【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のセメント組成物
の製造方法は、セメントとベントナイトを併用し
ていたソイルセメントによる地盤改良工事において、前記ベントナイトの全部代替かつ前記セメントの一部代替となり得る生コンスラッジ微粉末を含む前記地盤改良工事用のセメント組成物
の製造方法であって、前記生コンスラッジ微粉末は、脱水ケーキである生コンスラッジの発生後5日以内のものを
80〜150℃で加熱乾燥し粉砕処理してなる
含水率が1〜2%でブレーン値4000〜15000cm
2/gのものであり、前記セメント組成物におけるセメントと前記生コンスラッジ微粉末の割合は、重量比でセメント:生コンスラッジ微粉末=100:3〜70であることを特徴とするセメント組成物
の製造方法である。
【0017】
本発明で言う地盤改良工事とは、
従来は注入固化材としてセメントとベントナイトを併用
していた地盤改良工事であり、例えば、ソイルセメント柱列壁の造成工事、鋼管ソイルセメント複合杭による基礎工事、ソイルセメントの法面への吹付け工事等である。
【0018】
セメントは従来から地盤改良工法に用いられているセメント、結合材、水硬性組成物であれば特に限定されない。普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント等の混合セメント、速硬セメント、エコセメント等のセメント、これらのセメントに複数の無機混和材を混和してなる水硬性組成物が挙げられる。
【0019】
中でも高炉セメントは好ましい。高炉セメント中の高炉スラグ微粉末と生コンスラッジ微粉末との相乗効果により、流動性向上、強度向上、土壌からの六価クロム溶出低減が図れるからである。
【0020】
なお、市販の高炉セメントの代わりに普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を混合して用いても良いが、上記定義の通り、この場合は混合物を本発明で言うセメントとする。
【0021】
生コンスラッジ微粉末は生コンスラッジを微粉末にしたものであり、生コンスラッジは所定の水が加えられた残コン又は戻りコン、あるいはレディーミクストコンクリートを製造したり生コン車を洗浄する生コン工場、レディーミクストコンクリートを製造したり使用したりする二次製品工場から発生する洗浄廃水であるスラリー状被処理物を処理して得られる脱水ケーキである。
【0022】
生コンスラッジは発生後5日以内のものを用いる。生コンスラッジの発生とは残コン、戻りコン、余剰コン、洗浄廃水が発生した時点をいう。用いる生コンスラッジを5日以内とするのは、5日を過ぎるとセメントの水和が進んでセメントクリンカ粒子における未水和部分が少なくなり、生コンスラッジの水和活性が著しく低下するからである。
【0023】
用いる生コンスラッジは、できるだけ発生後からの経過時間が少ないものがよい。また、生コンスラッジの水和が進行しないような処置(例えば、冷温下での保管、遅延剤の添加混合等)を施しておくのは好ましい。
【0024】
生コンスラッジは加熱乾燥処理、粉砕処理して生コンスラッジ微粉末にする。加熱乾燥処理と粉砕処理は同時に行ってもよい。加熱乾燥は80〜150℃で行うのが好ましく、より好ましくは110〜140℃である。
【0025】
粉砕処理はブレーン値で4000〜15000cm
2/gの微粉末となるまで行う。生コンスラッジ微粉末は、生コンスラッジ発生後からの経過時間が経ったものほどブレーン値を高くすることが好ましい。経過時間が短いものでもブレーン値を高くして用いることはよい。
【0026】
本発明のセメント組成物における前記セメントと前記生コンスラッジ微粉末の割合は、重量比でセメント:生コンスラッジ微粉末=100:3〜70である。生コンスラッジ微粉末の割合が3未満では粘性・流動性におけるベントナイト代替としての効果、強度におけるセメントの一部代替としての効果が十分得られない。逆に、70を超えると強度発現が不十分になったり粘性・流動性の安定性が欠けたりする。
【0027】
本発明のセメント組成物は、ソイルセメントを用いる地盤改良工事におけるソイルセメントのセメントとして用いるのが好ましい。ソイルセメントを用いる地盤改良工事の代表的なものとしてソイルセメント柱列壁の造成工法等があるが、多くの工法ではセメントとベントナイトが併用されるため、上記本発明のセメント組成物をベントナイトの全部代替かつセメントの一部代替として用いれば、セメントとベントナイトの併用で発生する前記問題を解決できるとともに、セメント使用量を減らすこともでき、処分に困っていた生コンスラッジの大量再利用もできる。
【0028】
本発明で用いる前記生コンスラッジ微粉末は、密度が2.6g/cm
3未満でブレーン値が8000cm
2/g以上、あるいは、密度が2.6g/cm
3以上でブレーン値が4000cm
2/g以上のいずれかであるのが好ましい。
【0029】
生コンスラッジ微粉末は水和の進行程度(未水和部分の量)によって密度がバラツキ、概して2.2〜3.0の範囲にある。生コンスラッジの発生時期(回収時期)が早いものを速やかに加熱乾燥・粉砕処理して得た生コンスラッジ微粉末は未水和部分の量が多いので密度が高く、前記発生時期が遅い生コンスラッジを用いたものや発生時期が早いものを用いても処理時期が遅いと水和が進行して未水和部分の量が少なくなり水和物の量が多くなるので生コンスラッジ微粉末の密度は低くなる。したがって、密度によって生コンスラッジ微粉末の水和活性の高低が推測でき、密度の高いものほど水和活性が高いと言える。
【0030】
前述の通り、本発明で用いる生コンスラッジ微粉末は、生コンスラッジ発生後からの経過時間が経ったものほどブレーン値を高くすることが好ましい。また、経過時間が短いものでもブレーン値を高くして用いることはよい。
【0031】
言い換えれば、密度が低いものほどブレーン値を高くすることが好ましい。また、密度の高いものはブレーン値を高くして用いてもある程度低くして用いてもよい。目安となる密度は2.6g/cm
3である。
【0032】
密度が2.6g/cm
3以上の水和活性の高い生コンスラッジ微粉末であればブレーン値が4000cm
2/g以上と必ずしも著しく高くする必要はないが、密度が2.6g/cm
3未満の水和活性のあまり高くない生コンスラッジ微粉末であればブレーン値が8000cm
2/g以上と著しく高くしないとセメントの一部代替となり難くなる可能性がある。
【0033】
本発明で用いる前記生コンスラッジ微粉末は、含水率が1〜2%であるのが好ましい。2%を超えると水和進行により粒子同士の結合が進み固結となったりする可能性がある。2%以下であれば未水和部分の水和進行はほとんどないので安定した品質のものができる。コスト面からも品質的にも1%未満にする必要はない。1%未満にすると逆に吸湿・吸水する可能性がある。
【0034】
本発明で用いる前記生コンスラッジ微粉末は、ig.lossが20重量%以下で、酸化カルシウムが45〜65重量%、二酸化珪素15〜35重量%であるのが好ましい。ig.lossが高いほど水和や風化が進行した水和活性の低いものと判断される。
【0035】
水和活性の点からして20重量%以下が好ましい。酸化カルシウムや二酸化珪素の量も生コンスラッジ微粉末の水和活性、品質の目安となるものであり、なるべくセメントの組成に近いものが好ましい。上記範囲にあれば品質の高いものと判断され得る。
【0036】
本発明で用いる前記生コンスラッジ微粉末は、上記の通り、生コンスラッジの発生時期や処理時期によって水和活性の異なるものが得られるので、水和活性の高いものを用いようとすると、密度が高くig.lossが少なく酸化カルシウムや二酸化珪素においてセメント組成に近いものが良いが、中でも材令28日での圧縮強度において普通ポルトランドセメントの40%以上となるものが特に好ましい。
【0037】
概して、密度、ig.loss等において上記条件を満たせば、おのずと強度発現性の良いものが得られるが、密度や化学組成を測定するまでもなく、圧縮強度試験を行って強度が普通ポルトランドセメントの40%以上となるものであれば高品質のものであるのでそれでよい。
【0038】
本発明のセメント組成物は前記セメントと前記生コンスラッジ微粉末を主体としたもの度あればよく、必要に応じて、第三成分を添加しても良い。第三成分としては、高炉スラグ粉、フライアッシュ、減水剤、流動化剤等が挙げられる。中でも高炉スラグ粉を含ませることは好ましい。
【0039】
前述の通り、高炉スラグ粉と生コンスラッジ微粉末との相乗効果により、流動性向上、強度向上、土壌からの六価クロム溶出低減が図れるからである。高炉スラグ粉の含ませ方は、セメントとして高炉セメントを用いるか、第三成分として高炉スラグ微粉末を所定量添加するかである。
【0040】
本発明のセメント組成物は、前述の通り、ソイルセメントのセメントとして用いるのが好ましく、また、セメント組成物中には高炉スラグ粉が含まれるのが好ましい。一例として、高炉セメントB種と前記生コンスラッジ微粉末のみからなる本発明のセメント組成物を掘削土砂に混和してなるソイルセメントが挙げられる。このソイルセメントにおいては、掘削土砂1m
3に対し、高炉セメントB種180〜260kg、生コンスラッジ微粉末10〜120kgの配合割合が好ましい。
【0041】
高炉セメントB種は180kg未満であると強度不足となる虞がある。また、260kgを超えると必要な流動性を確保するための水量が増えブリージング率が増加し易くなる。生コンスラッジ微粉末は10kg未満であると十分な添加効果が得られない。
【0042】
120kgを超えると強度不足になったり必要な流動性が得られ難くなったりする。ソイルセメントは、ソイルセメント柱列連続壁造成工法における本削孔工事でのソイルセメントとして用いるのが好ましい。
【0043】
また、このソイルセメントの性能は、流動性能がJHS A 313−1992によるシリンダーフロー値が150〜450mmで、強度性能がJIS A 1216による材令28日での一軸圧縮強度が0.5N/mm
2以上であるのが好ましい。このような流動特性と強度特性にすれば、生コンスラッジ微粉末が大量に使用でき、ベントナイトを使わなくても高品質のソイルセメント柱列連続壁が得られる。
【0044】
以上のように、ベントナイトとセメントの性能を併せ持った本発明のセメント組成物は、
従来はセメントとベントナイトを併用
していたソイルセメントよる地盤改良工法において、該セメントの一部と該ベントナイトの全部の代替として好適に用いることができるため、セメントとベントナイトの併用による弊害を解消したベントナイトを使用しない地盤改良工法が得られる。