特許第5881186号(P5881186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881186生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物を含むアトピー皮膚炎の予防または治療用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881186
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物を含むアトピー皮膚炎の予防または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/489 20060101AFI20160225BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/35 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/725 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/808 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/634 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 36/70 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20160225BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20160225BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160225BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20160225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20160225BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   A61K36/489
   A61K36/484
   A61K36/35
   A61K36/232
   A61K36/28
   A61K36/258
   A61K36/23
   A61K36/725
   A61K36/234
   A61K36/808
   A61K36/634
   A61K36/70
   A61K35/745
   A61K35/747
   A61P17/00
   A61P37/00
   A61P43/00 121
   A61K8/97
   A61Q19/00
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-530081(P2013-530081)
(86)(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公表番号】特表2013-538824(P2013-538824A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】KR2010007523
(87)【国際公開番号】WO2012043920
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年5月10日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0093901
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507367677
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オリエンタル メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】マ, ジン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】チョン, テ ホ
(72)【発明者】
【氏名】イム, ガ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドン ソン
(72)【発明者】
【氏名】オム, ヨン ラン
(72)【発明者】
【氏名】ウム, ヒョン エ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, スン オプ
(72)【発明者】
【氏名】ゾ, ビョン ホン
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0000046(KR,A)
【文献】 特開平11−158053(JP,A)
【文献】 特開2002−053428(JP,A)
【文献】 特開2004−083449(JP,A)
【文献】 特開2004−155664(JP,A)
【文献】 特開2007−186457(JP,A)
【文献】 特開2000−154113(JP,A)
【文献】 特開2006−008566(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123887(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0079497(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0075950(KR,A)
【文献】 特表2009−517461(JP,A)
【文献】 特開2006−347907(JP,A)
【文献】 特開2005−089403(JP,A)
【文献】 J Physiol Anthropol., Vol.26 No.2 p.225-7. (2007)
【文献】 Phytother Res., Vol.23 No.7 p.913-9. (2009)
【文献】 Phytother Res., Vol.14 No.3 p.192-4. (2000)
【文献】 J Ethnopharmacol., Vol.126 No.3, p.377-81. (2009)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 8/97
A61P 1/00〜43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリのみからなる生薬混合物に水または有機溶媒を加えた後、抽出して製造される生薬抽出物に乳酸菌を接種して醗酵させることにより製造されることを特徴とする、生薬抽出物のアトピー皮膚炎の予防または治療用の乳酸菌醗酵物の製造方法
【請求項2】
前記乳酸菌は、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属およびラクトコッカス属の微生物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の乳酸菌醗酵物の製造方法
【請求項3】
前記乳酸菌は、ラクトバチルスアシドフィルス種の微生物であることを特徴とする、請求項2に記載の乳酸菌醗酵物の製造方法
【請求項4】
前記乳酸菌は、試料重量に対して0.5〜5重量%の量で接種することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の乳酸菌醗酵物の製造方法
【請求項5】
前記乳酸菌は、20〜40℃の温度で24〜52時間醗酵させることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の乳酸菌醗酵物の製造方法
【請求項6】
請求項に記載の製造方法で乳酸菌醗酵物を製造する工程と、
前記乳酸菌醗酵物を添加する工程と、を含む、
アトピー皮膚炎の予防または治療用の薬学的組成物の製造方法
【請求項7】
請求項に記載の製造方法で乳酸菌醗酵物を製造する工程と、
前記乳酸菌醗酵物を添加する工程と、を含む、
アトピー皮膚炎の予防または改善用の健康食品の製造方法
【請求項8】
請求項に記載の製造方法で乳酸菌醗酵物を製造する工程と、
前記乳酸菌醗酵物を添加する工程と、を含む、
アトピー皮膚炎の予防または改善用の化粧料組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー皮膚炎の予防または治療用の組成物に関し、より詳細には、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリを含む生薬混合物の抽出物またはその乳酸菌醗酵物を有効成分として含み、アトピー皮膚炎の予防および/または治療に有用に使用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー(atopy)とは、1925年コカ(Coca)が、食べ物と吸入性物質に対する先天性アレルギー反応の結果として皮膚炎や喘息、枯草熱が現れる傾向をアトピーと記述してから用いられるようになった皮膚疾患を指す用語であり、アトピー性疾患としては、アトピー皮膚炎の他に、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などが挙げられる。アトピーはアレルギー反応を伴い、このうちアトピー皮膚炎は慢性あるいは再発性の皮膚炎であり、皮膚病変の特徴的な形状および分布と個人あるいは家族のアトピー病歴を有する。すなわち、アトピー皮膚炎は先天的にアトピー体質(遺伝的素因)の場合に発生する非常に一般的な皮膚疾患である。通常、アトピー皮膚炎は、乳幼児期、特に生後2ヶ月前後に発病するが、このうち約50%が生後2歳以前に発生し、ほとんどの場合、5歳以前に症状が現れる反面、成人してから初めて症状が現れる例は極めて少ない。ほとんどの場合、成長とともに症状が緩和されるか消え、幼児期発生患者の半分以上が2歳前に好転する。現在、一般人の0.7%、5歳以下小児の3〜5%がアトピー皮膚炎を患っており、環境的な要因によって毎年その数が急激に増加している。
【0003】
アトピー皮膚炎はひどい掻痒症を伴う紅斑性丘疹と鱗屑から始まり、悪化すると水疱および漿液性滲出液と痂皮を示す急性症状に進行する。最も特徴的な症状である掻痒症は、その程度が非常にひどくなって血が出るほど引っ掻くようになり、掻痒症−引っ掻き−掻痒症の悪循環で悪化し続け、さらに進むと皮膚が厚くなり、しわがくっきりとなる苔癬化現象が現れる。ほとんどの臨床症状は引っ掻くか擦った結果として発生し、夜には掻痒症がよりひどくなって睡眠障害を起こす。近年、アトピー皮膚炎の発生頻度が世界的に増加する様相を示しているが、これは、大気汚染、住居環境の変化による抗原への露出増加、母乳授乳の減少、小児期感染疾患の減少などをその原因として推定している。1995年韓国の大韓小児科アレルギーおよび呼吸器学会で行われた全国疫学調査によれば、小学生の場合には12〜24%、中学生の場合には6〜8%がアトピー皮膚炎と診断されたことがあり、2000年度には小学生の24.9%、中学生の12.8%がアトピー皮膚炎と診断されたことをはじめ、成人アトピー皮膚炎も韓国内でその頻度が益々増加しつつある。
【0004】
前記のアトピー皮膚疾患の正確な病態生理はいまだにはっきりと理解されていないが、遺伝的素因とともに免疫機構、非免疫機構が係っていると考えられている。アトピー皮膚炎のほとんどを占める外因性アトピー皮膚炎は免疫グロブリンE(IgE)に関係する免疫機構によって発生するが、特定のアレルゲンに対する続発性免疫反応よりはT細胞異常による原発性免疫反応が関係しているという報告が多い。アトピー皮膚炎患者において細胞媒介性免疫機能障害が免疫グロブリンEの増加に係っていることが明らかになるに伴い、続発性免疫反応の他にも原発性免疫反応がアトピー皮膚炎の病因に係っていると主張する報告が増加している(Gi Young Lee,Diagnosis and Management of Allergic Disease,韓国医学社,ソウル,2001,pp23〜52)。
【0005】
前記のように現在まで知られたアトピー皮膚炎の病因、機構、症状などを鑑みてアトピー皮膚炎に対する治療剤が開発されており、その結果、天然または合成の免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤など、多数が開発されている。例えば、免疫抑制剤としては、シクロスポリン(Cyclosporin)A、FK506(タクロリムス、Tacrolimus;Wasikなど、Immunopharmacology20:57-61,1990)とSDZ ASM981(ピメクロリムス、Pimecrolimus;Grassbergerなど、Br.J.Dermatology141:264-273,1999)などが脚光を浴びている。しかし、従来のアトピー皮膚炎に対する治療剤として用いられるステロイド剤、抗ヒスタミン剤などは、症状を一時的に緩和する効果はあるが、外用または経口用のステロイドホルモン剤の長期使用患者には皮膚が薄くなる現象および骨粗鬆症をもたらし、子供には成長障害が生じるなど、それに伴う局所副作用および全身副作用によって臨床的に問題になる虞があり、ひどい場合にはホルモンによる全身症状が現れることがあり、薬を中止すればむしろ症状が悪化するステロイド剤に対する耐性を示すこともある。そのため、アトピー治療に対して優れた効果を有しながらも副作用の少ない天然材料を用いた新たなアトピー治療剤の開発が要求されている。
【0006】
したがって、本発明者らは、アトピー皮膚炎の改善に有用に使用できる生薬抽出物について鋭意研究の結果、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物を製造した後、これを乳酸菌を用いてまた醗酵させた醗酵物を製造し、前記生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物が従来報告されたことのない優れたアトピー皮膚炎の予防または治療の効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物と、これを有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または治療用の組成物を提供することを目的とする。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を提供する。
【0009】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または治療用の健康食品を提供する。
【0011】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または治療用の化粧料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を提供する。
【0013】
前記生薬抽出物は、クジン10重量部に対してカンゾウ2〜8重量部、スイカズラ2〜8重量部、トウキ2〜8重量部、ウド2〜8重量部、モッコウ2〜8重量部、ボウフウ2〜8重量部、サンソウニン2〜8重量部、ドクダミ5〜15重量部、レンギョウ2〜8重量部、ゴボウシ5〜15重量部、インヨウカク2〜8重量部、オタネニンジン5〜15重量部、シコン2〜8重量部、チユ2〜8重量部、センキュウ2〜8重量部、ゲンジン5〜15重量部およびイタドリ2〜8重量部の割合で生薬混合物を製造した後、抽出することが好ましい。抽出溶媒としては水を使用することが一般的であるが、必要に応じて、水以外の他の有機溶媒を使用してもよい。使用可能な有機溶媒としてはC1〜C4の低級アルコール、アセトン、またはその水溶液などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明において、前記『生薬抽出物』は、前記薬材混合物を水を用いて抽出したものだけでなく、水以外の他の有機溶媒を用いて抽出したものを全て含む意味で用いられる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に係る生薬抽出物の乳酸菌醗酵物(以下、『生薬醗酵物』または『生薬抽出物の醗酵物』と略称することもある)を製造するためには、まず、前記のような生薬混合物に2〜15倍量の水を加えた後、70〜130℃で熱水抽出した水抽出物を製造する。前記水抽出物を冷却した後、乳酸菌を試料重量に対して0.5〜5重量%、好ましくは1重量%で接種し、20〜40℃、好ましくは37℃で24〜52時間、好ましくは48時間醗酵させることで本発明に係る生薬抽出物の醗酵物が製造される。抽出溶媒として水以外の他の有機溶媒を用いて製造された生薬抽出物で生薬抽出物の醗酵物を製造する場合には、まず、前記抽出物を乾燥した後、水に希釈させ、これに乳酸菌を接種してから醗酵させることが好ましい。
【0015】
前記において、乳酸菌としては、分離株または市販の様々な乳酸菌を制限なく使用することができる。具体的に、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属およびラクトコッカス属の微生物を制限なく使用することができ、このうち、ラクトバチルス属の微生物を使用することが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスカゼイ(L.casei)、ラクトバチルスプランタルム(L.plantarum)、ラクトバチルスファーメンタム(L.fermentum)、ラクトバチルスブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトバチルスデルブリュッキー亜種ラクティス(L.delbrueckii subsp.lactis)、ラクトバチルスガッセリ(L.gasseri)およびビフィドバクテリウムブレーベ(Bifidobacterium breve)のような様々な種類の乳酸菌を使用して本発明の生薬醗酵物を製造した(実施例2参照)。しかし、使用可能な乳酸菌は前記示された乳酸菌に限定されず、乳酸菌培養培地もまたそれぞれの乳酸菌に合わせてMRS(Man−Rogosa−Sharpe)、ラクトース、M17およびAPT培地(Asparagine Enrichment Broth)から選択されてもよく、これに限定されるものではない。
【0016】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明において、『アトピー皮膚炎』とは、その発生の直接的、間接的な原因を問わず当業界においてアトピー皮膚炎に分類される全ての疾患を含む意味で用いられる。通常、アトピー皮膚炎は、その発病時期またはその発病対象によって乳児型アトピー皮膚炎と、小児型アトピー皮膚炎と、成人型アトピー皮膚炎と、妊産婦アトピー皮膚炎とに分けられるが、本発明におけるアトピー皮膚炎は、このような全ての類型のアトピー皮膚炎を含むものと定義する。
【0018】
本発明に係る生薬抽出物または生薬醗酵物は、臨床投与時に経口または非経口で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形態で用いられることができる。すなわち、本発明に係る生薬抽出物またはその醗酵物は、実際臨床投与時に経口および非経口の様々な剤形で投与することができ、製剤化する場合には通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は生薬抽出物または生薬醗酵物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤する。また、単純な賦形剤の他にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤としては懸濁剤、内服液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、通常用いられる単純な希釈剤である水、流動パラフィンの他に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが用いられることができる。
【0019】
投薬単位は、例えば、個別投薬量の1倍、2倍、3倍または4倍または1/2倍、1/3倍または1/4倍に含有することができる。個別投薬量は有効薬物が1回に投与される量を含有し、これは通常1日投与量の全部、1/2倍、1/3倍または1/4倍に該当する。
【0020】
本発明に係る生薬抽出物または生薬醗酵物の人体投与量は、体内での活性成分の吸収度、不活性化率および排泄速度、患者の年齢、性別、状態、疾病の程度などによって適切に選択され、成人に対する投与量は10〜300mg/kgであり、好ましくは20〜100mg/kgであり、一日に1〜6回分けて投与することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、アトピー皮膚炎が誘発された実験動物を対象に本発明に係る生薬抽出物またはその醗酵物を処理すれば濃度依存的な形態で引っ掻く回数が減少し、特に、本発明に係る生薬抽出物の醗酵物を投与する場合に引っ掻く回数が著しく減少する(図2参照)。
【0022】
また、本発明の他の実施形態によれば、アトピー皮膚炎において一般的に用いられる臨床的目視評価法により、紅斑(erythema)、掻痒症と皮膚乾燥(pruritus&dry skin)、浮腫と血腫(edema&excoriation)、糜爛(erosion)および苔癬化(lichenification)それぞれの項目に対して採点した後、5項目の点数を合算することで官能評価を行った結果、本発明に係る生薬抽出物およびその醗酵物を投与する場合に皮膚炎の深刻度の点数が減少する傾向を示しており、特に、本発明に係る生薬抽出物の醗酵物を投与する場合には皮膚炎の深刻度の点数が有意に減少した(図3参照)。
【0023】
また、本発明の他の実施形態によれば、環境的ストレスによるTh1/Th2免疫反応の変化を確認するためにマウスから時間ごとに血液を採取して血漿を分離し、ELISAキットを用いてIgE濃度を測定した結果、本発明に係る生薬抽出物およびその醗酵物を投与する場合に濃度依存的な形態で血中IgE濃度を減少させる効果があった(図4参照)。
【0024】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物と、これを有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または緩和用の健康食品を提供する。
【0025】
本発明に係る生薬抽出物または前記生薬抽出物の乳酸菌醗酵物は、アトピー皮膚炎の改善を目的として健康食品に添加されることができ、生薬抽出物または生薬醗酵物を食品添加物として使用する場合、これをそのまま添加するか他の食品または食品成分とともに使用してもよく、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は使用目的(予防、健康または治療的処置)に合わせて適宜決定することができる。通常、食品または飲料の製造時には、生薬抽出物または生薬醗酵物が原料に対して30重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加される。しかし、健康および衛生を目的とするか健康調節を目的とする長期攝取の場合には、前記量が前記範囲以下であってもよく、安全性の面において何の問題もないため、有効成分を前記範囲以上の量で用いてもよい。
【0026】
前記食品の種類は特に制限されない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む乳製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などが挙げられ、通常の意味での全ての健康食品を含む。
【0027】
本発明に係る健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物としては、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライド、マルトース、スクロースなどのジサッカライド、およびデキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。甘味剤としてはタウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、通常、生薬抽出物または生薬醗酵物100ml当たり約0.01〜0.04g、好ましくは約0.02〜0.03gである。
【0028】
その他にも生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。その他、生薬抽出物または生薬醗酵物は、天然果汁、果汁飲料および野菜飲料を製造するための果肉を含有することができる。このような成分は独立してまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合はそれほど重要ではないが、生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲から選択されることが一般的である。
【0029】
また、本発明は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリの混合物の生薬抽出物またはその乳酸菌醗酵物を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防または改善用の化粧料組成物を提供する。
【0030】
本発明に係る化粧料組成物の剤形は特に限定されないが、皮膚外用剤の剤形であることが好ましく、前記皮膚外用剤の剤形の好ましい形態としては、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲルまたは皮膚粘着型化粧料の剤形を有する化粧料組成物が挙げられ、他の好ましい形態としては、エマルジョン、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤などの経皮投与型の剤形が挙げられる。また、各剤形の外用剤組成物において、前記必須成分以外の他の成分はその他の外用剤の剤形または使用目的などに応じて当業者が難なく適宜選択して配合することができる。
【0031】
本発明に係る化粧料組成物は、好ましくは、化粧品学的に許容可能な媒質または基剤を含有する。これは、局所適用に適する全ての剤形であり、例えば、溶液、ゲル、固体またはペースト無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球またはイオン型(リポソーム)および/または非イオン型の小胞分散剤の形態、またはクリーム、ローション、エマルジョン、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシーラースティックの形態で提供されることができる。また、泡沫(foam)の形態または圧縮された推進剤をさらに含有するエアロゾル組成物の形態でも製造されることができる。また、本発明に係る化粧料組成物は、皮膚科学的に許容可能な媒質または基剤を含有することで皮膚科学分野において通常用いられる局所適用または全身適用できる補助剤の形態で製造されることができ、これら組成物は当該分野において通常の方法によって製造されることができる。
【0032】
さらに、本発明に係る化粧料組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤およびゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤およびキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須油、染料、顔料、親水性または親油性の活性剤、脂質小胞または化粧品に通常用いられる任意の他の成分のような化粧品学分野において通常用いられる補助剤を含有することができる。これら補助剤は化粧品学分野において通常用いられる量で導入される。
【発明の効果】
【0033】
上述したように、本発明に係る生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物は、アトピー皮膚炎に対する実験動物モデルにおいて引っ掻く回数が減少し、紅斑、掻痒症と皮膚乾燥、浮腫と血腫、糜爛および苔癬化のようなアトピー症状の臨床特性が減少する傾向を示し、また、外因性アトピー皮膚炎に係る血中IgE濃度を減少させる効果があるため、アトピー皮膚炎の予防および/または治療用として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る生薬抽出物(A)および生薬抽出物の乳酸菌醗酵物(B)のクロマトグラムを示す図である。
図2】アトピー皮膚炎に対する実験動物モデルに薬物を投与した後、1日目、3日目、7日目および14日目の引っ掻き行動の回数を示すグラフである。AD;アトピー皮膚炎誘発有無(+;誘発した、−;誘発していない))、KIOM-MA;本発明に係る生薬抽出物/醗酵物の投与有無(+;投与した、−;投与していない))、C;本発明に係る生薬抽出物、128;本発明に係る生薬抽出物の醗酵物、PC;陽性対照群(Dexa.1;dexamethasone 1 mg/kg)。
図3】アトピー皮膚炎に対する実験動物モデルに薬物を投与した後、1日目、3日目、7日目および14日目に、アトピー皮膚炎の臨床症状である紅斑、掻痒症と皮膚乾燥、浮腫と血腫、糜爛および苔癬化に対してそれぞれ症状がない(0点)、症状が軽い(1点)、普通(2点)、症状がひどい(3点)と採点した後、5項目の点数を合算した結果を示すグラフである。AD;アトピー皮膚炎誘発有無(+;誘発した、−;誘発していない))、KIOM-MA;本発明に係る生薬抽出物/醗酵物の投与有無(+;投与した、−;投与していない))、C;本発明に係る生薬抽出物、128;本発明に係る生薬抽出物の醗酵物、PC;陽性対照群(Dexa.1;dexamethasone 1 mg/kg)。
図4】アトピー皮膚炎に対する実験動物モデルに薬物を投与した後、1日目、7日目および14日目の外因性アトピー皮膚炎に係る血中IgE濃度を示すグラフである。AD;アトピー皮膚炎誘発有無(+;誘発した、−;誘発していない))、KIOM-MA;本発明に係る生薬抽出物/醗酵物の投与有無(+;投与した、−;投与していない))、C;本発明に係る生薬抽出物、128;本発明に係る生薬抽出物の醗酵物、PC;陽性対照群(Dexa.1;dexamethasone 1 mg/kg)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0036】
ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲は下記実施例によって限定されない。
【0037】
実施例1:生薬抽出物の製造
前記生薬抽出物は、クジン、カンゾウ、スイカズラ、トウキ、ウド、モッコウ、ボウフウ、サンソウニン、ドクダミ、レンギョウ、ゴボウシ、インヨウカク、オタネニンジン、シコン、チユ、センキュウ、ゲンジンおよびイタドリを抽出して製造される漢方製剤であり、クジン160g、カンゾウ80g、スイカズラ80g、トウキ80g、ウド80g、モッコウ80g、ボウフウ80g、サンソウニン80g、ドクダミ160g、レンギョウ80g、ゴボウシ160g、インヨウカク80g、オタネニンジン160g、シコン80g、チユ80g、センキュウ80g、ゲンジン160gおよびイタドリ80gの割合で生薬混合物を製造した後、前記生薬混合物1840gの10倍量である18.4lの蒸留水に入れて1時間浸漬させた後、115℃で3時間超高速真空低温抽出器(韓国、kyungseo machine社製、cosmos-600)、標準試験ふるい(standard testing sieve、Aperture 500μmと150μm)を用いて煎じ薬を濾過し、本発明の生薬抽出物を製造した。
【0038】
実施例2:生薬抽出物の乳酸菌醗酵物の製造
<2-1>乳酸菌の種菌培養
本発明に係る生薬抽出物の乳酸菌醗酵物の製造に用いられた乳酸菌は次のとおりである。:ラクトバチルスアシドフィルス(KFRI #128)、ラクトバチルスカゼイ(KFRI #127)、ラクトバチルスプランタルム(KFRI #144、KFRI #402)、ラクトバチルスファーメンタム(KFRI #164)、ラクトバチルスブルガリクス(KFRI #344)、ラクトバチルスデルブリュッキー亜種ラクティス(KFRI #442)、ラクトバチルスガッセリ(KFRI #658、KCTC 3163)およびビフィドバクテリウムブレーベ(KFRI #744)。前記菌株は、斜面培地と液体培地で継代して実験に用いた。乳酸菌を斜面培地に接種して37℃の培養器で24時間培養して細菌のコロニーが形成されれば、パラフィンフィルムで酸素を遮断して冷蔵室で保存し、細菌の活性が低下するか雑菌による汚染を防止するために2〜3週に一回ずつ新たな斜面寒天培地に移植した。液体培地に接種して37℃の培養器で24時間培養した。種菌培養にはMRS培地(10g/l Peptone、10g/l Beef extract、5g/l Yeast extract、20g/l Glucose、1ml/l Tween 80、2g/l K2HPO4、5g/l Sodium acetate、2g/l Triammonium citrate、0.2g/l MgSO4 7H2O、0.2g/l MnSO4 4H2O、pH 6.2〜6.6)を用いた。
【0039】
<2-2>乳酸菌を用いた生薬抽出物の醗酵
1M NaOHを用いて実施例1で製造した生薬抽出物のpHを8.0に調整し、121℃、1.5気圧で15分間加圧滅菌して常温まで冷却した。その結果、醗酵前の対照群のpHが8.0から6.3まで下がったが、これは121℃、1.5気圧で15分間滅菌される高温高圧条件で生薬抽出物に存在する食物繊維成分の一部が有機酸に分解されてpHが低下したためであると推定される。生薬抽出物に1%ボリューム(v/v)の前記乳酸菌(1-5×108CFU/ml)を添加し、37℃で48時間通気培養して液体醗酵させた後、前記標準試験ふるいで濾過して生薬抽出物の乳酸菌醗酵物を製造した。前記乳酸菌醗酵物のpHおよび乾物量変化は下記表1のとおりである。
【0040】
【表1】
【0041】
前記結果から、乳酸菌醗酵によって生薬抽出物のpHが4.0まで下がるなどの活発な酸生成能を示すことを確認することができた。次に、本発明に係る乳酸菌醗酵物を凍結乾燥した後、使用するまで4℃に保管した。
【0042】
<2-3>乳酸菌醗酵物の分析
前記で製造された本発明に係る生薬抽出物の乳酸菌液体醗酵物を遠心分離機を用いて残渣を除去し、0.45μmの濾過器を用いて濾過した後、下記表2の条件に従ってHPLC分析を行った。
【0043】
【表2】
【0044】
その結果、ラクトバチルスアシドフィルス(KFRI #128)によって発酵した生薬抽出物の場合、発酵していない生薬抽出物に比べて4.5分の位置のピークが4.3倍増加した反面、10.1分および14.9分の位置のピークは、醗酵に伴いそれぞれ68%および79%減少した。また、本発明に係る生薬抽出物の主な指標物質の一つであるグリチルリチン(glycyrrhizin)(27.5分)は、乳酸菌による醗酵前および醗酵後の全ての試料から検出された(図1)。
【0045】
実験例1:引っ掻き行動(scratching behavior)試験
本発明の実験例では、韓国の食品医薬品安全庁のバイオ生薬局で提示した『生薬漢方薬製剤の効力試験ガイドライン-アトピー皮膚炎』(ガイドライン管理番号1-019-2010-0000(0))の指針に従い下記実験を行った。実験動物を飼育ケースにそれぞれ入れて、23±3℃の温度と50±5%の湿度で12時間の間隔で明-暗サイクルを与えながら飼育した。基本的な実験食は、American Institute Nutrition(1970)で勧めるものに基づき製造して用いた。試験物質を液体溶媒(飲水)に混合して実験を行い、韓国の食品医薬品安全評価機関の標準作業手順書の『試験物質の配合および調剤(NITR/SOP/TSB/002_02)』に従って実験を行った。また、各容量群が均質性のある個体群で構成されるように食品医薬品安全評価機関の標準作業手順書の『げっ歯類の群、飼育ケースおよび飼育ケース棚の無作為割付(NITR/SOP/GTX/002_02)』に従って実験群を分離した。試験結果の統計的有意性を評価するために、各試験群当たりの個体数は5〜7匹にし、試験薬物と対照群の変化数値および誤差をウイルコクスン順位和検定法(マン-ホイットニー検定)を用いて有意性を検証した。統計プログラムとしてはSASを用いた。
【0046】
引っ掻き行動試験のために、7週齢の雌のBALB/cマウスにオボアルブミン(OVA、20μg)と水酸化アルミニウム(2.25mg)をともに混合し、0日目と14日目に皮下投与してアトピー皮膚炎を誘発した。実施例1および実施例2で製造した生薬抽出物および生薬抽出物の醗酵物をそれぞれ50mg/kgまたは100mg/kgの濃度で実験動物に毎日1回投与し、薬物投与の前後30分時点で15分間実験動物が引っ掻く回数を測定した。この際、本発明の実験例で用いられた生薬抽出物の醗酵物は全てラクトバチルスアシドフィルス(KFRI #128)によって発酵した生薬抽出物の醗酵物を用いた。
【0047】
その結果、本発明に係る生薬抽出物およびその醗酵物を投与する場合、濃度依存的な形態で引っ掻く回数が減少し、特に、生薬抽出物の醗酵物を100mg/kgの濃度で投与した群の場合には投与3日後から、陰性対照群だけでなく陽性対照群に比べても引っ掻く回数が著しく減少し、14日目まで有意な差を示し続けた(p<0.01)(図2)。
【0048】
実験例2:官能評価
本評価方法は、アトピー皮膚炎で通常用いられる臨床的目視評価法であり、アトピー皮膚炎の深刻度を以下の5項目それぞれを評価した点数の総合で示した。評価項目は、紅斑、掻痒症と皮膚乾燥、浮腫と血腫、糜爛および苔癬化である。それぞれの項目に対して症状がない(0点)、症状が軽い(1点)、普通(2点)、症状がひどい(3点)と採点した後、5項目の点数を合算することで最小0点(何れの症状もない状態)から最高15点(全ての項目の症状がひどい状態)までの評価点数を付与した。
【0049】
その結果、本発明に係る生薬抽出物およびその醗酵物を投与する場合に皮膚炎の深刻度の点数が減少する傾向を示し、特に、本発明に係る生薬抽出物の醗酵物を投与する場合には陰性対照群に比べて皮膚炎の深刻度の点数が有意に減少した(p<0.01)(図3)。
【0050】
実験例3:血中IgE濃度に及ぼす影響
環境的な刺激によってアトピー皮膚炎が発生したマウスは、対照群に比べて週齢の経過とともに血中IgE濃度が急激に増加すると予想した。環境的なストレスによるTh1/Th2免疫反応の変化を確認するために、マウスから時間ごとに血液を採取して血漿を分離し、ELISAキットを用いてIgE濃度を測定することで試験物質が血中IgE濃度が減少または抑制したか否かを評価した。
【0051】
その結果、本発明に係る生薬抽出物およびその醗酵物を投与する場合に血中IgE濃度が濃度依存的な形態で減少し、特に、前記生薬抽出物の醗酵物を投与した場合には、投与後14日目に、陰性対照群だけでなく陽性対照群に比べても血中IgE濃度が十分有意に減少した(p<0.01)(図4)。
【0052】
製造例1:生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を含む薬学的組成物の製造
<1-1>シロップ剤の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を有効成分2%(重量/体積)として含有するシロップを次のような方法で製造した。まず、実施例1または実施例2で製造した生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物粉末、サッカリン、糖を温水80gに溶解した。前記溶液を冷却させた後、これにグリセリン、サッカリン、香味料、エタノール、ソルビン酸および蒸留水からなる溶液を製造して混合した。この混合物に水を添加して100mlになるようにした。
【0053】
前記シロップ剤の構成成分は次のとおりである。
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物 2g
サッカリン 0.8g
糖 25.4g
グリセリン 8.0g
香味料 0.04g
エタノール 4.0g
ソルビン酸 0.4g
蒸留水 定量
【0054】
<1-2>錠剤の製造
有効成分15mgが含有された錠剤を次のような方法で製造した。
実施例1または実施例2で製造した生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物250gをラクトース175.9g、ジャガイモデンプン180gおよびコロイド状ケイ酸32gと混合した。前記混合物に10%ゼラチン溶液を添加した後、粉砕して14メッシュのふるいを通過させた。これを乾燥させ、これにジャガイモデンプン160g、タルク50gおよびステアリン酸マグネシウム5gを添加して得た混合物を錠剤に製造した。
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物 250g
ラクトース 175.9g
ジャガイモデンプン 180g
コロイド状ケイ酸 32g
10%ゼラチン溶液ジャガイモデンプン 160g
タルク 50g
ステアリン酸マグネシウム 5g
【0055】
製造例2:生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を含有する健康食品の製造
<2-1>食品の製造
実施例1または実施例2で製造した生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を含む食品を次のように製造した。
【0056】
1.料理用調味料の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物20〜95重量%で健康増進用の料理用調味料を製造した。
【0057】
2.トマトケチャップおよびソースの製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物0.2〜1.0重量%をトマトケチャップまたはソースに添加して健康増進用のトマトケチャップまたはソースを製造した。
【0058】
3.小麦粉食品の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物0.5〜5.0重量%を小麦粉に添加し、この混合物を用いてパン、ケーキ、クッキー、クラッカーおよび麺類を製造して健康増進用の小麦粉食品を製造した。
【0059】
4.スープおよび肉汁(gravies)の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物0.1〜5.0重量%をスープおよび肉汁に添加して健康増進用の食肉加工製品、麺類のスープおよび肉汁を製造した。
【0060】
5.牛挽肉(ground beef)の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物10重量%を牛挽肉に添加して健康増進用の牛挽肉を製造した。
【0061】
6.乳製品(dairy products)の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物5〜10重量%を牛乳に添加し、前記牛乳を用いてバターおよびアイスクリームのような様々な乳製品を製造した。
【0062】
7.仙食(穀物粉食品)の製造
玄米、麦、もち米、ハトムギを公知の方法でアルファ化して乾燥したものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。黒豆、黒ゴマ、エゴマも公知の方法で蒸して乾燥したものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を真空濃縮機で減圧濃縮し、噴霧乾燥器、熱風乾燥器で乾燥して得た乾燥物を粉砕機で粒度60メッシュに粉砕して乾燥粉末を得た。前記で製造した穀物類、種実類および生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物の乾燥粉末を以下の割合で配合して製造した。
【0063】
穀物類(玄米30重量%、ハトムギ15重量%、麦20重量%)、
種実類(エゴマ7重量%、黒豆8重量%、黒ゴマ7重量%)、
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物の乾燥粉末(3重量%)、
レイシ(0.5重量%)、
ジオウ(0.5重量%)
【0064】
<2-2>飲料の製造
1.炭酸飲料の製造
砂糖 5〜10%、クエン酸 0.05〜0.3%、キャラメル 0.005〜0.02%、ビタミンC 0.1〜1%の添加物を混合し、これに79〜94%の精製水を混合してシロップを製造し、前記シロップを85〜98℃で20〜180秒間殺菌して冷却水と1:4の割合で混合した後、炭酸ガスを0.5〜0.82%注入して生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を含有する炭酸飲料を製造した。
【0065】
2.健康飲料の製造
異性化糖(0.5%)、オリゴ糖(2%)、砂糖(2%)、食塩(0.5%)、水(75%)のような副材料と生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を均質に配合して瞬間殺菌をした後、これをガラスボトル、ペットボトルなどの小容器で包装して健康飲料を製造した。
【0066】
3.野菜ジュースの製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物5gをトマトジュースまたはニンジンジュース1000mlに加えて健康増進用の野菜ジュースを製造した。
【0067】
4.果汁の製造
生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物1gをリンゴジュースまたはブドウジュース1000mlに加えて健康増進用の果汁を製造した。
【0068】
製造例3:生薬抽出物または生薬抽出物の醗酵物を含有する化粧料組成物の製造
<3-1>乳化剤形の化粧品の製造
表3に記載の組成で乳化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
1)1〜9の原料を混合した混合物を65〜70℃に加熱した。
2)10の原料を前記段階1)の混合物に投入した。
3)11〜13の原料の混合物を65〜70℃に加熱して完全に溶解させた。
4)前記段階3)を実行しながら前記2)の混合物を徐々に添加して8000rpmで2〜3分間乳化させた。
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記段階4)の混合物に添加して2分間さらに乳化させた。
6)15〜17の原料をそれぞれ坪量した後、前記段階5)の混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
7)前記段階6)の混合物を乳化させた後、脱気過程を経て25〜35℃に冷却させることで乳化剤形の化粧品を製造した。
【0069】
【表3】
【0070】
<3-2>可溶化剤形の化粧品の製造
表4に記載の組成で可溶化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記のとおりである。
1)2〜6の原料を1の原料(精製水)に入れてアジミキサを用いて溶解させた。
2)8〜11の原料を7の原料(アルコール)に入れて完全溶解させた。
3)前記段階2)の混合物を前記段階1)の混合物に徐々に添加して可溶化させた。
【表4】

図1
図2
図3
図4