【実施例】
【0023】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、砥粒1と液体2とが混合されたスラリ3を供給するスラリ供給部4と、圧搾空気5を噴射する圧搾空気供給部6と、圧搾空気5で加速させたスラリ3を高速で噴射するノズル部8とを有するものである。
【0025】
尚、本実施例は、ノズル部8から噴射するスラリ3を例えばセラミックス材などの被験体20に一定量衝突させて、この被験体20の摩耗体積を測定して該被験体20の摩耗強度を評価する摩耗評価装置に具備せしめられているが、これに限らず、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
【0026】
スラリ供給部4は、
図1に図示したようにスラリ貯留容体21と、このスラリ貯留容体21に一端部が接続され、他端部が後述するノズル支持体12に設けられるスラリ路13に接続する管状のスラリ供給路10とで構成されており、このスラリ供給路10にはスラリ3を圧送するスラリポンプ装置22が設けられている。
【0027】
従って、このスラリポンプ装置22の作動により、スラリ貯留容体21内のスラリ3はスラリ供給路10を通過してスラリ路13に供給されることになる。
【0028】
圧搾空気供給部6は、
図1に図示したように圧搾空気5を作出する圧搾空気ポンプ装置23と、この圧搾空気ポンプ装置23から延設される管状の圧搾空気供給路11とで構成されており、この圧搾空気供給路11は、後述するノズル支持体12に設けられる圧搾空気路14に接続される。
【0029】
従って、この圧搾空気ポンプ装置23の作動により、圧搾空気5は圧搾空気供給路11を通過して圧搾空気路14に供給されることになる。
【0030】
ノズル部8は、ノズル体9と、該ノズル体9を支持しスラリ供給部4及び圧搾空気供給部6が接続されるノズル支持体12とで構成されている。
【0031】
ノズル体9は、
図1〜3に図示したように下端に円形の噴射口部9aを備えた長尺の棒状体であり、上端部(基端部)は後述するノズル支持体12により支持され、下端部(先端部)はケース状の基体24の処理空間内に垂設状態に配設されている。
【0032】
また、ノズル体9には、基端部にスラリ路13に接続するスラリ導入口部9bと、圧搾空気路14に接続する圧搾空気導入口部9cが設けられ、更に、このスラリ導入口部9b及び圧搾空気導入口部9cから導入されたスラリ3及び圧搾空気5を混合する混合室9dと、この混合室9dで作出された加速スラリ3が噴射口部9aまで通過するスラリ路9eとが設けられている。
【0033】
尚、本実施例では、ノズル体9として噴射口部9aから噴射されるスラリ3が断面正方形状のガンであるが、噴射口部9aをスリット状に設けて噴射されるスラリ3が平板状となる所謂巾広ガンとしても良い。
【0034】
ノズル支持体12は、
図1〜3に図示したように基体24の上部に設置されるもので、ノズル体9の基端部を支持するように構成されている。
【0035】
また、ノズル支持体12には、内部に管状のスラリ路13及び圧搾空気路14が設けられ、このスラリ路13及び圧搾空気路14の一端部は、スラリ供給部4及び圧搾空気供給部6が接続され、他端部は、ノズル体9のスラリ導入口部9b及び圧搾空気導入口部9cに接続される。
【0036】
また、スラリ路13及び圧搾空気路14夫々には、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16が設けられている。
【0037】
このスラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16は、
図2に図示したようにシリンダー装置の先端部に閉塞作用部15a,16aを設けて構成されており、この閉塞作用部15a,16aは、ノズル支持体12内のスラリ路13及び圧搾空気路14夫々の所定位置にして可及的にノズル体9(スラリ導入口部9b及び圧搾空気導入口部9c)に可及的に近い位置を開閉するように構成されている。
【0038】
具体的には、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々はノズル体9から約20mmの距離L1,L2の位置に設けられている。尚、このスラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々からノズル体9までの距離L1,L2は、20mm〜100mmまでが有効である。
【0039】
従って、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々を開いた際には、スラリ3と圧搾空気5は直ちにノズル体9に到達して、スラリ3は圧搾空気5に加速されて噴射されることになり、よって、前述した従来例に比し、スラリ3を良好に制御できることになる。
【0040】
また、スラリ路13にしてスラリバルブ15の配設位置(開閉作用位置)には、該スラリバルブ15を閉じ状態とした際、前記スラリ3を下流側に戻すスラリ戻し路17が設けられている。
【0041】
このスラリ戻し路17は、
図2,3に図示したようにスラリ路13から折り返し状態となる管状部を設けて構成されており、このノズル支持体12の開口端にスラリ排出管26を介して後述するスラリ回収部25で回収される。
【0042】
従って、スラリ3はスラリバルブ15でスラリ路13を閉じた状態であっても停滞せず常に循環して流れていることになり、よって、スラリ3の配管内の濃度の安定化が達成される。
【0043】
また、スラリ戻し路17には径小部18(オリフィス)が設けられている。
【0044】
この径小部18は、スラリ路13内でスラリ3に圧力を付与するものであり、よって、前述したようにスラリ戻し路17を設けることでスラリ3を循環させても所定の圧力が保証されることになる。つまり、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16の前までは常に必要な圧力が保証される。
【0045】
ノズル部8から噴射されたスラリ3は、ノズル体9の下方で且つ被験体20の下方に設けられたスラリ回収部25に自由落下し、該スラリ回収部25に一時貯留される。
【0046】
このスラリ回収部25に貯留されたスラリ3は、図示省略の撹拌装置の撹拌により一定濃度(砥粒/液体)にされたり、削りくずなどの不要物を除去する不要物除去装置により不要物が除去されたりする。また、このスラリ回収部25で再利用可能となったスラリ3は、ポンプ装置27aと管体27bとから成る送り手段27を介してスラリ回収部25に隣接せしめられるスラリ貯留容体21へ送られる。
【0047】
本実施例で使用する砥粒1は、直径数μm〜数百μmの樹脂,金属,セラミックス,ガラスなどの微粒子で構成されており、この砥粒1を水2に混合させてスラリ3としている。また、水以外に目的に応じて、例えば、脱脂用としてアルカリなどの水溶液を使用したり、アルコール類などの溶剤を使用したりしても良い。
【0048】
また、本実施例では、スラリ3を構成する砥粒1と液体2との体積比を1/1000〜1/200に設定している。
【0049】
本実施例は上述のように構成したため、スラリ供給部4及び圧搾空気供給部6から供給されるスラリ3及び圧搾空気5は、ノズル支持体12に設けられたスラリ路13及び圧搾空気路14を通過してノズル体9に供給されるが、例えばノズル体9からスラリ3の噴射を開始する際には、スラリ路13及び圧搾空気路14夫々に設けられたスラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々を開くことで、スラリ3及び圧搾空気5はこの開放位置からノズル体9まで行き、スラリ3は圧搾空気5に加速されてノズル体9から噴射される。
【0050】
本実施例は、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々をノズル体9に可及的に近い位置に設けており、この構成から、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々を開いた際には、スラリ3と圧搾空気5は直ちにノズル体9に到達して、スラリ3は圧搾空気5に加速されて噴射されることになり、また、スラリバルブ15及び圧搾空気バルブ16夫々を閉じた際には、スラリ3と圧搾空気5は直ちにノズル体9への供給が停止されることになり、よって、前述した従来例に比し、オーバーシュート及び惰性削りの時間を短縮して異常な削り部分を可及的に減らすことができ、よって、例えばスラリ3を短時間噴射で噴射させて評価した場合の評価精度を向上することができる。
【0051】
具体的には、
図4は、本実施例に係るスラリ噴射装置を用いてスラリ3を短時間断続的に噴射した場合であり、横軸を時間,縦軸を摩耗量としてグラフ化したものである。
【0052】
前述した従来例を用いた場合を図示した
図6と比較すると、オーバーシュート(矢印a部分)と噴射終了時期における惰性削り(矢印b部分)における時間が短縮されている。
【0053】
つまり、従来例に比して、スラリ3を短時間断続的に噴射した場合であっても異常な削り部分が占める割合が少なくなるため、評価精度が低下するようなことがない。
【0054】
よって、本実施例によれば、スラリ3を被験体20に噴射して行う被験体評価における高精度な評価が行えることになる。
【0055】
また、本実施例は、スラリ路13にしてスラリバルブ15の配設位置には、このスラリバルブ15を閉じ状態とした際、スラリ3をスラリ供給部4に戻すスラリ戻し路17が設けられているから、常に安定した濃度のスラリ3が得られることになる。
【0056】
また、本実施例は、スラリ戻し路17には径小部18が設けられているから、スラリ戻し路17によりスラリ3を循環させても所定の圧力が保証されることになる。
【0057】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。