特許第5881050号(P5881050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881050
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】光電変換デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   H01L31/04 130
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-533648(P2013-533648)
(86)(22)【出願日】2012年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2012072998
(87)【国際公開番号】WO2013039019
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/071049
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/071050
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/071054
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(72)【発明者】
【氏名】長草 善孝
(72)【発明者】
【氏名】潮田 裕之
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第08/014248(WO,A2)
【文献】 特開昭57−172778(JP,A)
【文献】 特開2005−011841(JP,A)
【文献】 特開2004−103939(JP,A)
【文献】 特開2008−135657(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/090718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンに従って複数の貫通穴を有する絶縁性の基材と、
前記複数の貫通穴内と前記基材の表面とに設けられ、導電材でなる一方の電極と、
前記基材の表面で前記一方の電極との間に隙間を有するように設けられた他方の電極と、
前記一方の電極上に設けられ正孔輸送材料でなるp層の有機半導体と、
前記他方の電極上に設けられ電子輸送材料でなるn層の有機半導体と、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体の上に設けられた保護層と、
を備え、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体が同一面上に互い違いに形成されており、
前記一方の電極は、前記基材の面の上においてドット状に設けられ、前記他方の電極は、前記基材の面の上において前記一方の電極を囲むように隙間をおいて設けられている、
光電変換デバイス。
【請求項2】
パターンに従って複数の貫通穴を有する絶縁性の基材と、
前記複数の貫通穴内と前記基材の表面とに設けられ、導電材でなる一方の電極と、
前記基材の表面で前記一方の電極との間に隙間を有するように設けられた他方の電極と、
前記一方の電極上に設けられ電子輸送材料でなるn層の有機半導体と、
前記他方の電極上に設けられ正孔輸送材料でなるp層の有機半導体と、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体の上に設けられた保護層と、
を備え、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体が同一面上に互い違いに形成されており、
前記一方の電極は、前記基材の面の上においてドット状に設けられ、前記他方の電極は、前記基材の面の上において前記一方の電極を囲むように隙間をおいて設けられている、
光電変換デバイス。
【請求項3】
前記一方の電極は、前記基材の裏面に形成された導電性の被膜によって相互に接続されており、
一方の外部接続部及び他方の外部接続部が前記基材を挟んで設けられ、
前記一方の外部接続部が前記基材の裏面側の前記被膜に接続され、
前記他方の外部接続部が前記基材の表面側の他方の電極に接続され、
一つの外部接続端子が、前記一方の外部接続部及び前記他方の外部接続部に接続される、請求項1又は2に記載の光電変換デバイス
【請求項4】
前記一方の電極は、前記基材の表面から張り出した突出部を有している、請求項1又は2に記載の光電変換デバイス
【請求項5】
前記一方の電極及び前記他方の電極が、Cu、Alの何れかで形成されている、請求項1又は2に記載の光電変換デバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換デバイスは、光を電気エネルギーに変換するデバイス及び電気エネルギーを光に変換するデバイスである。前者の例としては太陽電池などがあり、後者の例としては発光ダイオードなどがある。
【0003】
今日、クリーンエネルギーの一つとして太陽電池による電力供給の必要性が再認識されている。太陽電池にはSi太陽電池、化合物太陽電池、有機半導体薄膜太陽電池など各種のものがある。
【0004】
Si太陽電池について単結晶Si太陽電池を例にとって説明する。p型の単結晶ウエハに気相拡散やn型不純物イオンの打ち込み等によってウエハの表面層をn型半導体にするなどしてpn接合やpin接合が作られる。そして表面電極と裏面電極とを形成してサンドイッチ構造の太陽電池が作製される。
【0005】
化合物太陽電池の中には各種のものがある。ここでは、エネルギー変換効率が高く、経年変化による光劣化が起こりにくく、耐放射性特性に優れ、光吸収波長領域が広く、光吸収係数が大きいといった利点を有するカルコパイライト型太陽電池を例にとって説明する。このカルコパイライト型太陽電池は、I族、III族及びVI族の元素を構成成分とするカルコパイライト化合物(Cu(In+Ga)Se)から成るCIGS層をp型の光吸収層として備えたものである(例えば特許文献1)。
【0006】
このCIGS層を備えた太陽電池は、一般的に、ソーダライムガラス(SLG)基板といったガラス基板上に、Mo金属層からなる正極たる裏面電極層と、SLG基板に由来して生じるNaムラを防止するためのNaディップ層と、CIGS光吸収層と、n型のバッファ層と、負極たる透明電極層による最外表面層と、を備えた多層積層構造で構成される。ここで、n型のバッファ層はCdS、ZnO、InSなどで形成され、透明電極層はZnOAlなどが用いられる。
【0007】
この多層積層構造にあっては、表面の受光部から照射光が入射すると、多層積層構造のp−n接合付近では、バンドギャップ以上のエネルギーを有する照射光によって励起されて一対の電子及び正孔が生じる。励起された電子と正孔とは、拡散によりp−n接合部に達し、接合の内部電界により、電子がn領域に、正孔がp領域に集合して分離される。この結果、n領域が負に帯電し、p領域が正に帯電し、各領域に設けた電極間で電位差が生じる。この電位差を起電力として、各電極間を導線で結線したときに光電流が得られる。
【0008】
CIGS光吸収層は次のような工程によって得られる。即ち、In層とCu−Ga層とを積層状態にして前駆体として備える基板自体をアニール処理室内に収容してプレヒートを行う。その後、アニール処理室内に挿入したガス導入管によってHSeガスを導入しつつ、室内を500乃至520℃の温度範囲に昇温することによって、前駆体をCIGS層に変換する。
【0009】
これに対し、有機半導体薄膜太陽電池は塗布法によって形成することができるため、大量生産に適した太陽電池として注目されている。有機太陽電池は、有機ドナー材料と有機アクセプター材料を混合した、所謂バルクヘテロジャンクション構造を有している。その中でも、塗布及び低温プロセスでフレキシブル基板への陰極形成を可能とした有機薄膜太陽電池が開発されている(例えば、特許文献2)。
【0010】
特許文献2によれば、有機半導体薄膜太陽電池が、基板の一方面上に、陽極、バルクヘテロジャンクション構造を有する光電変換層及び陰極が順に積層された構造を有していて、陰極が塗布により酸化銀と還元剤からなり、電子輸送層が塗布により陰極近傍に有機金属をドープして形成されていることにより、低温で陰極が形成されるだけでなく、有機金属ドープ層と陰極との接合が改良されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−196771号公報
【特許文献2】特開2011−124468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の構造においては、pn接合となる領域を挟んで一対の電極を設ける必要があった。そのため、光照射側の電極は、光透過性がよく、かつ電気抵抗が小さいものが要求されており、そのために、光照射側の電極は高価なレアメタルを蒸着やメッキにより形成する必要がある。またそれに伴いプロセス工程が複雑であった。
【0013】
そこで、本発明は、電極材料として光透過性を要求しない光電変換デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る光電変換デバイスは、次の通りである。
[1] パターンに従って複数の貫通穴を有する絶縁性の基材と、
前記複数の貫通穴内と前記基材の表面とに設けられ、導電材でなる一方の電極と、
前記基材の表面で前記一方の電極との間に隙間を有するように設けられた他方の電極と、
前記一方の電極上に設けられ正孔輸送材料でなるp層の有機半導体と、
前記他方の電極上に設けられ電子輸送材料でなるn層の有機半導体と、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体の上に設けられた保護層と、
を備え、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体が同一面上に互い違いに形成されており、
前記一方の電極は、前記基材の面の上においてドット状に設けられ、前記他方の電極は、前記基材の面の上において前記一方の電極を囲むように隙間をおいて設けられている、
光電変換デバイス。
[2] パターンに従って複数の貫通穴を有する絶縁性の基材と、
前記複数の貫通穴内と前記基材の表面とに設けられ、導電材でなる一方の電極と、
前記基材の表面で前記一方の電極との間に隙間を有するように設けられた他方の電極と、
前記一方の電極上に設けられ電子輸送材料でなるn層の有機半導体と、
前記他方の電極上に設けられ正孔輸送材料でなるp層の有機半導体と、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体の上に設けられた保護層と、
を備え、
前記p層の有機半導体及び前記n層の有機半導体が同一面上に互い違いに形成されており、
前記一方の電極は、前記基材の面の上においてドット状に設けられ、前記他方の電極は、前記基材の面の上において前記一方の電極を囲むように隙間をおいて設けられている、
光電変換デバイス。
【0015】
[3] 前記一方の電極は、前記基材の裏面に形成された導電性の被膜によって相互に接続されており、
一方の外部接続部及び他方の外部接続部が前記基材を挟んで設けられ、
前記一方の外部接続部が前記基材の裏面側の前記被膜に接続され、
前記他方の外部接続部が前記基材の表面側の他方の電極に接続され、
一つの外部接続端子が、前記一方の外部接続部及び前記他方の外部接続部に接続される、前記[1]又は[2]に記載の光電変換デバイス。
【0016】
[4] 前記一方の電極は、前記基材の表面から張り出した突出部を有している、前記[1]又は[2]に記載の光電変換デバイス。
【0017】
[5] 前記一方の電極及び前記他方の電極が、Cu、Alの何れかで形成されている、前記[1]又は[2]に記載の光電変換デバイス。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極が、p型電極として機能する一方の電極とn型電極として機能する他方の電極とが光電変換デバイスの一方の面側に形成することが可能であるため、光の照射する面側に電極を設ける必要がない。この光電変換デバイス用電極は、フレキシブル性のない基板上でもフレキシブル性のある基板上にも作製することができる。この電極上に塗布によって有機半導体を設けることができるため、作製工程が複雑とならず、また、安価に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る光電変換デバイスの断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る光電変換デバイスの断面図である。
図3図2に示す光電変換デバイスにおける電極構造を示す平面図である。
図4図3において符号Aの領域の拡大図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る光電変換デバイスの断面図である。
図6図5に示す光電変換デバイスにおける電極構造を示す平面図である。
図7図6に示す符号Bの領域の拡大図である。
図8】第3実施形態に係る光電変換デバイスにおける電極構造の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1:光電変換デバイス
2:光電変換デバイス用電極
3,4:電極
5:光電変換層
6:p層の有機半導体
7:n層の有機半導体
8:保護層
9:光
10:光電変換デバイス
11:基材
12:光電変換デバイス用電極
13:一方の電極
14:他方の電極
13a,14a:電極指
13b,14b:接続用電極
13c:引き回し電極
13d,14d:外部配線との接続端子
15:p層の有機半導体
16:n層の有機半導体
17:保護層
18:光電変換層
19:光
20:光電変換デバイス
21:基材
21a:基材の貫通穴
22:光電変換デバイス用電極
23:一方の電極
23a:電極本体部(ドット状電極)
23b:充填部(ビア導体部)
23c:配線電極部
23d:外部接続部
24:他方の電極
24d:外部配線との接続部(外部接続部)
25:p層の有機半導体
26:n層の有機半導体
27:保護層
28:導電材
29:隙間
30:光電変換層
31:光
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。ここでは、特に光電変換デバイスが、光を電気エネルギーに変換するものとして太陽電池を想定して説明するが、電気エネルギーを光エネルギーに変換するものであっても同様に適用することができる。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電変換デバイス1の断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る光電変換デバイス1は、横並びに配置された電極3,4の対と、電極3,4の対の上を覆う光電変換層5と、を備えている。
【0023】
一方の電極3と他方の電極4とは互いに所定の距離をあけて同一面上、例えば基材上に横並びに設けられる。一方の電極3の上には、正孔輸送材料でなるp層の有機半導体6が設けられる。他方の電極4上には、電子輸送材料でなるn層の有機半導体7が設けられる。p層の有機半導体6及びn層の有機半導体7は互いに横に隣接して配置されてpn接合を形成しており、pn接合面を含んでp層の有機半導体6及びn層の有機半導体7の表面全体を被覆するように保護層8が設けられる。
【0024】
p層の有機半導体6は、正孔輸送材料によって形成される。正孔輸送材料としては、化学式(1)で示されるトリフェニルアミン(TAPC)、化学式(2)で示されるトリフェニルアミンの二量体であるTPDその他の芳香族アミンのほか、化学式(3)で示されるα−NPD、化学式(4)で示される(DTP)DPPD、化学式(5)で示されるm−MTDATA、化学式(6)で示されるHTM1、化学式(7)で示される2−TNATA、化学式(8)で示されるTPTE1、化学式(9)で示されるTCTA、化学式(10)で示されるNTPA、化学式(11)で示されるスピロ−TAD、化学式(12)で示されるTFLELなどが用いられる。
【0025】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】
【0026】
n層の有機半導体7は電子輸送材料によって形成される。電子輸送材料には、化学式(13)で示されるAlq、化学式(14)で示されるBCP、化学式(15)で示されるオキサジアゾール誘導体、化学式(16)で示されるオキサジアゾール二量体、化学式(17)で示されるスターバーストオキサジアゾール、化学式(18)で示されるトリアゾール誘導体、化学式(19)で示されるフェニルキノキサリン誘導体、化学式(20)で示されるシロール誘導体などが挙げられる。
【0027】
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】
【0028】
保護層8については、太陽光などの光9を透過する材料であればその種類は問わず、例えば樹脂等によって形成される。
【0029】
図1に示す光電変換デバイス1の製造方法について概略説明する。まず、電極3,4の対を同一面上に形成する。ここで同一面とは、仮想面又は基板面の何れであってもよいが、電極3,4の対を基板面に形成する場合は、それが平面基板であっても湾曲可能なフレキシブル基板であってもよい。電極の形成には蒸着、スパッタリング又はメッキなどの適宜の方法が用いられる。必要に応じてフォトリソグラフィー技術を用いてもよい。一方の電極3、他方の電極4は同一の工程により形成される。
【0030】
その後、p層の有機半導体6となる正孔輸送材料を所定の箇所、例えば一方の電極3に塗布する。塗布には、例えばインクジェットプリンタによる印刷方法を適用可能である。
【0031】
次に、n層の有機半導体7となる電子輸送材料をp層とp層との間、例えば他方の電極4に塗布する。塗布にはp層の有機半導体6の場合と同様、インクジェットプリンタによる印刷技術を用いることができる。
【0032】
これにより、p層の有機半導体6とn層の有機半導体7とによってpn接合が形成される。なお、n層の有機半導体7から塗布し、その後p層の有機半導体6を塗布してもよい。
【0033】
最後に、保護層8を塗装などによって形成することで、光電変換デバイス1が作製される。なお、図1に示す光電変換デバイス1が作製される手法であれば上述の方法に限定されない。
【0034】
本実施形態に係る光電変換デバイス1によれば、光電変換デバイス用電極2が、p型電極として機能する一方の電極3と、n型電極として機能する他方の電極4とが横並びに形成されて交互配列平面電極構造を構成している。そのため、有機半導体の上に透明電極を設ける必要がない。光電変換デバイス1は、ガラス基板などのフレキシブル性のない基板上にも又はフレキシブル性のある基板上にも作製することができる。電極上に塗布によって有機半導体を設けることができるため、作製工程が複雑とならず、また、安価に作製することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明の第2実施形態に係る光電変換デバイスの断面図である。図2に示すように、本発明の第2実施形態に係る光電変換デバイス10は、絶縁性の基材11と、基材11の面上に形成された光電変換デバイス用電極12として一方の電極13及び他方の電極14と、一方の電極13上に設けられて正孔輸送材料でなるp層の有機半導体15と、他方の電極14上に設けられ電子輸送材料でなるn層の有機半導体16と、p層の有機半導体15及びn層の有機半導体16を被覆するように設けられる保護層17とで構成される。p層の有機半導体15とn層の有機半導体16とはpn接合を形成している。また、p層の有機半導体15とn層の有機半導体16により光電変換層18が形成される。
【0036】
このように、一方の電極13と他方の電極14とが基材11の面上に並んで光電変換デバイス用電極12として形成され、p層の有機半導体15とn層の有機半導体16とが光電変換デバイス用電極12の上に並べて形成される。よって、光19が入射する面に、特許文献2のように電極を設ける必要がなく、光照射側に透明電極を設けないためレアメタルを材料として使用しなくて済む。光電変換デバイス用電極12はCuやAlなどにより形成することができる。
【0037】
基材11は、ガラス基板、樹脂基板、プリント基板等、各種のものが適用可能である。基材11として樹脂基板等を用いた場合には、光電変換デバイスの取付面が平面でなくても湾曲した曲面であっても構わない。
【0038】
一方の電極13及び他方の電極14について説明する。図3は、図2に示す光電変換デバイスにおける電極構造を示す平面図であり、図4図3においてAの領域の拡大図である。図3に示すように、一方の電極13及び他方の電極14は櫛歯電極として構成されている。櫛歯電極は、適宜の間隔で並行して櫛歯状に配置された複数本の電極指13a,14aが、一端で接続用電極13b,14bによって電気的に接続された構造を有する。一方の接続用電極13bと他方の接続用電極14bとが互いに対向配置され、それらの電極指13a,14aが間隔内に配置されることで、一方の電極の電極指13aと他方の電極の電極指14aとが交互に並んでいる。
【0039】
つまり、一方の電極13及び他方の電極14によりインターデジタル電極が形成されている。インターデジタル電極は互いに間挿し合う櫛歯電極で構成されており、各櫛歯電極の電極指13aと電極指14aとが交互に並んでいる。
【0040】
一方の電極13及び他方の電極14は、それぞれ、電極指13a,14aと、その一端を接続する接続用電極13b,14bと、その接続用電極13b,14bの一端に接続され外部配線との接続端子13d,14dまで延びる引き回し電極13c,14cとを有する。
【0041】
図3に示す場合にあっては、各電極指13a,14aが左右方向に延びて形成されており、その延設方向にほぼ直交する方向に電極指13aと電極指14aとが交互に所定の間隔をあけて同数本並んでいる。各電極指13aの左一端が接続用電極14bに接続され、引き回し電極13cがその接続用電極14bの下端から前述の延設方向に沿って外部配線との接続端子13dまで延びている。一方、各電極指14aの右一端が接続用電極14bに接続され、接続用電極14bの下端に外部配線との接続端子14dが形成されている。つまり、外部配線との接続端子の位置によっては引き回し電極が不要となる場合もある。
【0042】
一方の電極13のうち少なくとも電極指13a上には、p層の有機半導体15が形成され、他方の電極14のうち少なくとも電極指14a上には、n層の有機半導体16が形成される。よって、一方の電極13のうち電極指13aはp型電極として機能し、他方の電極14のうち電極指14aはn型電極として機能する。このように有機半導体15,16が形成されることにより、光電変換層18が構成される。
【0043】
p層の有機半導体15は、第1実施形態で例示した各種の正孔輸送材料によって形成される。n層の有機半導体16は、第1実施形態で例示した各種の電子輸送材料によって形成される。保護層17については、太陽光などの照射光を透過する材料であればその種類は問わず、例えば樹脂等によって形成される。
【0044】
図2に示す光電変換デバイス10の製造方法について概略説明する。まず、基材11を用意し、この基材11上に所定間隔をおいて一方の電極13及び他方の電極14を形成する。電極形成には蒸着、スパッタリング又はメッキなどの適宜の方法が用いられる。必要に応じてフォトリソグラフィー技術を用いてもよい。一方の電極13、他方の電極14は同一の工程により形成される。
【0045】
その後、p層の有機半導体15となる正孔輸送材料を所定の箇所、例えば一方の電極13に、例えばインクジェットプリンタによる印刷方法により塗布する。
【0046】
次に、n層の有機半導体16となる電子輸送材料をp層とp層との間、例えば他方の電極14に塗布する。塗布には、p層の有機半導体15の場合と同様、インクジェットプリンタによる印刷技術を用いることができる。
【0047】
こうして、p層の有機半導体15とn層の有機半導体16とによってpn接合が形成される。なお、n層の有機半導体16から塗布しその後p層の有機半導体15を塗布してもよい。
【0048】
最後に、保護層17を塗装などによって形成することにより、光電変換デバイス10が作製される。なお、図2に示す光電変換デバイス10が作製される手法であれば上述の方法に限定されない。
【0049】
第2実施形態では、従来のように、一方の電極上にp層の有機半導体を積層し、その上にn層の有機半導体を積層してpn接合を形成すると共に、n層の有機半導体上に他方の電極として透明電極を順次積層して光電変換デバイスを構成していない。つまり、p型電極として機能する一方の電極13と、n型電極として機能する他方の電極14とが、同一面上に交互に配列されている。そのため、有機半導体上に透明電極を設ける必要がない。光電変換デバイス10は、ガラス基板などのフレキシブル性のない基板上にも或いはフレキシブル性のある基板上にも作製できる。電極上に塗布によって有機半導体を設けることができるため、作製工程が複雑とならず、また、安価に作製することができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態に係る光電変換デバイスの断面図である。第3実施形態に係る光電変換デバイス20は、パターンに従って複数の貫通穴21aを有する絶縁性の基材21と、基材21の貫通穴21aを導電材28で充填し基材21の表面に露出して形成された一方の電極23と、基材21の表面で一方の電極23と接触しないよう例えば隙間29を有するように設けられた他方の電極24と、一方の電極23上に設けられたp層の有機半導体25と、他方の電極24上に設けられたn層の有機半導体26と、p層の有機半導体25及びn層の有機半導体26を被覆するように設けられる保護層27と、で構成される。
【0051】
一方の電極23及び他方の電極24は、基材21の上面側で当該面の広がる方向へ交互に並べられるように形成され、光電変換デバイス用電極22を構成する。その光電変換デバイス用電極22上に、p層の有機半導体25とn層の有機半導体26とが交互に電極23,24上に重ねて並べられ、光電変換層30が形成される。よって、光31が入射する面側には、特許文献2のように電極を設けずに、保護層26を配置することが可能となる。これにより、電極が光透過性を有するようにレアメタルを材料として使用しなくて済む。一方の電極23及び他方の電極24はCuやAlなどを使用することができる。
【0052】
第3の実施形態では、一方の電極23の光電変換層30との界面と他方の電極24の光電変換層30との界面とがほぼ同一面に配置されるのみならず、配線の取り出し部位を基材21の表面と裏面に配置できるため、取り出し配線の構造が複雑化しない。また、一方の電極23の外部接続部23dが基材21の裏面に設けられ、他方の電極24の外部接続部24dが基材21の表面に設けられ、しかも、各外部接続部23d,24dが基材21を挟んで設けられる。よって、外部接続部23d,24dに一つの外部接続端子を接続することもできる。なお、この外部接続端子は、2つの導電パスを形成している。
【0053】
基材21は、ガラス基板などのセラミック基板、樹脂基板、プリント基板等、各種のものが適用可能である。基材21として樹脂基板等を用いた場合には、光電変換デバイス20の取付面が平面でなくても湾曲した曲面であっても構わない。
【0054】
一方の電極23について説明する。図5に示すように、一方の電極23については、基材21の貫通穴21aに導電材28が充填されてその一端が少なくとも基材21の表面に露出することで、その露出した部分が電極本体部23aとなる。導電材28、特に充填部23bは、ビア導体部と呼んでもよい。
【0055】
図6は、図5に示す光電変換デバイスにおける電極構造を示す平面図であり、図7図6においてBの領域の拡大図である。基材21の表面にドット状の電極本体部23aが、図6に示すように、行方向に間隔をおいて並んでおり、かつそれらが列方向にも間隔をおいて並んでいる。図5及び図6に示す形態にあっては、電極本体部23aが各行毎に間隔をあけて形成されており、かつ奇数行の電極本体部23aと偶数行の電極本体部23aとは行方向にずれて互い違いに設けられている。つまり列方向に整列していない。各電極本体部23aは行方向と列方向とに沿って整列し、それぞれ間隔をあけてマトリックス状に配置されていてもよい。
【0056】
各電極本体部23aは図5に示すように、その先端が基材21の表面から張り出して突出していることが好ましい。この突出した先端には塗布によって有機半導体のドットが形成される。電極本体部23aの先端が基材21の表面から張り出していることで、n層の有機導電体26と電極本体部23aとの接続が確実になる。
【0057】
一方の電極23は、基材21の表面から張り出した電極本体部23aから、基材21の貫通穴21aに導電材28が充填されてなる充填部28bにより基材21の裏面まで延びている。充填部23b同士は、基材21の裏面に形成された配線電極部23cによって電気的につながれている。配線電極部23cの端部が外部接続部23dとなる。ここで、配線電極部23cを所定の平面形状とすることにより、充填部23b同士をその平面形状に応じて電気的に接続することができる。
【0058】
他方の電極24について説明する。基材21の表面には、一方の電極23の各電極本体部23aがドット状に並んで設けられているのに対応して、他方の電極24が、各電極本体部23aに接触しないよう、さらに各電極本体部23aを囲むように基材21の表面に導電層として形成されている。つまり、他方の電極24は、基材21の表面に一方の電極23の各電極本体部23aが設けられる基材21の面と同じ面に各電極本体部23aを囲むように形成されている。各電極本体23aに隙間29を設けて配置される他の電極24の部分同士は、互いに接続されている。さらに、他方の電極24の周縁部は、外部配線との接続部24dとして機能する。
【0059】
本実施形態にあっては、このような一方の電極23及び他方の電極24の上に、有機半導体25,26がそれぞれ設けられている。図5に示す形態にあっては、一方の電極23の電極本体部23a上にはp層の有機半導体25が形成され、他方の電極24の上にはn層の有機半導体26が形成される。よって、一方の電極23の電極本体部23aがp型電極として機能し、他方の電極24のうちn型の有機半導体26で覆われている部分はn型電極として機能する。
【0060】
図5に示す形態とは逆に、図示を省略するが、一方の電極23の電極本体部23a上にはn層の有機半導体が形成され、他方の電極24の上にp層の有機半導体が形成されてもよい。この形態では、一方の電極23の電極本体部23aがn型電極として機能し、他方の電極24のうちp型の有機半導体で覆われている部分はp型電極として機能する。
【0061】
p層の有機半導体25は、第1の実施形態で例示した各種の正孔輸送材料によって形成される。n層の有機半導体26は、第1実施形態で例示した各種の電子輸送材料によって形成される。p層の有機半導体26とn層の有機半導体25とで光電変換層30が形成される。保護層27については、太陽光などの光31を透過する材料であればその種類は問わず、例えば樹脂等によって形成し得る。
【0062】
図5に示す光電変換デバイス20の製造方法について概略説明する。まず、基材に所定のパターンで複数の貫通穴21aを開ける。
【0063】
次に、貫通穴21aを開けた基材を無電解メッキで基材の全表面をメッキした後に、一方の電極及び他方の電極を形成しない部分の金属をエッチング等により取り除き、一方の電極及び他方の電極の元となる種電極を形成する。
【0064】
そして、必要に応じてマスクをかぶせて電解メッキ処理を行い、貫通穴21aに導電材27を充填して一方の電極23及び他方の電極24を形成する。なお、メッキ処理を用いず、印刷法により一方の電極及び他方の電極を形成してもよい。
【0065】
その後、p層の有機半導体25となる正孔輸送材料を所定の箇所、例えば一方の電極23に、例えばインクジェットプリンタによる印刷方法により塗布する。
【0066】
次に、n層の有機半導体26となる電子輸送材料をp層とp層との間、例えば他方の電極24に塗布する。塗布にはp層の有機半導体25の場合と同様、インクジェットプリンタによる印刷技術を用いてもよい。
【0067】
これにより、p層の有機半導体25とn層の有機半導体26とによってpn接合が形成される。なお、n層の有機半導体26から塗布しその後p層の有機半導体25を塗布してもよい。
【0068】
最後に、保護層27を塗装などによって形成することで、光電変換デバイス20が作製される。なお、図5に示す光電変換デバイス1が作製される手法であれば上述の方法に限定されない。
【0069】
本発明の第3実施形態はデバイス性能や設計等により適宜変更しても構わない。例えば、一方の電極23と他方の電極24の平面視によるパターンは図7に示すものに限らず、適宜変更することができる。図7では、一方の電極23の電極本体部23aは平面視で矩形であるが、三角形、多角形、円形、楕円、その他の幾何学模様であってもよい。
【0070】
図8は、光電変換デバイス用電極の変形例を示す平面図である。基材21で貫通穴21aを平面視で菱形として、一方の電極23の電極本体部23aを菱形に形成し、他方の電極を電極本体部23aと相似した菱形をマトリックス状に配置したパターンとして形成してもよい。この場合、上記構成例と同様に、一方の電極23と他方の電極24とが離間するように構成することは勿論である。このように、各電極の面積がp型電極とn型電極とで等しく一様な幾何学パターンとしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8