特許第5881103号(P5881103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881103
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】フライヤ装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   A47J37/12 321
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-22416(P2012-22416)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158454(P2013-158454A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591188413
【氏名又は名称】株式会社ハルモニア
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100085327
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 克彦
(72)【発明者】
【氏名】宮原 則夫
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−144335(JP,A)
【文献】 特開2003−310448(JP,A)
【文献】 特開2010−104499(JP,A)
【文献】 特開2007−325864(JP,A)
【文献】 特開2001−275851(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02353465(EP,A1)
【文献】 実開平05−048840(JP,U)
【文献】 特開2001−139047(JP,A)
【文献】 特開2008−239247(JP,A)
【文献】 特開2004−156971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00−27/13
A47J 27/20−29/06
A47J 33/00−36/42
A47J 37/10−37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置であって、
油槽と、
当該油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽近傍に配され被調理食材を収容する調理籠と、
当該調理籠に設けられ、前記調理籠に対し軸支部を中心として昇降回動することで前記調理籠の上部開口部を開閉することができる蓋と、
前記調理籠を前記油槽内部の調理油内から調理油外の間で自動的に昇降させる昇降装置と、
前記調理籠の昇降動作に伴い前記蓋の開き具合を調節する蓋開度調節手段と、
を備えており、
前記蓋開度調節手段が、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている開用係合具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油内で調理高さより低い位置から調理高さまで上昇することで前記開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで前記蓋を上昇回動させて開く開用下部受具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油外へ出て上昇することで前記開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで前記蓋を上昇回動させて開く開用上部受具と、
を備えている、
フライヤ装置。
【請求項2】
食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置であって、
油槽と、
当該油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽近傍に配され被調理食材を収容する調理籠と、
当該調理籠に設けられ、前記調理籠に対し軸支部を中心として昇降回動することで前記調理籠の上部開口部を開閉することができる蓋と、
前記調理籠を前記油槽内部の調理油内から調理油外の間で自動的に昇降させる昇降装置と、
前記調理籠の昇降動作に伴い前記蓋の開き具合を調節する蓋開度調節手段と、
を備えており、
前記蓋開度調節手段が、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている開用係合具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油外へ出て上昇することで前記開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで前記蓋を上昇回動させて開く開用上部受具と、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている閉用係合具と、
前記蓋が開いた状態の前記調理籠が調理油外において下降すると前記閉用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が下降することで前記蓋を下降回動させて閉じる閉用受具と、
を備えている、
フライヤ装置。
【請求項3】
食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置であって、
油槽と、
当該油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽近傍に配され被調理食材を収容する調理籠と、
当該調理籠に設けられ、前記調理籠に対し軸支部を中心として昇降回動することで前記調理籠の上部開口部を開閉することができる蓋と、
前記調理籠を前記油槽内部の調理油内から調理油外の間で自動的に昇降させる昇降装置と、
前記調理籠の昇降動作に伴い前記蓋の開き具合を調節する蓋開度調節手段と、
を備えており、
前記蓋開度調節手段が、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている開用係合具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油内で調理高さより低い位置から調理高さまで上昇することで開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで蓋を上昇回動させて開く開用下部受具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油外へ出て上昇することで前記開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで蓋を上昇回動させて開く開用上部受具と、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている閉用係合具と、
前記蓋が開いた状態の前記調理籠が調理油外において下降すると前記閉用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が下降することで前記蓋を下降回動させて閉じる閉用受具と、
を備えている、
フライヤ装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2および請求項3のうち何れか一つのフライヤ装置を使用し、
被調理食材を入れた前記調理籠の下部側を調理油内に沈めて、揚げ調理を行う工程と、
該揚げ調理後、前記調理籠を調理油外へ上昇させ、前記蓋を閉じた状態で一定時間保ち、油切りを行うと共に、余熱によって調理を行う工程と、
を備えている
フライヤ装置を使用した揚げ調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置に関するものである。更に詳しくは、油揚げ調理の際に被調理食材を収容し調理油内と調理油外の間で昇降する調理籠を備えており、調理籠の上部開口部に開閉可能な蓋を有するフライヤ装置において、蓋を調理籠の昇降に伴い自動的に開閉させると共に、被調理食材の種類に合わせ、調理後の食品がより美味しくなるように蓋の開閉のタイミングや開き具合を調節できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
総菜店等において、鶏の唐揚げやコロッケ、天ぷら等、食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置は、油槽の上部側が大きく開口しており、油と空気の接触面積が広いため調理に伴い油が酸化しやすい。また、油槽の上部側が開口している構造は、調理時に油の弾け飛びやオイルミストの飛散がしやすくなり、作業者が火傷をしたり、調理器具や床、壁が油で汚れる等、調理現場の作業環境が悪化する原因の一つともなっていた。
【0003】
一方、フライヤ装置には、油揚げ調理の際に被調理食材を収容し調理油内と調理油外の間で昇降する調理籠を備えたものがある。油槽の上部側が開口している構造は、調理籠を昇降させる上では都合がよいが、反面、昇降する調理籠を備えたフライヤ装置で前記問題を解消するのは難しい。しかし、近年、この調理籠を利用して前記問題を解消することが可能になるフライヤ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のフライヤ装置は、内部に油を貯留させるオイル槽と、オイル槽内の油を加熱する電気ヒータを備え、オイル槽内に貯留され電気ヒータによって加熱された調理油内に、下準備を終えた食材を収納したフライ籠(調理籠)を浸漬して食材の揚げ調理を行うもので、フライ籠の上部開口部には、開口部を覆う蓋が着脱自在に設けられており、油の酸化を極力抑え、高品質の製品を製造できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−275851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載のフライヤ装置には、次のような課題があった。
すなわち、従来のフライヤ装置は、調理籠の昇降操作と蓋の開閉(着脱)操作を、作業者が手動で行う必要があった。このため、作業者があらかじめ決められたマニュアルに沿って調理を行ったとしても、製品の出来上がりにムラが生じやすい。特に、複数の作業者が調理を行う場合、この傾向はより顕著になる。
【0007】
また、フライヤ装置において、特に蓋の開閉操作は、蓋の着脱により行うので、調理籠の上部開口部を全開するか全閉するかの二つの選択肢しかなく、蓋の開き具合の調節等はできない。このため、例えば被調理食材の種類に合わせ、調理後の食品がより美味しくなるように蓋の開閉のタイミングや開き具合を調節することは困難である。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、油揚げ調理の際に被調理食材を入れる調理籠を備えており、調理籠の上部開口部に開閉可能な蓋を有するフライヤ装置において、蓋を調理籠の昇降に伴い自動的に開閉させると共に、被調理食材の種類に合わせ、調理後の食品がより美味しくなるように蓋の開閉のタイミングや開き具合を調節できるフライヤ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置であって、
油槽と、
当該油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽近傍に配され被調理食材を収容する調理籠と、
当該調理籠に設けられ、前記調理籠の上部開口部を開閉することができる蓋と、
前記調理籠を前記油槽内部の調理油内から調理油外の間で自動的に昇降させる昇降装置と、
前記調理籠の昇降動作に伴い前記蓋の開き具合を調節する蓋開度調節手段と、
を備えており、
前記蓋開度調節手段が、
前記蓋に設けられている係合具と、
装置の所要箇所であって前記係合具が昇降動する経路の近傍に設けられている受具と、
を備え、
前記調理籠の昇降動に伴う前記係合具と前記受具の係合又は係合解除によって蓋が開閉する、
フライヤ装置である。
【0010】
(2)本発明は、
食品の油揚げ調理を行うフライヤ装置であって、
油槽と、
当該油槽内の調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽近傍に配され被調理食材を収容する調理籠と、
当該調理籠に設けられ、前記調理籠に対し軸支部を中心として昇降回動することで前記調理籠の上部開口部を開閉することができる蓋と、
前記調理籠を前記油槽内部の調理油内から調理油外の間で自動的に昇降させる昇降装置と、
前記調理籠の昇降動作に伴い前記蓋の開き具合を調節する蓋開度調節手段と、
を備えており、
蓋開度調節手段が、
前記蓋の前記軸支部近傍に設けられている開用係合具と、
装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に設けられ、前記蓋が閉じた状態の前記調理籠が調理油外へ出て上昇することで前記開用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が上昇することで蓋を上昇回動させて開く開用上部受具と、
を備えている、
フライヤ装置である。
【0011】
(3)本発明は、
蓋が閉じた状態の調理籠が調理油内で調理高さより低い位置から調理高さまで上昇することで開用係合具と係合し、係合後、更に調理籠が上昇することで蓋を上昇回動させて開く開用下部受具を装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に備えている、
前記(2)のフライヤ装置である。
【0012】
(4)本発明は、
蓋開度調節手段が、
蓋の軸支部近傍に設けられている閉用係合具と、
前記蓋が開いた状態の調理籠が調理油外において下降すると前記閉用係合具と係合し、係合後、更に前記調理籠が下降することで蓋を下降回動させて閉じる閉用受具と、
を備えている、
前記(2)又は(3)のフライヤ装置である。
【0013】
(5)本発明は、
開用上部受具における開用係合具と係合する部分の高さが調節自在である、
前記(2)、(3)又は(4)のフライヤ装置である。
【0014】
(6)本発明は、
昇降装置が、アクチュエータを含む構造を有している、
前記(1)、(2)又は(3)のフライヤ装置である。
【0015】
アクチュエータとしては、例えばエネルギーとして空気圧を利用するもの(エアシリンダー)、油圧を利用するもの(油圧シリンダー)、電気(磁力)を利用するもの(電動シリンダー)等があげられる。
なお、調理籠の蓋の開閉制御は、例えばエアシリンダーやサーボモータを使用することで、調理籠の昇降動とは別の制御で行うこともできる。
【0016】
(作用)
本発明に係るフライヤ装置の作用を説明する。
(1)フライヤ装置の調理籠を昇降装置によって上昇させ、あらかじめ決められた上昇位置で停止させると、調理籠の蓋は係合具と受具が係合することで開いた状態となる。
このように蓋が開いた状態で、調理籠の内部に適当な量の被調理食材を入れる。昇降装置によって調理籠を下降させると、係合具と受具の係合が解除される。それに伴って蓋は自身の重さで下降回動して閉じる。調理籠が更に下降し、調理高さまで下降すると停止する。この状態で、調理籠は下部側が調理油内に沈み、調理籠内の被調理食材が調理油内で揚げ調理される。
【0017】
二度揚げ調理を行う場合で説明すれば、一度目の揚げ調理が終了すると、昇降装置によって調理籠が蓋を閉じたままで調理油外まで上昇する。調理籠はこの高さで一定の時間保たれ、調理籠内の調理途中の被調理食材は、油切りが行われると共に、余熱によって加熱調理される。余熱による加熱調理が終了すると、昇降装置によって調理籠が蓋を閉じたまま、調理油内の調理高さまで下降し、二度目の揚げ調理が行われる。
【0018】
二度目の揚げ調理が終了すると、昇降装置によって調理籠は上昇し、調理籠の上昇に伴って蓋が係合具と受具が係合することで上昇回動して開く。そして、調理籠から出来上がった調理品を取り出し、入れ替わりに調理籠の内部に適当な量の被調理食材を入れ、前記と同様に揚げ調理を行う。
【0019】
(3)の蓋が閉じた状態の調理籠が調理油内で調理高さより低い位置から調理高さまで上昇することで開用係合具と係合し、係合後、更に調理籠が上昇することで蓋を上昇回動させて開く開用下部受具を装置の所要箇所であって前記開用係合具が昇降動する経路の近傍に備えているものは、前記のようにして調理籠を調理油外において昇降させて蓋を開閉することができ、揚げ調理中においても蓋を開けることができる。
【0020】
(4)の蓋開度調節手段が、蓋の軸支部近傍に設けられている閉用係合具と、蓋が開いた状態の調理籠が調理油外において下降すると閉用係合具と係合し、係合後、更に調理籠が下降することで蓋を下降回動させて閉じる閉用受具とを備えているものは、調理籠が下降したときに仮に何等かの理由で蓋が自重で閉じない場合でも、強制的に閉じることができる。
【0021】
(5)の開用上部受具における開用係合具と係合する部分の高さが調節自在であるものは、調理籠が上昇したときに蓋が開くタイミングを機械的に調節することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、油揚げ調理の際に被調理食材を入れる調理籠を備えており、調理籠の上部開口部に開閉可能な蓋を有するフライヤ装置において、蓋を調理籠の昇降に伴い自動的に開閉させると共に、被調理食材の種類に合わせ、調理後の食品がより美味しくなるように蓋の開閉のタイミングや開き具合を調節できるフライヤ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るフライヤ装置の一実施の形態を示し、油槽を一部断面した正面視説明図。
図2】本発明に係るフライヤ装置の一実施の形態を示し、油槽を一部断面した側面視説明図。
図3】上部開用受具と下部開用受具と閉用受具及び蓋の開用係合具と閉用係合具の構造及び位置関係を示す斜視説明図。
図4】(a)は上部開用受具と閉用受具及び蓋の開用係合具と閉用係合具の位置関係を示す平面視説明図、(b)は下部開用受具と閉用受具及び蓋の開用係合具と閉用係合具の位置関係を示す平面視説明図。
図5】調理籠が上昇位置(仕込み位置又は調理油外の水蒸気飛ばし位置)にあり、蓋が全開となっている状態を示す側面視一部断面説明図。
図6】調理籠が調理油外の中間位置(又は余熱調理位置)にあり、蓋が閉じている状態を示す側面視一部断面説明図。
図7】調理籠が調理油内の下降位置(揚げ調理位置又は最下降位置)にあり、蓋が閉じている状態を示す側面視一部断面説明図。
図8】調理籠が最下降位置から上昇して調理油内の水蒸気飛ばし位置にあり、蓋が半開となっている状態を示す側面視一部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施の形態〕
【0025】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図4を参照する。
フライヤ装置Aは、上部側が開口した油槽1を備えており、油槽1内の下部には加熱手段である電気ヒータ2を備えている。油槽1の後部側(図1で奥側、図2で左側)には、後記する調理籠4を昇降させる昇降装置3を備えている。なお、図1図2及び図5図8の各図において、調理籠4は、近傍各部の構造を分かりやすく表す便宜上、想像線(一点鎖線)で表している。
【0026】
昇降装置3は、金属製のケース35に内蔵されたエアシリンダー(図では見えない)によって昇降動する昇降ロッド30を備えており、昇降ロッド30には籠受板31が取り付けられている。また、上部には支持部材320を介し油槽1後部に取り付けられた操作盤32が設けられており、この操作盤32によって、揚げ調理に係る各種設定値の入力が行われ、それに基づく油温の制御や調理籠4の昇降制御等の各種制御を行うことができる。なお、符号33は油温を計る温度センサである。
【0027】
調理籠4は、各側面がステンレススチール製の板で形成され、底面が線材を等間隔で縦横に交差させてやや大きな穴(通油口)を有する形状である。これにより、調理籠4の側面は密閉されている。なお、調理籠4は、前記構造に限らず全体をパンチングメタルのように多数の孔を有する構造でもよい。調理籠4は、後部側の側面に設けられているフック40を前記籠受板31の上辺の凹部34に掛けて取り付けられている。
【0028】
調理籠4には、上部開口部を開閉することができる蓋42が設けられている。蓋42は、調理籠4の後部側(図2で左側)の上部開口縁に蝶番43(図3に図示)を介し昇降回動自在に取り付けられている。蓋42は、蝶番43による取付側の大きい蓋板420と、先側の小さい蓋板421で構成されている。蓋板420、421は、テフロン(登録商標)の2コート仕上げによる表面加工が施されている。また、蓋板421の先端辺には、取っ手422が形成されている。この取っ手422は、熱くなるので、取っ手422を使って蓋42を開閉する場合は、例えば針金やワイヤを引っ掛けて操作する。
【0029】
蓋板420、421は、広さの比で約7:3程度であり、蝶番423で繋がれている。なお、蓋板の広さの比は、前記に限定されず、適宜設定ができる。また、蓋板の数も二枚に限定されるものではない。蓋板420、421は、先側の蓋板421が下方へ回動する方向へのみ折れ曲がることができるようになっており、蓋板421の自重で折れ曲がることができる。その折れ曲がり角度は、蓋板421に設けられた停止板424によって、蓋板421に対し例えば90度程度となるように設定されている(後記図5参照)。
【0030】
図3を参照する。
蓋板420の上面側の左右両端寄りには、蓋開度調節手段を構成する二種類の係合具44、45が取り付けられている。これら各係合具は、それぞれ左右側で一対となっている(図3には、片側のみ表している)。
【0031】
外側の開用係合具44は、長方形状の十分な剛性を有する金属板で形成され、前部側(図2図3で右側)が蓋板420にネジ又はリベットで固定されており、後部側が蓋板420と平行になるように形成してある。開用係合具44の後端側上面には、後記閉用受具39の係合部381と係合する係合斜部440が形成されている。
【0032】
開用係合具44は、調理籠4が上昇した位置(図5参照)において、後記する同じく蓋開度調節手段を構成する開用上部受具37と係合する。
また、開用係合具44は、調理籠4が下降した位置(図7参照)において、調理籠4の上昇に伴い、後記する同じく蓋開度調節手段を構成する開用下部受具38と係合する。
【0033】
内側の閉用係合具45は、長方形状の十分な剛性を有する金属板で形成され、前部側が蓋板420にネジで固定されており、後部側が斜め上方へ傾斜して形成されている。閉用係合具45は、調理籠4の上昇位置からの下降に伴い、後記する同じく蓋開度調節手段を構成する閉用受具39と係合する。なお、閉用係合具45は、板バネ等の可撓性を有する材料で形成してもよい。
【0034】
図3図4を主に参照する。
一方、前記昇降装置3においてエアシリンダーが内蔵されているケース35にはアングル材36が左右方向に水平になるよう固定されている。
アングル材36の両端寄りには、蓋開度調節手段を構成する開用上部受具37、開用下部受具38及び閉用受具39が設けられている。なお、開用上部受具37及び開用下部受具38が設けられている箇所は、後記するように開用係合具44が昇降動する経路の近傍である。
【0035】
開用上部受具37は、やや長尺なネジ棒体であり、アングル材36の両端にそれぞれ固定されたL板状の支持板370のナット371を鉛直方向に貫通して螺合されている。開用上部受具37は、軸周方向へ回転させることで上下動し、係合部(当接部)である下部側先端372の高さの調節ができる。これにより、調理籠4の昇降動に伴う蓋42が開くタイミングの調節が可能である。
【0036】
閉用受具39は、長尺な金属板で形成され、上端部がアングル材36の両側且つ各支持板370の内側に固定されている。閉用受具39は、縦方向に設けられ、中間部に前方向へやや突出した段部390が形成されている。段部390より下側は鉛直方向へ伸ばされて、下端部は油槽1の後壁10に固定されている。なお、段部390より下側の鉛直部391の長さは、後記するように調理籠4が下降位置で蓋42を開ける際の閉係合具45の動きを邪魔しない位置で後ろ側へ曲げられている。
【0037】
開用下部受具38は、前後方向に揺動する振り子状であり、金属板で形成されている。開用下部受具38は、前記閉用受具39の下部側且つ外側にやや突出して形成された取付アングル392に上部を軸ピン380を介し軸支して取付られている。また、取付アングル392の前側には、開用下部受具38の前方向への振れを一定の位置で止めるストッパー393が形成されている。
【0038】
開用下部受具38は、下側を前方へやや湾曲させて形成され、先端部には係合部381が設けられている。係合部381の先端には突部382が形成されている。開用下部受具38において、軸ピン380のやや下方には、バランスウエイト383が左右に突出させて固定されている。このバランスウエイト383の作用により、開用下部受具38は、常態では前方へ回動してストッパー393に当たり、係合部381の下辺(下面)はほぼ水平になっている。
【0039】
(作用)
図1乃至図8を参照して、フライヤ装置Aの作用を説明する。
以下、フライヤ装置Aを使用して、コロッケ等の被調理食材の二度揚げ調理を行う場合を例にとり説明する。なお、調理籠4の昇降動は、昇降装置3によって制御されるが、調理籠4の高さ(位置)を検出する手段として、光センサ等の各種センサが使用されているのはいうまでもない。
【0040】
(1)仕込み
調理籠4が昇降装置3によって調理油外の上昇位置に停止しており、開用上部受具37の下部側先端372に開用係合具44が係合することにより、蓋42は上昇回動状態であり全開となっている。このように蓋42が開いた状態で、調理籠4の内部に適当な量の被調理食材を入れる。なお、蓋42の蓋板421は自重で下方へ折れ曲がり、蓋板420に対して約90°の角度で止まっており、仕込み作業がしやすくなっている(図5参照)。
【0041】
(2)調理籠4の下降
昇降装置3によって調理籠4を下降させると、開用上部受具37と開用係合具44が係合している状態では、蓋42は徐々に下降回動し、係合状態が解除されると、それに伴って蓋42は自身の重さで下降回動して閉じる(図6参照)。なお、調理籠4が閉じる際の音や衝撃を緩和するために、調理籠4の下降を途中(例えば20°くらいの開度)で一旦止めてから再度下降させる制御を行うようにしてもよい。
【0042】
調理籠4は、更に下降し、調理高さ(L1)又は最下降位置(L2)まで下降すると停止する(図7参照)。調理高さ(L1)まで下降したときは、開用係合具44は開用下部受具38の係合部381より上方側に位置している。最下降位置(L2)まで下降したときは、後記(8)で説明するように、開用係合具44が開用下部受具38の係合部381の下側に位置する。
【0043】
以下、後記(7)までは、調理籠4が調理高さ(L1)まで下降した場合で説明する。なお、蓋42が何らかの理由で自重によって閉じにくい場合でも、調理籠4が下降すると閉用係合具45が閉用受具39の段部390に当たることで、閉用係合具45は押し上げられ、蓋42は強制的に閉じられる。
【0044】
(3)揚げ調理(一度目)
調理高さ(L1)では、調理籠4は下部側が調理油内に沈んでおり、調理籠4内の被調理食材が調理油内で一定の時間揚げ調理される(図7参照)。
(4)調理籠4の上昇
一度目の揚げ調理が終わると、調理籠4は昇降装置3によって上昇し、蓋42が閉じたままで中間位置で停止する(図6参照)。
【0045】
(5)余熱調理
前記中間位置においては、余熱を利用して一定の時間調理を行う。蓋42は閉じられているので、熱をある程度調理籠4の内部に閉じこめたまま調理ができ、より効率的である。これにより、油切りが行われると共に、余分な水分も調理籠4の底部を通して調理籠4の外部へ逃げる(図6参照)。
【0046】
(6)調理籠4の下降
余熱調理が終わったら、昇降装置3によって調理籠4は下降し、前記一度目と同様に調理高さ(L1)まで下降すると停止する(図7参照)。
(7)揚げ調理(二度目)
調理高さ(L1)では、調理籠4は下部側が調理油内に沈んでおり、調理籠4内において被調理食材の二度目の揚げ調理が一定の時間行われる(図7参照)。
【0047】
(8)蓋42を開けて揚げ調理
被調理食材の種類によっては、一度目又は二度目の揚げ調理中に調理籠4の上部を開閉して、その食材の特徴に合わせることで、食感がよりよくなる場合がある(例えば蓋42を閉じた状態では、調理籠4内の水分が多くふっくらとした食感となり、蓋42を開けた状態では調理籠4内の水分が逃げてパリッとした食感になる等)。
【0048】
蓋42を閉じた状態で調理する場合はそのまま調理するが、揚げ調理中に蓋42を開ける場合は、昇降装置3によって調理籠4を一旦最下降位置(L2)の高さまで下降させる(図7参照)。これにより、開用係合具44も下降し、開用下部受具38は後方へ押しやられ、開用係合具44は開用下部受具38の係合部381より下方へ通過することができる。そして、開用下部受具38は、すぐに前方へ振れて元の位置に戻る。
【0049】
その後、調理籠4を調理高さ(L1)まで上昇させると、開用係合具44も上昇して開用下部受具38の係合部381に下から当たり(図3参照)、更に開用下部受具38は、ストッパー393で前方側への回転が止められており、したがって開用係合具44は下方へ押し下げられた状態になり蓋42が半開きになる(図8参照)。これにより、揚げ調理中においても、蓋42を開けて水分を効率よく逃がしながら調理することができる。また、蓋42の開き角度(開度)は、調理籠4の上昇高さを変えることで調節できる。
【0050】
(9)調理籠4の上昇
二度目の揚げ調理が終わったら、昇降装置3によって調理籠4を上昇させる。調理籠4を調理高さ(L1)から上昇させる場合は、調理籠4は蓋42を閉じたまま上昇する。また、調理籠4を前記(9)で説明した蓋42が半開きになる位置から上昇させる場合は、調理籠4が更に上昇することで開用係合具44が押し下げられ、係合部381の突部382と開用係合具44の係合斜部440との接点に後方へ向かう力のベクトルが作用することにより、開用下部受具38は後方へ振れ、係合部381と開用係合具44の係合は解除される。これにより、蓋42は自重で下降回動して閉じる。なお、前記突部382の突出形状と係合斜部440の傾斜形状により、係合部接点において両部分が互いに滑りにくくなっており、蓋42の半開きの状態を維持しやすくしている。
【0051】
(10)水蒸気飛ばし
蓋42を閉じた状態で、前記(1)と同じ高さまで調理籠4を上昇させると、開用上部受具37の下部側先端372に開用係合具44が係合することにより、蓋42は上昇回動して全開となる(図5参照)。これにより、油切りが行われると共に、調理籠4内の水分が水蒸気となって調理籠4の底部から外部へ逃がされる。そして、調理籠4から揚げ調理品を取り出したら、前記(1)の仕込みを行い、以下同様に工程を繰り返して揚げ調理を行うことができる。
【0052】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
A フライヤ装置
1 油槽
10 後壁
2 電気ヒータ
3 昇降装置
30 昇降ロッド
31 籠受板
32 操作盤
320 支持部材
33 温度センサ
34 凹部
35 ケース
36 アングル材
37 開用上部受具
370 支持板
371 ナット
372 下部側先端
38 開用下部受具
380 軸ピン
381 係合部
382 突部
383 バランスウエイト
39 閉用受具
390 段部
391 鉛直部
392 取付アングル
393 ストッパー
4 調理籠
40 フック
42 蓋
420 蓋板
421 蓋板
422 取っ手
423 蝶番
424 停止板
43 蝶番
44 開用係合具
45 閉用係合具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8