先端可撓部分を有し、液体流路となる少なくとも1つのルーメンが前記先端可撓部分において偏心して形成されているカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの先端側に接続された絶縁性灌注部材と、前記絶縁性灌注部材の先端側に接続された先端電極とを備えてなる電極カテーテルであって、
前記絶縁性灌注部材には、前記カテーテルシャフトから供給される液体を前記先端電極の表面に灌注するための複数の灌注用開口が、前記絶縁性灌注部材の外周に沿って等角度間隔に配置され、
前記絶縁性灌注部材の内部には、前記カテーテルシャフトの液体流路となるルーメンに連通する少なくとも1つの偏心流路と、
前記偏心流路に連通する空間であって、前記偏心流路からの液体が前記絶縁性灌注部材の周方向に均一に分布されるように、前記周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間と、
前記貯留空間に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて前記複数の灌注用開口の各々に至る複数の分岐流路とが形成され、
前記絶縁性灌注部材は、前記先端電極の後端形状と嵌合可能な先端形状を有する成型体である第1部品と、前記第1部品の後端形状に嵌合可能な先端形状を有する成型体である第2部品とから構成され、
前記第2部品の内部に前記偏心流路が形成され、
前記第1部品の内部に前記複数の分岐流路が形成され、
前記第1部品と前記第2部品との嵌合部分において前記貯留空間が形成されていることを特徴とする電極カテーテル。
前記カテーテルシャフトの先端可撓部分を撓ませるための偏向機構として、カテーテルシャフトの中心軸に沿って延在する板バネを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電極カテーテル。
前記先端電極の先端が膨出しており、当該先端電極の最大径をD1、前記カテーテルシャフトの管径をD2とするとき、D1/D2の値が1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載の電極カテーテル。
。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カテーテルの先端偏向操作を行うための偏向機構として板バネが多用されている。
かかる板バネは、カテーテルシャフトの先端可撓部分において、カテーテルシャフトの中心軸に沿って配置される。偏向機構として板バネを採用することにより、先端可撓部分に十分な捩れ剛性が付与されて、先端偏向操作可能カテーテルとしての操作性が向上する。
【0008】
然るに、灌注機構を備えた電極カテーテルに板バネによる偏向機構を採用する場合には、カテーテルシャフトの先端可撓部分において生理食塩水の流路となるルーメンを中心軸に沿って形成することはできず、中心軸から偏心して形成しなければならない。
さらに、そのようなカテーテルシャフトに接続される先端電極または灌注部材における生理食塩水の流路も、その中心軸から偏心して形成されるため、生理食塩水は、偏心した開口(流路の出口)から噴射されることになる。
このように、偏心した流路を通り、偏心した開口から噴射される生理食塩水によっては、先端電極の周方向に均一に灌注することができないという問題がある。
【0009】
このような問題に対して、先端電極または灌注部材に配置する噴射開口(流路の出口)の数を増加して、周方向の均一化を図ることが考えられる。
しかし、噴射開口(流路の出口)の数を増加するためには、先端電極または灌注部材に形成する流路の数、延いては、カテーテルシャフトに形成する流路となるルーメンの数を増加させる必要があって現実的ではない。
【0010】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、焼灼時において先端電極の一部に異常な温度上昇(高温部)を生じることがなく、先端電極表面の冷却効果および先端電極表面における血栓の形成抑制効果に優れ、効率的な焼灼治療を行うことができ、しかも、偏心して形成されているカテーテルシャフトのルーメンからの液体を先端電極の表面に対して周方向に均一に灌注することができる電極カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕本発明の電極カテーテルは、先端可撓部分を有し、液体流路となる少なくとも1つのルーメンが前記先端可撓部分において偏心して形成されているカテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの先端側に接続された絶縁性灌注部材と、前記絶縁性灌注部材の先端側に接続された先端電極とを備えてなる電極カテーテルであって、
前記絶縁性灌注部材には、前記カテーテルシャフトから供給される液体を前記先端電極の表面に灌注するための複数の灌注用開口が、前記絶縁性灌注部材の外周に沿って等角度間隔に配置され、
前記絶縁性灌注部材の内部には、前記カテーテルシャフトの液体流路となるルーメンに連通する少なくとも1つの偏心流路と、
前記偏心流路に連通する空間であって、前記偏心流路からの液体が前記絶縁性灌注部材の周方向に均一に分布されるように、前記周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間と、
前記貯留空間に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて前記複数の灌注用開口の各々に至る複数の分岐流路とが形成され、
前記絶縁性灌注部材は、前記先端電極の後端形状と嵌合可能な先端形状を有する
成型体である第1部品と、前記第1部品の後端形状に嵌合可能な先端形状を有する
成型体である第2部品とから構成され、
前記第2部品の内部に前記偏心流路が形成され、
前記第1部品の内部に前記複数の分岐流路が形成され、
前記第1部品と前記第2部品との嵌合部分において前記貯留空間が形成されていることを特徴とする。
【0012】
(a)このような構成の電極カテーテルによれば、絶縁性灌注部材に灌注用開口が形成されているので、先端電極に開口を形成する必要がなく、開口の形成に伴うエッジが存在しないために焼灼時において先端電極の一部に異常な温度上昇を生じることはなく、これにより血栓の形成が抑制される。また、先端電極に開口を形成する必要がないので、十分な表面積を確保することができ、効率的な焼灼治療を行うことができる。
【0013】
(b)また、絶縁性灌注部材から先端電極の表面に対して液体が灌注されるので、先端電極の表面に十分な量の液体を接触させることができ、また、先端電極の表面を灌注する液体は、先端電極の基端部から先端部に向かって、当該先端電極の表面に沿うように流れるので、先端電極の表面の冷却効果に優れるとともに、先端電極表面付近の血液が十分に攪拌・希釈されることによっても優れた血栓形成抑制効果が奏される。
【0014】
(c)また、絶縁性灌注部材の外周に沿って等角度間隔に配置された複数の灌注用開口が形成されているので、先端電極の表面に対して周方向の全域にわたり灌注することができる。
【0015】
(d)更に、カテーテルシャフトの先端可撓部分において、液体流路となるルーメンが偏心して形成されていることによって、灌注部材を有する従来の灌注カテーテルでは配置することができなかった板バネを、カテーテルシャフトの中心軸に沿って配置することが可能となる。
【0016】
(e)更に、絶縁性灌注部材の内部に偏心流路が形成されていることにより、カテーテルシャフトのルーメン(偏心して形成されている液体流路)からの液体を貯留空間に向けて流通させることができる。
【0017】
(f)更に、絶縁性灌注部材の内部に、その周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間と、この貯留空間に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて複数の灌注用開口の各々に至る複数の分岐流路とが形成されていることにより、偏心流路を通って貯留空間に到達した液体は、貯留空間において周方向に均一に分布されるように流れを整えられてから、先端方向に延びる複数の分岐流路の各々を通って灌注用開口から噴射(灌注)されるので、等角度間隔に配置された複数の灌注用開口の間で噴射される液量にバラツキはなく、絶縁性灌注部材の周方向において均一な噴射(灌注)を行うことが可能となり、先端電極の表面を周方向の全域にわたり均等に灌注することができる。
【0018】
(g)更に、絶縁性灌注部材の内部に形成された分岐流路が外側(絶縁性灌注部材の半径方向の外側)に傾斜するように形成されていることにより、灌注用開口(分岐流路の開口)を外側に配置することができるので、ある程度サイズの大きな先端電極(例えば、カテーテルシャフトの管径と同等以上の径を有する先端電極)の表面に対しても灌注することが可能になる。
【0019】
(h)更に、第1部品の後端形状と、第2部品の先端形状とを嵌合させることにより、絶縁性灌注部材が構成され、先端電極の後端形状と、第1部品の先端形状とを嵌合させることにより、絶縁性灌注部材の先端側に先端電極を接続することができる。
また、絶縁性灌注部材を2つの部品で構成することによりアンダーカットの問題を回避することができ、偏心流路と貯留空間と複数の分岐流路とが内部に形成された絶縁性灌注部材を成型により得ることが可能になる。
【0020】
〔2〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記絶縁性灌注部材の先端部には、前記複数の分岐流路の各々に連続して、前記複数の灌注用開口の各々から先端方向に延びる液体の案内溝が形成され、
前記先端電極の基端部には、前記絶縁性灌注部材の案内溝の各々に連続する液体の案内溝が形成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成の電極カテーテルによれば、絶縁性灌注部材の先端部に、複数の分岐流路の各々に連続して先端方向に延びる液体の案内溝が形成されていることにより、灌注用開口から噴射される液体(分岐流路を通って灌注用開口に到達した液体)を、先端電極に向けて確実に案内(誘導)することができる。
更に、先端電極の基端部表面に、絶縁性灌注部材の案内溝の各々に連続する液体の案内溝が形成されていることにより、絶縁性灌注部材に形成された案内溝を通って先端電極の基端部に到達した液体を、先端電極の先端部に案内(誘導)することができ、これにより、先端電極の表面全体に液体を供給することができる。
【0022】
〔3〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記絶縁性灌注部材は、前記第1部品に形成された後端側凹部と、前記第2部品の先端側小径部とが嵌合することにより構成され、
前記第1部品の後端側凹部の深さが、前記第2部品の先端側小径部の長さより深く形成されていることにより、前記第1部品と前記第2部品との嵌合部分において前記貯留空間が形成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成の電極カテーテルによれば、第1部品と第2部品とを嵌合させることにより、第1部品の後端側凹部の底面(後端面)および内周面と、第2部品の先端側小径部の先端面とによって区画される空間を貯留空間とすることができ、第2部品の内部に形成された偏心流路と、嵌合部分に形成された貯留空間と、第1部品の内部に形成された複数の分岐流路とを有する絶縁性灌注部材を構成することができる。
【0024】
〔4〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記絶縁性灌注部材を構成する前記第1部品および前記第2部品は、セラミック射出成形法(CIM)により得られた成型体であることが好ましい。
セラミック射出成形法によれば、樹脂による射出成形では形成できない微細形状を形成することが可能となり、本発明の電極カテーテルを構成する絶縁性灌注部材を確実に成型することができる。
また、セラミック射出成形法により得られるセラミック成型体は、灌注部材の構成材料として好適な絶縁性および低い熱伝導率を有している。
【0025】
〔5〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトの先端可撓部分を撓ませるための偏向機構として、カテーテルシャフトの中心軸に沿って延在する板バネを備えていることが好ましい。
【0026】
このような構成の電極カテーテルは、カテーテルシャフトの先端可撓部分に十分な捩れ剛性が付与されることにより操作性に優れたものとなる。しかも、この電極カテーテルによれば、カテーテルシャフトの中心軸に沿って板バネを配置して液体流路となるルーメンを偏心して形成しているにも関わらず、先端電極の表面に対してその周方向に均一に灌注することができる。
【0027】
〔6〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトの液体流路となるルーメンと、前記絶縁性灌注部材の偏心流路とが、継手チューブを介して連通していることが好ましい。
【0028】
このような構成の電極カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端側に対する絶縁性灌注部材の接続を確実なものとすることができるとともに、カテーテルシャフトの先端面(液体流路となるルーメンが開口する先端面)と、絶縁性灌注部材の後端面(偏心流路が開口する第2部品の後端面)との当接箇所における液体の漏れ(これに伴うシャフト内部への液体の浸入)を防止することができる。
【0029】
〔7〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記絶縁性灌注部材の内部に形成された偏心流路の数が1または2であり、分岐流路の数が4以上であることが好ましい。
絶縁性灌注部材の内部に形成された偏心流路の数が1または2である場合(すなわち、カテーテルシャフトの液体流路となるルーメンの数が1または2である場合)において、カテーテルシャフトの先端側に絶縁性灌注部材を装着すること〔カテーテルシャフトから供給される液体を絶縁性灌注部材の内部(偏心流路・貯留空間・複数の分岐流路)に流通させること〕は、特に効果的である。
また、分岐流路の数(灌注用開口の数)が4以上であれば、絶縁性灌注部材の周方向に十分均一に灌注することができる。
【0030】
〔8〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記絶縁性灌注部材には、その中心軸に沿って中央貫通孔が形成されるとともに、前記中央貫通孔に中央チューブが挿通され、
前記液体の貯留空間は、前記第1部品の後端側凹部の内周面と、前記中央チューブの外周面とにより仕切られたジャケット空間であることが好ましい。
【0031】
このような構成の電極カテーテルによれば、第1部品と第2部品とを嵌合させることにより、第1部品の後端側凹部の底面(後端面)と、第2部品の先端側小径部の先端面と、第1部品の後端側凹部の内周面と、中央チューブの外周面とにより区画されるジャケット空間を貯留空間とすることができる。
【0032】
〔9〕この場合において、前記中央チューブには、先端電極のリード線および/または温度センサのリード線が挿通されていることが好ましい。
【0033】
このような構成の電極カテーテルによれば、中央チューブ内に挿通されているリード線が液体と接触することを確実に防止することができる。
【0034】
〔10〕本発明の電極カテーテルにおいて、前記先端電極の先端が膨出しており、当該先端電極の最大径をD1、前記カテーテルシャフトの管径をD2とするとき、D1/D2の値が1.0以上であることが好ましい。
【0035】
このような構成の電極カテーテルによれば、先端電極において焼灼治療に十分な表面積が確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の電極カテーテルによれば、焼灼時において先端電極の一部に異常な温度上昇を生じることがなく、先端電極表面の冷却効果および先端電極表面における血栓の形成抑制効果に優れ、効率的な焼灼治療を行うことができる。
【0037】
本発明の電極カテーテルによれば、更に、偏心して形成されているカテーテルシャフトのルーメンからの液体を先端電極の表面に対して周方向に均一に灌注することができる。しかも、カテーテルシャフトの先端可撓部分において液体流路となるルーメンが偏心して形成されていることにより、灌注部材を有する従来の灌注カテーテルでは配置することができなかった板バネを、カテーテルシャフトの中心軸に沿って配置することが可能となる。
また、第1部品と第2部品とから絶縁性灌注部材が構成されているので、成型加工の際のアンダーカットの問題を回避することができ、偏心流路と貯留空間と複数の分岐流路とが内部に形成された絶縁性灌注部材を成型により得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の電極カテーテルの一実施形態について図面を用いて説明する。
図1乃至
図7および
図10乃至
図13に示す電極カテーテルは、心臓における不整脈の治療に用いられる本発明のアブレーションカテーテルである。
【0040】
この実施形態アブレーションカテーテル100は、先端可撓部分10Aを有し、この先端可撓部分10Aにおいて液体流路となる2本のルーメン11,11が偏心して形成されているカテーテルシャフト10と、このカテーテルシャフト10の先端側に接続された絶縁性の灌注部材20と、この灌注部材20の先端側に接続された先端電極30と、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aの外周面に装着されたリング状電極40と、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aを撓ませるための偏向機構を構成する引張ワイヤ61,62と、カテーテルシャフト10の中心軸に沿ってに配置され、引張ワイヤ61,62ととともに偏向機構を構成する板バネ65と、カテーテルシャフト10の基端側に接続された制御ハンドル70と、液体の注入管80とを備えてなり;
カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aには、液体流路となる2本のルーメン11,11が中心軸を挟んで対向するように(すなわち、各々が中心軸から偏心して)形成されているとともに、引張ワイヤ61,62の挿通路となる2本のルーメン12,12と、リング状電極40のリード線の挿通路となる2本のルーメン13,13とが形成され; 灌注部材20には、カテーテルシャフト10から供給される液体を先端電極30の表面に噴射(灌注)するための8つの灌注用開口25Aが、灌注部材20の外周に沿って等角度間隔(45°間隔)に配置され、
灌注部材20の内部には、カテーテルシャフト10の液体流路となるルーメン11,11に連通する2本の偏心流路23,23と、偏心流路23,23に連通する空間であって、偏心流路23,23からの液体が灌注部材20の周方向に均一に分布されるように、周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間24と、この貯留空間24に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて8つの灌注用開口25Aの各々に至る8本の分岐流路25とが形成され、灌注部材20の先端部には、8本の分岐流路25の各々に連続して、灌注用開口25Aの各々から先端方向に延びる液体の案内溝26が形成され;
先端電極30の基端部表面には、灌注部材20の案内溝26の各々に連続する液体の案内溝36が形成されており;
灌注部材20は、先端電極30の円筒状部分33と嵌合可能な先端側凹部21Aが形成されているとともに、後端側にも凹部21Bが形成され、内部には8本の分岐流路25が形成されている第1部品21と、この第1部品21の後端側凹部21Bに嵌合可能な先端側小径部221を有し、内部には2本の偏心流路23,23が形成されている第2部品22とを嵌合することによって構成され;
第1部品21の後端側凹部21Bの深さ(d
21)が、第2部品22の先端側小径部221の長さ(d
22)より深く形成されていることにより、第1部品21と第2部品22との嵌合部分において貯留空間24(第1部品21の後端側凹部21Bの底面(後端面)21bおよび内周面と、第2部品22の先端側小径部221の先端面22aとによって区画される空間)が形成されている。
【0041】
図1に示すように、アブレーションカテーテル100は、先端可撓部分10Aを有するカテーテルシャフト10と、灌注部材20と、先端電極30と、リング状電極40と、制御ハンドル70と、液体の注入管80とを備えてなる。
【0042】
図1に示した注入管80は、制御ハンドル70の内部を通ってカテーテルシャフト10に接続されており、この注入管80を通って、カテーテルシャフト10のルーメン11に液体が供給される。ここに、「液体」としては、生理食塩水を例示することができる。
【0043】
図1に示した制御ハンドル70は、カテーテルシャフト10の基端側に接続されており、カテーテルの先端偏向操作を行うための回転板75を備えている。
【0044】
アブレーションカテーテル100を構成するカテーテルシャフト10は、先端可撓部分10Aを有するものである。
ここに、「先端可撓部分」とは、先端偏向操作用のワイヤを引っ張ることによって撓む(曲がる)ことのできるカテーテルシャフトの先端部分をいう。
【0045】
図2および
図3に示すように、カテーテルシャフト10(ルーメン12,12)には、先端可撓部分10Aを撓ませる(先端偏向操作する)ための引張ワイヤ61,62が配置されている。引張ワイヤ61,62の後端部は、制御ハンドル70の回転板75(
図1参照)にそれぞれ連結されている。一方、引張ワイヤ61,62の先端部は、灌注部材20(第2部品22)の外周面(収納溝226)において固定されている。
例えば、
図1に示すA1方向に回転板75を回転させると、引張ワイヤ61が引っ張られ、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aが矢印A方向に偏向動作し、
図1に示すB1方向に回転板75を回転させると、引張ワイヤ62が引っ張られ、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aが矢印B方向に偏向動作する。
【0046】
図3に示すように、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aには、引張ワイヤ61,62の配列方向(先端可撓部分10Aの撓み方向)に対して垂直な平面上において、カテーテルシャフト10の中心軸に沿って板バネ65が配置されている。
先端可撓部分10Aに板バネ65を配置することにより、撓み方向の異方性が担保されるとともに、先端可撓部分10Aに十分な捩れ剛性が付与されて先端偏向操作時の操作性の向上を図ることができる。
【0047】
図3および
図7に示すように、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aには、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向するように、液体流路となる2本のルーメン11,11が形成されている。
なお、先端可撓部分10Aにおける2本のルーメン11,11は、先端可撓部分10Aより基端側のシャフト部分において合流していてもよい。
また、
図3に示すように、先端可撓部分10Aには、引張ワイヤ61,62の挿通路となる2本のルーメン12,12と、リング状電極40のリード線(
図3において図示省略)の挿通路となる2本のルーメン13,13と、先端電極30のリード線30Lの挿通路となるルーメン14と、温度センサ(熱電対)のリード線35Lの挿通路となるルーメン15とが形成されている。このように、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aは、いわゆるマルチルーメン構造となっている。但し、先端可撓部分10Aの先端には、後述する灌注部材20との接合のために、シングルルーメン構造の先端側凹部が形成されている。
【0048】
カテーテルシャフト10は、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、PEBAX(ポリエーテルブロックアミド)などの合成樹脂で構成される。また、カテーテルシャフト10の近位端側は、これらの合成樹脂からなるチューブをステンレス素線で編組したブレードチューブであってもよい。
【0049】
カテーテルシャフト10の外径は1.0〜3.0mmであることが好ましく、更に好ましくは1.6〜2.7mmとされ、好適な一例を示せば2.36mmである。
カテーテルシャフト10の長さは600〜1500mmであることが好ましく、更に好ましくは900〜1200mmとされる。
【0050】
アブレーションカテーテル100において、先端電極30の表面への液体の噴射(灌注)は、先端電極30の後端側に位置する灌注部材20によって行われる。
図8および
図9は、アブレーションカテーテル100を構成する灌注部材20の形状を示す斜視図である。
【0051】
図2および
図7乃至
図10に示すように、灌注部材20は、第1部品21と第2部品22とを嵌合することにより構成される。
【0052】
灌注部材20を構成する第2部品22は、直胴部223と、この直胴部223より外径の小さい先端側小径部221とが一体的に形成された成型体からなる。
なお、
図8および
図9において、第2部品22の先端側小径部221は、第1部品21の内側(後端側凹部21B)に嵌合されているために図面上には現れていない。
【0053】
第2部品22の直胴部223の外径は0.80〜2.80mmであることが好ましく、更に好ましくは1.80〜2.12mmとされ、好適な一例を示せば1.96mmである。
第2部品22の先端側小径部221の外径0.60〜2.60mmであることが好ましく、更に好ましくは0.40〜1.70mmとされ、好適な一例を示せば1.45mmである。
【0054】
図4、
図5、
図7および
図9に示すように、第2部品22には、その中心軸に沿って中央貫通孔224が形成されているとともに、中央貫通孔224の両隣において、中心軸と平行に延びる偏心流路23,23が形成されている。中央貫通孔224および偏心流路23,23は、第2部品22(先端側小径部221)の先端面22aから第2部品22(直胴部223)の後端面22bに至る貫通孔である。
【0055】
図7に示すように、第2部品22の後端面22b(
図4に示す
図2のB−B断面)における偏心流路23,23の開口の各々は、カテーテルシャフト10の先端面(
図3に示す
図2のC−C断面)におけるルーメン11,11の開口の各々と対向している。
カテーテルシャフト10のルーメン11,11と、灌注部材20(第2部品22)の偏心流路23,23とは、継手チューブ51,51を介して連通している。
これにより、カテーテルシャフト10と灌注部材20との接続を確実なものとすることができるとともに、カテーテルシャフト10の先端面(ルーメン11,11の開口面)と、灌注部材20の後端面の後端面22b(偏心流路23,23の開口面)との当接箇所における液体の漏れ、延いては、これに伴うシャフト内部への液体の浸入を防止することができる。
【0056】
図7に示すように、第2部品22(直胴部223および先端側小径部221)を貫通する偏心流路23,23の横断面形状は、直胴部223の内部から先端側小径部221の内部に至る直前(
図7において231で示す段差部)において、円形から略半円形に変化している。従って、第2部品22の後端面22b(
図4に示す
図2のB−B断面)における偏心流路23,23の開口形状は円形であるが、第2部品22の先端面22a(
図5に示す
図2のD−D断面)における偏心流路23,23の開口形状は略半円形である。
このように偏心流路23,23の横断面形状を変化させることにより、先端側小径部221において偏心流路23,23を区画する成型材料の肉厚(例えば60μm以上の肉厚)を確保することができる。
【0057】
また、
図2、
図8および
図9に示すように、第2部品22(直胴部223)の外周面には、引張ワイヤ61,62の先端部を収納して固定する収納溝226,226が形成されている。
【0058】
また、
図8乃至
図10および
図13に示すように、第2部品22(直胴部223)の外周面には、リング状電極40(先端から第1番目および第2番目のリング状電極)のリード線40Lを収納するために収納溝225が形成されている。
図10に示すように、収納溝225は、先端から後端に向けて浅溝部225aと、傾斜部225bと、深溝部225cとからなる。
ここに、収納溝225の幅は0.15〜0.35mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.26mmである。
収納溝225の浅溝部225aの深さは0.10〜0.20mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.12mmである。
また、収納溝225の深溝部225cの深さは0.15〜0.65mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.50mmである。
【0059】
灌注部材20を構成する第1部品21は、直胴部213と、この直胴部213より外径の大きい大径部212と、先端方向に向かって縮径する縮径部211とが一体的に形成された成型体からなる。
【0060】
第1部品21の直胴部213の外径は、第2部品22の直胴部223の外径と実質的に同一であり、大径部212の外径は、カテーテルシャフト10の外径と実質的に同一である。第1部品21の縮径部211の最小外径は、先端電極30の頸部32の外径と実質的に同一である。
【0061】
図2、
図7および
図10に示すように、第1部品21の先端側には、先端電極30の後端部分(円筒状部分33)と嵌合可能な先端側凹部21Aが形成されている。また、第1部品21の後端側には、第2部品22の先端側小径部221と嵌合可能な後端側凹部21Bが形成されている。
ここに、第1部品21の後端側凹部21Bの深さ(
図7においてd
21で示す)は、第2部品22の先端側小径部221の長さ(
図7においてd
22で示す)より深く形成されている。
【0062】
図7および
図8に示すように、第1部品21(縮径部211)には、カテーテルシャフト10から供給される液体を先端電極30の表面に噴射(灌注)するための8つの灌注用開口25Aが、灌注部材20の外周に沿って等角度間隔(45°間隔)に配置されている。
【0063】
また、第1部品21の内部には、後端側凹部21Bの底面(後端面)21bから外側に傾斜しながら先端方向に延びて灌注用開口25Aの各々に至る8本の分岐流路25(貫通孔)が形成されている。
なお、
図6に示すように、後端側凹部21Bの底面(後端面)21bにおける分岐流路25の開口も、灌注部材20の周方向に沿って等角度間隔(45°間隔)で配置されている。
【0064】
8本の分岐流路25の各々は、灌注部材20の軸方向に対して外側(灌注部材20の半径方向の外側)に傾斜するように形成されている。
これにより、ある程度サイズの大きな先端電極の表面に対しても十分に灌注することができる。
ここに、分岐流路25の傾斜角度としては3〜45°であることが好ましく、更に好ましくは5〜13°、好適な一例を示せば7°である。
【0065】
また、第1部品21の先端部(縮径部211)には、8本の分岐流路25の各々に連続し、灌注用開口25Aの各々から先端方向に延びる液体の案内溝26が形成されている。
【0066】
なお、灌注部材20(第1部品21)には、分岐流路25、灌注用開口25A、液体の案内溝26が、それぞれ、灌注部材20の外周に沿って45°間隔で8つずつ設けられているが、縦断面を示す
図7では、その一部のみが見えている。
【0067】
図2、
図6、
図7および
図10に示すように、第1部品21には、後端側凹部21Bの底面(後端面)21bから、先端側凹部21Aの底面(先端面21a)に至るように、第1部品21の中心軸に沿って中央貫通孔214が形成されている。
【0068】
第1部品21の中央貫通孔214と、第2部品22の中央貫通孔224とにより、灌注部材20の中央貫通孔が構成される。
図2、
図4乃至
図7および
図10乃至
図13に示すように、灌注部材20の中央貫通孔(214,224)には、中央チューブ54が挿入されている。この中央チューブ54の内部には、先端電極30のリード線30Lおよび温度センサのリード線35Lが挿通されている。
【0069】
図8乃至
図12に示すように、第1部品21(直胴部213)の外周面には、リング状電極40(先端から第1番目のリング状電極)のリード線40Lを収納可能な4本の収納溝215が、直胴部213の外周に沿って等角度間隔(90°間隔)で配置形成されている。
【0070】
ここに、収納溝215の幅は0.12〜0.50mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.34mmである。
また、収納溝215の深さは0.10〜0.20mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.12mmである。
【0071】
第1部品21(直胴部213)の外周面に形成された4本の収納溝215のうちの1本は第2部品22(直胴部223)の外周面に形成された収納溝225と同一直線上に配置され、この収納溝215および第2部品22の収納溝225において、リング状電極40のリード線40Lが収納されている。
図10に示すように、先端から第1番目のリング状電極40のリード線40Lは、収納溝215および収納溝225(浅溝部225a,傾斜部225b,深溝部225c)を通って、カテーテルシャフト10のルーメン13の開口に案内され、この開口からルーメン13に進入し、カテーテルシャフト10のルーメン13および制御ハンドル70の内部を通り、制御ハンドル70の内部またはその基端側に接続されたコネクタ(図示省略)に接続されている。また、先端から第2番目のリング状電極40のリード線40Lは、収納溝225(浅溝深溝部225c)を通ってカテーテルシャフト10のルーメン13の開口に案内される。
【0072】
灌注部材20の外周面にリード線40Lの収納溝(第1部品21における収納溝215および第2部品22における収納溝225)が形成されていることによりはじめて、灌注部材が内部に位置するカテーテルシャフト10の外周面(領域)に、リング状電極40を装着することが可能になる。
これにより、先端電極30と、先端から第1番目のリング状電極40との離間距離を狭くすること(例えば2mm程度とすること)ができ、これらの電極間において、望ましい電位測定が可能となる。
【0073】
灌注部材20を構成する第1部品21および第2部品22は、絶縁性樹脂または絶縁性セラミックの成型体からなる。
第1部品21および第2部品22は、セラミック射出成形法(CIM)により得られた成型体からなることが好ましい。
セラミック射出成形法によれば、樹脂による射出成形によっては形成できない微細形状(例えば、60μm程度の肉厚を有する微細形状)であっても形成することができるので、上記のような形状・サイズの灌注部材20を確実に成型することができる。
また、セラミック射出成形法により得られるセラミック成型体は、灌注部材の構成材料として好適な低い熱伝導率を有している。
また、セラミック射出成形法によるセラミック成型体は絶縁性に優れ、この成型体からなる灌注部材20にエッジが形成されていても、アブレーションカテーテル100の使用(焼灼)時に、エッジ部分に電流が集中して高温になることもない。
灌注部材20を構成する好適なセラミック材料としては、成型加工性に優れるとともに、生体適合性に優れているという観点からジルコニアを使用することが好ましい。
【0074】
灌注部材20は、第1部品21に形成された後端側凹部21Bと、第2部品22の先端側小径部221とを嵌合することにより構成される。
この灌注部材20の嵌合部分において、第1部品21の後端側凹部21Bの底面(後端面)21bと、第2部品22の先端面22aとは、d
21−d
22の距離で離間し、この間において、後端側凹部21Bの内周面と、中央チューブ54の外周面とにより仕切られたジャケット空間が区画形成され、このジャケット空間が液体の貯留空間24となっている。
【0075】
このようにして形成される貯留空間24は、偏心流路23,23からの液体を合流させて、灌注部材20の周方向に均一に分布させるための空間である。この貯留空間24には、周方向の隔壁がないために、貯留空間24に流入した液体を周方向に自由に流動させることができる。
ここに、貯留空間24の長さ(d
21−d
22)としては0.15〜0.65mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.30mmである。
【0076】
上記のようにして構成される灌注部材20は、液体流路となるカテーテルシャフト10のルーメン11,11に連通するように第2部品21の内部に形成された2本の偏心流路23,23と、偏心流路23,23に連通する空間であって、偏心流路23,23からの液体が灌注部材20の周方向に均一に分布されるように第1部品21と第2部品22との嵌合部分に形成された周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間24と、この貯留空間24に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて灌注用開口25Aの各々に至るように第1部品の内部に形成された8本の分岐流路25と、8本の分岐流路25の各々に連続して灌注用開口25Aの各々から先端方向に延びるように先端部(第1部品の縮径部211)に形成された液体の案内溝26を有するものとなる。
【0077】
図7に示すように、灌注部材20を構成する第1部品21の直胴部213および第2部品22(先端側小径部221・直胴部223)がカテーテルシャフト10の先端側凹部に挿入(嵌合)され、灌注部材20の偏心流路23,23の各々が、継手チューブ51,51を介して、カテーテルシャフトのルーメン11,11の各々に連通されることにより、カテーテルシャフト10の先端側に灌注部材20が接続される。
これにより、第1部品21の縮径部211および大径部212のみが、灌注部材20の外観形状として現れている。
【0078】
一方、灌注部材20(第1部品21)の先端側凹部21Aに、先端電極30の円筒状部分33が嵌合されることにより、灌注部材20の先端側に先端電極30が接続される。
【0079】
灌注部材20の先端側に接続されてアブレーションカテーテル100を構成する先端電極30は、半球状の先端膨出部31と、頸部32と、円筒状部分33とを有する。
【0080】
先端電極30の先端膨出部31の径としては1.0〜3.3mmであることが好ましく、更に好ましくは2.2〜2.6mm、特に好ましくは2.3〜2.5mm、好適な一例を示せば2.36mmである。
【0081】
また、先端膨出部31の径(先端電極30の最大径)をD1、カテーテルシャフト10の管径をD2とするとき、D1/D2の値が1.0以上であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜1.5とされ、好適な一例を示せば1.0(D1/D2=2.36mm/2.36mm)である。
D1/D2の値が過小である場合には、そのような先端電極を備えたカテーテルにより効率的な焼灼治療を行うことが困難となる。
他方、D1/D2の値が過大である場合には、そのような先端電極の表面に対して十分な量の液体を灌注することが困難となる。
【0082】
なお、D1/D2の値が1.0以上である先端電極30の表面に対して十分な量の液体を灌注できるのは、灌注部材20の分岐流路25を外側に傾斜させていることによって、傾斜させない場合よりも灌注用開口25Aを外側に位置させているからである。この点においても、灌注部材20を介在させる意義がある。
【0083】
また、先端電極30の基端部(頸部32)には、灌注部材20の案内溝26の各々に連続する液体の案内溝36が形成されている。
この案内溝36が形成されていることにより、灌注部材20に形成された案内溝26を通って先端電極30の基端部に到達した液体を、先端電極30の先端部に案内(誘導)することができ、これにより、先端膨出部31を含む先端電極30の表面全体に液体を供給することができる。
なお、先端電極30に形成された案内溝36は緩やかなR形状を有しているので、焼灼時においても、この部分において異常な温度上昇は起こらない。
【0084】
この実施形態のアブレーションカテーテル100によれば、灌注用開口25Aが絶縁性の灌注部材20に形成されていて、導電性の先端電極30にはエッジが存在しないので、アブレーションカテーテル100の使用時(焼灼時)において先端電極30の一部に異常な温度上昇(高温部)を生じることはなく、そのような高温部に血液が接触して血栓が形成されることを抑制することができる。しかも、先端電極30には開口を形成する必要がないので、焼灼するために十分な表面積を確保することができ、効率的な焼灼治療を行うことができる。
【0085】
また、この実施形態のアブレーションカテーテル100によれば、灌注部材20の先端部に配置されている8つの灌注用開口25Aから先端電極30の表面に対して液体が噴射(灌注)されるので、先端電極30の表面に十分な量の液体を接触させることができる。 しかも、先端電極30の表面に噴射される液体は、先端電極30の基端部(頸部32)から先端部(先端膨出部31)に向かって、先端電極30の表面に沿うように流れる。
従って、このアブレーションカテーテル100は、先端電極に灌注用開口が形成されている従来公知のカテーテルと比較して、先端電極30の表面の冷却効果に優れるとともに、先端電極30の周辺の血液が十分に攪拌・希釈されることによって更に優れた血栓形成抑制効果が奏される。
また、8つの灌注用開口25Aが灌注部材20の外周に沿って等角度(45°)間隔に配置されているので、先端電極30の表面を周方向の全域(360°)にわたり灌注することができる。
【0086】
更に、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aにおいて、液体流路となる2本のルーメン11,11、引張ワイヤ61,62の挿通路となる2本のルーメン12,12、リング状電極40のリード線の挿通路となる2本のルーメン13,13が、何れも偏心した位置に形成されているので、灌注部材を有する従来の灌注カテーテルでは配置することができなかった板バネ65を、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aに中心軸に沿って配置することが可能となる。
そして、板バネ65が配置されているアブレーションカテーテル100は、カテーテルシャフト10の先端可撓部分10Aに十分な捩れ剛性が付与されることによって操作性に優れたものとなる。
【0087】
更に、灌注部材20の内部に、周方向に隔壁を有しない液体の貯留空間24と、貯留空間に連通し、外側に傾斜しながら先端方向に延びて灌注用開口25Aの各々に至る8本の分岐流路25が形成されていることにより、偏心流路23,23を通って貯留空間24に到達した液体は、貯留空間24において周方向に均一に分布されるように流れを整えられてから、8本の分岐流路25の各々を通って灌注用開口25Aから噴射(灌注)されるので、カテーテルシャフト10から灌注部材20に供給される液体の量に周方向のバラツキ(先端可撓部分10Aに配置された板バネ65のために、液体流路となる2本のルーメン11,11が偏心して形成されていることに起因する周方向のバラツキ)があるにも関わらず、等角度(45°)間隔に配置された8個の灌注用開口25Aの間で噴射される液量にバラツキはなく、灌注部材20の周方向において均一な噴射(灌注)を行うことが可能となり、先端電極30の表面を周方向の全域(360°)にわたり均等に灌注することができる。
【0088】
更に、第1部品21に形成された後端側凹部21B(第1部品の後端形状)と、第2部品22の先端側小径部221(第2部品の先端形状)とを嵌合させることにより、灌注部材20が構成され、先端電極30の円筒状部分33(先端電極の後端形状)と、第1部品21の先端側凹部21A(第1部品の先端形状)とを嵌合させることにより、灌注部材20の先端側に先端電極30を接続することができる。
このように、灌注部材20を2つの部品で構成することにより、貯留空間24の形状に起因するアンダーカットの問題を回避することができ、偏心流路23,23と、貯留空間24と、8本の分岐流路25とが内部に形成された灌注部材20を成型により得ることが可能になる。
【0089】
更に、灌注部材20(第1部品11)の内部に形成された分岐流路25の各々が外側に傾斜するように形成されているので、ある程度サイズの大きな先端電極(D1/D2の値が1.0である先端電極30)の表面に対しても十分に灌注することができる。
【0090】
更に、灌注部材20(第1部品11)の先端部に、分岐流路25の各々に連続して先端方向に延びる液体の案内溝26が形成されていることにより、灌注用開口25Aから噴射される液体を、先端電極30に向けて確実に案内(誘導)することができる。
更に、先端電極30の基端部表面に、灌注部材20の案内溝26の各々に連続する液体の案内溝36が形成されていることにより、灌注部材20に形成された案内溝26を通って先端電極30の基端部に到達した液体を、先端電極30の先端部に案内することができ、これにより、先端電極30の表面全体に液体を供給することができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、灌注部材における分岐流路(灌注用開口)の数は8でなくてもよく、例えば4〜12の範囲で適宜選択することができる。
また、カテーテルシャフトの液体流路となるルーメンの数(灌注部材における偏心流路の数)は2でなくてもよく、1つまたは3つ以上であってもよい。但し、液体流路となるルーメンの数が少ないカテーテルシャフトを使用する場合に、本発明は効果的である。
また、カテーテルシャフトの内部構造についても、液体流路となるルーメンが先端可撓部分において偏心して形成されているものであれば、特に制限されるものではない。
また、先端電極の形状は特に限定されるものではなく、砲弾形状などであってもよい。