特許第5881205号(P5881205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881205
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-228466(P2011-228466)
(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公開番号】特開2013-88267(P2013-88267A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】佐井 正和
(72)【発明者】
【氏名】大森 淳司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−243692(JP,A)
【文献】 特開2002−318215(JP,A)
【文献】 特開昭61−008654(JP,A)
【文献】 特開昭61−159146(JP,A)
【文献】 特開2006−349513(JP,A)
【文献】 特開2001−276196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/02−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
妨害ガスを除去するフィルタと、
ヒータとLPG検出用の金属酸化物半導体とを備え、フィルタとは分離して設けられ、フィルタで処理済みのガス中の検出対象のガス成分であるLPGを検出するセンサ本体とを備えたガスセンサにおいて、
前記フィルタは、ゼオライトと活性アルミナの質量比で9:1〜1:4の混合物であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記フィルタには、ゼオライトと活性アルミナ以外には、酸性あるいは塩基性の極性ガスの吸着能力を高めるための、塩基性成分も酸性成分も添加されていないことを特徴とする、請求項1のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガスセンサのフィルタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
LPG等を検出するガスセンサのフィルタとして、ゼオライトが用いられている。これは、ゼオライトは無極性の炭化水素を吸着しないが、極性の強いエタノール等を吸着するためである。しかしながらゼオライトは、シリコーンガス、亜硫酸ガス等の被毒物質を除去する能力が不十分で、高濃度の被毒ガスに曝されるとガスセンサの特性が影響を受けるおそれがある。
【0003】
ここで関連する先行技術を示す。特許文献1(JP2006-349513A)は金属酸化物半導体ガスセンサのフィルタに、ゼオライト,活性アルミナ等を用いることを開示している。また特許文献2(JP3568060B)はガスセンサのフィルタに活性白土、ゼオライト等を用いることを開示している。しかしながらゼオライトと活性アルミナとの混合物をフィルタとして用いることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2006-349513A
【特許文献2】JP3568060B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、炭化水素等を吸着せず、かつシリコーンガスの除去能力が高いフィルタを備えたガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のガスセンサは、妨害ガスを除去するフィルタとと、ヒータとLPG検出用の金属酸化物半導体とを備え、フィルタとは分離して設けられ、フィルタで処理済みのガス中の検出対象のガス成分であるLPGを検出するセンサ本体とを備えたガスセンサにおいて、フィルタがゼオライトと活性アルミナの質量比で9:1〜1:4の混合物であることを特徴とする。好ましくは、前記フィルタには、ゼオライトと活性アルミナ以外には、酸性あるいは塩基性の極性ガスの吸着能力を高めるための、塩基性成分も酸性成分も添加されていない。
【0007】
センサ本体の種類は、金属酸化物半導体の抵抗値の変化を用いたもの、電気化学式のもの、接触燃焼式のものなど任意であるが、この発明では金属酸化物半導体を用いる。検出対象のガスは、メタン、LPG等の炭化水素、あるいは水素、COなど任意であるが、LPGの場合は活性炭等のフィルタを用いることができないので、この発明ではLPGを検出する。そしてLPGは金属酸化物半導体を用いたセンサ本体、あるいは接触燃焼式のセンサ本体で検出するのに適しており、特に金属酸化物半導体による検出には長年の実績があり、この発明では金属酸化物半導体を用いる。除去対象のガスには、例えばエタノール等の誤報原因となるガスと、シリコーンガス、亜硫酸ガス等の被毒物質がある。

【0008】
図2図7はシリコーンガス中に金属酸化物半導体ガスセンサを曝した際の影響を示し、ゼオライトが20〜90質量%で活性アルミナが80〜10質量%の場合に、シリコーンガスの影響が小さくなることが分かる。また表1は亜硫酸ガス中に金属酸化物半導体ガスセンサを曝した際の影響を示し、ゼオライトと活性アルミナとの混合物で活性アルミナの含有量を10質量%以上とすると、亜硫酸ガスの影響が小さくなることが分かる。なお好ましくは、ゼオライトと活性アルミナとの割合は、ゼオライト90-30質量%、活性アルミナ10-70質量%とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例のガスセンサの断面図
図2】ゼオライト100%のフィルタを用いた比較例の特性図
図3】ゼオライト90%−活性アルミナ10%のフィルタを用いた実施例の特性図
図4】ゼオライト80%−活性アルミナ20%のフィルタを用いた実施例の特性図
図5】ゼオライト60%−活性アルミナ40%のフィルタを用いた実施例の特性図
図6】ゼオライト30%−活性アルミナ70%のフィルタを用いた実施例の特性図
図7】活性アルミナ100%のフィルタを用いた比較例の特性図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1図7に実施例のガスセンサ2とその特性とを示す。図1において、4は絶縁体のベースで、ステム6を支持している。8はセンサ本体で、絶縁基板に金属酸化物半導体膜10と膜状のヒータ12とを設けたもので、リード線14によりステム6に接続されている。16は金属製あるいは樹脂製のカバーで、フィルタ18を備え、金網20,22によりフィルタ18の上下を支持すると共に、リング24により金網22を支持している。26はリング24を支持するための突起である。
【0012】
ガスセンサの構造は任意で、例えばシリコン基板の空洞上の絶縁膜に金属酸化物半導体膜とヒータ膜とを設けたMEMSガスセンサ、あるいはビード状の金属酸化物半導体にヒータと電極とを埋設したビード状のガスセンサ等でも良い。また金属酸化物半導体ガスセンサではなく、接触燃焼式ガスセンサ、電気化学式ガスセンサ等でも良い。
【0013】
フィルタ18はゼオライトが20-90質量%と活性アルミナが80-10質量%との混合物からなり、ゼオライトは例えばシリカ含有量が多くシリコーンガスの吸着能力が高いゼオライトで、モルデナイト型ゼオライトであるが、Y型ゼオライト等、ゼオライトの種類は任意である。活性アルミナはγアルミナあるいは無定形アルミナ等から成り、γアルミナをさらにγ、χ等に分類した際の種類は任意である。またフィルタ18に、吸着したエタノール等を室温で分解するためのPt,Au等の微粒子、もしくは酸性あるいは塩基性の極性ガスの吸着能力を高めるための塩基性成分あるいは酸性成分等を添加しても良い。
【0014】
フィルタ18は例えば周囲温度に保たれて、ガスセンサ2へ導入されるガスからセンサ本体8を被毒するシリコーンガス、亜硫酸ガス等の被毒ガスと、誤報の原因となるエタノール等の妨害ガスを除去し、顆粒状、粉体状、板状等、形状は任意である。センサ1個当たりのフィルタ18の質量は例えば10-150mg程度、好ましくは20-100mg程度とする。
【0015】
図1の構造で、LPG検出用のガスセンサ2を作製した。金属酸化物半導体膜10は厚さ20μmのSnO2膜で、SnO2の100質量%に対し1.5質量%のPd微粒子が担持されている。ヒータ12により、金属酸化物半導体膜10を430℃に加熱し、LPGを検出する。フィルタ18は総量を60mgに固定し、顆粒状のシリカ含有量が多いモルデナイド型ゼオライト(カチオン型はH,BET比表面積400m2/g,SiO2とAl2O3のモル比が30)と、顆粒状の活性アルミナ(BET比表面積270m2/g,細孔容積0.38ml/g,灼熱時の重量減が6.5質量%,固体分中のアルミナ含有量が99.7質量%)との混合比を変更した。
【0016】
ガスセンサ2の初期特性を測定後、シリコーンガスへの耐久テストとして、D3,D4,D5の環状シロキサンを各20ppmで合計60ppm含む槽にガスセンサ2を通電状態で入れ、24時間曝露する毎に槽からセンサを取り出して、各種ガスへの感度を測定した。槽内の雰囲気をセンサを取り出す毎に換気し、換気後にD3,D4,D5の環状シロキサンを各20ppmで合計60ppm注入した。なおD3,D4,D5の3,4,5はシリコーン分子中の珪素原子の数を表し、D3,D4,D5はシリコーンガスとしては低沸点の物質で、蒸発し易いため被毒ガスになりやすい物質である。
【0017】
フィルタの組成毎に3個のセンサを用いて測定し、4日間の耐久テストの結果を図2図7に示す。図のiBはイソブタンで、イソブタン、プロパン、水素、メタンに対して、当初iB1800ppmで警報するように設定した際の警報濃度を示す。図示したガス以外にエタノール感度を測定したが、警報濃度はいずれのフィルタでも10,000ppm以上であった。図の折れ線の上下のデータは、警報濃度の最大値と最小値とを示す。
【0018】
ゼオライト100質量%の場合、曝露2日目で水素感度が増加するが、活性アルミナ10-70質量%では水素等のガスへの感度は安定である。しかしながら活性アルミナ100%では、再びシリコーンガスへの耐久性が低下する。これらのことから、フィルタ18中のゼオライト含有量は20-90質量%、活性アルミナ含有量は80-10質量%とする。発明者はゼオライトの種類を変更し、また活性アルミナの比表面積等を変更してみたが、ゼオライト含有量が20-90質量%、活性アルミナ含有量が80-10質量%の範囲で、高いシリコーンガスへの耐久性が得られた。
【0019】
シリコーンガス以外の被毒ガスとして、亜硫酸ガス200ppm中に、通電した状態のセンサを4時間曝すテストを行った。結果を表1に示す。活性アルミナ含有量が10質量%以上で、亜硫酸ガスの影響が小さくなる。表1では耐久テストの前後での警報濃度の比を示し、10%程度の変化は有意差とは言えない。
【0020】
表1

ゼオライトと活性 警報濃度の変化
アルミナとの混合比率 (耐久後の警報濃度/耐久前の警報濃度)
(質量%) iB 水素 メタン
100-0 0.6 0.5 0.6
90-10 1.0 0.9 1.1
80-20 1.1 1.0 1.1
60-40 1.0 1.0 1.0
30-70 1.1 1.1 1.0
0-100 1.1 1.0 1.1
【0021】
フィルタ18の通気性を評価するため、ガスセンサ2を収容した槽内に4500ppmのイソブタンを注入した際に、ガスセンサ2の出力がイソブタン1800ppm相当に達するまでの応答時間を測定した。応答時間は、活性アルミナ含有量にかかわらず15秒程度であった。
【0022】
以上のように、フィルタ18の組成をゼオライト90-20質量%、活性アルミナ10-80質量%とすると、シリコーンガス及び亜硫酸ガスの影響を特に小さくできる。なお好ましくは、ゼオライトと活性アルミナとの割合は、ゼオライト90-30質量%、活性アルミナ10-70質量%とする。
【符号の説明】
【0023】
2 ガスセンサ
4 ベース
6 ステム
8 センサ本体
10 金属酸化物半導体膜
12 ヒータ
14 リード線
16 カバー
18 フィルタ
20,22 金網
24 リング
26 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7