特許第5881159号(P5881159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881159異種物質の検査装置及び異種物質の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881159
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】異種物質の検査装置及び異種物質の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20160225BHJP
   G01N 23/087 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01N23/087
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-72564(P2012-72564)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205123(P2013-205123A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100093953
【弁理士】
【氏名又は名称】横川 邦明
(72)【発明者】
【氏名】小池 崇文
(72)【発明者】
【氏名】徳永 洋
(72)【発明者】
【氏名】原 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】小玉 祐一
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526482(JP,A)
【文献】 特開2008−290024(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0016809(US,A1)
【文献】 特開2010−286405(JP,A)
【文献】 特開2011−145253(JP,A)
【文献】 特開2009−192519(JP,A)
【文献】 特開昭62−211549(JP,A)
【文献】 特開平10−318943(JP,A)
【文献】 特開2003−279503(JP,A)
【文献】 特開2010−117170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
G01N 22/00−22/04
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を形成する主物質内に異種物質が存在するか否かを検査する異種物質の検査装置において、
前記被測定物を搬送する搬送手段と、
当該搬送手段による前記被測定物の搬送方向に沿って互いに異なる位置に配置された第1光学系及び第2光学系と、
前記第1光学系によって測定したX線透過量に基づいて前記被測定物内における前記異種物質の候補位置を求める候補位置測定手段と、
前記候補位置測定手段によって求めた異種物質の候補位置におけるX線透過量を第1X線透過量として求める第1のX線透過量測定手段と、
複数の画素を平面的に並べた状態であるX線検出面を有しており、それら複数の画素のうち前記候補位置測定手段によって求めた異種物質の候補位置の周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を前記第2光学系を用いて第2X線透過量として求める第2のX線透過量測定手段と、
前記第1X線透過量と前記第2X線透過量とに基づいて前記異種物質の存在を判定する判定手段と、を有しており、
前記第1光学系は第1X線管を有しており、前記第2光学系は第2X線管を有しており、前記第1X線管と前記第2X線管は互いに異なるエネルギのX線を発生し、
前記判定手段は、前記候補位置における前記第1光学系によって求めた前記第1X線透過量と、前記第2光学系によって求めた前記X線検出面内の個々の画素についての前記第2X線透過量とに基づいて、互いにエネルギが異なるX線が異種物質を透過するときのX線透過量の特性線に基づいて異種物質を特定すること
を特徴とする異種物質の検査装置。
【請求項2】
前記候補位置測定手段によって複数の候補位置が求められた場合、前記第2のX線透過量測定手段はそれらの複数の候補位置のそれぞれの周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を第2X線透過量として求めることを特徴とする請求項1記載の異種物質の検査装置。
【請求項3】
前記候補位置測定手段は、前記異種物質のX線透過量のデータを微分して得られる微分データに基づいて前記異種物質の候補位置を特定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の異種物質の検査装置。
【請求項4】
前記第1光学系は第1X線検出器を有しており、前記第2光学系は第2X線検出器を有しており、
前記第1X線検出器及び前記第2X線検出器は、直線上でX線分解能を有する1次元X線検出器又は平面内でX線分解能を有する2次元X線検出器である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の異種物質の検査装置。
【請求項5】
前記判定手段によって前記異種物質の存在が測定されない場合、前記第2のX線透過量測定手段は、X線透過量を測定するための測定対象領域を広げてX線透過量を再度、測定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の異種物質の検査装置。
【請求項6】
前記搬送手段による前記被測定物の搬送速度の変化に応じて、X線透過量を測定するための測定対象領域の広さを調節することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の異種物質の検査装置。
【請求項7】
被測定物を形成する主物質内に異種物質が存在するか否かを検査する異種物質の検査方法において、
前記被測定物内における前記異種物質の候補位置を求める候補位置測定工程と、
前記候補位置測定工程によって求めた異種物質の候補位置におけるX線透過量を第1X線透過量として求める第1のX線透過量測定工程と、
複数の画素を平面的に並べた状態であるX線検出面を用いて、それら複数の画素のうち前記候補位置測定工程によって求めた異種物質の候補位置の周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を第2X線透過量として求める第2のX線透過量測定工程と、
前記第1X線透過量と前記第2X線透過量とに基づいて前記異種物質の存在を判定する判定工程と、を有しており、
前記第1のX線透過量測定工程で前記第1X線透過量を測定する位置と、前記第2のX線透過量測定工程で前記第2X線透過量を測定する位置とは異なる位置であり、
前記第1のX線透過量測定工程と前記第2のX線透過量測定工程では互いに異なるエネルギのX線で測定を行い、
前記判定手段は、前記第1のX線透過量測定工程において求めた前記候補位置における前記第1X線透過量と、前記第2のX線透過量測定工程において求めた前記X線検出面内の個々の画素についての前記第2X線透過量とに基づいて、互いにエネルギが異なるX線が異種物質を透過するときのX線透過量の特性線に基づいて異種物質を特定する
ことを特徴とする異種物質の検査方法。
【請求項8】
前記候補位置測定手段は、前記第2光学系を用いることなく前記第1光学系によって測定したX線透過量に基づいて前記被測定物内における前記異種物質の候補位置を求めることを特徴とする請求項1から請求項6の少なくとも1つに記載の異種物質の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主物質内に異種物質が存在するか否かを検査する検査装置及びその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主物質に混入した異種物質を検出するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1によれば、2種以上の異なるエネルギの放射線によって透過画像を求め、求められた透過画像に基づいて異種物質を検出する技術が知られている。特許文献1では、異なるエネルギの放射線のそれぞれによって透過画像を求める際、1つのエネルギに関する物質の位置と、他のエネルギに関する物質の位置とが一致していることが前提であり、物質に位置ズレが生じることは考慮されていない。
【0003】
また、特許文献2によれば、搬送ベルトの搬送方向に沿って2つの検出器を設け、被検査物を搬送ベルトによって搬送させながら、異なるエネルギのX線をその被検査物にタイミングを変えて照射し、それぞれのエネルギのX線に関する透過X線データを上記2つの検出器によって検出し、それらの透過X線データに基づいて被検査物中に含まれる異種物質を検出する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2では、2つのX線検出器によって画像データを取得する際、被検査物に位置ズレが生じていないことが前提条件であり、被検査物に位置ズレが生じることは考慮されていない。被検査物に位置ズレが生じた場合には、異種物質の検出が正確にできないおそれがある。
【0005】
特許文献3によれば、ベルトコンベアによって搬送される試料に、試料のX線吸収端より低いエネルギのX線とX線吸収端より高いエネルギのX線とを順次に照射し、それぞれのエネルギのX線に関してX線透過強度を測定し、得られた測定結果に基づいて試料内に異物が存在するか否かを判定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献3では、2つのX線検出器によってX線透過強度を取得する際、試料に位置ズレが生じていないことが前提条件であり、被検査物に位置ズレが生じることは考慮されていない。試料に位置ズレが生じた場合には、異物の検出が正確にできないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−211549号公報
【特許文献2】特開平10−318943号公報
【特許文献3】特開2010−286405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、2つあるいはそれ以上の検査ステージにおいてX線のエネルギを変えて、すなわち測定条件を変えて試料のX線透過量、すなわち物質量を測定し、測定されたX線透過量に基づいて試料内に異物があるか否かを判定する技術は、従来から知られている。しかしながら、このような複数の検査ステージを備えた異種物質の検査技術において、各検査ステージ間での試料の位置ズレは考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、少なくとも2つの検査ステージを備えた異種物質の検査装置及び異種物質の検査方法において、各検査ステージ間で被測定物に位置ズレが生じたとしても、その位置ズレを簡単に解消して、信頼性の高い検査を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る異種物質の検査装置は、被測定物を形成する主物質内に異種物質が存在するか否かを検査する異種物質の検査装置において、前記被測定物を搬送する搬送手段と、当該搬送手段による前記被測定物の搬送方向に沿って互いに異なる位置に配置された第1光学系及び第2光学系と、前記第1光学系によって測定したX線透過量に基づいて前記被測定物内における前記異種物質の候補位置を求める候補位置測定手段と、前記候補位置測定手段によって求めた異種物質の候補位置におけるX線透過量を第1X線透過量として求める第1のX線透過量測定手段と、複数の画素を平面的に並べた状態であるX線検出面を有しており、それら複数の画素のうち前記候補位置測定手段によって求めた異種物質の候補位置の周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を前記第2光学系を用いて第2X線透過量として求める第2のX線透過量測定手段と、前記第1X線透過量と前記第2X線透過量とに基づいて前記異種物質の存在を判定する判定手段とを有しており、前記第1光学系は第1X線管を有しており、前記第2光学系は第2X線管を有しており、前記第1X線管と前記第2X線管は互いに異なるエネルギのX線を発生し、前記判定手段は、前記候補位置における前記第1光学系によって求めた前記第1X線透過量と、前記第2光学系によって求めた前記X線検出面内の個々の画素についての前記第2X線透過量とに基づいて、互いにエネルギが異なるX線が異種物質を透過するときのX線透過量の特性線に基づいて異種物質を特定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る異種物質の検査装置によれば、搬送ベルトのズレや被測定物の崩れ等に起因して、第1光学系と第2光学系とで異種物質の測定位置に位置ズレが生じた場合、その位置ずれを解消した状態で、第1のX線透過量測定手段で求めたX線透過量と第2のX線透過量測定手段で求めたX線透過量とを正確に評価の対象にすることができる。これにより、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0012】
本発明に係る異種物質の検査装置において、前記候補位置測定手段は、前記被測定物の被測定領域に関するX線透過量のデータ(例えば、図6(a)のX線透過量曲線)を測定し、当該X線透過量のデータに基づいて前記異種物質の候補位置を求めることができる。
【0013】
本発明に係る異種物質の検査装置において、前記候補位置測定手段によって複数の候補位置が求められた場合、前記第2のX線透過量測定手段はそれらの複数の候補位置のそれぞれの周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を第2X線透過量として求めることができる。
【0014】
2つの検査ステージ間で被測定物の位置ズレを補正しようとする場合、一般的な手法として、予め被測定物の適所にマークを付けておき、2つの検査ステージ間で被測定物の位置ズレが発生した場合には、2回目の検査ステージでの検査結果をマークのズレ量に基づいて補正するという補正手法が考えられる。
【0015】
そのような補正手法を、第1検査手段によって異種物質の存在位置が複数求められたという本実施態様に係る異種物質の検査装置に適用したとすると、第2検査手段によって求めたデータをマークのズレ量に基づいて全体的に補正、すなわち一律に補正するということになる。しかしながら、このような手法では、複数の異種物質の個々の位置ズレ量を正確に検出したことにはならず、従って、検査精度が低下するおそれがある。
【0016】
これに対し、上記の限定した態様の異種物質の検査装置によれば、複数の異種物質の位置ズレが異種物質の個々に関して個別に補正されることになり、従って、検査精度を高い状態に維持できる。
【0017】
本発明に係る異種物質の検査装置において、前記候補位置測定手段は、前記異種物質のX線透過量のデータ(例えば、X線透過量曲線)を微分して得られる微分データに基づいて前記異種物質の候補位置を特定することができる。
【0018】
本発明に係る異種物質の検査装置において、X線検出器は、直線上でX線分解能を有する1次元X線検出器又は平面内でX線分解能を有する2次元X線検出器とすることができる
【0019】
本発明に係る異種物質の検査装置において、前記第1光学系と前記第2光学系は互いに異なるエネルギのX線を発生し、前記判定手段は、互いにエネルギが異なるX線が異種物質を透過する透過量に基づいて異種物質を特定する。この構成により、いわゆるデュアル・エネルギ測定を行うことができる。
【0020】
本発明に係る異種物質の検査装置においては、前記搬送手段による前記被測定物の搬送速度の変化に応じて、X線透過量を測定するための測定対象領域の広さを調節することができる。こうすれば、搬送手段による被測定物の搬送速度にムラが発生する場合でも、検査精度を高く維持できる。
【0021】
次に、本発明に係る異種物質の検査方法は、被測定物を形成する主物質内に異種物質が存在するか否かを検査する異種物質の検査方法において、前記被測定物内における前記異種物質の候補位置を求める候補位置測定工程と、前記候補位置測定工程によって求めた異種物質の候補位置におけるX線透過量を第1X線透過量として求める第1のX線透過量測定工程と、複数の画素を平面的に並べた状態であるX線検出面を用いて、それら複数の画素のうち前記候補位置測定工程によって求めた異種物質の候補位置の周囲に在る所定数の画素の少なくとも1つにおけるX線透過量を第2X線透過量として求める第2のX線透過量測定工程と、前記第1X線透過量と前記第2X線透過量とに基づいて前記異種物質の存在を判定する判定工程と、を有しており、前記第1のX線透過量測定工程で前記第1X線透過量を測定する位置と、前記第2のX線透過量測定工程で前記第2X線透過量を測定する位置とは異なる位置であり、前記第1のX線透過量測定工程と前記第2のX線透過量測定工程では互いに異なるエネルギのX線で測定を行い、前記判定手段は、前記第1のX線透過量測定工程において求めた前記候補位置における前記第1X線透過量と、前記第2のX線透過量測定工程において求めた前記X線検出面内の個々の画素についての前記第2X線透過量とに基づいて、互いにエネルギが異なるX線が異種物質を透過するときのX線透過量の特性線に基づいて異種物質を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る異種物質の検査装置によれば、搬送ベルトのズレや被測定物の崩れ等に起因して、第1光学系と第2光学系とで異種物質の測定位置に位置ズレが生じた場合、その位置ずれを解消した状態で、第1のX線透過量測定手段で求めたX線透過量と第2のX線透過量測定手段で求めたX線透過量とを正確に評価の対象にすることができる。これにより、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0023】
本発明に係る異種物質の検査方法によれば、搬送ベルトのズレや被測定物の崩れ等に起因して、第1のX線透過量測定工程と第2のX線透過量測定工程とで異種物質の測定位置に位置ズレが生じた場合、その位置ずれを解消した状態で、第1のX線透過量測定工程で求めたX線透過量と第2のX線透過量測定工程で求めたX線透過量とを正確に評価の対象にすることができる。これにより、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る異種物質の検査装置の一実施形態を示す図である。
図2】被測定物の一実施形態を示す平面図である。
図3】主物質である鉄の中に異種物質であるタングステンが混在している状態を示す写真データである。
図4】鉄(Fe)とタングステン(W)のデュアル・エネルギ特性を示すグラフである。
図5図1の検査装置によって実行される制御の流れを示すフローチャートである。
図6】X線透過量の変化を示すデータ及びそのデータを微分したデータを示すグラフである。
図7】本発明で用いられる測定対象領域の一例を示す図である。
図8】測定対象領域の広さと被測定物の大きさとの関係の一例を示す平面図である。
図9】本発明に係る異種物質の検査装置の他の実施形態を示す図である。
図10】本発明に係る異種物質の検査装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図11図10の検査装置において被測定物を搬送するための搬送ベルトの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(異種物質の検査装置及び検査方法の第1の実施形態)
以下、本発明に係る異種物質の検査装置及び異種物質の検査方法を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0026】
図1は、本発明に係る異種物質の検査装置の一実施形態を示している。ここに示す異種物質の検査装置1は、機構部2と制御部3とを有している。
【0027】
(機構部2)
機構部2は、被測定物Sを搬送するための搬送手段としての搬送ベルト6と、第1光学系7と、第2光学系8とを有している。第1光学系7による検査領域が第1検査ステージであり、第2光学系8による検査領域が第2検査ステージである。搬送ベルト6は駆動ローラ11と従動ローラ12とに掛け渡されている。駆動ローラ11は駆動源、例えば電動モータ13によって駆動されて回転する。駆動ローラ11の回転により、搬送ベルト6の上側走行部が矢印Aで示すように移動する。被測定物Sは、検査にあたって、搬送ベルト6の上流側の位置に載せられる。
【0028】
被測定物Sは、主物質の中に異種物質が混在して成る物質である。本実施形態では、主物質が鉄(Fe)の切削片の集合物であり、異種物質がタングステン(W)の微小塊であるものとする。本実施形態では、図2に示すように、かさ密度が0.2g/cm である鉄(Fe)の集合物の中に微小なタングステンWが複数、混在している。
【0029】
被測定物Sの搬送方向Aに沿った被測定物Sの長さL及びそれに直交する方向の幅Hは、搬送ベルト6の幅や、第1光学系7及び第2光学系8の測定可能領域の大きさ等を考慮して適宜に設定する。
【0030】
タングステンWは、通常は、複数個が鉄Feの中に混在する。タングステンWは、図3に示すように微小球で存在する場合もあるし、微小片として存在する場合もある。本実施形態では直径0.38mm以上のタングステン球を検出できるようになっている。このような検出能力は、後述のように、検出器の検出単位である画素をタングステン球よりも小さくすることによって達成でき、その意味から本実施形態では0.2mmピッチの画素によって検出器を形成している。
【0031】
図1において、第1光学系7は、第1電磁波放射手段としての第1X線管15aと、第1電磁波検出手段としての第1X線検出器16aとを有している。第2光学系8は、第2電磁波放射手段としての第2X線管15bと、第2電磁波検出手段としての第2X線検出器16bとを有している。
【0032】
第1X線管15aは、通電によって電子を放出するフィラメントと、それに対向して配置されたCuターゲットとを有しており、電子が衝突したターゲットからX線を発生する。第1X線管15aは管電圧160kV、管電流0.8mAで高エネルギのX線を発生する。第1X線管15aによる被測定物Sの露光時間は、本実施形態では2msである。
【0033】
第2X線管15bは、第1X線管15aと同様に、通電によって電子を放出するフィラメントと、それに対向して配置されたCuターゲットとを有しており、電子が衝突したターゲットからX線を発生する。第2X線管15bは管電圧90kV、管電流0.6mAで低エネルギのX線を発生する。第2X線管15bによる被測定物Sの露光時間は、本実施形態では2msである。
【0034】
第1X線検出器16a及び第2X線検出器16bは、それぞれ、受光素子17と出力部18とを有している。受光素子17は本実施形態では1次元半導体X線検出器によって形成されている。1次元半導体X線検出器は、X線を受光して電気信号を出力できる半導体素子を画素として、この画素を図1の紙面垂直方向(紙面を貫通する方向)へ複数個、直線状に並べて成る検出器である。すなわち、1次元半導体X線検出器は、直線上でX線分解能を有するX線検出器である。1次元半導体X線検出器を形成する1つの画素の大きさは、本実施形態では、0.2mmピッチである。
【0035】
1次元半導体X線検出器は、2次元半導体X線検出器に代えることができる。2次元半導体X線検出器は、X線を受光して電気信号を出力できる半導体素子を画素として、この画素を複数個、平面内に並べて成る検出器である。すなわち、2次元半導体X線検出器は、平面内でX線分解能を有するX線検出器である。2次元半導体検出器は、搬送ベルト6を用いた流れ作業で用いることもできるし、流れ作業ではないバッチ処理(一括処理)で用いることもできる。
【0036】
半導体検出器は、フォトンカウンティング型(すなわちパルス計数型)ピクセルアレイ検出器、CCD(Charge Coupled Device/電荷結合素子)検出器等を用いることができる。出力部18は、受光素子17から出力された信号を増幅し、X線強度信号を位置信号と関連付けて出力する。
【0037】
(制御部3)
制御部3は、コンピュータを用いた制御装置21を有している。制御装置21は、演算制御器であるCPU(Central Processing Unit)22と、ROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)24と、メモリ25とを有している。メモリ25は、ハードディスク等といった機械式記憶媒体や、半導体メモリ等によって形成することができる。
【0038】
メモリ25の内部には、機構部2を使って所定の機能を実現するための検査プログラム28がインストールされている。また、メモリ25の内部には、検査処理に関連して生成されたデータを保存するための結果ファイル29の領域が確保されている。また、メモリ25の内部には、図4に示す特性グラフがデータテーブル30の形で保存されている。なお、図4の特性グラフは検査プログラム28内に数式によって保存しても良い。
【0039】
図4の特性グラフは、鉄(Fe)とタングステン(W)のデュアル・エネルギ特性を示すグラフである。図4において、横軸は160kVの高エネルギのX線をFe及びWに照射したときのFe及びWのX線透過量を示している。縦軸は90kVの低エネルギのX線をFe及びWに照射したときのFe及びWのX線透過量を示している。横軸及び縦軸は単位の無い無名数である。横軸及び縦軸において、空気のX線透過量は、いずれも3800である。
【0040】
図4において、曲線Wはタングステンの特性を示し、曲線Feは鉄の特性を示している。図4の特性は、160kVの高エネルギX線と90kVの低エネルギX線を用いて予め測定されたデータから求めたものである。図1の異種物質の検査装置1において、被測定物Sに関して、第1光学系7を用いて高エネルギX線によるX線透過量を測定し、さらに第2光学系8を用いて低エネルギX線によるX線透過量を測定し、それらの値を図4のグラフにあてはめれば、被測定物Sの主物質(Fe)内にタングステンが異種物質として存在することを判定できる。すなわち、図4のグラフに示された曲線は検量線として機能する。このような高エネルギX線と低エネルギX線の2種類のX線を用いて行われる処理は、デュアル・エネルギ処理と呼ばれることがある。
【0041】
図1において、CPU22、ROM23、RAM24及びメモリ25は通信線であるバス31によって接続されている。また、バス31には、ディスプレイ等といった表示装置32と、キーボード、マウス等といった入力装置33とが接続されている。機構部2の検出器16a,16b及び電動モータ13の入出力端子は入出力インターフェース34を介してCPU22に接続されている。
【0042】
(検査処理)
以下、図5に示すフローチャートを用いて、図1に示す異種物質の検査装置1を用いて行われる検査の流れを説明する。
電源が投入されると、ステップS1において装置全体の初期調整が行われて、検査に対する準備が整う。搬送ベルト6の上に被測定物Sが置かれ、検査の指示が成されると(ステップS2でYES)、被測定物Sが搬送ベルト6によって図1の矢印A方向へ搬送される(ステップS3)。
【0043】
被測定物Sが第1光学系7による検査域に達すると、ステップS4において候補位置測定工程が実行される。すなわち、第1X線管15aから放射される高エネルギX線が被測定物Sに照射され、被測定物Sから出る透過X線が受光素子17で受け取られ、そのときのX線透過量(すなわち、物質量)を反映した信号が出力部18の出力端子から出力される。
【0044】
第1光学系7の出力部18から出力されるX線情報に基づいて、図6(a)に示すように、物質量のデータとしてのX線透過量のデータが得られる。図6(c)は図3に示す被測定物Sの一部分を切り取って示した2次元写真データである。この2次元写真データにおける線X1に沿った部分のデータが図6(a)に示すデータである。線X1は搬送ベルト6による被測定物Sの搬送方向に沿った線である。線X1に沿った目盛り、すなわち図6の横軸の目盛り、は被測定物Sの搬送方向に沿った位置を示している。
【0045】
線X1と直角の方向に関しても図6(a)と同様のX線透過量データが得られるが、図6ではそれらのデータの図示は省略している。候補位置測定工程S4で得られた図6(a)のX線透過量データ(すなわち物質量データ)は、必要に応じて、図1のRAM24やメモリ25の結果ファィル29に保存される。
【0046】
鉄Fe及びタングステンWについてX線透過量を考えると、鉄はX線透過量が高く、タングステンはX線透過量が低い。従って、異種物質としてのタングステンの存在位置に対応してX線透過量データ(図6(a))の測定値が下がっている。従って、この位置をもって異種物質の存在位置(ステップS4の場合は、まだ、存在位置として確定しないので、以下では存在候補位置ということにする)と判定することができる。しかしながら、X線透過量データ(図6(a))の振幅変動だけでは異種物質であるタングステンの特徴を必ずしも明確に表現できないので、本実施形態ではステップS4においてタングステンの特徴を明確に捕えることとしている。
【0047】
すなわち、ステップS4において図1のCPU22は、既に求められているX線透過量データ(図6(a))の微分データ(図6(b))を演算によって求める。この微分データにより、異種物質であるタングステンの搬送方向に沿った存在位置P1が明確に判定できる。搬送方向と直角方向(図6(c)の矢印Cで示す方向)の位置は、受光素子17における副走査方向の位置であるので、CPU22によって正確に認識できる。こうして、ステップS4において、異種物質であるタングステンの存在位置(存在候補位置)が求められる。タングステンが主物質であるFeの中に複数存在する場合には、タングステンの存在候補位置として、例えば複数の位置a〜eが特定される。
【0048】
そしてさらに、CPU22は、特定された異種物質の存在候補位置a〜eの各位置におけるX線透過量、すなわち物質量を図5の第1のX線透過量測定工程S5においてX線透過量データ(図6(a))に基づいて求める。
【0049】
次に、図1において被測定物Sが第2光学系8による検査域に達すると、図5のステップS6において第2のX線透過量測定工程が実行される。すなわち、図1の第2X線管15bから放射される低エネルギX線が被測定物Sに照射され、被測定物Sから出る透過X線が受光素子17で受け取られ、そのときのX線透過量を反映した信号が出力部18の出力端子から出力される。こうして、図6(a)と同様の、物質量のデータとしてのX線透過量のデータが得られる。
【0050】
次に、CPU22は、ステップS4で求めたタングステンの存在候補位置a,b,c,d,eの各位置に関して、図7に示すように、それらの周囲の所定領域Dを測定対象領域に設定する。測定対象領域Dは行列状に並べられた複数の単位領域によって形成されている。個々の単位領域は図1の第2光学系8の受光素子17を形成している画素によって形成されている。つまり、測定対象領域Dは受光素子17を形成している複数の画素のうちの一部の所定数のものによって規定されている。図7に示す本実施形態では、5×5=25個の画素によって測定対象領域Dが規定されている。
【0051】
今、測定対象領域Dを構成している複数の画素を左上端から順に、a1、a2、a3、……、a23、a24、a25と名付けることにする。CPU22は、まず、画素a1におけるX線透過量(すなわち物質量)を測定によって求める。そしてさらに、ステップSS4で求めた位置aのX線透過量と、上記画素a1でのX線透過量とを図4の検量線に当てはめて、上記画素a1でのX線透過量がタングステンのX線透過量に対応しているかどうか、すなわちタングステンの検量線に対して所定許容範囲内に入っているかどうか、すなわち画素a1がタングステンを検出したかどうかをチェックする(判定工程ステップS7)。このチェックがいわゆるデュアル・エネルギ測定に基づいたチェックである。このチェックにより、もしタングステンが存在することが検出されると、CPU22は被測定物S内に異種物質であるタングステンが含まれていると判断して処理を終了する。このとき、図5のステップS4で求めた異種物質の存在候補位置が実際の存在位置として確定する。
【0052】
図4の検量線を用いた画素a1についての検査の結果、画素a1がタングステンを検出しなかった場合は、CPU22は次の順番の画素である画素a2におけるX線透過量を測定によって求め、そのX線透過量とステップS4で求めた候補位置aのX線透過量とを図4の検量線に当てはめて、上記画素a2でのX線透過量がタングステンのX線透過量に対応しているかどうか、すなわち画素a2がタングステンを検出したかどうかをチェックする(ステップS6、S7)。もし、タングステンが存在することが検出されると、CPU22は被測定物S内に異種物質であるタングステンが含まれていると判断して処理を終了する。
【0053】
以上のような処理を画素a1、a2、a3、……、a23、a24、a25に関して順々に繰り返して行い、いずれか1つの画素がタングステンを検出すれば、その時点で、被測定物S内に異種物質であるタングステンが含まれていると判断して処理を終了する。
【0054】
図7に示した実施形態では、画素a24まで処理が繰り返して行われた時点で、その画素a24がタングステンに対応したX線透過量を検出した状態を示している。本実施形態では、測定対象領域Dの中央の位置である位置a(画素で言うと画素a13)の所で図5のステップS4において異種物質を検出したのであるから、図7において画素a24がタングステンを検出したということは、タングステンが図1の第1光学系7を用いた第1検査ステージから第2光学系8を用いた第2検査ステージまで移動する間に、そのタングステンが中央の画素a13に対応する位置P3から画素a24に対応する位置P2まで位置ズレしたことを示している。
【0055】
この位置ズレは、例えば、搬送ベルト6の走行が振れていたり、被測定物Sが搬送ベルト6上で位置ズレしていたり、異種物質であるタングステンWが主物質である鉄Feの中で位置ずれしたりすることによって発生する。
【0056】
従来の検査方法では、高エネルギのX線を用いた第1検査ステージと低エネルギを用いた第2検査ステージとにおいて同じ位置にある画素同士でX線透過量を評価していた。例えば、第1検査ステージにおける画素a13と第2検査ステージにおける画素a13とでX線透過量を評価していた。従って、上記のように異種物質であるタングステンが搬送中に位置ズレを生じると、実際には異種物質が混入しているにもかかわらず、異種物質の検出ミスが生じるおそれがあった。
【0057】
これに対し、本実施形態では、第2検査ステージによって検査する測定対象領域Dを5×5=2個の画素によって形成される範囲に拡大しているので、異種物質の位置ズレがその拡大された測定対象領域Dの範囲内に収まっていさえすれば、異種物質の混入を確実に検出でき、異種物質の検出ミスの発生の程度を低く抑えることができる。
【0058】
なお、測定対象領域Dを予め広く設定しておけば、すなわち測定対象領域Dを形成する画素の数を予め多く設定しておけば、異種物質の位置ズレが大きい場合でも異種物質の存在を検出できる。しかしながら、測定対象領域Dを構成する画素の数を多くすればする程、処理のための負荷が大きくなるので、できれば測定対象領域Dは小さい領域に抑えたい。実際上は、CPU22の処理能力を考慮した上で適宜の広さの測定対象領域Dが設定される。本実施形態では、既述の通り、5×5=2個に設定した。
【0059】
以上により、図5の位置測定工程S5において求められた異種物質存在候補位置aについて設定される所定範囲の測定対象領域Dに対する異種物質検査処理が終了する。この異種物質検査処理において異種物質、すなわちタングステンWの存在が確認されなかった場合には、ステップS8へ進んで、位置測定工程S5で求められた異種物質存在候補位置a〜eのうち、まだ異種物質検査が終了していない位置が在るか否かが判定され、そのような未検査の位置があれば(ステップS8でNO)、第2のX線透過量測定工程S6へ戻って次の順番の異種物質存在候補位置(a〜eのいずれか)に対して上記と同様の異種物質検査処理を実行する。そして、いずれかの異種物質存在候補位置で異種物質であるタングステンWの存在が確認されると、主物質である鉄Feの中に異種物質であるタングステンWが混入していると判定して処理を終了する。一方、全ての異種物質存在候補位置a〜eで異種物質の存在が確認されなかった場合には、主物質である鉄Feの中に異種物質であるタングステンWが混入していないと判定して処理を終了する。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態では、図5のステップS6において、候補位置測定工程S4で検出された異種物質の存在候補位置と全く同じ位置に対してX線透過量を測定するのではなく、候補位置測定工程S4で検出された異種物質の存在候補位置の周囲に存在する測定対象領域D(図7)内の各画素でのX線透過量を検量線、すなわちデュアル・エネルギ特性線を用いた判定処理の判断材料値として用いることにした。
【0061】
この結果、図1の搬送ベルト6のズレや、被測定物S内での主物質である鉄Fe又は異種物質であるタングステンWの崩れ等に起因して、第1光学系7を用いた第1検査ステージと第2光学系8を用いた第2検査ステージとで異種物質であるタングステンに位置ズレが生じた場合でも、第1検査ステージにおけるタングステンでのX線透過量(すなわち物質量)のデータと、第2検査ステージにおけるタングステンでのX線透過量のデータとを、図4のデュアル・エネルギ特性線に正確に反映させることが可能となった。そしてこの結果、被測定物Sに位置ズレが生じる環境下でも、信頼性の高い異種物質の検査を行うことが可能となった。
【0062】
また、本実施形態では、図5のステップS4で測定された異種物質の存在候補位置a〜eの各位置に対してステップS6で個別に測定対象領域Dを設定し、個々の測定対象領域D内で低エネルギのX線を用いた測定(すなわち第2の検査ステージでの測定)を行った。
【0063】
2つの検査ステージで同じ測定位置を測定しようとする場合、一般的な手法として、予め被測定物の適所にマークを付けておき、第1検査ステージと第2検査ステージとでマークにズレが発生したときには、第2検査ステージで求めたデータをマークのズレ量に基づいて補正するという手法が考えられる。
【0064】
しかしながら、この手法を用いた場合は、マークのズレ量を検出する処理と、測定データをマークのズレ量に基づいて修正する処理との両方が必要となり、処理手順が複雑になる。これに対し、本実施形態では、第1検査ステージと第2検査ステージとで異種物質の位置ズレ量を数値として求める必要はなく、単に、第2検査ステージにおいてそれ程広くない面積の測定対象領域Dを設定して、その領域内で存在が認識された異種物質を第1検査ステージで認識された異種物質であると判定することにしただけであるので、異種物質の位置ズレを補正するための処理が格段に簡単になった。
【0065】
なお、本明細書に添付の請求項に記載した本発明と、以上に説明した実施形態との関係を説明すれば、「主物質」は鉄であり、「異種物質」はタングステンである。また、「候補位置測定手段」は、図1の第1光学系7とCPU22と検査プログラム28との組み合わせである。また、「第1のX線透過量測定手段」は図1の第1光学系7と図1のCPU22と検査プログラム28との組み合わせである。また、「第2のX線透過量測定手段」は図1の第2光学系8とCPU22と検査プログラム28との組み合わせである。また、「判定手段」はデュアル検量線を含んだ検査プログラム28とCPU22との組み合わせである。
【0066】
(変形例1)
以上の実施形態では、図5のステップS6とステップS7とにおいて次の2つの処理を行った。すなわち、
(1)測定対象領域D内の1つの画素によって第2検査ステージ、すなわち低エネルギでのX線透過量を求め、
(2)そして直ぐその後に、その低エネルギでのX線透過量と、第1検査ステージにおける異種物質候補位置での高エネルギでのX線透過量とに基づいてデュアル・エネルギ測定を行った。
【0067】
この構成に代えて次の処理を行うことができる。すなわち、
(i)ステップS6において測定対象領域D内の5×5=2個の全ての画素について、予め、第2検査ステージ(すなわち低エネルギ)でのX線透過量を求めてしまい、
(ii)その後、ステップS7において、複数の画素の1つずつの低エネルギでのX線透過量と、第1検査ステージにおける異種物質候補位置での高エネルギでのX線透過量とに基づいてデュアル・エネルギ測定を行う。
【0068】
(変形例2)
以上の実施形態では、図7に示したように、異種物質の大きさが測定対象領域Dを形成している個々の画素をほぼ同じ大きさであるものとした。具体的には、画素のピッチ(すなわち、1つの画素の大きさが0.2mmで、異種物質の大きさが略それと同じ大きさである場合を考えた。
【0069】
しかしながら、実際の検査においては、異種物質の大きさが0.2mmよりも大きい場合もあるし、0.2mmよりも小さい場合もある。異種物質の大きさが0.2mmよりも小さい場合は、1つの画素で検出できるX線透過量が小さくなるので、異種物質の存在を検出できないことがある。
【0070】
他方、異種物質の大きさが0.2mmよりも大きい場合、例えば図8に示すように異種物質が複数の画素にわたって存在する場合には、デュアル・エネルギ演算の結果、複数の画素において異種物質の存在を確認することになる。なお、測定対象領域D内の複数の画素の1つが異種物質の存在を確認したときに検査処理を終了するようにプログラムを構成した場合には、1つの画素が異種物質の一部の存在を確認した時点で検査処理が終了することになる。
【0071】
(変形例3)
図1に示した実施形態では、第1光学系7を用いた第1検査ステージで高エネルギX線によるX線透過測定を行い、第2光学系8を用いた第2検査ステージで低エネルギX線によるX線透過測定を行い、それらの測定結果を用いてデュアル・エネルギ演算を行った。この構成に代えて、第1検査ステージにおいて低エネルギX線を用いた測定を行い、第2検査ステージにおいて高エネルギX線を用いた測定を行うことができる。
【0072】
(異種物質の検査装置及び検査方法の第2の実施形態)
以上の実施形態では、図5のステップS6又はステップS7の所に描いた又は図7に描いた測定対象領域Dを、当初の設定段階において広く設定するか又は狭く設定するか、という選択肢があることを述べた。しかし、検査処理が行われている最中は測定対象領域Dの広さは一定に維持されていた。
【0073】
この構成に代えて、検査処理が行われている最中に測定対象領域Dの広さを変化させるように制御しても良い。具体的には、ステップS6において1つの測定対象領域Dを設定し、ステップS7においてその測定対象領域D内の全ての画素に対してデュアル・エネルギ演算に基づいた判定を行った際に、異種物質が検出できなかったときには、図9のステップS9、S10に示すように、測定対象領域Dの広さを所定の割合で、例えば画素サイズごとに広くする、という制御を行うことができる。この制御により、異種物質の検出ミスが発生する確率を低減できる。
【0074】
(異種物質の検査装置及び検査方法の第3の実施形態)
図10及び図11は本発明に係る異種物質の検査装置及び検査方法のさらに他の実施形態を示している。図10に示す本実施形態に係る異種物質の検査装置41が図1に示した先の実施形態に係る異種物質の検査装置1と異なる点は次の2つである。
(1)機構部42において搬送ベルト6のための駆動ローラ11の回転軸にエンコーダ9を付設したこと、
(2)制御部43内のメモリ25にインストールされた検査プログラム28が、搬送ベルト6の速度変動に対する位置ズレ補償機能を有していること、
である。エンコーダ9は、駆動ローラ11の回転角度に対応した信号、例えばパルス信号を出力する。エンコーダ9の入出力端子は入出力インターフェース34を介してCPU22に接続されている。
【0075】
具体的には、第2検査ステージ(第2光学系8を用いるステージ)において設定する測定対象領域Dの広さをエンコーダ9で検出した搬送ベルト6の周動速度に応じて調節する。この調節手法は、搬送ベルト6の周動速度を観察すれば搬送ベルト6の振れ量を予測できるという事実に基づいている。本実施形態によれば、異種物質を探して見つける精度を高めることができる。
【0076】
さらに具体的な構成を図11を用いて説明する。図11において、
(1)第1光学系7を設けた第1検査ステージと第2光学系8を設けた第2検査ステージとの間の距離、すなわちラインセンサ間距離をL1とする。
(2)時刻0から時刻Tの間の実際のベルト移動距離をL2とする。
(3)測定対象領域Dのベルト搬送方向Aに沿った長さをD とする。
(4)測定対象領域Dのベルト搬送方向Aと直角方向に沿った長さをD とする。
(5)搬送ベルト6の送り速度の設定値をVとする。
(6)搬送ベルト6の送り速度の時刻tにおける実測値をV1(t)とする。このV1(t)は、エンコーダ9による測定値である。
(7)搬送ベルト6の送り速度の時刻0〜時刻Tの間の実測平均値をV1(0:T)meanとする。
【0077】
すると、時刻Tは、T=L1/Vである。時刻0〜時刻T間の実際のベルト移動距離L2は、L2=V1(0:T)mean×Tである。搬送ベルトの送り速度ムラによる距離ズレΔL1はΔL1=L2−L1である。
【0078】
すると、測定対象領域Dの主走査方向の長さDは、
|ΔL|<0.2mmの場合、D=Dである。
|ΔL|≧0.2mmの場合、D=D+|ΔL|である。
なお、ΔL<0の場合にDはベルト送りの逆方向に拡張される。ΔL>0の場合はベルト送り方向に拡張される。
長さDCを固定値、例えば画素5個分の長さである1.0mmとしたとき、測定対象領域Dの副走査方向の長さDは、D=DCである。
【0079】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0080】
例えば、本発明を適用して検査できるのは、主物質である鉄Feに混在する異種物質であるタングステンWに限られるものではなく、その他の任意の物質の組み合わせであっても良い。なお、この場合には、異種物質の存在を判定するための検査は、図4に示したようなFeとWのデュアル・エネルギ特性線を用いた判定手法ではなく、検査対象である物質の種類に応じた適切な判定手法が採用される。
【符号の説明】
【0081】
1.異種物質の検査装置、 2.機構部、 3.制御部、 6.搬送ベルト(搬送手段)、 7.第1光学系、 8.第2光学系、 9.エンコーダ、 11.駆動ローラ、 12.従動ローラ、 13.電動モータ、 15a,第1X線管(第1電磁波放射手段)、 15b,第2X線管(第2電磁波放射手段)、 16a,第1X線検出器(第1電磁波検出手段)、 16b,第2X線検出器(第2電磁波検出手段)、 17.受光素子、 18.出力部、 21.制御装置、 25.メモリ、 31.バス、 32.表示装置、 33.入力装置、 34.入出力インターフェース、 A.搬送方向、 C.直角方向、 D.測定対象領域、 P1.位置、 P2.位置、 S.被測定物、 X1.測定軌跡線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11