(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881230
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】刃具の検査装置
(51)【国際特許分類】
B24B 3/24 20060101AFI20160225BHJP
G01B 3/56 20060101ALI20160225BHJP
G01B 5/24 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
B24B3/24
G01B3/56
G01B5/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-277931(P2011-277931)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-128992(P2013-128992A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509353908
【氏名又は名称】板倉 博人
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】板倉 博人
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−305558(JP,A)
【文献】
実開昭52−025547(JP,U)
【文献】
実公昭32−006990(JP,Y1)
【文献】
実開昭51−035792(JP,U)
【文献】
特開昭52−51967(JP,A)
【文献】
実開昭52−58656(JP,U)
【文献】
実開昭58−51912(JP,U)
【文献】
スイス国特許発明第669035(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/24−3/33,
G01B 3/56,5/24−5/255,3/14,5/00,
B23Q 17/00−17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃具を載置する載置台と、
刃具の刃先部が当接する一対のゲージプレートとを備え、
一対のゲージプレートは中央部で当該一対のゲージプレートの中心角度が角度調整自在に連結軸にて連結されているとともに、当該一対のゲージプレートを背面側からそれぞれ支持するガイド部材を有し、
前記ガイド部材は一対のゲージプレートの中心角度の変化に応じて、当該ゲージプレートをスライド可能に支持し、
前記一対のゲージプレートをそれぞれ背面側からガイド部材で支持した状態を正面側からプッシュするための押圧支持部材をそれぞれ有することを特徴とする刃具の検査装置。
【請求項2】
前記一対のガイド部材は、前記押圧支持部材の軸線の延長上に回動軸をそれぞれ有するとともに、当該回動軸よりも連結軸側に回動ピンをそれぞれ有し、
前記一対の回動ピンの間隔を近接離間する角度調整具を有することを特徴とする請求項1記載の刃具の検査装置。
【請求項3】
前記一対の回動ピンの間隔が近接離間する動作により生じる前記連結軸の前後方向の移動をガイドするスライドガイド部を前記角度調整具に有することを特徴とする請求項2記載の刃具の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル等の回転工具の刃先の状態を検査するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリル等の回転工具は使用により刃切れが悪くなると、砥石やグラインダー等の研削装置を用いて刃先を研ぎ、繰り返し使用されている。
例えばツイストドリルで説明すると、刃先部は所定の先端角を形成するように左右対称に切れ刃(エッジ)とチップポケットを有する三次元構造となっている。
また、ドリルの先端角も118°の一般ドリルの他に90°の面取り用ドリルから180°の座グリドリル等、多くの種類がある。
ドリルの研削作業は高度の熟練を要し、従来はドリルを研削した後に試し穴加工を行い、刃先を再度研ぎ調整していた。
このように試し穴加工の為に機械に工具をセット調整する作業は多くの工数が必要となるだけでなく、試し加工によるチェックにも熟練を要する問題があった。
特許文献1にドリルの軸心面上にある点または線を頂点とした等角度に開閉可能に立設した対となる当接部材を設けたドリル刃先検査器を開示する。
しかし、同公報に開示する検査器は一対の当接部材を支持する機構が、ピンとこのピンをスライド自在に保持する長孔とからなるために遊び代が大きく、一対の当接部材の安定性に劣ることから実用性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−305558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、刃具の刃先の検査精度が高く、検査作業が容易な刃具の検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る刃具の検査装置は、刃具を載置する載置台と、刃具の刃先部が当接する一対のゲージプレートとを備え、一対のゲージプレートは中央部で当該一対のゲージプレートの中心角度が角度調整自在に連結軸にて連結されているとともに、当該一対のゲージプレートを背面側からそれぞれ支持するガイド部材を有することを特徴とする。
【0006】
一対のゲージプレートの中心角度が角度調整自在に連結軸にて連結されているので、例えばこの中心角度を118°に設定し、先端角118°のドリルの軸中心が連結軸に対応するように当てがう。
ドリルの刃先がねらいとする118°に左右対称に研削がされていると左右の切れ刃(エッジ)の部分が直接的にゲージプレートのゲージ面と当接するが、左右の切れ刃の研削が正しくされていないと左右のゲージプレートのどちらか一方にスキが発生する。
また、直線的に研削されていないとゲージプレート面に部分的なスキが発生する。
従って、刃先の研削の適否が容易に判断できる。
ここで刃具の載置台は刃具の軸中心が一対のゲージプレートの対称中心線と合致するように刃具を載置できれば形状に特に限定はないが、刃具を横向きに載置するだけで刃具の軸中心と一対のゲージプレートの対称中心とが合致する構造としては、断面略V字状のV字ブロック形状になっているのが好ましい。
【0007】
一対のゲージプレートの中心角度が変化することは連結軸が刃具の刃先に対して前後方向に移動することになる。
そこで一対のゲージプレートをそれぞれ背面側から支持するガイド部は、一対のゲージプレートの中心角度の変化に応じて、このゲージプレートをスライド可能に支持しているのが好ましい。
ゲージプレートがガイド部材に沿ってスライドする構造は、ガイド部材のスライド面がゲージプレートの背面と面で接しているのが、ゲージプレートのゲージ面の平面度を高く維持するのに適している。
また、ゲージプレートのスライドに伴い、ガイド部材のスライド面との間にスキが出きるのはゲージ面の角度バラツキになり好ましくない。
そこで、ガイド部材にゲージプレートが納まる程度の凹形状の溝部を形成し、この溝部の底面でゲージプレートの背面を支持しつつ、前記一対のゲージプレートをそれぞれ背面側からガイド部材で支持した状態を正面側からプッシュするための押圧支持部材をそれぞれ有するようにするのが好ましい。
【0008】
本発明で一対のゲージプレートの中心角度を変化させる手段は、一対のゲージプレートの連結軸が 前後方向に移動するものであれば特に限定はない。
一対のゲージプレートを一対のガイド部材で支持しながら中心角度を変化させるには、例えば、前記一対のガイド部材は、押圧支持部材の軸線の延長上に回動軸をそれぞれ有するとともに、当該回動軸よりも連結軸側に回動ピンをそれぞれ有し、前記一対の回動ピンの間隔を近接離間する角度調整具を有する構造例が挙げられる。
この場合に、一対の回動ピンの間隔が近接離間する動作により生じる前記連結軸の前後方向の移動をガイドするスライドガイド部を前記角度調整具に有するようにすると、一対のゲージプレートの連結部が角度調整具のスライドガイド部に支持されながら移動するのでゲージプレートの安定性が高い。
また、中心角度が分かりやすいように目もりをつけてもよく、また中心角度をデジタル表示可能にしてもよい。
さらには刃先の当接状態が分かりやすいように拡大鏡を設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る刃具の検査装置は一対のゲージプレートを背面側からガイド部材で支持するのでゲージプレートのゲージ面が安定し、ゲージプレートの中心角度精度及びゲージ面の平面度が高く、検査精度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る検査装置を用いて刃具の刃先の研削の適否を検査している状態を示す。(a)は刃先角118°,(b)は刃先角90°の例である。
【
図2】検査装置の構造例を示し、(a)は平面図,(b)は側面図,(c)は断面図を示す。
【
図3】一対のゲージプレートの中心角度の変化を示す。(a)は180°,(b)は118°、(c)は90°の例を示す。
【
図4】検査装置に刃具を載置した状態を示す。(a)は平面視,(b)は側面視,(c)は正面視を示す。
【
図5】検査装置の斜視図を示す。(a)はゲージプレートの中心角度が180°,(b)は118°の例である。
【
図6】ゲージプレート,ガイド部材と角度調理具の位置関係を示す。(a)は中心角度180°,(b)は118°の例である。
【
図7】検査装置に刃具を載置した状態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る刃具の検査装置10の構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように検査装置10は刃具1,2を載置する載置台11と一対のゲージプレート14,15をその中心角度の調整自在に取り付けたベース部12とからなる。
ベース部12は一対のゲージプレート14,15の中央側の連結軸16を中心に中心角度を調整するための角度調整具13を前後方向移動可能に設けてある。
角度調整具13は、
図2(a)に示すように平面視で略T字形状になっている。
【0012】
角度調整具13と一対のゲージプレート14,15の連結構造は次のようになっている。
ベース部12に対して左右一対のガイド部材17,18が回動軸17a,18bにて回動自在に取り付けてあり、このガイド部材17,18は回動軸17a,18bより中央側に位置する回動ピン17c,18cを有する。
一対の回動ピン17c,18cは角度調整具に設けた左右一対の幅方向に長孔のスライド部13c,13d内に納められていて、角度調整具13が刃具側に移動すると幅方向長孔のスライド部13c,13dに沿って左右の回動ピン17c,18cの間隔が広くなる方向、即ち相互に離間するように動き、逆に
図1で角度調整具13が左方向に移動すると、(a)の状態から(b)の状態になるように左右の回動ピン17c,18cが相互に近接する方向に動く。
一対のガイド部材17,18は
図6に示すようにゲージプレート14,15が納まる程度の深さの凹部溝を形成した支持面17a,18aを有し、この支持面17a,18aにゲージプレート14,15がスライド自在に支持されている。
ここで、一対のゲージプレート14,15の中心角度が変化すると、それに伴い連結軸16が前後方向に移動することになる。
この際に連結軸16の移動が安定するように角度調整13に前後方向のスライドガイド部13bを形成し、このスライドガイド部13b内に連結軸16の下部側をL字状に折り曲げた下端部16aを収納した構造例になっている。
このように一対のゲージプレート14,15が、ガイド部材17,18の支持面17a,18aに沿ってスライド移動しながら中心角度が変化することから本実施例では、
図2(a)に示すように載置台11側に押圧支持部材11d,11eを設けてある。
押圧支持部材11d,11eは、シリンダー部11g内に設けたスプリングにより突出方向に付勢されたスプリングプランジャーになっていて、載置台11側にセットボルト11iでセット固定し、後部の付勢力調整具11hにより押圧力が調整可能になっている。
また、押圧支持部材11d,11eの軸中心線の延長線上に回動軸17b,18bの軸中心が位置するようになっていて、ゲージプレート14,15に回動力が作用しないようにしてある。
【0013】
本実施例では
図5に示すように載置台11の形状が断面V字状のVブロックになっている。
従って、刃具の載置面が谷線11aの両側に斜面11b,11cが形成されたV字状になっているので、この谷線11aの延長線上にゲージプレート14,15の連結軸16を位置させると、この載置台に刃具を載置するだけで刃先の中心が連結軸16に合致する。
このような状態例を
図4及び
図7に示す。
また、載置台をVブロックにしたので刃具の径が大小変化しても、左右方向軸中心に変化がなく対応できる。
【0014】
角度調整具13は
図2,3に示すようにベース部12に設けためねじ部に螺合するおねじ部13iを有する固定つまみ13fを取り付けてあり、ベース部12とつまみ部13fの間に沿って角度調整具13がガイド孔13aを介して移動及び固定されるようになっている。
また、固定つまみ13fのボルト側先端部と角度調整具13の下方のL字形折り曲げ部との間に引張り方向のスプリング13gを取り付けてあり、スプリング力がボルト13hにより調整可能になっている。
これにより角度調整具13が刃具側に移動する方向に付勢されているので、これに対抗するよう中心角度調整ボルト13eを設けてある。
また、本実施例ではベース部12に略三角形状の孔12aを形成し、角度調整具13が組み付けやすくなっている。
さらに、ベース部12の裏側に取手12dを設けた例になっている。
取手12dを持って持ち歩いたり、壁等に引掛けておくこともできる。
従って
図3に示すように固定つまみ13fをゆるめ、中心角度調整ボルト13eを回すことにより(a)の中心角度180°から(c)に示す中心角度90°まで自由に角度調整が可能になっている。
なお、角度が分かりやすいように
図1(b)に示すように角度目もり12b,12cを付しておくのが好ましく、例えば
図7に示すように角度調整具13側に付した支持線13jと合せるだけで所定の中心角度に設定できる。
【0015】
本発明に係る検査装置を用いると、例えば
図1(a)及び
図4は一対のゲージプレート14,15の中心角度118°に設定し、刃先角度118°の刃具(ドリル)1を載置した状態を示し、
図1(b)はゲージプレート14,15の中心角度90°に設定し、刃先角度90°の刃具(ドリル)2を載置した状態を示すように刃先先端部1cが連結軸16に位置し、刃先の切れ刃面1a,1bとゲージプレート14,15のゲージ面とのスキの有無をチェックするだけ研削が適正か否かチェックできる。
【符号の説明】
【0016】
1 刃具
2 刃具
10 検査装置
11 載置台
11d 押圧支持部材
11e 押圧支持部材
12 ベース部
12b 角度目もり
12c 角度目もり
13 角度調整具
13a ガイド孔
13b スライドガイド部
13c スライド部
13d スライド部
14 ゲージプレート
15 ゲージプレート
16 連結軸
17 ガイド部材
17b 回動軸
17c 回動ピン
18 ガイド部材
18b 回動軸
18c 回動ピン