特許第5881219号(P5881219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881219単一の復号器でチャンネル変更を可能にする受信機および該受信機での方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881219
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】単一の復号器でチャンネル変更を可能にする受信機および該受信機での方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/438 20110101AFI20160225BHJP
   H04N 21/44 20110101ALI20160225BHJP
【FI】
   H04N21/438
   H04N21/44
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-514690(P2013-514690)
(86)(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公表番号】特表2013-532432(P2013-532432A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011059861
(87)【国際公開番号】WO2011157718
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】10173106.5
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10305633.9
(32)【優先日】2010年6月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121175
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 たかし
(74)【代理人】
【識別番号】100123629
【弁理士】
【氏名又は名称】吹田 礼子
(74)【代理人】
【識別番号】100191824
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 明子
(72)【発明者】
【氏名】ゴーテイエール,エリツク
(72)【発明者】
【氏名】ローレント,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ホウソン,クリストフアー
【審査官】 曽我 亮司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−527975(JP,A)
【文献】 特開2009−284282(JP,A)
【文献】 特開2007−215069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/438
H04N 21/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイム・スロットあたり1つのピクチャのみを復号するように構成された復号器を含む受信機でのチャンネル切り替え方法であって、
グループ・オブ・ピクチャ(GoP)に符号化されたプログラムを搬送するチャンネルに切り替えるステップと、
続した第1のGoPで符号化された第1のストリームおよび連続した第2のGoPで符号化された第2のストリームにおける前記プログラムを受信するステップであって、各GoPは、イントラ・フレーム・ピクチャで開始し、前記第2のGoPの各々は、前記第1のGoPのうち1つの、ピクチャのサブセットを含む、前記受信するステップと、
最初のイントラ・フレーム・ピクチャを受信するステップと、
前記受信された最初のイントラ・フレーム・ピクチャが前記第2のストリームに属する場合に、前記第2のストリームのピクチャを前記復号器に送信するステップと、
を含み、且つ、
前記第1のストリームに属するイントラ・フレーム・ピクチャを受信すると、
前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャが次のタイム・スロットの間に再生出力されるべきでない間は、前記第2のストリームのピクチャを前記復号器に送信するステップと、
前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャが次のタイム・スロットの間に再生出力されるべき場合、前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャを前記復号器に送信するステップと、
む、前記方法。
【請求項2】
前記第1のストリームのイントラ・フレーム・ピクチャが復号されるタイム・スロットの間、最後に復号された前記第2のストリームのピクチャの再生出力を繰り返すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
受信機であって、
タイム・スロットあたり1つのピクチャのみを復号するように構成されたビデオ復号器と、
連続した第1のグループ・オブ・ピクチャ(GoPで符号化された第1のストリームおよび連続した第2のGoPで符号化された第2のストリームにおけるプログラムを受信するインタフェースであって、各GoPは、イントラ・フレーム・ピクチャで開始し、前記第2のGoPの各々は、前記第1のGoPのうちの1つの、ピクチャのサブセットを含む、前記インタフェースと、
前記受信機がグループ・オブ・ピクチャ(GoP)に符号化されたプログラムを搬送するチャンネルに切り替わった後、
最初のイントラ・フレームピクチャを受信すると、該受信された最初のイントラ・フレーム・ピクチャが前記第2のストリームに属する場合に、前記第2のストリームのピクチャを前記復号器に送信し、
前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャを受信すると
前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャが次のタイム・スロットの間に再生出力されるべきでない間は、前記第2のストリームのピクチャを前記復号器に送信し、
前記第1のストリームに属するイントラ・フレーム・ピクチャが次のタイム・スロットの間に再生出力されるべき場合、前記第1のストリームに属する前記イントラ・フレーム・ピクチャを前記復号器に送信する、ように構成されているコントローラと、
を有する、前記受信機。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1のストリームおよび前記第2のストリームのうちからピクチャを選択するように構成されている、請求項3に記載の受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、ディジタル・テレビジョンにおけるチャンネル変更に関し、具体的には、単一の復号器でチャンネル変更を可能にするディジタル・テレビジョン受信機でのメカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
この項は、読者に対し、様々な技術的な態様を紹介することを意図している。これらの技術的な態様は、以下に説明する、さらに/または、以下の請求項に記載する本発明の様々な態様に関連する。この説明が本発明の様々な態様をより良好に理解するための背景情報を読者に対して提供するのに役立つと確信する。従って、それぞれの記載は、この点に鑑みて読まれるべきものであり、先行技術を自認するものではないことを理解すべきである。
【0003】
テレビジョン放送技術の変化により、チャンネル変更の時間が長くなっている。アナログ放送テレビジョンでは、チャンネル変更は即座に行われていた。ディジタル・テレビジョンでは、チャンネル変更にはより長い時間を要する。このことを以下のように例示的に説明する。ブロードバンド・ネットワークを介したビデオ配信は、MPEG−2やJVT/H.264/MPEG AVCなどの標準的な圧縮システムを使用する。MPEG規格は、GoP(Group of Pictures)を規定している。GoPは、以下、ピクチャ、または、フレームと称する連続したピクチャ・シーケンスI,P,Bを規定している。これらのピクチャは、MPEG規格で規定されている。Iピクチャは、他のピクチャを参照することなく符号化される。Pピクチャは、前のIピクチャまたはPピクチャを参照する。Bピクチャは、前および後のIピクチャまたはPピクチャを参照する。受信機が新たなプログラムを受信すると、この受信機は、プログラムの復号を開始するために、Iピクチャの受信を待機する。ストリームの受信とビデオ画面上のストリームのレンダリングとの間に遅延が現れる。
【0004】
ディジタル・テレビジョンの帯域幅を減少させるように使用されるメカニズムが幾らか存在する。これらは、次第に、より少ないIピクチャを使用するようになっている。そのため、復号器は、Iピクチャを見つけ、復号するためにより長い時間を有する。これには、0.5秒までかかることがある。さらに、インターネット・プロトコル・ネットワークを介したテレビジョン・トランスポートでは、ネットワーク配信に信頼性がないことを補償するために、復号器側で追加のバッファが必要となる。この結果、プログラムを受信してから復号器にテレビジョン・ストリームを送信するまでの時間が増加する。新しいプログラム・ピクチャを受信してから画面上でレンダリングするまでに2秒を超える時間を要することがある。
【0005】
ピクチャがより迅速に見つかって表示可能となるように構成された追加ストリームを追加することによって、復号時間を改善するシステムが存在する。このことは、例えば、国際公開特許出願第2005−112465号(WO2005112465A1)に規定されている。オリジナルのサービスと共に「チューンイン(tune−in)」コンパニオン・サービスが送信される。このチューンイン・コンパニオン・サービスは、受信機がチャンネル変更処理の間に新たなサービスをより迅速に取得し、表示するのに役立つ。この解決策を用いて、サービスは、オリジナルのフォーマットで符号化、ストリーミングされ、さらに、「チューンイン」フォーマットで符号化、ストリーミングされる。チューイン・コンパニオン・サービスのパラメータは、このチューンイン・コンパニオン・サービスに利用可能な帯域幅、さらにチャンネル変更時間の目標とする改善に依存して、様々なものとなることがある。チューンイン・コンパニオン・サービスは、通常のライブ・メディア放送(LMB:Live Media Broadcast)サービスと比較して、早く表示されることがある。これは、このチューンイン・コンパニオン・サービスのための符号化されたビデオ・ストリームを生成することによって達成される。チューンイン・コンパニオン・サービスは、以下の特徴を有することができる。
− ビデオ・ストリームのGoPサイズが小さいことにより、Iピクチャが高頻度である。これにより、チューンイン・コンパニオン・ビデオ・ストリーム内のIピクチャをより速く見つけることができるようになる。
− ビデオ・バッファリング時間が短い。チューンイン・コンパニオン・ビデオ・ストリームのためのビデオ・バッファへのデータの記憶が速くなる。
【0006】
GoPは、オープン、または、クローズドである。オープンGoPは、前のGoPからのピクチャを使用するものである。クローズドGoPは、前のGoPからのピクチャを使用しないものである。BフレームとPフレームとの間には時間的依存性が存在するため、受信機は、表示順序とは異なる順序で入来するピクチャを復号する。
【0007】
図1は、4つの異なる構成に従ったピクチャ復号の4つの例を例示している。各例は、フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームの送信順序および表示順序を例示している。送信順序は、復号タイムスタンプ(DTS)に対応する。表示順序は、再生出力(プレゼンテーション)タイムスタンプ(PTS)に対応する。これは、チャンネル変更動作の後、受信機がバッファリングを行う段階の直後の復号ステップおよび再生出力ステップを例示している。灰色で表されたIピクチャ、Pピクチャ、およびBピクチャは、復号されていないピクチャである。白色で表されたIピクチャ、Pピクチャ、およびBピクチャは、復号済みのピクチャである。
【0008】
最後の2つの例は、クローズドGoPを用いた低解像度のストリームを例示している。このストリームは、1つの復号処理のみを必要とする。これは、主に、GoPがオープンであるとき、ピクチャの復号タイム・スロットとその再生出力との間の遅延がクローズドGoPのものよりも大きいという事実に基づく。最初の2つの例は、オープンGoPを用いて符号化されたフル解像度のストリームを例示している。復号器は、フル解像度のストリームと低解像度のストリームを並行して復号する。実際、フル解像度のストリームのピクチャを復号することが必要となる度に、低解像度のストリームで復号する別のピクチャがさらに存在する。これは、2つのストリームの間のシームレスな切り替えが確実に行われるようにするためである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、単一の復号器でチャンネル変更を可能にするディジタル・テレビジョン無線機でのメカニズムを提供することによって、従来技術の受信機に係る懸念の少なくとも幾らかを解消しようとするものである。
【0010】
本発明の対象は、受信機でのチャンネル切り替え方法であり、この方法は、グループ・オブ・ピクチャ(GoP)に符号化されたプログラムを搬送するチャンネルに切り替えるステップと、プログラムを、連続した第1のGoPで符号化された第1のストリームおよび連続した第2のGoPで符号化された第2のストリームで受信するステップであって、第2のGoPの各々は、第1のGoPに対応し、かつ第1のGoPのサブセットであり、各GoPは、イントラ・フレーム・ピクチャで開始する、この受信するステップと、第1のストリームおよび第2のストリームのうちから、復号されるピクチャを選択するステップと、ピクチャを表示するステップと、を含む。
【0011】
受信機は、特有の復号器を用いて第1のストリームと第2のストリームとの間でスムーズな切り替えを行う。コントローラは、復号する適切なピクチャを選択する。
【0012】
本発明の一態様によれば、この方法は、第1の受信されたIピクチャが第1のストリームに属する場合、第2のストリームの受信を解除するステップを含む。
【0013】
本発明の一態様によれば、この方法は、第1の受信されたIピクチャが第2のストリームに属する場合、第1のストリームに属するIピクチャが受信されるまで第2のストリームのピクチャを復号するステップを含む。
【0014】
本発明の一態様によれば、この方法は、第1のストリームに属するIピクチャを受信すると、Iピクチャが表示されるまで、最後に復号された第2のストリームのピクチャの表示を繰り返すことによって、第2のストリームから第1のストリームに移行させるステップを含む。
【0015】
本発明の他の対象は、連続した第1のGoPで符号化された第1のストリームおよび連続した第2のGoPで符号化された第2のストリームを受信するインタフェースであって、第2のGoPの各々は、第1のGoPに対応し、かつ第1のGoPのサブセットであり、各GoPは、イントラ・フレーム・ピクチャで開始する、このインタフェースと、第1のストリームおよび第2のストリームのうちから、ビデオ復号器に送信されるピクチャの選択を行うように構成されたコントローラと、を含む受信機である。
【0016】
一態様によれば、コントローラは、第1の受信されたIピクチャが第2のストリームに属する場合、第1のストリームに属するIピクチャが受信されるまで第2のストリームのピクチャを選択するように構成されている。
【0017】
本発明の一態様によれば、コントローラは、第1のストリームに属するIピクチャを受信すると、Iピクチャが表示されるまで、最後に復号された第2のストリームのピクチャをビデオ復号器に送信することによって、第2のストリームから第1のストリームに移行させるように構成されている。
【0018】
本発明の他の対象は、コンピュータ・プログラム・プロダクトであり、このコンピュータ・プログラム・プロダクツは、コンピュータ上でそのプログラムが実行されたときに、本発明に従った方法のステップを実行するプログラム・コード・インストラクションを含む。「コンピュータ・プログラム・プロダクト」は、コンピュータ・プログラム・サポートを意味し、これは、コンピュータ・メモリなどのプログラムを含む記憶スペースに存在するものだけでなく、電気信号や光信号などの信号に存在するものも含むことがある。
【0019】
特定の各態様は、以下に開示する実施形態の範囲と一致したものである。これらの態様の提示は、読者に対し、発明が採用することのある特定の形態を概略的に提供するためのものに過ぎず、これらの態様は、本発明の範囲を制限するように意図されたものではないことを理解すべきである。実際、本発明は、以下に記載しない様々な態様を含むことがある。
【0020】
本発明は、添付図面を参照して、以下の実施の形態および実施例により良好に理解され、例示されるであろう。これらの実施の形態および実施例は、決して限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術に係るIフレーム、Pフレーム、およびBフレームの復号を例示する図である。
図2】本実施形態に係るシステムのブロック図である。
図3】本実施形態に係る受信機のブロック図である。
図4】1つのストリームを用いたチャンネル変更処理を例示する図である。
図5】フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームを用いた第1のチャンネル変更処理を例示する図である。
図6】フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームを用いた第2のチャンネル変更処理を例示する図である。
図7】受信機でのチャンネル変更の後の復号アービトレーションを例示する図である。
図8】本実施形態に係るIフレーム、Pフレーム、およびBフレームの復号を例示する図である。
図9】本実施形態に係るIフレーム、Pフレーム、およびBフレームの復号を例示する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2および図3において示されたブロックは、純粋に、機能的なものであり、これらは、必ずしも物理的に別個のものに対応するものではない。すなわち、これらのブロックは、ハードウエアまたはソフトウエアの形態で開発されてもよく、1つまたは幾つかの集積回路として実施されてもよい。
【0023】
本発明の図面および記載は、本発明の明確な理解のために関連のある要素を例示するように簡略化されており、分かりやすくする目的で、通常のディジタル・マルチメディア・コンテンツ配信の方法およびシステムにおいて存在する多くの他の要素を削除していることを理解すべきである。しかしながら、これらの要素は、本技術分野においてよく知られており、このような要素についての詳細な説明は、本明細書において提供されていない。本発明の開示内容は、当業者にとって公知なこのような変形および改変の全てに関する。
【0024】
例示的な実施の形態は、MPEG圧縮の範囲にあるディジタル・テレビジョンのフレームワーク内にあるが、本発明は、この特定の環境に限定されるものではなく、コンテンツが高解像度および低解像度で圧縮されることがある他のフレームワーク内にも適用することができる。
【0025】
本実施形態に係るシステムは、図2に例示されている。サーバ6は、ビデオ・ソース1を受信し、ビデオ符号化器2を用いてこのビデオ・ソース1を符号化する。ビデオ・ソース1は、フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームに符号化される。これらのストリームは、インターネット・プロトコル・ネットワーク3(IPネットワーク3)を介してビデオ受信機4で受信される。ビデオ受信機4は、ストリームを復号することができる。復号が行われると、ストリームは、ビデオを表示するビデオ・ディスプレイに送信される。
【0026】
本実施形態に係るビデオ受信機4は、図3に例示されている。フロント・エンド41は、所与の周波数で受信された信号を選択し、この信号をベースバンドで逆多重化器42に送信する。逆多重化器42は、例えば、MPEG規格に従って、この信号からディジタル・データストリームを抽出する。このデータストリームは、次に、オーディオ/ビデオ復号器47によってビデオ信号およびオーディオ信号に変換される。例示されているように、逆多重化器は、第1のバッファ43に送信されるフル解像度のビデオを抽出する。さらに、逆多重化器は、第2のバッファ44に送信される低解像度のビデオを抽出する。復号器47は、第1のバッファと第2のバッファとのいずれにもアクセスすることが可能である。このアクセスの制御および管理は、復号コントローラ45によって行われる。復号コントローラ45は、圧縮されたピクチャ・タイプ(I、P、B)、アクセス単位の復号タイムスタンプ(DTS:Decoding Time Stamps)および再生出力タイムスタンプ(PTS:Presentation Time Stamps)、さらに、プログラム・クロック・リファレンス(PCR:Program Clock Reference)に対するシステム・タイム・クロック(STC:System Time Clock)・スレーブ46に従って、復号されるべきバッファリングされた展開済みのピクチャ間のアービトレーション(arbitration)を行うように構成されている。復号コントローラは、圧縮されたピクチャ・ヘッダにおけるこれらの値を読み込む。復号コントローラは、以下に説明する方法に従って復号するピクチャを選択する。さらに、復号コントローラは、復号器にとってアクセス可能なバッファを選択する。復号されないピクチャは、バッファから除去される。次に、選択されたピクチャは、ビデオ復号器に送信される。復号が行われると、ビデオは、ディスプレイ装置5に送信される前にバッファリングされる(バッファ48に記憶される)。本実施形態によれば、受信機は、復号器を含む。代替的な実施形態では、復号器は、別の装置に含まれていることがある。その場合、受信機は、復号器に送信されるピクチャのアービトレーションを同様に行って、ピクチャが復号され、ディスプレイに送信されるようにする。
【0027】
図4は、Iフレームが受信される前の待機時間およびビデオ復号器バッファ遅延を例示するチャンネル変更処理を示す図である。受信機は、「Zap」矢印のポイントから新たなサービスのデータの受信を開始する。このポイントは、圧縮された「I」ピクチャの中央付近に存在する。所与のアクセス単位の復号器バッファ遅延は、ΔPCR/PTSとして示されている。この復号器バッファ遅延は、復号されたアクセス単位がレンダリングされる時間を表す再生出力タイムスタンプ(PTS:Presentation Time Stamp)に関し、このアクセス単位を復号器のバッファがローディングする際の最初のPCR遅延である。ここで、PCR=20のパケットの前に、PTS=20の圧縮された「I」ピクチャが送信され、これらの相対的な時間差はΔPCR/PTSである。
【0028】
復号器バッファ遅延ΔPCR/PTSは、黙示的に、復号器の入力から復号器の出力または再生出力(プレゼンテーション)までの、エンドトゥエンド遅延に関するものであり、これは、2005年の「情報技術−動画および関連するオーディオ情報の一般的な符号化:システム(Information teCHnoloGY − Generic coding of moving pictures and associated audio information: Systems)」と題された規格ISO/IEC13818−1修正5に規定されており、これを、以下、ISO/IEC13818−1と呼ぶ。符号化処理で決定されるのは定数値である。符号化器は、ストリームの所与のアクセス単位をΔPCR/PTSに固定された復号器バッファ・サイズで確実に復号できるようにする。換言すれば、符号化器は、ΔPCR/PTSを超えるものをバッファリングするアクセス単位が存在しないようにする。一般的に、ΔPCR/PTSは、GoP長よりも長くない。
【0029】
図4において、受信機がチャンネルを変更すると、まず、受信機は、次の圧縮された「I」ピクチャに対応する待機時間、待機する。この「I」ピクチャが受信されたとき、受信機は、対応するPTS(PTS=30)をチェックし、ピクチャ・レンダリング処理を開始する前に、PCR=30に対応する復号器「バッファ」時間、待機しなければならない。
【0030】
チューンイン・コンパニオン・ストリームは、より短いGoPを構成することによって待機時間を改善するために使用される。両方のサービスの再生出力の同期を維持するために、符号化処理は、2つのストリームのGoPを、これらがPCRと一致しているままとなるように構成する。さらに、これらの2つのサービスの符号化処理は、同じ一定のエンドトゥエンド遅延に基づいており、これは、符号化器への入力から2つのサービスの復号器からの再生出力までの遅延が同一であることを意味する。
【0031】
図5は、フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームのそれぞれで搬送された、追加的な「チューンイン」コンパニオン・サービスを用いたオリジナルのLMBサービスを示している。この例において、チューンイン・コンパニオン・サービスは、フル解像度のストリームの半分の長さのGoP長を有する。
【0032】
受信機がチャンネルを変更または選択すると、受信機は、フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームの双方での、次の圧縮された「I」ピクチャに対応する待機時間、待機する。図5に示されているように、大抵の場合、見つかった第1の圧縮された「I」ピクチャは、低解像度のものである。次に、バッファは、通常、低解像度のストリームのレンダリングが開始するまで、復号器「バッファ」時間、データを記憶する。これは、「レンダリング開始」の矢印によって図5によって示されている。この矢印は、PCR=25のときに行われるPTS=25の低解像度の圧縮された「I」ピクチャのレンダリングを示す。図4と比較して、待機時間は少なくなっている。最後に、PCR=30での「切り替え」の矢印は、フル解像度のストリームを再生出力する準備ができたときを示している。これは、図4の「レンダリング開始」の矢印に相当する。この時点で、低解像度ビデオは、これ以上レンダリングされることはない。コンパニオン・ストリームは、受信機から、この受信機によって切断される。フル解像度のビデオが表示される。チャンネル変更段階が終了する。
【0033】
図6は、低解像度のストリームおよびフル解像度のストリームのそれぞれで搬送されるチューンイン・コンパニオン・サービスおよびオリジナルのLMBサービスを示している。各サービスは、自己の符号化制約条件を有する。オリジナルのLMBサービスは、「エンドトゥエンド遅延フル解像度(end−to−end−delay−full−res)」と称する一定のエンドトゥエンド遅延を用いて符号化され、これは、所与のアクセス単位について、復号器バッファ遅延「ΔPCR/PTS full−res」を生じさせる。チューイン・コンパニオン・サービスは、より短いエンドトゥエンド遅延「エンドトゥエンド遅延低解像度(end−to−end−delay−low−res)」を用いて符号化され、これは、所与のアクセス単位について、復号器バッファ遅延「ΔPCR/PTS low−res」を生じさせる。
【0034】
両方のサービスの再生出力の間の同期を維持するために、符号化処理の前に、チューンイン・コンパニオン・サービスは、オリジナルのサービスと比較して遅延される。遅延の値は、2つのストリームの各々の符号化処理の間に使用されるエンドトゥエンド遅延の値の間の差、すなわち、「エンドトゥエンド遅延フル解像度(end−to−end−delay−full−res)」−「エンドトゥエンド遅延低解像度(end−to−end−delay−low−res)」と等しい。実際、このことは、エンドトゥエンド遅延が一定値であるISO/IEC13818−1から知られている。従って、フル解像度のストリームと比較してより小さなエンドトゥエンド遅延を用いて低解像度のストリームが符号化されている場合には、低解像度のストリームのピクチャは、フル解像度のストリームの対応するピクチャよりも前に再生出力される。そこで、2つのストリームの再生出力を同期化させるために、フル解像度のストリームと比較して低解像度のストリームを遅延させることが必要である。符号化処理の前に低解像度のストリームを遅延させることにより、同一のシステム・タイム・クロック(STC:System Time Clock)を用いて2つのストリームを符号化し、フル解像度のストリームおよび遅延した低解像度のストリームとの間でPCRを一致したままにすることができる。
【0035】
図6において、2つのストリームのPTS=20の圧縮された「I」ピクチャは、これ以上は同期した状態で搬送されない。ビデオ復号器においてバッファリングされた後、これらのストリームは自らを再同期させる。この理由は、符号器によって構成されるバッファ復号器遅延は、これらのストリームを符号化するために使用されるエンドトゥエンド遅延の間の差がトランスポート遅延と等しくなるようになっているからである。
【0036】
受信機がチャンネルを変更、選択すると、まず、受信機は、低解像度のストリームに存在する次の圧縮された「I」ピクチャに対応する待機時間、待機する。次に、受信機は、ビデオ復号器バッファにデータを記憶し、「ΔPCR/PTSフル解像度(ΔPCR/PTS full−res)」よりも短い「ΔPCR/PTS低解像度(ΔPCR/PTS low−res)」を復号器バッファ時間、待機する。これは、「レンダリング開始」の矢印によって図6によって示されている。この矢印は、PCR=20のときに行われるPTS=20の低解像度の圧縮された「I」ピクチャのレンダリングを示す。図5と比較して、バッファ時間が減少している。最後に、PCR=30での「切り替え」の矢印は、図4の場合と同じである。コンパニオン・チューンイン・サービスは、エンド・ユーザに対してより長時間に渡って再生出力される。この理由は、新たなサービスの再生出力がより速く行われるからである。
【0037】
復号器コントローラは、図5および図6に例示されているような、フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームとの間の選択を実行する。フル解像度のストリームおよび低解像度のストリームは、それぞれのバッファに記憶される。コントローラは、復号される適切なピクチャを選択し、このピクチャが復号器に送信されるようにする。
【0038】
本実施形態に係る復号アービトレーションの方式が図7に例示されている。チャンネル変更リクエストの後、受信機は、古いサービスの受信を停止し、新たなオリジナルのサービス、即ち、フル解像度で符号化されたものおよびそのチューイン・コンパニオン・サービス、低解像度で符号化されたものを受信し、バッファリングするために必要な動作を実行する。
【0039】
次に、受信機は、両方のサービス・ストリームに復号されるべき圧縮された「I」ピクチャを待機する(ステップ1.1)。
【0040】
復号されるべき第1の圧縮された「I」ピクチャ(ステップ1.2)がオリジナルのサービス・ストリームに属する(ステップ2.1)場合には、受信機は、チューンイン・コンパニオン・サービスを処理するために停止し、オリジナルのサービスを処理し、チャンネル変更が有効である。
【0041】
復号されるべき第1の圧縮された「I」ピクチャ(ステップ1.2)がコンパニオン・サービス・ストリームに属する(ステップ2.2)場合には、受信機は、そのピクチャの復号を開始し、オリジナルのストリームにおける圧縮された「I」ピクチャが復号されなければならなくなるまで、そのストリームの処理を継続する(ステップ4.2)。
【0042】
オリジナルのストリームの圧縮された「I」ピクチャを次のタイム・スロットで再生出力しなければならない場合(PTS=DTS+1/フレーム・レート)(ステップ5.1)には、オリジナルのストリームが処理される。
【0043】
そうでない場合(ステップ5.2)には、この圧縮された「I」ピクチャの復号が、それぞれの再生出力の直前のタイム・スロット(1/フレーム・レート)まで遅延し、この時間内に、チューンイン・コンパニオン・サービスが復号される。
【0044】
復号されるべき2つのストリームの圧縮されたピクチャ間のアービトレーションが必要であり、オリジナルのサービスの圧縮されたピクチャが選択されている場合には、チューンイン・サービスの対応するピクチャがそのバッファから削除される。この場合、利用可能な復号ピクチャが存在しないタイム・スロットにおいて再生出力されるピクチャとして、前に符号化されたピクチャを再生出力することになる。
【0045】
図8は、本実施形態の受信機において復号コンフリクトが管理される方法を例示している。図8は、図1に示されているストリームと同じものを示している。復号処理は、異なっており、異なる表示順序で行われる。さらに、この図8は、チューンイン・コンパニオン・ストリームのタイム・スロットにおいて復号されたピクチャが利用可能である場合、前に復号されたピクチャを再生出力する方式が採用されることを示している。
【0046】
最後の2つの例において、低解像度のストリームからフル解像度のストリームに切り替える際のコンフリクトは存在しない。これは、このフレームが復号されるタイム・スロットの後のタイム・スロットで、フル解像度のストリームの最初のIフレームが再生出力されるという事実に基づく。さらに、復号器がフル解像度のストリームの最初のIフレームを復号するタイム・スロットの間に再生出力されるべき低解像度のストリームのフレームは、既に復号されている。第3の例において、復号器が高解像度の「I11」フレームを復号するタイム・スロットでは、復号器は、既に復号されている低解像度「P10」フレームを再生出力している。この最後のフレームの後、復号器は、高解像度「I11」フレームを再生出力する。結果として、両方のストリームの間の切り替えはシームレスである。
【0047】
最初の2つの例においては、この切り替えを復号器でシームレスに行うことができる。また、最初の例は、さらにタイム・スロット1〜19を示す図9にも例示されている。ユーザは、高解像度「I1」フレームが配信された後であるが、復号器によって低解像度「I7」フレームが受信される前にチャンネル変更を行う。復号器は、タイム・スロット7、10、11、および12の間に低解像度フレーム「I7」、「P10」、「b11」、および「b12」をそれぞれ復号し、タイム・スロット10、13、11、および12の間にそれぞれこれらを再生出力する。
【0048】
そして、復号器は、タイム・スロット13の間に復号されるべき高解像度Iフレーム「I13」さらに、低解像度Iフレーム「I13」を受信する。このタイム・スロットの間、これらのうちの1つのみが復号される。復号コントローラは、次のタイム・スロット、即ち、タイム・スロット14の間に高解像度「I13」フレームが再生出されるべきであるかどうかをチェックする。タイム・スロット14の間ではなく、タイム・スロット16の間に「I13」が再生出力されるべきであるため、復号コントローラは、復号器に低解像度「I13」フレームを復号させる。さらに、復号コントローラは、高解像度「I13」フレーム復号を遅延させる。このタイム・スロットの間、復号器は、低解像度「P10」フレームを再生出力する。
【0049】
タイム・スロット14が開始すると、復号コントローラは、高解像度「I13」フレームが次のタイム・スロット、即ち、タイム・スロット15の間に再生出力されるべきかどうかをチェックする。再生出力が行われるべきでない場合には、復号コントローラは、復号器に低解像度「b14」フレームを復号させ、高解像度「I13」フレームの復号を遅延させる。このタイム・スロットの間、復号器は、低解像度「b14」フレームを再生出力する。
【0050】
タイム・スロット15が開始すると、復号コントローラは、高解像度「I13」フレームが次のタイム・スロット、即ち、タイム・スロット16の間に再生出力されるべきかどうかをチェックする。再生出力が行われるべきである場合には、復号コントローラは、復号器にこのフレームを復号させ、低解像度のストリームの復号を停止させる。このタイム・スロットの間、低解像度および高解像度の「b15」フレームの双方が復号されていないため、復号器には、再生出力するべき復号されたフレームがない。復号器は、第2のタイム・スロットの間、低解像度「b14」フレームを繰り返すことによって、この移行を管理する。エンド・ユーザは、2つのフレーム期間にわたって同一のフレームを見る。勿論、復号器は、図9におけるタイム・スロット13の間、高解像度Iフレームを復号すべきようになるとすぐに低解像度のストリームの復号を停止する場合には、同一の低解像度「P10」フレームが3つのフレーム期間に渡って表示される。代替的には、この移行は、復号器でなく、コントローラによって管理される。コントローラは、復号器に対し、復号器が再び最後に復号されたフレームを再生出力すべきであることを知らせる。
【0051】
明細書、請求項の範囲、および図面において開示された内容は、独立して提供されることも、適切な組み合わせにより提供されることもある。機能は、適宜、ハードウエア、ソフトウエア、または、ハードウエアおよびソフトウエアを組み合わせた形態で実施することができる。
【0052】
本明細書において、「一実施形態」または「実施形態」と参照している場合、実施形態に係る特定の機能、構造、または特性が本発明の少なくとも一実施態様に含まれることを意味する。明細書の様々な箇所に存在する「一実施形態においては」という記載は、必ずしも、全てが同一の実施形態について言及するものではなく、別個の実施形態または代替的な実施形態が他の実施形態に対して相互に排他的であるものではない。
【0053】
請求項に存在する参照符号は例示的な目的のみのものであり、請求の範囲に限定的な影響を与えるものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9