(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する二枚の基板と、これらの基板間に挟持されるとともに当該基板に略平行な方向に配向された液晶からなる液晶層と、前記基板に略平行な横電界を発生する直線状電極とを有し、前記横電界によって前記液晶を前記基板に略平行な面内で回転させることにより、表示を制御する横電界方式の液晶表示装置であって、
前記表示を構成する画素が、領域I及び領域IIと、これらの領域I及び領域IIの境界領域とに分かれ、
前記領域Iにおける前記液晶の初期配向方向と前記領域IIにおける前記液晶の初期配向方向とが互いに直交し、前記領域Iにおける前記直線状電極の延在方向と前記領域IIにおける前記直線状電極の延在方向とが互いに直交し、前記領域Iの前記直線状電極の延在方向を延長すると前記領域IIの前記直線状電極に突き当たり、
前記境界領域における前記液晶の初期配向方向は、前記領域Iの前記初期配向方向から同一回転方向に鋭角で回転した方向であり、
前記同一回転方向は、前記領域Iにおける前記横電界による前記液晶の回転方向に対して反対となる方向である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一又は類似の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0013】
まず、電圧−透過率特性のシフトを抑制する関連技術1(未公開)を、
図19に示す。この関連技術1は、FFSモードの横電界方式の液晶表示装置の画素を二分割して領域Iとしての領域39a、領域IIとしての領域39bとし、領域39aの液晶52aの初期配向方向53aと領域39bの液晶52bの初期配向方向53bとを直交させ、横電界42aと横電界42bとが直交するようにストライプ状電極54aの延在方向とストライプ状電極54bの延在方向とを直交させ、ストライプ状電極54aと初期配向方向53aとのなす角とストライプ状電極54bと初期配向方向53bとのなす角を等しくするものである。
図19には、初期配向方向53bの斜め視野40、初期配向方向53aに直交する方向の斜め視野40、初期配向方向53aの斜め視野41、初期配向方向53bに直交する斜め視野41、入射側偏光板の吸収軸43、出射側偏光板の吸収軸44などが開示されている。このようにすることで、横電界42a,42bを用いて液晶52a,52bを回転させて透過率を変化させる際に、二つの領域39a,39bの液晶52a,52bの互いの向きの直交を保ったままで、液晶52a,52bを回転させることができる。
【0014】
図20Aに示すように、領域39bでは初期配向方向53bの斜め視野40から見込むと電圧−透過率特性は低電圧側にシフトし、逆に、初期配向方向53bに直交する方向の斜め視野41から見込むと電圧−透過率特性は高電圧側にシフトする。領域39aでも同様である。これに対して、
図20Bに示すように、二つの領域39a,39bを合わせることにより、両者の視野角特性が平均化され、初期配向方向53a,53b及びこれに直交する方向から見ても、正面の特性とほぼ同等な特性に近づけることができる。
【0015】
図21に、
図19に示す領域I及び領域IIの境界領域における配向を示す。領域Iとしての領域39aの初期配向方向53aと、領域IIとしての領域39bの初期配向方向53bとは、直交している。そのため、これらの境界領域39cでは、初期配向方向53aと初期配向方向53bとを連続的につなぐような液晶方位の変形が生じる。このような連続的な液晶方位の変形として、
図21に示す領域39aの初期配向方向53aを基準として、反時計回りの方位に回りながら連続的に接続する変形391と、時計回りの方位に回りながら連続的に接続する変形392とが挙げられる。これらの変形391,392は、同等の液晶の変形エネルギーを生じさせるため、同等の確率で生じる可能性がある。
【0016】
通常の構造で、領域I及び領域IIを一画素内に形成した場合には、
図21の時計回りの変形392を生じている画素と、反時計回りの変形391を生じている画素とが存在してしまう。これらの変形391,392は、境界領域39cの通常遮光されている領域で生じているため、直接的な表示としては見えない。しかし、液晶表示装置の表示面を指で押した場合などに生じるドメイン異常等は、境界領域39cの配向が異なると、異常ドメインの成長の仕方が異なるため、画素によって表示異常が残りやすくなる。
【0017】
また、液晶に電界を印加した場合の、境界領域と領域Iとの間の液晶の回転の仕方、及び、境界領域と領域IIとの間の液晶の回転の仕方は、境界領域の液晶の回転の影響を受ける。そのため、画素ごとに境界領域の回転方向が異なると、透過率が画素ごとに微妙に異なり、ザラツキ等の表示異常となることがある。
【0018】
更に、一画素内の境界領域において、異物や配向異常等により配向の連続性が失われた場合、境界領域の液晶の回転方向が一定にならない。この場合、当該画素の表示は非常に不安定となり、信頼性上の不具合にもつながる結果となる。
【0019】
上述のように、関連技術1には、境界領域の配向が二種類存在することにより、表示が不安定になるという課題があった。
【0020】
そこで、下記実施形態の目的は、直交配向を有する横電界方式の液晶表示装置において、境界領域の配向を安定化させ、更に望ましい回転方向を与えることにより、表示の均一性の向上と、表示面を指で押した場合などの安定性等の向上とを図ることにある。これにより、直交配向を有する横電界方式の液晶表示装置において、黒表示時に斜め視野から見込んだ場合の透過率を抑制し、どの視野角から見込んだ場合でも、良好な黒表示が得られる横電界方式の液晶表示装置を与える。
【0021】
[実施形態1]
本発明の実施形態1について、
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5を用いて説明する。すなわち、ここでの説明で用いる符号は、
図1乃至
図5のいずれかに開示されている。
図1は、一画素の平面図である。
図2は、
図1のA−A’の断面図を示す。
図3は、画素内の表示領域における初期配向方向の分割を示したものである。
図4は、配向分割の境界部の配向を拡大して示したものである。
図5Aは
図4のB−B’断面における液晶の配向を示し、
図5Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0022】
本実施形態1の液晶表示装置は、互いに対向する二枚の基板としてのTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30と、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の間に挟持されるとともにTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30に略平行な方向に配向された液晶12からなる液晶層12aと、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30に略平行な横電界を発生する直線状電極としての画素電極5とを有し、その横電界によって液晶12をTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30に略平行な面内で回転させることにより、表示を制御する。
【0023】
その表示を構成する画素(
図1乃至
図5)は、領域Iとしての領域24及び領域IIとしての領域25と、領域24及び領域25の境界領域32とに分かれている。領域24における液晶12の初期配向方向29と領域25における液晶12の初期配向方向31とは、互いに直交する。領域24における画素電極5の延在方向と領域25における画素電極5の延在方向とも、互いに直交する。領域24の画素電極5の延在方向を延長すると、領域25の画素電極に突き当たる。境界領域32における液晶12の初期配向方向33は、領域24の初期配向方向29から同一回転方向に鋭角で回転した方向である。
【0024】
以下、本実施形態1を、作成順を追って、詳細に説明する。
【0025】
まず、第1のガラス基板からなる透明絶縁性の基板20上に、第1の透明導電膜としてITO(indium tin oxide)を50[nm]成膜し、このITOに平面状の共通電極1のパタンを形成する。更にこの上に、第1の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムに走査線3及び共通信号配線2のパタンを形成する。
【0026】
続いて、ゲート絶縁膜13として窒化シリコン(SiNx)を400[nm]成膜し、薄膜半導体層6として水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を200[nm]及びn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を50[nm]積層成膜し、画素のスイッチング素子となるTFT(thin film transistor)部分のみに薄膜半導体層6を残すパターニングをする。更に、第2の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムにデータ線4、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7d、第2の金属層からなる画素電極5の一部のパタンを形成する。
【0027】
続いて、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7dをマスクとして、薄膜半導体層6のn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を除去する。続いて、保護絶縁膜14として窒化シリコン(SiNx)を150[nm]成膜し、その窒化シリコンの一部に画素電極5を接続するためのスルーホール8を形成する。
【0028】
更に、この上に第2の透明導電膜としてITOを40[nm]成膜し、そのITOに画素電極5のパタンを形成する。画素電極5は、ストライプ状のパタンを両端部9で接続した形状とする。ストライプ状の画素電極5の幅は3[μm]、ストライプ状の画素電極5の間のスリットの幅は6[μm]とする。画素の上半分の領域IIとしての領域25では、水平方向(走査線3の延在方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ状の画素電極5を延在させ、画素の下半分の領域Iとしての領域24では、これと直交させる方向にストライプ状の画素電極5を延在させてある。以上の方法により、TFTアレイ基板28を作製する。
【0029】
ここで、領域I、IIの呼び方として、一方の領域の直線状に形成したストライプ状の画素電極5の延長方向が、他方の領域の直線状に形成したストライプ状の画素電極5に突き当たる場合、一方の領域を領域Iすなわち領域24、他方の領域を領域IIすなわち領域25としている。
【0030】
更に、第2のガラス基板からなる透明絶縁性の基板21上に、樹脂ブラックを用いてブラックマトリクス17を形成し、この上にRGB(Red Green Blue)の色層18を所定のパタンに形成し、その上にオーバーコート層19を形成する。さらに、このオーバーコート層19の上に、重ね合わせ時に、走査線3に対向する位置のブラックマトリクス17上に柱状スペーサ(図示せず)を形成する。
【0031】
上述のように作製したTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方に、光照射により配向可能な配向膜15,16を形成し、
図4に示す領域24,25を形成するように光配向処理を行う。
図4の上半分において水平方向(
図1に示す走査線3の延在方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ状の画素電極5を延在させた領域25では、水平方向に初期配向方向31を設定する。このとき、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30との両方において、プレティルト角を0°とする。更に
図4の下半分において縦方向(
図1に示す走査線3の延在方向に直交する方向)から8°反時計回りに回転させた方向にストライプ状の画素電極5を延在させた領域24では、縦方向に初期配向方向29を設定する。このとき、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30との両方において、プレティルト角を0°とする。
【0032】
図5A及び
図5Bに示すように、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向する際に、それぞれの配向膜15,16の配向処理方向を決定する。TFTアレイ基板28では、領域24,25の配向膜15を、それぞれの配向処理方向が互いに直交する配向膜15a,15bとする。カラーフィルタ基板30では、領域24,25の配向膜16を、それぞれの配向処理方向が互いに直交する配向膜16a,16bとする。そして、TFTアレイ基板28では境界領域32の配向膜15を領域24の配向膜15aと同じにし、カラーフィルタ基板30では境界領域32の配向膜16を領域25の配向膜16bと同じにする。すなわち、境界領域32の配向膜15a,16bは互いに直交する配向処理方向となる。換言すると、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向方向を広げるようにする。境界領域32において、配向膜15aおよび16bを両基板の配向膜の状態とする領域の幅は2〜5[μm]とした。
【0033】
このように、本実施形態1では、境界領域32において、液晶層12aとTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30との間の二つの界面(配向膜15a,16b)における配向処理方向が、一方の界面(配向膜15a)と他方の界面(配向膜16b)とで互いに直交しており、一方の界面(配向膜15a)の配向処理方向は、領域24の配向処理方向と一致し、他方の界面(配向膜16b)の配向処理方向は、領域25の配向処理方向と一致している。
【0034】
次に、TFTアレイ基板28とカラーフィルタ基板30とにシール材を塗布してこれらを貼りあわせ、この中に正の誘電率異方性を有する液晶12を注入して封止する。ここで、液晶12の物性値はΔε=5.5、Δn=0.100とし、液晶層12aの厚さdは4.0[μm]となるように、柱状スペーサの高さを制御する。このとき、液晶層12aのリターデーションは、Δnとdの積で与えられ、400[nm]とする。液晶材には、右回りのカイラル材10を添加しておく。液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0035】
更に、基板20,21の外側に、偏光軸が直交するように、偏光板22,23を貼付する。ここで、TFTアレイ基板28側の偏光板22の吸収軸26の向きは、領域24の初期配向方向29と一致させる。カラーフィルタ基板30側の偏光板23の吸収軸27の向きは、領域25の初期配向方向31と一致させる。
【0036】
上述のように作製した液晶表示パネルに、バックライトと駆動回路を実装することにより、実施形態1のアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成する。
図2に、バックライトの入射方向60を示す。
【0037】
上述のように、液晶材中に右回りのカイラル材10を含有させ、配向処理方向が互いに90°異なる配向膜15a,16bによって境界領域32の液晶層12aを挟むことにより、
図5Bに示すように、境界領域32の液晶12を右回りにツイストさせることができる。そのため、境界領域32の初期配向方向33を一意に決めることができる。上述の場合、境界領域32でツイスト配向している液晶12は、いずれの箇所でも、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転した方向をとる。この結果、領域24と領域25との境界領域32における初期配向方向33が安定化することにより、その境界領域32において時計回りと反時計回りの配向が同時に発生して配向が不安定になることを防止でき、均一な表示が得られる。
【0038】
上記のようにカイラル材10を含有させる際に、液晶材のカイラルピッチとしては、液晶層12aのセルギャップの4倍以上かつ200[μm]以下であることが望ましい。液晶層12aの厚さに対して、カイラルピッチが短すぎると、TFTアレイ基板28側とカラーフィルタ基板30側とで同じ方向に配向処理してある領域24,25で、液晶ダイレクタの方位が180°ツイストしてしまう不具合が生じやすい。このような不具合は、カイラルピッチが液晶層12aの2倍以下のところで顕著に生じるので、カイラルピッチを液晶層12aの4倍以上とすることで安定に抑制することができる。
【0039】
一方、カイラルピッチが長すぎると、カイラル材10によって、境界領域32を一方に回すエネルギーが不足するため、境界領域32の初期配向方向33を一方向に固定しにくくなる。カイラルピッチとしては、200[μm]以下であることが望ましい。
【0040】
上述の実施形態1では、右回りのカイラル材10を添加し、境界領域32を挟む配向膜15a,16bの配向処理方向を互いに90°異ならせることにより、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転させた方向で、境界領域32の初期配向方向33を安定化させている。ここで、
図5A及び
図5Bに示す構成において、右回りのカイラル材10の代わりに左回りのカイラル材を添加することにより、領域24の初期配向方向29から時計回りに鋭角で回転させた方向で、境界領域32の初期配向方向33を安定化させることもできる。
【0041】
液晶に横電界を印加した場合の配向を、実施形態1のように領域Iの配向方向から反時計回りの方位で境界領域の配向を安定化させた場合を
図7に示し、カイラル材のカイラリティを反対にして、領域Iの配向方向から時計回りの方位で境界領域の配向を安定化させた場合を
図8に示す。
【0042】
本実施形態1では、領域24,25の初期配向方向29,31からそれぞれ反時計回りに8°回転した方向に、画素電極5の延在方向を採っている。このため、画素電極5に直交する方向の横電界45,46を印加した場合には、
図7に示すように、領域24,25ではそれぞれ時計回りに液晶12が回転する。
【0043】
一方、境界領域32と領域25との境界では、領域25における画素電極5の長手方向に直交する方位の電界51が主となり、境界領域32と領域24との境界では、領域24における画素電極5の長手方向の電界50が主となる。このため、
図7に示すように、境界領域32の初期配向方向33が領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転した方向に分布する場合には、境界領域32の液晶12は電界印加により時計回りに回転することになる。
【0044】
これに対し、
図8に示すように、境界領域32の初期配向方向33が領域24の初期配向方向29から時計回りに鋭角で回転した方向に分布する場合には、境界領域32の液晶12は電界印加により反時計回りに回転することになる。上述のように、領域24,25では電界印加により時計回りに液晶12が回転するので、
図8に示すように、境界領域32において電界印加により液晶12が反時計回りに回転すると、この部分だけが逆方向に回転することになり、配向が不安定になる。このため、液晶表示装置の表示面を指で押した場合などに生じるドメイン異常が残りやすくなる等の問題が生じる。
【0045】
したがって、
図7に示す構成によれば、領域24,25と境界領域32とにおいて液晶12がすべて時計回りに回転することにより、液晶12の配向が安定化するので、表示面を指で押した場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0046】
このように、画素電極5と共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電位差を与えた場合における、領域24,25の液晶12の回転方向と、境界領域32の液晶12の回転方向とを一致させるためには、境界領域32における初期配向方向33を、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転させた方向にすることが望ましい。この回転方向は、領域24,25における横電界45,46による液晶12の回転方向とは反対方向である。
【0047】
また、
図4の上半分の領域25の初期配向方向31と下半分の領域24の初期配向方向29とは直交するように角度を設定してあり、領域24と領域25との面積はほぼ等しくしてあるため、領域24及び領域25の相互の補償が行いやすくなり、電圧―輝度特性の視野角による変動や色つきが少なく、かつ対称性の良い、良好な視野角特性を得ることができる。
【0048】
上述のようにして得られた液晶表示装置では、画素電極5と共通電極1との間に電界を印加すると、領域24及び領域25において、いずれも液晶12は時計回りに回転する。領域24及び領域25では、液晶12の初期配向方向29,31が互いに直交しており、横電界45,46も互いに直交しており、初期配向方向29,31と横電界45,46とのそれぞれのなす角がほぼ等しい。そのため、領域24の液晶12と領域25の液晶12とは、互いに直交した状態のまま回転する。したがって、領域24及び領域25それぞれ単独では問題となる電圧−透過率特性のシフトが、両領域24,25を同じ面積で配置することにより、互いに視野角特性が補償し合うので顕著に抑制される(
図20A及び
図20B参照)。
【0049】
上述の境界領域32の初期配向方向33は、黒表示の際に、偏光板22,23の偏光軸と異なる方向を向いてしまうため、光漏れが生じる。したがって、この部分は遮光することが望ましい。本実施形態1では、第1の金属層からなる共通信号配線2をこの部分に配置することによって遮光する。これにより、精度よく、必要な領域のみを遮光することができるため、開口率を落とすことなく、十分な遮光を行うことができる。
【0050】
また、不透明金属層の電位が共通電極1の電位と等しいため、電気的な擾乱を与えることなく、良好な表示を得ることができる。上述の例では、TFTアレイ基板28側に共通電極1と等電位の不透明金属層を配置することにより、光漏れを抑制したが、不透明金属層は画素電極5の電位と等しくしても同等の効果が得られる。また、領域24と領域25との境界領域32の遮光は、カラーフィルタ基板30側にブラックマトリクス17を設けて行うこともできる。
【0051】
上述の実施形態1において、光照射によって分割配向を行う際に、光照射領域を完全に線で分割することは困難である。したがって、1[μm]程度、領域間の重なりを持って光照射を行うことにより、画素内で光が照射されないために配向しない領域を、作らないようにする。これによって、配向が不完全な箇所が画素内に発生せず、本実施形態1で記載した境界領域32の配向をより完全な配向状態とすることができる。
【0052】
また、上述の実施形態1では、領域24及び領域25の各々で、ストライプ状の画素電極5と、液晶12の初期配向方向29,31とのなす角を8°としたが、これは5〜10°の範囲であれば、ほぼ同等で良好な表示が得られる。また、場合によっては、2°以上20°以下であれば、ほぼ問題ない表示を得ることができる。このように初期配向方向29,31とストライプ状の画素電極5の延在方向とは、画素の形状とサイズに応じて、適宜設計することができる。
【0053】
[実施形態2]
本発明の実施形態2について、
図6A及び
図6Bを用いて説明する。本発明の実施形態2は、境界領域の配向状態以外は、実施形態1と同じ構造である。
図6Aは、領域Iと領域IIの液晶の配向を示す断面図であり、
図6Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0054】
実施形態1では、
図5に示すように、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向膜15aによって領域24の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向膜16bによって領域25の配向方向を広げるようにする。そして、液晶材に右回りのカイラル材10を添加することにより、配向膜15a,16bが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図5Bに示すような方向に固定する。
【0055】
これに対して、本実施形態2では、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域25と同じ配向膜15bによって領域25の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域24と同じ配向膜16aによって領域24の配向領域を広げるようにする。換言すると、境界領域32において、配向処理方向が90°異なる配向膜15b,16aを形成する。
【0056】
そして、液晶材に左回りのカイラル材11を添加することにより、配向膜15b,16aが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図6Bに示すような方向に固定する。つまり、境界領域32の初期配向方向33を、
図6Bに示すように、領域24の初期配向方向29から、反時計回りに回しながら、領域25の初期配向方向31につなげることができる。この場合も液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0057】
これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まることにより、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。また、本実施形態2の場合も
図7に示す場合と同様に、ストライプ状の画素電極5と平面状の共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界により、境界領域32の液晶12は時計回りに回転する。そのため、境界領域32の液晶12の回転方向は領域24,25それぞれの回転方向と一致することにより、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向は安定し、更に表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0058】
[実施形態3]
本発明の実施形態3について、
図9A及び
図9Bを用いて説明する。本発明の実施形態3は、境界領域の配向状態以外は、実施形態1と同じ構造である。
図9Aは、領域Iと領域IIの液晶の配向を示す断面図であり、
図9Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0059】
本実施形態3では、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方、カラーフィルタ基板30の方とも、領域24の初期配向方向29から、反時計回りに一定の鋭角だけ回転した方向に初期配向方向33を設定している。つまり、境界領域32の配向膜15c,16cの配向処理方向を、領域24の配向膜15a,16a及び領域25の配向膜15b,16bの配向処理方向に対して斜めする。
【0060】
このように、本実施形態3では、境界領域32において、液晶層12aとTFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30との間の二つの界面(配向膜15c,16c)における配向処理方向が、領域24の配向処理方向と領域25の配向処理方向との間であり、かつ略同一の方向である。
【0061】
この場合は、液晶材にカイラル材を添加する必要はなく、境界領域32では液晶12が所定の方位に並んでいる。これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まり、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。
【0062】
また、
図7に示す場合と同様に、ストライプ状の画素電極5と平面状の共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界50,51により、境界領域32の液晶12の回転方向は時計回りになる。したがって、境界領域32の液晶12の回転方向は、領域24,25それぞれの液晶12の回転方向と一致する。そのため、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向は安定し、更に表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0063】
更に、本実施形態3では、境界領域32の初期配向方向33がTFTアレイ基板28の側とカラーフィルタ基板30の側とでほぼ同じである。この場合、全体として、境界領域32の初期配向方向33が、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転した方向となるため、他の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
[実施形態4]
本発明の実施形態4について、
図10、
図11A及び
図11Bを用いて説明する。
図10は、配向分割した領域I、領域II及び境界領域の部分の配向を拡大して示したものである。
図11Aは、
図10のA−A’断面における液晶の配向を示し、
図11Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0065】
実施形態1では、領域24,25のストライプ状の画素電極5の延在方向が、それぞれ液晶12の初期配向方向29,31から、反時計回りに8°回転した方向である。これに対し、本実施形態4では、領域24,25のストライプ状の画素電極5の延在方向が、液晶12の初期配向方向29,31から時計回りに8°回転した方向である。
【0066】
これに伴い、領域24,25において、電界を印加した場合に、液晶12は反時計回りに回転する。このため、境界領域32においては、領域24,25からの電界により、境界領域32の液晶12が反時計回りに回転することが望ましい。このためには、
図10に示すように、境界領域32の初期配向方向33を、領域24の初期配向方向29から時計回りに鋭角で回転させた方向にすることが望ましい。
【0067】
これを実現するためには、
図11Aに断面を示すように、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向膜15aによって領域24の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向膜16bによって領域25の配向方向を広げるようにする。換言すると、境界領域32において、配向処理方向が90°異なる配向膜15a,16bを形成する。そして、液晶材に左回りのカイラル材11を添加することにより、配向膜15a,16bが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図11Bに示すような方向に固定する。この場合も液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0068】
これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まり、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。また、ストライプ状の画素電極5と平面状の共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界により、境界領域32の液晶12は反時計回りに回転する。そのため、境界領域32の液晶12の回転方向は、領域24,25それぞれの液晶12の回転方向と一致する。したがって、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向が安定化する。更に、表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0069】
[実施形態5]
本発明の実施形態5について、
図12、
図13A及び
図13Bを用いて説明する。
図12は、配向分割した領域I、領域II及び境界領域の部分の配向を拡大して示したものである。
図13Aは、
図12のA−A’断面における液晶の配向を示し、
図13Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0070】
本実施形態5における実施形態1との違いは、領域が横方向に分割されている点である。この場合でも、領域24,25において、それぞれ液晶12の初期配向方向29,31から反時計回りに8°回転させた方向に、ストライプ状の画素電極5の延在方向を設定する。これにより、電界を印加した場合に、領域24,25の液晶12は時計回りに回転する。このとき、境界領域32の初期配向方向33は、
図12に示すように、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転させた方向にすることが望ましい。
【0071】
これを実現するためには、
図13Aに断面を示すように、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向膜15aによって領域24の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向膜16bによって領域25の配向方向を広げるようにする。換言すると、境界領域32において、配向処理方向が90°異なる配向膜15a,16bを形成する。そして、液晶材に右回りのカイラル材10を添加することにより、配向膜15a,16bが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図13Bに示すような方向に固定する。この場合も液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0072】
これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まり、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。また、ストライプ状の画素電極5と平面状の共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界により、境界領域32の液晶12は反時計回りに回転する。そのため、境界領域32の液晶12の回転方向は、領域24,25それぞれの液晶12の回転方向に一致する。したがって、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向が安定化する。更に、表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0073】
[実施形態6]
本発明の実施形態6について、
図14、
図15A及び
図15Bを用いて説明する。
図14は、配向分割した領域I、領域II及び境界領域の部分の配向を拡大して示したものである。
図15Aは、
図14のA−A’断面における液晶の配向を示し、
図15Bは更にこれをカラーフィルタ基板側から見た場合の配向を示している。
【0074】
本実施形態6における実施形態1との違いは、領域の分割の構造について、領域24が図の上側となっており、領域25が図の下側となっている点である。この場合でも、領域24,25において、それぞれ液晶12の初期配向方向29,31から反時計回りに8°回転させた方向にストライプ状の画素電極5の延在方向を設定する。これにより、電界を印加した場合に、領域24,25の液晶12は時計回りに回転する。このとき、境界領域32の初期配向方向33は、
図14に示すように、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転させた方向にすることが望ましい。
【0075】
これを実現するためには、
図15Aに断面を示すように、TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向膜15aによって領域24の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向膜16bによって領域25の配向方向を広げるようにする。換言すると、境界領域32において、配向処理方向が90°異なる配向膜15a,16bを形成する。そして、液晶材に右回りのカイラル材10を添加することにより、配向膜15a,16bが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図15Bに示すような方向に固定する。この場合も液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0076】
これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まり、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。また、ストライプ状の画素電極5と平面状の共通電極1(
図1及び
図2参照)との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界により、境界領域32の液晶12は、反時計回りに回転する。そのため、境界領域32の液晶12の回転方向は、領域24,25それぞれの液晶12の回転方向に一致する。したがって、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向が安定化する。更に、表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0077】
[実施形態7]
本発明の実施形態7について、
図16、
図17及び
図18を用いて説明する。
図16は、1画素の平面図である。
図17は、
図16のA−A’の断面図を示す。
図18は、画素内の表示領域における初期配向方向の分割を示したものである。本実施形態7を、以下、作成順を追って、詳細に説明する。
【0078】
まず、第1のガラス基板からなる基板20上に、第1の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムに走査線3及び共通信号配線2のパタンを形成する。続いて、ゲート絶縁膜13として窒化シリコン(SiNx)を400[nm]成膜し、薄膜半導体層6として水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を200[nm]及びn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を50[nm]積層成膜し、画素のスイッチング素子としてのTFT部分にのみ薄膜半導体層6が残るパターニングをする。
【0079】
更に、第2の金属層としてクロム(Cr)を250[nm]成膜し、このクロムにデータ線4、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7d、並びに第2の金属層からなる画素電極34の一部のパタンを形成する。続いて、TFTのソース電極7s及びドレイン電極7dをマスクとして、TFT部の薄膜半導体層6におけるn型水素化アモルファスシリコン(n−a−Si:H)を除去する。
【0080】
続いて、保護絶縁膜14として窒化シリコン(SiNx)を600[nm]成膜し、この窒化シリコンに画素電極34を接続するスルーホール38及び共通電極35を接続するスルーホール37を形成する。更に、この上に透明電極としてITOを80[nm]成膜し、このITOに画素電極34のパタン及び共通電極35のパタンを形成する。画素電極34及び共通電極35は、ストライプ状のパタンを端部で接続し、櫛歯を噛み合わせた形状とする。画素電極34及び共通電極35のそれぞれの幅は3.5[μm]、画素電極34と共通電極35との間隔は7[μm]とする。
【0081】
画素電極34及び共通電極35の櫛歯状電極の直線パタンは、画素の上半分の領域Iとしての領域24では、縦方向(走査線3に垂直な方向)に延在し、画素の下半分の領域IIとしての領域25では、横方向(走査線3に平行な方向)に延在し、これらを互いに直交させる。領域Iの直線状電極の延在方向を延長すると、領域IIの直線状電極に突き当たる構成となっている。更に、共通電極35の一部36は、データ線4、走査線3、及び、走査線3と共通信号配線2との間をシールドする。以上の方法により、TFTアレイ基板28を形成する。
【0082】
図2に示す実施形態1では、平面状に形成された共通電極1と、その上にゲート絶縁膜13及び保護絶縁膜14を介して配置されたストライプ状の画素電極5との間に形成されるフリンジ電界により、液晶12を面内で回転させる。これに対し、本実施形態7では、櫛歯状の画素電極34と同じく櫛歯状の共通電極35との間に、横電界を発生させることにより、液晶12を面内で回転させる。
【0083】
本実施形態7では、領域24,25の液晶12の初期配向方向29,31を、櫛歯状の画素電極34及び共通電極35の延在方向に対して、15°時計回りに回転する方向に設定する。
【0084】
本実施形態7のその他の構成は実施形態1と同様であり、入射側偏光板22の吸収軸26は領域24の初期配向方向29に一致させ、出射側偏光板23の吸収軸27はこれに直交させる。また、液晶層12aは、屈折率異方性Δnを0.075とし、厚さdを4[μm]とする。
【0085】
この場合、領域24,25とも、液晶12の初期配向方向29,31から反時計回りに15°回転させた方向に櫛歯状の画素電極34の延在方向を設定する。これにより、電界を印加した場合に、領域24,25の液晶12は時計回りに回転する。この場合、境界領域32の初期配向方向33は、
図18に示すように、領域24の初期配向方向29から反時計回りに鋭角で回転させた方向にすることが望ましい。
【0086】
これを実現する技術は、実施形態1と同様であるので、以下
図5A及び
図5Bに基づき説明する。TFTアレイ基板28及びカラーフィルタ基板30の両方を光配向により配向方向を決定する際に、境界領域32において、TFTアレイ基板28の方は領域24と同じ配向膜15aによって領域24の配向方向を広げるようにし、カラーフィルタ基板30の方は領域25と同じ配向膜16bによって領域25の配向方向を広げるようにする。換言すると、境界領域32において、配向処理方向が90°異なる配向膜15a,16bを形成する。そして、液晶材に右回りのカイラル材10を添加することにより、配向膜15a,16bが対向した境界領域32における初期配向方向33を、
図5Bに示すような方向に固定する。この場合も液晶材のカイラルピッチは80[μm]とする。
【0087】
これにより、境界領域32の初期配向方向33が一意に決まり、液晶12の配向が安定化するので、良好な表示が得られる。また、櫛歯状の画素電極34と同じく櫛歯状の共通電極35との間に電界を印加した場合に、領域24と境界領域32との間及び領域25と境界領域32との間に働く電界により、境界領域32の液晶12は、反時計回りに回転する。そのため、境界領域32の液晶12の回転方向は、領域24,25それぞれの液晶12の回転方向に一致する。したがって、電界を印加して液晶12を回転させた場合でも、領域24、境界領域32、領域25の配向が安定化する。更に、表示面を指押しした場合などでも、ドメイン異常の発生が少なく、良好な表示を得ることができる。
【0088】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0089】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は以下の構成に限定されるものではない。
【0090】
[付記1]互いに対向する二枚の基板と、これらの基板間に挟持されるとともに当該基板に略平行な方向に配向された液晶からなる液晶層と、前記基板に略平行な横電界を発生する直線状電極とを有し、前記横電界によって前記液晶を前記基板に略平行な面内で回転させることにより、表示を制御する横電界方式の液晶表示装置であって、
前記表示を構成する画素が、領域I及び領域IIと、これらの領域I及び領域IIの境界領域とに分かれ、
前記領域Iにおける前記液晶の初期配向方向と前記領域IIにおける前記液晶の初期配向方向とが互いに直交し、前記領域Iにおける前記直線状電極の延在方向と前記領域IIにおける前記直線状電極の延在方向とが互いに直交し、前記領域Iの前記直線状電極の延在方向を延長すると前記領域IIの前記直線状電極に突き当たり、
前記境界領域における前記液晶の初期配向方向は、前記領域Iの前記初期配向方向から同一回転方向に鋭角で回転した方向である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0091】
[付記2]付記1記載の横電界方式の液晶表示装置であって、
前記同一回転方向は、前記領域Iにおける前記横電界による前記液晶の回転方向に対して反対となる方向である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0092】
[付記3]付記1又は2記載の横電界方式の液晶表示装置であって、
前記液晶の材料としてカイラル材を含む、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0093】
[付記4]付記3記載の横電界方式の液晶表示装置であって、
前記カイラル材のカイラルピッチが、前記液晶層の厚みの4倍以上かつ200[μm]以下である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0094】
[付記5]付記3又は4記載の液晶表示装置であって、
前記境界領域において、前記液晶層と前記二枚の基板との間の二つの界面における配向処理方向が、一方の前記界面と他方の前記界面とで互いに直交しており、
一方の前記界面の前記配向処理方向は、前記領域I及び前記領域IIの一方の配向処理方向と一致し、
他方の前記界面の前記配向処理方向は、前記領域I及び前記領域IIの他方の配向処理方向と一致している、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0095】
[付記6]付記1又は2記載の横電界方式の液晶表示装置であって、
前記境界領域において、前記液晶層と前記二枚の基板との間の二つの界面における配向処理方向が、前記領域Iの配向処理方向と前記領域IIの配向処理方向との間であり、かつ略同一の方向である、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。
【0096】
[付記11]二枚の透明絶縁性の基板の間に挟持され、これらの基板に略平行な方位に配向させた液晶からなる液晶層を有し、前記液晶を前記基板に略平行な横電界で変形させることにより、表示を制御する横電界方式の液晶表示装置であって、
前記液晶の初期配向方向が互いに直交した二つの領域を有し、二つの領域の前記横電界の方向も互いに直交し、前記横電界を発生する直線状電極の延在方向の向きと前記液晶の初期配向方向とのなす角が一方の前記領域と他方の前記領域とで等しく、
画素内に前記二つの領域の境界となる領域(境界領域)を有し、前記境界領域の近傍で、一方の前記領域の前記直線状電極の延長方向が、他方の前記領域の前記直線状電極に突き当たる場合に、前記一方の領域を領域Iとし、前記他方の領域を領域IIとするとき、
前記境界領域における前記初期配向方向は、前記領域Iの前記初期配向方向から一方向に鋭角で回転した方向にある、
ことを特徴する横電界方式の液晶表示装置。
【0097】
[付記12]付記11記載の横電界方式の液晶表示装置であって、
前記境界領域の前記初期配向方向は、前記領域Iの前記初期配向方向から、前記領域Iにおける前記横電界による前記液晶の回転方向に対して反対方向に、鋭角で回転した方向にある、
ことを特徴とする横電界方式の液晶表示装置。