特許第5881170号(P5881170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881170
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20160225BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H01L23/12 N
   H05K3/46 N
   H05K3/46 Z
   H05K3/46 B
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-218913(P2012-218913)
(22)【出願日】2012年9月29日
(65)【公開番号】特開2014-72466(P2014-72466A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】304024898
【氏名又は名称】京セラサーキットソリューションズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中川 芳洋
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−265970(JP,A)
【文献】 特開2013−41991(JP,A)
【文献】 特開平06−338687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア絶縁板と、
該コア絶縁板の上下面に積層されたビルドアップ絶縁層と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層の最上面に形成された信号用の半導体素子接続パッドと、
下面側の前記ビルドアップ絶縁層の最下面に形成された信号用の外部接続パッドと、
前記コア絶縁板における前記外部接続パッドの上方に、前記コア絶縁板を上下に貫通するように形成された信号用のスルーホール導体と、
前記コア絶縁板の上下面に前記信号用のスルーホール導体を覆うように形成されたランド導体と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層の間を、前記半導体素子接続パッドに接続されて前記外部接続パッドの上方まで延在する帯状の信号線路と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層を貫通して上面側の前記ランド導体と前記信号線路とを接続する上面側のビア導体および下面側の前記ビルドアップ絶縁層を貫通して下面側の前記ランド導体と前記外部接続パッドとを接続する下面側のビア導体と、
前記コア絶縁板の上下面に形成されており、前記ランド導体を取り囲む開口部を有する接地または電源用のベタ導体と、
前記信号用のスルーホール導体を同軸状に取り囲んで前記コア絶縁板を貫通するように形成されており、上下端が前記開口部を内包するように前記ベタ導体に接続された筒状の接地または電源用のスルーホール導体と、
を具備してなる配線基板であって、
下面側の前記開口部は前記外部接続パッドを平面視で内包する大きさであり、前記接地または電源用のスルーホール導体の径がコア絶縁板の上面側から下面側に向けて大きくなっていることを特徴とする配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するための配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を搭載するための小型の配線基板は、図5に示すように、コア絶縁板31の上下面にビルドアップ絶縁層32が複数層ずつ積層されている。コア基板31は、厚みが200〜800μm程度のガラスクロス入りの樹脂板から成り、複数のスルーホール31aが形成されている。また、ビルドアップ絶縁層は、絶縁フィラーが分散された厚みが20〜40μm程度の樹脂層から成り、複数のビアホール32aがそれぞれの層に形成されている。さら最表層のビルドアップ絶縁層32上には、ソルダーレジスト層33が被着されている。
【0003】
コア絶縁板31におけるスルーホール31aの内壁にはスルーホール導体34が形成されており、コア絶縁板31の上下面にはスルーホール導体34に電気的に接続されたコア導体層35が被着されている。コア導体層35は、ランド導体36とベタ導体37とを有している。ランド導体36はスルーホール31aと中心を略同一とする円形のパターンであり、スルーホール31aよりも大きな径をしている。ベタ導体37は、接地用や電源用の導体であり、ランド導体36を取り囲む広面積のパターンである。
【0004】
各ビルドアップ絶縁層32の表面にはビルドアップ導体層38が形成されており、各ビルドアップ絶縁層32における各ビアホール32a内にはビア導体39が充填されている。これらのビルドアップ導体層38とビア導体39とは、それぞれのビルドアップ絶縁層32毎に一体的に形成されている。またビア導体39はビアホール32a内を実質的に完全に充填している。
【0005】
上面側の最表層のビルドアップ絶縁層32の上面に形成されたビルドアップ導体層38の一部は、配線基板の上面中央部において半導体素子接続パッド40を形成している。この半導体素子接続パッド40には、半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して接続される。
【0006】
また、下面側の最表層のビルドアップ絶縁層32の上面に形成されたビルドアップ導体層38の一部は、スルーホール31aの下方において外部接続パッド41を形成している。この外部接続パッド41は、外部の電気回路基板の配線導体に半田ボールB2を介して接続される。
【0007】
各ビルドアップ絶縁層32の表面に形成されたビルドアップ導体層38には、半導体素子Sと外部の電気回路基板との間で信号を伝送するための帯状の信号線路42や、半導体素子Sに接地電位や電源電位を提供するためのベタ導体43が形成されている。
【0008】
信号線路42は、上面側のビルドアップ導体層38に形成されており、配線基板の上面中央部に形成された半導体素子接続パッド40の下方から配線基板の下面外周部に形成された外部接続パッド41の上方に延在するように配設されている。そして、この信号線路42は、その一端部が半導体素子接続パッド40に上面側のビア導体39を介して電気的に接続されている。また、信号線路42の他端部は、上面側のビア導体39およびランド導体36を介してスルーホール導体34に電気的に接続されており、さらに下面側のランド導体36およびビア導体39を介してスルーホール31aの下方に位置する外部接続パッド41に電気的に接続されている。
【0009】
上面側のベタ導体43は、信号線路42の上下のビルドアップ導体層38において、信号線路42を上下から広い幅で挟むように配置されているとともに、信号線路42と同じビルドアップ導体層38において、信号線路42の周囲を信号線路42から所定の間隔をあけて取り囲むように配置されている。
【0010】
さらに、上面側および下面側におけるベタ導体43およびベタ導体37には、信号線路42に電気的に接続されたビア導体39およびランド導体36の周囲を、これらのビア導体39およびランド導体36から所定の間隔をあけて取り囲む開口部43a、43bおよび37a、37bがそれぞれ形成されている。なお、ここではコア絶縁板31よりも下面側の開口部を開口部43a、37aとし、コア絶縁板31よりも上面側の開口部を開口部43b、37bとしている。
【0011】
ここで、スルーホール導体34およびコア導体層35およびビルドアップ導体層38およびビア導体39の一部のみを抜き出して示した部分断面斜視図を図6に示す。なお、図6おいては、上面側の最表層のビルドアップ導体層38および上面側の最表層のビア導体39を破線で示している。
【0012】
図6に示すように、信号線路42は、互いに垂直に重ねられた信号用のビア導体39Sおよび信号用のスルーホール導体34Sを介して信号用の外部接続パッド41Sに電気的に接続されている。これらの信号用のビア導体39Sおよび信号用のスルーホール導体34Sおよび信号用の外部接続パッド41Sの周囲には、ベタ導体37および43が複数層配置されている。
【0013】
これらのベタ導体37および43には、信号用のビア導体39Sおよび信号用のスルーホール導体34Sおよび信号用の外部接続パッド41Sを取り囲むようにして開口部37a、43aおよび37b、43bがそれぞれ形成されている。これらの開口部のうち、コア絶縁板31よりも下面側の開口部37aおよび43aは、信号用の外部接続パッド41Sよりも大きい直径を有している。これらの開口部37aおよび43aは、信号用の外部接続パッド41Sと下面側のベタ導体37および43との間に大きな静電容量が形成されるのを防止し、それにより信号用の半導体素子接続パッド40と外部接続パッド41Sとの間に高周波信号を低損失で伝送可能とするために設けられたものである。他方、コア絶縁板31よりも上面側の開口部37bおよび43bは、下面側の開口部37aおよび43aよりも小さな開口径をしている。上面側のベタ導体37および43は信号用の外部接続パッド41Sからの距離が遠くなる分、信号用の外部接続パッド41Sとの間に形成される静電容量が小さくなるので、上面側の開口部37bおよび43bは信号用のビア導体39Sの特性インピーダンスを考慮した小さな開口径であってもよい。
【0014】
さらに、開口部37a、43aおよび37b、43bの開口縁近傍には、下面側のベタ導体37、43同士を電気的に接続するビア導体39aおよび上面側のベタ導体37、43同士を電気的に接続するビア導体39bが配設されている。なお、ここではコア絶縁板31よりも下面側のビア導体を39aとし、コア絶縁板31よりも上面側のビア導体を39bとしている。これらのビア導体39aおよび39bは、信号用のビア導体39Sを等距離で取り囲むように多数が配置されており、信号用のビア導体39Sに対して擬似同軸構造を形成している。また、コア絶縁板31を挟んだ上下のベタ導体37同士の間は、接地または電源用のスルーホール導体34Gで接続されている。これらのスルーホール導体34Gは信号用のスルーホール導体34Sを等距離で取り囲むように配置されている。しかしながら、スルーホール導体34Gは開口部37a、37bの開口縁から離れた位置に少数設けられている。これは、コア絶縁板31がガラスクロスを含み、しかも厚いことから小さな径のスルーホール31aを密集して形成することが困難なためである。
【0015】
しかしながら、この従来の配線基板においては、信号用のスルーホール導体34Sに対してグランド用のスルーホール導体34Gが離れた位置に少数しか形成されていないため、スルーホール導体34Gにおけるリターンパスが弱いものとなり、信号の挿入損および反射損が大きくなる。したがって、信号用の半導体素子接続パッド40と信号用の外部接続パッド41Sとの間に例えば10〜20GHz程度の高周波信号を伝送させると、搭載する半導体素子Sを良好に作動させることができなくなってしまうという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−265969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の配線基板は、信号用の半導体素子接続パッドと信号用の外部接続パッドとの間に10〜20GHz程度の高周波信号を伝送させたとしても、信号の挿入損や反射損が小さく、搭載する半導体素子を良好に作動させることが可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の配線基板は、
コア絶縁板と、
該コア絶縁板の上下面に積層されたビルドアップ絶縁層と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層の最上面に形成された信号用の半導体素子接続パッドと、
下面側の前記ビルドアップ絶縁層の最下面に形成された信号用の外部接続パッドと、
前記コア絶縁板における前記外部接続パッドの上方に、前記コア絶縁板を上下に貫通するように形成された信号用のスルーホール導体と、
前記コア絶縁板の上下面に前記信号用のスルーホール導体を覆うように形成されたランド導体と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層の間を、前記半導体素子接続パッドに接続されて前記外部接続パッドの上方まで延在する帯状の信号線路と、
上面側の前記ビルドアップ絶縁層を貫通して上面側の前記ランド導体と前記信号線路とを接続する上面側のビア導体および下面側の前記ビルドアップ絶縁層を貫通して下面側の前記ランド導体と前記外部接続パッドとを接続する下面側のビア導体と、
前記コア絶縁板の上下面に形成されており、前記ランド導体を取り囲む開口部を有する接地または電源用のベタ導体と、
前記信号用のスルーホール導体を同軸状に取り囲んで前記コア絶縁板を貫通するように形成されており、上下端が前記開口部を内包するように前記ベタ導体に接続された筒状の接地または電源用のスルーホール導体と、
を具備してなる配線基板であって、
下面側の前記開口部は前記外部接続パッドを平面視で内包する大きさであり、前記接地または電源用のスルーホール導体の径がコア絶縁板の上面側から下面側に向けて大きくなっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の配線基板によれば、接地または電源用のスルーホール導体は、信号用のスルーホール導体を同軸状に取り囲んでいることから、完全な同軸構造となり、リターンパスが強いものとなる。さらに、接地または電源用のスルーホール導体は、その径がコア絶縁板の上面側から下面側に向けて大きくなっていることから、信号用の外部接続パッドとの間に形成される静電容量を小さいものとしつつインピーダンスの整合を図ることができる。したがって、信号用の半導体素子接続パッドと信号用の外部接続パッドとの間に10〜20GHz程度の高周波信号を伝送させたとしても、信号の挿入損や反射損が小さく、搭載する半導体素子を良好に作動させることが可能な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1に示す配線基板のスルーホール導体およびコア導体層およびビルドアップ導体層およびビア導体の一部のみを抜き出して示した部分断面斜視図である。
図3図3は、本発明による解析モデルを用いて挿入損を解析した結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明による解析モデルを用いて反射損を解析した結果を示すグラフである。
図5図5は、従来の配線基板を示す概略断面図である。
図6図6は、図5に示す配線基板のスルーホール導体およびコア導体層およびビルドアップ導体層およびビア導体の一部のみを抜き出して示した部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の配線基板における実施形態の一例を説明する。図1は、本例の配線基板を示す概略断面図である。図1に示すように、本例の配線基板は、コア絶縁板1の上下面にビルドアップ絶縁層2が複数層ずつ積層されている。さら最表層のビルドアップ絶縁層2上には、ソルダーレジスト層3が被着されている。
【0022】
コア絶縁板1は、例えばガラス繊維束を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて熱硬化させた平板状である。コア絶縁板1の厚みは、200〜800μm程度であり、その上面から下面にかけて複数のスルーホール1aが形成されている。スルーホール1aの直径は100〜200μm程度であり、その内壁にはスルーホール導体4aが被着されている。スルーホール導体4aで囲まれたスルーホール1aの内部は樹脂14により充填されている。さらに、コア絶縁板1には、一部のスルーホール1aを同軸状に取り囲むようにしてスルーホール1bが形成されている。スルーホール1bは、その上端から下端に向けて径が大きくなる円錐台形状であり、上端の直径が350〜1000μm程度、下端の直径が550〜2500μm程度である。このスルーホール1bの内壁にはスルーホール導体4bが被着されている。スルーホール導体4aと4bとの間は樹脂15により充填されている。スルーホール導体4a、4bの厚みは10〜30μm程度である。さらに、コア絶縁板1の上下面には、スルーホール導体4aや4bに電気的に接続されたコア導体層5が被着されている。コア導体層5の厚みは10〜50μm程度である。
【0023】
これらのスルーホール1a、1bおよびスルーホール導体4a、4bならびにコア導体層5は、以下のようにして形成される。まず、コア絶縁板1用の平板の上下面に銅箔が張り付けられた両面銅張り板を準備する。銅箔の厚みは12〜18μm程度とする。次に、この両面銅張り板にスルーホール1bを形成する。スルーホール1bの形成は、スルーホール1bの形成位置の銅箔を予めエッチング除去した後、両面銅張り板の下面側からブラスト加工することにより行なわれる。ブラスト加工では、加工開始面側から徐々に研削されていくので、下面側の径が大きく上面側の径が小さな円錐台状のスルーホール1bを形成することができる。あるいは、円錐形状のドリルビットを用いて両面銅張り板の下面側からドリル加工することによってスルーホール1bを形成してもよい。次に、スルーホール1bの内壁に銅めっき層から成るスルーホール導体4bを被着する。銅めっき層の被着には無電解めっき法および電解めっき法を用いる。次に、スルーホール導体4bで囲まれたスルーホール1bの内部に樹脂15を充填する。樹脂15の充填には、ペースト状の熱硬化性樹脂をスルーホール1b内に充填した後、熱硬化させる方法が採用される。熱硬化した後は、樹脂15の上下面を平坦に研磨する。研磨には、ロール研磨機やベルト研磨機を用いればよい。次に、スルーホール1aを形成する。スルーホール1aの形成には、ドリル加工を用いる。あるいはレーザ加工やブラスト加工を用いてもよい。次に、スルーホール1aの内壁にスルーホール導体4aを被着した後、スルーホール導体4aで囲まれたスルーホール1a内部に樹脂14を充填するとともに樹脂14の上下端を平坦に研磨する。スルーホール導体4aの被着および樹脂14の形成・研磨は、スルーホール導体4bおよび樹脂15の場合と同様にして行なう。最後に樹脂14および15を含む両面銅張り板の上下面に銅めっき層を被着するとともに所定のパターンにエッチングすることによってコア導体層5を形成する。
【0024】
コア導体層5には、ランド導体6とベタ導体7とが形成されている。ランド導体6はスルーホール1aと中心を略同一とする円形のパターンであり、スルーホール1aよりも20〜50μm程度大きな半径をしている。ベタ導体7はランド導体6を取り囲む広面積のパターンである。
【0025】
また、ビルドアップ絶縁層2は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化珪素粉末等の無機絶縁物フィラーを30〜70質量%程度分散させた絶縁材料から成る。各ビルドアップ絶縁層2には、その上面から下面にかけて複数のビアホール2aが形成されている。各ビルドアップ絶縁層2の厚みは20〜60μm程度である。ビアホール2aの直径は50〜100μm程度である。このようなビルドアップ絶縁層2は、厚みが20〜60μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂から成る絶縁フィルムをコア絶縁板1の上下面に貼着し、それを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール2aを穿孔する工程を順次繰り返すことにより形成される。
【0026】
各ビルドアップ絶縁層2の表面には、ビルドアップ導体層8が形成されている。また、各ビルドアップ絶縁層2における各ビアホール2a内には、ビア導体9が充填されている。これらのビルドアップ導体層8とビア導体9とは、それぞれのビルドアップ絶縁層2毎に一体的に形成されている。各ビルドアップ絶縁層2上におけるビルドアップ導体層8の厚みは、10〜30μm程度である。またビア導体9は、ビアホール2a内を実質的に完全に充填している。なお、各ビルドアップ絶縁層2の表面に被着されたビルドアップ導体層8およびビアホール2a内に充填されたビア導体9は、各ビルドアップ絶縁層2を形成する毎に各ビルドアップ絶縁層2の表面およびビアホール2a内に無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成る銅めっき層を周知のセミアディティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0027】
上面側の最表層のビルドアップ絶縁層2の上面に形成されたビルドアップ導体層8の一部は、配線基板の上面中央部において半導体素子接続パッド10を形成している。半導体素子接続パッド10は、直径が50〜150μm程度の円形である。この半導体素子接続パッド10には、半導体素子Sの電極が半田バンプB1を介して接続される。
【0028】
また、下面側の最表層のビルドアップ絶縁層2の上面に形成されたビルドアップ導体層8の一部は、スルーホール1aの下方において外部接続パッド11を形成している。外部接続パッド11は、直径が500〜1000μm程度の円形である。この外部接続パッド11は、外部の電気回路基板の配線導体に半田ボールB2を介して接続される。
【0029】
各ビルドアップ絶縁層2の表面に形成されたビルドアップ導体層8には、半導体素子Sと外部の電気回路基板との間で信号を伝送するための帯状の信号線路12や、半導体素子Sに接地電位や電源電位を提供するためのベタ導体13が形成されている。
【0030】
信号線路12は、上面側のビルドアップ導体層8に形成されており、配線基板の上面中央部に形成された半導体素子接続パッド10の下方から配線基板の下面外周部に形成された外部接続パッド11の上方に延在するように配設されている。信号線路12の幅は、10〜30μm程度である。そして、この信号線路12は、その一端部が半導体素子接続パッド10に上面側のビア導体9を介して電気的に接続されている。また、信号線路12の他端部は、上面側のビア導体9およびランド導体6を介してスルーホール導体4に電気的に接続されており、さらに下面側のランド導体6およびビア導体9を介してスルーホール1aの下方に位置する外部接続パッド11に電気的に接続されている。
【0031】
上面側のベタ導体13は、信号線路12の上下のビルドアップ導体層8において、信号線路12を上下から広い幅で挟むように配置されているとともに、信号線路12と同じビルドアップ導体層8において、信号線路12の周囲を信号線路12から所定の間隔をあけて取り囲むように配置されている。
【0032】
さらに、上面側および下面側におけるベタ導体13およびベタ導体7には、信号線路12に電気的に接続されたビア導体9およびランド導体6の周囲を、これらのビア導体9およびランド導体6から所定の間隔をあけて取り囲む開口部13a、13bおよび7a、7bがそれぞれ形成されている。なお、ここではコア絶縁板1よりも下面側の開口部を開口部13a、7aとし、コア絶縁板1よりも上面側の開口部を開口部13b、7bとしている。
【0033】
ここで、スルーホール導体4a、4bおよびコア導体層5およびビルドアップ導体層8およびビア導体9の一部のみを抜き出して示した部分断面斜視図を図2に示す。なお、図2おいては、上面側の最表層のビルドアップ導体層8および上面側の最表層のビア導体9を破線で示している。
【0034】
図2に示すように、信号線路2は、互いに垂直に重ねられた信号用のビア導体9Sおよび信号用のスルーホール導体4aSを介して信号用の外部接続パッド11Sに電気的に接続されている。これらの信号用のビア導体9Sおよび信号用のスルーホール導体4aSおよび信号用の外部接続パッド11Sの周囲には、ベタ導体7および13が複数層配置されている。
【0035】
これらのベタ導体7および13には、信号用のビア導体9Sおよび信号用のスルーホール導体4aSおよび信号用の外部接続パッド11Sを取り囲むようにして開口部7a、13aおよび7b、13bがそれぞれ形成されている。これらの開口部のうち、コア絶縁板1よりも下面側の開口部7aおよび13aは、信号用の外部接続パッド11Sよりも200〜400μm程度大きい直径を有している。これらの開口部7aおよび13aは、信号用の外部接続パッド11Sと下面側のベタ導体7および13との間に大きな静電容量が形成されるのを防止し、それにより信号用の半導体素子接続パッド10と外部接続パッド11Sとの間に高周波信号を低損失で伝送可能とするために設けられたものである。他方、コア絶縁板1よりも上面側の開口部7bおよび13bは、下面側の開口部7aおよび13aよりも小さな開口径をしている。上面側のベタ導体7および13は信号用の外部接続パッド11Sからの距離が遠くなる分、信号用の外部接続パッド11Sとの間に形成される静電容量が小さくなるので、上面側の開口部7bおよび13bは信号用のビア導体9の特性インピーダンスを考慮して下面側の開口部7a、13aよりも50〜500μm程度小さな開口径となっている。
【0036】
さらに、開口部7a、13aおよび7b、13bの開口縁近傍には、下面側のベタ導体7、13同士を電気的に接続するビア導体9aおよび上面側のベタ導体7、13同士を電気的に接続するビア導体9bが配設されている。なお、ここではコア絶縁板1よりも下面側のビア導体を9aとし、コア絶縁板1よりも上面側のビア導体を9bとしている。これらのビア導体9aおよび9bは、信号用のビア導体9Sを等距離で取り囲むように多数が配置されており、信号用のビア導体9Sに対して擬似同軸構造を形成している。
【0037】
また、コア基板1を挟んだ上下のベタ導体7同士の間は、信号用のスルーホール導体4aSを同軸状に取り囲む円錐台筒状の接地または電源用のスルーホール導体4bで接続されている。接地または電源用のスルーホール導体4bは、信号用のスルーホール導体4aSを同軸状に取り囲んでいることから、完全な同軸構造となり、スルーホール導体4bにおけるリターンパスが強いものとなる。さらに、接地または電源用のスルーホール導体4bは、その径がコア絶縁板1の上面側から下面側に向けて大きくなる円錐台筒状であることから、信号用の外部接続パッド11Sとスルーホール導体4bとの間に形成される静電容量を小さいものとしつつインピーダンスの整合を図ることができる。したがって、信号用の半導体素子接続パッド10と信号用の外部接続パッド11Sとの間に10〜20GHzの高周波信号を伝送させたとしても、信号の挿入損や反射損が小さく、搭載する半導体素子を良好に作動させることが可能な配線基板を提供することができる。なお、接地または電源用のスルーホール導体4bの下端の直径は、信号用の外部接続パッド11Sの1.1〜2.5倍の範囲であることが好ましく、上端の直径は、ランド導体6の3〜8倍の範囲であることが好ましい。
【0038】
ここで、本発明者が図2に対応する本発明による解析モデルと、図6に対応する従来技術による解析モデルとを用いて電磁界シミュレータにより挿入損を解析した結果を図3に、反射損を解析した結果を図4に示す。本発明による解析モデルでは、図3に示すように、10〜20GHzにおける信号の減衰が従来技術による解析モデルよりも小さいとともに、図4に示すように、10〜20GHzにおける信号の反射が従来技術による解析モデルよりも小さいことがわかる。したがって、本発明の配線基板によれば、10〜20GHzの高周波信号をより良好に伝送することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 コア絶縁板
2 ビルドアップ絶縁層
4aS 信号用のスルーホール導体
4b 接地または電源用のスルーホール導体
6 ランド導体
7 接地または電源用のベタ導体
9 ビア導体
10 半導体素子接続パッド
11S 信号用の外部接続パッド
12 信号線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6