(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881175
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】水棲動物用飼料添加剤としての天然物質の使用
(51)【国際特許分類】
A23K 50/80 20160101AFI20160225BHJP
A23K 20/00 20160101ALI20160225BHJP
【FI】
A23K1/18 102A
A23K1/18 102B
A23K1/16 304C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-520052(P2012-520052)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2012-533289(P2012-533289A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2010060325
(87)【国際公開番号】WO2011006993
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年6月7日
(31)【優先権主張番号】09165789.0
(32)【優先日】2009年7月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】フレネール, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーラック−トリシェ, ビビアーニ
(72)【発明者】
【氏名】ナーベル, フィリップ
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−110951(JP,A)
【文献】
特開2009−011320(JP,A)
【文献】
特開平02−207758(JP,A)
【文献】
特表2009−525726(JP,A)
【文献】
特開平05−176689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 1/00 − 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚において病原性微生物によって引き起こされる疾病を治療および予防するための、α−ピネンおよび桂皮アルデヒドの使用。
【請求項2】
病原性微生物によって引き起こされる疾病による魚の死亡率を低下させるための、飼料組成物中におけるα−ピネンおよび桂皮アルデヒドの使用。
【請求項3】
前記飼料組成物が、さらにジヒドロオイゲノールおよびメタクレゾールを含有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記魚が、サケ、マス、タイ類およびバスから選択される冷水魚である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記魚が、コイ、イズミダイおよびナマズから選択される温水魚である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記飼料組成物が、α−ピネン、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、およびメタクレゾールをそれぞれ飼料1Kgあたり10mg〜5gの濃度で含有する、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
前記飼料組成物が、α−ピネン、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、およびメタクレゾールをそれぞれ飼料1Kgあたり0.1g〜1gの濃度で含有する、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
主成分としてα−ピネンおよび桂皮アルデヒドを含んでなる、魚のための飼料組成物またはプレミックス組成物、または飼料添加剤。
【請求項9】
主成分としてα−ピネンおよび桂皮アルデヒドを含んでなる天然抽出物である、請求項8に記載の飼料添加剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、魚やエビをはじめとする水棲動物のための、特に例えばサケ、タイ類、バスなどの冷水魚のための、そして例えばコイ、イズミダイ、ナマズなどの温水魚のための飼料の製造における、α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンからなる群から選択される天然活性物質の使用に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、腸内微生物叢を調整することにより、および/または病原性微生物によって引き起こされる感染症から動物を保護することにより、魚の飼料転換率および/または日周体重増加を改善するための、死亡率を低下させるための、少なくとも2種類の上で定義される物質の使用に関する。
【0003】
さらに本発明は、活性成分として、α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンからなる群から選択される少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種または4種の活性化合物を含んでなる、新規魚飼料組成物に関する。
【0004】
飼料または飼料組成物という用語は、動物による摂取に適し、またはそれが意図される、あらゆる化合物、調製品、混合物、または組成物を意味する。
【0005】
水産養殖における重要な一要素は、回転率である。回転率は、いかに迅速に魚が水揚げできる大きさに成長するかによって定まる。例として大西洋サケをスモルト(大西洋サケを淡水から海水に最初に移動可能となる生理的段階)から水揚げできる大きさに飼育するのには、12〜18ヶ月かかる。迅速な回転は、いくつかの肯定的結果を有する。第一にそれはキャッシュフローを助ける。第二にそれはリスク管理を改善する。特に高い死亡率は、養魚業者にとって相当なリスクである。
【0006】
死亡率は不平衡な微生物叢および/または病原菌感染症によって増大することが一般に知られている。魚病は一般的であり、発生する可能性は成育期間が長くなると高くなる。また例えば漁網を交換するとき、または悪天候による魚囲いの損壊などの偶発事件によって魚が逃げ出すリスクもある。
【0007】
その他の家畜では、抗生物質およびワクチンを使用して病気の広がりを防ぐことが良く知られている。病気が急速に広がり、病魚はほとんど摂餌しないという事実のために、また食べられなかった薬入りの飼料が環境に悪影響を与えるために、水産養殖、少なくとも冷水養殖では、抗生物質はそれほど使用されていない。利用できる場合、ワクチンが広く使用されているが、それらは全ての病気に対して開発されてはいない。
【0008】
合成薬剤に代わるものとして、動物飼料中における植物抽出物および精油の使用が文献に記載されている。例えば国際公開第2004/091307号パンフレットは、孵化後のアルテミアの生存率を増大させるための飼料におけるポリフェノールおよびその他の天然活性種の使用について記載している。しかし国際公開第2004/091307号パンフレットは、使用する化合物選択に関する記述はない。さらに上の開示例における死亡率を低下させるためのポリフェノールの使用は、孵化時のみに有用である。
【0009】
したがって水産養殖において、腸内レベルでの抗菌活性をはじめとするあらゆる予防的手段により病気の広がりを予防し、それによって死亡率を低下させる必要性が残る。
【0010】
本出願の発明者らは、上で定義された物質が、例えば飼料転換率(FCR)および/または体重増加の改善するために、および/または腸管内菌叢調節するために、魚飼料中で使用されることに対して優れた可能性を有していることを意外にも発見した。さらに発明者らは、下文において化合物とも称されるこれらの物質が、死亡率低下をもたらす抗菌活性もまた有することを意外にも発見した。本発明の活性化合物の特有の選択は、いくつかの異なる病原体によって引き起こされるいくつかの魚病の防除を初めて可能にする。
【0011】
したがって第1の特定実施態様では、本発明は、腸内微生物叢を調節することによって、および/または病原性微生物によって引き起こされる病気を予防することによって、飼料転換率(FCR)および/または体重増加を改善するための、および/または死亡率を低下させるための、魚飼料中におけるα−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンからなる群から選択される、少なくとも2種の活性化合物を使用する方法に関する。例えば本発明の選択される化合物(例えば桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、およびメタクレゾールは、特にサケ類に見られる高死亡率を引き起こす病気である、レッドマウス病(ERM)を引き起こす病原性微生物であるレッドマウス菌(Yersinia ruckeri)に対し、優れた増殖阻害効果を示すことが示されている。
【0012】
代案の実施態様では、α−ピネンおよび/またはα−テルピネオールおよび/または桂皮アルデヒドおよび/またはジヒドロオイゲノールおよび/またはオイゲノールおよび/またはメタクレゾールおよび/またはテルピノレンを使用して、動物飼料消化吸収率を改善し、および/または免疫系機能を支援することで動物健康を維持する。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、腸管内微生物叢を調節することにより、および/または病原性微生物によって引き起こされる病気を予防することにより、飼料転換率(FCR)および/または体重増加を改善するために、および/または死亡率を低下させるために、魚飼料中で、α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンからなる群から選択される少なくとも3種の活性化合物を使用する方法に関する。
【0014】
好ましい実施態様では、α−ピネンおよび桂皮アルデヒドを使用して、動物飼料消化吸収率改善し、および/または免疫系機能を支援することにより、動物健康を維持する。
【0015】
FCRは、本発明に従った少なくとも2種の化合物の混合物が適切な飼料1Kgあたり濃度で動物飼料に添加される第1の処置、および化合物が動物飼料に添加されない第2の処置(対照)を含んでなる魚成長試験に基づいて判定されてもよい。
【0016】
一般に知られているように、改善されたFCRは対照FCRよりも低い。特定の実施態様ではFCRは、対照と比較して少なくとも1.0%、好ましくは少なくとも1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、または少なくとも2.5%改善される(すなわち低下する)。
【0017】
「腸」という用語は、本明細書での用法では胃腸または消化管(digestive tract)(消化管(alimentary canal)とも称される)を意味し、食物を取り込んで消化し、エネルギーおよび栄養素を抽出して残渣を排泄する、多細胞動物内の臓器系を指す。
【0018】
腸内「微生物叢」という用語は、本明細書での用法では、腸内に生息し、適切な消化を助けることで健康を維持する天然微生物培養物を指す。
【0019】
腸管内微生物叢に関連して本明細書で使用される「調節する(modulate)」という用語は、一般に、健康で正常に機能している動物において、機能またはその状態を変化させ、操作し、変更し、または調節すること、すなわち非治療的な使用を意味する。
【0020】
「免疫系機能を支援する」という用語は、本明細書での用法では化合物によって得られる免疫刺激効果を指す。
【0021】
「死亡率」という用語は、本明細書での用法では、最初に池に入れた動物数と対比した成長期終わりの生存動物の比率を指す。それは未処置群中の動物に40〜80%の死亡率を誘発する目的で、特定の魚病原体によってチャレンジされる2群の魚を含んでなる、魚チャレンジ試験に基づいて判定してもよい。しかし本発明に従った少なくとも2種の化合物の混合物を適切な飼料1Kgあたり濃度で給餌されたチャレンジ群では、未処置群と比較して死亡率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または少なくとも50%低下した。
【0022】
特に本明細書の発明者らは、本発明に従った化合物およびそれらの混合物が、いくつかの冷水および温水魚の病原性微生物に対して効果的であることを意外にも発見した。α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンは、ビブリオ症を引き起こすエビ病原体であるビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)に対する阻害効果を示すことが示された。
【0023】
α−ピネン、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、リモネン、およびメタクレゾールは、フルンケル症として知られる病気を引き起こす病原体であるアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)に対する阻害効果を示すことが示された。
【0024】
α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、メタクレゾール、およびテルピノレンは、魚の全身感染を引き起こすエドワードセリア・タルダ(Edwardsellia tarda)に対する阻害効果を示すことが示された。
【0025】
α−ピネン、α−テルピネオール、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、およびテルピノレンは、夏期に水温が16℃を超えて上昇した際に、多数の魚種に影響を及ぼし、海水および淡水水産養殖の双方で重要な経済的損失を引き起こす救急な病気であるラクトコッカス症の原因菌である、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)に対する阻害効果を示すことが示された。
【0026】
桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、オイゲノール、およびメタクレゾールは、特にサケ類に見られる病気であるレッドマウス病(ERM)を引き起こす病原性微生物であるレッドマウス菌(Yersinia ruckeri)の成長に対する優れた阻害効果を示す。桂皮アルデヒドおよびメタクレゾールは、以下に対する阻害効果を示すことが示された。
(i)大西洋サケの冷水ビブリオ症の病原体である好冷細菌である(ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)。
(ii)潰瘍および出血性の敗血症を引き起こすアエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)。この病原体は、塩素のような従来の単純な抗菌剤に対して非常に抵抗性がある。
(iii)日本のブリおよびキジハタ、米国のストライプドバスおよびホワイトパーチなどの経済的に重要な海洋魚の養殖産業に多大な損失を引き起こす病原体であり、以前はパスツレラ・ピシシーダ(Pasteurella piscicida)と称された、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)。
(iv)海洋魚において高病原性であり、高度な致死性で、発生すると30〜50%の死亡率が伴うこともある、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)。
【0027】
(i)ピシリケッチア症またはサケ科リケッチア性敗血症(SRS)の病原体であるピスシリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、
(ii)「冬期潰瘍(winter ulcer)」と称される病気の病因であり、最近モリテラ・ビスコサ(Moritella viscosa)と改称されたビブリオ・ビスコサス(Vibrio viscosus)、
(iii)最も蔓延している魚の原虫寄生体の一つである白点病(寄生生物)、(iv)商業的に養殖されたクルマエビに影響を及ぼす病気である、発光ビブリオ症の原因であるビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)
などのその他の水棲病原体もまた、本発明に記載される化合物の混合物によって阻害される。
【0028】
第2の態様では、本発明は、α−ピネン(CAS99−86−5)、α−テルピネオール(CAS98−55−5)、桂皮アルデヒド(CAS14371〜10−9/104〜55−2)、ジヒドロオイゲノール(CAS2785−87−7)、オイゲノール(CAS97−53−0)、メタクレゾール(CAS108−39−4)、およびテルピノレン(CAS554〜61−0)からなる群から選択される少なくとも2種の活性化合物を含んでなる魚飼料組成物を提供する。本発明に従った化合物は市販され、または先行技術で良く知られている工程および方法を使用して、当業者によって容易に調製され得る。
【0029】
魚飼料組成物として、本発明の化合物は、天然に入手できる抽出物または抽出物混合物の形態で、または天然物質の形態で、単独で、またはそれらの混合物中で使用し得る。
【0030】
「抽出物」という用語は、本明細書での用法では、溶剤抽出(「抽出油」としてもまた知られている)、水蒸気蒸留(「精油」としてもまた知られている)または当業者に知られているその他の方法によって得られる組成物を含む。適切な抽出溶剤としては、エタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0031】
「天然」という用語は、この文脈では、自然に生じて、天然物からまたは合成を通じて得られる化合物からなる物質と理解される。
【0032】
活性化合物または天然物質または抽出物には、さらなる成分が少量添加されてもよい。このような成分の例としては、カプサイシン、タンニン、ピペリン、トリメチルアミン、3,4キシレノール、フルフリルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
上で特定される少なくとも2種の化合物の混合物が好ましい場合、桂皮アルデヒドおよび/またはメタクレゾールが混合物の主要構成要素として使用される。適切には混合物は、10〜90重量%のメタクレゾールおよび/または桂皮アルデヒド、1〜50重量%のα−ピネン、1〜50重量%のジヒドロオイゲノールを含有し、量は前記構成要素の総量に対して計算される。これらの活性成分の総量は広い制限内で変動してもよいが、魚飼料の乾燥重量に基づく計算で、10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmが最終的に魚飼料中で使用される。
【0034】
上で特定される少なくとも2種の化合物の最も好ましい混合物は、混合物の主要構成要素として桂皮アルデヒドおよびα−ピネンを含んでなる。適切には混合物は、30〜70重量%のα−ピネン、30〜70重量%桂皮アルデヒド、1〜20重量%のメタクレゾール、1〜20重量%のジヒドロオイゲノールを含有し、量は前記構成要素の総量に基づいて計算される。これらの活性成分の総量は、広い制限内で変動してもよいが、魚飼料の乾燥重量に基づく計算で、10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmが最終的に魚飼料中で使用される。
【0035】
上で定義される全ての化合物(活性化合物および追加的成分)は、乳化界面活性剤と組み合わせて使用されてもよい。乳化剤は、有利には、例えばエステル化リシノール酸などの脂肪酸ポリグリセロールエステル、または脂肪酸プロピレングリコールエステル、糖エステルまたは糖グリセリド、ポリエチレングリコール、レシチンなどのかなり親水性のものから選択され得る。
【0036】
本発明の好ましい実施態様では、活性化合の混合物は、20重量%の桂皮アルデヒド、20重量%のメタクレゾール、20重量%のジヒドロオイゲノール、20重量%のα−ピネン、3重量%のトリメチルアミン、1.8重量%のピペリンおよび4重量%のフルフリルアルコールを含有してもよい。本発明の別の好ましい実施態様では、活性化合物の混合物は、40〜60重量%のα−ピネン、40〜60重量%の桂皮アルデヒドを含有し、1〜5重量%のトリメチルアミン、1〜5%のピペリン、および3〜8重量%のフルフリルアルコールをさらに含有してもよい。
【0037】
活性化合物を含有する魚飼料組成物の魚飼料への組み込みは、実施例1に記載されるように実施してもよい。次に活性化合物の混合物を油として直接調製し、次にそれを実施例1に記載されるように油と混合して、飼料ペレット上にスプレーする。
【0038】
活性化合物を含有する魚飼料組成物の魚飼料への組み込みは、代案としては活性成分とその他の適切な添加剤のプレミックスを調製することにより実施してもよい。このようなプレミックスは、2〜10重量%の活性混合物または天然物質または抽出物、0〜40重量%の香味料などのその他の従来の添加剤、および50〜98重量%のあらゆる従来の吸収担体を含んでなってもよい。
【0039】
担体は、例えば40〜50重量%の木質繊維、8〜10重量%のステアリン、4〜5重量%のウコン粉末、4〜5重量%のローズマリー粉末、22〜28重量%の石灰石、1〜3重量%のアラビアガムなどのガム、5〜50重量%の糖および/またはデンプンおよび5〜15重量%の水を含有してもよい。
【0040】
次にこのプレミックスを例えばビタミンCなどのビタミン、無機塩類、および例えばヌクレオチドとグルカンとその他の腸管内微生物叢調節因子とを含有する酵母抽出物などのその他の飼料添加剤成分に混合し、次に最後に飼料が10〜5000ppm、好ましくは100〜1000ppmまたは100〜500ppmの本発明に従った活性成分を含有するような量で、飼料に添加する。さらに本発明の組成物は、好ましくはヌクレオチドおよびグルカンを含有する酵母抽出物と共に使用される。
【0041】
さらに任意の飼料添加剤成分は、例えばβ−カロテン、アスタキサンチン、およびルテインなどのカロテノイドのような着色剤;芳香化合物;安定剤;抗菌性ペプチド;多価不飽和脂肪酸;および/またはフィターゼ(EC3.1.3.8または3.1.3.26)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)、ガラクタナーゼ(EC3.2.1.89)、α−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.22)、プロテアーゼ(EC3.4.)、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)、ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)、lysoホスホリパーゼ(EC3.1.1.5)、ホスホリパーゼC(EC3.1.4.3)、ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4)、例えばα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)などのアミラーゼ、および/またはβ−グルカナーゼ(EC3.2.1.4またはEC3.2.1.6)から選択される少なくとも1つの酵素である。
【0042】
多価不飽和脂肪酸の例は、アラキドン酸、ドコソヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、およびγ−リノール酸などのC18、C20およびC22多価不飽和脂肪酸である。
【0043】
本明細書に記載される魚飼料は、20〜60重量%のタンパク質、および1〜45重量%の水分および脂質の近似組成を有する。
【0044】
いくつかの特定例では、魚飼料は以下の原料の1つ以上を含んでなる。
−タンパク質、炭水化物、および脂質(例えば魚粉、魚油、血粉、羽毛粉、家禽肉粉、鶏肉粉および/またはその他の食肉処理廃棄物から製造されるその他の各種粉)、
−動物性脂肪(例えば家禽油)、
−植物性ミール(例えばダイズミール、ルピナスミール、ピーミール、ビーンミール、ナタネミールおよび/またはヒマワリミール)、
−植物油(例えばナタネ油、ダイズ油)
−グルテン(例えば小麦グルテンまたはコーングルテン)、および
−添加アミノ酸(例えばリジン)。
【0045】
「魚飼料」という用語は、本明細書での用法では、本発明に従った魚飼料組成物および上述の構成要素を含む。典型的に、魚飼料は構成要素として魚粉を含む。適切には魚飼料は、フレークまたはペレット、例えば押し出しペレットの形態である。
【0046】
第3の態様では、本発明は、水棲動物のための飼料組成物、および魚に給餌するためのこの組成物の使用に関する。飼料は、特に大西洋サケ(Salmo salar)をはじめとするサケ類;その他のサケの種およびマス;およびタラ、スズキ、タイ、およびウナギなどの非サケ類に給餌するのに適する。しかしそれは例えばターボット、オヒョウ、ハマチ、およびマグロなどの全種の魚に給餌し得る。
【0047】
本明細書で開示される特定の実施態様は、本発明のいくつかの態様の例証を意図するので、本明細書に記載され特許請求される本発明は、これらの実施態様によって範囲を限定されない。あらゆる同等な実施態様は、本発明の範囲内であることが意図される。実際、当業者には前述の説明から、本明細書に示され記載されるものに加えて、本発明の様々な修正が明らかになるであろう。このような修正もまた、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0048】
[実施例1:圧搾魚飼料の調製]
主原料を粉砕し混合する。次に微量成分を添加してミキサーに入れ、水を添加して均質ミックスを調節し、プレコンディショナー内で蒸して塊にする。これによりデンプン画分(つなぎ構成要素)の調理過程が始まる。塊をペレットミルに供給する。塊をミルのダイに押し入れて、ストリングをダイの外側でペレットに切断する。水分含量は低く、飼料の乾燥は必要ない。
【0049】
次に本発明に従った魚飼料組成物を含む追加的油をペレット表面にスプレーするが、ペレットがかなり小型であるため、総脂質含量が24%を超えることは希である。添加される油は、魚油;または例えばナタネ油またはダイズ油などの植物油;または植物油混合物;または魚油および植物油混合物であってもよい。油のコーティング後、ペレットを冷却装置内で冷却して袋詰めする。最終圧搾魚飼料は、10〜5000ppmの本発明に記載される組成物を含有する。
【0050】
[実施例2:押し出し魚飼料の調製方法]
主原料を粉砕し混合する。本発明に従った魚飼料組成物を含む微量成分をミキサーに入れる。水を添加して均質ミックスを調節し、プレコンディショナー内で蒸して塊にする。追加的油をこの段階で塊に添加してもよい。これによりデンプン画分(つなぎ構成要素)の調理過程が始まる。塊を押し出し機に供給する。押し出し機は、一軸スクリューまたは二軸スクリュータイプであってもよい。押し出し機内の回転運動のために、塊はさらに混合される。追加的な油、水、および蒸気を押し出し機内の塊に添加してもよい。押し出し機終端では、塊の温度は100℃を超え、圧力は環境気圧を超える。塊を押し出し機のダイプレート開口部に押し込んで通過させる。温度および圧力から解放されるため、いくらかの水分は即座に蒸発し(フラッシュオフ)、押し出し塊は多孔性になる。回転ナイフによってストリングをペレットに切断する。含水量はかなり高く(18〜28%)、したがってペレットを即座に乾燥機内でおよそ10%含水量に乾燥させる。
【0051】
乾燥機の後に、飼料表面にスプレーすることで、または飼料を油に浸すことで、飼料により多くの油を添加してもよい。多孔性飼料ペレットがより多くの油を吸収するように、空気圧が大気圧よりも低い密封容器内で飼料に油を添加することが有利である(真空コーティング)。この方法で、40%を超える脂質を含有する飼料を製造してもよい。塗布機の後、飼料を冷却して袋詰めする。油は、上で説明した工程のいくつかの箇所で添加されてもよく、魚油、または例えばナタネ油またはダイズ油などの植物油;または植物油混合物;または魚油および植物油混合物であってもよい。
【0052】
魚は、成長し健康であるために、タンパク質、脂質、ミネラル、およびビタミンを必要とする。肉食魚の食餌は特に重要である。当初は肉食魚の養殖では、養殖魚の栄養所要量を満たすために、丸ごとの魚または粉砕魚が使用された。魚粉およびデンプンなどの様々な種類の乾燥原料と混合された粉砕魚は、ソフトまたはセミモイスト飼料と称された。養殖が工業化されるにつれて、ソフトまたはセミモイスト飼料は圧搾乾燥飼料によって置き換えられた。これ自体も、徐々に押し出し乾燥飼料によって置き換えられた。
【0053】
今日、押し出し飼料は、様々な種類のサケ類、タラ、スズキ、およびタイなどのいくつかの魚種の養殖において、極めて一般的である。
【0054】
魚用乾燥飼料の主要タンパク質源は、異なる品質の魚粉であった。その他の動物タンパク質源もまた乾燥魚飼料のために使用される。したがって血粉、骨粉、羽毛粉、および例えば鶏肉粉などのその他の食肉処理廃棄物から製造されるその他の各種粉を使用することが知られている。これらは典型的に、魚粉および魚油よりも安価である。しかしいくつかの地理的領域では、食物生産動物および魚のための飼料生産におけるこのような原料の使用に対する禁止法がある。
【0055】
小麦グルテン、トウモロコシ(コーン)グルテン、ダイズタンパク質、ルピナスミール、ピーミール、ビーンミール、ナタネミール、ヒマワリミール、および米粉などの植物性タンパク質を使用することもまた知られている。
【0056】
[実施例3:レッドマウス菌(Yersinia ruckeri)、ビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsellia tarda)、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、ストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)の生存に対する本発明に従った活性化合物効果の評価]
レッドマウス菌(Yersinia ruckeri)、ビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、エドワードセリア・タルダ(Edwardsellia tarda)、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、およびストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)に対する本発明の組成物の抗菌活性を試験管内で判定する。
【0057】
試験では以下の生物、増殖培地、培養条件、および評価方法を使用した。
【0058】
細菌:全ての試験された病原性株は、Centre for fish and wildlife health, Institute of Animal Pathology,University of Bern(スイス(Switzerland))のコレクション株に属する。
【0059】
適切な細菌希釈率の判定:ヒツジ血液寒天(Biomeheux,ジュネーブ(Geneva))上の細菌の24時間継代培養から、0.5のMcFarland値が得られるまで少量を無菌NaClに移した。この溶液からTSB中の3、1.5、および0.75%希釈を丸底96ウェルプレート上で作成した。各ウェルに総体積100μlを入れた。22℃で24時間後、細菌増殖を評価した。良好な境界があるスポットが丸底ウェルの半分を覆った希釈率を実験のために選択した。
【0060】
溶媒の影響の判定:試験物質をTSB寒天に溶解するために、アルコール(ETOH)を使用した。可能なアルコールの影響を判定するために、試験ウェル中の計算されたアルコール最終濃度(0.1、0.05、および0.025%)を異なる濃度の細菌で試験したところ、細菌増殖に対するいかなる影響も示されなかった。
【0061】
試験物質濃度:少なくとも1000ppmの可能な食餌濃度、および2%の1日の摂取率を考慮して、試験管内用量範囲を推定した。可能な腸内濃度は最大0.1μl/100μlと確立された。次に連続2倍希釈を試験して、平均精油濃度に調整すると0.85μg/ml、0.42μg/ml、および0.21μg/mlの最終物質濃度をもたらした。
2μlの物質、18μlのETOH、および180μlのPBSからなる原液を各物質から調製した。
【0062】
プレートの調製:三連の3種の濃度(0.21、0.42、および0.85μg/ml)で、各物質を試験した。各プレート上に、TSB中の細菌からなる陽性対照および空試験対照(PBS)を含めた。さらに三連の3種の希釈ETOHもまた、各プレート上に含めた。
【0063】
プレート読み取り:22℃で24時間の培養後、0(細菌増殖なし=ウェルの底にドットなし)から3(正常な増殖=陽性対照のドットに匹敵するサイズのドット)のスコアを使用して、プレートを読み取った。以下の結果が得られ、表1に要約する。
【0064】
試験のための適切な細菌濃度:0.5のMcFarland値の1.5%の濃度は、丸底ウェルの2/3を覆う明確に視認できるスポットをもたらした。したがってこの濃度は、試験に適すると見なされた。
【0065】
細菌増殖に対するETOHの影響:適用されたいずれのアルコール濃度(1%、0.5%、および0.05%)でも影響は見られなかった。
【0066】
試験された物質の効果:結果を表1に要約する。三連の間で、または異なるプレート上の三連の間で、いかなる大きな違いも見られなかった。全ての陽性対照は、48時間以内に明確に視認できる細菌増殖を示した。先行試験から予期されたように、アルコールのいかなる悪影響も測定されなかった。細菌に対する最も広域なスペクトル効果は桂皮アルデヒドおよびα−ピネンで見られ、メタクレゾールおよびジヒドロオイゲノールがそれに続いた。
【0067】
表1:22℃で48時間インキュベーションした後のレッドマウス菌(Yersinia ruckeri)、ビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、エドワードセリア・タルダ(Edwardsellia tarda)、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、およびストレプトコッカス・イニエ(Streptococcus iniae)の増殖に対する異なる物質の効果。値は5組の個々の三連の平均を表す。nd:測定せず、3:効果なし、0:最大の増殖阻害。
【0069】
[実施例4:ビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)、およびアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)の生存に対する本発明に従った化合物の活性効果の評価]
22℃で48時間の培養後に、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)およびビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)の成長を阻害するための異なる物質の組み合わせの効果を試験した。試験条件および試験濃度(0.21μg/ml、0.42μg/ml、および0.85μg/ml)は、実施例3に記載するのと同様であった。表2および3の値は、それぞれアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)およびビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)のための3枚の異なるプレート上の3組の個々の三連の平均を表す。
【0070】
単独または組み合わせのどちらかで試験された物質は、メタクレゾール、桂皮アルデヒド、α−ピネン、ジヒドロオイゲノールである。2種の物質では1:1、3種の物質では1:1:1、4種の物質では1:1:1:1の比率で物質の混合物を調製した。
【0071】
結果:全ての化合物および化合物組み合わせは、最高濃度で試験された2つの病原体に対する何らかの阻害効果を示し、2つの細菌種に対する効果の明確な用量依存性が観察され、結果を表2および表3に示す。
【0074】
[実施例5:アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)でチャレンジされたニジマスの死亡率に対する、α−ピネン、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、およびメタクレゾールを含んでなる精油組み合わせの効果]
アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)を用いたチャレンジ実験は、ニジマス幼魚を用いて設定し、飼料に補給される4種の精油の組み合わせの3種の用量の効果を試験した。
【0075】
魚:600匹の当歳魚ニジマスは、スイスの商業的魚養殖場から得られた。
【0076】
魚飼育条件:馴化期間および感染前の実験飼育期間中、同一食餌処置からの魚を水道水通過システムと常時曝気を装着した130Lガラス水槽内で飼育する。水温は、17±1.0℃に保つ。
【0077】
感染時には、各処置からの魚を水道水通過システムと常時曝気を装着した38Lガラス水槽に移す。水温は、17.5±1.0℃に保つ。
【0078】
食餌および給餌:ニジマス幼魚のための1つの基礎食を4mm直径で製造した。これらのペレットから魚のサイズに合わせたクランブルを製造し、油と混合した精油の組み合わせを異なる用量でクランブルにコーティングして、約5kgの飼料バッチを製造した。コーティングは蠕動ポンプ、および製品の均質分散を確実にするためのコンクリートミキサーを使用して実施した。
【0079】
魚は体重の3.3%の比率で毎日給餌する。食餌は魚の体重増加に応じて定期的に調節した。
【0080】
以下の4種の実験食を製造した。
−食餌A:精油組み合わせを添加しない対照食
−食餌B:500ppmの精油組み合わせを添加した基礎食
−食餌C:2000ppmの精油組み合わせを添加した基礎食
−食餌D:4000ppmの精油組み合わせを添加した基礎食
【0081】
精油組み合わせは以下のとおりであった。等価用量のα−ピネン、桂皮アルデヒド、ジヒドロオイゲノール、およびメタクレゾール。チャレンジ前に4週間、およびチャレンジ後実験終了まで実験食を給餌した。実験給餌開始時、チャレンジ前および実験終了時に残った魚の魚体重量を記録した。
【0082】
チャレンジ実験:チャレンジ用量は、同一魚集団について同一条件下において予備実験で判定した。実験的給餌の4週間後に、25匹の魚を4槽の38Lガラス水槽に無作為に配分した。次に各実験タンクからの魚を麻酔して、分光光度法による測定で1.2
*102cfu/魚の用量のアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)の腹腔内注射によりチャレンジした。次に3週間にわたり毎日の死亡率を記録した。各ガラス水槽からの最初の死魚を細菌学調査の対象とし、死亡を引き起こした細菌学的病因を確認した。実験終了時に、感染症の外部兆候について全ての生存魚を評価し、さらに食餌群あたり6匹の魚を剖検して細菌学調査を実施した。
【0085】
結果:飼料摂取量は、実験中に正常であり魚は4から約14gに成長した。
【0086】
結果は、A.サルモニシダ(A.salmonicida)でチャレンジされたニジマスにおける精油の用量依存効果を明らかにする。最低平均値がより高い用量を与えられた2群で見られたのに対し、最低用量を与えられた群では対照よりもわずかにより高い累積死亡率が見られた。これらの結果は食餌中の4種の精油混合物が、A.サルモニシダ(A.salmonicida)に感染したニジマスに有益な効果を及ぼすことを示唆する。差は、累積死亡率および実験終了時の生存魚中の細菌存在が見られた。
【0087】
[実施例6:アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)でチャレンジされたニジマスの死亡率に対するα−ピネンおよび桂皮アルデヒドを含んでなる精油組み合わせの効果]
目的:飼料に添加されたα−ピネンおよび桂皮アルデヒドの効果を試験するために、ニジマス幼魚を用いてアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)チャレンジ実験を設定した。
【0088】
魚:600匹の当歳魚ニジマスはDSM Nutritional Productsから得られた。
【0089】
魚飼育条件:馴化期間および感染前の実験飼育期間中、同一食餌処置からの魚を水道水通過システムと常時曝気を装着した130Lガラス水槽内で飼育する。水温は、14.5±1.0℃に保つ。
【0090】
感染時には、各処置からの魚を水道水通過システムと常時曝気を装着した38Lガラス水槽に移す。水温は、13.5±1.0℃に保つ。
【0091】
食餌および給餌:ニジマス幼魚のための1つの基礎食を4mm直径で製造した。これらのペレットから魚のサイズに合わせたクランブルを製造し、油と混合した精油の組み合わせを異なる用量でクランブルにコーティングして、約5kgの飼料バッチを製造した。コーティングは蠕動ポンプ、および製品の均質分散を確実にするためのコンクリートミキサーを使用して実施した。
【0092】
魚は体重の3.3%の比率で毎日給餌する。食餌は魚の体重増加に応じて定期的に調節した。
【0093】
以下の3種の実験食を製造した。
−食餌A:精油組み合わせを添加しない対照食
−食餌B:4000ppmのα−ピネンを添加した基礎食
−食餌C:4000ppmの等用量のα−ピネン+桂皮アルデヒドを添加した基礎食
【0094】
チャレンジ前に4週間、およびチャレンジ後実験終了まで実験食を給餌した。
【0095】
実験給餌開始時、チャレンジ前および実験終了時に残った魚の魚体重量を記録した。
【0096】
チャレンジ実験:チャレンジ用量は、同一魚集団について同一条件下において予備実験で判定した。実験的給餌の4週間後に、25匹の魚を4槽の38Lガラス水槽に無作為に配分した。次に各実験タンクからの魚に麻酔をかけて、分光光度法による測定で5*10
3cfu/魚の用量のアエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)の腹腔内注射によりチャレンジした。次に3週間にわたり毎日の死亡率を記録した。各ガラス水槽からの最初の死魚を細菌学調査の対象とし、死亡を引き起こした細菌学的病因を確認した。実験終了時に、感染症の外部兆候について全ての生存魚を評価し、さらに食餌群あたり6匹の魚を剖検して細菌学調査を実施した。
【0097】
結果:飼料摂取量は、実験中に正常であり魚は1から約8gに成長した。
【0098】
結果は、α−ピネン単独では効果がないことを明らかにするが、α−ピネン+桂皮アルデヒドの組み合わせでは、対照処置との比較で死亡率を15%低下させる好ましい効果がある。
累積死亡率の結果を表5に示す。