【実施例】
【0011】
図1〜
図7に実施例のガスセンサ2とその特性とを示す。
図1において、4は絶縁体のベースで、ステム6を支持している。8はセンサ本体で、絶縁基板に金属酸化物半導体膜10と膜状のヒータ12とを設けたもので、リード線14によりステム6に接続されている。16は金属製あるいは樹脂製のカバーで、フィルタ18を備え、金網20,22によりフィルタ18の上下を支持すると共に、リング24により金網22を支持している。26はリング24を支持するための突起である。
【0012】
ガスセンサの構造は任意で、例えばシリコン基板の空洞上の絶縁膜に金属酸化物半導体膜とヒータ膜とを設けたMEMSガスセンサ、あるいはビード状の金属酸化物半導体にヒータと電極とを埋設したビード状のガスセンサ等でも良い。また金属酸化物半導体ガスセンサではなく、接触燃焼式ガスセンサ、電気化学式ガスセンサ等でも良い。
【0013】
フィルタ18はゼオライトが20-90質量%と活性アルミナが80-10質量%との混合物からなり、ゼオライトは例えばシリカ含有量が多くシリコーンガスの吸着能力が高いゼオライトで、モルデナイト型ゼオライトであるが、Y型ゼオライト等、ゼオライトの種類は任意である。活性アルミナはγアルミナあるいは無定形アルミナ等から成り、γアルミナをさらにγ、χ等に分類した際の種類は任意である。またフィルタ18に、吸着したエタノール等を室温で分解するためのPt,Au等の微粒子、もしくは酸性あるいは塩基性の極性ガスの吸着能力を高めるための塩基性成分あるいは酸性成分等を添加しても良い。
【0014】
フィルタ18は例えば周囲温度に保たれて、ガスセンサ2へ導入されるガスからセンサ本体8を被毒するシリコーンガス、亜硫酸ガス等の被毒ガスと、誤報の原因となるエタノール等の妨害ガスを除去し、顆粒状、粉体状、板状等、形状は任意である。センサ1個当たりのフィルタ18の質量は例えば10-150mg程度、好ましくは20-100mg程度とする。
【0015】
図1の構造で、LPG検出用のガスセンサ2を作製した。金属酸化物半導体膜10は厚さ20μmのSnO2膜で、SnO2の100質量%に対し1.5質量%のPd微粒子が担持されている。ヒータ12により、金属酸化物半導体膜10を430℃に加熱し、LPGを検出する。フィルタ18は総量を60mgに固定し、顆粒状のシリカ含有量が多いモルデナイド型ゼオライト(カチオン型はH
+,BET比表面積400m
2/g,SiO
2とAl
2O
3のモル比が30)と、顆粒状の活性アルミナ(BET比表面積270m
2/g,細孔容積0.38ml/g,灼熱時の重量減が6.5質量%,固体分中のアルミナ含有量が99.7質量%)との混合比を変更した。
【0016】
ガスセンサ2の初期特性を測定後、シリコーンガスへの耐久テストとして、D3,D4,D5の環状シロキサンを各20ppmで合計60ppm含む槽にガスセンサ2を通電状態で入れ、24時間曝露する毎に槽からセンサを取り出して、各種ガスへの感度を測定した。槽内の雰囲気をセンサを取り出す毎に換気し、換気後にD3,D4,D5の環状シロキサンを各20ppmで合計60ppm注入した。なおD3,D4,D5の3,4,5はシリコーン分子中の珪素原子の数を表し、D3,D4,D5はシリコーンガスとしては低沸点の物質で、蒸発し易いため被毒ガスになりやすい物質である。
【0017】
フィルタの組成毎に3個のセンサを用いて測定し、4日間の耐久テストの結果を
図2〜
図7に示す。図のiBはイソブタンで、イソブタン、プロパン、水素、メタンに対して、当初iB1800ppmで警報するように設定した際の警報濃度を示す。図示したガス以外にエタノール感度を測定したが、警報濃度はいずれのフィルタでも10,000ppm以上であった。図の折れ線の上下のデータは、警報濃度の最大値と最小値とを示す。
【0018】
ゼオライト100質量%の場合、曝露2日目で水素感度が増加するが、活性アルミナ10-70質量%では水素等のガスへの感度は安定である。しかしながら活性アルミナ100%では、再びシリコーンガスへの耐久性が低下する。これらのことから、フィルタ18中のゼオライト含有量は20-90質量%、活性アルミナ含有量は80-10質量%とする。発明者はゼオライトの種類を変更し、また活性アルミナの比表面積等を変更してみたが、ゼオライト含有量が20-90質量%、活性アルミナ含有量が80-10質量%の範囲で、高いシリコーンガスへの耐久性が得られた。
【0019】
シリコーンガス以外の被毒ガスとして、亜硫酸ガス200ppm中に、通電した状態のセンサを4時間曝すテストを行った。結果を表1に示す。活性アルミナ含有量が10質量%以上で、亜硫酸ガスの影響が小さくなる。表1では耐久テストの前後での警報濃度の比を示し、10%程度の変化は有意差とは言えない。
【0020】
表1
ゼオライトと活性 警報濃度の変化
アルミナとの混合比率 (耐久後の警報濃度/耐久前の警報濃度)
(質量%) iB 水素 メタン
100-0 0.6 0.5 0.6
90-10 1.0 0.9 1.1
80-20 1.1 1.0 1.1
60-40 1.0 1.0 1.0
30-70 1.1 1.1 1.0
0-100 1.1 1.0 1.1
【0021】
フィルタ18の通気性を評価するため、ガスセンサ2を収容した槽内に4500ppmのイソブタンを注入した際に、ガスセンサ2の出力がイソブタン1800ppm相当に達するまでの応答時間を測定した。応答時間は、活性アルミナ含有量にかかわらず15秒程度であった。
【0022】
以上のように、フィルタ18の組成をゼオライト90-20質量%、活性アルミナ10-80質量%とすると、シリコーンガス及び亜硫酸ガスの影響を特に小さくできる。なお好ましくは、ゼオライトと活性アルミナとの割合は、ゼオライト90-30質量%、活性アルミナ10-70質量%とする。