている。
【0077】
また、側壁部61には、ケース6に組合体10を収納したときに組合体10の外側コア部32,32の周面と上面を包囲するコアカバー部6A,6Bが設けられている(
図4を合わせて参照)。つまり、コアカバー部6A,6Bは、外側コア部32,32の外周面形状に対応した形状となっている。このコアカバー部6A,6Bにより、ケース6に収納した組合体10がケース6から脱落することを効果的に防止できる。コアカバー部6A,6Bが設けられていることで、側壁部61の上方開口部が組合体10よりも小さくなっているからである。このコアカバー部6A,6Bの内周面と、外側コア部32,32の外周面とのクリアランスは、0.5〜3.0mm程度とすることが好ましい。
【0078】
上記コアカバー部6A,6Bのうち、紙面手前側(
図6中、組合体10のコイル2の端部2a,2bが配置される側)のコアカバー部6Aには、円筒状の端子台6Sa,6Sbが二つ設けられている。端子台6Sa,6Sbにはネジ穴が切ってあり、各端子台6Sa,6Sbに端子部材8a,8bをネジ止めできるようになっている。一方、紙面奥側(コイル2のコイル素子連結部2rが配置される側)のコアカバー部6B(
図4(B)参照)には、後述する温度測定部材8(
図1を合わせて参照)の取付部となるスライドレール6Rが設けられている。
【0079】
上記構成を備える側壁部61は、樹脂で構成することが好ましい。樹脂であれば、例えば、射出成形などで複雑な形状に形成することが容易であるからである。側壁部61を構成する樹脂としては、例えば、PBT樹脂、ウレタン樹脂、PPS樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などを利用することができる。これらの樹脂は、電気絶縁性に優れることから、組合体10のコイル2と側壁部61との間の絶縁を確保し易い。これら樹脂には、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、および炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスフィラーが含有されていても良く、そうすることで、側壁部61の絶縁性および放熱性を向上させることができる。
【0080】
なお、側壁部61は金属で形成することもできる。例えば、アルミニウムなどの非磁性金属で側壁部61を構成すれば、側壁部61に電磁波シールドの機能を持たせることができる。
【0081】
(絶縁シートおよび接着シート)
図6に示すように、絶縁シート7Aと接着シート7Bは、ケース6の底板部60に組合体10を接着させるためのシート状部材である。絶縁シート7Aは、非磁性金属からなる底板部60と組合体10との間の絶縁を確保するため部材であって、接着剤などで底板部60に貼り付けられる。一方、接着シート7Bは、その両面が粘着質で柔らかく、複雑な凹凸形状を有する組合体10を絶縁シート7Aに強固に密着させるための部材である。
【0082】
絶縁シート7Aには所定の耐電圧特性(リアクトル1においては10kV/50μm以上)が求められる。また、絶縁シート7Aは、コイル2(コイル素子2A,2B)で発生した熱を効果的に底板部60に伝達できるように、0.1W/m・K以上の優れた熱伝導性を有することが好ましく、その熱伝導率は高いほど好ましい(特に好ましくは2.0W/m・K以上)。
【0083】
一方、接着シート7Bには、コイル2と底板部60との間を十分に絶縁可能な程度の絶縁特性と、リアクトル1の使用時における最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性が求められる。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの熱可塑性の絶縁性樹脂が接着シート7Bに好適に利用できる。この絶縁性樹脂には、側壁部61の説明の際に例示したセラミックスフィラーが含有されていても良く、そうすることで、接着シート7Bの絶縁性および放熱性を向上させることができる。接着シート7Bの熱伝導率は、絶縁シート7Aと同等程度が好ましい。
【0084】
(その他)
本実施形態のリアクトル1は、リアクトル1の運転時における組合体10の温度を監視するための温度測定部材8を備える。温度測定部材8は、熱電対などの公知の温度センサ81と、その温度センサ81に接続される配線82と、配線82の端部を保持する筒状の保持部83と、を備える。筒状の保持部83の一側開口部に上記配線82が挿入され、保持部83の内部に配線82が保持されている。そのため、リアクトル1の外部にある測定機器の配線を、保持部83の他側開口部に挿入すれば、温度センサ81と測定機器とが電気的に接続される。また、保持部83の外周面にはスライド溝が形成されており、上述したケース6の側壁部61に設けられるスライドレール6Rに保持部83を取り付けることができるようになっている。
【0085】
[組合体10の収納手順]
まず、底板部60の上面に接着剤を用いて絶縁シート7Aを取り付け、その絶縁シート7Aの上に接着シート7Bを取り付ける。そして、その接着シート7Bの上に組合体10を載置する。組合体10の載置位置は、後に補正することができるので、おおよその位置で良い。上述したように、接着シート7Bの上に組合体10を載置すれば、柔軟性を有する接着シート7Bが組合体10の下面の凹凸に入り込み、接着シート7Bの上面と組合体10の下面とが密着する。なお、接着シート7Bを用いる代わりに、絶縁シート7Aの上面に接着剤を塗布もしくは印刷しても良い。
【0086】
次に、接着シート7Bが硬化する前に、組合体10の上方から側壁部61を被せる。その際、係合溝β1,β2の広幅部βw(
図4参照)の挿入口側の溝幅が、突片α1,α2の幅よりもかなり広いため(例えば、5mm以上)、底板部60に載置される組合体10の突片α1,α2に対して係合溝β1,β2を位置合わせし易く、しかも係合溝β1,β2に突片α1,α2を嵌め込み易い。一方、逃がし溝δ1,δ2の溝幅は、もともと突片γ1,γ2の幅よりもかなり広くなっているため(例えば、5mm以上)、係合溝β1,β2に突片α1,α2を嵌め込めば、自然と突片γ1,γ2が逃がし溝δ1,δ2内でコイル軸方向に逃がされる。つまり、組合体10に側壁部61を被せるにあたり、実質的に突片α1,α2に対して係合溝β1,β2を位置合わせするだけで良く、非常に簡単に組合体10に側壁部61を被せることができる。
【0087】
組合体10に被せた側壁部61を徐々に鉛直下方に下げていくと(即ち、側壁部61を底板部60に向かって移動させていくと)、突片α1,α2は徐々に係合溝β1,β2の細幅部βn(
図4参照)に案内され、側壁部61における組合体10の位置が決まる。一方、逃がし溝δ1,δ2の溝幅は、突片γ1,γ2の幅よりも広く、突片γ1,γ2の外側面が逃がし溝δ1,δ2の内壁面に接触しないため、側壁部61を鉛直下方に下げていく際に、抵抗とならない。
【0088】
側壁部61を下げきったらネジ6s(固定部材)を用いて側壁部61と底板部60とを一体化する。ネジ止めには、側壁部61の第四取付孔H4と、底板部60の第二取付孔H2を用いる。ネジ止めを行なうことで、側壁部61を組合体10に被せる際に、底板部60に対する側壁部61の位置が多少ずれていたとしても、底板部60に対する適正位置に側壁部61が固定される。同時に、ケース6内における組合体10の位置も決定される。
【0089】
[備品の配置]
組合体10のコイル2の端部2a,2bに端子部材8a,8bを取り付けると共に、温度測定部材8を配置する。端子部材8a,8bは、滑り台のような形状をしており、その一端をコイル2の端部2a,2bに圧接や溶接し、その中間部をネジ8sにより端子台6Sa,6Sbに固定する。そうすることで、端子部材8a,8bの他端(即ち、リアクトル1に電力を供給する電気機器との接続端)が、ケース6の上端(即ち、側壁部61の上端)よりも低い位置に配置される。ここで、突片α1,α2と係合溝β1,β2との係合によって、ケース6の側壁部61に対する組合体10の位置が正確に決まっているので、端子部材8a,8bの中間部に形成されるネジ孔が、端子台6Sa,6Sbの位置に精度良く位置合わせされる。そのため、本実施形態の構成では、端子部材8a,8bの取り付けを容易に行なうことができる。
【0090】
一方、温度測定部材8の配置にあたり、温度センサ81は組合体10のコイル素子2A,2B間に配置されるようにする(
図1を合わせて参照)。また、配線82は、コイル素子2A,2B間の溝に這わせて、側壁部61のフック6Fに引っかけ、保持部83はスライドレール6Rに嵌め込む。
【0091】
端子部材8a,8bと温度測定部材8の取り付けが終了したら、ケース6内にエポキシなどの封止樹脂を充填し、ケース6内に組合体10を固定する。封止樹脂にはセラミックスフィラーを含有させても良く、そうすることでリアクトル1の放熱性を高めることができる。なお、封止樹脂の代わりに、陸橋状のステーを用いてケース6内に組合体10を固定しても良い。その場合、ケース6内に冷媒を循環させる構成を採用すれば、リアクトル1の放熱性を向上させることができる。
【0092】
≪ケース6に蓋9を取り付ける工程≫
既に述べたように蓋9はオプショナルな構成であり、無くても構わない。しかし、蓋9を設けることで、ケース6内の組合体10を外部環境から保護することをより確実にすることができる。以下、まず用意した蓋9の構成を説明し、次いで蓋9の取り付け手順を説明する。
【0093】
[用意した部材]
(蓋)
蓋9は、
図1に示すように、組合体10を収納したケース6の開口部に被せられて、当該開口部を閉じる部材である。本実施形態の蓋9は、側壁部61の上方開口部全てを覆う大きさを備える。また、この蓋9は、ケース6に取り付けたときに側壁部61の上方開口部から張り出し、組合体10に接続した端子部材8a,8bを覆う端子カバー部90を備えている。さらに蓋9は、その周縁に環状の留め具9Cを四つ備えている。留め具9Cは、上述したケース6の側壁部61の外壁面に設けられた係合爪6Cに係合し、いわゆるスナップフィット構造を構成する。
【0094】
[蓋の取り付け]
以上説明した蓋9を、ケース6の上方開口部に取り付ける。その際、蓋9の留め具9Cがケース6の係合爪6Cに係合し、ケース6に蓋9が固定される。このとき、係合爪6Cの両サイドにガイド突起6G,6Gが形成されているため、留め具9Cがスムースに係合爪6Cに案内される。また、蓋9をケース6に取り付ければ、蓋9の端子カバー部90によって端子部材8a,8bの一部(端子台6Sa,6Sbに固定される部分)が覆われ、その覆われた部分が機械的衝撃から保護される。
【0095】
≪製造工程に表れる効果≫
以上説明したように、リアクトル1において二箇所の位置決め箇所と二箇所の逃がし箇所を設定することで、リアクトル1の作製工程におけるケース6への組合体10の配置を行なう『工程β』を極めて容易にすることができる。その結果、リアクトル1を生産性良く製造することができる。なお、完成したリアクトル1は、取付対象となる冷却ベースに取り付ければ良い。その取り付けの際は、ケース6の第三取付孔H3にネジを打てば良い。
【0096】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1とは位置決め箇所10Fと逃がし箇所10Eの位置が異なる形態を
図7に基づいて説明する。なお、
図7(A),(B)に示される構成はいずれも、同一形状の枠状ボビン41,42を用いた構成であるが、枠状ボビン41,42は異形状であっても構わない。
【0097】
まず、
図7(A)に示す形態では、コイル幅方向のコイル素子2A側において、枠状ボビン41(42)の突片α1(α2)と、ケース6の係合溝β1(β2)と、が係合している。また、この形態では、コイル幅方向のコイル素子2B側において、枠状ボビン41(42)の突片γ1(γ2)が、ケース6の逃がし溝δ1(δ2)内で逃がされている。つまり、
図7(A)に示す形態は、二つの位置決め箇所10Fがコイル幅方向の同じ側に設定されている形態である。
【0098】
一方、
図7(B)に示す形態では、コイル軸方向の端子2a,2b側でかつコイル幅方向のコイル素子2A側で、枠状ボビン41の突片α1と、ケース6の係合溝β1と、が係合し、コイル軸方向の端子2a,2b側でかつコイル幅方向のコイル素子2B側で、枠状ボビン41の突片γ2が、ケース6の逃がし溝δ2内で逃がされている。また、この形態では、コイル軸方向のコイル素子連結部2r側でかつコイル幅方向のコイル素子2B側で、枠状ボビン42の突片α2と、ケース6の係合溝β1と、が係合し、コイル軸方向のコイル素子連結部2r側でかつコイル幅方向のコイル素子2A側で、枠状ボビン42の突片γ1が、ケース6の逃がし溝δ1内で逃がされている。つまり、
図7(B)に示す形態は、二つの位置決め箇所10Fと二つの逃がし箇所10Eが共に、コイル幅方向とコイル軸方向の両方に離隔して設定されている形態である。
【0099】
図7(A),(B)に示すいずれの形態でも、組合体10にケース6の側壁部61を被せる際、二箇所の位置合わせを行うだけでよく、組合体10に側壁部61を被せ易い。
【0100】
<実施形態3>
実施形態3では、実施形態1,2とは逃がし箇所10Eの形態が異なる例を
図8に基づいて説明する。ここで、位置決め箇所10Fにおける枠状ボビン41とケース6との係合状態は実施形態1と同様である。
【0101】
図8に示す形態では、枠状ボビン42に突片γ1,γ2が形成されているものの、ケース6の側壁部61にその突片γ1,γ2を迎え入れる溝が形成されていない。そのため、
図8に示す形態では、枠状ボビン42の両側端近傍の側壁部61内周面全体が逃がし部として機能し、枠状ボビン42がコイル軸方向に逃がされる逃がし箇所10Eが形成される。
【0102】
図8に示す形態でも、組合体10にケース6の側壁部61を被せる際、二つの位置決め箇所10Fの位置合わせを行うだけでよく、組合体10に側壁部61を被せ易い。
【0103】
なお、
図8の形態の逃がし箇所10Eにおいて、ケース6内での枠状ボビン42のコイル幅方向の位置は決まっている。これに対して、逃がし箇所10Eにおいて、枠状ボビン42とケース6とがコイル幅方向に全く係合しない形態としても良く、仮にそのようにしたとしても、ケース6内における組合体10全体の位置は、二つの位置決め箇所10Fで決められるため、問題とならない。
【0104】
<実施形態4>
実施形態4では、枠状ボビン41に係合溝β1,β2を形成し、ケース6の側壁部61に突片α1,α2,γ1,γ2を形成した形態を
図9に基づいて説明する。
【0105】
まず、
図9に示す形態では、枠状ボビン41の両側端(紙面上下方向)に係合溝β1,β2が形成され、枠状ボビン42の両側端には、実施形態1〜3の逃がし溝δ1,δ2に相当するものは形成されていない。一方、ケース6の側壁部61には、四つの突片α1,α2,γ1,γ2が形成されており、それらのうちの突片α1,α2は枠状ボビン41の係合溝β1,β2に係合しており、突片γ1,γ2はコイル軸方向に逃がされている。つまり、この
図9の形態では、枠状ボビン42の両側端近傍が逃がし部として機能し、コイル軸方向の端部2a,2b側に、二つの位置決め箇所10Fが形成され、コイル軸方向のコイル素子連結部2r側に、二つの逃がし箇所10Eが形成されている。
【0106】
図9に示す形態でも、組合体10にケース6の側壁部61を被せる際、二箇所の位置合わせを行うだけでよく、組合体10に側壁部61を被せ易い。
【0107】
なお、枠状ボビンに溝を、ケースに突片を設ける本実施形態4の構成においても、実施形態2に示すように位置決め箇所10Fと逃がし箇所10Eを配置することができる。
【0108】
<実施形態5>
実施形態5では、底板部60と側壁部61とが一体となったケース6’を用いる形態を
図10に基づいて説明する。
【0109】
一体型のケース6’を用いる場合、
図10(A)に示すように、ケース6’の上方から組合体10’を挿入することになる。そのため、ボビン側係合部(本例では枠状ボビン41の突片α2、枠状ボビン42の突片γ2)の形成位置や、そのボビン側係合部を迎え入れるケース側係合部(本例ではケース6の係合溝β1、逃がし溝δ1)の形状に工夫を必要とする。
【0110】
まず、ケース6’について説明すると、
図10(B)に示すように、ケース6’に設けられる係合溝β1は、側壁部61の上方側に広幅部βwが、下方側に細幅部βnが配置されて、広幅部βwは側壁部61の上端開口部に繋がっている。これは、ケース6’の上方から組合体10’を挿入する構成であるため、側壁部61の上方側が突片を迎え入れる挿入口となるからである。なお、係合溝β1に対応する突片は、
図10(A)では見えない位置にあり、
図10(A)に示す突片α2に対応する係合溝は、
図10(A)では見えない位置にある。
【0111】
一方、ケース6’に設けられる逃がし溝δ1は、側壁部61の上端開口部に繋がっている。これも、ケース6’の上方から組合体10’を挿入する構成であるため、側壁部61の上方側が突片を迎え入れる挿入口となるからである。なお、逃がし溝δ1に対応する突片は、
図10(A)では見えない位置にあり、
図10(A)に示す突片γ2に対応する係合溝は、
図10(A)では見えない位置にある。
【0112】
次に、組合体10’について説明すると、
図10(A)に示すように、枠状ボビン41に設けられる突片α2、および枠状ボビン42に設けられる突片γ2の形成位置は、組合体10’の下方側に偏っている。これは、
図10(B)に示すように、ケース6’に設けられる係合溝β1の細幅部βnが、側壁部61の下方側に配置されているからである。
【0113】
以上説明した実施形態5の構成によっても、実施形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0114】
<実施形態6>
実施形態6では、枠状ボビンを内側ボビンと一体化したボビン部材とする形態を
図11に基づいて説明する。ボビン部材以外の構成は、他の実施形態と同じものを利用することができるので、ここではボビン部材についてのみ説明する。
【0115】
図11(A)のボビン部材5Aは、枠状ボビン41の二つの貫通孔4h,4hに対応する位置に筒状部5Asを備える形態である(ボビン部材5A全体では、合計二つの筒状部5Asが設けられている)。このボビン部材5Aは、二つ一組で用いられ、筒状部5Asはコイル素子2A,2B(
図3を参照)の内部に挿入される。即ち、ボビン部材5Aの筒状部5Asが内側ボビンとして機能する。
【0116】
図11(B)のボビン部材5Bは、枠状ボビン41の各貫通孔4hを取り囲むように配置される棒状の枠片5Bfが四つ設けられている(ボビン部材5B全体では合計八つの枠片5Bfが設けられている)。枠片5Bfは、内側コア部31(
図3を参照)の側面の角部に対応する湾曲形状を備えている。このボビン部材5Bは、二つ一組で用いられ、枠片5Bfは、コイル素子2A,2B(
図3を参照)の内部に挿入される。即ち、ボビン部材5Bの枠片5Bfが内側ボビンとして機能する。
【0117】
<実施形態7>
実施形態1〜6のリアクトルは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。以下、本発明のリアクトルを車載用電力変換装置に適用した例を
図12、13に基づいて簡単に説明する。
【0118】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、
図12に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを備える。なお、
図12では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態としても良い。
【0119】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0120】
コンバータ1110は、
図13に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜6に記載のリアクトルを用いる。軽量で扱い易いこれらリアクトルを用いることで、電力変換装置1100(コンバータ1110を含む)の軽量化を図ることができる。
【0121】
ここで、上記車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC−DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC−DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC−DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1〜6のリアクトルなどと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜6のリアクトルなどを利用することもできる。
【0122】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、コイル素子を一つしか持たないリアクトルにも、本発明の構成を適用することができる。