(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、パノラマ断層面の位置を指定できるものの、一度その位置が決まれば、部分的な変更を行うことができなかった。変更を加えたい場合には、再び一から指定する必要があり、オペレータにとって煩雑な作業となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、断層画像を生成するための断層面の位置を効率よく設定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は
パノラマX線撮影装置であって、X線を発生するX線発生器と、発生した前記X線をX線細隙ビームに規制するX線規制部と、入射するX線の強度に応じた信号を出力する複数の検出素子を備えたX線検出器と、旋回軸周りに旋回し、前記X線発生器と前記X線検出器とを被写体を挟んで互いに対向させて支持する支持部と、前記支持部を移動させることで前記X線発生器と前記X線検出器とを前記被写体周りに旋回移動させる支持部移動部と、前記支持部移動部の駆動で行われる前記被写体中の
歯列弓を関心部位
とするパノラマ断層撮影によって、前記関心部位を透過した前記X線細隙ビームを受けた前記X線検出器から出力される投影画像データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した前記投影画像データを処理する画像処理部と、前記支持部移動部の駆動を制御する駆動制御部と、
パノラマ断層の断層面の位置を
変更する操作を受け付ける位置設定操作受付部と、前記位置設定操作受付部を通じて受け付けた命令に基づき、前記断層面の位置を設定する位置設定部とを備え、前記位置設定部は、
位置設定操作受付部を介した前記断層面の位置を変更する操作の受け付けにおいて、前記断層面の一部の位置を前記X線細隙ビームの透過方向の成
分について変更する変更命令を受け付けることによって、前記変更命令を受ける前の前記断層面の位置が変更された変更領域と変更されない不変領域からなる新た
な断層面の位置を設定し、前記画像処理部は、前記位置設定部によって設定された
前記新たな断層面の位置に対応する断層画像を生成する。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記断層面が曲面をなしている。
【0009】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記画像処理部は、前記位置設定部が受け付けた、前記断層面の変更された一部の位置に対応する前記投影画像データを部分的に処理することによって、
前記新た
な断層面の位置に対応する断層画像を生成する。
【0010】
また、第4の態様は、第1から第3の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記位置設定部は、前記画像処理部が、前記投影画像データを再構成することによって得られる前記関心部位の三次元データから、前記支持部における前記旋回軸の軸方向から見た断層画像を生成し、表示部に位置設定用画像として表示するよう制御し、前記位置設定用画像上で実行される前記断層面の位置を設定する命令を受け付ける。
【0011】
また、第5の態様は、第1から第4の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記位置設定部は、前記断層面の位置を、予め定められた初期断層面位置に設定する。
【0012】
また、第6の態様は、第5の態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記画像処理部が、前記初期断層面位置における前記断層画像を、前記変更命令の受付前に生成し、前記表示部が、前記画像処理部によって生成された前記初期断層面位置におけ
る断層画像を表示する。
【0013】
また、第7の態様は、第2の態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記位置設定部は、前記変更命令において指定された位置を前記断層面が通るように曲線補間を行い、
前記新た
な断層面を設定する。
【0014】
また、第8の態様は、第1から第7の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記表示部は、前記変更命令を受け付ける前の前記断層面の位置に対応する断層画像と、前記変更命令を受け付けた後の
前記新た
な断層面の位置に対応する断層画像とを同時に表示する。
【0015】
また、第9の態様は、第4の態様に係る
パノラマX線撮影装置であって、前記表示部は、前記旋回軸の軸方向から見た断層画像及び前記旋回軸の軸方向から見た前記関心部位の模式図を重ねて表示する。
【0016】
また、第10の態様は、第1から第9の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記位置設定部は、前記関心部位を複数に区分した区分領域毎に、前記変更命令を受け付ける。
【0017】
また、第11の態様は、第1から第10の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記位置設定部は、前記旋回軸の軸方向における前記断層面の位置を変更する変更命令を受け付ける。
【0018】
また、第12の態様は、第11の態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記位置設定部は、前記旋回軸の軸方向における前記断層面の位置を予め定めた数の複数の位置ごとに変更する変更命令を受け付ける。
【0019】
また、第13の態様は、第1から第12の態様のいずれか1態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記断層撮影中、前記関心部位に対して予め定義された断層面の少なくとも一部に対して、前記X線細隙ビームの光軸が直交するように、前記駆動制御部が前記支持部移動部の駆動を制御する。
【0020】
また、第14の態様は、第4の態様に係る
パノラマX線撮影装置において、前記位置設定部は、前記断層面上の任意の位置に部分領域の位置を特定する部分領域設定部を備え、前記画像処理部は、前記部分領域設定部で設定した部分領域の断層画像を表示するよう構成されている。
【0021】
また、第15の態様は、
パノラマX線撮影方法であって、(a)支持部によって、X線細隙ビームに形成されるX線を発生するX線発生器と、入射したX線の強度に応じた信号を出力するX線検出器とを、被写体を挟んで互いに対向させて支持する工程と、
(b)支持部移動部が前記支持部を移動させることによって、前記X線発生器及び前記X線検出器を被写体の周りに旋回移動させる工程と、(c)前記(b)工程における前記被写体中の
歯列弓を関心部位
とするパノラマ断層撮影によって、前記関心部位を透過した前記X線細隙ビームを受けた前記X線検出器から出力される投影画像データを記憶部に記憶させる工程と、(d)前記(c)工程にて前記記憶部に記憶された前記投影画像データを、画像処理部が画像処理する工程と、(e)
パノラマ断層の断層面の位置
を変更する操作を受け付ける工程と、(f)
前記(e)工程で受付けた操作に基づき、前記断層面の位置を設定する工程と、を含
み、前記(e)工程にて、前記断層面の一部の位置を前記X線細隙ビームの透過方向について変更する変更操作が受け付けられ、前記(f)工程にて、前記変更操作を受ける前の前記断層面の位置が変更された変更領域と変更されない不変領域からなる新たな断層面の位置を設定する。
【発明の効果】
【0022】
第1の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、既に設定された断層面の一部の位置について変更を受け付けることができる。このように断層面の一部の位置を変更できるため、オペレータが関心のある断層面の位置に、断層面を効率的に設定できる。したがって、画像診断効率を向上させることができる。
【0023】
また、第2の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、関心部位が湾曲形状をなす場合に、その湾曲形状に沿うように曲面状の断層面を設定できる。
【0024】
また、第3の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、演算負担を軽減できる。
【0025】
また、第4の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、オペレータが所望する断層面を設定することができる。
【0026】
また、第5の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、初期断層面位置に断層面を自動的に設定できる。
【0027】
また、第6の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、オペレータが、初期断層面位置の断層面に係る断層画像に基づいて、断層面の位置を変更することができる。
【0028】
また、第7の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、急峻でない曲面状の断層面を設定できる。自然で滑らかにつながる断層画像を生成できる。
【0029】
また、第8の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、変更前の断層画像と変更後の断層画像とを容易に対比できる。このため、断層面位置を適切に設定できる。
【0030】
また、第9の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、旋回軸の軸方向に直交する断層面についての断層画像は視認しにくいものの、模式図によって直感的に断層位置を指定できる。
【0031】
また、第10の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、複数の区分領域毎に、断層面を設定できる。
【0032】
また、第11の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、旋回軸の軸方向に区分して断層面を設定できるため、旋回軸の軸方向において、関心部位の形状が被写体毎に異なる場合にもそれぞれに合った断層面を設定できる。
【0033】
また、第12の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、断層面を旋回軸の軸方向の適切な位置に設定できる。
【0034】
また、第13の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、断層面に直交させることで、ゆがみの無い投影画像を取得できる。
【0035】
また、第14の態様に係る
パノラマX線撮影装置によると、断層画像の生成を部分領域とすることによって演算の負担を少なくし、円滑に断層面位置を適切に設定できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0038】
<1.1.構成及び機能>
図1は、実施形態に係るX線撮影装置100を示す概略斜視図である。X線撮影装置100は、X線撮影(ここでは、X線CT撮影)を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。なお、X線撮影装置100は、X線CT撮影(Computed Tomography)だけではなく、パノラマX線断層撮影も実行可能に構成されている。
【0039】
図1には、左手系のXYZ直交座標系およびxyz直交座標系を付している。ここでは、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。また、以下において、Z軸方向を垂直方向、X軸方向とY軸方向の2次元で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。
【0040】
xyz直交座標系は、旋回する旋回アーム30上に定義される三次元座標系である。ここでは、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらxおよびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態においては、上記のZ軸方向はz軸方向と共通する同一の方向となっている。また本実施形態の旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に回転する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
【0041】
また、本実施形態においては、
図1に示したように、被検者が支柱50に正対したときの右手方向を(+X)方向、背面方向を(+Y)方向、鉛直方向上向きを(+Z)方向としている。また、X線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向、(+y)側に向いたときの左手方向を(+x)方向、鉛直方向上向きを(+z)方向としている。
【0042】
さらに、以下において、X、Y、Z、x、y、zを2次元座標や、平面を定義するのに用いることもある。例えば、X座標とY座標からなる2次元座標をXY座標と称したり、X方向とY方向に拡がる2次元平面をXY平面と称したりする場合がある。
【0043】
本体部1は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線ビームを出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射され、被写体M1を通過したX線を検出するX線検出部20と、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持部300(旋回アーム30)を備えている。また、本体部1は、支持部300を吊り下げ、図示しない昇降用モータの作用で支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、鉛直方向に延びる支柱50と本体制御部60とを備えている。
【0044】
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0045】
X線発生部10は、X線源であるX線管を有するX線発生器11を、ハウジングの内部に備えている。X線発生部10のハウジングは、支持部300に対してZ軸周りに回動可能に取り付けられている。この回動機能は、例えばセファロ撮影時等に使用される。
【0046】
X線検出部20は、被写体M1を透過したX線を検出するX線検出器21を備えている。X線検出器21は、2次元平面(ここでは、xz平面)に広がるように配置された複数のX線検出素子で構成されるイメージセンサを構成している。X線検出素子は、X線の強度に応じた信号を電気信号に変換して外部に出力する。イメージセンサによって、X線検出部20に入射するX線の強度が、所要のフレームレートで、各画素がX線の強度に応じた画素値を持つフレーム画像データ(画像情報)として取得される。
【0047】
なお、X線検出器21としては、MOSセンサ、CMOSセンサが好適に利用できるが、フレーム画像が得られるのであれば、いずれの電気的撮像センサであっても構わない。具体的には、CCDセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)、その他の固体撮像素子等、様々なものを用いることができる。
【0048】
本実施形態では、支持部300が旋回軸31回りに旋回する旋回アーム30で構成され、X線発生部10とX線検出部20とが、略直方体状の旋回アーム30両端のそれぞれに取り付けられている。しかしながら、X線発生部10とX線検出部20とを支持する支持部300の構成は、これに限られるものではない。例えば円環状部分の中心を回転中心として回転する円環状部材によって、X線発生部10とX線検出部20とを対向させた状態で支持するようにしてもよい。
【0049】
昇降部40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。昇降部40は、上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
【0050】
上部フレーム41には、旋回アーム30の上端部分が取り付けられている。このように旋回アーム30は、昇降部40の上部フレーム41に吊り下げされており、昇降部40が支柱50に沿って移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0051】
図4は、被写体保持手段421に固定された被写体M1の頭部を示す概略斜視図である。下部フレーム42には、被写体保持手段421が設けられている。被写体保持手段421は、被写体M1の頭部を左右から固定するロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体保持手段421が設けられている。被検者の頭部は、頭部の前後方向がY軸方向と平行またはほぼ平行となるように固定される。つまり、頭部が固定された状態で、頭部の正中矢状断面がY軸方向とZ軸方向で規定されるYZ面と平行またはほぼ平行である。なお、被写体保持手段421は、ロッドやチンレストに限定されるものではなく、例えば、被写体M1が噛むことで頭部を固定するバイトブロックを備えていてもよい。
【0052】
旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40の昇降に従って昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体M1が被写体保持手段421に固定される。被写体保持手段421は、
図1に示した例では被写体M1の体軸が旋回軸31の軸方向と同じ方向またはほぼ同じ方向となるように被写体M1を固定する。
【0053】
図1に示すように、X線検出部20の内部には、本体部1の各構成の動作を制御する本体制御部60が備えられている。また、本体部1の各構成は、防X線室70内に収容されている。この防X線室70の壁の外側には、本体制御部60からの制御に基づいて、各種情報を表示する液晶モニタ等で構成された表示部61と、本体制御部60に対して各種の命令入力を実現するためのボタン等で構成された操作パネル62とが取り付けられている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。また、X線撮影には各種のモード(パノラマX線断層撮影、CT撮影、セファロ撮影等)があるが、操作パネル62の操作によって、モードの選択可能としてよい。
【0054】
本体部1のX線検出部20のX線検出器21の背面側には操作パネル62と同じまたは類似の機能を有する操作パネル62Aと表示部61と同じまたは類似の機能を有する表示部61Aが設けられ、防X線室70の内外いずれでも操作ができる。
【0055】
情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えており、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信することができる。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。
【0056】
情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81、および、キーボードやマウス等で構成される操作部82が接続されている。オペレータは、表示部81に表示された文字や画像の上で、マウス等を介したポインタ操作等によって、情報処理本体部80に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0057】
図2は、X線撮影装置100に適用可能なセファロスタット43を示す正面図である。
図2に示すように、昇降部40にセファロスタット43が設けられていてもよい。セファロスタット43は、例えば、支柱50の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部を定位置に固定する固定具431やセファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43としては、特開2003−245277号公報に開示されているセファロスタットを含む種々のものを採用することができる。
【0058】
図3は、X線撮影装置100の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本体部1は、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yとで構成される駆動部65を備えている。X軸モータ60X、Y軸モータ60Yは、図示しない、被写体M1に対して相対的に旋回軸31をX軸方向に変位させる機械的要素からなるX方向移動機構と、Y軸方向に変位させる機械的要素からなるY方向移動機構の両者からなるX−Y移動機構を介し、旋回軸31をそれぞれX軸方向、Y軸方向に水平移動させる。
【0059】
また、旋回用モータ60Rは、被写体M1に対して相対的に旋回軸31を回転させる機械的要素からなる旋回機構を介して旋回軸31をZ軸周りに回転させる。つまり駆動部65は、所要位置に位置付けされた被写体M1に対して、旋回アーム30を相対的に水平移動または旋回移動させる。本実施形態においては、駆動部65、旋回軸31が、支持部移動部を構成している。なお、支持部300のZ方向への変位駆動も支持部の移動に含めて考える場合は、前述の昇降部40を支柱50に対して鉛直方向に昇降駆動する図示しない昇降用モータも駆動部65に含む。
【0060】
本体制御部60は、CPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0061】
CPU601は、駆動部65を制御するプログラムPG1を含む各種制御プログラムを実行する。より具体的には、CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a及びX線検出部20を制御するX線検出部制御部601bとして機能する。X線発生部制御部601aは、X線の照射X線量の制御も可能であり、X線照射制御部の機能も有する。また、CPU601は、駆動部65を駆動制御する駆動制御部として機能し、例えばX線発生部10、X線検出部20が各種撮影に応じた軌道で移動するように駆動制御する。CPU601は、駆動制御部として駆動部65を駆動制御することで、支持部移動部の駆動を制御する。
【0062】
なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、一体的にX線撮影装置100における制御系を構成している。
【0063】
本体制御部60に接続された操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等を採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段(操作部)の一例である。したがって、操作手段としては、オペレータの操作を受け付ける構成を備えておればよい。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0064】
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報が文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0065】
本体制御部60は、被写体M1の位置を特定し、該特定された被写体M1の位置に合わせて、X線発生器11およびX線検出器21の旋回時の軌道を調整する。被写体M1の位置の特定方法は、例えば、
図4に示すように、被写体M1の頭部は、チンレストによって顎部が本体部1に対して固定された位置にある。このため、頭部の各部位(特に顎骨や歯牙)の位置を容易に特定できる。また、被写体保持手段421としてバイトブロックを用いた場合も、同様である。
【0066】
本願におけるパノラマ断層撮影においては、
図4に示すように、被写体保持手段421のチンレストに被写体M1頭部の顎部が載置された状態で、関心部位たる歯列弓、さらに詳細には歯列弓モデルdmが設定されている部分の断層画像を取得する。歯列弓モデルとは、標準とされる人体の歯列弓の形状に沿った仮想的な3次元形状であって、ここでは、パノラマ断層に相当する平面視馬蹄形状の仮想的な撮影対象物をいう。このような歯列弓モデルdmが存する部分を対象としたパノラマ断層撮影を実現するように、X線発生器11およびX線検出器21の移動軌跡が設定されている。
【0067】
歯列弓モデルdmは、被写体保持手段421に対し、3次元空間中の固定的な位置を占めている。なお、歯列弓モデルdmが示すパノラマ断層の位置は、本体部1における3次元空間内で特定されているため、歯列弓モデルdmの位置(標準位置)は、3次元的な座標の座標情報として把握される。また、歯列弓モデルdmは、1つに限定されるものではない。例えば、成人(成人男性又は成人女性)、子供、老人といったように、各年齢等に対応する歯列弓モデルdmを予めいくつか用意しておき、被写体M1に合わせて選択できるようにしてよい。歯列弓モデルdmの情報は、記憶部802等に保存されており、位置設定部801aが適宜読み出す。
【0068】
歯列弓モデルdmの大きさを含んだ形状、その位置は、例えば、成人男性、成人女性といった対象群の一般的骨格から共通に用いられるものを導き出すことで設定できる。個体別の口腔内の歯列の計測やX線透視画像から個別の歯列弓モデルを得るようにしてもよい。
【0069】
また、被写体M1における歯列弓モデルdmの位置を特定する他の方法として、レーザービームを利用するものが考えられる。具体的には、X線発生部10に備えられた位置検出部(ここでは、レーザー光源)からレーザービームを出射させ、該レーザービームが被検者の顔面の特徴的な位置に照射されるようにX線発生部10を移動させる。例えば唇の口角の位置にレーザービームを照射するようにすれば、歯列弓モデルdmの一部である犬歯等の位置をおおよそ特定することができる。これにより、被写体M1における、歯列弓モデルdmを配置すべき位置を特定できる。このようにして特定、検出した検出結果である位置情報に基づいて、X線発生器11およびX線検出器21の旋回軌道を調整する(シフトさせる)。これにより、X線発生器11,X線検出器21および被写体M1との位置関係を適切に調整して、パノラマX線断層撮影を行うことも可能である。
【0070】
なお、位置調整を行う態様としては、被写体M1に対してX線発生器11かX線検出器21の一方が相対的に移動する態様、または、被写体M1に対してX線発生器11かX線検出器21の双方が相対的に移動する態様が想定される。いずれにしても、被写体M1、X線発生器11、X線検出器21の3者間の位置関係が調整される。
【0071】
本体部1は、操作パネル62、あるいは情報処理装置8からの指令に従って、被写体M1の関心部位(生体器官、骨(歯列を構成する複数の歯牙、顎骨等を含む。)または関節等)を、X線を用いて撮影する。また、本体部1は、各種指令や座標データ等を情報処理装置8から受信する一方、撮影して取得したX線の投影データを情報処理装置8に送信する。
【0072】
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データ(投影画像データを含む。)やプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0073】
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、位置設定部801aおよび画像生成部801bとして機能する。位置設定部801aは、関心部位の形状に応じた断層面の位置の設定を行う。より具体的には、位置設定部801aは、操作部82を介した操作入力に基づく命令を受け、パノラマ断層画像を生成する際の断層面の位置(以下、断層面位置とも称する。)を設定する。この断層面位置設定の詳細については、後述する。また、画像生成部801bは、パノラマX線断層撮影時に取得された投影画像データを再構成する画像処理をして、断層面位置に対応したパノラマ断層画像を生成する画像処理部である。
【0074】
情報処理装置8は、CPU801が位置設定部801aとして機能することによって、位置設定装置として機能する。また情報処理装置8は、CPU801が画像生成部801bとして機能することによって、画像生成装置として機能する。情報処理装置8はこれら双方の機能を備えた画像処理装置である。
【0075】
なお、位置設定部801aは、断層面位置の設定を行う演算系の要素である。操作者からの断層面位置の変更を含んだ設定の操作は、位置設定操作受付部で受け付けられ、位置設定部801aは、位置設定操作受付部を通して断層面位置の設定の命令を受け付ける。位置調整用画像もしくは位置設定用画像を表示するときの表示部81や、操作者が断層面位置変更操作の入力に用いるときの操作部82その他の入力装置等は、位置設定操作受付部の構成要素の例である。
【0076】
一般的なパノラマ撮影では、取得した投影画像データが示す短冊状の画像の両端部分同士を重ね合わせるシフト加算を行うことによって、1枚のパノラマ断層画像を生成する。これに対して、本願では、投影画像データに対して逆投影等の再構成演算を行って、三次元データを生成し、設定された断層面に基づくパノラマ断層画像を再構成するものである。
【0077】
なお、所定のネットワーク回線等を介して、本体制御部60または情報処理本体部80がプログラムPG1,PG2を取得するようにしてもよい。また、本体制御部60または情報処理本体部80が、可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得するようにしてもよい。さらに、投影画像データは、必ずしも本体部1で取得したものでなくてもよい。他のX線撮影装置で取得された投影画像データを、情報処理装置8がネットワーク等を介して取得するようにしてもよい。
【0078】
<1.2.動作説明>
図5は、X線撮影装置100の動作の流れを示す図である。なお、特に断らない限り、X線撮影装置100の動作において、パノラマX線撮影は主に本体制御部60の制御の下に行われ、画像処理または画像表示処理については、主に情報処理装置8の制御の下に行われるものとする。
【0079】
まず、X線撮影装置100においては、パノラマ断層撮影が行われる(ステップS1)。パノラマ断層撮影の詳細について、次に説明する。
【0080】
図6は、パノラマ撮影の方法を説明する説明図である。なお、
図2は、パノラマ断層撮影中における、X線発生器11及びX線検出器21を上方から旋回軸31に沿う方向に見下ろしたときの平面図となっている。
【0081】
図6において、被写体M1の歯列弓DAに対するX線発生器11とX線検出器21の位置関係は、以下の通りである。すなわち、歯列弓DAを挟んでX線発生器11とX線検出器21が旋回することによって、X線発生器11及びX線検出器21が、左顎にX線照射する位置から前歯中央にX線照射する位置まで、位置LC1、LC2、LC3の順に変位していく。また、右顎については、図示を省略するが、被写体M1の正中面(人体を左右の中心で2つに分ける断面)を対称面として、
図6に示す移動軌跡と対称的な軌跡を通る。なお、曲線ENは、X線細隙ビームBX1の軌跡によって描かれる包絡線である。換言すると、パノラマ断層撮影中、本体部1を旋回軸31に沿って見下ろしたとき、X線細隙ビームBX1は、この曲線ENに接するように回転移動することとなる。
【0082】
X線発生器11とX線検出器21は、歯列弓DAを間に挟んだ状態で旋回アーム30が移動する旋回軸31を中心に旋回しつつ変位していく。パノラマ撮影では、歪みを防止する目的で、予め設定された断層面をなす歯列弓DAの少なくとも一部分に対しては、X線細隙ビームBX1の光軸(具体的には、X線細隙ビームBX1の中心線)が、直交するように照射することが望ましい。また、歯列弓DAの被撮影部分と、X線発生器11及びX線検出器21との距離を一定に保つことが望ましい。これらの条件を満たすため、X線発生器11、X線検出器21の旋回中心は撮影が進行するに従って逐次移動することとなる。本実施形態では、標準的なサイズ及び形状とされる歯列弓モデルdmを歯列弓DAとして、パノラマ断層撮影が行われる。なお、被撮影部分と、X線発生器11及びX線検出器21との距離は、必ずしも一定でなくてもよい。一定としない場合、X線検出器21に投影されるX線像の倍率が変動することとなるが、この問題は、情報処理装置8における画像処理(拡大処理または縮小処理)によって解消可能である。
【0083】
パノラマ撮影時には、X線発生器11およびX線検出器21が、被写体M1(
図1に示す例では頭部)を挟んで互いに対峙するように配置される。そして、X線発生器11およびX線検出器21が一体的に被写体M1周りを回転するように、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y、および、旋回用モータ60Rが駆動される(
図3参照)。また、X線発生器11から放射されたX線は、X線規制部16(1次X線遮蔽部)を透過することによって、z軸方向に延びる細長状のX線細隙ビームBX1に成形される。被写体M1を透過したX線細隙ビームBX1は、好ましくは、細隙を形成するX線検出器21の前面に設けたコリメータ(2次X線遮蔽部)によって散乱する不要なX線部分が部分的に遮断される。そして、X線細隙ビームBX1のうち、該コリメータの細隙を透過したものがX線検出器21に入射することとなる。
【0084】
図5に戻って、ステップS1におけるパノラマ断層撮影が完了することによって、X線検出器21に入射するX線の強度に基づく複数の細長状の投影画像データ(すなわち、上述のフレーム画像データ)が取得される(ステップS2)。これら投影画像データは、適宜のタイミングで情報処理装置8に送信される。送信された投影画像データは記憶部602に記憶される。
【0085】
次に、情報処理装置8は、標準断層面についてのパノラマ断層画像を生成し、表示部81に表示する(ステップS3)。詳細には、情報処理装置8は、ステップS2で得た投影画像データを再構成演算、例えば逆投影することによって、X線吸収度に応じた三次元データを生成する。三次元データは、撮影した各地点のX線吸収度をボクセルデータとして管理したものであり、ボクセル毎にX線吸収度を示すデータが記録されている。情報処理装置8は、この三次元データを、歯列弓モデルdmに対応して予め規定されている標準断層面の位置(標準断層面位置)でスライスし、1枚のスライス画像であるパノラマ断層画像を生成する。そして、情報処理装置8は、表示部81に生成したパノラマ断層画像を表示する。位置設定部801aが、標準断層面の位置を記憶部から読み出し、これに基づいて、画像生成部801bが、標準断層面に結像したパノラマ断層画像を生成する。
【0086】
再構成演算のうちの逆投影の例としては、フィルタードバックプロジェクションの手法を採用することができる。例えば、各ボクセルについて投影画像データからの逆投影の演算を行うにあたっては、投影画像データ中の目標のボクセルに対応する位置の係数を大きく、他の位置の係数を小さくするフィルタを用いる。これによって、目標のボクセルを外れる箇所については過剰な濃度値にならないようにキャンセルする演算を行う。
【0087】
画像の処理としては、逆投影のほかに、投影画像データを所望の断層面位置の濃度情報を強調するように重ね合わせる合成処理もあり、本願でも利用可能である。ただし、断層面設定の目標となりうる箇所の三次元のボクセルデータを鮮明に生成できる点で、逆投影の処理の方が有利な場合がある。
【0088】
なお、本願において、「スライスする」とは、三次元データが示す領域を、ある平面(または曲面)に沿って所定の厚みで切断することをいう。また、スライス画像とは、その切り出した一定の厚みを有する撮影領域の部分を、三次元データが示すX線吸収度に基づいて、2次元の画像(断層画像)に展開したものをいう。スライス画像の生成は、コンピュータまたはワークステーション上で実行される一般的な画像処理である。
【0089】
標準断層面についてのパノラマ断層画像の表示が完了すると、情報処理装置8は、断層面位置の変更の受付ルーチンを開始する(ステップS4)。このルーチンの詳細については、
図7を参照しつつ説明する。
【0090】
図7は、断層面位置の変更の受付ルーチンの詳細を示す流れ図である。ステップS4に係るルーチンは、パノラマ断層画像を生成するための断層面位置を、ステップS3で設定された標準断層面位置から、オペレータが所望する位置に変更することを目的として実行される。なお、本願においては、「断層面位置の変更」とは、断層面の形状を変更することを含み、さらには、形状変更を伴わずに移動(平行移動)させることも含む概念である。
【0091】
断層面位置の変更ルーチンが開始されると、情報処理装置8が断層面位置を調整するための画像(位置調整用画像もしくは位置設定用画像)を表示部81に表示する(ステップS11)。なお、以下に説明する断層面位置の設定、変更のプロセスは、位置設定部801aの制御のもとに行われる。
【0092】
図8は、位置調整用画像IPAの一例を示す図である。情報処理装置8は、位置調整画像として、
図8に示す歯列弓DAsの画像を表示部81に表示する。
図8に示す歯列弓DAsは、被写体M1の頭頂側から見た下顎部の歯列弓を模式的に示したものである。より詳細には、歯列弓DAsは、ステップS3で設定した被写体M1における歯列弓モデルdmに適合した歯列弓を示している。なお、同図においては、実際の被写体M1の歯列弓DArの位置を破線で図示している。また、
図8に示すように、ステップS11の時点では、断層面の位置を示す設定線L10が、歯列弓DAsに対応した標準断層面位置LCsに設定されている。また、情報処理装置8は、位置調整用画像として、歯列弓DArの画像とは別に、現時点で設定されている設定線L10についてのパノラマ断層画像を表示部81に表示する。
【0093】
関心部位を全域にわたって長手方向に断つ面(以下、「長手断面」と称する。図示の例では、長手断面は平面である。)を想定すると、位置調整用画像は、当該長手断面に平行な面をスライス面とする画像であることが好適である。例えば、歯列弓を対象とする場合、歯列弓の全域を長手方向にスライスするスライス面が長手断面となり、頚椎を対象とする場合、正中面が長手断面となる。
【0094】
歯列は歯冠の部分に関してはほぼ平面上に並んでいる。当該平面と平行なスライス面を上述の長手断面として、
図8のような位置調整用画像を用いると、歯列弓が湾曲していても、歯列弓の全体が観察できるので、部分指定に好適である。
【0095】
本願の実施例においては、関心領域を全域にわたって長手方向に断つ面を長手断面LSと称し、長手断面の像を長手断面像ILSと称し、
図8のような歯列弓の長手断面像を歯列弓長手断面像DLSと称することとする。すなわち、歯列弓長手断面像DLSは長手断面像ILSの一例である。
【0096】
長手断面像ILS、歯列弓長手断面像DLSは、上述のように、線図のイラスト等、関心領域の形状を模式的に示したものでよい。過去に撮影したCT画像データがある場合、顎部のアキシャル断面画像を用いてもよい。
図15に関して後述するように、パノラマ断層撮影によって取得した投影画像データを逆投影した三次元データを、Z軸の軸方向から見たスライス面でスライスして得られる断層画像を用いたものでもよい。
【0097】
長手断面を平面とした方が、曲面とするよりも演算処理を容易化し易い。ただし、部位の形状によっては、長手断面を曲面にすることも考えられる。
【0098】
標準の長手断面LSの位置は、上記のように、Z軸の軸方向から見たスライス面として定められるが、一例として、次のような定め方が考えられる。すなわち、被写体M1が閉口で被写体保持手段421に固定されるものとして、固定された頭部のあるべき標準位置より、演算において、本体部1の存する3次元空間座標上、対象群の標準的な咬合面MSの位置も設定できる。
【0099】
前述の歯列弓モデルdmの上顎の部分と下顎の部分は、咬合面MS(図示省略)を挟持する位置関係にある。例えば、咬合面MSを長手断面LSとし、長手断面像ILS(具体的には歯列弓長手断面像DLS)を生成して位置調整用画像IPAとして表示する。厳密には、歯列弓は、咬合面の位置においては顎骨が無いので、必ずしも
図8に示す歯列弓長手断面像DLSのような形状をとっていない。しかしながら、歯列弓長手断面像DLSは設定線L10の位置の表示、設定に用いられるものであるから、断層面位置が定めやすいよう、歯列弓の特徴的な形状としてもよい。
【0100】
長手断面LSは、必ずしも咬合面MSの箇所に定めなくともよく、咬合面MSと平行な面に定めてよい。また、長手断面LSを見る視線方向は、厳密にZ軸の軸方向でなくとも、長手断面LSを正視または略正視する方向であればよい。
【0101】
図9は、位置調整用画像として表示されるパノラマ断層画像を示す図である。
図8に示す例では、ステップS3で設定された断層面位置が実際の歯列弓DArに対応した位置ではない。このため、
図9に示すパノラマ断層画像i1は、ピントが外れた画像となっている。このようなパノラマ断層画像i1では、画像診断に必要な情報を充分に取得することは困難であるため、情報処理装置8は、断層面位置を、実際の歯列弓DArの位置に合わせて変更する操作を受け付ける。
【0102】
図7に戻って、位置調整用画像を表示した情報処理装置8は、オペレータから断層面位置を変更する命令を受け付けたかどうか判定する(ステップS12)。変更命令を受け付けたと判定した場合は、情報処理装置8は、ステップS13に係るパノラマ断層画像の更新を実行する。変更命令を受け付けていないと判定した場合、情報処理装置8は、ステップS13をスキップして、ステップS14を実行する。
【0103】
ステップS14では、情報処理装置8は、断層面位置の変更の受付ルーチン(ステップS4)を終了する指示があったか否かを判定する。終了指示があると判定した場合は、ルーチンを終了する。終了指示がないと判定した場合は、情報処理装置8は、ステップS12に戻り、再びステップS12に係る判定処理を実行する。
【0104】
図10は、断層面位置の変更操作を受け付けたときの、位置調整用画像IPA(DLS)の例を示す図である。
図10に示す例では、破線で示される元の設定線L10が、実線で示す設定線L10にその位置が変更されている。なお、以下において、変更操作がなされることは、当該変更操作を通じて変更命令が発されることを意味する。
【0105】
具体的には、前歯領域の1地点Pk1、左の臼歯領域の1地点Pk2、右の臼歯領域の1地点Pk3、左の顎関節領域の1地点Pk4、右の顎関節領域の1地点Pk5のそれぞれが概ね各地点のX線細隙ビームの透過方向に変更操作を受けている。その結果、元の設定線L10が、左右の方向及び前方にそれぞれ異なる倍率へ広げられている。これによって、実際の歯列弓DArの形状に対応した曲線状の設定線L10が設定されている。
【0106】
前歯領域の1地点Pk1〜Pk5のそれぞれの変更の方向は、必ずしも各地点のX線細隙ビームの透過方向の成分のみを含むものでなくともよく、透過方向に交差する方向の成分を含んでいてもよい。すなわち、X線細隙ビームの透過方向の成分が含まれる変更操作は受け付けられる。なお、X線細隙ビームの「透過方向」には、プラスの方向(X線源から離れる方向)だけではなく、マイナスの方向(X線源に向かう方向)のベクトルも含むものとする。
【0107】
歯列弓DAsは、変更操作の過程において、変更操作を受ける前の断層面の位置が変更された変更領域と変更されない不変領域が設定される。例えば、地点Pk1については歯列弓DAsの湾曲の方向に沿って複数の領域AR1〜AR5が割り当てられ、地点Pk1の変更操作を加えたとする。すると、領域AR1〜AR3の範囲は地点Pk1の変更に合わせて新たな断層面位置が設定されるが、領域AR4、AR5は変更操作を受ける前の断層面の位置が維持されるように設定することができる。設定線L10上の、地点Pk1から所定の距離内の設定線の領域が変更領域とされ、残りの領域が不変領域となるようにしてもよい。
【0108】
また、
図10に示す例では、変更操作がPk1〜Pk5のそれぞれ1地点に対して加えられるが、一定の範囲、例えば、2〜3本の歯にわたる範囲が変更操作を受けるようにしてもよい。例えば、前歯領域の断層面位置を変更する場合の例として、
図10に示す地点Pk1にある歯と、その両隣の歯を全て含む領域に対して変更操作が加えられ、これらの3本の歯にわたる断層面位置が一括して移動されるように構成してもよい。
【0109】
このように設定線L10の位置が変更されると、情報処理装置8は、変更後の設定線L10に基づいて、新たな断層面位置(3次元座標上の位置)を特定する。そして、情報処理装置8は、その特定された断層面位置についてのパノラマ断層画像を生成する。さらに、表示部81にすでに表示されているパノラマ断層画像を、生成した新たなパノラマ断層画像に更新する。なお、元のパノラマ断層画像とともに、新たなパノラマ断層画像とを同時に表示してもよい。これによって、断層面位置の変更前と変更後とで生成されるパノラマ断層画像を良好に対比できるため、断層面位置を適切な位置に設定できる。
【0110】
操作者が変更後の設定線L10が新たな断層面位置として適切と判断した場合に、歯列弓DAsの画像を、設定線L10に適合するように変形できるようにしてもよい。例えば、操作者が操作部82を通して歯列弓DAsの画像を設定線L10に適合させる命令を出すと、情報処理装置8が変更後の設定線L10の座標を演算し、各歯の中央を設定線L10が通るような新たな歯列弓DAsの画像を生成する。そして、情報処理装置8が、元の歯列弓DAsの画像を表示画面上から消去して、新たな歯列弓DAsの画像を表示してもよい。
【0111】
図11は、位置調整後に更新されたパノラマ断層画像i1を示す概略図である。
図11に示す画像は、ステップS14において表示されるパノラマ断層画像に相当する。
図11に示すように、断層面位置の調整が適切に行われることによって、ピントの合ったパノラマ断層画像を生成することができる。このように、オペレータが関心のある部分にピントが合うように、断層面位置の位置調整が行われる。
【0112】
位置調整後に更新されたパノラマ断層画像i1は、投影画像データと組にして記憶部602に保存しておいて、後日呼び出して再度断層面位置の調整が可能としてよい。その場合、位置調整用画像の再現も可能としてよい。すなわち、呼び出したパノラマ断層画像i1の設定線L10がどのような位置にあったのかを、位置調整用画像上で再現表示でき、さらなる調整操作も受け付けるようにしてよい。前述のように変更後の設定線L10に適合させて新たな歯列弓DAsの画像を変形させた場合には、変形後の位置調整用画像が再現可能とすることもできる。これは、後述の変形例においても同様である。
【0113】
なお、変更後の断層面位置を指定する方法として、例えば、オペレータが設定線L10上にいくつかの制御点を設定し、各制御点を個々に移動させることによって、設定線L10の位置を変更するようにしてもよい。その際、制御点間を自動的に直線または曲線で補間するようにしてよい。曲線で補間する場合は、スプライン曲線、ベジェ曲線等を利用することが考えられる。この場合、設定線L10の一部(すなわち、断層面の一部)の位置について変更を受け付けることができる。これによって、断層面の一部を変更できるため、オペレータが関心のあるパノラマ断層の位置に、断層面を設定できる。したがって、画像診断効率を向上させることができる。曲線で補間を行うことによって、急峻でない曲面状の断層面を設定できる。自然で滑らかにつながる断層画像を生成できる。
【0114】
また、変更前の設定線L10の一部または全部を削除し、新たな設定線L10を一から指定できるようにしてよい。この場合、例えば、オペレータがいくつかの点を指定し、その点を曲線補間によって接続することによって、新たな設定線L10が生成されるようにしてもよい。また、予め定義された仮定線(直線または曲線を含む。)を位置調整用画像上に配置し、その配置された仮定線を新たな設定線L10に設定するようにしてもよい。このとき、仮定線の形状を任意に変形可能としてよい。
【0115】
また、本実施形態では、ステップS3において、予め規定された標準断層面の位置を初期断層面位置としている。このため、ステップS4に係る断層面位置の変更操作前に、初期断層面位置(すなわち、標準断層面位置)についてのパノラマ断層画像が生成され、表示される。しかしながら、ステップS3において、標準断層面位置が初期断層面位置とされる代わりに、オペレータが設定線L10を指定することによって、オペレータの指定に基づいて初期断層面位置が設定されるようにしてもよい。この場合も、オペレータがいくつかの点を指定し、その点を曲線補間によって接続することによって、設定線L10が生成されるようにしてもよい。
【0116】
<位置調整画像の変形例>
図12は、変形例に係る位置調整用画像IPA(DLS)を示す図である。
図13は、変形例に係るパノラマ断層画像i1の表示例を示す概略図である。
【0117】
図12に示す例は、位置調整用画像として表示された歯列弓DAs上で、設定線L10の位置を変更する点では、
図10に示すものと共通する。しかしながら、位置変更をしている箇所が、設定線L10のうち、破線で示す3つの部分領域Pt1,Pt2,Pt3に囲まれた線分LP1,LP2,LP3に限定されている。
【0118】
本変形例では、線分LP1、LP2,LP3を頬側から舌側に向けて、もしくは、舌側から頬側に向けて移動させることが可能となっている。線分LP1,LP2,LP3の位置が変更されると、情報処理装置8は、設定線L10のうち、新たな線分LP1,LP2,LP3の位置に対応する断層面についてのみ、部分パノラマ断層画像i11,i12,i13を生成する。
【0119】
また、情報処理装置8は、
図13に示すように、生成した部分パノラマ断層画像i11,i12,i13を、元のパノラマ断層画像i1(すなわち、標準断層面位置LCsについての断層画像)に重ねるようにして表示する。パノラマ断層画像i1上における各部分パノラマ断層画像i11,i12,i13の位置は、元の設定線L10上における線分LP1,LP2,LP3の位置に対応している。
【0120】
図12における線分LP1,LP2,LP3のいずれかに変更が加えられると、その都度、更新された部分パノラマ断層画像i11,i12,i13のいずれかが、パノラマ断層画像i1上に表示されることとなる。更新後の部分パノラマ断層画像i11,i12,i13が所望のピントの合った画像であれば、操作者は位置変更の完了の命令を出すこととなる。
【0121】
本変形例の場合、線分LP1,LP2,LP3の位置変更が完了すると、
図12中、破線で示すように、変更後の線分LP1,LP2間、線分LP1,LP3間が曲線で接続する曲線補間処理が行われる。また、LP2から左顎関節に向けて後方に延びる線分、および、LP3から右額関節にむけて後方に延びる線分も補間される。これによって、新たな設定線L10が生成される。なお、補間される線分は、元の設定線L10において、線分LP1,LP2間、線分LP1,LP3間を接続する線分、線分LP2から後方に延びる線分、及び、線分LP3から後方に延びる線分を、そのまま若しくは拡大縮小変形したものであってもよい。このようにして、新たな設定線L10が設定されると、新たな設定線L10に対応した断層面についてのパノラマ断層画像が生成され、表示部81に表示されることとなる。
【0122】
本変形例の場合、情報処理装置8は、デフォルトで生成する元のパノラマ断層画像i1を除いては、設定線L10の位置が確定されるまでは、設定線L10(すなわち、断層面)の一部についての部分パノラマ断層画像のみを生成し、その他の部分についての断層画像は生成しない。このため、演算の負担を軽減できるため、部分パノラマ断層画像の表示を円滑に行うことができる。このため、断層面の位置を効率的に設定することができる。
【0123】
本変形例は、換言すると、関心部位である歯列弓が、部分領域Pt1,Pt2,Pt3によって複数に区分されており、その複数の区分領域毎に変更操作を受け付けるものである。
【0124】
なお、部分パノラマ断層画像を生成する部分領域の数は、本変形例のように3つに限定されるものではなく、任意に変更してよい。また、当該部分領域の位置は、任意に変更できるようにしてよい。このような部分領域の設定は、位置設定部801aが受け付けるようにすればよい。この場合、位置設定部801aが部分領域設定部として機能することとなる。
【0125】
また、上記の例では線分LP1、LP2,LP3を頬側から舌側に向けて、もしくは、舌側から頬側に向けて移動させているが、新たな位置を点で指定してもよい。この場合、部分領域Pt1,Pt2,Pt3の中だけで線の補間処理が行われてもよい。
【0126】
<他の変形例1>
図14は、変形例に係る部分パノラマ断層画像i11,i12,i13の表示例を示す図である。
図13に示す表示例では、設定線L10の位置が確定されるまでは、生成された部分パノラマ断層画像i11,i12,i13が、元のパノラマ断層画像i1上に表示される。しかしながら、
図14に示すように、部分パノラマ断層画像i11,i12,i13のみが表示部81に表示されるようにしてよい。
【0127】
この変形例1においては、最初から元のパノラマ断層画像i1の部分領域Pt1,Pt2,Pt3の範囲のみ表示して、それぞれピントが合ってから、全体の新たなパノラマ断層画像i1を表示するようにしてもよい。また、いったん元の全体のパノラマ断層画像i1を表示し、表示上消去して部分パノラマ断層画像i11,i12,i13のみの表示に切り替え、それぞれピントが合ってから全体のパノラマ断層画像i1を表示するようにしてもよい。
【0128】
<他の変形例2>
図15は、他の変形例に係る位置調整用画像IPA(DLS)を示す図である。
図15に示す例では、位置調整画像として、歯列弓DAsの他、Z軸断層画像F10が表示されている。このZ軸断層画像F10は、ステップS2にて取得した投影画像データを逆投影した三次元データを、Z軸(すなわち旋回軸31)の軸方向から見たスライス面でスライスして得られる断層画像である。なおZ軸断層画像F10は、幅が限定的なX線細隙ビームBX1から再構成されるために、いわゆるX線CT撮影で取得される断層画像とは異なり、歯牙や顎骨等の各部位が明瞭に把握することは困難である。しかしながら、各歯牙の位置をおおよそ特定することは可能であるため、設定線L10の位置を設定する際には有効な情報となり得る。また旋回軸の軸方向から見た断層画像は不完全なので、視認しにくいところ、模式図である歯列弓DAsを同時に重ねて表示することによって、オペレータが直感的に断層位置を設定できる。なお、
図15に示す例では、歯列弓DAsも同時に表示しているが、省略可能である。
【0129】
<断層面の形状の変形例について>
本実施形態において設定される断層面の形状は、Z軸方向に平行に延びる面であってもよいし、Z軸方向に平行でない面であってもよい。Z軸方向に平行でない面を設定する方法について、
図16及び
図17を参照しつつ説明する。
【0130】
図16及び
図17は、
図12及び
図13に示す例の変形例に係る位置調整用画像を示す図である。
図17に示す例では、パノラマ断層画像i2が表示されている。なお、説明の便宜のため、パノラマ断層画像i2の右側には、被写体M1の歯列弓DArのうち、上顎の前歯FT1と、下顎の前歯FT2の部分をYZ平面で切断したときの断面(歯列断面DAc)を模式的に示している。
【0131】
歯列断面DAcに示すように、一般的な歯列弓DArは、上顎の前歯FT1および下顎の前歯FT2は、その根元側から先端側にかけて、奥側(+Y方向)から前方(−Y方向)に傾斜するように生えている。ここで、Z軸方向に平行に延びる面からなる標準的な断層面を、図示しない標準断層面FS1であるとする。この標準断層面FS1の場合、Z軸方向に平行な形状となっているため、被写体M1によっては、歯列の前歯付近の形状に必ずしも対応しない場合がある。すると、このような標準断層面FS1に基づいて再構成されるパノラマ断層画像は、ピントが外れた不明瞭な断層画像となることがある。
【0132】
これに対して、前歯FT1,FT2の延びる方向に合った断層面を設定することによって、ピントの合ったパノラマ断層画像を生成できる。本例では、まず、パノラマ断層画像i2に、断層面の位置を指定するため、旋回軸31の軸方向に対応する縦方向(Z軸方向)に並ぶ3つの部分領域枠F1,F2,F3が表示される(
図17参照)。
【0133】
部分領域枠F1,F2,F3は、パノラマ断層画像i2よりも小さい部分領域を規定する枠である。部分領域枠F1,F2,F3は、いずれもオペレータの所定操作に基づいて、縦方向(旋回軸の軸方向に対応する方向)に移動できるようにしてもよい。また、部分領域枠F1,F2,F3は、横方向(断層面の延びる方向)に移動できるようにしてもよい。
【0134】
本実施形態では、この部分領域枠F1,F2,F3内に対応する断層面の奥行き方向に関する位置(Y軸方向の位置)を
図16に示す位置調整用画像IPA(DLS)を用いて調整することによって、断層面の位置が変更される。すなわち、部分領域枠F1,F2,F3のそれぞれのZ方向の位置ごとに
図16に示すような位置調整用画像IPA(DLS)が表示される。
【0135】
図16に示す例は、位置変更をしている箇所が、設定線L10のうち、破線で示す部分領域Pt1´に囲まれた線分LP1´に限定されている。この点は、
図12に示すものと共通する。しかしながら、変更指定可能な部分領域が、1つの部分領域Pt1´に限定されている。
【0136】
例えば、枠F1について、
図16に示す位置調整用画像が表示されているとする。線分LP1´を移動操作することで、新たな位置に部分断層面が設定され、新たな位置に対応する部分パノラマ断層画像PF1が生成される。生成された部分パノラマ断層画像PF1は、部分領域枠F1に表示される。さらに、枠F2、F3についても、同様の操作が受け付けられる。部分領域枠F1,F2,F3に対して位置変更操作が加えられるようにして、パノラマ断層画像i2を位置調整用画像IPAとして扱い、部分領域枠F1,F2,F3のそれぞれの範囲でのみ位置変更操作が受け付けられてもよい。この場合、歯列弓長手断面像DLSに対する位置変更操作も部分領域枠F1,F2,F3に対する位置変更操作もいずれも受け付けるようにしてもよく、また、歯列弓長手断面像DLSの方は表示を省略してもよい。
【0137】
部分領域枠F1,F2,F3のそれぞれに、各部分領域枠の高さに応じた長手断面LS1,LS2,LS3が設定され、各長手断面LSの歯列弓長手断面像DLS1,DLS2,DLS3を表示してもよい。このとき、歯列弓長手断面像DLS1,DLS2,DLS3を全て同時に表示するようにし、あるいは、歯列弓長手断面像DLS1,DLS2,DLS3を選択的に切り換えして表示するようにし、操作が加えられてもよい。
【0138】
部分領域枠F1,F2,F3のそれぞれに対応する部分断層面をそれぞれ移動させると、各部分断層面の位置に対応する部分パノラマ断層画像PF1,PF2,PF3がそれぞれ生成される。この部分パノラマ断層画像PF1〜PF3は、
図13に示す部分パノラマ断層画像i11等と同じ要領で生成される。しかし、生成される部分パノラマ断層画像PF1〜PF3は、部分領域枠F1〜F3で定義される大きさとなっている。
【0139】
生成された部分パノラマ断層画像PF1〜PF3は、部分領域枠F1〜F3に表示される。すなわち、部分領域枠F1〜F3内には、部分断層面の奥行き方向の位置が変更される度に、新たな部分パノラマ断層画像PF1〜PF3が生成され、パノラマ断層画像i2上に重ねて表示される。
【0140】
部分領域枠F1,F2,F3のそれぞれに対応する部分断層面の奥行き方向の位置が設定されると、この設定された位置に基づいて断層面が新たに設定される。部分領域枠F1,F2,F3のZ軸方向の位置ごとに調整されたパノラマ断層面はZ軸方向に滑らかに繋がれ、これによって、断層面のZ軸方向における一部が、Z軸方向に直交する方向(ここでは−Y方向)に突出する、断層面が設定される。
【0141】
このように、本変形例は、旋回軸31に沿って並ぶ部分断層面を定義することによって、関心部位である歯列弓を、旋回軸31にそって複数に区分している。そして、その区分領域毎に、位置変更操作を受け付けている。
【0142】
なお、
図17に示す例では、部分領域枠を3つ設けているが、これより少ない数の枠のみ設けるようにしてもよい。例えば、図示の部分領域枠F1〜F3のうちのいずれか1つのみ設けるようにしても、いずれかを2つのみを設けるようにしてもよい。
【0143】
<Z軸方向の位置調整>
図17において述べたように、情報処理装置8は、旋回軸の軸方向(Z軸方向)に沿って位置の変更を受け付けるようにしてもよい。断層面の位置がZ軸方向に変更することによって、生成されるパノラマ断層画像に写る被写体M1の部位を、Z軸方向に関して変更される。したがって、オペレータが関心のある部位のZ軸方向の位置に合わせて、断層面位置を適切に設定できる。
【0144】
例えば、Z方向の予め数を定めた複数の異なる位置ごとに、長手断面LSを設定し、各長手断面LSに
図8に示すような位置調整用画像IPA(DLS)を準備する。前述の咬合面MSに第1の長手断面LSを設定し、咬合面MSと平行な、咬合面MSより高い上顎の歯の位置に第2の長手断面LSを設定し、咬合面MSと平行な、咬合面MSより低い下顎の歯の位置に第3の長手断面LSを設定することが考えられる。これらの第1〜第3の長手断面LSの位置は、概ね、
図17の部分領域枠F1〜F3の領域と同様の位置でよい。また、
図8に示すような位置調整用画像IPA(DLS)の代わりに、
図10、
図12又は
図15に示すような位置調整用画像IPA(DLS)を用いてもよい。長手断面LSと、対応の位置調整用画像IPA(DLS)は、Z方向の異なる位置ごとに3つとする等、限定的な個数だけ準備してもよいが、多数として実質的に無段階となるように準備して、適宜選択できるようにしてもよい。
【0145】
上記実施形態では、被写体M1の顎部を撮影対象としており、その歯列弓DAに対応する断層面を曲面としている。しかしながら、断層面を平面、もしくは、平面と曲面とを組み合わせた形状の面としてもよい。また、X線撮影装置100は、顎部等の歯科領域以外の部位を撮影対象としてもよく、耳鼻科領域や口腔外科領域等の他の医療分野の部位を撮影対象とすることも可能である。上顎骨、下顎骨、脊椎等を対象部位としてもよい。個別の歯自体に適用して、例えば根管の様子を詳細に診断するようにしてもよい。その際、撮影対象部位の形状に応じて、断層面の形状を、平面、曲面もしくはこれらの組み合わせた形状の面としてもよい。
【0146】
なお、本発明は、次のようなX線画像処理方法としても成立し得る。
【0147】
X線画像処理方法であって、
(A) 支持部によって、X線細隙ビームに形成されるX線を発生するX線発生器と、入射したX線の強度に応じた信号を出力するX線検出器とを、被写体を挟んで互いに対向させて支持する工程と、
(B) 支持部移動部が前記支持部を移動させることによって、前記X線発生器及び前記X線検出器を被写体の周りに旋回移動させる工程と、
(C) 前記(B)工程における前記被写体中の関心部位の断層撮影によって、前記関心部位を透過した前記X線細隙ビームを受けた前記X線検出器から出力される投影画像データを受けることによって得た前記投影画像データを、記憶部に記憶させる工程と、
(D) 前記(C)工程にて前記記憶部に記憶された前記投影画像データを、画像処理部が画像処理する工程と、
(E) 前記関心部位の形状に応じた断層面の位置を設定する工程と、
(F) 前記(E)工程にて設定された前記関心部位の形状に沿った前記断層面の一部の位置を前記X線細隙ビームの透過方向の成分を含む方向に変更する命令が受け付けられることによって、前記変更命令を受ける前の前記断層面の位置が変更された変更領域と変更されない不変領域からなる新たな前記断層面の位置を設定する工程と、
(G) 前記新たな断層面の位置に対応する断層画像を生成する工程と、
を含む、X線画像処理方法。
【0148】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。